環境省大気環境・自動車対策大気汚染状況・常時監視関係光化学オキシダント関連情報光化学オキシダント調査検討会(平成26年度)

平成26年度第3回光化学オキシダント調査検討会会議録

1.日時 平成27年3月16日(月)10:00~12:30

2.場所 一般財団法人日本気象協会 第一・第二会議室

3.出席者(五十音順敬称略)

(委員)
秋元 肇   板野 泰之  井上 和也  指宿 堯嗣  岩崎 好陽
浦野 紘平  大原 利眞  金谷 有剛  坂本 和彦  紫竹 益吉
下原 孝章  竹内 庸夫  橋本 光正  八田 拓士  星  純也
若松 伸司
(欠席者)
向井 人史
(事務局)
環境省水・大気環境局大気環境課 是澤課長、伊藤総括補佐、小林課長補佐
一般財団法人日本気象協会

4.議題

(1)光化学オキシダント解析作業部会における検討状況
(2)シミュレーションを用いた解析結果について
(3)次年度の作業計画(案)について
(4)その他

5.配付資料

資料1
光化学オキシダント解析作業部会における検討状況
資料2
シミュレーションを用いた解析結果
資料3
次年度の作業計画(案)について
参考資料1
平成26年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱
参考資料2
平成26年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)議事録
参考資料3
平成26年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)議事録要旨
参考資料4
検討会および作業部会における指摘事項と対応結果
参考資料5
気象モデル(WRF)の精度検証
参考資料6
大気質モデル(CMAQ)の精度検証
参考資料7
環境省VOCモニタリング調査結果
参考資料8
10km格子と60km格子のO3濃度再現性の比較
参考資料9
東アジア領域におけるバリデーション(海外地点の追加)
参考資料10
不確実性の検討
参考資料11
越境汚染の寄与の変化
参考資料12
格子間隔の差による濃度再現性の評価
参考資料13
異常年検定について(窒素酸化物総量規制マニュアルより)
参考資料14
シミュレーションの条件設定

6.議事

事務局 定刻になりましたので、ただ今から「第3回平成26年度光化学オキシダント調査検討会」を開会いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。
 本日欠席をされているのは、向井委員からはご報告をいただいております。井上委員につきましては電車が遅れているということであります。
 それでは、検討会に先立ちまして資料の確認をさせていただきます。
 議事次第
 座席表
 資料1  光化学オキシダント解析作業部会における検討状況
 資料2  シミュレーションを用いた解析結果
 資料3  次年度の作業計画(案)について
 参考資料1 平成26年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱
 参考資料2 平成26年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)議事録
 参考資料3 平成26年度光化学オキシダント調査検討会(第2回)議事録要旨
 参考資料4 検討会および作業部会における指摘事項と対応結果
 参考資料5 気象モデル(WRF)の精度検証
 参考資料6 大気質モデル(CMAQ)の精度検証
 参考資料7 環境省VOCモニタリング調査結果
 参考資料8 10km格子と60km格子のO3濃度再現性の比較
 参考資料9 東アジア領域におけるバリデーション(海外地点の追加)
 参考資料10 不確実性の検討
 参考資料11 越境汚染の寄与の変化
 参考資料12 格子間隔の差による濃度再現性の評価
 参考資料13 異常年検定について(窒素酸化物総量規制マニュアルより)
 参考資料14 シミュレーションの条件設定
 あと、光化学オキシダント調査検討会の昨年度の報告書をお手元に置かせていただいております。いかがでしょうか。ございましたでしょうか。
 それでは、議事に移らせていただきます。これ以降の議事進行は秋元座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

秋元座長 皆さん、おはようございます。よろしくお願いいたします。今日で本年度の最後の検討会になりますが、年度初めの会でお話ししたかと思いますけれども、今年度は検討会としての報告書は出さないということで、今年度・来年度でこのシミュレーションの1つの方向性を出すというプランになっておりますので、それをお含み置きの上、今日の議論をお願いしたいと思います。
 今日は主に前回の検討会や作業部会でいろいろコメントがついたものに対する対処、回答というか、再計算の結果等の報告が中心になろうかと思います。
 特に最後に、議題(3)になるでしょうか次年度の作業計画というところで、来年度ある程度の線をまとめなければいけません。それに向けて来年度はどういう形のものを作業したらいいのか、どういう仕様書で委託を出したらいいのかを、来年度は検討会の報告書になりますので、この検討会の方々に、作業部会の方はもちろん、皆さんにいろいろ見ていただくことになると思います。そういうことを念頭に置いた上で最後の議論をお願いしたいと思います。


議題(1) 光化学オキシダント解析作業部会における検討状況(資料1)

秋元座長 それでは早速、議題(1)「光化学オキシダント解析作業部会における検討状況」のご報告をお願いいたします。

事務局  それでは、光化学オキシダント解析作業部会における検討状況について説明します。資料1をごらんいただけますでしょうか。
 光化学オキシダント解析作業部会はこれまでに3回開催し、以下の①~⑥に示す項目を対象に、シミュレーションを用いた解析方法及び解析結果について検討してきました。検討会及び作業部会における検討状況について、2ページ目の図1に示しております。
 第1回検討会を平成26年9月12日に開催いたしまして、作業部会を3回、検討会は第1回、第2回と行ってまいりました。第3回検討会におきましては、一番最後の四角枠になるのですけれども、シミュレーションを用いた解析結果について、作業部会における検討状況、シミュレーションを用いた解析結果について、次に次年度の作業計画(案)についてという議題に沿って、議論いただければと思っております。
 なお、これまで検討会及び作業部会で委員の方からご指摘いただいた項目については参考資料4をごらんいただければと思います。表1、表2に取りまとめております。この内容については、この後説明いたします資料2の項目に沿って指摘事項を整理しております。表1、表2の課題については、課題を一番右の列に記載しているのですけれども、この課題については次年度以降、解析で検討が必要と考えております。
 それぞれの指摘事項に対する対応方針及び結果につきましては、これから説明いたします資料2の中で説明いたすことにしますので、これは一覧表という位置づけとなっております。以上で説明を終わります。

秋元座長 ありがとうございました。今年度の流れですけれども、何か特にご質問はございますか。よろしいでしょうか。


議題(2) シミュレーションを用いた解析結果について(資料2)

