環境省大気環境・自動車対策大気汚染状況・常時監視関係光化学オキシダント関連情報光化学オキシダント調査検討会(平成26年度)

平成26年度第1回光化学オキシダント調査検討会会議録

1.日時 平成26年9月12日(金)10:30~12:30

2.場所 一般財団法人日本気象協会 第一・第二会議室

3.出席者(五十音順敬称略)

(委員)
板野 泰之 井上 和也 指宿 堯嗣 岩崎 好陽
浦野 紘平 大原 利眞 金谷 有剛 坂本 和彦
紫竹 益吉 下原 孝章 八田 拓士 橋本 光正
星 純也 若松 伸司
(欠席者)
秋元 肇 竹内 庸夫 向井 人史
(事務局)
一般財団法人 日本気象協会

4.議題

(1)平成26年度光化学オキシダント調査検討について
      (2)シミュレーションによる要因の検討について
      (3)シミュレーションによる対策の検討について
      (4)その他

5.配付資料

資料1
平成26年度光化学オキシダント調査検討について
資料2
シミュレーションによる要因の検討について
資料3
シミュレーションによる対策の検討について
(これまでの対策が現状のオキシダント濃度に及ぼした影響の検討)
参考資料1
平成26年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱
参考資料2
光化学オキシダントの環境改善効果を適切に示すための指標について
(中間とりまめ)

6.議事

事務局 定刻となりましたので、ただいまから「第1回平成26年度光化学オキシダント調査検討会」を開会いたします。浦野委員は遅れているようでございますが、参られると思います。
 まず最初に、検討会の開催にあたりまして、環境省 水・大気環境局大気環境課の是澤課長様よりご挨拶がありますので、よろしくお願いいたします。

是澤課長 7月から大気環境課長に着任しております是澤でございます。先生方におかれましては、本日はお忙しいところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 この光化学オキシダントの問題でございますけれども、ご承知のとおりさまざまな対策を講じている中でも、まだ依然として環境基準の達成率が低いということで、この検討会におきまして平成23年度からいろいろと検討を重ねていただいているところでございます。そのひとまずの成果といたしましてこの3月に、今お手元に報告書がございますけれども、光化学オキシダントの解析と対策に向けた指標のご提言をちょうだいしております。
 この提言でございますけれども、中央環境審議会のほうに設けました微小粒子状物質等専門委員会でご検討いただきまして、こちらは大原先生に座長をお願いしているものでございますけれども、先月20日にオキシダントの環境改善効果を適切に示すための指標についてということで中間取りまとめをいただいたところでございます。8時間値の日最高値の年間99パーセンタイル値の3年平均値という、非常に長い名前になってしまう指標でありますけれども、これからこの新しい指標も活用させていただきつつ、削減対策の効果の把握や経年変化要因の解明などに取り組んでいきたいと思っているところでございます。またこの検討会でも逐次その状況をご報告させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 そのほかにも、オキシダントの問題はメカニズムが非常に複雑で、まだまだ現象解明のために検討課題が多いというふうに認識しております。過去の報告書におきましても、シミュレーションの精度の向上を図りつつ、汚染要因の検討あるいは感度解析などを進めていく必要があるということで、ご提言いただいているところでありますので、本年度も着実に取り組みを進めていきたいと考えております。先生方にはおかれましては、引き続きご専門の立場から忌憚のないご意見をちょうだいいたしまして、この検討会をさらに進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上、簡単ではございますがご挨拶とさせていただきます。

事務局 どうもありがとうございました。委員につきましては、昨年度から変更がございませんのでご紹介は省略させていただきます。
 本日の委員の欠席でございますが、秋元委員、向井委員、竹内委員が所要のため欠席でございます。
 なお、本検討会の座長は昨年度に引き続き秋元委員にお願いさせていただく予定でございましたが、欠席ということで、本日の座長は大原委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、検討会に先立ちまして、資料の確認をさせていただきます。

 議事次第
 座席表
 資料1「平成26年度光化学オキシダント調査検討について」
 資料2「シミュレーションによる要因の検討について」
 資料3「シミュレーションによる対策の検討について」
     (これまでの対策が現状のオキシダント濃度に及ぼした影響の検討)
 参考資料1「平成26年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱」
 参考資料2「光化学オキシダントの環境改善効果を適切に示すための指標について
(中間とりまとめ)」

 また、机上には、「平成26年3月 光化学オキシダント調査検討会 報告書」を配付させていただいております。資料はすべておそろいでしょうか。不足がありましたら申し出ていただければと思います。
 プレス関係の皆様方にお願いいたしますが、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に移ります。これ以降の議事進行は大原委員にお願いいたします。

大原座長 ありがとうございます。ただいまご紹介いただきました大原でございます。本日は本来ならば秋元委員が座長を務められる予定でありましたが、中国にご出張というように聞いておりますけども、私が座長を務めさせていただきたいと思います。
 若干冒頭にご挨拶させていただきたいと思います。皆様ご存じのように、昨年度までこの検討会では、主には光化学オキシダントのモニタリングデータを解析することによって、先ほど是澤課長からもご挨拶がございましたけれども、光化学オキシダントの環境改善効果を適切に評価するための指標を提言。もう1つは、光化学オキシダントは長期的に変化してきているわけですけれども、その長期的なトレンドの要因を解析。その主要な要因として、1つは越境汚染、それからNOによるタイトレーション、さらにはその前駆物質による光化学反応性の変化が考えられるということが明らかになってきました。
 そういった中で、とりわけ関東地方におきましては、光化学オキシダントの高濃度の状態が緩和されつつある傾向が解析の結果得られてきています。こういったような知見は対策効果を評価する上で非常に重要で、これからこの検討会でも対策にかかわる検討を進めていく必要があると思いますけれども、それに資するような基礎的な知見が得られたと考えているところであります。
 それを受けまして今年度は、これまでは定性的な状態はある程度分かってきたわけですけれども、それをシミュレーションモデルを使って定量的に明らかにすることが主要な任務であると考えている次第であります。そういったような結果を踏まえて、これまで行ってきた対策の効果を定量的に評価する、把握することができてくるだろうというふうに思います。と同時に、そういったような知見を踏まえて、今後の光化学オキシダントを低減するための対策に関する検討を、シミュレーション解析を通して、主には具体的な対策をどうするのかということよりも、対策の方向性をシミュレーションモデルの解析結果を使って探索することがミッションではないだろうかと考えている次第であります。

議題(1)平成26年度光化学オキシダント調査検討について(資料1)

大原座長 早速ではございますけれども議事に入らせていただきたいと思います。まず1つ目の議題でありますが、平成26年度光化学オキシダント調査検討について、事務局からご説明をお願いいたします。

