環境省大気環境・自動車対策微小粒子状物質健康影響評価検討会

第2回微小粒子物質健康影響評価検討会 会議録


1.日時

平成19年7月24日(火)9:30~12:30

2.場所

虎ノ門パストラル4Fプリムローズ

3.出席者

(委員)
安達 修一    上島 弘嗣    内山 巌雄
香川  順    川本 俊弘    工藤 翔二
小林 隆弘    坂本 和彦    佐藤  洋
島  正之    祖父江友孝    高野 裕久
新田 裕史    森田 昌敏    横山 榮二
若松 伸司
(環境省)
岡部総務課長
岩田大気環境課長
松田総務課課長補佐

4.議題

(1)微小粒子状物質暴露影響調査報告について
(2)その他

5.配付資料

資料1   微小粒子状物質曝露影響調査研究報告書(概要)
資料2   微小粒子状物質曝露影響調査研究報告

【PPT資料】
 資料2―1 緒言
 資料2―2 曝露ワーキンググループ(報告)
 資料2-3 疫学ワーキンググループ(報告)
 資料2-4 毒性ワーキンググループ(報告)
 資料2-5 まとめ
参考資料1 委員名簿
参考資料2 健康影響評価検討の進め方
参考資料3 健康影響評価にあたっての検討項目

6.議事

【松田補佐】 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第2回微小粒子状物質健康影響評価検討会を開催いたします。
 それでは、お手元の配付資料のご確認をお願いいたします。配付資料一覧を読み上げます。まず、資料1、微小粒子状物質曝露影響調査研究報告書(概要)です。資料2、微小粒子状物質曝露影響調査研究報告のパワーポイント資料です。資料2-1として緒言、資料2-2に曝露ワーキンググループ(報告)、資料2-3に疫学ワーキンググループ(報告)、資料2-4に毒性ワーキンググループ(報告)、資料2-5にまとめをつけております。参考資料1に委員名簿、参考資料2に、これは前回の第1回の会議でもお示ししましたが、健康影響評価検討の進め方、参考資料3に健康影響評価に当たっての検討項目、以上の配付資料をつけております。
 また、各先生方には、この調査研究の報告の概要とあわせて、報告の本体について資料としてハードファイルにとじたものがございます。必要に応じて、本日、各先生方からご説明があったときに見て確認をしていただければと思いますが、資料の点について不足がございましたら申しつけいただければと思います。
 それでは、続きまして、事務局であります水・大気環境局ですが、大気環境課において7月10日に人事異動がございました。新たに大気環境課長に就任した岩田課長でございます。

【岩田課長】 岩田でございます。よろしくお願いいたします。

【松田補佐】 それでは、これ以降の会議の進行は、開催要綱により座長が会議の議事運営に当たることとされておりますので、内山座長にお願いいたします。

【内山座長】 おはようございます。きょうは本当に朝早くからお集まりいただきましてありがとうございます。
 早速、議事に入りたいと思いますが、本日の議事は、前回も約束いたしましたように、微小粒子状物質の曝露影響調査研究結果についての審議をいただくということでございます。
 最初に、本調査研究の検討会の座長を務めていただきました横山委員に緒言として紹介をしていただきまして、その後、曝露評価ワーキンググループ座長の坂本委員、それから疫学ワーキンググループ座長の新田委員、それから毒性評価ワーキンググループ顧問の小林委員から、それぞれワーキンググループごとのご報告をお願いしたいと思います。最後に横山委員から研究のまとめのご報告をしたいというのが今日の議事の進め方でございますので、3時間の長丁場でございますけれども、要領よく進めていただきたいと思います。
 今日報告する調査結果につきましては、国内の微小粒子状物質に関します健康影響を示す科学的知見の一つとして、本検討会での健康影響の評価のための材料として活用していきたいと思っております。各委員からのご報告の後に、それぞれのワーキンググループごとに審議をいただきますが、参考資料3としてお配りいただきました、第1回の委員会で提示されました検討項目に沿った形で本研究の報告の内容を見ていただいて、ご審議をいただきたいと思います。
 それでは、まず調査研究の総論と言いますか緒言について、おまとめいただきました横山委員からご報告をお願いいたします。まず、5分程度でお願いできればというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

