環境省大気環境・自動車対策微小粒子状物質健康影響評価検討会

第3回微小粒子物質健康影響評価検討会 会議録


1.日時

平成19年9月25日(火)15:00〜18:02

2.場所

虎ノ門パストラル5F ミモザ

3.出席者

(委員)
安達 修一    上島 弘嗣    内山 巌雄
香川  順    川本 俊弘    工藤 翔二
坂本 和彦    島  正之    祖父江友孝
高野 裕久    富永 祐民    新田 裕史
溝畑  朗    横山 榮二    若松 伸司
(環境省)
竹本水・大気環境局長
岡部総務課長
松田総務課課長補佐

4.議題

(1)循環器系疾患等に関する知見について
(2)「粒子状物質の健康影響に関する文献調査」報告について
(3)その他

5.配付資料

資料1   循環器系疾患等に関する知見について
 資料1−1 循環器系疾患の国際比較について
 資料1−2 心疾患−脳血管疾患死亡統計の概況(概要版)
 資料1−2 日死亡とPM2.5濃度の関係について(追加解析)
資料2   粒子状物質の健康影響に関する文献調査の概要について
 資料2―1 粒子状物質の健康影響に関する文献調査の実施方法等について
 資料2―2 粒子状物質の健康影響に関する文献調査の概要(疫学)
 資料2−3 粒子状物質の健康影響に関する文献調査の概要(人ボランティア)
 資料2−4 粒子状物質の健康影響に関する文献調査の概要(毒性)
 資料2−5 疫学チーム報告(PPT)
 資料2−6 人ボランティアチーム報告(PPT)
 資料2−7 毒性チーム報告(PPT)
参考資料1 委員名簿
参考資料2 健康影響評価検討の進め方
参考資料3 健康影響評価にあたっての検討項目

6.議事

【松田補佐】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第3回微小粒子状物質健康影響評価検討会を開催いたします。
 それでは、お手元の配付資料のご確認をお願いいたします。配付資料一覧を読み上げます。資料1、循環器系疾患等に関する知見について。資料1−1、循環器系疾患の国際比較について。1−2、心疾患−脳血管疾患死亡統計の概況(概要版)。1−3、日死亡とPM2.5濃度の関係について。資料2、粒子状物質の健康影響に関する文献調査の概要について。資料2−1、実施方法等について。2−2、文献調査の概要(疫学)。2−2、概要(人ボランティア)。2−4、概要(毒性)。2−5、疫学チーム報告のパワーポイント資料。2−6、人ボランティアチーム報告のパワーポイント資料。2−7、毒性チームの報告パワーポイント資料。あと参考資料1から3まで、委員名簿、健康影響評価検討の進め方、検討項目。以上の資料がございますが、もし資料の不足がございましたら、お申しつけください。
 それでは、これ以降の会議の進行は、開催要綱により座長が会議の議事運営に当たることとされておりますので、内山座長にお願いいたします。

【内山座長】 それでは、第3回の検討会を開催させていただきたいと思います。まだまだ暑い中、お集まりいただきまして、ありがとうございました。
 きょうは、主に議題は2つでございますが、議題1は循環器疾患等に関する知見についてということになっております。これは前回の会議のときに、我が国のデータが出そろってまいりましたときにいろいろご議論いただきまして、特に循環器疾患が諸外国と少し疾病構造等が違うのではないだろうか、あるいはそういう観点で循環器疾患に限ってもう少し分析をしたらどうだろうかと、いろいろ宿題が出てございました。この循環器疾患等に関する知見について、委員の先生方のご協力を得て、きょう資料が出てまいりましたので、それぞれの資料をもとにご説明をいただいて、少しご議論をしたいというふうに思っております。
 1つ目は、循環器疾患に関する国際比較に関する資料についてということで、上島委員から資料1−1をご提供いただいておりますので、紹介をいただいた後に、事務局から資料1−2も含めて説明をしていただきたいというふうに思います。
 それでは、まず上島先生、資料のご説明をいただけますでしょうか。

【上島委員】 この資料を提出しましたのは、我が国の循環器疾患の特徴について、前回検討会において資料が求められましたので、資料1−1は、特に我が国の循環器疾患の特徴である脳卒中が多く、逆に虚血性心疾患、心筋梗塞等が極めて少ないのが、先進工業国としての中で我が国の特徴であるということを示す資料でございます。それは、基本的には我が国が脂肪、ファットですね、脂肪の摂取量が少なくて、他の欧米先進諸国よりも少なく、血清の総コレステロール値が低くてというところから来ているということを書いた資料でございます。
 あと、細かいことは事務局からご説明があると思います。

【松田補佐】 それでは、資料1−1と1−2についてご説明をします。
 1−1の上島委員からの提供いただいた国際比較についてですが、最初に、1番目のアジア諸国の死亡率のトレンドというところですが、シンガポールを除くアジア諸国の死因別統計では、西欧諸国と比較してCHD(冠動脈性心臓病)による死亡率が低く、脳卒中による死亡率が高くなっている、これが特徴です。シンガポールや香港のCHD死亡率は、ほかのアジア諸国と比較して高く、血清TC(総コレステロール)のレベルも同様に高くなっていた。世界的に見ると、このCHD死亡率は、1970−1980年から低下し始めているという状況です。シンガポール・香港・日本では70年ごろまでCHD死亡率が増加し、その後低下をしている、こういう状況でございます。
 2番目に、西欧諸国との比較というところですが、アジアにおけるCHDの死亡率の低さ、これは急性心筋梗塞発症率の低さに起因をしています。WHOのMONICA Projectで調査した国の急性心筋梗塞発症率と日本の率とを比較すると、男女ともに急性心筋梗塞発症率が西欧諸国の方が高いということが示されております。これは図7−2のところに示しています。上の方が欧米諸国で、下が日本というところでございます。
 3番目に、CHD死亡率・発症率の変化傾向の要因ということですが、CHDの危険因子、これはアジア諸国と西欧諸国で共通していて、高血圧、高コレステロール血症、喫煙、糖尿病、こういったものが危険因子となっています。これが多くの疫学コホート研究で明らかになっています。
 アジア諸国に見られるこれらの危険因子の特徴としては、西欧諸国と比較して血清の総コレステロールレベルがはるかに低く、ただ、日本人の血清の総コレステロールのレベルは近年増加しており、中年の男性のレベルは200mg/dlを上回っている、こういう状況です。一方、年配男性のレベルは未だ大きく下回っている、こういう状況です。
 アジア諸国のうちシンガポール・香港といった地域のTCレベルはアメリカの血清TCと同様の高いレベルでした。シンガポールのTCレベルはアジアで最も高く、さらにアメリカより高くなっているところです。アジア諸国のCHDの死亡率を見ると、シンガポールと香港のCHD死亡率は日本よりも高くなっていて、血清TCレベルの高さによってCHD死亡率の高さを証明できたというふうに書かれております。
 その次のページに行きまして、シンガポール・香港・日本におけるCHDの死亡率・発症率、これは1980年代から減少をしています。しかし、血清TCレベルは増加をしている状況です。血清TCレベルが増加しているにもかかわらず、日本でCHD死亡率・発症率が減少している要因としては、次の5つの事項があるとされています。高齢者のTCレベルが西欧諸国と比較して低いこと。また、TCレベルの上昇は、主に地方在住者のレベルの上昇によるもので、在住者のもともとのレベルがそれほどでもなかったので、上昇してもCHD死亡率を高める有害なレベルには至っていないこと。都市生活者のTCレベルは20年ほど一定であること。あとは、日本人の血圧の低下、高血圧症の減少、また喫煙者の減少、こういったような要因として挙げられております。
 アジア諸国と西欧諸国では、CHDの危険因子は一致をしていて、1970−1990年ごろまでアジア諸国で見られたCHD死亡率の増加は、アジアの伝統的な食生活から西欧的な食生活に変わるといったライフスタイルの変化によって、TCレベルなどが関連をしています。その後のCHD死亡率・発症率の低下は、喫煙者の減少、血圧の低下、高血圧症の減少が要因となっていたということです。
 こういった資料としてまとめられております。
 次に資料1−2ということですが、これは厚生労働省の発表している資料でございます。
 まず1番目に、日本における主要死因別粗死亡率の状況ということで、図1にかなり長い間の年次推移というのが書かれております。昭和20年代後半において、ここを見ていただければわかりますが、感染症の粗死亡率が急速に低下して、現在の三大死因である悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、こういったものが主たる死因になっております。1番の平成6年、心疾患のところがガクンと下がっていますが、これは死亡診断書の書き方が変わった部分があるということですが、上昇傾向にはあるという状況です。
 次のページに行きまして、平成16年の状況というところです。平成16年の状況を見ると、全死亡数103万人のうち心疾患は16万人という状況です。この中でも急性心筋梗塞、虚血性心疾患、不整脈、心不全といったようなものが、この表1の中には書かれておりますが、脳血管疾患は13万人、両者を合計すると29万人というようなデータになっております。
 次に諸外国との比較ということで、3ページ目に行くと、諸外国の心疾患、脳血管疾患の粗死亡率を年齢階級別に見ると、ロシアが若い年齢層から高くなっています。直近の年齢調整死亡率を見ると、我が国は欧米諸国と比較して心疾患では男女ともに低く、脳血管疾患では男でやや高い、こういう状況です。
 年次推移を見ると、心疾患については、ロシアを除いて欧米諸国では心疾患は減少傾向にあります。我が国は横ばいという状況です。脳血管疾患については、ロシアを除いて横ばいになっているという状況です。
 こういう結果が図2及び、次のページに行きまして、表2、表3、それと図3です。図3は、近年の外国での推移というのがわかりまして、表2や表3で最近の死亡率の国際比較がちょうどわかり、これを見ると、日本は欧米諸国に比べて心筋梗塞等、これについて低い、こういうようなデータが出ております。
 以上です。

【内山座長】 ありがとうございました。
 今ご説明いただいた中で、資料1−1は上島先生からご提供いただいた資料ですが、上島先生から何か補足のコメント、あるいは、ほかの委員からもご議論があれば。
 上島先生、特によろしゅうございますか。

【上島委員】 はい。

【内山座長】 ほかの方で何かご質問、コメントございますでしょうか。

【高野委員】 資料1−1の3ページ目のトータルコレステロールレベルが増加しているにもかかわらず、CHD死亡率が減少している要因というところの4番目ですね。血圧の低下と高血圧症の減少というのは、こういう認識でよろしいでしょうか。それともコントロールが改善しているという意味でしょうか。

【上島委員】 コントロールというのは、治療という意味ですか。2つ、両方とも含まれていると思います。ただ、若い、30歳代、40歳代、余り治療されてない訳ですが、この人たちの血圧の平均レベルも低下しています。したがって、治療だけではなくて生活環境要因、特に、例えば私が想像しているには、食塩の減少が非常に国民全体に大きくかぶさっている要因だろうというふうに考えています。
 それでよろしいでしょうか。

【高野委員】 はい。

【香川委員】 ちょっと教えていただきたいのですけれども、資料1−1では、「血清TCレベルが増加しているにもかかわらず、日本でCHD死亡率・発症率が減少している」と書いてあって、資料1−2では、「心疾患は上昇傾向にある」となりますと、CHDが減少しているのであれば、心疾患の中の何が上昇しているのか。

【上島委員】 資料のグラフに2つ注意しなければならない点があります。1つは、年齢を調整した発症率・死亡率で表示している場合と、調整しない粗死亡率・粗罹患率で示してある点があります。上昇しているのは粗の死亡率等でありまして、この年齢調整していないものは、日本の高齢化社会をあらわして、どんどん増加しているという話です。粗であっても、脳卒中死亡率はですね、にもかかわらず、むしろ減少しているということで、年齢調整しますと、脳卒中の死亡率の低下はまださらに大きいというのが言えます。いずれにしましても、年齢調整しますと、低下しているということは間違いございません。よろしいでしょうか。高齢化社会の影響を除いたと。人口構成の高齢化を除いたものが年齢調整になりますので、それでは増加してないと。

【香川委員】 それはわかりました。
 もう一つは、資料1−1のところに、「血清TCレベルは20年ほど一定である」とか、それから「血圧の低下」とか、こういうことが書いてありますが、労働安全衛生法で定期健康診断を行っていますね。あれの有所見率は年々増加していて、その中でも高脂血症とか、それから高血圧の割合とかは年々確実に増加しておりますよね。それとこれとは、どう。

【上島委員】 労働安全衛生法の集計も年齢別に検討しているというものではなくて、全体的に見ていますので、あとは労働安全衛生法のポピュレーションも、例えば二、三十年前と比べて平均年齢が上がっています。ですから、当然年齢の影響を受けていて、増加しているのは当然です。全体では増加しているのは間違いないです。特にここで述べているのは、都市の住民は昔から200ぐらいありましたが、都市と農村部を分けた疫学調査で見てみますと、大きく上昇したのは都市部に住んでいた人じゃなくて、例えば東京・大阪の大きな大都市部に住んでいたところよりも、ほかの都市部での上昇がより顕著であるということを記述したものでありまして、増加していること自体は間違いございません。

【内山座長】 富永委員。

【富永委員】 1つコメント、1つ質問ですが、まずコメントの方を先にしますと、上島先生が準備されました資料1−1、1−2、全体を通じまして、循環器疾患、特に虚血性心疾患の死亡率が上昇した、あるいは下降したというときには、やはりコレステロールだけじゃなくて、本文の文章にも書いてありますように、喫煙率も全世界的に著しく変わってきておりますので、これらも考慮して解釈するか、あるいは両方のデータを示すかなどしていただいた方がいいと思いますね。
 それから質問の方ですけれども、資料1−1の最初の図ですね、Fig.7.1、シンガポールの虚血性心疾患の率は、より大きく低下しておりますけれども、これは、次の、次のページのFig.7.3で、トータルコレステロールがシンガポールは非常に高いということもあり、コレステロールが非常に低下したのか、シンガポールでは、一方では喫煙率が非常に低下していて、男女合わせると世界で一番低いくらい低いですね。ですから、それなのか、そのあたりはいかがでしょうか。これが質問です。

