環境省大気環境・自動車対策大気汚染状況・常時監視関係光化学オキシダント関連情報光化学オキシダント調査検討会(平成23年度)

第2回光化学オキシダント調査検討会 会議録

1.日時 平成23年10月26日(水)13:30~16:30

2.場所 経済産業省別館 10F 1028会議室

3.出席者(五十音順 敬称略)

(委員)
秋元 肇  安藤 研司  石井康一郎  板野 泰之
井上 和也  指宿 堯嗣  岩崎 好陽  浦野 紘平
大原 利眞  金谷 有剛  坂本 和彦  下原 孝章
竹内 庸夫  土屋 徳之  橋本 光正  若松 伸司
(欠席)
向井 人史
(環境省)
山本大気環境課長 山本大気環境課長補佐 栗林大気環境課長補佐
小林大気環境課長補佐 吉崎大気環境課長補佐 芳川係長
(その他)
首都大学東京 梶井教授
(独)国立環境研究所 谷本室長

4.議題

(1)シミュレーションモデルの概要等について
[1]予測モデルの概要、開発の経緯について
[2]排出インベントリの設定について
[3]予測モデルの精度検証について
(2)科学的知見の収集について
[1]都市域における大気光化学反応について(首都大学東京 梶井教授)
[2]日本における過去10年間の地表オゾンのトレンド((独)国立環境研究所 谷本室長)
(3)今度の審議の進め方について

5.配付資料

資料1-1
予測モデルの概要、開発の経緯
資料1-2
排出インベントリの設定
資料1-3
予測モデルの精度検証について
資料2-1
都市域における大気光化学反応について
- 未同定VOCのOH反応性寄与推定 -
資料2-2
日本における過去10年間の地表オゾンのトレンド:
観測とモデルの比較・欧米の観測との比較・国際的な研究活動
資料3
今後の審議の進め方(案)
参考資料1
光化学オキシダント調査検討会委員名簿
参考資料2
光化学オキシダント生成シミュレーション
(第1回検討会資料2-4)
参考資料3
光化学オキシダント調査検討会(第1回)における主な意見

6.議事

環境省 芳川係長お待たせいたしました。定刻を過ぎましたので、ただいまから第2回光化学オキシダント調査検討会を開催させていただきます。本日は各委員をはじめ関係者の皆様におかれましては、大変お忙しい中ご出席いただきありがとうございます。本日司会を務めさせていただきます環境省大気環境課の芳川と申します。よろしくお願いします。
まずはじめに、前回ご欠席のためご紹介できなかった委員のご紹介をさせていただきます。埼玉県の環境科学国際センターの竹内委員でございます。

竹内委員 竹内です。よろしくお願いいたします。

環境省 芳川係長また本日は第2回目ということですので、各委員等のご紹介、設置要綱等のご説明は省略させていただきます。よろしくお願いします。
また本日の資料でございますが、お手元の議事次第の1ページの下の方に配布資料一覧を掲載しております。資料の確認は省略させていただきますので、もし資料の不足等がございましたら会議中でも結構でございますので、お申し付けいただけましたらありがたいと思います。
それではこれ以降の議事進行につきましては秋元座長にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

秋元座長みなさんこんにちは。今日は第2回目ですので特別な挨拶はなく、早速議事に入りたいと思います。今日の議事は大きく2つになりまして、1つ目は、前回最後に報告のあったシミュレーションモデルの経過報告ですが、これはいろんなご質問がおありかと思いましたので、今日、前半に改めて議題として取り上げます。これについては国立環境研究所の大原委員から詳しいご説明をしていただくことになっております。2つ目は、科学的知見の収集についてということで、今回は2人、次回は5人からのご講演を受けることになっております。今回は首都大学東京の梶井教授、それから国立環境研究所の谷本室長、お二人からのプレゼンをお願いすることになっておりますのでよろしくお願いします。それではまず最初の議題の「(1)シミュレーションモデルの概要等について」、これは資料が「[1]予測モデルの概要、開発の経緯について」、「[2]排出インベントリの設定について」、「[3]予測モデルの精度検証について」と分かれておりますが、これを全部続けて大原委員からご説明いただくことになっております。それが終わった後で前回シミュレーションに関していくつかご質問があったのに対して事務局としての回答をまとめておりますので、事務局からそこの部分の説明をお願いすることになっております。
それではよろしいでしょうか。では「シミュレーションモデルの概要等について」の説明を大原委員の方からお願いします。よろしくお願いします。

大原委員(資料1-1の説明)
(資料1-2の説明)
(資料1-3 p.1~22の説明)