【横山委員】 緒言でございますけれども、このパワーポイントの資料をごらんいただければおわかりになりますように、この内容は、前回の会議でもう既にお話ししてありますので、全体として2度繰り返すことはないと思いますので、この調査研究の骨格だけについて申し上げます。
 まず、これは手元の資料にございますが、この調査研究は、我が国におきます一般大気におけるPM2.5の曝露の実態及びPM2.5の曝露と健康影響のかかわりをできるだけ明らかにすると。明文化はされておりませんけれども、発足時にいずれ近い将来PM2.5の健康影響を、合わせて環境基準の検討が行われるようになったときには、その基礎資料になるような知見を得るということで大体合意されておったものと思います。開始は、平成11年度から、当初は5年間でスタートした訳ですけれども、CAPs曝露がなかなかできないとか、あるいは長期曝露の試験に少し時間がかかるとか、いろいろな事情がございまして、全体として8年間に及びました。
 そして、実際の研究は、曝露の実態、それと疫学研究及び動物実験の3つのワーキンググループにおいて、最終目的にアプローチして、8年間にわたり、長い間ご苦労をしていただいたわけでございます。
 この調査研究は、私の知る限りにおきましては、環境行政において組まれた大規模なプロジェクト研究としては初めてのものではないかと思います。その意味で、この研究のあり方、また結果の出し方、評価の出し方というものは、環境行政にとりましても大事なものになるのではないかと私自身は思っております。
 あと、具体的なことは、各ワーキンググループの方からの報告及びその後の課題の中でご紹介させていただきます。

【内山座長】 ありがとうございました。それでは、当初からの目的、それから実施体制についてのご説明がありましたので、早速、曝露評価ワーキンググループの座長を務めていただきました坂本委員から調査結果報告をお願いいたします。大体20分ぐらいでおまとめいただけますでしょうか。