【上島委員】 まず、ここの資料の中で、3つの危険因子というのは、主な危険因子、心血管疾患、特に虚血性心疾患の危険因子は欧米と変わるものではないと書かれています。富永先生が言われたように、高血圧、喫煙、高コレステロール血症が標準的な、確立した虚血性心疾患の危険因子です。これは日本でもまず変わりないし、他のアジア諸国でもそうであると。したがいまして、日本がポピュレーション全体として虚血性心疾患の心筋梗塞が低いのはなぜかといったときに、例えば喫煙だけ考えると、喫煙は、日本はかつて、今もそうですが、かなり喫煙率が高かった。例えば男性では過去80%喫煙者であったと。これで見ますと、なぜ喫煙率が高いのに日本は心筋梗塞が低いかという論議がずっとなされてきました。それは、ここに示したように、食生活が大きなポピュレーションの心筋梗塞の罹患率・死亡率を決める要因であったというふうに述べています。下がった要因というのは、その危険因子の動向に関係しています。富永先生が指摘されましたように、コレステロールが低かったころから上がりましたが、他の危険因子の2つ、特に喫煙率と血圧のレベルの水準、あるいは高度な高血圧者が非常によく減りましたので、それが相まって、2つがいい方向に転換し、1つが少し悪い方向に転換して、今はとどまっているという状況の中で、総合して危険因子のリスクが減ったということであります。それでよろしいでしょうか。

【富永委員】 質問は、シンガポールの話ですよ。

【上島委員】 ああ、シンガポールの話。ごめんなさい。シンガポールの話は、先生言われたとおり喫煙率も低下していますし、また、やはりコレステロールレベルも、その後の資料で、この高いときから少し低下しておりますので、両方相まっていると思います。

【内山座長】 工藤委員。

【工藤委員】 今のシンガポールの資料1−1のことで、申しわけないですが、シンガポールの1980年は除いて、97年のところ以下を見ますと、これは右側の台湾、それから大陸のチャイナですよね、ここも含めて、要するにアジア人というか、モンゴリアンというか、シンガポールも90%以上は中国系ですよね。多因子疾患としてのいわゆる人種的な問題ということは考えられないですか。

【上島委員】 これはかなり突き詰めていくのは難しいと思いますけれども、人種的な影響そのものよりも、やはり私たちは環境要因でかなり説明できるのではないかなというふうに考えています。例えば日本人は遺伝的に、よく昔は、日本人は心筋梗塞が少ないのは遺伝的素因であるというふうに考えられていたのですが、例えば広島・長崎からハワイに移民した日系人は、アメリカの白人と真ん中の値をとってきますし、逆に脳卒中は減っているというのは既に報告されているとおりで、遺伝的素因よりも、むしろ環境の要因が影響しているというふうに、今のところ多くの者は考えています。遺伝的素因を、もちろん全部否定しているわけではございません。

【工藤委員】 アメリカ在住のチャイニーズも、やっぱり高いですか。

【上島委員】 アメリカ在住のチャイニーズも、まだ白人よりは低いです、むしろ。それも生活習慣を引きずっているからというふうに言われております。

【内山座長】 よろしいでしょうか。
 こういう疾病構造あるいは死亡構造の国際的な違いがあるという上で、前回ご議論をいただきました粒子状物質の曝露評価の我が国のデータを少し見ていくということも必要だろうということだと思います。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、次に心筋梗塞による死亡の男女別のデータ解析ということで、追加解析ということで新田先生の方から1−3が出ておりますので、ご説明をお願いいたします。

【新田委員】 資料1−3に基づきまして、追加解析の結果をご説明させていただきます。
 前回、本検討会で幾つかコメント、ご質問をいただきましたので、まず、ただいま内山座長の方からお話がありましたように、急性心筋梗塞に関しまして性別の解析を追加いたしました。それから、死亡したところの種別ということで、医療機関、自宅、その他に関して分類した解析。それから前回ご報告させていただいた解析は、基本的には65歳以上の死亡を対象としておりましたので、年齢群を64歳以下、65〜74歳、75歳以上と、3群に分けた解析を追加いたしました。
 それから、もう一点、前回、ご指摘いただいた点、呼吸系疾患の中では、個別の解析としてインフルエンザ・肺炎・急性気管支炎を合わせた死因、それから慢性閉塞性疾患と喘息を合わせた死因による死亡という、2つの報告をさせていただいておりましたけれども、喘息単独の場合にどうなるかということに関しましてご報告させていただきます。
 既に公表しております報告書の中では、全般的に見て、全死亡、すべての死因による死亡。事故、外因死を除いたものでございますけれども、その死亡、それから呼吸器系の疾患に比べて循環器系疾患による死亡のリスクは小さかったということで、ご報告させていただいております。
 急性心筋梗塞に関しましても、一部ご報告をさせていただいております。図3、図4に関しましては、既に報告書に掲載されているものを再度ここでお示しさせていただいております。例えば図3、PM2.5単独のsingle−pollutant modelでは、3日おくれから4日おくれ、5日おくれのあたりで、ややリスクの上昇が見られているということです。それから、multi−pollutant modelでも、やや信頼区間の幅等異なりますが、似たようなパターンになっておるということです。
 今回追加解析いたしましたのは、図7がまず男女別の傾向でございます。これを見ていただきますと、女子の方で3日おくれ、4日おくれのところでリスクの上昇が目立っております。それから、男子の場合には5日おくれというところでリスクの上昇が見られておりまして、おくれのパターンに関しまして、男女差がやや見られたということでございます。
 それから医療機関、自宅、死亡場所に関しましては、医療機関での死亡が割合としては多いわけですので、信頼区間の幅は小さくなっておりますが、全体としては、合わせたパターンと同じような傾向、3日から4日、5日おくれのところで、やや上昇というパターンが見てとれるのではないかなというふうに考えております。
 それから、図9は年齢群別にお示しさせていただいております。既に報告しておりましたのは、繰り返しになりますが、65歳以上の死亡ということでございました。64歳以下を見ますと、おくれのパターンが0日、つまり当日の濃度と死亡との関係が一番大きくなっているという傾向が見られておりまして、やや65歳以上の傾向とは異なっておりました。
 循環器疾患全体としては、少し傾向を図1・2でお示ししておりますように、大きなリスク上昇は見られておりませんでしたが、政令指定都市、大都市に限った解析でございますけれども、急性心筋梗塞に関しましても、ややリスクの上昇が見られるところがあるというふうに考えております。
 それから喘息に関しまして、図10、図11に解析結果、図をお示しいたしておりますけれども、大きな傾向は、慢性閉塞性疾患と合わせたパターン、それから呼吸器系全体のパターンと大きく異なることはないというふうに考えております。
 以上でございます。

【内山座長】 ありがとうございました。
 どなたかご質問、ご意見ございますでしょうか。
 既に報告されたものよりも多少詳しい、詳しいといいますか、変えてやっても傾向としてはそれほど変わらなかった、でも細かく見えてきたところもあるということですね。

【新田委員】 はい、そういうふうに考えております。

【内山座長】 そのほかによろしいでしょうか。横山先生。

【横山委員】 今日いただきましたこの資料1−3の2ページ目の真ん中辺、急性心筋梗塞による死亡のリスク比が、具体的に、PM2.5、10μg/m3当たり2.1〜2.9%、あるいは1.0〜3.5%となって、米国等で報告されている循環器系死亡のリスクと同程度であったというふうに書かれていらっしゃいます。
 先ほど、新田委員も触れましたように、前回本検討会でご紹介いたしました微小粒子状物質の曝露影響調査報告書ですか、あそこの中の総括では、循環器系によるところの日死亡のリスク比は、全死因あるいは呼吸器系によるものよりも小さくて、最終的にこの傾向は諸外国から報告されているものとは少し違うと。その違う原因については、諸般の条件、汚染物質の違いとか、食生活の違いであるとか、先ほどからお話になっているけれども、基礎的な心疾患の罹患あるいは死亡状況を考慮して検討する必要がある、というふうに総括してあるわけです。ここでは米国等で報告されている循環器系死亡のリスクと同程度であったというようになりますと、この結論がコンクリートのものであるならば、あの報告書の総括を僕は修正しなきゃいけなくなるのではないかと思う訳ですけど、その点、新田委員のご意見、どうでしょう。

【新田委員】 既に報告をいたしました中で、循環器系疾患の死亡というのは、ご承知のように脳血管疾患、心血管疾患を全部含む死亡に関してPM2.5との関係を見たものでございます。欧米との比較においても、欧米で脳血管疾患と心疾患、合わせて循環器系疾患として分類されたもののリスクとを比較して、我が国の場合にやや低いのではないかというご報告をさせていただいております。
 今回の解析は、その中で急性心筋梗塞のみを取り出してリスクの大きさを見ると、欧米等で報告されていた循環器疾患全体の死亡のリスクと同程度であったという報告をさせていただいておりまして、既に報告されておりました報告書の内容に関しましては、そのとおりで、修正の必要はないのかなと。
 ただ、中身の解釈として、いろんな方向性、報告書にも書かせていただいておりましたけれども、今回の追加解析で、急性心筋梗塞のみを取り出した解析をした結果、循環器系疾患全体、構成中身がかなり違うというお話、今日、既に資料1−1、1−2で出ておりますが、その点を考慮しますと、我が国で前回報告させていただいた循環器系疾患全体という中で、PM2.5と非常に関係が深いもの、それほど深くないものが混じり合っていた可能性ということで、小さ目に見えていたのかなと思っております。ですから、欧米でも急性心筋梗塞のみを取り上げた解析というのが少なくて、直接比較がちょっと難しいということがございまして、こういう表現になったというふうにご理解いただければと思います。

【横山委員】 おっしゃることはよく了解いたしました。
 ただ、この結論は結構重たいと思います。中身のことをよく知らない方が見ると、「ああ、そうか」と思う。やっぱりよくよく調べてみると、心筋梗塞に絞ると、恐らくアメリカの方では、日本よりも心筋梗塞で亡くなる方が恐らく2倍以上多いだろうと考えるのですけれども、結局、そのことと比べると、日本の心筋梗塞でも、大体同じぐらいであるということになりますと、先ほどから心筋梗塞というもののふえ方・死に方が、環境上の問題か、それから遺伝子の問題か、いろいろあると思うのですけれども、心筋梗塞に限りますと、同じぐらいのリスク比がPM2.5は持つのだということになりますと、これは、僕はやっぱり少し。
 あの報告書はもう完全にでき上がっちゃっていますので、今さらあれを修正する、あるいは訂正する、追加することは難しいかもしれないけれども、何かの機会に、単に、このページの中に追加するのみじゃなくて、このことをもう少し大きく発表した方がいいじゃないかなというふうに思いました。
 ですから、別にこれで僕は異議をとなえているわけではないですけれども、要するにこのものの評価、あるいは重みづけというものが僕は結構大きいだろうと思いますので、発言したわけでございます。

【内山座長】 ありがとうございます。
 このことに関して何かございますか。香川先生、どうぞ。

【香川委員】 言うまでもないと思いますけれども、米国等で報告されているのと同程度であったといいましても、今、これは循環器系疾患と粒子に関する問題というのは、世界的にすごく関心が持たれていて、英国でも大解析を行っていますね。大体50幾つかの報告が、たしか今まで出ていると思うので。そうしますと、高いのは大体4%ぐらいからマイナスの値を示す値まで、かなり広く分布しているので、何か私、ここはもう少し丁寧に書かれた方がいいのではないかなと思います。欧米でも、同じところで同じように調査しても、リスク比がかなり違ったりした結果が出たり、そういった違いがどこから生じるかということに今、焦点が合わされて、いろいろ研究が進んできていて、PMの成分と非常に関係している。例えばリップマンなんかが報告しているのは、PM2.5で見ると、例えば1ぐらいあるとすると、中の重金属の成分で見ると数倍も高くリスク比を高める物質があるとか、そういったいろんなことが報告されておりますし、このラグにしても、3日から5日おくれと言いましたが、欧米ではもうちょっと早い。ですから、ここは私、もう少し丁寧に書かれた方がいいのではないかと思いますけれども。

【新田委員】 香川先生ご指摘のとおり、ここで、米国等で報告されていると申し上げたのは、ちょっと今日の後の議題にございますけれども、死亡とPMの関係に関する解析では、幾つか大規模な複数都市を統合した結果の報告がございます。ですから、ここで数字として米国等で報告されているということで申し上げたのは、複数都市の統合の大きいプロジェクトの報告ではこういう範囲でしたという意味でございます。

【内山座長】 それでは、この後の議題でも、諸外国の文献調査、報告がございますので、ここは追加解析のご報告ということで、これを前回の報告書の中にどういう形でまとめるかということも含めまして、また全体を議論していただければというふうに思いますが。
 とりあえず、ここはよろしいでしょうか。
 それでは、議題2に入りたいと思います。議題2は、粒子状物質の健康影響に関する文献調査報告でございます。
 本調査に関しましては、現時点ではまだ報告書の精査を進めているという段階で、完成までにはもう少し時間がかかるということでございますが、おおむねの成果をお示しすることができるという段階になったことから、本日、作業に携わった文献レビューのワーキング委員会の動物実験チーム長の高野先生、それから人ボランティアチーム長の香川先生、疫学チーム長の新田先生に、各担当分野の概要について報告をいただきたいというものでございます。
 最初に本調査研究の実施方法等について事務局からご説明いただいた後に、疫学チーム、人ボランティアチーム、毒性チームのそれぞれの長の委員からご報告をお願いしたいというふうに思います。
 この調査結果は、諸外国の微粒子状物質に関する健康影響を示す科学的知見として、本検討会での健康影響の評価のための材料として活用していただくということでおまとめいただいているものでございます。各委員からご報告の後に、いろいろ質疑応答をお願いいたしますけれども、先ほどの資料配付の参考資料としてお配りしておりました、第1回の委員会で提示させていただきましたいろいろな検討項目ということに沿って、またご議論いただければというふうに思います。
 それでは、まず本調査研究の実施方法等について、事務局から説明をまずお願いいたします。