秋元座長はい、ありがとうございます。それでは引き続いて事務局から、前回のシミュレーションに対する質問への回答をまとめられているようなのでお願いします。

山本課長補佐(資料1-3 p.23の説明)

秋元座長はい。ありがとうございました。非常にわかりやすく大原委員、事務局の方からご説明いただいたかと思うのですが、この後、質疑の時間にあてたいと思います。それではいろいろとご質問あるかと思いますがよろしくお願いします。

浦野委員最後の前回検討会での質問の2つめは私が質問したことだと思うのですが、これは繰り返しになりますけれど、この委員会そのものが今後のオキシダント対策の政策を考える上で何を調査研究する必要があるかをはっきりさせるというのがこの委員会の役割だということなのですが、ある政策、例えばVOC削減とかNOx削減あるいはその他の対策を取った時に、オキシダント濃度がどうなるかということを予測せざるを得ないわけですね。予測するということはシミュレーションを頼りにするしかないわけなので、非常にこのシミュレーションの計算方法というのは非常に重要だし、期待されているわけです。で、今日、お話を伺うと相当努力をされているのですけれど、まず第一にどういうことを目標にして政策をとるのか、ということをある程度、一つにしなくてもいいですけれど、例えば60ppb以下の日を減らすのか、100ppb以下の日を減らすのか、場所を減らすのか、120ppb以上の日数とかを減らすのかといった目標をこの委員会で当面これ、次これでもいいですけれど、ある程度強制的に、作る。その上で目標の部分を精度良く計算するシミュレーションを考えてもらうことが大事だということです。だから低い日は少し外れていても良い、あるいは夜間少し外れていても良い、だけど高いところほど日数とか数はよく合いますよというシミュレーションが欲しいわけですから、そのあたりをはっきりさせる。研究としてはデータを合わせたいに決まっているのですけれど、行政的には結果的には低いところを一生懸命合わせる必要はあまりないわけです。もちろん理由は考えなければいけませんけれど。それを踏まえると、今日伺っていると、今かなり進行していて概ね合っているという話になるのですが、行政としては、概ねでは困るのです。例えば一番大事な120ppbを超える日数が概ね合ったというのですけれど、具体的に平成13、17、19年の3年間の各月を見てみると、120ppbを超えた日というのは例えば平成19年で実際は52なのだけど、計算では28です。平成17年も55が24と半分くらいなのです。これで行政的に概ねあったと言えるのでしょうか。シミュレーションとしてはこれぐらいで当面しょうがないかと思うのですけれど、やはり120ppbを超えるような日をできるだけ正確に、ようするに倍も違ってしまうとVOCを3割削減してシミュレーションをしても、例えばその日が3割ぐらいしか仮に減らないとしたらシミュレーションで倍も誤差があったら政策の説得力がないわけです。ですからそういう意味でやはりどこを精度良くするのかという目標とかですね、それから概ね良いですよ、ではなくそこが合わない理由を一生懸命考えていただくというのが大事で、その考える課題の方を中心にお話を今後いただきたいと思います。まあ今日は全体ですからいいですが、今後、特に課題とするとまずここにも課題が書いてございますけれど、モデルの課題があります、そのモデル自身もいくつかの仮定があるわけですよね。重要な仮定がどこにあって、それがまあまあ日本のこの場所に使うのには良いけど、ここの部分だけがちょっと怪しいとかもうちょっとなんとかしたいとかですね、あるいは入れる数値、まず全国の年間のものを出して、それから時間と空間を分けているわけですけれども、やっぱりおおもとの全国の数値がここにも書いてあるように海外の数値であったり、非常に古い平成7年とかとんでもなく古いようなものがある。それをもっと新しいものにするにはどことどこの情報が必要なのか、特に影響因子が大きいところがここだから、ここはもうちょっと新しい情報が欲しい、あるいはPRTRなども自動車とかいろいろなところが出していますから、ほかのとの連携も含めて考えなくてはいけない。全体の排出量のところで、相当量のばらつき、誤差があるが、本当に誤差があるのかあるいは大きな部分はそう違いがないとみなせるのかということあたりは、やっている方は多分お分かりだと思うので、そこを整理して一覧表のような形で出していただきたい。うまくいっていますよ、ではなくむしろこれからの研究としてはこういうところが必要で、例えばデータ集めなどで行政が支援してください、というような形の情報をいただきたい。それが出ることで、この検討会の中でもかなり経験のある委員もおられますので、こういう情報もあるのではないか、こういうアプローチもあるのではないかなどを議論するのがこの会の役割ではないかと思います。長くなりますけれどモデルの特徴と課題、それから仮定とか使っているデータの信頼性、特に重要なデータの信頼性とそれを高めるとしたらどういう問題点があるのか、ということをきちっと一覧表のような形で整理していただくということと、また大前提としてどの部分を、例えば関東とか主要な地域の120ppbを超えるとか100ppb以上のところをできるだけ精度良く出すのか目標もきちっと決めて議論をするということが大事なのではないかなと、そういう風に思っています。
それからこのお答えの中で、未把握の発生源とかいろいろと書いてあるのですけれど、未把握とか他にもいろいろ野焼きとかいっぱい計算しているのですけれど、オキシダントに限った時にマイナーな条件は今のままでいい、いじらない方が良いのではないかと思うのですけれど。逆に言えば、そんなものはないと見なしても大して変わらないというのも全部並列して表示して議論するとかえって混乱するので、非常に重要なところはここのところで、ここについての数字の信頼性とかあるいは配分の信頼性とかは、どうしてもシミュレーションとはシミュレートですから事実とは違うのでまったく一致することはできないのですけれど、もう少し政策の効果の傾向がもう少しクリアになるような、少なくとも2倍も違わないような結果が欲しいと思います。その辺をよろしくお願いします。