【坂本委員】 それでは、20分ほど時間をいただきまして、曝露評価ワーキンググループの報告をさせていただきたいと思います。
 まず、曝露評価ワーキンググループの役割でございますけれども、3つの役割がございます。1つは、国内におけるPM2.5の実態を把握し、その調査結果を疫学担当ワーキンググループへ提供すること。2点目が、研究途上にあります一般環境中のPM2.5計測技術に関する情報を収集して使える計測方法を提案する。それから、3番目として、PM2.5の個人曝露濃度測定方法について、これはまだ当時実施可能な方法はございませんでしたので、それをつくるという形でございます。
 そして、検討して得られた結果でございますけれども、6年間にわたりましてPM2.5の濃度推移と現状について解析をし、全体像の把握を行いました。それから、2点目でございますけれども、平成12年度に暫定マニュアルとして、PM2.5の測定法をつくってございましたけれども、これを改定し、さらに成分測定も行える方法も全部整理をしたということ、それから3点目が、先ほどの個人曝露の方法について提示し、疫学ワーキンググループの方でそれを使ったということでございます。
 現在、ここに書いてございますような結果が出てございますけれども、PM2.5に関しては、まだ比較的国内における調査研究の実施では少のうございますので、今後こういった結果が広く利用されることを期待するところでございます。
 まず、全体のPM2.5の調査目的ということでございますけれども、自動測定器によってPM2.5の濃度がどのくらいかということ、それから濃度推移がどうなっているかという形で把握するとともに、その成分測定を行ってございます。その成分測定の方につきましては、まずTEOMによる質量測定、これは後で申し上げますけれども、捕集部が50度に加温されたものでやってございます。それから、成分測定用に別途フィルター試料を集めまして、それで質量濃度、成分濃度を測定し、この測定の場合には、各季節、年4回2週間ずつやったということでございます。それから、アンダーセンローボリュームサンプラーによって成分別の粒径分布を調べるという形で、後で発生源の把握、対策等に活かせる様な情報を集めておこうという形でやってございます。それから、常時監視測定局のデータを整理してございます。
 データを整理するに当たりまして、まず色分けがしてございますが、地理的な分類。それからもう一つは都市、非都市部。それ以外に従来から測定局と一般局と自排局という形がございますので、それを分類してデータを整理してございます。
 全体的な傾向でございますけれども、TEOMで測定をした結果で、自排局では、ここにございますように、年々こういった形で減少しているということがごらんいただけると思います。一方、都市部におきましては、初期には減少して、その後はやや横ばい、そして今度、非都市部になりますとさらに横ばいという傾向がごらんいただけると思います。これは、先ほどの都市分類に従った形のものでございますが、省略をさせていただきます。
 続きまして、先ほどはTEOMでございましたけれども、これはフィルターサンプルとしてPM2.5を集めて、そして質量濃度を見たものでございます。先ほどと同様、やや後半の方における濃度変化は横ばい状態が続いてございますけれども、自排局での顕著な減少効果、それから都市部でやや減少して、それに比べて濃度も非都市部では低く、かつ全体として変化が緩やかであるということでございます。
 それから、先ほど冒頭で、TEOMの測定におきましては、測定部のところを50度に加温しているということがございましたけれども、この測定装置が当時はそうなっていたものでございましたのでそれでやってございます。一方SASSという形でサンプリングをしたものは、そういった形で加温されてございません。そういたしますと、特に夏の場合ですと、SASSの方の温度も、室温が上昇しますので、TEOMとの温度差が小さくなってくるという形で、比較的夏の場合にはTEOMとSASSの質量比を比べた場合も1に近くなってございますけれども、その他の季節では温度による揮発の影響を受けて、0.8程度になっているということでございます。
 あと、地域別の傾向でございますけれども、北海道、東北、甲信越を除く地域、いわば多くの大都市部があるところでございますが、ここでも同様に夏季が1前後で、ほかの季節では0.8から0.9という形で測定部の温度の影響を受けているということがわかりまして、結果的にはSASSの濃度を年平均値として使っていこうということになったわけでございます。
 続きまして、PM2.5を先ほどのフィルターで集めて質量を測ると同時に、成分の分析をしてございまして、分析をしたものは元素状炭素、有機炭素、硝酸イオン、硫酸イオン、アンモニウムイオンというようなものが主要成分でございますけれども、一般局での最も多い成分、これは都市部の一般局をごらんいただきますと、一番多い成分は硫酸イオン、自排局では、元素状炭素になってございます。こういった特徴がございまして、都市部と非都市部で比較をした場合には、都市部では硝酸イオンの方が多くて、そして硫酸イオンになると非都市部の方が多いというような形の特徴が見られます。一方、有機炭素、アンモニウムイオン、塩化物イオンでは、一般局、自排局でその構成に大きな差は見られてございません。