【松田補佐】 それでは、資料2−1の文献調査の実施方法について、かいつまんでご説明いたします。
 まず、背景と目的ですが、第2回のこの検討会において、国内の知見として、曝露影響調査研究報告ということでご提出をしたところですけれども、この健康影響評価の作業を進めるために、国内外で行われている既存の調査研究文献、こういったものを収集・整理をして、そういった成果を出していくという必要があると。そのため、この文献レビュー調査というのを行ってきたという状況です。
 実施体制については、先ほど内山座長からもお話がありましたとおり、3つのチームをつくりまして、具体的には表−1、2ページ目に書かれておりますけれども、内山先生に座長をお願いして、チーム長として疫学チームには新田委員、人ボランティアチームには香川委員、毒性チームには高野委員にお願いをしてまとめていただいているというところです。
 具体的に、実施方法というところですが、3ページ目に書いていますが、「3.1 文献レビューの手順概要」というところです。レビューの候補文献、これは非常に数多くあるわけですけれども、効率的に行う必要があると。このため、環境省がこれまで実施をしてきたレビュー調査の報告、またEPA、WHOでまとめられてきた主要報告書の引用文献、こういったものを対象にしてきたと。さらに、抜けがあってはいけないということで、文献検索サービスを用いてアブストラクトの内容を確認するなどして、レビューの対象候補として追加をしてきていると。
 こういった対象としてきた文献について、文献データベースをつくって、研究特性、書誌情報を整理して、疫学、人ボランティア、毒性の分野ごとにレビュー対象文献を抽出しております。抽出された文献については、3チームの委員が分担してレビューを行いまして、抄録シート、レビュー結果表を作成していると。この資料に基づいて、文献レビューの報告書原案の作成を進めているというところです。
 また、環境省が過去実施してきた報告書について、これもあわせてレビュー報告書の原案の充実を図ってきていると。具体的なフローとしては、図−1に示すとおりというところです。
 それで、次に、7ページに行きまして、「3.3 レビュー対象文献の抽出」、どういう文献を抽出してきたかというところについて、抽出条件について簡単に説明をしたいと思います。
 表−9に抽出条件ということが示されておりまして、疫学、人ボランティア、毒性についての抽出条件が示されていまして、抽出条件1−1ということで、主要報告書、これはEPAの報告書やWHOの報告書ということですが、その中でも詳細にsummary tableの形で紹介されている文献。1−2でアメリカの主要報告書、WHOの報告書、そういったものの両方で引用されているもの。またはHEIで引用されている日本国内の疫学研究についての文献。またWHO、レポート9というのは、前の方にさかのぼって、表−3に書いておりますが、報告書リストに書かれていまして、レポート9というのは、WHOのAir quality guidelinesということで、2007年の4月にできたものですが、ここの中で、上に挙げたようなものの中でレビューされていない文献と。こういった抽出条件を用いて、かつ抽出条件2として文献検索サービスの検索結果で示されたデータベースのうちの原著論文と。こういったものを対象にしていると。
 人ボランティア実験については、主要報告書のうちアブストラクトを確認してレビューする必要がある文献、それと文献検索サービスで検索されてきた文献です。
 毒性については、抽出条件1−1、1−2では疫学と同じで、1−3で、これは疫学の抽出条件1−4と同じようにAir quality guidelinesのところから引っ張ってきたと。あとは文献の検索サービスを用いたものと。こういう抽出条件で示していこうというところです。
 それで抽出したものの結果というのは、表10から12に示しております。
 疫学については、合計数392というふうになっておりますが、それぞれの抽出条件ごとに小計が出ておりまして、かつ汚染物質の対象がどのような、PM、成分、ガス状のもの、あとは期間が短期か長期か、あとは健康影響指標としてどういう指標があるのか、あとは地域としてどういう地域があるのか、それぞれの分類ごとの整理をしたら、こういう結果になっているというところです。
 表−11に人ボランティア、同じように抽出条件1と2でどれだけの文献数があるのか、合計数32件ですが、それについて汚染物質と影響をそれぞれごとに整理したらどれぐらいの文献があるのかというのを示しておると。
 あとは、毒性についても、同様に表−12に書いておるとおりで、合計数が144件で、汚染物質と種類、影響、それぞれごとにどれだけの知見があるのかというのは、表−12のとおりということになっております。
 こういったことで、それぞれ抽出した文献について、各委員の方にレビューをしていただいたと。それを12ページ以降に書いていますが、抄録シートについて作成をして、実際にレビューの報告案というのをつくってきていると。
 それで15ページに、「3.5 レビュー文章の内容確認と選択」というところで、環境省が過去行ってきた文献レビューと抄録シート、それと先ほどご説明をした抄録シートのレビュー結果表、こういったようなものに基づいて、チームごとに汚染物質、研究対象としての汚染物質などを確認して、その調査報告で実際に引用する文献というのを各分野のチーム長を中心に選択をしております。18年度、19年度にレビューした文献568件と、環境省の過去調査でやってきました1,527件、このうち1,107文献について抽出をして、選択をして報告をつくっているという状況です。
 こういうことで、これらの知見・文献をもとにレビュー報告書の内容をつくってきておりまして、後ほど各チーム長の方から現在のまとめの内容についてご報告いただくという状況です。今、まだ用語等の精査作業を実施しているという状況です。

【内山座長】 ありがとうございました。
 それでは、これについては特によろしいかと思いますので、資料2−2以下でそれぞれのチームの報告をお願いしたいというふうに思います。
 まず、では疫学チームのご報告につきまして新田委員から、大体30分から35分ぐらいでお願いいたします。

【新田委員】 それでは、疫学分野の知見の概要ということで、パワーポイントを使ってご説明させていただきます。あわせて資料2−2をごらんいただければと思います。
 先ほど環境省事務局の方からご説明ありましたように、疫学では700を超える文献をレビューの対象として、今、報告書を作成中でございます。
 まず、疫学研究による知見の構成といたしましては、大きく分けて4つに分類して整理をしております。これは諸外国での同種の報告と同じような構成をとっております。1つは短期曝露による影響のうちの死亡との関係。それから、短期曝露による影響で死亡以外のもの。その多くは入院もしくは救急受診との関係のもの、それから個別の症状、呼吸器、循環器等の症状・機能変化との関係を見たもの、これが短期曝露による影響のうち死亡以外という項目で整理したものでございます。
 それから、長期曝露に関しましては、やはり死亡と死亡以外のものを分けて整理をさせていただいております。長期曝露による影響(死亡)に関しましては、基本的に長期のコホート調査による知見でございます。それから、長期曝露による影響のうちの死亡以外に関しましては、呼吸器症状との関連を見たもの、肺機能との関連を見たもの、これが従来から大気汚染の影響を見る上で一番取り上げられてきた項目でございますが、そういう知見。それから、ただいま議論がありました循環器系に関するもの。
 大きく分けてこういう構成になっております。それぞれの文献数は、かなり異なるところがございます。一番、PM2.5に関しましては、文献数で言えば短期曝露による影響が最も多いというふうに言えます。
 粒子状物質に関しましては、いろいろな曝露指標ということで、測定法の問題、それから成分の問題が取り上げられております。測定法に関しましては、従来からTSP、それからBS、それからCoHというような指標での測定が米国あるいは欧米でも行われておりましたが、最近の疫学知見の多くはPM10、PM2.5、それからPM10-2.5というようなことに焦点が当てられております。これは米国での環境基準設定の動向と密接に関係しているわけですけれども、文献調査のまとめにおきましては、この最近の動向を配慮したまとめをするということを考えております。それから、もちろん我が国でのSPMでの結果・知見を含めてまとめたいと思っております。
 それから、成分に関しましても、さまざまなものが取り上げられておりますので、整理をして、できるだけ健康影響の評価に資する資料を提供したいと思っております。
 もう一つ、文献レビューにおきましては、特に短期影響ではデータ解析手法というところが非常に重要な点になります。短期影響研究では、気象因子、それから共存汚染物質を含めた統計モデルを使って、基本的には日単位に粒子状物質濃度と死亡、もしくは他の死亡以外のアウトカムとの関連性を解析するということで、さまざまな手法が提案されておりますが、近年では、多く一般化加法モデル、GAMと呼ばれるもの、一般化線形モデル、GLIMと呼ばれるもの、それからちょっと解析手法は異なりますが、ケースクロスオーバー法と呼ばれるものが主要なプロジェクトで採用されているということもございますので、今回のまとめにおきましても、このような3つの手法を用いているものを中心に検討を加えたいというふうに考えております。
 長期影響に関しましては、従来から疫学の解析手法として採用されているものをここのレビューにおいても取り上げていきたいと思っております。
 レビュー対象の文献の選択でございますが、疫学調査の場合には、先ほど申しましたように非常に数が多いということで、知見の中身を整理して、できるだけ質の高いものを取り上げていきたいということで、ただいまご紹介いただきました文献データベースに基づいて、まず一般環境における曝露に関するもの、粒子状物質の健康影響に関しましては、職業曝露に関するものも多く含まれますので、基本的には一般環境における曝露に関するものをまとめとしては取り上げたいと。
 それから、共存汚染物質を含む大気汚染物質の平均濃度とともに、その範囲とか標準偏差とか、濃度の変動幅に関する情報も含まれているような文献を中心に取り上げるというふうに考えております。
 それから、アウトカムの定義、測定方法、これが明確に記載されているもの、これはもう科学論文に関しましては当然のことでございますが、そういう基準を設けております。
 それから最後に、今、短期影響のところで特に申し上げましたが、曝露とアウトカムの関連性に関して、疫学で必ず問題になります交絡因子の問題等々、その調整など、解析方法が適切であるもの、これを各レビュー担当委員の評価、チーム内での検討を経て、最終的に文献レビューの対象と考えております。
 ちょっと前置きが長くなりましたが、以下、具体的な知見を現時点で整理したものをご紹介いたします。
 まず、短期影響の死亡に関する研究。先ほど申し上げましたように、短期影響と申し上げておりますのは、ここでは日単位(24時間単位)の曝露とその影響ということを短期影響の範疇で考えております。もちろん、それよりも短い時間単位の影響等々、議論されているものもございますが、知見の多くは24時間単位(日単位)の曝露と死亡との関係ということになります。
 まず、死亡の日死亡と粒子状物質の関係に関しましては、複数都市に関する統合解析という大きな幾つかのプロジェクトがございます。一番大きいのは、米国の90都市の、NMMAPSと呼んでおりますが、ここでは最も単純に要約させていただきますと、PM10と有意な関連性が日死亡との間に見られていると。それから、米国のまた別の10都市の研究でも同様の結論になっております。
 それから米国の6都市、これは長期疫学調査で有名なハーバードの6都市調査の同じ都市で短期影響を見たものでございますが、ここではPM2.5及びPM10-2.5と有意な関連性を報告しております。
 ちょっと話が戻ってしまいますが、ここでPM10との有意な関連性という米国例えば90都市であっても、PM2.5をはかっている場合といない場合がございます。はかっていない場合には、何もここで報告ありませんし、はかっていて関連性が認められなかった場合もございます。ここでは有意な関連性が認められたものだけを報告し、測定している・していないということを少し省かせていただいております。
 それから、さらに北米のうちのカナダの8都市の研究、これではPM2.5と有意な関連性を認めております。
 それから、欧州では29都市、ヨーロッパのさまざまな都市での検討の結果、PM10と有意な関連性を報告しております。
 我が国では政令都市、大都市を中心とした解析結果で、SPMとの有意な関連性を報告したものが既に公表されております。複数都市で大きなものは以上でございます。
 短期影響の死亡に関しましては、こういう複数都市の統合的な大きなプロジェクトとして報告書が出ているようなもの以外に、世界中のさまざまな都市での日単位の死亡と粒子状物質の濃度との関連性の報告がございます。
 そのほとんどは欧米諸国でありますが、アジア関係は約1割程度となっております。この中のほとんどはPM10と有意な関係を報告しているものが多数ございます。それから、測定としてPM2.5をはかったものは必ずしも多くございませんが、PM2.5に関しましても、多くの場合、有意な関連性を報告しているものがございました。
 全体を見ますと、短期影響の死亡に関しましては、かなりの部分でPM10もしくはPM2.5に関して有意な関連性を報告しているというふうに言えると思います。ただ、ここでは書いておりませんが、リスクの大きさ、それから先ほど若干議論がございましたが、それぞれの都市での地域差に関しましては、かなり大きいものがあるというふうに考えております。
 短期影響の死亡以外に関しましては、まず知見として最も多いのは、医療機関への入院、もしくは医療機関への救急の受診とPM2.5の関係を報告したものでございます。これに関しましても、死亡と同様に複数都市の統合した結果が報告されております。米国の14都市の報告、欧州の8都市の報告がございます。これではPM10と呼吸器系、COPD、心疾患等々の入院との有意な関連性が報告されております。
 その他、個別の単一の都市での解析が多数ございます。PM10の曝露と心血管系、呼吸器系による入院・救急受診との関係、多数報告されております。PM2.5に関しましても、有意な報告をしているものが多数ございます。それから、PM2.5に関しまして、心血管系疾患に関しましては、全体としてはプラスの関係(正の関係)、PM2.5濃度が高いと入院もしくは救急受診がふえるというような関係を示しておりますが、有意である場合、もしくはそれに近い場合の報告がございました。
 短期影響(死亡以外)では、そのほかに幾つか症状・機能との関係に関する報告がございます。循環器系に関しましては、不整脈との関係、心電図のいろいろなパターンの変化との関係、心拍数・心拍変動との関係、血圧との関連性を報告するものが幾つかございました。それから、血液性状との関係、血液関係のバイオマーカーとの関連性を報告しているものがございました。全体としては、知見の数としては他に比べて少ないということが言えるかと思います。
 呼吸器症状、肺機能に関しましては、従来からたくさんの研究がございます。まず、呼吸器症状に関しましては、喘息患者を対象とした調査と、それ以外の健常者を含めた対象者に関する研究、大体大きく2つに分けることがございます。
 喘息患者におきましては、ピークフローとの関係を見ますと、PM10ないしPM2.5との関係、多くは負の関係を示しておりますが、有意であるもの・有意でないもの、両者見られております。
 それから呼吸器症状との関係を見ますと、PM10との場合には、有意でないものもかなり含まれているというふうに整理できるかと思います。
 それから、喘息患者以外を対象にした研究に関しましても、ピークフローに関しましては、負の関連を報告するもの・正の関連を報告するもの、両者ございました。
 呼吸器症状との関連に関しましても、関連を報告するものはございますが、有意なものは少なかったと整理できると思います。
 ここで、短期影響(死亡以外)で胎児期、周産期、乳幼児期という整理をさせていただいております。実際には、ここでの短期影響、分類としては、この後ご報告をさせていただきます長期影響と中間的な影響、曝露時間、例えば数カ月単位の曝露との関係ということで、言葉として「短期」と述べるべきか「長期」と述べるべきか、少し迷うところがございますが、そういう出生前後での曝露と関連性、いろいろなアウトカムを検討した報告が特に最近、欧米諸国から出ております。低出生体重との関係を示すもの、それから早産との関係を示すものが出ておりました。
 これからは長期影響に関する疫学の知見になりますが、死亡に関しまして、幾つかのコホート研究が行われております。大きいものをそこに4つ挙げております。1つの研究からさまざまな疫学の知見の報告がございます。それを少しまとめてご紹介をさせていただきます。
 1つはハーバードの6都市研究ということで、米国の東部の6都市、対象数は約8,000人で、14年から16年を追跡した研究でございます。それから、American Cancer Society(ACS)コホートというものは、米国の151の大都市圏の約55万人を対象に、初めの報告では7年の追跡、その後、最大16年の追跡結果が報告されております。それから、カリフォルニアのSeventh Day Adventistという、非喫煙集団の約6,000名を15年追跡した報告が出ております。それから、米国の退役軍人のコホートということで、高血圧を持つ男性の約5万人、21年間の追跡の結果が出ております。
 この報告のコホート研究による長期の死亡との関係を見たものの要約でございますが、ACS研究、それからハーバード6都市研究においは、PM2.5と死亡との間に統計的に有意な関連性を報告しております。
 6都市研究では、PM2.5濃度10μg/m3の増加に対応する死亡の過剰リスクは14%、ACSでは同じく7%という報告がございます。
 それから、Seventh Day Adventistの研究、AHSMOG研究では、呼吸器系疾患による死亡、それから男性による肺がん死亡で有意な関連性を認めておりますが、米国の退役軍人の研究では、関連性が認められずという報告になっております。
 引き続きまして、長期影響のうちの死亡以外に関しましてですが、これもハーバードのやはり6都市研究、もしくはそれを拡大した24都市研究で、肺機能と慢性呼吸器系疾患との関連を見たものがございます。PM2.5との有意な関連性を報告しております。
 それから、これは最近新しいコホートですが、カリフォルニア州の子供のコホートということで、10歳から18歳の児童について肺機能の発達との関連性を検討して、肺機能のうちの一秒量の増加とPM2.5の間には負の関係があるという報告をしております。
 その他欧州における研究では、PM10と肺機能の関連、PM2.5と咳との関連、それからTSPとの呼吸器症状の関連等、さまざまな報告がございます。
 ただいま長期影響のうちの呼吸器系のことを申し上げましたが、循環器系疾患に関しましても、コホート研究の結果が近年報告されました。
 米国のWomen′s Health Initiativeコホートという、約5万8千名の女性を6年間追跡した結果では、PM2.5と心血管疾患、冠動脈疾患、脳血管疾患の発症と有意な関連性を報告しております。同じく心血管疾患、冠動脈疾患と死亡との有意な関連性も報告されているということで、幾つかのコホート研究、死亡もしくは疾患の発症を対象としたもので、PM10ないしPM2.5と有意な関連性を報告するものが出ていたということでございます。
 疫学研究の場合には、基本的には観察研究ということで、濃度と何らかのアウトカムの関連性を疫学的に検討するということでございますが、一部いろいろな、厳密な介入研究ではございませんが、自然の介入、自然の実験と言われるようなものが幾つか報告されております。
 1つは、米国のユタ渓谷での製鋼所の一時閉鎖と再開に伴って、大きな濃度変動があった期間での子供の入院数、成人の入院数との関係を報告したものがございました。この研究に関しましては、後で人ボランティア、それから毒性のチームからも関連した報告がなされるのではないかというふうに思います。
 それから、アイルランドで石炭の発売禁止に伴うような濃度変動。香港で、「硫酸」と書いてあるのは、失礼、「硫黄含有」とちょっと訂正していただけますか。低い硫黄含有の重油使用規制というようなことに伴う死亡等々の変化の報告がございました。
 粒子の成分、それから、この後、粒径との関係に関しまして簡単にまとめさせていただきますが、粒子の成分との関連に関しましては、最も多く報告されているのは、硫酸イオンの濃度との関係、もしくは酸性度、水素イオン濃度との関係を報告するものが、米国の6都市研究、その他の研究でございます。それは短期影響・長期影響を含めて硫酸イオン濃度との関係を報告するものがございました。その他の粒子成分に関しましても幾つか報告ございますが、まとめとして取り上げられるような、一致した内容を示すものは少ないのではないかなというふうに整理しております。
 粒径に関しましても、PM2.5、PM10、それからPM10-2.5、両者のリスクの大きさ、重要度の大きさを比較したものがございます。特にPM10-2.5に関しましては、米国の環境基準の動向で注目されて、知見が最近出ておりますが、基本的にはPM2.5、PM10と比較して、相対的にリスクが大きいという結論を示すものは少なかった、もしくは一致性に関しても十分ではなかったというふうに考えております。
 以上、疫学分野の概要、700を超える知見の整理でございますので、少し表現が不十分なところがあったかと思いますけれども、今後、全体をまとめるに当たりまして、十分整理してご報告させていただければというふうに考えております。
 以上です。