事務局 それでは、議題(1)平成26年度光化学オキシダントの調査検討について説明いたします。  まず調査検討の目的についてですが、先ほど話がありましたように、平成26年3月に取りまとめられた「光化学オキシダント調査検討会業務」の報告書に基づき、シミュレーションを活用した調査を実施し、測定値を対象とした解析では得ることが難しいオキシダント生成に影響を及ぼす主な要因、1つ目として越境汚染、2つ目としてNOタイトレーション効果の低下、3つ目として前駆物質排出量の減少に伴うオキシダント生成量の変化について定量的な検討を行うとともに、これらの結果をもとにシミュレーションの対策について検討するということが、目的になっております。
 次に、内容は以下の3項目からなります。(1)シミュレーションによる要因の検討について。(2)シミュレーションによる対策の検討について(これまでの対策が現状のオキシダント濃度に及ぼした影響の検討)。(3)光化学オキシダントシミュレーションによる解析作業部会の設置。以下に、それぞれの項目について概要を示しました。
 (1)シミュレーションによる要因の検討については、以下の①~⑤を実施する予定であります。①シミュレーションの条件設定、②モデルのバリデーションの確認、③排出インベントリデータの整理、④不確実性の検討、⑤シミュレーションによる要因の解析、というような流れを考えております。
 次に(2)として、シミュレーションによる対策の検討について(これまでの対策が現状のオキシダント濃度に及ぼした影響の検討)実施します。今年度シミュレーションを活用した検討結果および昨年度の調査検討会で得られた知見等を参考に、これまでの対策が現状のオキシダント濃度にどのような影響を及ぼしているかということについて検討していきたいと考えています。
 2ページ目になりますが、(3)としまして、光化学オキシダントシミュレーションによる解析作業部会の設置について説明をいたします。シミュレーションに関する、より専門的な視点からの検討を行うため「光化学オキシダントシミュレーションによる解析作業部会」を設置することとします。
 作業部会の委員の方は表2-1に示させていただきました。今回の検討会に参加されている方の中から3名、井上様、大原様、金谷様。委員会には参加されていない方3名、永島様、速水様、森川様にお願いしようと考えております。
 この解析作業部会では、シミュレーションを用いた解析の方針、具体的な解析内容および解析結果について検討するという位置付けにしております。また、シミュレーション解析作業部会は、光化学オキシダント調査検討会の意見を反映して進めていく必要があります。作業部会各回の検討内容と検討会および作業部会間の位置付けについて、図2-1に整理しました。
 作業部会における検討内容は、以下の項目を予定しております。第1回作業部会におきましては、検討会における意見をもとに、解析方針と具体的な解析内容について検討を行います。第2回作業部会としては、解析結果(モデルのバリデーションまでを予定)について検討します。また、3要因の解析に関して取りまとめに向けた議論を行いたいと考えております。第3回作業部会に関しては、第2回検討会における意見をもとに、解析結果の検討およびシミュレーションによる対策について議論を行えればと考えております。
 3ページ目になりますが、今年度のスケジュールについては、4ページの表3-1に示します。調査検討会およびシミュレーション解析作業部会ともに3回の開催を予定しておりますが、それに向けてシミュレーションモデルを活用した検討のスケジュールについては、(1)の①から⑤の工程を予定しております。次の解析作業部会は12月の上旬、検討会は12月の下旬を予定しておりまして、モデルのバリデーションの確認等をする予定にしております。
 なお、本調査は、今年度平成26年度のほか平成27年度も継続して実施する予定にしております。平成27年度は、本調査で使用したモデルとは異なるモデルを用いた解析(解析内容は、発生源寄与解析、バリデーションおよびオキシダント生成に影響を及ぼすと考えられる3要因についての解析)を行うとともに、シミュレーションによる対策について検討することにしております。
 5ページ目では、平成26年度と27年度の2カ年に実施する項目については、昨年の報告書にありましたような今後のオキシダント対策の評価フローの中で青点線で示したような位置付けになるかと考えております。本調査の最終的な取りまとめは、2年分の調査解析結果を対象に検討・評価を行った上で、平成27年度に実施する予定でおります。  以上で説明を終わります。

大原座長 ありがとうございました。今のご説明に関するご意見、ご質問等ございましたらお願いいたします。

浦野委員 全体として内容的にはいいですけれど、前にも指摘しましたが、いろいろな検証をする上で言葉を正確に使うということが大事だと思うんです。例えば、目的はすごく大事なわけですけれども、目的の最後のところ「これらの結果を基にシミュレーションの対策について検討する」。シミュレーションの対策とは何ですかと聞きたくなる。シミュレーションによるオキシダント対策について検討するのか、先ほど大原座長がおっしゃったように今年度はそれの対策の方向性を検討して、2年でやるという話もあるので来年度はさらにもう少しやるのか。
 言葉というのは目的ですから、そういうところをはっきり書かないといけない。漠然と何となくお勉強しました、で終わるのでは困る。最後はあくまでも対策に行くわけですから、今年度は対策のどこまで行くのか。シミュレーションによるオキシダント対策について検討するとか、対策の方向性までを今回はやるんだとか、その辺をはっきりする必要があると思います。
 それから、資料1の同じ1ページに、(1)シミュレーションによる要因の検討と書いてあって、⑤もシミュレーションによる要因の解析と書いてある。「要因」とは一体何ですかという話です。要因なんていうのは、いろいろな影響因子、全部パラメータを入れるわけですから。例えば移動とか生成とか消失を意味しているのだろうと思いますが、まとめて言えばオキシダント濃度への影響要因の解析なのか、あるいは具体的な何かを指しているのか。もう少しはっきり書かないと、シミュレーションによる要因とは何を意味して、何をやるのかがわからない。言葉が漠然としすぎている。そこを明確に、目的作業ですからはっきりしていただきたい。
 同じような言葉が、2ページで作業部会の設置のところの第三回作業部会で「シミュレーションによる対策」と書いてありますが、これももう少しはっきりしてほしい。3ページも5行目にやはり「シミュレーションによる対策」と書いてあるので、これもはっきりしてほしいということです。
 表3-1は、表ですからあまり詳しく長い言葉は入らないですけれども、やはり似たような言葉は正確に表現してもらって、作業部会でやるところとそれを検討会で検討することは一応この図でわかるような感じはしますが、両方の会議にまたがっていたりしています。この矢印は事務局がやる仕事を示しているのですか。各オキシダントの検討会と作業部会はそれぞれ黒丸で書いてありますが、その間の矢印との関係がどういう意味なのかというのがわかりにくい。それぞれの役割をはっきりしたほうがいい。
 それから図3-1はいつも出てくる大事な図ですが、今回は図の右側を去年中心にやったので、今年度は左側をやる。来年度27年度もやるという注が書いてあります。ここで一番最後の結論のところで、「シミュレーションによる対策の検討・評価」と「現状の汚染要因」という言葉。汚染要因という言葉はほかに出てこないんですよ。中身の意味をしっかり考えて、言葉を統一して使うことがすごく大事です。とにかくお勉強して目的がわからないというのが日本の通例なので、ぜひその辺を検討していただきたい。資料2以下これから説明がありますけれども、それぞれの言葉も意味が明確になるような表現を是非していただいて、そこを確実にクリアしていくようにしていただきたい。

大原座長 ご指摘ありがとうございました。確かに、資料1の中でわかりにくいところが幾つかあろうかと思います。事務局から補足説明あるいは言い訳等ありましたらお願いします。

事務局 確かに何について対策を行うとか、何のためのというのが説明不足の感じがいたしますので、今後もっとわかりやすいような的確な言葉を使っていこうというふうに思っております。ご助言ありがとうございました。

大原座長 これは今後この検討会を進めていく上で基本的な方向性を示す資料になりますので、重要なポイントについては今決めておきたいと思います。
 例えば資料1の1ページ目の上から5行目あたりの「シミュレーションの対策」は、どういう言葉に置き換えたらよろしいですか。「シミュレーションによるオキシダント対策の方向性について検討する」、そういった感じでよろしいですか。
 はい。それから、そのページに幾つか出てきますが、「シミュレーションによる要因」という言葉ですね。これについては多分、上から3行目の「オキシダント生成に影響を及ぼす主な要因」の要因のことだと思うのですが、そういう理解でよろしいですか。

事務局 はい、そうです。

大原座長 もしそうであるならば、下のほうの「シミュレーションによる要因」ではわかりにくいので、もっと明示的にシミュレーションによる何らかの要因といったような具合に書いていただけますでしょうか。
 それから2ページ目に行きまして、「シミュレーションによる対策」のところは先ほどと同じですから、同様に修正していただくということでよろしいですね。
 図2-1の矢印の意味と、作業部会と検討会の位置付けの違い、切り分けと言ったらいいのでしょうか。それについてご説明いただけますか。

事務局 図2-1にあります矢印とその中のコメントについてですが、薄い茶色については検討会から作業部会のほうに示す内容で、青色の下から上に向かっている矢印は作業部会から検討会のほうに提示する内容というふうに想定しております。作業部会の吹き出しにあるものは、その作業部会において具体的にどういうことをすればいいかということを記しております。

大原座長 解析作業部会のミッションは、2ページ目の上から3行目に書いてあるように、シミュレーションを用いた解析の方針、具体的な解析内容および解析結果について検討するという理解でいいですね。

事務局 はい。

大原座長 ありがとうございます。5ページ目の図3-1の左側の下から5行目、「現状の汚染要因の検討」というところをご説明いただけますでしょうか。

事務局 これは昨年のフローをそのまま載せているのもありますが、今の認識といたしましては、汚染要因ということで昨年の流れを踏まえますと3要因の検討というふうに今の時点ではとらえております。

大原座長 具体的に言うと、先ほど出てきたような光化学オキシダントに長期的なトレンドがあって幾つかの要因が考えられる。その要因についてどの程度それぞれ効いているのかということを、シミュレーションモデルを使って、できるだけ定量的に明らかにする。そういうのが具体的な内容だと理解していますが、それでよろしいですか。