秋元座長 それでしたら、早速、中身に入りたいと思います。議事2「シミュレーションを用いた解析結果について」、事務局からお願いいたします。

事務局 それでは、資料2にありますシミュレーションを用いた解析結果についてご説明いたします。
 まず、目次を見ていただいて、説明の内容について一通り把握しておきたいと思います。1ページ目ですが、モデルのバリデーションということで、モデルの精度検証を行っております。項目としましては、気象モデル(WRF)、大気質モデル(CMAQ)の精度検証、1.3については前駆物質の再現性の確認を行っております。その後、光化学オキシダント濃度の長期トレンドの再現精度の検証。続いて、10km格子と60km格子のオキシダント濃度再現性の比較。続いて、境界値として使いましたMOZARTというデータの精度検証。1.7は東アジア領域、海外の地点について精度検証を行っています。1.8で植物起源VOC排出量の経年変化について解析しております。
 項目2といたしまして、不確実性の検討。1つ目が植物起源VOCの不確実性、2つ目が未把握VOCの不確実性の検討を行っております。
 2ページ目に行きまして項目3、ここで越境汚染の寄与の変化について解析しております。
 最後に項目4といたしまして、格子間隔の差(5km及び10km)による濃度再現性の評価を行っております。
 では、まず1つ目、モデルのバリデーション、気象モデル(WRF)の精度検証のご説明をさせていただきます。3ページになります。解析の目的といたしまして、大気汚染物質は気流によって移動、拡散するため、気象場の再現性について把握することが必要です。気象官署を対象に、測定値と気象モデル(WRF)による計算値を比較し、シミュレーションによる気象要素の再現性について把握することを目的としています。
 解析方法といたしまして、関東領域は東京、宇都宮、前橋、九州は福岡、下関を対象に、風速、気温の計算値と測定値の経過図及び散布図を作成しました。風向については方位別に出現頻度を整理し、隣り合う方位を含めた出現割合を算出しております。風速及び気温については全日データを対象にした日平均値を対象に、モデルの性能評価でも多く用いられているBIAS、RMSEを算出しました。BIAS、RMSEについては、参考資料5に算出方法等を記載しております。BIAS、RMSEとも、値が小さいほど再現性が高いということになります。
 解析結果ということで、2001年を対象とした検証地点、東京と福岡を4~7ページに記載しております。まず、この図から気温の相関係数を見ますと0.9以上、風速の相関係数といたしましては0.5~0.6というような結果になっております。風速の計算値は両地点とも過小傾向ということになっています。風向については、隣り合う方位を含めた風向の一致した割合ということで、その図は計算値と測定値の風向別の出現時間を表の中に記載しております。風向の一致した割合として、東京は62%、福岡は44%で、ほかの地点についても大体40~60%の一致率でございました。参考資料5にほかの検証した地点の経過図等を載せておりますので、ごらんいただければと思います。
 これらの地点について、精度評価指標(BIAS及びRMSE)による評価を行いました。8ページになります。図1-6に東京と福岡を代表で示しましたが、BIAS、RMSE、両指標とも既存の調査の精度検証結果と比較して同等な値となっております。
 また、2007年以前と2008年以降でBIASとRMSEの傾向に違いが見られます。図1-6の中で黒枠で示した部分ですが、これはWRFに入力する気象データとして2008年以降、気象庁の毎時大気解析GPVというデータ、これは注釈をつけたんですけれども、風と気温について1日24回客観解析されているデータがあるのですが、それを付加したことによる影響と考えております。
 続いて9ページに移ります。ここでは混合層高さの比較を行っております。混合層高さとは、地表付近で大気中に排出された汚染物質が大気の乱れや対流活動で鉛直方向に運ばれ、周囲との混合・希釈が行われる高さのことをいいます。このため、混合層高さの再現性は大気汚染物質の濃度の再現性に大きな影響を与えると考えられます。ここでは、WRFによる混合層高さの再現性を確認するために、上層気象観測が行われた2001年夏季の事例について、測定値と計算値の比較を行っております。
 観測の概要は(1)に示しております。観測地点は浦和で、2001年8月1~5日、夏季の日中の時間を対象に観測を行っております。比較する統計値は、測定値におきましてはLid高さと申しまして、温位の鉛直分布から求めた高さを比較する統計値として設定しております。
 10ページに移りまして(3)、計算値で設定する統計値はWRFモデルによるPBL高さというもので、PBL高さもLid高さと同様、主に温位の鉛直分布から算出した統計値になります。ただ、今回用いたモデルでは温位の鉛直分布と乱流エネルギーからPBL高さを求めております。ただし、重みづけの割合は温位の鉛直分布による算出値のほうが大きいということは確認しておりますので、Lid高さとPBL高さの比較をすることでモデルの再現性を検討することができると考えております。
 (4)、測定値と計算値の比較ということで、散布図を図1-7に示しました。これによると、相関係数は0.64であり、測定されたLid高さは概ね再現していると考えられます。ただし、Lid高さが500m以下の場合はPBL高さが過大となる傾向が見られており、オキシダントの再現性に影響を与えるのではないかと考えております。
 続いて、11ページになります。ここでは大気質モデルの精度検証ということで、関東と九州領域を対象に、大気質モデル(CMAQ)による計算値と測定値を比較し、シミュレーションによる大気汚染物質の再現性について把握することを目的としております。
 解析方法といたしまして、関東領域は東京都杉並区久我山、さいたま市衛生研究所、群馬県太田市の中央小学校について、九州領域につきましては山口県山口市の環境保健センター、福岡県福岡市の福岡市役所について解析いたしました。O3、PO、NO、NO2、NOx、NMHC(非メタン炭化水素)につきまして、計算値と測定値の経過図及び散布図を作成しております。NMHCについては、CMAQの計算物質に対して表1-2に示したような係数を乗じてNMHC相当量の値としております。  解析結果ですが、関東領域、九州領域の5地点のうち、2001年の杉並区久我山と福岡市福岡市役所を対象に、図1-8~1-11に経過図を示しております。
 12ページを見ていただくと、2001年関東領域の東京都杉並区久我山において、7月22日あたりですが、非常に高濃度になる時間帯も見られております。全体的にO3濃度は計算値がやや過大になる傾向があります。一方、13ページを見ていただいて、NOxのほうは計算値が過小となる傾向が見られ、NMHCもNOxと同様に計算値が過小となっております。
 九州領域については福岡市役所、14ページを見ていただくとわかるのですけれども、関東地方で見られたような200ppb以上の高濃度が計算されるという事例はなかったですけれども、全体的に過大でありました。これら高濃度の要因については、次年度以降に検討する必要があるのではないかと考えております。
 なお、参考資料6に、これ以外の地点として福岡県福岡市元岡という地点を計算しております。参考資料6のページ28~31になります。元岡の地点で見ますとNOx等の過小の傾向は若干緩和されておりますので、個々の地点ではなく地域全体についてトータルで評価する必要があると考えております。
 引き続いてページ16に移ります。精度評価指標(NB、NGE及びMPA)による評価を行いました。O3濃度について昼間、ここでは5時から20時を設定しておりますが、日統計値を算出し、精度評価指標による評価を行いました。なお、この解析では、O3濃度を評価する上で、ある濃度の値以上の事例を対象とするカットオフ濃度というのは設定しておりません。
 結果を図1-12に示しました。また、表1-3に精度評価に用いた指標について整理をしております。16ページの図を見ていただくと、地点別に左からNB、NGE、MPAで、青が2001年、赤が2005年、緑が2010年になっております。この図を見ていただきますと、全地点で2010年の再現性が高い傾向が見られます。これは2010年、緑色の線が0に寄っているということで、NB、NGE、MPAは0に近ければ測定値と計算値の差が小さいという意味を表しますので、2010年は精度がいいという結果が見られております。また、月別では4~6月の再現性が7~8月と比べて高い傾向が見られます。
 地点別ですが、山口市環境保健センターでは2001年9月のデータが特に高く過大となっており、再現性が低いです。表1-3に評価基準の目安という値を載せていますが、これに比べて高い事例が多いとなっております。この理由の1つとしてカットオフ濃度を設定していないことが考えられますが、O3濃度計算値が過大であり再現性が低いということについては、次年度以降、要因について検討する必要があると考えております。
 続いて17ページに移ります。ここでは平日休日別濃度の評価を行いました。解析の目的といたしまして、O3濃度が休日に上昇する現象を週末効果と呼んでおります。これはNOによるタイトレーション効果が要因の1つではないかと考えています。ここでは、シミュレーションによって週末効果が再現されているかを検討しております。
 解析方法といたしまして、2001年、2005年、2010年を対象に、関東領域、九州領域について、平日と休日別に、全日データを対象にO3濃度及びNOxの平均値を算出しております。
 結果を19~20ページに示しております。まず、19ページの上の図を見ていただきますと、図1-13から、関東領域においてはすべての測定地点で平日よりも休日のO3濃度測定値が高い傾向が見られております。この図でいいますと、四角が測定値になります。白が平日で黒が休日です。白い四角よりも黒い四角が上のほうに来ているということで、休日の濃度が高いという測定結果になっております。計算値につきましても、2001年の東京都杉並区久我山を除きまして測定値よりも休日のほうが高いという結果になっておりますが、測定値よりも計算値のほうが過大という傾向が見られます。
 引き続いて図1-14ですが、九州地域のO3濃度測定値については2段目、福岡市福岡市役所、山口県山口市環境保健センターについては、2001年につきましては黒い四角、休日の測定値のほうが濃度が高い週末効果が見られるんですが、2005年以降、明確な週末効果は見られておりません。計算値につきましては、福岡市役所では平日よりも休日のO3濃度測定値が高い傾向が見られるのですが、山口市環境保健センターにおきましては平日のほうが高い結果となっております。
 NOx濃度につきましては、関東、九州ともに休日のほうが低いという結果になっております。
 図1-15、図1-16は昼間の5時から20時を対象に解析したもので、これにつきましても、全日データを対象としたのと同じような傾向になっています。
 引き続いて、21ページに移ります。ここではシミュレーションによる前駆物質の再現性の確認ということで、シミュレーションによるVOC及びNOxの再現性について確認することを目的としております。特にVOCについては、個別成分について計算値と測定値の比較を行いました。
 解析方法は3パターン解析いたしました。1つ目はVOC成分の集中観測結果を対象にした解析、2つ目が環境省VOCモニタリング調査結果を対象にした解析、3つ目は一般環境大気常時監視局の観測結果を対象にした解析です。
 VOC成分の集中観測結果との比較、1つ目ですが、これは解析方法といたしまして2007年8月21~29日に東京都の東陽町で実施されましたVOC成分の集中観測結果を対象に、シミュレーション結果との比較を行っております。VOC成分の測定値は表1-4に示すようなCMAQの気相反応モデルSAPRC99の中で用いられているVOC成分別に分類、集計し、計算値と比較しております。
 続いて、②環境省VOCモニタリング調査結果との比較です。22ページに移ります。この解析では、関東領域及び九州領域におけるVOC成分測定局の測定値を対象にシミュレーション結果の比較を行っております。対象期間は2006~2010年、対象測定局は関東領域は大袋、南千住、足利市役所、九州領域は下関長府東、福岡県黒崎及び橋本局を対象としております。なお、参考資料7の1ページと2ページに観測地点の場所を示しております。
 比較に用いる統計値は、測定値についてはVOC成分が月1回測定されていまして、それが年6回観測が行われていますので、1年に6つの値を平均した平均値を算出しております。また、物質ごとに、表1-5に示しましたように気相反応モデルSAPRC99で用いられているVOC成分との対応によって集計しております。計算値につきましては、VOC成分を測定した月の平均値を比較に用いる統計値として設定しております。
 次に3つ目の解析方法ですけれども、一般環境大気常時監視局の観測結果との比較ということで、関東領域に含まれる全部で363測定局を対象にNOx及びNMHCの全日データを対象として年平均値及び3年平均値を算出し、経年変化について比較しております。
 結果に移ります。23ページを見ていただくと、まず1つ目の解析はVOC成分の集中観測結果との比較ということで、VOC測定値と計算値の比を図1-17に示しました。これは濃度比ということで、計算値を測定値で割ったものですので、計算値が測定値より多いと1を超えるという意味を持ちます。図1-17は、OLE1、ISOPRENE、TRP1、MEOH、ACETといったCMAQの中で扱っている物質につきまして計算値は測定値と比べて大幅に過小でありました。その他の成分の計算値については、測定値に対して大体50~150%という再現性であったということが確認できます。
 引き続いて、②VOC成分測定局の測定データとの比較。ここでは、東京都南千住と福岡市黒崎局の結果を示しております。結果を24ページと25ページに示しました。2006~2010年にかけて計算値と測定値の比較をしております。地点によって傾向が違いますが、共通して見られた傾向といたしまして、ALK2(図の左側の上から2番目)及びALK3(右側の上から2番目)及びACET(一番下の右側)、この3つの物質につきましては測定値のほうが濃度は高いという傾向で、①VOC成分の集中観測結果との比較と同じような結果になっております。その他の地点の結果につきましては参考資料7に示しておりますので、ご確認いただければと思います。
 続いて、③一般環境大気常時監視局の観測結果との比較ということで、一般環境大気常時監視局を対象とした、NO、NO2、NOx及びNMHCの年平均値の濃度推移を示しております。図1-20に結果を示しました。左側が計算値、右側が測定値になります。計算は2001~2010年を対象としております。右側の計算値は、黒枠で囲った部分が2001~2010年に対応する部分になります。
 結果につきまして、NOx及びNMHCともに2001~2010年にかけて濃度が低下する傾向が計算値においても再現されておりました。表1-6にNOx及びVOCの濃度低下率を示しております。これによりますと、NOx、NMHC両者につきまして、濃度低下率としては計算値、測定値ともに同様の低下率を示しております。ただし、濃度の絶対値について計算値は過小評価となっております。
 既報によりますと、NOの計算値は測定値の10~60%程度、NO2の計算値は測定値の10~70%程度という報告があります。また、別の研究では、NOにつきましては測定値の50%、NO2の計算値は測定値の90%とした報告もありますので、それらと比較すると、本解析のNO、NO2、NOxはやや過小であると考えられます。
 続いて、27ページに移ります。光化学オキシダント濃度長期トレンド再現性の検証です。昨年の調査検討会で検討した新指標による統計値を用いて、シミュレーションによるO3濃度の長期トレンドの再現性について確認することを目的としております。
 解析方法は、格子間隔10km及び格子間隔60kmの2つの計算値を対象に実施しております。それぞれの解析方法を以下に示しました。
 格子間隔10kmの計算値を対象にした場合の解析方法ですが、関東領域につきましては363の測定局、九州につきましては山口、福岡の66測定局を対象に、新指標の統計値を算出し、平均することで経年変化について検討しております。
 格子間隔60kmの計算値の場合は、60kmは間隔が広いですので、関東領域及び九州領域が含まれる計算格子のデータを対象に新指標による統計値を算出し、経年変化について検討しております。
 なお、日最高8時間平均値の暖候期98パーセンタイル値、新指標と呼んでいるものの算出方法は、昨年度の解析と同様、以下に示す手順で算出しております。
 それでは結果に移ります。28ページを見ていただきたいと思います。格子間隔10km及び格子間隔60kmの計算値を対象に、新指標の域内平均値について、測定値を対象にした解析結果と併せて、図1-21は関東領域、29ページの図1-22は九州領域の結果を示しました。なお、昨年の調査検討会において、年間の99パーセンタイル値は暖候期の98パーセンタイル値とほぼ等しいことが確認されていますため、測定値は年間99パーセンタイル値、計算値につきましては暖候期98パーセンタイル値を比較しております。
 図1-21及び1-22より、10kmの格子による計算値を対象にした解析では、関東領域及び九州領域ともに新指標による統計値が減少する傾向が見られております。一方、60km格子による計算値を対象にした解析では、関東では(2003~2005年)~(2006~2008年)にかけて横ばい、九州は(2003~2005年)~(2005~2007年)にかけて増加し、それ以降減少するという傾向になっております。時間のずれがあるものの、10km格子よりも60km格子による計算値のほうがO3濃度のトレンド再現性が高いのではないかと考えられます。
 続いて30ページに移ります。ここでは10km格子と60km格子のO3濃度再現性の比較を行いました。解析の目的は、格子間隔の違いによってO3濃度の再現性がどのように変化するのか把握することを目的としております。
 解析方法といたしましては、東アジア領域(格子間隔が60km)、及び関東領域(格子間隔10km)のCMAQの計算結果を対象に、杉並区久我山、さいたま市衛生研究所、群馬県太田市立中央小学校に該当するメッシュデータを抽出し、経過図を作成するとともに、昼間のデータを対象に日統計値を算出し、精度評価指標による評価を実施しました。
 経過図を31ページ及び32ページに掲載しております。この結果を見ますと、図1-23より、東京都杉並区久我山の相関係数については10kmのほうが若干よい結果となっております。時間データを図1-25、33ページに時間別の平均値を算出していますが、これを見ますと、上が杉並区久我山、下が群馬県太田市立中央小学校で、左が60km、右が10kmで、点が測定値、線が計算値になります。色の濃い点がO3で色の薄い点がPOとなっています。60kmの杉並区久我山のデータを見ますと、夜間にかけて計算値(黒い線)が低いところまで下がっているという傾向が見られます。これは東京都杉並区久我山について見られる傾向で、太田市立中央小学校については見られておりません。