【内山座長】 ありがとうございました。非常に膨大な文献のご整理と、レビューをしていただきまして、現在も本編の方はまだ作業が続いているということですが、大変ご苦労だったと思います。
 何かご質問、ご意見をいただけますでしょうか。特に先ほど申しました、この第1回のときの会議で、論点というものがメモとして参考資料に出ておりますが、その点を頭に置いて、ご質問等ご意見、あるいはご議論いただきたいと思います。よろしくお願いします。どうぞ、富永先生。

【富永委員】 大変膨大な作業をしていただいたと思います。
 私、基本的な質問をいたしますけれども、論文をいろいろなデータベースから抽出するときの抽出条件の中に、これは12ページの表−13に抄録シート記載項目とございます。それの下の方に、抄録作成者の評価という項目がございまして、その5番目にデータ解析における偶然性・交絡・バイアスの考慮(有無)とあります。こういうものは非常に抽象的で、どういう項目かわからないですけど、特に質問は、短期影響の場合にはデータでの気象・気温などが考慮されているかどうか、長期影響の場合には喫煙が必ず考慮されているかどうか、それだけお教えいただきたいと思います。

【新田委員】 基本的には、すべての知見に関しまして、気温等気象要因の調整はされております。簡単に申しますと、査読者がついた学術雑誌、疫学関係の雑誌で、そのような調整をしていなければ採用されないという状況でありますので、基本的には、気象要因に関しましては、短期影響、すべてそのような調整をしたものを今回も取り上げております。

【富永委員】 しつこいようですけど、それは編集者、レビュアーが確認しているからということで、それを使われたのでなく、実際に確認されているわけですね、自分で見て。

【新田委員】 今回のレビューのそれぞれの文献を担当されている委員の先生方に、この項目を確認していただいております。

【内山座長】 よろしいですか。喫煙も同じということでよろしいですね。

【新田委員】 ただ、喫煙は、短期影響の場合には評価は通常しておりません。

【工藤委員】 長期影響の死亡以外のところですが、肺機能発達のところで、スライドの方はカリフォルニア州子供コホートというところで、8年間の「一秒率」の増加となっていますが、これはミスプリントだろうと思います。本文の方は「一秒量」になっているので、それで正しいのだろうと思うのですが。
 それから、もう一つは、一秒量というのは、もちろん発達とともにふえていく訳ですが、それに関与している、一秒量の予測正常値、何で規制されているかというと、男か女かという性別と、それから身長と年齢、なんですね。ということで、身長の増加、すなわち子供の発育ですね、発育が悪ければ、一秒量はふえてこないということになります。身長について言及はされてますでしょうか。

【新田委員】 現状で、身長の伸びに関しまして記載があったかどうか、ちょっと今すぐに…。

【香川委員】 当然、身長に対して一秒量が増加するわけですね。その傾斜が汚染地区と非汚染地区でどうかという、そういう評価を通常しているわけですね。

【工藤委員】 年齢のみならず身長も…。

【香川委員】 ええ、基本的には身長がふえると一秒量もふえるわけですね。それが汚染されていないところがこういうふえ方をしていれば、汚染されたところは、それが下回る。そういう評価の仕方を通常はしておりますけれども。

【工藤委員】 はい、わかりました。

【島委員】 今、香川先生がおっしゃったことと同じですけれども、私がその文献を読ませていただきましたが、年齢と身長から一秒量の予測値を求めて、それに対する割合を評価していると。

【工藤委員】 そうしますと、これ正確には一秒量に関しては一秒量パーセント、すなわち予測値に対する比率という、そういうふうに理解してよろしいですか。一秒量絶対値ではなくて。

【島委員】 2つの評価がされていまして、一秒量の絶対値についての増加を評価しているのと、それとともにパーセント一秒量についての比較も行った結果が示されていたと記憶しています。

【工藤委員】 わかりました。そこは、書き加えておいていただいた方がいいと思います。読むときに誤解をする人がいると思いますので。私も現に誤解しました。

【新田委員】 工藤先生のご質問が、身長の伸び自体も差があったのかどうかというようなご質問かと思ったものですから。

【工藤委員】 パーセント一秒量という形で差があるということであれば、それはそれでわかります。

【内山座長】 よろしいでしょうか。
 その点ですか。別件で。では、香川先生。

【香川委員】 どこかに述べられているのかもわかりませんけど、こういった影響の結果の平均余命の短縮が問題になっておりますよね。それは取り上げられていない。

【新田委員】 文献レビューの中には、その文献は含まれております。ただ、平均余命に関する研究、幾つかあって、結果が一致しているというところまでの整理をしていなかったということもあって、きょうのまとめのところでは述べておりません。

【内山座長】 平均余命をエンドポイントとした文献も、あることはある。では、それを、本編を整理される上で少しその観点もつけ加えることはできますか。ただし、結論として一致したものは、余り出ていないということでしょうか。

【新田委員】 まとめで、レビュー全体のまとめの中で述べるべき知見かどうかの判断は、ちょっとまだしておりません。

【内山座長】 よろしいでしょうか、香川先生。よろしいですか。
 では、上島先生。

【上島委員】 前にも聞いたようにも思いますが、もう一遍、忘れましたので聞きます。
 よく、今のパワーポイントの中でも、それから報告書の中でもそうでしたが、単位として、濃度の増加に10μg/m3という単位が出てきますが、これは例えば標準偏差と比べてどれぐらいの大きさかというのをしていくと、大体、分布からどれだけずれたときにどれだけのリスクになるのかというのがずっとわかる訳ですが、僕は血圧だとわかりますが、これがどのぐらいの分布の中のずれなのか、ちょっと教えてほしいのですが。
 それから、またほかのやつも、これは、そういう標準偏差に比べてどれぐらいか、例えば一標準偏差で示してあると全部比較できるというか、すぐわかりますが、単位が違うとわかりにくいので、リスク比がわかりにくいので、大きいのか小さいのか、比べるときに、ちょっと僕、素人は困りますが、それをちょっと教えてください。

【新田委員】 10μg/m3、どれぐらいの濃度か、変動幅は、ちょっと私、直接今、正確なことは申し上げられませんが、前回、きょうも追加解析させていただきました20地域で疫学調査をした中では、全体の平均が15〜20、年平均値ですね。変動幅も、大都市部を含む20地域で、約最大・最小のレンジとして10μgぐらいというふうに考えております。ですから、10μgの変動幅というのは、標準偏差からいきますと少し広目かなと思います。
 ちょっと、ご専門の先生に補足していただければと思いますが。