秋元座長はい。ありがとうございました。いくつか重要なご指摘があったかと思うのですが、いくつかの指摘を分けて考えた方が良いような気がします。まず対象ですね、今、言われました120ppbを超えたというようなものをインデックスにしていいのかという、これは非常に大きな問題だと思います。今まで日本では注意報基準というものがあったものだからそれを超えた日数が何日とばかりが表に出たのだけれど、しっかりした数字ではないので、それだけを対象としていると、合う合わないの振れが非常に大きくなるようなことがあるというのが一つと、健康影響から言って、オキシダントがどの辺が一番悪いのかそれを確かめなければいけないですね。そういう疫学調査の最近の知見を入れた時にどのくらい、例えば60~100も重要だろうし、100以上のところも重要だろうし、それに比べて120を超えたというのはどういう意味があるか、本当はそこに立ち返ってどこをターゲットにするかということをやるべきだと思うのですが、これはある程度の期間を入れてきちんとやっていかないと答えが出ない問題だと思います。そこはこの検討会としては当面、どこにするかというのは次々回ぐらいまでに検討いただきたいというのは一つですね。
         それから不確実性に関する話については、大きく分けて先程ご指摘のあった3年間、平成13年、17年、19年、こういうものの合う合わないというものを見ていても年によって合う月合わない月が非常に大きくずれている、それはやっぱり一つは気象条件が大きく効いているのでどういう気象条件だと合わないのか、というようなものをきちんと精査していただくのが良いかと思います。例えば7月や8月は比較的合っていても4月5月6月あたりがあっていないだとかというようなことはやはり原因があるはずで、その辺がはっきりしてくるとその次のステップに進めるのではないかなと、そのような気象条件との問題が一つと、もう一つは例えばVOCがどれだけ実際に排出されてモデルに組み込まれているかということで、これは別の意味でまた重要なわけで、これがこのあと梶井先生の方からプレゼンがあると思いますけれど、例えばOHなど光化学の中間体のようなものを直接どれだけ相手と反応しているかということがちゃんとモデルなりに分析されているものがどれだけ把握しているかなどその辺との関係が出てくるかと思います。浦野委員がおっしゃるのはその辺の個々の問題の何が問題なのかということを明らかにしておくべきだということで、私もそのように思いますのでこの検討会のできる範囲でやっていきたいと私も思っています。それ以外の方、どうぞご質問を。

金谷委員今の後半のお話とも関連しますが、大原委員に確認させていただきたいことは、このFAMIKAなどの観測等でのNOx、オゾンとの比較を観測とおっしゃっていましたが、そのときVOCやNMHCなどの行政のモニタリングデータとシミュレーションとの比較はされているか、大小関係はどんな感じなどの情報がありましたらよろしくお願いします。

大原委員環境省の調査で比較したというのは記憶が定かではないのですが、研究ベースでFAMIKAの解析をする時に埼玉で測定された時間値のデータ20成分ぐらいだったと思いますけれど、それと比較はしていて合うのもあるし合わないのもあるというのが正直なところです。それで確か特徴としては芳香族系は比較的良く合っていたと思います。ちょっと合わないのがどれかというのがはっきり覚えていないのですけれど、成分によってかなり違っていたという風に思います。