 また、図1-26について評価指標による評価の結果を載せております。これら3地点の評価結果から総合的に判断すると、10kmより60kmのほうが再現性が高いという結果になっております。ただ、一番下の右、群馬県太田市立中央小学校のMPAのグラフを見ますと10kmのほうが再現性の高い結果も見られることから、10kmの精度の検証についてはさらなる検討が必要であると考えております。
 続いて34ページに移ります。ここではMOZARTの精度評価を行いました。東アジア領域の境界値として使用しているMOZART(全球モデル)の再現性を確認することを目的としております。
 解析方法といたしましては、MOZART(全球モデル)のバリデーション対象地点として、人為起源の大気汚染物質の影響が小さいリモート局、図1-27の観測局を設定しております。対象物質はO3で、計算値及び測定値とも全日データを対象として月平均値を算出しております。なお、MOZARTのデータの格子間隔は大体2.5度から3度であるため、バリデーション対象地点のデータは内挿計算によって求めております。
 35ページに結果を示しましたが、参考にCMAQのO3濃度の計算値も示しております。解析結果を図1-28に示しました。これで見ますと、小笠原、隠岐、辺戸岬、与那国の地点について2003~2010年について測定値とMOZARTの濃度及びCMAQの計算値を示しています。
 着目すべき点といたしましては、測定値(□)と点線のMOZARTの位置関係になります。これを見ますと、小笠原(一番上のグラフ)につきましては、測定値と点線で表したMOZARTの関係が比較的良好であるというふうに読み取れます。ただ、隠岐、辺戸岬、与那国については、測定値とMOZARTの値はあまり再現性が高くないという結果になっております。
 小笠原については、MOZARTの格子間隔が広いですけれども、人為起源の影響を受けない地点、メッシュに陸地等が含まれない地点であることにより、精度がいいと考えました。その他の地点につきましては、メッシュの中に陸地等が含まれ、人為起源の影響を受けるため精度があまりよくないのではないかと考えております。
 続きまして36ページにまいります。ここではMOZARTのデータについて2007年を境に使用するデータが異なっております。2001~2010年のO3濃度の長期トレンドを把握する上で、シミュレーションに用いるデータは連続性を持ったものであることが望ましいと考えますので、2007年を境に使用するデータが異なっている点について、東アジア領域の境界の値に着目して、連続性について確認いたしました。
 解析方法ですが、2005~2008年の期間を対象に、計算で実施いたしました東アジア領域の境界に沿ったMOZARTのデータを対象にO3濃度を抽出し、月平均値を算出しております。東アジア領域の境界といたしましては、西が東経100度、東側が東経150度、南側が北緯20度、北側が北緯50度になります。MOZARTのデータは格子間隔が広いため、内挿によって境界に沿ったデータを算出しております。
 ここでは代表として、日本への影響が大きいと考えられる領域の西側と南側の結果を図1-29と図1-30に載せております。図1-29の見方ですけれども、線が4つありますが、2006年以前が実線、2007年以降は破線で表しております。2006年と2007年でデータが異なっていますので、連続性を見るためには破線と実線が同じような場所にあるかを確認することになります。縦軸はO3濃度になります。黄色で色をつけた部分は日本が位置する北緯30~40度の部分になります。
 これを見ますと、領域の西側、図1-29より、北緯30~40度のO3濃度は2007年度以降で破線の位置が実線と比べて上に移動している傾向が見受けられます。これは濃度が高くなっていると判断できます。その大きさとしては10ppb程度と読み取れます。また、図1-30を見ますと、領域の南端では、日本が位置するのは東経130~150度ですが、破線と実線であまり差がないと判断できます。O3濃度は2007年以降顕著な変化が見られていないという結果になりました。
 引き続いて、ページ39、東アジア領域におけるバリデーションということで、海外地点の追加です。第2回検討会までは国内の地点を対象に東アジア領域のバリデーションを行ったんですが、海外地点を追加して行っております。また、海外地点は標高が高いところに測定地点がありましたため、データの抽出につきましては、地上第1層目ではなく、該当する標高の位置するモデルの中の層のデータを対象としております。
 対象としたデータは、図1-31を見ていただいて色をつけた地点になります。中国が泰山、華山、黄山、台湾のルーリン、日本は標高が高い地点で八方尾根になります。それぞれ中国の地点の特徴ですが、泰山はエミッションの非常に多いところ、華山と黄山につきましては多いところの西の際付近にあるということがわかります。
 42ページに結果を示しております。ここでは代表として八方尾根と泰山の結果について示しております。測定値と計算値を比較しますと、経過図で見ますと再現性はそれなりにあると考えております。ほかの地点につきましては参考資料9に示しておりますのでご確認いただければと思います。
 さらに、43ページになるんですけれども、この八方尾根と泰山につきまして測定値の月平均値及び計算値の月平均値を比較して載せております。まず、上の図は測定値が丸(○)、計算値が黒い線ということで、○と黒い線が近寄っていれば再現性がよいという意味になります。さらに下の図ですけれども、測定値は丸(○)、計算値は線ですけれども、年によって色を変えております。下の色つきの図を見ますと、八方尾根につきましては、4月5月6月は点のほうが上にあって線が下にあるということで、測定値のほうが高いという結果になっております。泰山につきましては、測定値と計算値がほぼ同じような場所にあるということがわかります。泰山につきましては6月にO3濃度が高いという傾向が見られるのが特徴ですけれども、計算によってこの特徴が再現されていると考えます。
 続いて、44ページですけれども、計算値及び測定値の3カ月平均値及び暖候期の平均値を一覧で載せております。これは第2回検討会でも掲載した資料ですが、今回新たに追加した地点を付加してもう一度掲示しております。これで見ますと、今回付加した地点ですが、45ページの泰山につきましては比較的測定値と計算値の対応がいいですが、ほかの地点につきましてはばらつきが見られます。ばらつきが見られる要因ですけれども、欠測が多い地点につきましては統計をする際にその値が小さくなってしまうというのもありますので、それがこの図に書いたときに差が大きくなっている原因の1つでもあります。
 図1-35を見ますと、利尻、小笠原、辺戸岬については、高濃度になる4~6月、赤色のO3濃度の再現性は比較的良好であることがわかります。夏季(緑)においてはO3濃度を過大評価しているという点、図1-35の上から2番目の右の隠岐においては計算値が過大になっている点などは、既存の調査結果と同様の傾向であると考えます。
 引き続いて46ページに移ります。ここでは植物起源VOC排出量の経年変化を確認しております。植物起源VOCは気象の影響を受け、排出量が変動することが考えられます。本解析では植物起源VOC排出量の経年変化について把握することを目的としております。
 方法といたしましては、シミュレーションにおける植物起源VOC排出量の総量を集計しました。
 解析結果を図1-37に示しております。2001~2010年において年による変動が見られることが確認できました。植物起源VOC排出量の年変動は、2001年を基準とすると、最大で2010年が1.2倍、最小で2009年が0.7倍となっています。  続いて47ページに移ります。ここでは不確実性の検討ということで、植物起源VOCの不確実性の検討について検討しております。これは、植物起源VOCがO3濃度に与える影響を検討することを目的としております。
 解析方法ですが、異常年検定で標準年として判定された2009年暖候期を対象期間として、東アジア領域及び関東領域において植物起源VOCの排出量を2倍及び半分にした条件でシミュレーションを実施し、O3濃度がどのように変化するかを検討しました。検証地点としては、東京都杉並区久我山、さいたま市の衛生研究所及び群馬県太田市立中央小学校を設定しました。
 結果を48ページの図2-1に示しております。図の見方ですが、植物起源VOCを半分にしたものが赤、2倍にしたものを青、変化させていないものは黒となっております。図が重なってわかりにくいですので、2段目にO3濃度の濃度差ということで、変化させたものから基準のO3濃度を引いたものを載せております。これを見ると、青が上に来ておりまして、赤が下に来ています。青がBVOCの濃度を2倍にした場合から1倍を引いたものですので、2倍にした場合にO3濃度が高くなるという結果になっております。また、逆に半分にした場合はマイナスの側に赤が出ていますので、半分にした場合O3濃度が低くなるという結果になっております。
 続いて、49ページ、図2-2を見ていただいて、O3及びPOの濃度差を地点別、月別に整理しております。これを見ますと、濃度差は植物起源VOCを変化させた場合から基準値を引いたものになります。まず、植物起源VOCを2倍にした場合、O3濃度は一番左上の月平均濃度は赤の衛生研究所が一番上に来て、大体+4がピーク、8月が+4ppb程度になっております。一番低いのは中央小学校の青で3.8ぐらいになっております。植物起源VOCを0.5倍、半分にした場合は、上から3番目の左のグラフ、マイナスの変化になります。変化の幅が大きかったのは赤の8月、衛生研究所が-3.7ぐらい、緑の杉並区久我山が-3ぐらいとなっております。
 これを見ますと、8月は変化が一番大きいですが、地点につきまして特徴がありまして、中央小学校(青色)の変化量が小さく、さいたま市衛生研究所(赤色)の変化量が多いということがわかります。このことから、地点によって植物起源VOC排出量を変化させた場合のO3濃度に及ぼす影響の大きさが異なることが示唆されます。
 50ページですが、暖候期について計算しておりますので、98パーセンタイル値を算出することができます。98パーセンタイル値を植物起源VOCを2倍にした場合及び半分にした場合で算出し、1倍の場合とどれぐらい変化するかを見てみました。表2-1を見ていただきますと、東京都杉並区の場合ですと、1倍の場合、日最高8時間値の暖候期98パーセンタイル値は97ppbだったのですが、2倍にすると107、半分にすると86ということで、2倍にした場合+10、半分にすると-9ぐらいの変化になるということがわかります。他の地点につきまして、さいたまですと2倍にした場合+12、半分にした場合-12、群馬県太田市立中央小学校ですと2倍にした場合12、半分にした場合-10という変化があることがわかりました。
 続いて51ページに移ります。ここでは未把握VOCの不確実性の検討ということで、解析の目的といたしまして、シミュレーションによって把握し切れていないVOCの個別成分について、濃度不足分をモデルに反映させた場合にO3濃度がどのように変化するか把握することを目的としております。
 解析につきましては茶谷さんの方法を参考に行っております。具体的には下に示すような①~⑥の手順で行っております。資料にミスがあります。①~⑥と数字を打っているんですが、②の部分は改行が入っていまして、①の一番最後の部分、「成分測定値について、」という部分につながります。「成分測定値について、表2-3に従って」になります。②を消していただいて、③以降を②に振り直すことになります。②が「集中観測と同じ期間の大気質シミュレーションを実施する」になります。申しわけありません。
 解析方法は、VOCの集中観測を行った日のうち南風が卓越していた2007年8月21、22、26、27の日中を解析対象期間とします。このとき取得したVOC成分の測定値について、52ページに示しました表2-3に従ってCMAQの気相反応モデルSAPRC99で用いられているVOC成分別に濃度を集計しました。これと同じ時期のシミュレーション結果をもとに、測定値と計算値を比較しております。②のシミュレーション結果と①の集計結果から、計算値と測定値のOHラジカルとの反応速度定数と濃度の積及び計算値と測定値の濃度比を算出します。計算値と測定値の濃度比を発生源データ及び境界値データに反映させ、再度大気質シミュレーションを実施しO3濃度よりkOH濃度を算出し、当初の計算と比較してこれらがどのように変化するかを検討しております。
 52ページに移ります。解析結果ですが、図2-3、計算値と測定値の濃度比を算出しております。これは先ほど1.3.3で掲載した図と同じ結果になっております。そこに書きましたOLE1、ISOPRENE、TRP1、MEOH、ACETの計算値は測定値と比べて過小、その他の成分の計算値は測定値に対して50~150%程度であったとなっております。
 これら得られた濃度比から、53ページに示しましたように、濃度比の逆数で係数を算出いたしました。例えばALK1の場合ですと計算値を測定値に合わせるためには1.1倍濃い条件で計算すれば計算値と測定値の条件が同じになるという意味合いになっております。それぞれ、モデルに対して係数を掛けて測定値と同じ条件で再度計算を行うことでO3の濃度がどう変化するかを解析いたしました。
 解析結果が次のVOC濃度比反映後のO3濃度の算出という項目になります。凡例が不足しておりますので説明いたします。四角(□)が測定値になります。黒が実測のVOC濃度反映前の値、赤が反映後の値になっております。着目点といたしまして、反映前(黒)が反映後(赤)に変化したということになっております。図2-4より、VOC濃度比を反映した場合、O3濃度は期間を通じて高くなる傾向が見られました。これは黒より赤のほうが上に来ているということです。特に8月26日は150ppbから270ppbということで非常に高くなっております。
 茶谷さんの解析結果と比較すると、濃度が全体的に高い傾向は見られるのですけれども、濃度の変化については同様の傾向が見られております。
 続いて、54ページに移ります。ここでは越境汚染の寄与の変化について解析しております。目的といたしまして、国内のO3濃度における東アジア大陸由来の寄与の割合の変化を算出し、越境汚染の影響の程度を解析することを目的としております。
 解析方法は、九州、阪神、東海、関東を対象としております。地点といたしまして、福岡市役所、大阪市の国設大阪、名古屋市の国設名古屋、東京は杉並区久我山で解析いたしました。表3-1に示すような条件を設定して計算をしております。ケースAですけれども、東アジア大陸の大気汚染物質排出量を2001年、国内を2009年、気象場を2009年、ケースBは東アジア、国内、気象場とも2009年を対象にしております。使用した東アジア領域のインベントリデータでは、東アジア大陸における大気汚染物質排出量は2009年のほうが2001年より多いという設定になっております。
 ケースA、ケースBで計算した結果を、55ページの図3-1に示しております。福岡市役所の結果を掲載しておりますが、測定値が青、ケースBが赤色、ケースAが緑色になっております。図が重なって変化が見にくいので、2つ目にケースBからケースAを引いた値を経過図にしております。ケースBからケースAを引いた値が正ということは、2009年のO3濃度のほうが2001年の設定した濃度よりも高いという意味合いになります。
 この傾向は4地点ともに見られた傾向で、56ページの図3-2に月平均濃度と日最高値の月平均濃度について地点別にまとめております。これを見ますと、福岡市が赤色ですけれども、赤色は最も濃度差が大きい。濃度差というのはケースBからケースAを引いたものです。福岡市役所の濃度差が大きく、国設大阪、国設名古屋、杉並区久我山は福岡に比べると小さいという値になっています。
 越境汚染につきましても暖候期を計算しておりますので、98パーセンタイル値を算出いたしました。56ページの表3-2を見ていただくと、ケースAにつきまして福岡市福岡市役所におきましては98パーセンタイル値88ppbでしたが、ケースBにおきまして102ということで、+14増加になっております。その他、大阪、愛知、東京につきましては+6、+5、+5ということで、福岡に対する影響が大きく、大阪より東の地点については98パーセンタイル値で評価するとあまり差がないという結果になりました。
 57ページですが、格子間隔の差、5kmと10kmによる濃度再現性の評価を行っております。ここでは、検討会及び作業部会で格子間隔5kmによる計算が必要ではないか、それはタイトレーション効果の影響などを見るのに10kmでは再現性の点でちょっと懸念があるという意見をいただきましたので、この解析を実施いたしました。
 解析方法といたしまして、異常年検定で標準年として判定された2009年暖候期を対象期間としております。5kmの計算を行うに当たっては60km格子及び15km格子の計算を実施しております。また、オキシダント濃度を比較できるように、インベントリは5km、15km、10kmともに共通のものを用いております。15kmと5kmの計算に使用したインベントリは過去の環境省調査で整備したものであります。検証地点として、東京都杉並区久我山、衛生研究所、群馬県の中央小学校を設定しております。
 解析結果を59ページの図4-1に示しました。これを見ますと、測定値が青、5kmの計算値が赤、10kmの計算値が緑で示しております。これにつきましても、5kmの計算値から10kmの計算値のO3濃度を引いたものを2段目の図に示しております。これによると、時間によって大体最大+20~-20程度差が生じるということがわかります。
 60ページになりますが、図4-2の評価指標による再現性評価を行いました。これはNB、NGE、MPAそれぞれ算出しておりまして、0に近づくほど精度が高いという結果になっております。これを見ますと、それぞれ赤と青がほとんど重なっておりまして、明確な差は見られませんでした。
 図4-3は時間別平均値を示しております。この解析の意図ですけれども、一般に格子間隔を細かくすると濃度分布にめり張りがつくこと、また、オキシダント濃度についてはNOタイトレーション効果の再現性が向上し、夜間~早朝においてO3濃度が低下することが想定されるということで、こういう解析を行いました。夜間~早朝においてはO3濃度の低下が見られず、NOタイトレーションの再現性の差は不明瞭であるという結果になっております。
 格子間隔の違いによるO3濃度の再現性について他の文献を調査いたしました。これによると、米国北カロライナを対象とした計算の場合、4kmと12kmで計算結果は大きく変わらない報告がありました。大阪を対象とした計算の場合は、格子間隔が小さくなるにつれて精度がちょっとずつよくなっていくという報告がありました。また、丹沢山地を対象としたオゾンの挙動解析を行った結果、丹沢山地では15と5kmで再現性はほぼ変わらないという報告がありました。以上で説明を終わります。