【内山座長】 どなたか委員の方でございますか。よろしいでしょうか。
 これは10μgと書いてあると、ヒトは25とか50μgというものでよろしいですか。

【新田委員】 基本的な原著論文の記載に、現時点では従った報告をさせていただいております。

【内山座長】 わかりました。
 横山先生。

【横山委員】 大変ご苦労を、私は若干、新田先生のお仕事を前から伺っておりますので、改めてお礼申し上げようと思いますが、二、三質問をさせてください。
 まず第1は、きょうのスライドでも拝見しましたが、大体、この委員会の主な対象はPM2.5であるというふうに、別に明らかには書いてないけれども、前提としてそういうふうになっていると思うのですが、アメリカの最近のクライテリア・ドキュメントもそうですが、最近の諸国におけるPMの、特に死亡に関しましても、PM10の方が、もちろんこれはPM2.5が測られていないということもあるでしょうが、PM10のレポートの方が多いのではないかと。僕、これは、まとめしか拝見してきませんので、細かなところが間違っていたら直していただきたいですが、どうも、少なくとも死亡のリスク比については、PM10とPM2.5とそんなに大きさは違わないようにとったんですけどね。これが間違っていたら直していただきたいですけど。もし、これがそんなに違わないのであれば、PM10をうまく管理すれば、PM2.5は管理できるのではないかと。結局、PM10が管理できるとするならば、日本のSPMだって大体同じことだから、SPMの管理をきちっとやれば、これぐらいの問題はカバーできるのではないかというふうに思った訳ですが。もちろん、この文献レビューのところでは定量評価はしないという約束になっていますから、定量評価に少し入ってはいけないでしょうけれども、もし何かそういう僕の考え方に間違いがあったら教えていただきたい。
 第2点。驚いたのは、長期曝露の影響がすごく大きいですね。さっき拝見したのでは、ハーバード6都市調査ではPM2.5、10μg/m3当たり17%、それからACSが7か8%ですか。これは短期のいわゆる日死亡のリスク比よりは大きいですよね。これは、僕は、最近、PMの長期影響、特に死亡に対する長期影響に、アメリカの今度の環境基準の改定でも、それからWHOのクオリティガイドラインでも、余りはっきりは書いてないですけれども、どうもウエイトを置いているというのを感じておりましたが、改めてきょう数字を拝見して、死亡の相対リスク比に対する長期曝露の大きさが、こんなに大きかったのかと改めて思った訳ですが、そうしますと、従来、我々の目は、どちらかというと短期の曝露のいわゆる日死亡に対して行っていたけれども、これだけ違うとなると、やっぱり長期影響を我々としても今後重要視しなきゃいけないのではないかと改めて思いましたが、その点について新田先生のご意見をお聞きします。
 それからもう一つ、これは極めて事務的な問題ですけど、「アウトカム」という言葉を先生はお使いになりますが、昔は「エンドポイント」という言葉を使ったのですよね。エンドポイントとアウトカムとはどういうふうに使い分けていらっしゃるのか、教えていただけたらばお願いします。
 以上3点、ひとつ教えていただければ。

【新田委員】 まず第1点でございますが、PM10とPM2.5に関してですが、米国では、かなりPM2.5とPM10を同時に測定している、場合によってはPM10-2.5もはかっているという状況で、米国ではPM10とPM2.5のリスクの大きさを比較してというふうなことがある程度可能な状況になっているかと思いますけれども、他の諸国ではほとんどそういう状況ではなくて、ほとんどの場合PM10、もしくはそのPM10もTSPとかBSの濃度から推定しているというような状況ですので、PM10に関して示されているものの本体が実はPM2.5なのかというようなことを、ちょっと現時点で議論するのは難しいのかなと。結果として同程度であっても、それがすべてPM2.5だとかPM10だというような議論は現時点でなかなか難しい、どこかで割り切りが必要な分野が残っているのかなというふうに思います。
 それから、2点目の短期と長期に関しましては、これは横山先生のご指摘が私の見解というふうにご質問でしたので、私も長期影響を重視すべきだというふうに考えております。それから、短期影響の研究とリスクの大きさがかなり違うということに関しましては、例えば米国のクライテリア・ドキュメントにおいても議論をされております。それから、WHOのガイドラインに関しましては、かなり明確に議論をされておりまして、短期影響で把握できている部分は大気汚染の健康影響の部分の一部、ということは、長期影響の方が真の影響をあらわしているものに近いだろうというような考え方をとる研究者の方が現状は多いというふうに私も思います。
 それから最後、ちょっと私もアウトカムということを余り深く考えずに使っておりますが、私自身は、アウトカムは、余り評価の入らないような範囲の統計的な、観念性の、曝露の結果としての健康影響指標の広い意味でアウトカムというふうに使うのかなと理解しております。ちょっと、その理解が間違っていたらご指摘いただければと思いますが。

【内山座長】 今の長期と短期の関係で、長期影響のときは、がんが効いているということはないですか。短期では、がんもその全死亡に入っているといえば入ってはいますが、その1日ごと、タイムラグを追って、がんが、影響があるようには思えないのですが。長期には、がんが入ってきますよね。それは余り論じられてはないですか。

【新田委員】 カリフォルニアのSeventh Day Adventistの場合には、非喫煙集団という、ある意味特殊な集団ですので、その集団でのがんの死亡率とハーバード6cityとかACSの集団での肺がんの死亡率の違いというようなことは議論されていたかと思います。ただ、長期曝露において、特に大気汚染においては、どれぐらいの期間の曝露が、結果としてどれぐらいおくれて影響があらわれるかということに関しては、非常に議論は難しいと。曝露が連続的に続いているという状況でのコホート研究ですので、非常に難しいということで、その点で、定量的な議論はほとんどなされていないのではないかなというふうに思います。

【内山座長】 そのほか。坂本先生。

【坂本委員】 粒子成分とその影響というところですけれども、サルフェイトと、それから水素イオンという形で挙げてありますが、これは測定方法が非常にきちんとそれぞれ定義されていないと、実際には、PMをはかるとき、フィルターの上で湿度が高ければ高いほど中和がアンモニアでより速く進むとか、そういったことがありますので、やはりこれをまとめるときには、測定方法も、どういう測定方法でなされていてどうだという形をお書きいただいた方がいいかなという気がいたします。
 それから、粒径とその影響のところについても、先ほど横山先生からお話ありましたけれども、やはり非常に長期にわたって影響を見たものについては、粒径分布がその間に変わってなかったのかどうか。どちらかというと、日本でもそうだったと思いますが、かなり早い時期には、大きい方の粒子が割と濃度があったのが、それがまず下がってきて、そして現時点ではむしろ大きい方は余り変わらなくて、小さい方が対策効果によって変わってきて、PMの濃度は見かけ上余り変わらないとか、そういうようなこともありますので、やはり粒径の方の変化がどうなっていたか、これがいつもどこかで組成がはかれればはかっておいた方がいいという形で申し上げているところにはなる訳ですが、特に水素イオンの濃度のところについては注意が必要かなというふうに思います。

【内山座長】 コメントということで、本文も含めて、まとめのところで少し気をつけていただきたいというふうに思います。
 これは、もう一つ私の方から、VA研究、退役軍人ですね、あそこ非常に人数は多いけれども余り関連は認められなかったという結果ですが、これはたしか、高血圧を持っている方をフォローしているということで、それは言ってみれば高血圧によるその他の疾患の影響があって、PMの影響が、いわゆるマスクされてしまったと考えてもいいですか。そのような議論はされていますでしょうか。

【新田委員】 議論されています。ただ、現時点では、EPAのクライテリア・ドキュメントでは、例えばACSスタディとハーバード6cityでは一般の住民を対象にしているので重視しますというような方向で書かれておりますが、その点は議論した上で評価すべきだろうなというふうに思っております。

【内山座長】 はい、どうぞ。

【溝畑委員】 要するにカリフォルニアのデータでは、サルフェイトとの有意な関係は示されなかったというふうに書いてありますが、これは東部と西部の粒子の成分が全然違うので、ある意味当然かなと思ったりしますが、その辺の何かコメントはありますか。

【新田委員】 米国のクライテリア・ドキュメントでも、カリフォルニアは絶対的に濃度が低いということで、関係が見えなかった可能性に関しては指摘しておりますし、Seventh Day Adventistの論文の考察にも、その点は書かれていたと記憶しております。

【溝畑委員】 ということは、濃度レベルとの関係ということになってしまうのですかね。私、むしろ東部の微小粒子の主成分、サルフェイトなんか完全に主成分になっていると思っているので、どっちがどっちなのかなというふうな感じをちょっと受けている訳ですけど。

【内山座長】 今の粒子成分とその影響のところで、当初は、重金属の影響は非常に違いが大きいのではないかというような議論もありましたが、結局、この結論のまとめのところでは、それは全く触れていませんが、その後の全体としてのまとめとしては、重金属よりはむしろサルフェイトの方が…。

【新田委員】 結論は出ていないと言った方が正しいと思います。一番疫学的に知見があるのがサルフェイトなり、そういう一連の過去から蓄積があるということで、まとめとしては、その点を整理させていただきました。

【横山委員】 今、座長がおっしゃったように、メタルについて、すごくこういう論文が出てきたと思う訳ですけれども、最近は余り、少なくとも論文の数からいうと少なくなってきているように思いますが、そこら辺どうですか。

【新田委員】 ちょっと正確に数を評価しておりませんが、印象としては、横山先生のお話と同じような印象を私自身も持っております。

【内山座長】 そのほか、いかがでしょうか。どうぞ。
 それから、先ほどのパーセンテージのところも、10μg/m3の増加に対応する過剰相対リスク云々というところも、この分厚い資料のほうのAHSMOGのところでは非がん呼吸系死亡との強い相関というようなことが書いてあり、肺がん死亡との関連があったのは、SO濃度及びオゾン濃度としていますが、これはどこにあるのかというのがよくわからないのですけど。

【新田委員】 申しわけございません。資料2−2の記載とパワーポイント資料、完全にちょっと対応してないところがございまして、それぞれコホート研究に限らずたくさんの論文が出ているのを整理していて、その同じ、例えばAHSMOG研究も、それぞれの研究の報告が必ずしも一致していないというところがございます。それをまとめているというところもあって、少し整合性とれてないところがございます。
 今日、今ご指摘いただいた点、一つ一つ説明するのは省略させていただきますが、今後、まとめに当たっては、十分注意してまとめを作成させていただければと思っております。

【工藤委員】 わかりました。先ほど内山座長がお話しされたように、特に日本では肺がん死亡が急激にふえておりますし、年間大体100万人の死亡の中で、肺がん死亡はもう6万人を超えておりますから、そういう意味では、肺がんのところは少し注意深く書き込んでいただいた方がいいかなというふうに思っています。
 以上です。

【内山座長】 ありがとうございました。
 それでは、きょうご議論いただいたところも含めながら、また本文の方、今取りまとめ中ということですので、本編を取りまとめいただいて、またそれの概要版というのが出てくると思いますので、そのときには、また今ご議論いただいたようなことも、少しまた反映させた形にしていただきたいというふうに思います。
 疫学については、このぐらいでよろしいでしょうか。
 それでは、次は人ボランティアチームの報告でございます。香川先生の方からお願いいたします。大体10分ぐらいということで。