事務局 おっしゃるとおりです。

浦野委員 皆さんがどうとらえるかで、人によって解釈が違うのは好ましくないので明確にしたいのですけれど、これは現状の汚染要因を解析するんですか。シミュレーションというのは、現状はある程度フィッティングするかどうかのチェックには使うけれど、将来予測のためですよね。シミュレーションによる対策の検討のときに、現状の汚染要因の検討をシミュレーションでするんですか。それが1つ。
 それから、汚染要因はNOxとかVOCとかを意味しているのか、あるいはオキシダントが濃度に影響する要因としては、先ほどの解析では越境移動その他の国内の移動もある。移動に影響を与える要因と、生成に影響を与える要因と、消滅に影響を与える要因という見方もあるわけです。
 そこら辺をどういうふうにとらえて、頭の構造をどう作っているのかというのがどうもいつもよくわからなくなる。漠然と間違ってはなさそうだなという言葉に見えるんですけれど、中身が見えないんですよ。皆さんがそれぞれ好き勝手な解釈をすると議論が発散するので、あるいは作業も発散するので、シミュレーションによる対策の検討のときに現状の汚染要因の検討をする。将来予測はまた別にある。将来予測は排出量や他の地域の影響の変化を考慮と書いてある。
 これは去年も一昨年も議論になっているんだけれど、徐々に議論や作業が煮詰まってきているので、修正することは修正したほうがいいと思います。去年のままただ切り貼りするのではなくて、中身をしっかり考えていただきたいと思いますが、事務局からご説明があれば。

大原座長 一言お願いします。

事務局 補足させていただきます。おっしゃるとおり、言葉が古いのと新しいのが混在して統一されていなくてわかりづらいところがあり申しわけありません。
 ご指摘いただいた5ページの「現状の汚染要因」というのは、先ほど大原座長からもフォローいただきましたとおり、ここで考えているのは現状までのオキシダント濃度の変化の要因が越境汚染、国内の前駆物質の排出量に伴うオキシダントの生成量変化、あるいはそれに伴うタイトレーション効果の影響、その辺の要因を定量的に踏まえた上で、例えば越境汚染の影響が定量的に見て大きいということであれば、将来の対策においても国内と海外の対策も加味した格好でやらなければいけないだろう。逆に、国内の影響が地域によって非常に大きいのであれば、国内でやれることをやろうという対策に持っていく。「現状の要因の検討」というのは、そういう意味合いで使っております。

大原座長 いかがでしょうか。

岩崎委員 今までやってきた流れは、改善対策ができるような指標を求めていくとか、ポテンシャルオゾンの評価だとか、大事なところは全部押さえてきていると思うんです。今ここで要因、対策という2つのキーワードが出てきたときに、もう少し具体的な形でこれを位置付けておかないといけないのではないか。
 要因については、前々から問題になっている大陸からの移流がどうなっているのか、それの評価をきちっとしておく必要がある。
 もう1つは、植物起源のVOCに関してどう評価するか。5ページの真ん中ぐらいに「植物起源VOCなど」とあるけれども、それをどういうふうに位置付けてシミュレーションによって解析するのか。去年も実験はしたと思うけれども去年の実験データでは不足だと思う。これを解析するための調査が必要なのかどうか。調査なしでやれるのか。170万トンという固定発生源の多大な量のインベントリを持っているわけですから、そういうことをイメージしながらつくっていかないといけないのではないか。
 もう1つ対策のほうから言うと、今まではどちらかというとトータルVOC的な考え方で141万トンを何万トン減らした。トータル的には10年で44.1%、今は50%以上減っていると思います。それでもまだ、今年度は気温が高かったこともあって注意報が結構出ている。大原座長が言われたように高い濃度は減ってきた。その辺の評価をどうするか。
 この対策について今一番言われているのは、もっと減らす必要があるのかということが大きな課題。もう1つは、トータルVOC(TVOC)ではなくて個別のVOCをもっと見なくてはいけないのではないか。それも大きな課題として残っていたわけですから、それにどう組み込むのか。
 そういうことで具体的に対策とか要因をイメージして、浦野委員が言われるように、どういうような要因があって、今年度はどこまでこれをやろうかということをもう少し議論しておかないと、後であれをやればよかった、これをやればよかったになってしまう。
 この委員会も何年か経つけれども、調査のアウトプットの明確化というのは、VOCの排出抑制専門委員会は解消されましたけれども、そのときの産業界からの強い要請でもあった。今回は産業界からの委員も入っておられますが、3割減らしたのにオキシダントは減らないではないかと。その要因をきちっと解析することが主なので。今回の解析がそういうところにもつながっていくと思いますので、もう少し具体的な形でシミュレーションできるように検討していただければと思います。

大原座長 ありがとうございました。シミュレーションをどういう目的で、どういったような条件で計算するのかということに関しましては、後ほど資料2をもとにしてこの次の議題で取り上げさせていただきたいと思います。そちらのほうでまた議論をお願いします。
 と同時に、5ページ目の先ほどからご指摘いただいている「現状の汚染要因の検討」につきましては、もう少し明示的にですね。具体的にするとなると、1ページの表現を受けて「オキシダント長期的変化要因等の検討」などというのが妥当な表現ではないかと思います。まずここではそういったような表現に修正していただくことにして、具体的な内容については後ほどご議論いただくということでよろしいでしょうか。

若松委員 ここで発言したほうがいいのか、後のほうがいいのか迷うのですけれども、どういったモデルを使うかということです。この後のほうにも例えばVOCの話も出てきますけれども、これまでモデルの相互比較研究やJATOPの研究などいろいろあって、かなりいろいろなことがわかってきています。モデルにどういった問題があるのかということも、かなり明らかになってきていると思うんです。そういった成果を反映して、ここで改めてゼロからやるのではなくて、これまで明らかになったことをきちっとその後を追っていくような形がいいと思うんです。
 そういった意味から言うと、例えばモデルのバリデーションといっても、この後のほうにOHラジカルが若干実測値と合わないという話もありますけれども、ガス状物質だけのシミュレーションでは説明がつかない部分が出てくると思うんです。使おうとしているモデルの中に粒子の部分はどう考えるのか。そういったことは結構大事です。
 これまでの知見によれば、粒子状物質の話ですがナイトレートの生成が実測よりも多くなるんです。ということは、NO2がOHラジカルと反応してHNO3になる速さが結構速い。環境調節のOHラジカルとモデルでのOHラジカルを比べるとモデルのほうが低めに出るというのは、ひょっとするとそういったパスがあって下がっているのかもしれない。
 この後のほうに植物起源の話がありますけれども、粒子のところも一緒に込みで考えて評価していかないと、特に細かいところについては説明できなくなると思うんです。実際に今回の作業で使おうとしているのは、どういったモデルを想定していて、粒子に関してそれを含んでいるのかどうかということを最初に明らかにしておいたほうがいいという気がします。ぜひその点についてのご見解をいただければと思います。

大原座長 事務局からお願いします。

事務局 この解析で用いるモデル等については、作業部会のほうでモデルに詳しい方の意見を伺って、この解析に適切と思われるモデルを選択して行っていこうと考えております。

事務局 具体的に想定しているのは、実績のあるCMAQを今年度については使おうと考えています。ターゲットオゾンですけれども、どのモデルを使うかはご相談の上ですが、粒子化モデルも入れた上で計算する予定ではおります。

大原座長 ありがとうございました。今の点につきましても、この次の議題に密接に関係すると思いますので。

坂本委員 事務局に申し上げておきたいのは、これはいろいろな委員会のときに申し上げるのですが、資料の配付を会議のどのぐらい前にするかは結構重要です。ある程度の日数があれば、委員の皆様も読み込んでこられるから議論がしやすくなります。これは一昨日、その前の晩だったでしょうか。これを担当している方はこれだけを考えているけれども、委員の方々はこの仕事だけをやっているわけではない。極端なことを言うと、2日とか3日ぐらい前に資料が皆さんの読める状況になれば、もっと議論もスムーズに進むのではないかと思います。その辺はお願いしたい。
 それから若松委員がおっしゃったことは、まさに微小粒子状物質等検討専門委員会で、VOC排出抑制という形でやっているだけではなくて、PM2.5も粒子も光化学オキシダントも両方にらみながら考えていかないとその対策につながらないという形で、大原委員が専門委員会の座長をされて進めているところだと思います。先ほど事務局から粒子化も入っているという話を聞いたので、そういう形になっているのだったらよかったと思ったわけですが、最初のところでそういう部分の説明があれば、もう少し理解をしてこの議論を進めていけるのではないかと思いました