秋元座長 ありがとうございました。それでは、これまで委員からいろいろコメントを出したことに対して再計算していただいたりして、ある程度の答えが出てきたわけですが、はっきりしたところもあるし、余計に問題が浮き彫りになったところもあると思います。一応これは順番に行きたいと思うので、これはこれでいい、ここはどうしたらいいかというようなコメントをいただきたいのですが。
 まず、WRFの検討、気温、風速、風向、ここについて何かご意見はありますでしょうか。

浦野委員 資料2の一つ一つのコメントはまた後で言うとして、資料1で作業部会の検討項目というのが①から⑥まで挙げられていますね。これは結果だけ出ているんですけれども、シミュレーションの条件であるとか、インベントリデータをどういうふうに整理したのかとか、そのほか影響因子とか、そういうものは資料2には何も書いていないように思うんですが、どうしてですか。資料2にこの条件などの作業部会の検討結果がある程度、簡潔にでも示されていないと、この結果だけ見ても判断できないですけれども、それはどうしてですか。せっかく検討会での検討項目が挙がっているので、それについて当然記載がないといけないと思うんです。

事務局 検討会作業部会に対する回答という視点での書き方ではないので。

浦野委員 せっかく検討会が何回も開かれて、専門の方が詳しく検討して検討項目をこれだけやりましたと資料1に書いてあるわけだから、この検討会の検討項目について、ある程度の要点が書いたものがないとおかしいのではないか。それがなくて結果の細かいところだけ議論しても、いいのか悪いのか全く判断がつかない。シミュレーションによる解析というのは絶対に現実と合いっこない。これは大前提ですからね。その範囲で、こういう条件でこの程度のことをやったら、こういう結果が出たということを見ていかなければいけないので、前提条件とか最終的な結論がわからないで、細かな計算の細かいところだけ言っても何も判断できないですよね。
 前から同じことを繰り返しているのだけれども。細かい計算を一生懸命やるのはすごく大変だし、努力されているし、それはトライしなければいけないことだけれども、問題点は山ほどあるわけで。それに対してちゃんと答えられないと、細かな計算値だけ細かいグラフを出してもどうしようもない。それより大事なことがあるのではないですか。

事務局 シミュレーションの条件については参考資料14に。

浦野委員 これでは全然わかりません。

秋元座長 浦野さんのコメントの中ではっきりしなければいけない部分と、この資料でお答えになっている部分もあると思うんですね。例えば最初のモデルのバリデーションを適切に実施するということについて、モデルのバリデーションのうちのまず気象データについてのバリデーションをやりましたというのが最初の4~7ページかな。ものによっては、これを見てこの程度でいいというふうに作業部会のほうで判断していただけるかどうかという判断のできるものもあるし、浦野さんのおっしゃるようにもっと細かいいろんなことをきちんと把握しないと答えになっていないというところもあるかと思うんです。総括的なところは事務局のほうで心にとめておいていただいて最終的にはそれをきちんとすることにして、この場ではそれぞれの2~6の作業部会からのコメントに対して検討会がどう判断されるかというご意見をまず伺いたいと思います。