【香川委員】 
 人ボランティア実験は、目的は、疫学での短期間曝露の影響を人で確認する、それから動物実験でそういったことに関連したものが見られたときに、じゃあ人ではどうかということを確認するということで、研究の主体はそういうことで、例えば疫学の場合、呼吸器疾患で入院する人がふえるとかということが多いので、その基本的なメカニズムとして、そういったものを吸わせたときに、気道に炎症が起こるかどうかということを調べることが基本になっております。それから最近、循環器系への影響が多く報告されていますので、そういった心臓死に関連するような心電図上の変化とか、そういったことが人で見られるのかどうかという視点で行われております。
 それから、研究機関は、この人のボランティア実験というのは非常に限られておりまして、できる場所が限られているわけですね。米国ではEPAの研究機関と、それからローチェスター大学の曝露施設と、あとカリフォルニアにある施設の3カ所が主体で、ヨーロッパからの報告がありますけれども、そのうちの多くは、ヨーロッパの研究者がアメリカに来て、それで調べて報告をしている。ですから、施設を利用しているのは、アメリカの今言ったような3カ所で研究しているのが多いです。ヨーロッパでも一、二ありますけれども、それは温度・湿度を、きちんとコントロールを余り厳密にやってない、それから曝露チャンバーもそれほど大きくないような、箱庭的な施設が一、二カ所で行われています。
 被験者数は、これは人道的な立場から短期間曝露で、設備面から、そんな何百人もというわけにはいきませんので、多くの場合、数人から十数人、中には数十人行われているものもあります。でも、多くの場合は十数人。これは一度に何十人もできるものではありませんので、大体チャンバーの大きさによりますので、人数もそんなにたくさんできない。それから、最初はもちろん健常者で行われていますけれども、中には喘息患者とかCOPDの患者さんを使って行っている研究があります。
 それから、先ほど疫学でどういう条件に基づいて論文を選んだのかという質問が出ておりますが、人ボランティア実験に関しては、そういった施設が限られておりますので、出された論文は無条件に採用しています。もちろん、人ボランティア実験の曝露ですから、個別の汚染物質について、曝露したらどうなるかという研究であります。
 これはディーゼルの排気をいわゆるホール曝露したときにどうかということで、こういった人体曝露実験は、ここで述べられているのは、ほとんど2000年以降に報告されたものが主でして、ちょっとこのスライドの大きさの関係から、被験者の数とか、それから報告者の何年に報告したかというのは、入れると煩雑になりますので、それはサマリーの別の資料で見ていただけたらと思いますけれども。
 ここで粒子濃度を指標としてディーゼル排気を吸わせたときに100から300μg/m3、これは大都市でディーゼルの排気ガスに曝露されるとしたときの最高濃度を目安にしているわけです。300というのはちょっと高いと思いますけど、100ぐらいでしたら、あり得る。そういう条件下の中で、間欠的な運動をして、1時間から2時間、健康者に曝露をいたしますと、ここに書いてありますように、気管支肺胞洗浄液あるいは誘発痰、そういったものの中に、気道の炎症に関連したサイトカインあるいは好中球がふえるということで、都市大気中で曝露をし得るようなディーゼル排気を曝露すると、そういった所見が見られますよということがここに示されております。
 その次は、ディーゼル排気の中のディーゼル排気粒子が一番注目の的になってくるわけですけれども、そのディーゼル排気粒子に関してどういう研究があるかといいますと、これを見ますと、Diaz−Sanchezの研究がほとんどですね。真ん中にFujieda、国環研の藤枝先生の研究がありますけれども、この藤枝先生らの研究もDiaz−Sanchezと一緒に行った研究であります。もちろん、このDEPはどういう自動車から採取したかという、ディーゼルエンジンの性質、あるいは特に古いものですと硫黄分の多い燃料からとったりした場合とか、いろいろありますけれども、それはきょうお配りしているサマリーの要約版の元の詳しい報告書の方に、そういったことはちゃんと記載してありますので、それを見ていただけたらと思いますけれども、そういった成分は抜きにして、一応0.3mgのディーゼル粒子を、生理的な食塩水とか、そういったものに薄めて、それを鼻に噴霧して、そして、その結果どうなるかという研究が主体であります。この0.3mgというのは、Diaz−Sanchezに言わせると、ロサンジェルスの大気を24時間吸入すると、このぐらいの粒子をトータルとして吸入するということで、0.3mgを選んでいるそうです。
 そういったものを噴霧しますと、IgEの産生細胞数がふえるとか、それからIgEがふえるとか、そういったことが報告されておりますけれども、ここで注意しないといけないのは、一番冒頭のところにありますように、0.15と0.3と1mgと3種類あって、IgEの産生細胞数あるいはIgEがふえたりする、そういったのは0.3mgで認められて、0.15とか1mgでは、このIgE産生細胞数の増加とかというのは認められてない。いわゆる量反応関係が認められてないというところが注意して評価しないといけないんじゃないかと思います。
 それからもう一つは、そういったブタクサに感作された人にDEPを、まず、最初に投与して、ブタクサを投与しますと、抗原特異的IgEが有意に増加することが報告されております。
 もう一つは、KLHというのは、これは通常人で抗体が産生されていない新しい抗原を、DEPを投与した後、このKLHを投与しますとIgE抗体が増加するということで、新しい抗原に対しても、DEPは抗体の産生を強める作用があるということも報告されております。
 それからDEPを投与すると、鼻洗浄液中のヒスタミン濃度も増加する。しかし、これはみんなDiaz−Sanchezらの報告です。一番下のKongerudらの報告は、ちょっとこれは線の引き方が紛らわしくなっていますけれども、DEP、これはちょっとDiaz−Sanchezらの使っているDEPと違うDEPですけれども、そういったDEPと、それからオゾンで処理したものと2つ調べておりますけれども、Sanchezらの報告しているものは見られなくて、比較的、非炎症性の物質であるというようなことを述べております。
 このCAPSの研究というのがいろいろ行われておりまして、これは現実にロサンジェルスとか、あるいはEPAの実験室があるダーラムの周辺の大気を濃縮して、そして健康な非喫煙者に2時間曝露しますと、やはり気管支肺胞洗浄液中で好中球がふえるというようなことで、気道内炎症性作用が、現実の大気中の粒子を濃縮しますと、大体6倍から8倍ぐらいに濃縮していますが、そういった炎症作用が起こってくるということ。それからもう一つは、血中のフィブリノゲンがふえるということで、これは気道のみならず全身性の作用もあって、血中のフィブリノゲンがふえるということは、血液の凝固にも関連してくるわけでありまして、そういったことも報告をされております。あと、心電図上の心拍変動が減少するとか、そういったことも報告されております。
 これは専らカリフォルニアのロサンジェルスにあるチャンバーでGongらの一連の研究ですが、やはり気道系に対して炎症性の作用があったりとか、なかったりとかという報告が出ております。これは被験者の数が少ないので、結論は出せないのではないかと思います。それからもう一つは、後半にありますCOPDの患者と健康者とを比べますと、健康者の方が、例えば肺機能のMMFというのは、どちらかといったら末梢気道の肺機能の気道狭窄をあらわす指標と言われていますが、そういったMMFとか、それからSaO、これは下に書いてありますようにpulse oximetryで測定されているので、正確にはSpOという表示が正しいと思いますけど、原著ではSaOになっておりますので、そういったことで、こういったものを吸わせますと、末梢気道、いわゆるSmall Airwayの影響があるということ。しかし、COPD患者よりも健康者の方がより強い影響を受けるということがあって、この差はよくわからない。被験者数もそんなに多くありませんので。
 それから、最近問題になっております粗大粒子ですね、粗大粒子に関しましてもGongが行っていますが、通常の症状とか肺機能とか、そういったことには影響がないけれども、心拍変動の減少が見られて、それも健康者の方が喘息患者より多いという報告がされております。
 これはCAPSとオゾンをミックスして曝露しますと上腕動脈の血管が収縮する、つまり血圧が上昇するという報告であります。これは3つともそうですけれども、残念ながらCAPS単独だけ、オゾン単独だけ、それとCAPSとオゾンという、3つの曝露をしておりませんので、CAPSがきいているのか、オゾンがきいているのか、あるいはその両方がきいているのか、個別の評価はちょっとできませんけど、とにかくCAPSとオゾンを一緒に曝露しますと血圧を上昇させるという、これは循環器系への影響ということで報告されております。
 気管内注入、先ほど新田先生が言われましたユタ渓谷で工場が閉鎖する前と閉鎖中と閉鎖後、これはたまたま工場の周辺でPM10の測定を行っていて、その濾紙が残っていたものですから、その濾紙から抽出して、そしてそれを非喫煙者の気管支に注入いたしまして、それで炎症反応が見られるかどうかという研究で、気管支肺胞洗浄液を見ますと、気管支肺胞洗浄液で好中球がふえるとか、そういったことで炎症が見られる。500μgというのは、この報告者が計算していますけれども、ユタバレイの大気を24時間吸入したときの肺内沈着量の約5倍に相当する量だそうです。きちんとしたデータは出ていないですが、同じ論文の中で、実際に沈着する100μgを投与しても、BALF中で炎症性反応の所見が見られたということが書かれております。それから、下のドイツの報告で、これは精練所のあるHettstedtという地区のPM2.5の抽出物と、田園地帯のZerbstというところの抽出物と比較すると、気管支肺胞洗浄液はHettstedtの方が、炎症反応が強くて、その原因として、遷移金属が原因しているのではないかと。これは、下に書いてありますように、亜鉛がやはりHettstedtの方が4.7倍多い、銅もニッケルも多いということで、遷移金属が原因ではないかというふうに報告者は考えております。
 最近、超微小粒子のことが非常に問題になっておりまして、人体曝露実験でも、この超微小粒子の研究が行われてきております。ここで注目してほしいのは、酸化亜鉛と酸化マグネシウムで見ますと、酸化マグネシウムの方は、かなり高濃度を吸入させても気管支肺胞洗浄液に変化がないですけれども、酸化亜鉛フュームの方は炎症性反応が見られるということで、結局、マグネシウムよりも亜鉛の方が気道の炎症性反応が強いということで、こういった生体影響を見るときに、金属の影響、金属の含有量というものを注意しないといけませんよということを示しております。それから炭素、これはcarbon blackを吸わせた研究ですけれども、同じように吸わせますと、50μgあたりになりますと、MMFとDLcoが減少するということから、末梢気道への影響が炭素でも見られるということが報告をされております。
 それから、これは酸性のエアロゾルに関しましても、主に硫酸エアロゾルを使っていますが、一番上の硝酸ナトリウム、これはインフルエンザにかかった後の患者で、罹患した後に一時的に気道反応性が亢進するということはかなり前から指摘されているわけですけれども、そういったところに硝酸ナトリウムを曝露しますと、特異的な気道コンダクタンスがコントロールに比べて減少する。つまり気道狭窄が起こるという。ですから、インフルエンザに罹患したような患者さんが大気中の硝酸塩とかそういったものを吸入すると、こういったことが起こる可能性があります。ただ、7,000μgですから、かなり高濃度ですから、実際の大気中の濃度に比べれば相当高い濃度です。それから、硫酸を吸わせましても、通常の濃度では肺機能とか気道反応性に影響がない訳ですけれども、ここで硫酸を曝露した後に一定量のアレルゲンを投与すると、喘息反応が増強するという。これは下から2番目の100あるいは1,000μg/m3でこういった報告がされております。
 これは粒子でROFAあるいはCAPS、そういったものを吸入させますと、これは吸入といっても、一番上は、鼻腔内に投与いたしますと、鼻腔洗浄液中で要するにこういった炎症が起こりますよということですね。それから、CAPSを30分間吸入させますと、好中球とか、そういったものが誘発痰の中でふえますよということ。
 これは野外のパネル研究で、これは新田先生の方から、通常パネル研究は疫学の方で取り扱うわけですけれども、より実験的なものということで、この2つの論文が新田先生の方から回ってきました。これは山火事がフィリピンで、かなり長期間にわたって山火事が起こって、その大気汚染で、たまたまそういったことで曝露を受けやすい人を30人選んで、それを追跡した結果、こういった濃度がふえたような状況で、多形核白血球に占めるband cellの割合がふえると。それがPM10の場合、遅延ゼロ日、要するに汚染に対応した日、1日おくれ、それから亜硫酸ガスが3日おくれで相関が強く見られる。それから、あと道路トンネルの中で車をとめて、車の中に外気を取り入れるわけですね。それで、ここに濃度が書いてありますけれども、そうした中で30分間曝露した後に花粉アレルゲンを投与すると、喘息様反応が有意にふえるというような報告がなされております。
 以上です。

【内山座長】 ありがとうございました。
 ちょっと時間が押しておりますが、ご意見、ご質問ございますでしょうか。
 ここでは、ボランティア実験ですが、実験的なもので、ディーゼル排気あるいはディーゼル排気粒子を曝露したもの、それからCAPSをしたもの、それからそのほかの超微小粒子はヒュームですが、酸性エアロゾル等を曝露したものということだったですが、よろしいでしょうか。

【香川委員】 ここでスライド4番をちょっと見ていただきたいと思いますが、スライド4番の下から2行目のところですね、これが先ほどから問題になっております成分ですけれども、こういった人体に負荷をかけたときに、CAPS中の硫酸塩と鉄とセレンですか、そういった因子がBALF中の好中球の増加に有意に関与していると。それから、銅と亜鉛とバナジウムの因子が、血中のフィブリノゲンの増加に関与しているということで、BALF中の気道炎症所見と血中のフィブリノゲンの増加に関与する重金属の質が違うということがございます。

【内山座長】 ありがとうございます。
 では、富永先生。

【富永委員】 ご発表内容ではないですけど、この毒性学研究を行った研究者の名前を見ると全部外国人で、日本人はいないですね。それで、これはアメリカでも3施設しかこういう実験ができないということで、大変難しいと思いますね。日本でこの種の研究ができるのは、先生、お若いころに、先生は細々とこういう吸入実験をされていたと思いますが、私が知る限り、先生以外には研究者を知らないですけれどね。ほかにも何人かいたのか。なぜ、その後やれないのか。つまり施設が大がかりで大変だからということと、それから倫理的な問題で被験者の協力が得られないとか、あるいは得られる成果が少ないとか、何が原因になるのでしょうか。

【香川委員】 これは人を扱うということで、我が国の場合、ドクター、要するに医師の資格を持ったこういった研究をする人というのは、ほとんどいないですね。それで、人にこういったことを曝露するときに、万が一事故が起こりますととんでもないことになっちゃうので、欧米なんか、例えばEPAの研究室にしても、全部ドクターがついて、かつ何かあったらすぐ救急処置ができるような体制の中で行っておりますので、日本の場合は、なかなかそういった体制をつくるということができにくいからだと思いますけれど。

【内山座長】 よろしいでしょか。
 横山先生。

【横山委員】 富永先生、香川先生の仕事で細々と言ってはかわいそうですよ。香川先生は日本でただ一人、特にイリタントガスを、ボランティア曝露では長い間お仕事なさいまして、運動を負荷させながら曝露実験をなさいまして、いろいろとデータをお出しになっていらっしゃいます。アメリカの施設に比べれば、先生はいろいろと資金的なあれもあったわけですけれども、立派な曝露施設でおやりになっておられます。
 それで、せっかくですから、先生たちがおやりになりました、いわゆるイリタントガスの場合には、大体、曝露された人たちの影響としては、肺生理学、多くは肺機能低下でもっていろいろ実験をしていると。アメリカでは、特にオゾンのヒューマンボランティアのデータが環境基準の改定云々となっているぐらいに、現実で人が受けている影響と、このボランティアの曝露で出てくるデータとが、どんぴしゃ同じとは言いませんけれども、かなり関連したものが得られてきたというふうに私は理解をしています。
 ただ、今回のPM2.5の場合は、いわゆる症状的なもの、あるいは機能的なものもあるけれども、大きな影響としては、やっぱり死亡であるとか、入院であるとか、そういうことでもって、単に気道の異常にとどまらない、より重篤な影響ということが今問題になっているわけですけれども、ヒューマンボランティアに対する例えばCAPS曝露で、ただいま先生、血圧の上昇がこれで考えられるというデータをお示しになりましたけれども、そういうふうにPM2.5で最も関心が持たれる影響を、ヒューマンボランティアの曝露実験で、それに関連する、あるいは推測し得るようなデータというものは、かなり出ているのでしょうか。