大原座長 ありがとうございました。資料の配付は早めにということで、この次からはぜひよろしくお願いいたします。

紫竹委員 確認事項です。4ページ目に本年度の調査検討スケジュールが載っていますが、最後のところに「業務報告書の作成」という項目が来年2月末から3月下旬になっています。これは、この調査検討会として報告書を何か出すという意味合いでしょうか。それとも、このスケジュール表は事務局サイドの作業スケジュールという意味でしょうか。

事務局 説明でも触れましたが、平成26年度、27年度にわたって行うということで、26年度の成果として業務報告書、27年度として検討会の報告書を出します。「業務報告書の作成」は事務局の工程です。

大原座長 今年度は調査業務報告書を出します、検討会としての報告書は出しませんということですね。

事務局 はい。最初に浦野委員からご指摘があったと思います。スケジュール表の矢印の部分は、基本的には事務局の作業工程という認識で結構かと思います。先ほど話があったとおり、検討会としての報告書は来年度2年分まとめて最後に出すというスケジュールを考えております。

大原座長 よろしいでしょうか。

紫竹委員 はい。

大原座長 ほかにご意見等は。

金谷委員 先ほど植物起源のVOCに関するご質問を岩崎委員からありましたけれども、それに関連してです。環境省さんにお伺いしたほうがいいのかもしれないですが、昨年度植物起源のVOCの調査を埼玉県と群馬県で始められたことに関しては、これとは並行に進められて、どこかここの委員会に後年度反映されるような知見が得られるという全体の構成を描かれているのか、確認させていただきたいと思います。

大原座長 環境省からご説明をお願いします。

小林課長補佐 VOCの調査に関しましては、関東の調査を昨年度して、今年は九州と関東のVOC調査をしております。その中でテルペン類も群馬の植物起源の由来であろうということと、それとは関係がない都市部のVOCのテルペン類を今年度もやっておりまして、まだデータを蓄積している段階です。もう少しデータを調査してから、解析に持っていきたいと思っております。

大原座長 よろしいでしょうか。私から確認です。今の点については、この検討会に報告されると考えてよろしいですか。それとも、独立に環境省が勝手にやられるということでしょうか。

小林課長補佐 もちろん勝手にやるというわけではございませんが、ある程度まとまった段階で、ご報告できる形になった時点でご報告したいと思います。

大原座長 ありがとうございました。ほかにはよろしいですか。

議題(2)シミュレーションによる要因の検討について(資料2)

大原座長 それでは議題(2)シミュレーションによる要因の検討について、資料2に基づいてご説明をお願いします。

事務局 シミュレーションによる要因の検討について説明させていただきます。目的といたしましては、先ほど申しましたが、オキシダント生成に影響を及ぼすと推測されている3要因について、シミュレーションを用いて定量的な解析を行いたいということです。
 本調査では、シミュレーションを活用することで、これら3要因がオキシダント生成に及ぼす影響について定量的に評価する。なお、実際のシミュレーション解析の進め方については、調査検討会における意見をもとに、シミュレーション解析作業部会で検討した方針に沿うこととする、というふうに定めております。
 具体的にシミュレーションの条件設定(案)といたしまして、シミュレーションの条件設定にあたっては、3要因を適切に解析できるよう、平成25年度の検討結果を踏まえ、表2-1の内容で実施することを考えております。
 まず越境汚染の影響を解析する必要があることから、アジア大陸を含む東アジア領域を計算し、次に、関東・九州という2つの領域を対象に細かい格子間隔で計算することとします。
 具体的な領域については2ページ目の図2-1、2-3に示しております。大体これぐらいの広さの領域を今のところ想定しております。
 1ページに戻りまして、使用するモデルですが、WRFおよびCMAQを使うことを想定しています。バージョンについては、既存文献や先ほどもありましたように解析作業部会でご議論いただき、適切なモデルを使いたいと思っております。
 格子間隔についてですが、関東・九州領域の水平格子は、光化学オキシダント濃度の再現結果に、格子間隔12kmと4kmで大きな差が見られなかったとした報告例もあることから、10kmという格子間隔を設定しております。
 境界値データは、東アジア域については全球化学輸送モデルのMOZART-4による計算結果から作成します。なお、計算対象期間である2001年度から2010年度の10年間の暖候期4月から9月を対象に、境界値の変動について確認し、適切な境界値を設定することでモデルの再現性向上を図るということを想定しております。
 3ページはモデルのバリデーションということで、遠隔地モニタリングデータを用いたバリデーション(東アジア領域対象)という項目です。シミュレーションによる解析を実施する上で、モデルのバリデーションを確認することが必須であります。本調査では日本国内のエミッションの影響が小さい地点を対象に、オゾン等の再現性を確認することを想定しております。具体的には表3-1に示したような内容で実施することを予定しております。評価物質としては、SO2、O3、NOxとします。評価指標としてはEPAで定義され、モデルの性能評価でも多く利用されているNB、NGEおよびMPAを使うことを考えております。また、既往調査事例における値を参考にすることで、精度の妥当性について評価しようと思っております。
 4ページは気象モデルの精度検証ということで、関東地域および九州地域を対象とします。気象モデルの精度評価については、表3-2に示す内容で実施します。気象要素として、風向、風速および気温。また、精度評価は、表3-3に示す項目について実施します。データの入手状況によって、ウィンドプロファイラおよび高層ゾンデ観測結果も対象にすることを想定しております。
 5ページは大気質モデルの精度検証ということで、関東地域および九州地域を対象とします。大気質モデルの精度評価については、表3-4に示す内容で実施します。評価物質としましては、Ox、PO、NO、NO2、NMHCを考えています。評価指標としては、先ほどと同様にNB、NGE、MPAを用います。検証データは、大気汚染常時監視データを対象とすることを考えております。データを比較する上で、あるメッシュに複数の測定地点が含まれる場合、それらの測定値の平均値を測定データとすることを想定しております。
 また、精度評価については、大気質の長期トレンド把握という観点から表3-5に示す内容で評価をしたいと考えております。対象期間は2001年から2010年の暖候期(4~9月)。評価指標としては、日最高8時間平均値の暖候期98パーセンタイル値に評価を実施することを考えております。昨年、測定値を対象とした解析で同様の指標による長期トレンド変化を提示しましたので、モデルにおきましてもそれと同様の傾向を示しているかというところが着目点になると考えております。
 6ページに移ります。排出インベントリデータの整理ということで、用いるインベントリについては可能な限り最新の知見が反映されたデータを対象にする。また、これらをシミュレーション解析に必要な形式に取りまとめます。国内の発生源インベントリとしてJATOPにより整備されたJEI-DBを使用します。なお、このデータは船舶からの排出データを含まないことから、独立行政法人海上技術安全研究所が作成しておりますインベントリによって補完することを考えております。
 アジアの人為起源インベントリについては、最新の情報が反映されたREAS2.1を用いる予定にしております。REAS2.1には自然起源のインベントリが含まれていないため、それを補完する上でEAGrid2000を用いることを想定しております。
 7ページに移ります。不確実性の検討ということで、モデルの不確実性という項目と発生源データの差異という2つの項目を掲示しています。モデルの不確実性については、既存文献の調査結果および作業部会による議論を通じて、本解析を行う上で最適と考えられるモデルのバージョンおよびサブモデルを設定するということで、不確実性の検討という項目にしたいと思っております。
 発生源データの差異については、先ほどもお話があったかと思うんですが、植物起源VOCと未把握VOCを対象とした検討を実施することを考えております。植物起源VOCに関しては、推定方法によっては2.5倍程度の排出量の差が生じることが報告されていることもあります。また、OHラジカルの反応性と既知の化学成分から積み上げたOHラジカルの反応性が異なる理由の1つとして、未計測VOCの影響が指摘されていることから、検討しようというふうに考えました。
 本解析におきましては、使用するインベントリを対象に、植物起源VOCの排出量を変化させた条件でシミュレーションを実施し、植物起源VOCの排出量の不確実性について検討しようと考えております。また、未計測VOCについては、シミュレーションモデルにおける計算対象物質と測定物質のRIを比較し、モデルにおけるRIの不足分相当を既知のVOCで置き換えた条件でシミュレーションを実施し、未計測VOCの不確実性について検討しようと考えております。
 不確実性の検討内容としましては、評価対象物質としてOx、PO、NO、NO2、NMHC。計算対象期間としては10年のうちの3断面を予定しております。
 8ページに移ります。これまでシミュレーションを実施する前の準備の位置付けになるかと思いますが、シミュレーションによる要因の解析ということで具体的な解析内容について説明しております。
 シミュレーションを用いて、越境汚染、NOタイトレーション効果の低下および前駆物質排出量の減少に伴うオキシダント生成量変化の影響を検討するにあたって、表6-1に示した①②③の解析を実施しようと考えております。
 表6-1で解析項目とその目的について整理しました。①はi)、ii)、iii)の3つ考えていますが、i)についての解析の目的としましては、国内の光化学オキシダント濃度における東アジア大陸由来の寄与割合の変化を算出し、越境汚染の影響の程度を解析しようと考えています。具体的な解析内容については9ページ以降で説明しますが、表6-1で一通り目的について説明させていただきます。ii)については、国内の光化学オキシダント濃度の増加が、越境汚染によるものか、NOタイトレーション効果の低下によるものか、POの変化に着目し解析する。iii)は、国内の光化学オキシダント濃度の変化に対して、東アジア大陸由来の排出量の寄与と国内排出量の寄与のどちらが大きいか定量的に解析することを目的にしております。
 ②の解析の目的としては、前駆物質が減少しているにもかかわらず、国内の光化学オキシダント濃度が上昇していることが、NOタイトレーション効果の低下によるものなのか、評価地域内におけるオキシダント生成量の増加によるものなのか、POの変化に着目し解析します。
 ③の解析の目的は、国内の高濃度域の光化学オキシダント濃度の低下がNOx対策の効果によるものか、VOC対策の効果によるものか解析するというふうに設定しました。
 9ページ以降、具体的な設定内容について説明いたします。越境汚染の影響による東アジア大陸由来の日本に対する越境汚染の寄与の変化ということで、表6-2に示すような設定で行いたいと考えております。評価対象物質としましては、Ox、PO、NO、NO2、NMHC。計算対象領域は東アジア。計算対象期間は2010年の4月から9月。評価対象地域は九州、阪神、東海、関東。これは60km格子になります。越境汚染の影響を見るために表6-3に示しましたように、東アジア大陸の排出量を2001年、2010年に設定し、国内と気象場は2010年で固定します。このケースA、ケースBによる結果から、評価方法としましては経過図によるトレンド、評価対象地域別の濃度差、閾値以上出現頻度、ポテンシャルオゾンとオキシダントの変化量に着目した解析を行う予定です。
 この解析の表6-4アウトプットのイメージといたしましては、各地域ごと九州、阪神、東海、関東と2010年と2001年の濃度差について数値が出るのと、濃度別出現時間の変化等も基準濃度以上50ppb、80ppbと設けて、2001年ケースAとケースBでそれぞれどのような変化があったかということで、越境汚染の影響がどう変化したか評価しようと考えております。
 10ページは、先ほど設定した計算に対して、オキシダント(Ox)とポテンシャルオゾン(PO)の変化量について着目した解析を行うという位置付けになっております。図6-1と図6-2に示しましたように、OxとPOの変化の状況によって、図6-1ですとOxとPOの増加による差が少ない場合は実質的にOxが増加。図6-2に示しましたように、NOタイトレーション効果の変化が大きい場合、OxとPOの増加の量に差があるというグラフになります。
 それを踏まえた上で、各地域に対してOxの変化量およびPOの変化量を見ることで、越境汚染によるものか、NOタイトレーション効果の低下によるものか解析することを想定しております。
 11ページは、東アジア大陸の排出量の増大による影響と国内排出量との関係についてということです。表6-7に示しましたような条件を設定し、シミュレーションを行いたいというふうに考えております。
 まず、東アジア大陸の排出量と国内排出量を2001年と2010年それぞれ設定し、4ケースできますが、その計算結果に対して2001年で設定したケースCを基準に、D、E、Fへの変化について評価します。評価地域としましては、関東は都心と郊外、九州というふうに3つの地域に分けまして、評価したいと考えております。この評価によって、国内のオキシダント濃度の変化に対して、東アジア大陸の排出量の寄与と国内の排出量の寄与のどちらが大きいかといった点について定量的に把握できると考えております。
 12ページでは、NOタイトレーション効果の低下および前駆物質排出量の減少に伴うオキシダント生成量変化の影響についてということで、表6-10に示すような排出量、条件を設定します。東アジア大陸の排出量は2001年で固定。国内の排出量は2001年と2010年というふうに2通り設定します。
 この計算結果を表6-11アウトプットのイメージというふうに示しましたが、関東(都心、郊外)と九州について、Oxの変化量(ΔOx)とPOの変化量(ΔPO)それぞれの変化の具合を整理することによって、オキシダント濃度の上昇がNOタイトレーション効果の低下によるものか、もしくは評価地域内におけるオキシダント生成量の増加によるものか評価できると考えております。
 最後の解析になりますが13ページでは、これまでの前駆物質排出抑制対策の効果について検討いたします。排出量および気象場の設定内容を表6-13に示しましたが、本解析では国内の排出量についてNOxとVOCに分けて、それぞれ2001年、2010年の排出量を設定します。東アジア大陸の排出量は2001年、気象場は2010年というふうに設定します。
 図6-3に示しましたように、ケースCはともに2001年。ケースDはともに2010年ということで、現実にはケースCからケースDのほうに移行したことになるのですが、ケースCを基準にGとDとH。GはNOxが2001年、VOCは2010年。HはNOxは2010年、VOCは2001年。こういう状況でオキシダントに対する濃度がどれぐらい変化しているかということで、削減対策としてNOx単体で行った場合の効果とVOC単体で行ったときの効果がここで評価できるのではないかと考えております。
 以上で説明を終わります。