浦野委員 参考資料14は、シミュレーションの計算プログラムをこのように動かしましたという動かし方は書いてあるんですよ。だけど、シミュレーションをする上でいろいろ仮定・前提とかデータがあるわけではないですか。それがどういう根拠のどういうものであるかということが何も書いていない。
 シミュレーションは今まで研究者が皆さん頑張っておられて、この検討会の方も頑張っておられるので、かなり一生懸命やっておられるのはわかる。それでこういうもので計算ができるということはわかるんです。それを具体的に、例えば排出インベントリのどういう数字をどういうふうに使って計算したのかとか、植物由来のVOCは海外のことも含めてどういう前提でやったのか、そういう条件が何も書いていないわけですよ。こういう計算はできますということは書いてあるけれどもね。計算の前提や条件等がわからないと評価ができない。
 シミュレーションの条件と書いてあるが、条件の意味が少し違うと思うんですよ。実際に現場の測定とか管理している人から見れば、こういうシミュレーションモデル、こういう解析データを使いましたと言っているけれども、例えば各地域の元データでなくて、各地域のVOCの排出はどういうふうに推定したかとか、植物由来のVOCはどういうふうに求めたのかということがどこにも書いていない 。

秋元座長 今の浦野さんのコメントの多くの部分は、恐らくこれまでの検討会において出されたのではないですか。どういうエミッションインベントリを使ってどういうふうにしてというような、そういう基礎情報は。

浦野委員 概略の話でなくて、具体的な計算をする上で地域ごとにどういうふうにしたか、どういう数値を使ったかなどです。

秋元座長 第1回目の検討会を失礼してしまったので詳しく見切れていないですが、その辺のところが第1回目のときにどの程度まで出されたか、大原さん、浦野さんに対する回答も含めてコメントをいただけますか。

大原委員 わかる範囲内でお答えしたいと思います。基本的に、シミュレーションにかかわるモデルあるいはデータあるいはパラメータ等については、第1回あるいは第2回の検討会の資料で出されていたと思います。
 ただ私も、これは第3回の検討会でありますので、それらをまとめたような形できちんとこの場でご報告するのが筋ではないかと思います。今日は残念ながらその資料がまとまったような形はありませんが、今日は第3回目の最終回ですので、その資料がないと議論が進まないということであっても困ると思いますので、ここは収めていただいて議論を進めていただくのがよろしいのではないかと思います。僭越ですが。

秋元座長 ありがとうございます。確かに、今回最初に申し上げたように、今年度は検討会としての報告書は出さない。委託先からの業務報告だけなので、検討会としてもあまり細かいところまで責任を持つということではないですが、今言われたように全体のものが資料として今回ついていてもよかったなというのはあります。大原さんから言っていただいたように、議事進行ということもありまして、今日の資料の範囲内でご議論いただいて、また最後に来年度どうするかというところでその辺に戻ってお願いできればと思います。
 戻りますけれども、4ページから7ページの気象条件、WRFのバリデーションに関してはどうでしょうか。専門の方、この程度ならいいということでよろしいでしょうか。東京と福岡と比べると、東京のほうがよくて福岡のほうが偏差は大きいですが、この辺はそういうものなのでしょうか。福岡のほうが風向、風速などが合いにくいという理由は何かあるのでしょうか。どなたかモデルの経験のある方、若松さんか大原さんか井上さんか、WRFに関しては何かございますか 。

井上委員 別の点ですけれども、WRFで日射量の結果を作業部会のときに出していただいたんですけれども、それによるとかなり過大評価になっていたと思われまして、その辺のところはどのようにお考えなのかなと。

秋元座長 そうですね。今回の資料からそれは省いているので、それも含めてお答えください。

事務局 日射につきましては、過大になる傾向がみられましたので、その原因について調べている最中です。WRFの計算結果といたしましては過大気味になるという傾向はあるのですけれども、設定条件を変えることによって、精度向上が図れる可能性があるのではないかと考えています。

秋元座長 日射の点は確かに非常に重要ですね。日射の中でも特に紫外部の光ですが、それが光化学の直接のトリガーになるわけだから、そこがもし実測に比べて過大評価ということになると、O3の後のほうの過大評価の原因がそれではないかというような話にもなってくるので、そこはこの後も含めて精査しておいてください。今日には間に合わなかったと思いますけれども。
 それ以外、風についてはよろしいでしょうか。九州のほうが悪いのは気になるけれども、特になければ。
 次の8ページ目、気象庁のデータが2008年から変わったんですか。それによってこれだけの差が出てくるので、特にトレンド解析をやる場合それはよくないのではないか。前のやり方をそのまま踏襲したものをむしろ使ったほうがいいのではないかというコメントが前回あったと思います。それはそういうことでよろしいでしょうか。作業部会のほうでは、このデータを見ていただいた上で、ここで変えないで前の2001年から2007年までの気象庁のデータ、解析手法のものを使ったほうがいいと判断されますか。

大原委員 参考資料4にリストがあって、先生はそれをごらんになられてのご発言かと思いますが、参考資料4の表1、2~3ページ目にA3の大きい表があります。この中に作業部会で、この検討会で指摘されたことも含めてですけれども、さまざまいただいたコメントに対応する形でここに書いてあります。今のご指摘の点は上から3番目でありまして、右側のほうの対応方針に▲が書いてありますが、基本的には今年度は対応できないので次年度以降に対応する。ただし基本的には、先ほどの報告書の8ページにあるように、不連続性が著しいのでこれはまずいだろうと。統一する方向にすべきだと。具体的にどういうふうに統一するのかということまでは結論に至っていませんけれども、場合によっては2007年以前の方法と同様な方法で、2008年以降も計算するというのはあり得るのかなと思います。

秋元座長 ありがとうございます。来年度計算するときに、そこは作業部会とも意見を合わせた上でお願いしたいと思います。  その後の、混合層高度の検証。図1-7、この程度で。

若松委員 5日間5回のデータの25個のプロットがあるんですけれども、日によって差はなかったですか。これは朝の5時から18時まで5日間全部書いているのですけれども、作業部会ではもっと詳しくやったと思いますが、日によって合う日と合わない日はなかったでしょうか。

事務局 解析不足で日によってまでは細かく見ておりません。すみません。

秋元座長 よろしいですか。ここは何か改良する余地があるのですか。それともこんなものというふうに認めるのか。モデルをやっている方でないとその辺の判断はつかないので、特にコメントがあれば。

大原委員 大ざっぱに言って、こんなものなのかなというのが率直なところです。

秋元座長 今まで皆さんがやっておられたのとそう大幅に違わなければこんなものでいいし、極端に悪ければ何とかしろという話になると。

大原委員 はい。Lid高さは定義すること自体が難しいというかばらつきが大きいこともありますし、モデルがきちんと再現していたとしても、ばらつきとしてはこのくらい出てもしょうがないのかなと。
 一般的には、CMAQで計算される混合層の高さが過大気味になるというのは定性的にこれまで言われていることでありますので、そういう意味では整合するように思いますが、詳しくはわかりません。

浦野委員 シミュレーション関係をやっている方がこの程度はやむを得ないと言うのは私も理解はできるんですけれども、ただ、やはりこの高さが大きく変わると数字も変わってくるので、極端に外れているところについては何らかの考察をして、何らかの条件を変えて解析をしたら対応するようになると。ただ数を並べて相関係数R2=0.4と言われても、0.4でいいのかと誰もが思うわけなので。やはりもうちょっと努力されて、今後でいいですけれども、大きく外れているものについてのコメントなり、あるいは違う解析をしたらもう少しよくなるなり、何か必要だと思いますけれども。

秋元座長 どういう場合にうんと外れるかぐらいのところは押さえておいたほうがいいでしょうね。

浦野委員 シミュレーションはこんなものだからしょうがないという部分もあるけれども、R2=0.4だからいいですと言われても。

秋元座長 よくわかります。ただ、前にJAMSTECにいたときに境界層モデルというのは幾つかのモデルがあって、それを変えたらばどのぐらいよくなるかというのをやったことがあったんですけれども、ほかに変えてもあまりよくならないんですね。そういう意味ではある種、現状の限界なのかなという気もします。弁護するわけではないけれど。
 ただ、いま言われたように、うんと外れるときがどういうときなのか、そういうときはどう扱うか、その辺は見直しておいていただければと思います。
 それでは、時間もあれですので次へ行きたいと思います。次の大気質モデルの精度検証でNMHCやVOCに対するところ、ここについてご意見はございますか。

竹内委員 私が前回の会議の結果を勘違いしているかもしれないですけれども、前回、NMHCも検証する必要が大きいという話のときに、測定局で項目をもう少し考えるべきではないかという話があったので、対象の測定局を変えるのかなという気もしていたんです。今回対象になっている、例えばさいたま市の衛生研究所はNMHCを測っていない局なんです。参考資料のほうを見ても、今回の対象の半分か半分以上がNMHCを測っていないところを対象にしていらっしゃるので、NMHCを検証しようという場合にもったいないなという気がしました。

秋元座長 今おっしゃったのは、後のほうのオゾンのデータの比較に出てくるところがNMHCを測っていないという意味ですか。

竹内委員 そもそもその測定局でNMHCを測っていないので。

秋元座長 杉並とかここに出ているところは測っていますよね。

竹内委員 そうです。本体に出ているのは測っているところですけれども、参考資料のほうではほかにも幾つか。

秋元座長 参考資料のほうですか。事務局は何かありますか。

竹内委員 例えば、中央小学校とか山口の環境保健センターもNMHCを測っていないのではないかと思うんです。

事務局 今後の追加の解析でNMHCを測っている点についても検証を行います。今回はO3とNOxの点でしか見ていませんでした。

秋元座長 ほかに。

浦野委員 この章ではなくて先で言おうかと思っているんですけれども。後ろのほうでも、前駆物質の再現性の検討あるいは把握できていないVOCの影響、要するにVOCにかかわる何点かの事項が書いてあるんですね。それ自身まだかなり問題が大きいと思っていますので、後ろのほうでまたコメントさせていただきます。
 ただ、11ページのところは、今おっしゃったようにNMHCについてはこういうふうにしたという文章になっています。表1-2の上の文章で、NMHCについてはこれこれに対してこういうふうに算出したというように出ているので、今のお話と合わないという気がします。その辺の扱いもちゃんとされたほうがいいと思います。

秋元座長 ここは10kmメッシュでの計算との比較ですね。

事務局 はい。

秋元座長 私が見てわからなかったのは、23ページの図1-17には、計算値と測定値の比がそれぞれのVOCのカテゴリごとにあって。極端に低いのがOLE1。これはエチレンですか。この中で極端に低いのが幾つかあって、その中で特に反応性のO3に効いてくるものがこんなに低いといろいろ問題がある。だからこの中身が問題なので、OLE1というのは。