秋元座長他にご質問、ございませんか。

指宿委員今の質問と関連するのですが、今日の全体のご説明の中で非常に分かりにくくしている原因は、こういう風にモデルと測定データが大体合っているとか合っていないとか、それは見れば分かるのですが、ではそれの原因が何であるかというご指摘がないのです。それを是非これから議論をしていただければと思います。120ppb以上の日数が7月ではモデルと計算が合うのですが、それ以外の月では非常に違っていると、それは7月と6月でインベントリの出し方が違っていたりとか、そういう問題があるのかもしれない。モデルをやられていてお気づきになっている点があると思うのですが、そういうところを出していただけると非常に議論が深まるのではないかなと思います。例えば先程から低濃度の時にNOによるタイトレーションでオゾンが減ると、ではこれについてNOの濃度をシミュレーションして実際にそこを合わせるということをやられたのかどうか、それを合わせるとオゾンのピークの方が合わなくなるとかそういうチューニングの話が出てくると思うのですが、オゾンの最高濃度を合わせるということにあまりにフォーカスするために他のデータの説明がつかなくなるということがあるというような説明も非常に重要だと思いますし、この中で最も出していただきたいと思ったのはモデルの計算結果によってVOCの現実の例えばトルエンの濃度とモデルで計算したトルエンの時間変化あるいは計算結果そこがどういう風に合うのか合わないのか、そういう検証、比較というものが非常に重要なのではないかなと、それがVOCについて対策を取るときの大きな判断基準になるだろうと、そういうことをこの中でみなさんで議論を是非してみたいなという風に思っています。

秋元座長はい。ありがとうございました。大原委員、何かレスポンスありますか。

大原委員至極ごもっともだという風に思います。私もご指摘、その通りだと思いますが、この検討会でどういった体制、どういった検討を行っていくのかに対してもし必要性があるということであるのならば、それに関する議論をしていただきたいと思うのですが、これまでの調査の結果を取りまとめたものが今日、ご報告した通りでありまして、必ずしもきめ細かい解析まで踏み込んだ点についてまですべて実施されているわけではない。ですからここで出された課題についてはこれからその視点での解析をする必要になってくると意味において、どういった体制でそういう検討を行うというあたりを環境省を含めてご議論いただければと思います。

秋元座長ありがとうございました。要するに最後に言われていたVOCとの比較なんていうのはVOCのモニタリングデータというのがほとんど手に入らないというのが最大の問題で、それをまずやらないといけないのですよね。だからそういうこともこの検討会の中で一つの結論に入れたいと思うのですが、次、ありますか。

岩崎委員最後に大原委員の方から今後の検討の課題みたいなことをお聞かせいただいたので、私もその通りで、やはりシミュレーションをやられた先生方が集まっていただいて、今回の予測となぜ一致しなかったという部分、特にオキシダントに関しての見直しという言い方はおかしいのですが、どこにシミュレーションの問題があったのかを実際にやられた先生方で一度検討して欲しいなと。

大原委員それは基本的にはしています。

岩崎委員もう一つですね、ちょっとお聞きしたかったのは前回もちょっとお話したのですが、植物の影響が非常に大きくて植物の発生源が170万tという数字が前回の資料にも出ていたと思うのですが、これは毎年同じエミッション量でずっと年次出ているのかと思ったら、今日の資料を見ますと気温と日射量で補正してあるとかいろんなことが書いているのですね。そういうのが年度ごとに例えば日射量だとか季節によっての変化量というのはとらえられているのかどうかということですね。それをちょっと教えていただけますか。

大原委員とらえられているかというのは評価がすごく難しくて、いまのところ生物起源のVOCの放出量が例えば関東で何tだと、それが正しいかということを検証する術というのはたぶん世界的に見てもないという風に思うのですね。それ自体が非常に難しい課題であるということはまず認識していただきたいと思いますが、今の生物起源VOCのインベントリには日射量、気温のパラメータとして推計することにしておりますので、そういった意味におけるその季節変動、気象の変化に伴う放出量の変化は入れています。ただあっているかどうかは分かりません。