大原座長 ご説明いただきありがとうございました。この議題に関しましては、技術的な詳細な点については、先ほどご説明いただいた作業部会で議論、検討を進めていくことになろうかと思います。時間も限られておりますので、この場では俯瞰的に見た場合にこのような進め方で大きな問題がないかどうか。とりわけ8ページに感度解析のメニューが掲げられておりますけれども、これで過不足がないかどうかというあたりを中心にご議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。

下原委員 私はシミュレーションが専門ではないですけれど、過去の気象やいろいろなものを含めてシミュレーションが実測値に合うようにという精査はやっていかないといけない。しかし、シミュレーションの結果をもとに将来予測をやる時には、できれば気象条件を外す。例えば温度一定、風の場一定。
将来のオキシダント濃度予測が最終的な目標ですが、その解明にはオキシダント濃度は生成と拡散と消滅の機構が全部入るので複雑です。そんなものは絶対に無理だろう。そうすると気象条件一定でのオキシダントの生成率はどうなのか。気温一定、すべて一定という形で将来予測ができればと思う。
ですから、今のシミュレーションをやって過去のデータで精査してシミュレーション精度を上げていくとしますよね。そのとき大体合ってきた後には、気象条件を一定にしたら経年的にどうだったのだろうか。そこを検証しなければオキシダントの対策が打てない。気象条件を最後には一定にして、対策を考えるというのが大事かと思うのですけれど。

若松委員 それに関連してですけれど、2010年が異常な年だったというのは気象協会であればご存じだと思います。2010年の8月から9月にかけて1カ月以上すごく暑い日が続いて、平年値と全く違う気象場でした。そういったことは結果に影響しますので、ここを選んだ理由も含めて、下原委員のご質問も含めてお答えいただければと思います。

大原座長 2点コメントをいただきました。回答をお願いします。

事務局 異常年の件については勘違いしていた部分があるかと思いますので、それを確認した上で異常年であれば、そこは代表年から外して別の年にするのを検討したいと思います。
 将来予測にあたっては、気象条件を一定にすべきというご意見ですけれども、具体的な将来の対策を考える上で代表的な気象年を固定して、要は発生源やいろいろな対策シナリオに応じた部分だけを固定してどうかという検討の方法にはなるかと考えています。

大原座長 そういう回答でよろしいですか。ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

坂本委員 8ページの一番下のところで「VOC対策の効果によるものか解析する」といった場合、一番重要になるのは植物起源の排出量はどうかということです。今この部分についてはイソプレンやテルペンについては多少の測定がなされているでしょうけれども、もう1つ別の面から、イソプレンからできるエアロゾル、テルペンからできるエアロゾルの分析が最近出てきています。そういうものから逆に、イソプレンはこのぐらいあるだろうとか、テルペンはどうあるだろうというような推定ができる可能性もあると思います。イソプレンなりテルペンなり自然起源のVOCの量を考える場合、学会発表ぐらいでしかまだ出てこないとは思いますが、日本はそういったことをやってくれる人が少なかったのがやっと出てくるようになったので、その辺も見てやっていただけたらと思います。