 続きまして、これは元素状炭素、成分別に見たものでございますけれども、平成13年から14年までのところは、測定方法が熱分離法、温度によって元素状炭素と有機炭素を分ける方法を使ってございましたけれども、分析中のアーティファクトを考慮いたしまして、光の透過・反射、そういったものを使用して分析中の炭化を補正できるIMPROVE法というものに変えてございます。これで数値の段差がございますけれども、これを除いても、全体として自動車排気ガス測定局では顕著に元素状炭素が減っているということがわかっていただけると思います。地域別傾向としては、おおむね横ばいから減少というふうに判断できると思います。
 続きまして、有機炭素でございますが、これは、ここの最初の部分につきましては、分析方法の問題、要は、従来の熱分離法ですと元素状炭素を多く見積もるという傾向がございますので、それを反映した結果になってございまして、この後の方を主としてごらんをいただきますと、有機炭素は余り減ってないと、全体として非常に勾配が緩やかだということがごらんいただけるという様に思います。
 続きまして、イオン成分でございますが、ここに書いてございますように、年度により濃度の差があるということ、これにつきましては、火山の影響も受けているような経年的な変化を示している。それから、一般局と自排局では余り大きな差がない。都市部と非都市部では、都市部の方がやや濃度が高い。ただし、割合は、先ほどお話しいたしましたように、非都市部で多くなってございます。
 それから、硝酸イオンでございますけれども、これも一般局、自排局ともにおおむね横ばい、関東地方では一般局、自排局とも、他の地域に比べて濃度が高いということが、この赤い部分でございますけれども、読み取れるというふうに思います。
 続きまして、アンモニウムイオンは結果的には硫酸イオンとか硝酸イオン、それのカウンターイオンという形で対になってございますので、その両方の変化を結果的には反映するという形になって、それほど大きな変化はございません。濃度としては、むしろ非都市部がやや濃度が低いといったぐらいのところでございます。
 それから、アンダーセンローボリュームサンプラーで測定いたしました粒径分布でございますけれども、通常言われているような二山の分布を示してございますけれども、特徴は自排局で微小粒子側の粒径の濃度が一般局に比べて高いということ、それから、一般局の都市部と非都市部で比較をした場合には、微小粒子、粗大粒子とも都市部が高く、特に微小粒子側での差が大きいということで、微小粒子側が都市部とか自排局で濃度が高いということでございます。
 続きまして、ここでは粒径分布を地域別に比較をした場合に、微小粒子側では関東地方、それから、近畿、中国、九州地方の濃度が高く、北海道、東北では濃度が低い。その一方、粗大粒子では九州の方において濃度が高いということでございます。
 成分別の粒径分布でございますけれども、元素状炭素の場合ですと微粒子側で濃度が高くなってございまして、かつここに書いてあります自排局のところでこれだけ顕著に濃度が高いということがごらんをいただけると思います。一方、有機炭素の場合には、自排局、都市部、非都市部という傾向はございまして、こういう濃度の順番であるということですが、元素状炭素ほど顕著な特徴ということではございません。
 それから、これは先ほどの続きでございますけれども、元素状炭素、これは微小粒子側で関東地方、近畿、中国及び九州地方で余り差がございません。有機炭素につきましては、関東地方が他の地域に比べてやや濃度が高い傾向にあったということでございます。自排局で見た場合には、元素状炭素、有機炭素とも、近畿地方で濃度がやや高い傾向にあるということでございます。
 続きまして、平成13年から18年度の平均値として見た場合の各イオン成分の粒径分布でございますけれども、自排局と都市部、一般局は同様な傾向にあるということ、それから、硫酸イオン、アンモニウムイオンは、九州地方で濃度が高く、九州より東に行くにつれて微小粒子側の濃度が低くなるという傾向がございました。
 続きまして、塩化物でございますけれども、非都市部では塩化物イオンの粗大側を除いて濃度が低いということは、微小粒子側の方の濃度が低いということでございます。それから、硝酸イオンにつきましては、関東地方で微小粒子側の濃度がやや高い傾向にございました。
 それから、発生源情報等を得る場合に、またそれから土壌粒子等の寄与を得る場合も関係してございますので、金属成分についても分析がしてございます。そして、これは年平均値の変動を示してございますけれども、平成14年度の濃度がやや高かった、これは黄砂が、たしか顕著に来た年であったと思います。そのほかのところはおおむね横ばいということでございます。
 それから、粒径分布がここに書いてございますように、鉄、カリウム、バナジウム、マンガン、これは自排局及び都市部一般局は、非都市部一般局に比べて濃度が高い傾向がありますけれども、アルミニウム、ナトリウム等ではそれほど大きな傾向はございません。