浦野委員シミュレーションをする場合、海外から来る分については先程の質問の回答で、海外は海外でいろいろされているようですが、それを3時間おきとかですね、何kmメッシュでというのはそのくらいは私はやむを得ないと思うのですけれど、他のところからすると一番大きいのは座長がお話しされた気象条件と、それからVOCの種類別の発生源、あとはNOxだと思います。NOxの方はNOxの方でそれぞれ問題はあるのですけれど、やはり気象とVOCの種類ごとの発生場所、発生時間というのが一番大きな影響があるという風に私は思いまして、それを正しいかどうか検証するというのは、今おっしゃったように難しいのですけれど、ただ自然由来のもの森林由来で例えば日照と気温とかで補正するという意味、補正はどうやったのか、どういう仮定なのか、どういう根拠なのか、それがもしずれたらどのくらい変わってくるのか、というあたりはちゃんとお示しいただかないと、あるいは他のVOCでもそうですけれど、VOCはものすごい種類があるわけで、発生源もいろいろあるわけですけれど、主要なものというのがある程度あるわけで、先程のお話だとトルエンはそこそこ合っているというお話しがありましたけれど、では合っていないのはなんだろうというのがあって、合っていなくて非常に大きな発生源ファクターのものがあるとすればそこを中心に精度を上げなければいけないわけで、特に森林由来だと普通の工場由来のものとまったく違うものが出ていますから、その辺が大きく効くのか効かないのか、VOCの発生の主要なところが何かというのと算定した根拠が妥当なのかどうか、解析したのかということをしっかり示していただくということが気象の問題をどのくらいいじっていけるのかというか、気象は気象でデータが出ているのですが、それをモデルに入れるときのやり方が妥当なのかどうかというのを絞って議論すればかなり煮詰まっていくのではないかという気がするので、是非次回以降そういう方向で検討できたらと思います。実は私も大気のシミュレーションを、こんな厳密なシミュレーションではありませんけれど、いろいろなことをやっているのです。例えば有機塩素系のものが出てきてどうなるとかかなり細かい計算も地域の計算をやったことがあるのですが、やはり気象影響というのはすごく大きくてなかなか地表付近の濃度の実測値とシミュレーションを合わせるのは大変なのです。ですから気象ファクターがどのくらいまでは使える、使えないとかも含めて、問題点の整理をしていただくということが重要かなと思います。

秋元座長はい。ありがとうございました。下原先生どうぞ。

下原委員私はシミュレーションが専門ではないのですが、全国レベルのシミュレーションと実測値が合う合わない、季節によって合う合わないという時、それには大陸からの移流影響やその他のいろいろな要因を含んでいるわけです。また,地域により気温が違うとかいろいろの要因があります。それで,私が思うのはもっとシンプルに,例えば資料1-3のスライド12枚目にあるように東京都と埼玉と群馬、このあたりであれば気温もほとんど変わらないでしょうし、移流影響もかなり弱いでしょうから、これらの地域に絞ったシミュレーションと実測値の比較を行なってみる。発生源インベントリは東京では概ね合っていて、埼玉、群馬も同じような数字が入っているはずで、このあたりを中心に解析を初めて見る。もちろん植物由来のVOCsが多いと思われる群馬あたりはどうなるか分からないのだけど、小さな地域の解析をすることで,オキシダントの高濃度要因が気象的なものによるのか、エアロゾル、ガスの反応の方が効いているのか、計算に対して何を補正していじれば群馬の辺りも合ってくると示せるものなのかということを、まずこの小さい範囲で合わせていくというのが大事なのかなと思います。

秋元座長はい。他にいかがでしょうか。

井上委員大原委員に質問させていただきたいのですけれど、まず資料1-3のスライド11枚目、ここに精度評価指標というものが載っていまして、定義NBとMPAを見てみますとobservationから引いたものと定義されていますが、結果を見ると12月に値が大きくなっていたりするのでcalculationとobservationが逆ではないかと思ったりしたのですが、その辺は間違いございませんでしょうか。

大原委員バイアスは逆じゃないかと思います。すみません。

井上委員ありがとうございます。それと境界条件を東アジア領域のモデルで求めてというように非常に複雑になっていますのでいろいろな結果、たまたま合ったとかいうことも起こりうると思うのですが、お聞きしたいのは80kmメッシュの再現性、要するに東アジア領域の計算をされたときの再現性は、もちろん都市などで比較するのはNOのタイトレーションの問題もありまして無理でしょうけれど、例えばすごい上空とかと比較して合うか合わないかということは80kmメッシュの結果でやっておられますでしょうか。

大原委員それはもちろんやっていて、論文もたくさん出していますので、是非それをご覧いただければと思います。後で発表される谷本先生が筆頭著者で書かれているG. R. L.(Geophysical Research Letter)とかあるいはJAMSTECの山地さんが筆頭著者で書かれているJ. G. R.(Journal of Geophysical Research)の論文とかありますのでそれをご覧いただければ、結構合っているということが分かるかと思います。

井上委員ありがとうございます。あと1点だけ質問させていただきたいのですけれど、先程VOCと比較されているということで、トルエンは結構合っているということで人為起源は結構あっているのかと思ったのですけれど、反応性の強いイソプレンとかについて、もし覚えておられればどのような検証結果であったのか。あとそれと関連するかもしれませんが、OHラジカルの反応性とかは直接削減対策が正しく推計できるかというのに関わってくるものだと思いますので、梶井先生が測っておられるOHラジカルのデータとかとつき合わされたことはあるか、そのようなことをお聞きできたらうれしく思います。