大原座長 ありがとうございました。植物起源の粒子からBVOCの排出量をさかのぼるというアプローチが可能かどうかということだと思います。これについては今すぐにご回答はできないと思いますので、検討していただいて次の検討会あたりでご報告いただくか、あるいは作業部会で議論をしていただければと思います。

浦野委員 念のために。先ほどからご意見がありますけれども、シミュレーションで現実のモニタリングデータをそっくりそのまま再現することは最初からできないことは、シミュレーションをやっている方はよくご存じだと思います。
 その辺をよく踏まえた上で、できるだけ信頼性があるものにするということで過去の数値との比較は当然ありますけれども、最終的にはかなりシンプルに、先ほど温度一定というのもありましたけれども、幾つかのものをシンプルにしたときに、どういうものがどのぐらい影響してくるのか予測するというのが、本来のシミュレーションの役割です。
 あまり細かなデータをいっぱい入れ込んでいじくり回して、現状と合う、合わないということばかりやっていても、もとの入れるべきデータはみんな中途半端なものしかないのが現実です。一体どういうふうなことが起こったら、あるいは起こしたら、どういうふうに変化していくかということを予測するのが、シミュレーションの役割なので、そのことをよく踏まえて、あまりちょこちょこしたいろいろな情報を入れ過ぎてごちゃごちゃさせるのは正しくないと思います。シミュレーションをやっている方はよくご存じだと思いますけれども、その辺は理解した上でやっていく。
 もう1つは小さな質問で申しわけないですが、5ページ目の表3-5で、NO、NO2、NMHCの統計値のところに「年平均値」と出ています。これは4月から9月の数値の年平均値という意味でしょうか。冬場も全部含めて年平均を出すと、ほかとの対応がよくないような気もしますが、そこは質問です。
 それから、これもまた言葉の問題です。8ページやそのほかにも「排出量の増大による影響」という言葉が出てきます。排出量とは何の排出量なのか。粒子状の影響も含めるとSOxとかいろいろ入ってきますが、ここではあくまでNOxとNMHCあるいはVOCをイメージしているんですか。そうだったら、前駆物質という表現もありますけれども、「排出量の増大」という曖昧な表現にしないで、全体を通して「排出量」という言葉のところはきちっとしておいたほうがいいと思います。

大原座長 ありがとうございます。後段のほうでご質問が2点あったと思います。1つは、「年平均値」というのは5ページのどこでしょうか。

浦野委員 5ページの表3-5の下から4行目。

大原座長 統計値の経年変化の確認のところですね。わかりました。もう1つは、11ページ目等の「排出量の増大」をもう少しスペシフィックにということでありますが、これに関してお願いします。

事務局 5ページの表3-5は「年平均値」ではなく、シミュレーションを実施する期間と同じ暖候期でございます。「排出量」については、何を対象にするか明示するようにいたします。

大原座長 排出量については全部動かすんですよね。

事務局 そうです。

大原座長 オゾンの場合に効くのは前駆物質としてNOxとVOCだけを考えればいいので、そういうセンスで書かれていると思いますので、その点だけを少しコメントしていただければよろしいのではないかと思います。

下原委員 シミュレーションで私が期待しているのは、1つは東北でも夏場に越境があるのかどうかということをシミュレーションで出してほしいとされるのかということがあります。が、一番の対策は、VOCを下げようとかNOxの削減を下げるのを緩和しようとかであったとする。しかし,対策を打っても何も変わらず今のままずっといった時に、濃度がどのぐらいになりますではなくて、生成率がどこまでいくと頭打ちするのか、それを知りたい。タイトレーション効果の影響でオキシダント濃度が上がると言うけれども、どこまでNOx濃度が下がれば頭打ちしてオキシダントの生成が抑えられるのか。生成率の変化を知りたいと思っています。

大原座長 よく理解できないのですが、生成率というのはどういうふうな定義なのかということ。それから、POで見るということは、ある意味で生成率的な指標だと思いますが、それでは不十分なのか。その2点をお願いします。

下原委員 私の言う生成率というのは、普通はオキシダント濃度の予測といったときには風の強さや気温、反応性とか拡散とかあるでしょうけれども、VOCやNOxのタイトレーションを含めて気象条件を一定にしたときに、どの程度オキシダントは生成するのか。今のままでいったときに、NOx濃度が下がってVOCとのバランスが崩れているのがどこまで来れば、オキシダントの生成は下がってくるのか。その辺が明らかになればと思っているのですけれども。

大原座長 事務局から回答はありますか。

事務局 認識不足のところがあるかもしれないですけれど、NOxとかVOCを段階的に減らしていってオゾンの生成がどのように変化するかみる。すなわち等値線図の解析を行うのがいいというご意見だと理解してよろしいでしょうか。

下原委員 はい。

事務局 それについては今年度どこまでできるかはあれですが、来年度も含めてできる部分は環境省や、作業部会とも検討の上、対応したいというふうに思います。

大原座長 今のご意見を聞いていて、ポイントは気象条件を一定にするということかと理解したのですが、そういうことでよろしいでしょうか。

下原委員 対策を視野に入れたときにいろいろな条件が多すぎて、シミュレーションの最終的な形ができても、それが本当に正しいのかどうかというのが検証できない部分がある。いろいろなことを追いたいというのはあるだろうけれども、単純化しなければ対策が見えてこない。最初は実測値に合わせてシミュレーションを精査していくけれども、ある程度できたら今度は対策が打てないような部分、例えば、気象条件や地理的なものを削っていって、どこで対策が打てるのか検討するのがよい。
 今のままで対策を打とうとして、例えばVOC濃度をNOxよりも下げたほうがいいよとなったときに、それが実際には大気の濃度として反映できなかったときに、何年ぐらいまでオキシダント濃度は上がり続けるのか。それでもNOx濃度が下がり続ければ下がっていくだろうというのを、気象条件を除いて予測できればと思っています。

大原座長 将来予測の話は今年度は対象外でありまして、来年度に実施する予定ですので、そのときにご議論いただきたいと思います。
 一方、気象的な要因という点については、感度解析のケースを見ていただければわかりますように、それぞれ気象場を固定して感度解析をしています。今おっしゃられた点は考慮した上で感度解析していると思いますので、これで基本的に問題はないと思います。気象の年々変動がオキシダントのトレンドにどのぐらい影響しているかといった点を、気象場を固定して10年20年の感度解析をするということはあり得ると思いますが、今年度それをやると重たいので無理だろうという判断をされたと理解しております。そういうことでよろしいですか。

下原委員 はい。

大原座長 ほかにはいかがでしょうか。

星委員 植物起源VOCの関連ですけれども、7ページで植物起源VOCの不確実性について検討するとなっていて、これは作業部会でどういうふうにやるか検討していただければと思います。13ページの「これまでの前駆物質排出抑制対策の効果について」との関連で、前駆物質排出抑制対策という排出量の変化の中に植物VOCの変化あるいはその差し引きがどうなっているのか。それを、人為起源のVOCの排出量の対策の効果を植物起源の部分を差し引いた形でうまく表されるのかをお尋ねしたいのですが。

大原座長 ありがとうございました。事務局からお願いします。

事務局 前駆物質排出抑制対策の効果の中で、人為起源が変化した分と植物起源の排出が変化した分を切り分けて評価できないかというご指摘ですか。

星委員 人為起源の対策をみんなでやったので、それの効果を植物VOCの排出量の変化に影響されずに、どのぐらいあったのかということを示せるのかということをお尋ねしたいのですが。

事務局 いま考えている13ページのシミュレーションの中では、植物起源のものについては固定して、人為起源VOCの排出量を動かすという想定をしています。そういう意味では、純粋に人為起源VOCの排出抑制の効果が見られるという判断をしています。

大原座長 13ページ目の国内排出量(VOC)というところは、人為起源といったようなことを明記しておいてください。
 それと、今ご指摘いただいた点で重要なのは、BVOCが2001年と2010年で大きく変化していないということをチェックしておく必要があると思います。

事務局 それについては、実際の作業の中でどこかで確認はしたいと思います。

大原座長 お願いします。

板野委員 昨年度の検討会でも指摘させていただいたので、もしかしたらもう既に考慮いただいているかもしれないですけれども、NOによるタイトレーションの効果を検証しようとすると、時間値で言うとNOxが100ppbぐらいになるような現象を再現できないと、タイトレーションの効果は正しく評価できないと思います。今の10km格子間隔では、タイトレーションが非常に薄まった形でしか評価できなくなってしまうことを注意する必要があると思っています。