事務局 21ページの表1-4です。

秋元座長 主にプロピレンですね。

浦野委員 私もその辺の議論はしたいですけれども、ちょっと先になるので申し上げなかったのですが。53ページに未把握VOCについての検討というのがあるんですけれど、これはすごく問題が大きいですね。未把握と書いてあるけれども、把握されているものの取り扱いも含めて、ここのところは問題が多いと思っています。53ページの表2-4を見ると、係数が10倍を超えているものがものすごくあるわけです。結果を見ても図2-4は大きく違うわけですよ。ここら辺についてもう少し真面目に考えないと、ほかのところがちょっと変わっても、これで全然違う数字になってしまう。
 そういう意味で、先ほど言った計算の前提や条件をしっかり見て、その計算の前提や条件はどこを今後修正したらより良くなるかという議論につなげないといけない。資料3に今後の方針もあるけれども、それにもつながらないと私は思っています。その辺は後でまた申し上げます。

秋元座長 VOCに関してはいま言われたように本質的なところを先に押さえないと、何が高い低いと言っても中身の議論と合わないところがあって。OLE1と、TRPというのはテルペンらしいですが、この辺がこんなに低いというのは後のほうにも効いてきますよね。53ページの表で係数がテルペンは13倍とかプロピレンが7.5倍になるとかそんなことになると、いろいろなものがみんな変わってきてしまうので困るんですが。
 ただ、絶対値から言ったときに、残りのものは大体0.5~1.0ぐらいの間に入っているのが多いですよね、アルカン類などは。トータルとして計算値と測定値の比は、2倍以内ぐらいのところで収まるのではないかなと思うんだけれど、この前だと5分の1になるというような話なので、それとどうもこの辺と合わないような気がする 。

浦野委員 そうなんですよ。非常に大きな問題がここに入っているので。今、その議論をしてもいいかどうかというので、私は遠慮していたのだけれども。

秋元座長 結局、VOCに関しても、個々の問題よりもそういう大きなところが何とかしないと先へ進めないのではないかという印象はあります。

浦野委員 大きなところの前提や条件をしっかり書いて、そこで問題点があれば、そこを今後どう改善していくかという議論にならないと、先ほどの混合高さの問題もそうですけれども、極端なところも放置してこんなものだと言ったらだめですよ。極端なところは何か説明するという努力をしていかないと。

坂本委員 今の話がまさにそうですけれども、計算をして例えば逆数を掛けて合わせるなんていうのは、それは当然合わせられるので。そこで出てきた数値がほかの化学的な測定結果、反応、そういったもの等から考えてどの程度妥当でありそうかという判断をして使わないといけない。いろんなところがこういう計算をしてやったらこうなった、どちらが高かったとか低かったとか。その高かった低かったというのは、どういうものを使ったからこうなったのか。合理的か、それともそこにまた別の要素が含まれているのかとか、そういう判断をしないでやっている部分が多い。
 最終的に委託の報告書がどうなるのかわからないので何とも言いようがないけれども、普通だったら少なくとも目次があって、どういうところでこういうことをして、こうやるから今日はこの部分ですよということになればわかるけれども、11ページに略語が書いてあって、この組成も後になって出てくるような話で。普通だったら、みんなそういうものは最初に出てこないといけないわけですよね。そういうような感じのところが非常にあるなという気がします。
 あと表現ぶりも、例えば9ページだと混合層構造とかそういったものを決めているのに対して、16ページになるとご丁寧に代数はイタリックにして書いている。全体として、最終的な報告書が出てきたときにはかなりきちんとしてもらわないといけない要素がいっぱいありそうな気がします。
 ここで1つだけ具体的に言えば、17~18ページに、2005年以降明確な週末効果は見られないと。では、NOxとNMHCの排出傾向がどう変わったのかとか、そういったものがあってこれを言ってもらわないと、ただ事実だけをこういう計算をした、そしたらこうなりましたという形でやっているだけで、あまりわかるような形にはなっていないという気がしました。全体にそういう印象を持っています。

若松委員 後の議論かもしれませんが、VOCの話になったので、もし検討していただけるのだったら考えてほしいなと思っている点が1つあります。
 非メタン炭化水素の測定値と実測値が大きく合わない1つの理由として、例えば境界条件の設定がどうなっているか気になります。NMHCは0という値になることはそうなくて、ある程度のバイアスを持ったデータが多いです。この辺は竹内さんがよくご存じだと思うんです。ひょっとすると、未把握というよりもむしろベースとして何かあって、それが実測値のほうに出ているのかなという気もします。作業部会のほうでどれだけ検討されたかわかりませんが、VOCの境界条件の影響は検討されたほうがいいような気がするんです。そこを考えるともう少し……。あまりにも今は合わな過ぎるので。
 秋元さんがおっしゃるように、基本的なものは0.5とか1の間に入っているので、ひょっとすると測定値のほうはそういった影響が出ている可能性もあるなという印象を前から持っているので、今後調べていただければと思います。

秋元座長 ありがとうございます。バックグラウンド的なものとかいろいろ問題があると思うんですが、さきほどは反応性の高いものが低いというので、バックグラウンドとも違うのかなという気がしたんだけれど。

若松委員 NMHC系では反応性の高いものはほとんどカウントされていなくて、どこにでもある反応性の低いものがベースとしてあるんだと思うんです。そこのところが量としてはすごく多いので。

秋元座長 ここでは議論できないし、委託先にただ投げ返しても解決しそうもないので、たびたびで申しわけないけれども、作業部会の方にどうするのがいいかをコメントいただきたいと思います。

大原委員 最後の来年度の議題のときにお話ししようと思ったのですが、作業部会にすべて投げるのはやめていただきたいです。作業部会自体もそれほどすごく機能しているというわけではなくて。3回開いて、事務局からこういったことになりましたがどうでしょうかと2時間ぐらいで議論して、ほとんどそれで終わっているという状態です。
 逆に、作業部会のミッションを明確にしていただきたい。もし作業部会に期待されるのであるならば、作業部会の権限をもう少し強くしていただかないと。今は座長も検討会の委員から出していないわけですから、こういったような状況の中ですべてこちらのほうに責任をなすりつけとは言わないですけれども、言われてもちょっと。

浦野委員 その辺の体制の問題はいいですけれど、作業部会でしっかり確認していただきたいことは、先ほどの検討項目と書いてあったことです。例えば、VOCをどういうデータからどういうふうに、NMHCも含めてどういうふうな前提や条件で、どういう形で入れ込んだか。あるいは、当面はこうしたけれども結果によってまた見直すことがあるかもしれないというような、その辺の基本的な考え方のきちっとした表示がないと、どこまでどういうVOCの扱いをしたかというのが全然わからない。基本的な考え方は1回目2回目で議論しているけれども、具体論として、例えば11ページの表1-2にSESQと書いてあるのが、これは大原先生に伺ったのだけれども、後ろの表には出てこないです。後ろの表と順番も全部違うし、OVOCは全くここには出てこない。
 だから、どういう扱いで何をしたのかというのがよく見えないわけですよ。例えば21ページの表1-4、表1-5、あるいは先ほどの50何ページの表、その辺が全然対応していないんです。どこを先に出すか、坂本先生がおっしゃったけれど、最初にきちっと出して、それをどう扱った。それから計算したとなっていないと、何かばらばらに表が出てきている。実測値といっても実測値は反応した後のものを測っているケースが多いわけで、特に植物性のものはですね。それに合わせて無理やり係数を掛けて補正して一体何がわかるのと、誰が見てもそう思うわけですよ。さらっとこうなりましたと結果だけ出ていて、何の考察もない。ここの部分はものすごく大きいので。私もVOCのインベントリをやっている関係もあって、もう少し真面目にうまく扱ってほしい。
 その辺の前提や条件とか、取り扱い方だけを作業部会にお願いして、計算そのものとか、計算の結果は気象協会にお任せすればいいけれど、考え方だけはしっかりお願いしたいと私は思います 。

秋元座長 浦野さんのご意見もわかるし、大原さんの気持ちも十分わかります。これは、今年度はおしまいなので、来年度どうするかという非常に大きな判断だと思います。来年度の作業をどういう形でやるのか、委託の形式も含めて、後でご議論いただくことになろうかと思いますが。

金谷委員 作業部会に出ている人間として一言コメントしておきたいのは、これしか方法がないからというところもあるのですけれども、方向性としては、今できることをやるという点ではおかしくないのかなと私は思って進めているところはあります。ただ、この資料の中で今後どう進めていくかというポイントが見えにくいというところもあります。
恐らく、先ほどのようなVOCのカテゴリごとに何倍かするという方向性をしたときに、坂本先生がおっしゃったことですけれども、それをどう評価していくかという点。NMHCの個々の測定データという点では、竹内さんがおっしゃったことと近いですけれども、これは全国的にある1点の限られた区間のポイントの何倍という係数を全部に当てはめて計算していると思うんです。それによって、全国的なNMHCの観測の分布がちゃんと再現されているのか、行き過ぎなのか、そういった判断材料を踏まえて、ではどうしたらいいかという次のアクションにつながると思うんです。その筋道が見えて、来年何をするという議論ができるようにすればいいということが1つ。
 もう1つ、未把握という項目の中で書かれているのですが、ほとんどは把握されているものの大小関係を見ていると思います。もう1つのポイントは、OHの反応速度定数、反応性を比較して、そこに未把握の分も加味して、それの大小関係がどうだからどうしたほうがいいというポイントになっていくと思うんです。その点は、ベースラインで反応性の低いものが載っているとか、反応性が高いものが見えていないという、先ほど若松先生を中心に議論されていたことと関係してくると思うので、その辺を総合的に持っていくしかないのではないかと思います。方向性はそういうことなのだろうと思います。

秋元座長 ありがとうございます。問題が非常に大きいので、なかなか一言で収めるわけにもいかないところがあるんですが。今日はどこまで延長してよろしいですか。12時半まで延ばしてよろしいですか。打ち切るならば宿題を。

事務局 12時半まで大丈夫です。

秋元座長 12時半までよろしいですか。ご迷惑な方もおられるかと思いますが、それを限度に。もちろんご予定のある方はしょうがないですけれども。これを一つ一つやっていると時間が足りないので、大きいところだけをかいつまんで皆さんのご意見をいただきたいと思います。
 次の、トレンドのところの解析で10kmと60kmとのメッシュの計算をしたら、60kmの計算は昨年度の報告書の観測結果のトレンドと齟齬はないけれども、10kmはトレンドが合わない、一方的に下がりっ放しという結果がありますよね。28ページ29ページでしょうか。その辺はかなり本質的な、今後どういうふうな対策をしたらどちらへ動くかというようなことの議論の前提になると思うんですが。
 この作業は来年度の作業になりますが、どこまで10kmにこだわるのか。5kmというのは、今の段階でそこまでやる必要はどうもなさそうだということですが。10kmにこだわるのか、60kmでリージョナルにやったほうが見通しがいいということになるのか。その辺はかなり大きなところだと思うので、委員の方のご意見をいただきたいのですが。