 それから、これは質量濃度の評価ということでございますけれども、冒頭でTEOMという形で測定した場合には50℃、一方、SASSという形でフィルターに集めた形では常温でサンプリングをしているということでございますが、これを比較いたしますと、ここに書いてございますようにPM2.5のSASSを使って常温で集めたものと、50℃で、傾きが0.6ぐらいという形で、かなり大きな濃度差があるということがわかりました。SASSとTEOMの濃度差は、PM2.5濃度が高いほど顕著であり、約15μg/m3以下では明確な差は見られてございません。それから、季節別でお示ししましたように、気温が低いときほどTEOMが50℃にしてあるという差が出てきて、差が大きくなるということで、その理由が、ここに書いてございますように、半揮発性成分が飛んでいるのではないかという形で結果があらわれてございます。この結果は、成分で見た場合でも、例えば硝酸イオンとか硫酸イオンを見た場合に、硝酸イオンの濃度が多いときほどそういう差が多い、揮発性の物質が多いときほど差が大きくなるということがあらわれてございます。
 それから、測定期間による誤差という形で書いてございますけれども、TEOMは通年測定、そしてSASSは四季で14日間、これは環境アセスメント等で各季節において2週間ずつ測定をして年平均値というような考え方にも基づいておりまして、こういった形で測定をしてございます。そして、長期疫学調査地点の濃度としてどれを使うかということでございますけれども、これまで申し上げましたような結果から、SASSの測定データを年平均値として使用してございます。一方、SASSが一部欠測の場合には、SASSとTEOMの関係を使って推定をしたものも一部使ってございます。
 それから、今、PM2.5という形で質量を測定したものが、それぞれの分析をした成分の和でどの程度あらわされるかという形で、これは本来、成分がすべて分析されていれば質量として測定された濃度と成分分析をしたものの和が合うはずでございます。そういったことから、ここに書いてございますように、金属成分分析結果から土壌成分を推定する。それから、海塩粒子、これは、今、日本の場合ですと海に囲まれてございますので、これを取り入れる。それから、フィジティブダストという形で、これも取り入れる。それからイオンバランス、これはきちんと主要な成分が分析されていれば、プラスイオンとマイナスイオンの和は必ず1対1になるというはずでございますので、これがどの程度の範囲になるかという形で調べます。そしてマスクロージャーモデルと言いますのは、ここではPM2.5の質量に対して成分分析をしたものを全部あわせたものがどうなるかという形で、質量を成分でどれだけ説明できるかということを調べたものでございます。ここで書いてございますように、日本の特徴を取り入れた形でどういう係数を使うかという形を決めてやったものでございますと、全体で89%がいわば許容範囲にあって、SASSデータがおおむね各地点を代表していると考えられます。これにつきましては、フィルターで粒子を集めて成分分析をしたときに、その成分分析の結果が正しいかどうかとか、そういったときもこの方法が使えるということで、測定法マニュアルにも解説がしてございます。そして、途中で平成14年度はアルミニウムの濃度が高かったと申し上げましたけれども、このときは普通のときとは少し異なる形になってございまして、いわば許容範囲の境界のやや上の方のところに来ているというのがごらんいただけると思います。
 それから、2番目の大きな仕事についてですが、今までお話ししましたのはPM2.5の質量濃度、それから成分の特徴、これを調べたということでございますけれども、今度は測定方法、分析方法についてマニュアルをつくったということでございます。これは、この調査を始めた当初、PM2.5の測定方法についてはさまざまなものが研究段階であったということから、国内・国外のメーカーでどういったものをつくっているかといったものを調べて、それぞれのものがどの程度の値を出すかというようなところについて検討を行いました。その後、平成12年に暫定マニュアルをつくってございましたけれども、これをその後の知見を入れて改定いたしました。さらに成分分析の各種一般的な成分の測定、分析方法についてのマニュアルを作成いたしました。そして、さらに実際の操作を考えた場合のマニュアルと、それからいろんな情報を整理して、現在どういう状況にあるかというようなところを取りまとめたものの2部形式になってございます。
 それから、自動測定器による微小粒子状物質質量濃度測定方法改定の主要点と書いてございますけれども、ここに書いてあります大気流量の表示条件、それから試料大気導入口の位置・高さ、それから測定範囲、これは測定範囲を余りにも広く設定し過ぎますと、低濃度域での感度が悪くなるということから、こういった上限の方を200μg程度という形で決めてございます。それから、測定装置をきちんと動かすためには、校正とか点検をどういった項目でどういった頻度でやるか、また得られたデータをどういうふうにして取り扱うかといったことを、常時監視マニュアルを参考にして見直しをしてございます。それから、浮遊粒子状物質PM2.5の質量濃度測定法につきましても、ここの上に準ずる形でやると同時に、この場合は質量をはかりますのでラボブランク、トラベルブランク、こういったものの取り扱いについて記述をしてございます。それから、先ほどお話ししたマスクロージャーモデルを用いて、そこで測定をされている質量濃度と成分分析の結果が合理的なのかと、そういったところまで検討できるようなものとしてつくってございます。