大原座長 ありがとうございました。とても重要な指摘だと私は思いますが、いかがでしょうか。

事務局 ご指摘のとおり、タイトレーション効果を正確に把握しようとすると10km格子だと粗い可能性があります。モデル解像度の限界で再現できない部分については、解釈するときに留意することを考えております。

板野委員 ただ、オキシダントが増加している原因が越境なのか、タイトレーションなのか切り分けをするというイメージのことが書かれています。そうしようとすると、タイトレーションの程度がどのくらいなのかある程度正確に再現できていないと、寄与割合は出せないのではないですか。

大原座長 効果分解能に関する議論は作業部会でもさせていただきたいと思います。と同時に、私の感覚からすると、タイトレーションの効果をシミュレーションで表現はできないだろうと思います。局地性がありますのでどんなに細かくしても表現できないと思います。そこは、観測データの解析とシミュレーション結果をうまくコンバインして、タイトレーションによる効果がどのぐらいなのかというのを半定量的に明らかにするということではないかと思います。

指宿委員 それぞれ表がある中で、評価対象物質がNMHCと書いてありますけれども、現実には全部VOCではないかと思いますが、どうでしょうか。5ページで精度検証の実施内容が書いてあってNMHCですが、現実には植物の場合にはVOCという表現でないと合わない。その辺は現実にこういうふうにやるのか、あるいはNMHCじゃないと発生源インベントリのデータがないのか。その辺ははっきりしておいたほうがいいと思います。

大原座長 ありがとうございました。事務局から回答をお願いします。

事務局 5ページ等で大気質の検証のところでNMHCが入っているのは、大気常時監視局の測定値として得られたのがNMHCだということです。モデルの中ではNMHCの値そのものが出るわけではなくて、使用するモデルによって違いますが、VOCの成分のグループごとに濃度が出ますので、それにppbCに関する係数を掛けてモデル上のNMHC相当値に相当するものを実測値と比較しようという意図で記載しております。

指宿委員 NMHCはそこだけだという理解でいいんですか。例えば未計測のVOCの話になると、NMHCというくくりでは無理で、自然起源VOCのほうが重要になってくると思うんです。その辺、どういう立場からやるのかというのが指標自身が非常に揺らいでいるので、そこをはっきりさせてほしいと思います。

事務局 個別成分のVOCについても、先ほどお話があったとおり環境省さんでも、バイオジェニックのものを測定しているデータがどこまで利用できるかはわからないですが去年からあります。個別のVOC成分についてどこまでできるか明確にお答えはできないですが、できる分については断片的にでもやっていきたいと思っています。

大原座長 NMHCは常時測定局のデータとしてあるので検証がしっかりできるということで、こういうふうに書いてあるのだと思います。ご指摘いただいたとおりで、VOCの成分についても環境省の調査等を含めて若干ありますよね。対象年は10年カバーしているから大丈夫でしょう。少ないデータであろうかと思いますけれども、成分で検証しておくことは重要かと思いますので、ぜひご検討いただければと思います。

浦野委員 これも用語の正確性の問題ですけれども、大気中の濃度等のシミュレーション結果との比較をするときは、VOC個別は全国でトレンドまではとれないので、NMHCしかないわけです。ただ、排出量の影響を見るときには、NMHCの排出量は出てきませんのでVOCであって、しかもその中に人為的なものと自然由来とがある。その辺は言葉を区別してどこでどうするのかという、例えば表6-1や6-2はシミュレーション設定のところになりますから、NMHCではなくてVOCなわけです。VOC排出量の変化によるものとか、それも自然由来とそうでないものとか、海外は自然由来がよくわからないとか、国内は自然由来と分けているとか、そういう区別があるわけなのです。
 やはり、言葉を正確にしてNMHCという言葉で行う。それはモニタリングしている数値を意味する。排出量のシミュレーションをするときはVOC、それも人為起源のVOCなのか、自然由来も入れたVOCなのか、両方か。その辺を区別して用語を使い分けて表記しておかないと、それぞれ受け取る側もそうですし、計算する側もわからなくなってくる。ぜひその辺はしっかりお願いしたい。

大原座長 その点は回答いただかなくて結構ですので、資料の改訂ということで反映していただければと思います。ありがとうございました。
 そろそろ時間はまいっているのですが、重要なコメント等がございましたら。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

議題(3)シミュレーションによる対策の検討について(資料3)
(これまでの対策が現状のオキシダント濃度に及ぼした影響の検討)

大原座長 それでは3番目の議題であります。資料3に基づいて事務局からご説明をお願いします。

事務局 シミュレーションによる対策の検討について(これまでの対策が現状のオキシダント濃度に及ぼした影響の検討)ということで、説明させていただきます。
 検討内容といたしまして、シミュレーションによる解析によって、国内のオキシダント濃度に対する越境汚染の影響、東アジア大陸からの排出量および国内の排出量の寄与の大きさ、NOタイトレーション効果の低下の影響および前駆物質排出量の減少による影響について明らかになることが期待されます。
 これら解析結果のほかにも、昨年度の調査検討会で得られた知見やこれまでに実施された発生源対策を考慮し、これまでの対策が現状のオキシダント濃度に及ぼした影響について検討いたします。
 以上です

大原座長 ありがとうございました。この点につきましていかがでしょうか。

浦野委員 最初の資料1にも出ているのですけれども、来年度はともかくとして、今年度のシミュレーションによる対策の検討内容の言葉の一番下、「これまでの対策が現状のオキシダント濃度に及ぼした影響について検討する」。これは過去の対策の影響だけをやるようになっています。それをやる必要はあると思いますが、言葉として「オキシダント濃度に及ぼした影響を解析し、今後の方向性について検討する」としていただかないと。
 過去の政策がいいか悪いかは去年からいろいろやっている。これだけシミュレーションを一生懸命やっていて、それだけまたやるのが目的みたいになるのは非常に具合が悪い。それを解析するのは結構ですけれど、あくまでも今後の対策の方向性を検討していただくというふうに、訂正していただきたい。

大原座長 私もそのとおりだと思います。今のご指摘どおり、「及ぼした影響を解析し、今後の対策の方向性について検討する」というふうにしていただけますでしょうか。それでご異論ありませんね。ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

井上委員 先ほど言い忘れたことですけれども、資料2の不確実性の検討のところで、これは濃度に対する不確実性を検討することだと思いますが、今後の対策やこれまでの対策を考えるにあたっては、モデルの感度に与える不確実性の影響も必要なのではないかと思います。例えば植物起源のVOCは2.5倍不確実性があるということですが、もちろん濃度にもある程度影響を与えるでしょうけれども、仮に濃度にあまり影響を与えないとしても、排出削減対策の感度には影響を与えるということもあります。

大原座長 もう少しかみ砕いていただけると。

指宿委員 不確実性と感度解析という、その両者をどういうふうに区別しているのかというのがわかりにくい。そういうことなのではないかと思うんです。私もこれを読んだ限りでは、感度解析的なものしかここからは読み取れない。

大原座長 このような感度解析をすることによって、不確実性をどう評価するのかよく見えないという、井上委員もそういうことでしょうか。

井上委員 はい。

大原座長 そう言われると、そういうことかもしれませんがいかがですか。回答するのは難しいような気もしますが。

事務局 植物起源の部分について言えば、実際にやろうとしているのは植物起源の排出量自体は推定の方法によって変わるので、その差を考慮して、例えば今の推定値の場合はどれぐらいオゾン濃度が変わるものなのか、最低限そこはつかむ必要があるだろう。その結果次第で、今後進める解析の結果についても、すべてその2パターンでやるのは難しいと思いますが、モデルケースでこれぐらい差があるというのを念頭に置いた上で、対策を考えていくというような利用方法を想定しています。

大原座長 井上委員、よろしいですか。

井上委員 はい。要するに、後の解析に生かされせるわけですね。

大原座長 と理解していますが。

井上委員 今のですと、対策の検討のシミュレーションのところにも、植物起源が大きかったり小さかったりという感度に組み込まれるということですね。

事務局 すべてのシミュレーションで植物起源をベースケースと倍にした場合でというのは難しいかと思っていますので、それはモデルケースの中でやってこれぐらいの差があるということは考慮した上で対策を考えるとか、そういう使い方になるかと思っています。