大原委員イソプレンとの比較はしておりまして、ちょっと不正確になりますが、測定で上がっているところはモデルでも上がっているとか、測定で下がっているところはモデルで下がっているというような意味でのモデルの再現性は、定性的には比較的良かったと思うのですが、ただ多分そこで見えているイソプレンというのはローカルなイソプレンだと思うので、それが合っているからといって関東の山岳域のイソプレンの放出量を再現しているとは全然言えない訳で、そういった意味において先程お答えしたように生物起源VOCの放出量の再現性を評価するのは難しいということであります。それからOHラジカルとの比較はしておりません。

秋元座長はい。ありがとうございました。

浦野委員モデルでこれは難しい、できないという領域が必ずあるわけですね。それをできるだけお示しいただいて、できないことを皆さんが議論して、こうした方がいいのではないかこうしようとか言っても困るわけですから、ここはできないということも明確にしていただきたいと思います。あと群馬や東京の平成13年度ということで、10年前なのですね。10年前と同じデータをずっと使っているのか、年度によってデータを更新しているというか良いものに変えているのかというあたりも整理していただきたいと思います。

秋元座長はい。ありがとうございます。確かにできないことを明らかにするのは大事なわけですよね。それではシミュレーションの議論は一旦ここで打ち切らせていただいて次の議題に移りたいと思います。次は議題2で科学的知見の収集について、先程申し上げましたように最初に首都大学東京の梶井教授の方から都市域における大気光化学反応についてご講義頂きます。梶井先生はもともと光化学の専門で、特に先程も話が出ているOHラジカルとかそういう光化学反応、オゾン生成のメカニズムの中では一番キーになるもので、本当はそういうものが直接測定してそれをモデルとしたものができるとワンランク精度というか信頼性が上がるのですが、他にはそういう常時モニタリングもなされていませんのでできないのですが、その中でも特にOHの反応相手、VOCが主だと思いますが、そういうものが反応速度と濃度ないしは成分とちゃんと対応しているのかどうか、というあたりの研究をされていますので、非常にこのVOCの議論にも大事な知見を提供してくれるのではないかと思います。よろしくお願いします。

梶井教授(スライドにより説明)

秋元座長はい。ありがとうございました。非常に面白い話で、そうしますと都市の場合でも森林の場合でも未知の部分の割合は大体同じくらいの20%だったという結果ですか。

梶井先生不思議なことにそうなのですね。2割から5割なのですけれど。

秋元座長森林の植物系のものはかなりたくさんあると思うのですが、都市の場合に自動車の件を言われたけれど、都市大気の中で自動車起源のVOCの割合というのはむしろ小さいですよね。

梶井教授はい。そうですね。

秋元座長ということは20%も未知のものがあるというと、自動車起源以外のものの未知の部分がそれぐらいあるという風に考えてよろしいでしょうか。

梶井教授全体像をつかむところまでは自分たちは手が出せていなくて、ここのソースを検討しているからむしろ先生方の方からご指摘いただいた方が、あるいはこういう発生源をちょっとやってみろと言われたら装置を持ってまいりますから、是非やってみたいなとは思っていますが、おっしゃる通りだと思います。

浦野委員大変面白い結果で、未知のものを追いかけるとか、そういう原因というのは学術的に非常に価値があるのですけれど、先程のシミュレーションと同じで、行政とつなげようとすると分からないことがいっぱいありますではちょっと困るわけで、どうしたらいいかというとやはり分からない部分をどうやって補正していくかということにアプローチせざるを得ないですね。そのときに先程の未知のものがどこに多くあるのかとか、例えばそれを1.2倍ぐらいとか1.5倍くらいに補正したら合うようになるのかとかですね、そういうことを各条件ごとに例えばNOxのレベルがどれくらいの時にはこれくらいの補正とか、オーバーオールにこういう風に考えればまあそう遠くないとかですね、そういうNOxの濃度もありますし、先程の話にありました気温とかですね、気象条件ごとにいくつか分類したときにどうなるか、あるいはVOCの発生源として固定発生源のようなところと生物由来のところ、それぞれがどういうような場合にはどの程度の未知物質があるかというのもあるのですが、未知物質の量よりもOHリアクティビティで見ているわけですから、OHリアクティビティ、要するに反応係数みたいなものを何倍に補正したら比較的良いかという、だんだん精度を上げるにしても、ある程度そういう目安がつけばシミュレーションに持ってこれるわけなので、何かそういう方法で情報収集をいろいろなところと協力して是非やっていただきたい。それは先生の方でやるのか、国立環境研究所など他のところでやるのか、行政が応援してやるのかは分かりませんが、その辺を何とかしないとシミュレーションの方でどんなデータを入れ込んで整理しても、普通はシミュレーションには限界があるわけで最終的により現実に合うような補正をどうするかというのが重要なので。