 それから、今どういったものを成分分析としては書いてあるかということでございますけれども、ここに書いてございますように、まず質量、それからイオン成分、金属成分の酸分解による多元素分析、それから金属分析の非破壊多元素同時分析、それから炭素分析法。なお、炭素分析法につきましては、比較的日本では熱分離による方法が多く使われているわけでございますが、分析中の人為的誤差が非常に多いということで、サーマルオプティカル、そしてレーザー光の反射によって補正をする方法をここでは記述をしてございます。それから、多環芳香族炭化水素の分析方法をまとめてございます。
 あと、もう一つは、個人曝露につきましては、当時としてはまだ使える方法というのはございませんでしたので、これにつきまして検討いたしました。ここに書いてございますように、SPMの個人曝露に関する報告がわずかにあるだけで、かつ、個人曝露状況は生活様式で異なるため、国による違いが大きく、諸外国の結果をそのまま適用することはできないだろうと。そうした場合には、やはり我が国での個人曝露と、それから環境濃度との関係をやはり把握しておく方法が必要で、それで個人曝露濃度を求める方法を今回の調査で決めたということですが、そのときにどういった点に注意をしたかと言いますと、まず24時間を単位とする、それからポンプについては、やっぱり軽量でなければならないだろうということと、もう一つは、サンプルにつきましてPM2.5をきちんと分級できること、そして、さらにはSPMもしくはPM10、こういうものが同時に測定できることが望ましいということで幾つかの候補を選び、その中から使える方法の検討をしていったということでございます。ここに個人サンプラーの捕集特性に対する予備実験という形で幾つか使えるものを調べた結果、ここに書いてございますように、個人サンプラーとしてはATPS-20H、これがFRM、要するに米国で使われてございます標準法ともっとも相関がよいということと、かつ操作性、価格、そういった点からこれを基本として改良を重ねたということでございます。詳細は省略させていただきますけれども、ここに書いてございますように、これが2.5ミクロンでございますけれども、このカット特性も比較的小さなものを使ったということから考えますと、かなりシャープなカット特性が得られている。そして、先ほどの当初のものから、ここに書いてございますような改良を加えて、実際にこれが使えるということを明らかにした後、ここに書いてございますようにワーキンググループで実測測定にお使いいただいたということでございます。
 全体をまとめさせていただきますと、まず、平成13年度から18年度までの6年間にわたり、我が国におけるPM2.5質量濃度やその構成成分の推移と現状について、およその全体像を把握いたしました。そして、測定をいたしましたPM2.5に関するデータの検証を行って、そして年平均値等を疫学ワーキンググループの方に提供をいたしました。
 それから、今後の課題ということでございますけれども、冒頭でも申し上げましたように、日本では当時調査は少なく、それから今回は横山先生のお話にございましたように、体系的に調査された、まず、最初の例であろうということで、今後もこういった形の調査をする場合は、機器の件と、それからさらにデータを解析するための発生源インベントリのデータの収集・整理が必要であろうということでございます。
 それから、測定方法につきましては、ここに書いてございますように、PM2.5のマニュアルを改定すると同時に、分析方法も決めたということでございます。
 それから、ここで書いてございますけれども、最新の測定機器について、今後とも国内外の技術動向について継続的に把握を行うとともに、フィールド試験を実施し、評価に必要なデータを収集し、我が国における利用の有効性についての評価を行う必要がある。それから、個人曝露につきましては、ここで書いてございますように、幾つかのものを選んで、そしてその中で最も使いやすく、それから価格等々も考えて実施可能な方法を提案して、そして疫学グループでもお使いをいただいたと。そして、さらに今後の課題としては、当然、重さとか、ポンプの寿命とか、幾つかの改良点が少しあるということでございます。
 以上、急ぎ足で説明をさせていただきましたけれども、曝露評価グループとしてはこれら3点について行ったということでございます。まず、PM2.5の質量濃度、もう一つはPM2.5の成分、それからもう一つは、まだ方法がございませんでした個人曝露について方法を確立して、それを使えるようにして疫学グループの方でお使いをいただいた。そしてPM2.5の質量測定方法、成分分析方法についてまとめ、今後さらにPM2.5のデータがさまざまな機関で測定をされ、蓄積されていき、使いやすくするために、マニュアルと同時に分析方法もまとめたということでございます。
 以上でございます。