大原座長 今の点につきましては、井上委員には作業部会に入っていただいておりますので、その場で議論させていただければと思います。ありがとうございます。

若松委員 今年度の作業ではないと思いますが、将来的に対策効果と環境の質を比較するときの指標として、今回提案された3年平均値がターゲットになるということで進めると理解してよろしいのでしょうか。次年度以降、8時間平均値の日最高値の98パーセンタイル値の3年平均値をターゲットにして、検討すると理解してよろしいですよね。かなり大変な作業になると思うんです。

大原座長 そうですね。私もそのように理解しておりますけれども、作業量とのバランスがありますので、それは作業を具体化するときに検討して皆さんにお諮りするという段取りになろうかと思います。やはり、3年間ぐらい平均しないと、気象の年々変動の影響をどうしても受けますので妥当な結論が得られないと思います。

若松委員 3年間違う気象データを使うということを意味しますよね。

大原座長 そうですね。

若松委員 今回のこれは気象データを統一するために同じ年でということですから、設定年をどうするかがすごく難しいと思うんです。

大原座長 そのとおりだと思います。今年度は感度解析的な色合いが強くて、恐らく想定しているのは来年度もう少しリアルにより近い形での対策検討、評価を行っていく。そういう段取りになるのではないかと考えておりますが、これは環境省からお答えいただくことはできますか。もし無理でしたら気象協会さんでも結構だと思います。

是澤課長 今までのご指摘も含めまして、お答えさせていただきたいと思います。今日の検討会の中で、まずは今年度やるべきことをもう少し明確化すべきところがある、あるいは今から作業部会の中で詰めていただくところのご指摘もいただいたと思います。そういったものも整理させていただいて、今年度については基本的には将来予測のところまでではなく、あるいは今まさにご指摘のありましたような年々変化の影響をどう見るかまではやりきれないという限界がある中で、まず進めさせていただくことになるかと思っております。
 その上で来年度実施すべきことにつきましては、今年度の検討の進み具合も見ながら、年度末にかけて、ここが課題だからここまでのことを来年度やりましょうという目的を明らかにしていって、やるべきことを再度取りまとめていただいて、来年度の業務ということで考えさせていただけたらと思っております。

大原座長 ありがとうございます。若松委員、よろしいでしょうか。

若松委員 はい。

大原座長 この検討会で3年平均で評価するという指標を提案しているわけですから、この検討会では積極的にそれを使わないと自己矛盾を起こすことになると思いますので、その点だけは指摘させていただきたいと思います。
 時間がまただいぶありますが、最後にこれまで発言できなかったような点がございましたらお願いいたします。何でも結構です。

星委員 資料3の表1-1で、自動車とVOC規制、PRTRというふうに影響を及ぼした対策が書いてあります。VOC規制については、VOC規制の中で発生源あるいは業態別にどういうふうな排出量の削減があって、それがどういうふうに効いたかということを検討されるのかということです。VOC側から言うと、排出量についてはVOC規制の対象になった範囲のほうが、自動車から出ているよりも多いと思うんです。自動車は規制の中身が非常に細かく分かれていて、長期規制の影響がこのぐらいあったとか、短期規制の影響があったとか出るかもしれませんが、固定発生源VOC規制の個々の対策の影響は出す予定になっているのかどうかお尋ねします。

大原座長 基本的に来年度だとは思いますけれども、もしお答えできることがございましたお願いします。

事務局 今後の対策を考える上で、これまでの対策の効果検討ということで、少なくとも今年度は自動車対策だけがあった場合とか、固定蒸発の対策だけがあった場合とか、そこまで切り分けてというのは考えていないです。来年度以降具体的な対策を考える上では、当然過去の例えば自動車の規制だけだったらどうだったとか、その辺の評価は必要になってくるという認識はありますけれども、具体的に現状でどこまで自動車を細かく対策を分けて検証するかというのは今のところ未定です。

大原座長 星委員、よろしいですか。

星委員 はい。

大原座長 VOCの規制の効果がどのくらいあるのかということをシミュレーションモデルを通して評価するというのは、この検討会の重要な命題だと思います。少なくともVOCの固定蒸発、発生源の規制による効果の評価については、来年度必ずやるべき仕事だろうというふうに思います。

金谷委員 私も作業部会に入っているので、そちらで今後議論を進めなきゃいけないなと自分で認識している点をあえて申し上げておきたいです。モデルのバリデーションのところで、越境汚染の寄与がどれだけあるかを定量的に明らかにするという観点に立つと、外国での測定点をどれだけ用いて評価できるかというところも重要なポイントになろうかと思います。
 資料2の3ページにEANETのデータを使うと書いてあり、地図では外国の点がたくさんあるように見えていますが、実際に使えるのはほとんどないです。表3-1では辺戸、隠岐、小笠原、利尻と国内の点だけ挙げておられるのは、そういうニュアンスかと思いますけれども、実際に本当にモデルがそこの部分を表現できているのかということは、私どもも断片的なデータになりますけれどもほかのプロジェクトで集めてきたデータを使うとか、環境研でもさまざまなデータをお持ちかと思いますので、そういったもので最善の努力をして進める必要があろうかと思います。私もワーキングに持ち帰ってその点は議論を進めたいと思いますけれども、そういう認識を皆さんで共有できたらと思いました。

大原座長 重要なご指摘をいただきありがとうございました。図3-1は確かにサイトがたくさん書かれていてデータがたくさんあるように思えてしまいますが、オゾンのデータはきわめて限定的ですので、EANETのデータだけではなくて、ほかの使えるデータをできるだけ活用してバリデーションを進めるというのは大事かと思います。ありがとうございます。

浦野委員 資料3の表1-1は、固定発生源のNOx対策はずっと以前からやっているから変わらないという考え方、あるいはそれの影響をどうかというのは、前に福岡市からも議論がありましたが、固定発生源のNOx対策は全く頭にないのか。あるいは、それをどういうふうに取り扱うのか。

大原座長 ありがとうございます。この点はいかがですか。単なる漏れではないかと私は思いますが、どうでしょうか。

事務局 資料2の13ページに、これまでの前駆物質排出抑制対策の効果ということで、2001年と2010年で人為起源のNOxとVOCの排出量を変えた場合でシミュレーションを行うというのを予定しています。人為起源NOxの中に固定煙源のものも入っていますので、2001年から2010年の間で固定煙源から出てくるNOxの排出量の変化も込みで評価するという形になります。

浦野委員 表1-1に一応それらしく入れとくということですね。これだと、自動車とVOCとかしかないので。

是澤課長 恐らく、明確な制度上変化があった部分がないので表から漏れているのだと思いますが、ご指摘のとおりそこは重要なところですので、もちろん含めて対策をお願いしたいと思っています。

大原座長 ありがとうございました。産業界から来られておられる八田委員、橋本委員、何かございましたら。

橋本委員 資料3の表1-1ですが、これは行政絡みだから平成を使っていると思うんですけれど、それまでは2000年台という数字が記されていて、平成22年は2010年ということでしょうけれど、併記していただくか、どちらかに統一していただけると読みやすいと思います。

大原座長 ありがとうございます。この点は改訂をお願いします。

八田委員 対策の検討が一番気になるのですが、検討の時期、スケジュール、いつごろ具体的に何をやっていくのかというのが、いただいている資料の中ではあまり見えてこない。今年度も、資料1の平成26年度のスケジュールではシミュレーションによる対策の検討ということで2月から3月まで線が引いてありますけれども、具体的に今年度は何をやろうとしているのか。シミュレーションは今年度、来年度の2年間かけてやるということなので、来年度はどういうことを。今年度、来年度のスケジュールを具体的にしていただきたいと思います。

大原座長 ありがとうございました。来年度につきましては何か書けるようなことはありますか。まだ未定なのでスケジュールまでは書けないかと思いますが、来年度どういったようなことをやるかに関しては、資料1の図3-1に一応項目だけは挙げられていると思いますが。

事務局 具体的に対策案も含めて来年度のスケジュールは、今年度の評価結果を見ながらということもありますので、現状ではまだ決まっていない状況でございます。

大原座長 よろしいですか。

八田委員 はい。

大原座長 ありがとうございました。ほかにはございませんか。それでは、これで本日の議事につきましては以上であります。議事の進行を事務局にお返ししたいと思います。

議題(4)その他

事務局 大原座長、ありがとうございました。本日は皆様、長時間にわたりご討議いただきましてありがとうございました。
 先ほどから出ております作業部会ですが、10月3日を予定しておりますので、こちらに出席の方はよろしくお願いいたします。次回の検討会につきましては、スケジュール案にありますように12月下旬を予定しておりますので、委員の皆様には後日日程の調整をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の検討会はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。

以上

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