梶井教授ちょっとだけ時間が超過しているのですけれど、コメントさせていただきますと、プリミティブな方法ですけれど、例えば未知のものが水に溶けやすいものなのかとか、大気をサンプリングしてバブリングしてその後いなくなるものなのかとかですね、あるいは温度をちょっと低温にしてトラップしたときにそれが取れるのかどうかとか、ナフィオンのみたいなもので極性のものを取ってみたらどうかとか、物理的な性質からそれは何かという手がかりがつかめるような研究は今しています。そこから少し話を絞ってきて、できるようになればいいなという風に考えています。皆さんにお示ししたのは手をつけたばかりでまだこれから少しお時間を頂いて、もう少し尻尾が見えてきたときにお話をしたいと思います。

浦野委員私が申し上げたのは未知のものの中身をどんどん明らかにするということは研究としては必要ですからそれに見合って精度が上がってくるとは思いますが、シミュレーションの方もまったく同じで、完璧なものはないわけです。ですから最終的にいろんな近似や仮定、補正をしてできる限り現実に近い数字がシミュレーションできる方法を考えていく、それで研究が進んで中身が見えてくれば見えてくるほどそこがより精度が上がってくるという形にしないと、中身が全部分からないとあとは分かりませんとか、中身を一生懸命やっていますという話が永久に続くわけで中身は少しでもはっきりさせていただきたいけど、グループ分けみたいな情報でも是非いただきたいなと思います。

秋元座長はい。ありがとうございます。これはむしろモデルのほうのやり方の問題で、それだけいまunknownなものがあることが見えているのであれば、それを何らかの形で仮定してプラスアルファをした上でのモデリングをやると、大分オゾンのでき方も違ってくるはずですね。で、これが非常に重要なのは、今回余り話題になっていませんが、NOxを削減したほうが効くのか、VOCを削減したほうが効くのかというあの議論にものすごく効いてしまうのですよね。VOCにしても未知のものがたくさんあって、それを知らないでやっていると必ずVOCを抑えた方がオゾンが下がるということになるのだけれど、そういう未知のものがたくさんあると、今分かっているVOCを多少抑えてもあまりセンシティビティがないよという答えが出ることもあるので、結構行政的には重要なことにつながってくるので、モデルのときにそういう未知のものをある程度付け加えたケースとそうでないケースとの、そういうテストケースをいろいろやってみられるとある程度の不確実性というものもはっきりしてくるのかなと感じました。

浦野委員たびたびすみません。VOCという場合、個別成分ごとをインベントリで出しているのですが、規制はカーボン換算になりますね。特に塩素化合物を少し減らしてということですが、まったく視点が違うわけなのですよ。それからもう一つ、自動車排ガスも先程いい例ですけれど、VOC削減の規制を厳しくするとunknownの部分が減ってくるわけですね。トータルVOCを規制してカーボン換算で規制したら、unknownの部分も減ってくるわけですよね。ですから個別の成分を削減することと、unknownのものが合計で減ってくるということとはかなり視点が違うので、政策上、個別成分を見ていくこととトータルカーボンないしはトータル規制をするというのは全然違うので、その辺をシミュレーションを含めて検討いただければと思います。

秋元座長はい。ありがとうございます。それでは少し時間も押していますので、次のもうひとかたの報告に移りたいと思います。それでは2の[2]、国立環境研究所の谷本先生の方から、「日本における過去10年間の地表オゾンのトレンド」、これは谷本先生はもともと観測の専門家なのですが、いろいろ観測データの解析、それをモデルでどう説明するかそういう研究をしてこられまして、今日、そのご報告があると思います。特に過去のトレンドがシミュレーションで再現できないと、将来予測が信用されないというのはIPCCでもさんざんやってきたことなので、過去トレンドのモデルによる再現というのは非常に重要なのですね。その辺のところのお話が聞けるかと思います。よろしくお願いします。

谷本室長(資料2-2の説明)

秋元座長はい。ありがとうございました。時間が押していますが、ご質問ありましたらどうぞ。

安藤委員初歩的なというかプリミティブなところですが、10年間のデータトレンドでシミュレーションというかエスティメーションしていくところの差を見ようという考えでやられているのかと思うのですが、データとしては10年前からしかデータが取れていないから10年間だとは思うのですけれど、この10年間であると今回のオキシダント、例えばVOCやNOxから生成されるオキシダントという見方をした場合に、太陽からの光というか、太陽エネルギーによって生成されてくると我々は思っているのです。そうすると太陽の黒点の周期であるとか太陽活動との周期性のところとこの10年間はある一定の部分のところだけしか見てないのではないかなという風に思えるのですけれど、太陽の黒点周期との関係のところから何かコメントがあったら教えていただけたらなと思います。