指宿委員 10kmと60kmを選ぶときに、そういうふうに小さくしたときに何がわかるのかというのが重要だと思うんです。VOCでアルカンとかオレフィンとかで全然合わない。これは反応性の高いものがみんな合っていないということですよね。だとすると、測定値がどれだけちゃんとしたデータが得られているかということになる。例えば60kmでやったって、その中にきちんとした測定局があって、ちゃんとした測定値が出ているというほうが大きいのではないかと思うんです。5kmで何もないところに類推で入れるということで、おまけにその値を計算値と比較して議論することは、方向が違うような気がします。

秋元座長 私も同感です。先ほどの議論にあったVOCがこういう状態で、このときにわざわざ10kmにしてステーションごとの再現精度について議論してみてもあまり意味がないという印象ですが、ほかの方はいかがですか。

大原委員 基本的なスタンスとして、今回は越境汚染と都市大気汚染が重合している現象を追いかけているわけですから、60kmでは都市汚染を再現できないと思うので、10kmを基本にするというのがベースだと私は思います。
 当然、合った合わないという議論はついて回りますけれども、それぞれについて理由があるわけです。その理由が何なのかを明らかにした上で、その議論を進めるというのがやはり大事なのかなと思います。

板野委員 大原先生と同じ意見ですけれども、少なくとも観測されているデータを解析すると、都市とその周辺のごく近いところでの郊外とでは、例えば時間変動パターンが全然違うという現象があります。都市とその周辺との差がちゃんと分けられるようなモデルでないと、都市の対策効果というのは全然見られないのではないかと思うので、私も10kmというのは譲れないのではないかと思います。

秋元座長 60kmでは無理ですか。

板野委員 そう思います。
 その一方で、話が蒸し返しになるかもしれないですけれども。例えば12ページの右側にある一番上の図で、計算値と実測値のオゾンのデータの比較をされていますが、これは10kmでの計算結果だと理解しているんですけれども、高いほうの濃度が計算値のほうでかなり過大に出ていると。これは事務局も問題点として認識されているようですけれども、都市の対策効果を評価しようとするときには、98パーセンタイル値とか高いデータがうまく再現されていないと、対策効果がどうだったかという検証はできないと思うんです。この高いところのデータがうまく再現されていないところは非常に気になっていまして、こういったところがある程度修正されてこないと、かなり厳しいのではないかと思っています。

秋元座長 ありがとうございます。10kmを捨てるわけにはいかないというか、そちらのほうが大事だというご意見もあるのですが、60kmにしろ10kmにしろ、根本的なところが押さえ切れていないのが問題です。
31ページの図を見ますと、青が測定値で、測定値は夜間0に落ちていないんですよね。途中までは落ちていますが。それに対して60kmの格子が0に落ちていて、10kmの格子はほとんど落ちていない。60kmと10kmが逆なような感じですけれども。

浦野委員 今お話があるように、シミュレーションというのは実測と合うわけがないという前提に立っています。では、一体何のためにシミュレーションするのか。例えば、海外からの影響を評価するにはこうだとか、あるいは都市と地方の、あるいは大ざっぱな地域ごとの範囲で何をするべきかが見えるようにする。そのときに海外との関係もあって10kmぐらい、あるいは都市との関係もあって10kmぐらいがいいということであれば、10kmで計算するときにはこういう前提でやったけれども、ここはデータが十分ないとか、あるとか。そういう前提がしっかりしていれば、おかしいところの解釈ができるんです。それが全部、ただ結果だけが並んでいて、相関値がこうでしたというのでは。
 さっきの議論と全く同じことで、最初に私が指摘したんですけれど、それぞれの計算で何のためにどういう前提や条件でやったらこうなったのか。今回でも都市部で高いところが非常に極端に外れているとすれば、それは何が原因なのか、それをどう解釈したらいいかと考えないと、これからも全然改善されていかないです。考えるためには前提や条件の明示が必要です。前提や条件が何もないで結果だけ出ていても、考えることができないですよ。
 その辺を全体としてしっかりやって、作業も大変だけれども、シミュレーションで一体何を明らかにしたいのか。だからこういう前提や条件とした。しかし、VOCはこのぐらいのデータしかなかったから、それをこういう推計にした。それで合わない部分はこういう解釈ができた。こういかないと、先に行かれないと思うんです。

秋元座長 ありがとうございます。浦野さんの言われるようにそもそも論の部分と、31ページはそういうレベルの話ではないんですね。モデルの常識に反するので、別のテクニカルな面で解決するなり何かしておかないと。大きい問題とそのレベルのお話とがごっちゃになるとまた困るのですが、今ここでは答えられないと思いますけれども。
 今日は時間もあれなので総括としましては、10kmと60kmは両方やると。大きなトレンドが60kmで出ているのであれば、そちらを使った解析もする。ただ10kmも、指宿さんからあったように個々の地点で比べても意味がない。都市の代表が何kmなのかというのはありますが、東京だったら何十km、福岡だったら何十kmという都市域を見定めて、そこの10kmでの平均ですね。30kmなら30km、50kmなら50kmというような。東京と福岡を取り上げるのであれば、その辺を取り上げた上で10kmと60kmも一緒にやってみて、どの程度合うか。10kmがそれなりに都市の特徴を表すような形で出てくれないと、私は10kmをやる意味がないと思うんですね。それを確認する意味でも、60kmも一緒にやっていただきたい。

若松委員 もしアウトプットが残っているのだったら、10kmの計算結果を60kmにくくって比べてみたらいいと思うんです。それは再計算する必要はないので、チェックしていただければ様子がわかると思うんです。何がその差を生み出すのか。原理的には、10kmを60km分メッシュを全部足し合わせて平均したら、逆に言えばエミッションのデータがもともと大きいものをブレークダウンしているだけですから合うはずなんです。もしそれが合わないとすると、何か理由があるはずです。それをやってみたらいいと思います。

秋元座長 そうですね。最低限そこは両方の整合性は見ておいたほうがいいと思います。それ以外の部分で何かコメントはございますか。

大原委員 そろそろ退席しますので、全体を通して最後に言い残したいと思います。議論になりましたモデルの再現性の評価に関しては、私も座長と同じ意見で、個々の地点で比較して再現性を評価しても、それほど大きな意味がないのではないかと思います。やはり、ある程度空間的な平均を持って、空間的な統計値として再現すべきだろうと。そのときに空間的なスケールとして、都市汚染を対象にするのか、あるいはもう少し大きなスケールのオゾンを対象にするのかによって、スケール感、スケールを変える必要性はあるのかもしれません。いずれにしても、空間統計でチェックすべきかと思います。
 全体を通してですが、今年度シミュレーションがようやくできるようになったというところに関しては、やはりきちんと評価すべきだろうと思います。一方、その方法あるいは結果については数多くの問題・課題があるというのは、皆様の共通の認識ではないかなと思います。来年度、それらの問題・課題をいかに効率的につぶしていくのかというのが重要なことだろうと思います。
 その上で、先ほど不規則発言をしましたが、来年度の進め方については幾つかご提案したいと思うんです。
 1つは発注を早くしてください。これは第1回の検討会が9月でしたかね。半年でこういった重たい仕事をしてもらわなくてはいけない。その中に検討会もあり、作業部会もあり、そのやりとりもしなければいけない。かなり早い段階でこうすべきと感じていた場合でも、今年度にそれを反映させることはできないということがあります。環境省としても努力されているのは重々承知しておるんですけれども、できるだけ早く契約等を進めていただくのがよろしいかと思います。
 あと2つは、来年度の仕様書をこれから多分検討されると思いますが、作業部会のメンバーもコミットメントするような形で進めさせていただきたい。来年度は作業部会があるかどうかはわかりませんが、そこは柔軟に考えていただきたい。今年度ここまで作業部会にかかわっていただいた方が何人かいらっしゃるわけで、そういう方に意見を聞きつつ、当然、検討会のメンバーの方にもご意見を伺いつつ、仕様書をいかにうまく作るのかというのが大事だと思いますので、それをお願いしたい。
 それから先ほど申し上げましたが、作業部会の進め方です。もし来年度引き続き存在するのであるならば、検討会のメンバーから座長を出して、きちんと調査に作業部会の意見が反映できる、フィードバックがかかるような仕掛けにしていただきたいというお願いであります。以上です。

秋元座長 ありがとうございました。非常に貴重なご意見でそのとおりだと思います。それ以外のところで、この報告の今日の部分でお気づきのところはありますか。

坂本委員 全般的なところで申し上げたいのですが。計算した結果を実測値もしくは統計値という形で比較をする場合に、その比較をするものがちゃんと同じレベルの統計データに使えるものなのかどうか。先ほど月に何回もしくは1日に何回とか、そしてそれは欠測が多かったからとか、そういう話があったんですけれども、それをきちんと比べるもので比較をしないと意味がない。先ほどのNMHC、VOCの話も、実はそこにそういったものが入っているんですね。あの計算値で比較した場合、あらかじめ値が低めに出たほうがむしろ当たり前のものもあるわけですね。そういうものがきちんとわかるような形でやっていただきたいと思います。

秋元座長 ありがとうございます。それでは来年度の議論に入る前に、そういう大きな議論で何かおっしゃりたいことが今あればお伺いしておきますが、よろしいでしょうか。


議題(3) 次年度の作業計画(案)について(資料3)

秋元座長 よろしければ今日のところは、個別に見ればまだまだいろいろ問題で言いたいところもあるのですが、それをつぶしているよりは今後どうするかという話にしたほうがよさそうなので、議題2はここで閉じさせていただきます。議題3「次年度の作業計画(案)について」という議題で議論したいと思います。事務局からお願いします。

事務局  では、資料3の次年度の作業計画(案)についてご説明いたします。まず、先ほどもいろいろ問題点があるということで、それを含めましてシミュレーションモデルの改善というのを1つ目の項目にしております。そこには4つほど項目を立てています。
 1つ目、境界値として用いていますMOZARTは不連続性の問題等ありますので、別の全球モデルであるCHASERというデータを用い精度検証のうえ導入することを考えております。
 2つ目、データの連続性の観点から、長期トレンドの把握の際に排出量以外の変動要因を少なくするため、2001~2010年まで同じデータセットの採用を検討いたします。
 3つ目、植物起源VOCの排出量を算定するモデルMEGANを直接使用するなどして、アジア域の植物起源VOCについて、より実態に近い排出量を設定する。  4つ目、先ほどの説明でもありましたように、特に2001~2002年ですけれども、O3濃度が非常に過大になる傾向があります。その原因について検討するとともに、再現精度の向上についても図っていきたいというふうに思っております。
 1のシミュレーションモデルの改善を踏まえ、10年間(暖候期)を対象にアジア域、関東、九州領域の再現計算を行った後、表1に示すようなO3濃度に影響を及ぼす要因の解析を行う予定にしております。
 解析項目としては、①は越境汚染の影響について、②は、NOタイトレーションの効果の低下及び大気汚染物質排出量の減少に伴う光化学オキシダント生成量の変化の影響について、③として、これまでの前駆物質排出量抑制対策の効果について設定しています。
 3番といたしまして、上記2の「O3濃度に影響を及ぼす要因解析」を踏まえ、今後の光化学オキシダント対策の方向性について検討していくことを考えております。以上で説明を終わります。