【香川委員】 ここにお示ししたものがほとんどであります。それで、呼吸器に関しては、疫学なんかでもそうですけれども、通常の肺機能検査ではひっかからない、余りひっかからない。でも、入院したりとか、そういったことが見られるということで、そうすると、やっぱり気道系に炎症が起きているのではないかということで、誘発痰を調べたり、気管支肺胞洗浄液を、調べてみたらちゃんと炎症所見は出ておりますよと。
 一番よく引用されているのが、さっきのユタ渓谷の工場が閉鎖しちゃったら、入院患者とか、そういったものがぐっと減っちゃったと。その粒子を人体に負荷すると、それを裏づけるようなものがあるというふうな。ですから、通常の検査ではひっかからないけれども、こういった気管支肺胞洗浄とかの液の中では、そういった変化が起きていますよと。
 あと、循環器系に関しましては、多分、これからやられると思いますけれども、実際に病気を持っている、いわゆる冠動脈疾患患者が、狭心症とか心筋梗塞の既往がある人とか、そういった人を多分これから調べると思いますけれども、これこそやって本当に事故があったら大変なことになっちゃいますので、その前にこういった健康者、それからCOPD患者。循環器系の影響のメカニズムには幾つかあって、まず気道系に炎症が起きて循環器系に影響があるのではないか、あるいは直接血中に入って全身反応が起こるとか、いろいろありますけれども、COPD患者なんかは、影響を受けると循環器系の影響も出てくるんじゃないかということで、今、手始めに健康者、その次に喘息、COPD。多分、これから冠動脈疾患患者を対象にして実験が行われると思いますけれども。

【内山座長】 ありがとうございました。
 そのほかに、よろしいでしょうか。
 それでは、時間も少し延びてきておりますので、次に行きたいと思います。
 それでは、毒性チームの報告につきまして、高野委員からお願いいたします。大体20分ぐらいでお願いできますでしょうか。

【高野委員】 それでは、動物実験の方の現在のまとめの状況を報告させていただきます。資料2−7にパワーポイントの資料がございまして、2−4にまとめの現段階での文章がございます。
 まず、レビュー対象文献につきましては、先ほど事務局からご報告があったような方法でピックアップしてきた文献であります。これは実際には粒子状物質の生体影響に関する文献を対象といたしまして、また、その中で実験動物に対する吸入曝露、もしくは気管内投与実験に関する文献を中心といたしました。
 実際にレビューした文献から、方法を含みます研究内容、それから研究対象物質が適切と思われる文献を選択し、報告書に引用し、まとめました。実際には、これは、例えばビックアップしてきた論文になぜかオゾンの単独曝露とかという文献が含まれてきた場合がございましたので、こういった文献は除外しているということでございます。大体、引用した文献数としては、300超の文献になってまいります。
 実はこれは疫学と違いまして、毒性、特に動物実験を用いた場合には、非常に雑多な論文が含まれてまいります。例えば影響でも、ここに挙げますように、呼吸、循環、免疫、非発がん・発がん等々といったふうに、さまざまな影響がございます。また、曝露をする対象の物質も、ディーゼル排気微粒子、それから都市大気、あるいは金属粒子とか、場合によってはポリスチレンの粒子とか、そういったさまざまな粒子を含みます。また、正常な動物に曝露する場合もございますし、病態モデルに曝露する場合もありますし、また、大気汚染物質を複合して曝露する場合もあると。また、その1つのモデルにおきましても、さまざまなパラメータをチェックしているということで、なかなかまとめをどうするかというところで議論があったんでございますが、大体、これから説明いたしますような順番にまとめを進めております。このスライドにございますように、やはり最も疫学的に重要と考えられる呼吸器系への影響、それから循環器系への影響、そしてアレルギー、それから凝固系という問題も含まれてまいりますので、免疫系、血液系への影響、そしてその他(非発がん)影響、これは神経、それから内分泌といったものも含みます。それから、5番目に発がん影響及び遺伝子障害性。そして、6番目に粒子成分と健康影響の関係、それから、7番目に粒径と健康影響の関係という項目をつくりまして、この順番に文献を評価していきました。
 このように健康影響ごとにまとめたわけでありますが、次にどういったふうに文献を整理していくかということでございます。この例えば呼吸器影響という影響でまとめまたあと、その次に曝露様式ごとに文献を分類してみました。実際には吸入曝露試験を行ったもの、それから気管内投与の実験を行ったもの、その他の曝露経路、例えば腹腔内経路等を用いているものというふうにまとめております。曝露様式ごとに続きまして、粒子の種類や成分ごとに文献を分類してみました。実際にどのような粒子を曝露しているかということでありますけれども、CAPS、これはConcentrated AmbientAir Particlesですね、濃縮大気浮遊粒子状物質ということで、都市大気粒子を濃縮したもの。ROFA、Residual Oil Fly Ashということで、石油の燃焼成分。それから、ディーゼル排気及びディーゼル排気微粒子、DE、DEP。それから金属の粒子。それから、硫酸アエロゾルといった酸性物質といったもの等の粒子を曝露するという、この成分についてまとめております。
 その粒子成分の次にどのように整理したかと申しますと、まず、正常個体に対してそのような粒子の曝露がどういった単独影響を及ぼすかという報告があった場合には、そういった報告をまとめました。次に他の要因との複合影響、これは例えばオゾン等の他の汚染物質との複合影響も含みますし、また既に病気を持っているというものも複合影響としてとらえ、この順番にまとめております。各影響について、順番に、実際に今のまとめの現状をご紹介させていただきたいと思います。
 まず、呼吸器系への影響でございますが、これは吸入曝露と気管内投与によって多数の実験が行われております。吸入曝露に関しましては、正常のイヌ、ヤギ、あるいは肺高血圧をモノクロタリンという物質で作成しましたラット、それから慢性気管支炎ラット、これは主にSOの曝露を用いて慢性気管支炎を作成したラット、それから感染症のラット、これはインフルエンザですとか、結核菌ですとか、ストレプトコッカスといったものがございますが、こういった感染症のモデル、それからオボアルブミン等のアレルゲンで感作した喘息のモデル、それから老齢のラットといったものを対象にいたしまして、CAPS、ROFA、DE等の吸入曝露実験や、大気中粒子状物質とオゾンの複合曝露実験が数々行われております。
 それから、気管内投与に関しましては、正常ラット、マウス、ウサギ、それからSHRというのはSpontaneous Hypertensive Rat(自然発症高血圧ラット)、それからmonocrotaline誘導肺高血圧ラットといった動物を対象といたしまして、CAPSやTotal Suspended Particles、ROFA、金属成分、CFAはCoal Fly Ash(石炭の燃焼に由来する粒子)、それからシリカ、DEP、EPMは石油燃焼に由来する粒子であります。それからcarbon black、超微小のcarbon black、ポリスチレンのナノ粒子といったものを気管内投与した実験が行われております。
 この影響のまとめでありますけれども、まず吸入曝露に関しましては、CAPS、ROFAいった各種粒子状物質及びその成分の短期・長期吸入曝露によりまして、実験的に、正常動物、それから呼吸器疾患モデル動物で、肺の炎症など種々の影響が報告されております。特に、気管支炎モデル、それから喘息モデル、感染症モデル、肺高血圧モデルで、また、オゾンといった他の汚染物質の影響を粒子状物質が増幅し得るという報告もあることは、注目に値するかと存じます。ただし注意すべきは、一般環境中の濃度に比較しますと、やはり高濃度の曝露濃度を適用した研究が多いということ、それからCAPSにつきましては、成分や濃度に関しまして、同一条件で行った研究ではないということに留意する必要があるかと存じます。
 これは気管内投与に関する呼吸器系への影響をまとめたものでございます。これは動物を用いたCAPS、都市大気微粒子、これは実際にはEHCと申しまして、カナダの都市の標準粒子だったと思いますけれども、こういった粒子を用いた実験が数多くございます。それからROFA、EPM、CFA、DEP、Carbon及び金属微粒子の気管内投与実験によって、気道や肺の炎症細胞浸潤、透過性亢進、それから炎症性のケモカイン・サイトカインの誘導、酸化ストレスの増大、細胞内シグナル伝達の活性化、これはMAP kinaseあるいはNF−kBといったものが報告されております。それから、気道過敏性の亢進等がもたらされ得るというふうに報告されております。また、これらの微小粒子の投与によって、喘息ですとか感染症の病態モデルが悪化し得るということも報告されております。もちろん、これに関しましても、やはり一般環境中に比べまして高濃度に相当すると考えられる粒子量が用いられているという場合が多いということには、留意する必要があるかと存じます。
 次に循環器系への影響でありますが、これも、吸入曝露、それから気管内投与ともに種々の研究が行われておりました。まず吸入曝露におきましては、やはり正常のラット、マウス、イヌ、それから虚血性の心疾患のモデルですね、これはバルーンですとか冠動脈結紮、イヌの場合はバルーン、それから心筋梗塞モデルラット、これは冠動脈結紮、それから肺高血圧症ラット、動脈硬化モデルマウス、これはApoEノックアウトマウスという高脂血症モデルマウスが多かったと思います。それから、自然発症高血圧ラット、高脂血症モデルラット、老齢ラットといったものを用いまして、CAPSやROFAの吸入曝露試験が行われております。また、気管内投与に関しましては、正常ラット、それから心筋梗塞モデルラット、自然発症高血圧ラット、遺伝性の高脂血症ウサギ、肺高血圧ラット等を対象に、CAPSやROFAの気管内投与試験が行われております。
 これらの結果をまとめますと、まず吸入曝露についてでありますけれども、CAPSや都市大気微粒子及びその成分の吸入曝露は、各種循環器疾患モデルにおいて、心血管系の機能に種々の影響を及ぼし得るということが報告されております。これは心電図変化あるいは血圧変化といったものを数多く含んでおりました。特に虚血性心疾患モデル、動脈硬化性病変における変化を増幅し得るという報告もありまして、注目に値するのではないかというふうに考えられました。また、先ほど申しました脈拍や血圧の変動に関しましては、自律神経系の関与を述べている報告が多くございました。しかし、やはりこの動物実験におきましても、高濃度の粒子を用いた研究がやはり多いということに留意する必要があるかと存じます。
 これは循環器系への影響、気管内投与の結果をまとめたものでございます。やはり種々の微小粒子の気管内投与が、心血管系に不整脈を初めとする種々の影響を及ぼし得るということが実験的には示唆されております。また、一部の報告では、正常動物に比較して、循環器系の疾患モデル動物でその影響がより強く観察されておりました。この場合にも、やはり高濃度の粒子を用いた研究が多いということがやはり存在いたしました。
 続きまして免疫系、血液への影響でありますが、これも吸入曝露、気管内投与、両方の実験が種々ございました。まず吸入曝露といたしましては、正常のラット、マウス、新生児マウス、感染のモデルマウス、アレルギー性炎症のモデルマウス等に、CAPSやPM2.5、鉄、ニッケル、石炭の燃焼粒子、あるいはDE、carbon blackといったものを吸入曝露する実験がございました。また、気管内投与といたしましても、正常ラット、マウス、アレルギー性炎症モデルマウスなどに、都市大気微小粒子、金属成分、carbon black、DEPといったものを気管内投与する実験も行われておりました。
 この結果をまとめますと、やはり実験的には、CAPSや都市大気微粒子、及びその成分の吸入曝露や気管内投与による免疫系、血液系への種々の影響を示唆する報告がなされておりました。特に感染症やアレルギー疾患モデルに影響を及ぼし得るということが注目されました。これは例えば、先ほど申しましたような細菌やウイルスに関する肺のクリアランスを悪くするといった報告ですとか、あるいはウイルスによる炎症を増悪するといったような報告もございました。それから、血液系への影響に関しましては、これに関しては、お話はちょっと割愛させていただきます。もちろん、これに関しましても、やはり一般環境中に比較しますと高濃度の曝露条件を用いた研究でありますし、CAPSに関しましては、やはり成分や濃度に関しては同一な条件で行った研究ではないということがございました。
 その他(非発がん)影響に関しましても、呼吸器、循環器、免疫といったものに比べると数は少のうございましたが、幾つか報告がございます。例えば生殖器への影響に関しましては、ラットやマウスにDEやDEPを曝露いたしますと、生殖器官の形態、生殖機能、性ホルモンなどへの影響が出るといったような研究もございます。これは例えば睾丸重量、精子の奇形、それから黄体形成、男性ホルモン、女性ホルモン、あるいはLHの発現、性器−肛門間距離といったものを検討した報告がございました。これに関しましても、やはり全体的に一般環境中に比べますと高濃度の曝露濃度を用いたものでありますし、やはり成分や濃度に関しても同一ではないといったことには注意は必要かと存じます。
 神経・行動に関する影響に関しましても、幾つか報告がございます。例えばラット、マウス、サルといったものに、CAPSやガソリン自動車の排ガス、あるいはmetal−arc stainless steelの溶接蒸気などを曝露いたしまして、行動や神経系への影響を見るといった研究が行われております。こういった研究におきまして、CAPSやガソリン自動車排ガスなどが動物の行動や神経系への影響を来すといった報告もございました。これは、例えば、自発的な運動の減少、学習行動の習得率の遅延、それから運動機能の低下、あるいは黒質ニューロンの減少といった報告等がございました。やはりこれに関しましても、一般環境に比べると高濃度の曝露を用いている実験でございます。
 発がん影響、それから遺伝子障害性に関しましても、これは、ディーゼル排気、それからディーゼル排気微粒子の吸入曝露、気管内投与、あるいはその成分の皮膚塗布といった研究が非常に多くございます。こういった研究をまとめますと、DEPやそれ以外の粒子についても、実験的には、特にラットで肺腫瘍の増加を認めるという知見がございました。また、遺伝子障害性の検討結果におきましても、DEP、CAPSなど、いずれもDNA付加体生成あるいは遺伝子変異につながる変異というものを観察する場合がございました。ただし、これらの成果に関しましては、実験動物の種差が大きく、高濃度の曝露であるということがほとんどでございますので、ヒトへの外挿に当たっては十分留意する必要があるのではないかというふうに考えられております。
 次に粒子の成分と健康影響の関係、それから粒径と健康影響の関係、これは資料の方の「経」、粒径の径の字が間違っておりますけれども、申しわけありません。粒径と健康影響の関係について報告をまとめてみました。これに関しましては、実際、粒子状物質の成分や粒径による健康影響を比較している文献、特に、同時に、複数の成分や粒径について検討している文献を限定して調査したものでございます。
 まず、粒子成分と健康影響の関係、吸入曝露についてでありますが、次のような実験が種々に行われておりました。例えば正常のイヌ、ラット、マウス、あるいは冠動脈を閉塞したイヌ、慢性気管支炎のラット、アレルギー性気管支喘息モデルのマウスといったものを用いまして、微小粒子状物質を吸入曝露し、粒子成分による影響を比較した研究が行われております。粒子成分といたしましては、CAPS、carbon black、CAPSに含まれる金属成分、元素状炭素、有機炭素、硫酸塩、シリカ、酸化チタン、DEP、それから多環芳香族の炭化水素といった、DEP抽出物を対象とした検討が行われておりました。
 粒子成分と健康影響の関係は、気管内投与におきましても種々に検討されておりました。どのような検討があったかと申しますと、やはり正常のラット、マウス、それからアレルギー性喘息モデルマウス等を用いまして、粒子成分による影響の差異を比較・検討するという研究がございました。粒子成分といたしましては、Total Suspended Particles、ROFA、DEP、それらの微小粒子状物質に含まれている金属成分、硫酸塩、あるいはエンドトキシンといった生物学的な要因というものに注目した報告もございます。
 実は、粒子成分に関しましては、ほとんど種々の論文が種々の物質の重要性を説いておりまして、なかなかどれ一つが悪いということは特定できなかったというのが現状でございます。現段階でのまとめを述べさせていただきますと、粒子量、またその成分として元素状炭素、有機炭素、HSO、臭素、クロル、アンモニア、ピレン、金属としてはアルミニウム、バナジウム、ニッケル、鉄、シリコン、鉛、カルシウム、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、チタン、ランタン、カドミウム、インジウム、コバルト等々といったものの重要性、それからエンドトキシンの重要性を示唆するという論文もございました。また、成分ではございませんが、性質といたしまして、都市や工業地域、それから交通に由来する汚染物質の強い影響性を示唆する論文もございました。またオゾン、NO、SOといった、他の大気汚染物質と粒子状成分の相加、相乗影響の存在を示唆する論文もございました。しかし、結果は必ずしも一様ではなく、ある1つの成分が増悪影響のクリティカル・メディエーターであるというふうには残念ながら我々結論づけられておりません。
 粒径と健康影響との関係に関しましても、幾つか報告がございました。代表的なものを列挙させていただきますと、例えば道路近傍の大気から採取した超微小粒子は、微小粒子よりもアレルギー反応を増悪する作用が強いということが示唆されておりました。また、Coal fly ash曝露による毒性は、より小さい粒子の方が強いという報告もございました。また、都市大気中のPMに関しましても、より小さい粒子のアレルギー反応におけるアジュバント効果が強いという報告もございました。一方、fineよりもcoarsePMの方が肺の炎症を強く誘導したという報告もございまして、この報告に関しましては、エンドトキシン等、他の汚染物質の重要性を示唆しておりました。
 現段階で粒径と健康影響との関係をまとめますと、以下のようになるかと存じます。より微小な粒子がより強い生体影響を発揮し得ることを示唆する報告が複数認められました。しかし、逆に粗大な粒子の影響が強いという報告も存在いたしました。特に現実の大気中粒子に関しましては、その粒径が異なる場合には、化学的組成や生物学的組成が同時に異なるということもあり得るため、粒径とともに、その組成が生体影響及び影響機構に寄与している可能性があることを考慮する必要があるというふうに考えております。
 以上でございます。