谷本室長特にそこについてはありません。そういった議論があることは承知しておりますし、大事な点だと思いますが、私の研究ではそこはありません。

秋元座長それは谷本先生の研究にはおそらく入っていないかと思うのですが、確か前に東京都の解析をやったときに紫外線強度の相関というのを確か取ってみて、あまり効いていないという結論になったかと思います。

安藤委員磁場であるとかいうのはどうなんでしょうか。

秋元座長磁場。それは対象外だと思いますね。むしろ成層圏からの流入量が気候変動があると将来的に増えたりとか気候変動との絡みというのはありうる可能性はありますけれど。今のところはそういうところでしょうか。他にございますか。

下原委員測定点によって、北京オリンピックの影響があったりするということはありますか。

谷本室長これは春に注目しているのでちょっとそういう風なところ、2008年でしたかね、夏というのは見ていないですし、これでは見えないと思いますが、個別のデータを見ていけばあるかもしれません。

指宿委員一つだけなのですけど、八方尾根のデータは自由大気のデータですよね。他のところは全部地上のオゾンデータです。それを一緒くたに議論していいのかという非常にシンプルな質問です。例えば使ったモデルの地表のオゾンについて計算するためのツールであって、八方尾根に適応できるとは思えないのですが。

谷本室長そうではないと思います。本当の地表面だけではないと思います。八方尾根は1.8kmですからそういう意味では自由対流圏と申しましたけれど、自由対流圏、境界層ギリギリぐらいのところにあると思います。そういったところはこういったモデルを使うのに特段の不都合はないかと思います。ただ鉛直分解能の問題とかもあるので注意は必要だと思いますが。

浦野委員成層圏からの影響という意味ではフロン関係で例えば南極だけでなく北極の方にもオゾンホールができているとかですね、いろいろ経年変動があって、そういうのが北海道あたりとか北の日本にも地上まで影響があるという話しがあるのですが、そういうあたりはまったく今は考えていないのでしょうか。

谷本室長はい。ありません。

秋元座長それは別の方がグローバルモデルでやっていると思います。おそらく90年代ぐらいかな成層圏オゾンが減ってきていますよね、減ってきていた時期、その時期にはある程度対流圏の方にも成層圏から降りてくるものが多少なりとも減っているので、増加傾向を下げているということが見えていたと思うのですが。まだ論文になっていなかったと思いますが。

浦野委員北極圏のオゾンホールは最近むしろ拡大しているのです。

秋元座長最近はそうですね。よろしいでしょうか。時間が大分押しましたのでこの辺で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。それでは後、最後の議題、で、議題3、今後の審議の進め方について、事務局からご説明をお願いします。

山本課長補佐(資料3の説明)

秋元座長はい。ありがとうございました。今後の見通しというか、今年度この検討会でどういう風に最後まとめ上げるかということの見通しなのですが、何かご意見ございますでしょうか。

安藤委員参考資料3の下の方の四角にVOC排出インベントリに関する主な意見というところの[2]の3行目なのですが、自動車からのVOC排出量についてはPRTRでかなり詳しく調べており、というのが違うのではないでしょうか。固定発生源ではないでしょうか、間違い、誤記ではないかと思いますが、どうでしょうか。

浦野委員これは誤記ではありません。自動車排出源はまとめたものしか出ていませんが、もとは非常に詳しい解析をして、自動車からのVOCは推計されています。

安藤委員自動車からのVOCの排出量の推計は、僕はしっかりできていると思うのですが、PRTRででしょうか。

浦野委員PRTRの届出外の推計で書かれています。

安藤委員分かりました。

秋元座長他にないですか。よろしいでしょうか。次回はここに書いてありますように外部の方からのご報告、次回はご報告だけですね。で、第4回目からは具体的にとりまとめの案が出てくる、そういう形になると思いますので、よろしくお願いいたします。それでは今日の議題はこれで終了いたしました。長時間に渡りありがとうございました。議事録につきましては、委員の皆様にご確認いただいたうえで公開しておりますのでよろしくお願いいたします、という事務局からのお願いです。それではこれで議事を終了したいと思いますが、他に事務局からご連絡ありますでしょうか。

芳川係長長い間ご審議ありがとうございます。事務局からですが、次回の検討会日程につきましては、11月2日水曜日の13時半から16時半までということで、同じここ経産省の別館の9階の944号室で開催させていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。事務連絡は以上でございます。そのほか何かございませんでしょうか。ないようでございますのでこれで第2回光化学オキシダント調査検討会を閉会させていただきます。委員の先生方及び関係者の皆様、お忙しいところありがとうございました。

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