秋元座長 ありがとうございます。それでは個々の項目、シミュレーションモデルの改善などはこの線でやっていただくので問題ないかと思うのですが、最初に申し上げたように、この検討会は2年間である1つの方向性を出すということであれば、そちらの方向のことをどうしたらいいか考えなければいけないと思うんです。
 環境省のほうから、今日の議論を聞いていただいて実態はおわかりかと思いますので、それを踏まえた上で来年度どこまでどうするか、来年度の方向性について全体的なお話をお願いできればと思います。

是澤課長 熱心なご議論を本当にありがとうございます。先ほど来いろいろ難しい問題がある中で、環境省にも宿題をいただいたということで十分認識をしております。まずはできるだけ早く、詰めの足らない部分、作業部会を含めてご議論いただかなければいけない部分について、作業に入れるようにということで私どもも努力したいと思っております。
 来年度いっぱいで今後の方向性のようなところまでまとめ切れるかどうかというあたりは、作業スケジュールを組んでいく中でどこまでのことができそうなのかというところも含めて、先生方のご議論もお聞きした上で考えたいと思っております。O3対策自体、今後どういう方向で進めていけばいいのか。より一歩踏み込んだ対策が必要だということは自明でありますので、それをどういう方向に踏み出すべきなのかというところを、何とか大きな方針だけでも見つけられるようなところまで持っていけないかというのが私どもの希望ではありますが、今年度の状況を踏まえて、どこまで行けそうなのかというところを、ご議論を聞いた上で、そんなに時間をかけずに整理したいと思っております。

秋元座長 よろしくお願いします。方向性の検討という、どのレベルでの結論までかということになるかと思うんですが。2年間でともかく何かで一旦の区切りにするのか。もう1年何とか余裕を見て、そこでもうちょっと確かなものを出すというふうにされるのか。その辺も内部でお考えいただいた上で、ご助言いただけるとよろしいかと思うのですが。  小林さん、伊藤さんからはございますか。

小林課長補佐 いま課長が話しましたので、改めてというところはございませんが、1年間、作業部会等々、本当に短い時間の中で作業部会の先生には御助言をいただきながら、シミュレーションの改良など検討してきたわけですが、想定していたよりも課題が多く洗い出された部分もございます。改めて、浦野先生等のご指摘を踏まえまして、目的や課題を明らかにしながら、来年度までにどこまで検討会でまとめるか検討したいと思います。また作業部会の先生とも解析方法など十分にご相談しながら進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

秋元座長 今年度始まりのときに私のほうから作業部会を作っていただきたいということを申し上げたのだけれども、結果的には、最初私が思っていた以上に負担がかかってしまったようです。助言で何とかなるかなと思ったのですが、どうもそれを超えている部分もあるので、来年度どういう体制にするかは関係者でぜひお考えいただければと思います。

浦野委員 私は最初から、この前の委員会からもずっと申し上げているのですが、最終的にはこの資料3の表1にあるように越境汚染の影響がどうあるのかをある程度明らかにしたいということ。それから、単なる生成だけでなくてタイトレーションの問題もあるというのをある程度きちんと評価して、VOC対策とNOx対策のトレードオフみたいな関係などをはっきりしたいということ。それから、これまでの対策は効果があったのか。これは表現をもう少し何とかしないといけませんが、この中にはトレンドも全部入っているという理解なんですね。ここを明らかにしたいというのがもともとの環境省さんの趣旨で、前回の委員会からずっと続いている趣旨だと思うんです。
 これらの目的に合わせて、最終的には将来のことなのでシミュレーションをやらざるを得ない。シミュレーションも以前に比べたら進歩してきているということもわかるし、いろいろな計算もできるようになった。その上で、このシミュレーションを活用するためにはどういう前提や条件でやるのか。その前提や条件が妥当なのかどうかということ。何のためにやるかということをはっきりさせて、そのときの計算はこういうことをやる。そのときの前提や条件はこういうことですと。実測との一致がどうかということもあるけれど、完全にしようとしてもデータがなければできない。では、どういうデータがあるのか、どういう限界があるのか。例えばNMHCを測っていないところでシミュレーションするにはどうしたらいいかも含めて、限界はどうなのか。今回トライをいろいろされたので、もし改善するとしたらどういう知恵があるのか。できるのかできないのかも含めて明らかにする必要があります。
 しつこいようですが、分かって頂くためにもう1回申し上げると、何をするのか。それに合わせて、どんな条件でシミュレーションを動かすのか。それの前提や条件の妥当性は、今はこの程度です。こういうところは限界があります。それを乗り越えるために改善はどうしたらいいのかが見えてくるようにする必要があります。改善ができないとしても、少なくとも定性的に極端に高い数字が出たものについては考察ができるようにするということをしないと、先へ行かれない。その点をぜひ事務局も請け負うほうもしっかりやっていただきたい。
 それから、シミュレーションというのは、過去のデータにある程度合うようにするということも必要だけれども、それはエイヤでやってこの程度合えばいいかというものなんです。
 大事なのは、これから先、例えばVOC対策とかNOx対策を政府が何かの形で進めるときに、どのぐらいやったらおおよそどういうふうにオキシダント濃度が動いていくかの概略を知ることです。これは前回、前々回もご議論が自治体からございましたけれども。例えばVOCを今の2分の1まで日本は下げたらとか、NOxを2分の1まで下げたらと極端な計算をして、どのぐらい変わる可能性があるか。そういうものができるのがシミュレーションのメリットなわけですよ。2分の1でなくてもいいですけれどね。そういうトライをしてみることがすごく大事。ほかの細かなところよりもそういうことをして、そこに合わせる前提は今のところはこの程度で、不確実性がもちろんある。しかし、先ほどあったようにBVOCを2分の1にしても大して変わらないですよね。大きいのは、VOCの発生とかそのデータをどういうふうに扱うか。あるいは、未把握のものも含めてどう扱うかというあたりがものすごく大きく影響する。その辺の限界と改善の方向を示した形で次回やっていただければ、行政にも役に立つ形になると思いますので、ぜひそういう方向でお願いしたいと思います。

岩崎委員 基本的にこの委員会が立ち上がった背景が、VOC抑制対策でトータルのエミッションインベントリを3割減らしたけれども、O3注意報が減らなかった原因は何であるかを解明しようということです。多く挙がったものとしては、大陸からの移流がどの程度あって影響しているのか。あるいは、植物起源がどうだったのか。それから、今までのVOC規制はVOCのppmCのトータルでやっているけれど、もう少し成分に注目したほうがいいのではないか。それら幾つかのことでこの委員会が立ち上がっているわけですから、それに対しての多少なりとも回答がこの委員会から出てこないとおもしろくない。
 浦野さんが目的をしっかり定めてということを言われましたけれど、私も同意見です。そういうような視点から、この場合には60kmメッシュで切ったほうがいいのではないか、あるいはこの解析には10kmメッシュで切ったらいいのではないか、そういうことが出てきていいのではないか。
 O3注意報が減らないということに対して、産業界もこれからどうしていったらいいのか。部分的には、さらにVOC抑制対策を進めようと各団体が努力していると思いますけれども、それに対して環境省がどういうような対応をしていくのかということが一番大事になってくるわけです。
 この委員会ができた背景をもう1回見直していただいて、それに対する答えが出るような形で来年度から進めていただきたいと思います。もちろんシミュレーションも大事なので、シミュレーションの目的を意識しながらやっていただきたいということです。

秋元座長 ありがとうございます。いろんな面があると思います。私が座長を引き受けたときの1つの点は、O3の問題というのは今よく言われるサイエンス&ポリシー、科学的な知見を行政にどう結びつけるか。これの1つの試金石みたいなものでもある。そうなったときに、単に科学的な装いを取るだけではなくて、本当に今の大気科学のサイエンスのレベルから見ておかしくないものできちんと推論をする、組み立てるというのが絶対に必要だと思います。そうでなければ、そんなに一生懸命になることはないというのが私の座長としての考えです。
 そういうこととプラクティカルに今すぐ答えが欲しいというのとは、永遠の課題なんですね。その2つは絶対に完全には解けない。もちろん、どこか現実的なところで手を打つというか妥協しなければいけない部分があるのは承知しております。
 そういう意味でシミュレーションにしても、サイエンス&ポリシーといったときに最先端のいいサイエンスを使わないと意味はないです。最先端のサイエンスを使ったときにどうなるか。そのためにはいろんな大変なこともたくさん出てくる。そこをどこまで妥協するかというあたりをきちんと詰めながら、ある種の答えを出す。何でもかんでもわからないままに答えを出してしまったのでは、これまた何のためにやったのかわかりません。
 その辺を、特に来年は1つの山場だと思いますので、シミュレーションをやっていくデザインを構築する必要があると思います。まさに浦野さんなどが言われるような、どういうデザインでどこまで何を求めるか。それについて科学的に妥協できる部分、できない部分というのは当然出てくると思います。その辺をうまく構築しないといけない。
 そのためには、委託作業としてやるのであればその仕様書といいますか、どういうグランドデザインの下にやるか。そこを作るのは研究の方が一緒にかかわっていないと解けない問題だと思いますので、その辺をお考えの上よろしくお願いしたいと思います。

是澤課長 1点だけ。最近のO3濃度の状況と注意報の状況についてだけ補足させていただきます。この検討会ができたときには、おっしゃるとおりでなかなか低減傾向が見えなかったという状況ですけれども、24~26年にわたる3カ年のデータを蓄積しますと、O3の注意報の発令件数も傾向としてはかなり減少してきています。0.12ppmを超えるような測定局の数も減ってきているというのは最近見えてきております。ただ、対策の効果がどういうふうに定量的に表れているのかというところはまだまだ解析が難しいと認識しておりますので、その点だけ補足をさせていただきます。

秋元座長 ありがとうございます。そこはここの検討会の昨年度の報告書、測定データの解析の中でも非常に明確に見えてきています。さっき発言があったように、NOx、VOCは、我が国の努力で下がった部分と越境汚染が増えた差分とNOタイトレーションが増えた分、その3つの組み合わせでそういうトレンドが見えてきているということはわかってきた。
 それが首都圏の場合と、九州は越境の寄与がまだまだ大きいというのが見えてきているので、それによって今後どれだけ下げたらばどうなるかということも地域によって違ってくることが推測される状況で、今おっしゃるような現状であることは間違いないです。では、時間が超過しましたけれども12時半になる直前ですので、この辺で本日の検討会を終了させていただきます。事務局にお返ししますけれども何かございますか。


議題(4) その他

事務局 その他は別によろしいですね。

秋元座長 私のほうは特にありません。事務局のほうで何かあれば。

 

7.閉会

事務局 本日はお忙しい中、長時間にわたりご検討いただきまして誠にありがとうございました。たくさんのご指摘を踏まえまして、今後またぜひ努力させていただきたいと思っております。
 それでは、本日の検討会をもちまして今年度予定しておりました検討会を終了いたしましたので、「平成26年度光化学オキシダント調査検討会」を終わらせていただきます。ありがとうございました。

以上

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