【内山座長】 ありがとうございました。実験に関しましても、非常に多く論文をまとめていただきました。
 それでは、10分ぐらい予定より長くなるというような感じですが、質疑あるいはコメントをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【横山委員】 いろいろの多種多様な文献を、要領よくまとめていただきましたご苦労に対しましては、深く敬意を表します。
 動物実験、この分野における動物実験の大きな役割の一つは、やはり疫学的に認められているPMの影響のメカニズム、もちろん、それ以外にリスク評価に資するとか、いろいろ役割はあるわけですけど、大きなものはメカニズムを解明するというところにあるかと思います。もちろん申し上げるまでもなく、例えば日死亡の問題だけとりましても、気道の炎症であるとか、いろいろと説が論じられているわけですけれども、同時にまた、僕は、忘れてはいけないのは、これらの日死亡との関係が、例えば日平均100μg/m3以下の比較低濃度でも見られているということだろうと思います。動物実験、いろいろやられている。今、高野先生の各スライド、一番、最後には必ず、これは高い濃度であるから云々という注釈があったわけですが、やはり動物実験に与えられた役割の一つは、動物実験では高い濃度をやらざるを得ないことは、これはもうわかり切ったことでありますので、その高い濃度をやったものを、例えば香川先生たちの人ボランティアでは高い濃度は使えませんから、恐らくそのままストレートに人間の問題に持ってくるんですけれども、低いというか、現実のレベルの濃度に外挿することを可能ならしめるような研究あるいはデータというものは、まだ余りないのでしょうか。

【高野委員】 現段階でレビューした状況に関しましては、例えばディーゼルの排ガスの曝露でいきますと、0.3もしくは0.1mg/m3といった濃度まででございます。その後、各機関で進められております研究におきましても、0.1内外、例えばディーゼルの排気の粒子の場合でありますけれども、0.1mg/m3内外の比較的長期曝露の影響を見ようという試みはなされているかと思います。ですから、昔に比べるとかなり低い曝露の実験も、今後は結果として出てくると思います。

【横山委員】 発がん性の場合は、結局、ユニットリスクを出すということでもって下の方のことを考えているわけですけれども、恐らくここでもって発がんという問題を除いて考えるならば、やはり最終的に、定量的なことを話さないということになったらしいですけど、最終的に求められるのは、結局、やっぱり閾値があるかどうかというようなところを含んで、こういうメカニズムで起きるのではないかと。幾ら普通に考えてみた場合に、今現実に我々が遭遇しているような70とか80μg/m3ぐらいの粒子の曝露でもって、人の日死亡の関係があるということをどうやってメカニカルに説明するか。僕はそこを解明し得るのはやっぱり動物実験の領域ではないかと思うんですよね。だから、そういう意味で、もちろんこれは文献レビューですから、個々の研究のあれではございませんので、ないものねだりはいたしませんけれども、やはりそこら辺のところが必要なんじゃなかろうか。恐らくストレートにそうであるというものは出てこないだろうと思うんですよ。やっぱり推測を可能にするようなデータが欲しいなということになるのではないかと思うのですけれどもね。ひとつまたよろしくお願いをいたします。

【内山座長】 そのほかに、いかがでしょうか。工藤先生どうぞ。

【工藤委員】 今の横山先生のご意見と関連しますが、日本でできる研究というと、現実には先ほどの人のボランティアを使ったいわゆる介入実験なんていうのは、全くできない環境にありますよね。そうしますと、疫学研究と動物実験は極めて重要な分野だというふうに思っているんですが、今、横山先生がおっしゃったような100μg/m3、あるいは300μg/m3あたりの曝露実験のデータ、日本では、そこそこ出ております。しかし、二、三の欠落している文献があるようですので、先生のところにお送りしたい。特に日本でのデータは落ちこぼれがないようにぜひお願いしたいのです。
 それからもう一つは、吸入実験で一般環境に近い実験系でやられているものと、それ以外のものとをある程度クリアに分けていただくと、よりいいかなというような感じがしますけれども。より高濃度曝露のものとはまたちょっと違うのだろうと思います。

【横山委員】 一般環境、具体的には濃度レベルでは。

【工藤委員】 大体100μg/m3ですね。

【内山座長】 ディーゼル排気粒子ですと非常に微小粒子ですので、それで100μgというと、実際の大気中の粒子濃度の100μg/m3とは随分濃度としては違うのではないかと思います。微小粒子ばかりで100μgというのは、個数濃度にすれば相当なまだ開きがあるのではないかなと私は思っていますけど。高野委員、そういう考え方でよろしいでしょうか。

【高野委員】 特にやはり新しいエンジンは、(粒子が)かなり小さくなっておりますので、そのとおりだと思います。

【内山座長】 いや、わかりました。そのまま100μgが、今の100μgぐらいあるだろうというふうに考えますと、ディーゼル排気粒子だけで100μgというのは、相当、いわゆるPM2.5からPM10のところは全然ないわけですので、重さというと、重量のとき、大体、そこら辺がほとんどだと思いますので、PM2.5以下の、もう本当にナノ粒子だけで100μgというのは、相当な濃度ではないかなという気がします。

【香川委員】 数は少ないのですけれども、沿道に動物曝露室を置いて吸入させた実験が我が国でもありますし、それから欧米でも幾つかありますけど、それはこの中ではどういう扱いを受けているんですか。

【高野委員】 CAPSと都市大気曝露の中に含まれております。ただ、先ほどの工藤先生のお話にも関係しますけれども、実はこれはあくまでも事務局のピックアップ条件にひっかかってきた論文を対象としておりますので、我々も、その後にそういった論文が出てきているということはある程度把握はいたしておりますので、その辺、また参考にしたいと思います。

【上島委員】 循環器系への影響のところで、虚血性心疾患モデルや動脈硬化性病変における変化が増幅し得るという話がありました。これを例えば喫煙の影響と疫学的な点から比べてご質問したいと思いますが、例えば喫煙者では、いわゆる善玉コレステロール、HDLコレステロールが下がります。結果として、喫煙者というか、動脈硬化の進展の人間での機序としては、1つ考えられているのは、貪食細胞の中にLDLコレステロールが沈着していて、泡沫化して、それが粥腫になるというふうに考えられていますが、このモデルでは、例えば先ほどの人体のボランティアの実験の中で、1つはフィブリノゲンが高くなるというのがありました。この環境曝露、吸入実験等では、フィブリノゲンがやっぱり高くなっているのかどうかということと、それから喫煙だと、さっき言いましたHDLコレステロールが下がりますが、下がって粥腫ができやすくなっているかという点はいかがでしょうか。

【高野委員】 フィブリノゲンを測定している論文もございましたが、実は先生、このIHDモデルは、冠動脈結紮ですとか、あるいはバルーンで膨らますとかといった、急性の、acute coronaryをどちらかというと想定したモデルを使っておりまして、動脈硬化に及ぼす影響というのは、apoEノックアウトマウスを用いたaortaのlipid lesionに関する報告はありますけれども。ですから、先生が今おっしゃったようなフォームセル(泡沫細胞)等の検討までいった報告というのはございません(かと思います。)。

【島委員】 教えていただきたいのですけど、呼吸器系への影響のところでは、粒子状物質とオゾンの複合曝露をされたような実験を幾つかご紹介いただいて、増悪作用が見られたということでございますけれども、これはオゾン単独の曝露でも呼吸器系への影響が出ると思いますし、PMでも出るわけですけど、相加作用、それとも相乗作用が見られたというようなあたり、もしおわかりでしたら教えていただきたいのと。
 もう一つは、循環器系を初めとするその他の影響について、粒子とガス状物質との複合曝露をされたような実験というのは、どの程度行われているのかということ。おわかりの範囲で結構ですから。

【高野委員】 すみません。ちょっと今、はっきり覚えていないのですが、そんなに強い相乗影響ではなかったように…。また調べさせていだきます。
 それともう一つ、循環器系に関しましては、複合曝露というのは余りなかったように記憶していますが、これもまた調べさせていただきます。

【内山座長】 よろしいでしょうか。

【松田補佐】 今、工藤先生や香川先生や島先生からご指摘のあった知見等については、また精査をして、次回、違った形で提示をして、また議論をいただければと思いますので、よろしくお願いします。
 また工藤先生、先ほど新しい文献が二、三あるというお話ありましたが、紹介していただいて、この中にもう既に含んでいるのかもしれませんが、確認をさせていただければと思います。

【内山座長】 よろしいでしょうか。
 今申し上げましたのは、環境省の方からもありましたが、これはあくまでもデータベースでとってきたものと、それからまた各ワーキングの先生方がお手持ちで持ってらっしゃるのも足しましたけれども、そのほかにまた、この検討委員の中で、こういうのもあるのではないかという文献がありましたら、ぜひまたご提供いただければと。あるいは情報をお知らせいただければ、こちらで調べられるものは取り入れるということにします。今回が最後ではございませんので、また追加もできますので、そういうことでよろしくお願いしたいというふうに思います。
 それで大体、ご質問あるいはご意見は出尽くしたということで、全体を通して何かございますでしょうか。
 それでは、少し時間が過ぎてしまいましたが、きょうは長時間ご議論をいただきまして、ありがとうございます。
 一度事務局にお返しいたしますので、何かありますでしょうか。

【松田補佐】 本日は、長時間にわたってのご審議、どうもありがとうございました。
 本日の議事要旨と議事録については、各委員にご確認いただいた上で、公開させていただきます。
 また、次回の検討会につきましては、10月30日14時から、ここ虎ノ門パストラルのロゼの間で開催する予定でございます。次回の検討会では、今回の検討会で文献レビューがまだ途中の段階ということもありますので、その内容の進捗について踏まえた内容を出していくと。また、健康影響評価を今後行うに当たって、評価文章作成に関する論点の整理等について議論をしていただきたいと考えております。

【内山座長】 それでは、次回は10月30日ということで、きょう、またご議論をいただいたことを踏まえた文献調査、それから前回の我が国でのデータを踏まえて、まだご議論をいただきたいというふうに思います。
 きょうは、本当に長い間、熱心な討論をありがとうございました。
 それでは、本日の会議はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。