【内山座長】 ありがとうございました。ただいまのは曝露評価ワーキンググループのご報告で、健康影響評価をする上での一つの項目でございます曝露評価に関する大気中濃度、あるいは粒子状物質の成分、あるいは測定方法についてご報告をいただきました。何か各委員の方からご質問ございますか。

【上島委員】 一般局と自排局の定義を教えてください。

【坂本委員】 一般局と自排局ということですけれども、まず自排局というものが定義をされている。それ以外は一般局という形でお考えいただきたいと思いますが、道路沿道に設置されている、いわば自排局というのは人がその部分を行動する、もしくは歩くとか、そういったところも含めて、環境濃度を把握するために設定されているところが自排局ということでございます。

【内山座長】 よろしいですか。そのほかにございますでしょうか。はい、どうぞ。

【若松委員】 非常に膨大な結果で貴重な資料だと思います。勉強させてもらおうと思っています。1つだけ教えてほしいのですけれども、結論的に、曝露評価に受け渡す情報として、SASSの値が基本になるという結論だったのですけれども、いわゆるSASSというのは14回掛ける4で56個のデータですよね。そのデータとPM2.5のいわゆる時間値データとの関係なのですけれども、そのSASSのデータで成分を決めて、それをPM2.5の時間値データに割り振って、その値を曝露評価に使う情報として受け渡すという、そういった意味と理解してよろしいのでしょうか。

【坂本委員】 曝露評価の方で使うのは、年平均値として求めるという形でございます。そういう意味でSASSのデータを使った。一方、自動測定の方については、発生源データとか、それから発生源の状況とか対策とか、そういったものを考えた場合に必要になってくるという形でやってございます。

【若松委員】 4回やったそのデータを年平均値として、その平均をイコール年平均値というふうに見るということですね。

【坂本委員】 はい、そうです。これは、これまでにも幾つかの測定、いろんな検討があって、年間365日のうち何回程度測定をすれば年間測定したものと平均値がどういうふうに収束していくかというようなものがあるわけです。それで、私も先ほどの説明の中でも申し上げましたけれども、環境アセスメントのときにいろんな新たなものを設置するとき、年平均値等を考える場合に、各季節によって2週間ずつそういったものを測定する必要があるという形で言われているのと同様でございます。

【若松委員】 あと、TEOMとSASSの比較があったのですけれども、例えば従来から行われている常監局でのPM2.5との関係ということについてのお話がなかったのですが、そのつながりはどういう見解になったのでしょうか。

【坂本委員】 今、常監局で測定をされているPM2.5と申しますか、それはSASSとか、ほかの装置とか、そういう意味でしょうか。

【若松委員】 普通、例えばβ線とか、光散乱法とか、TEOMとか、いろんな方法で一時間値を測って、その平均の年平均値をとっていますね。

【坂本委員】 それにつきましては、報告書の中には書いてございます。それぞれの相関関係は非常にいいということでございますけれども、当時としてはまだ、他のものについてはやや感度が低かったということで、最も感度的にすぐれていたTEOMを連続測定に使った。ただし、もうこれは当初から懸念された部分もあったわけですけれども、50℃に加温という条件で実質的な質量濃度を示すものとしては適切ではなかったと。むしろフィルター法でやったものを年平均値を算出するものに用いて、そして解析の結果でもSASSとTEOMの差が多いときはどういうときかといえば、例えば、硝酸アンモニウム塩の濃度が高いときなんかは差が出てくるという形で、まさに具体的にある揮発性成分がTEOMの場合には飛んでいるのだということが示されているのかなというふうに思います。

【若松委員】 時間がないので1つだけ最後にお願いしたいのですけれども、今回はSASSが基本になるというお話だったのですが、例えばハイボリとかローボリとかアンダーセンとか、いろいろな方法がありますよね。そういったデータの取り扱いというのは今度どう考えたらよろしいのでしょうか。それは、今後曝露評価では使わないということにするのでしょうか。それとも、SASSと何かそれを関係づけて。

【坂本委員】 それは例えば、現在、日本のJISが定められようとしていますけれども、それと同等のものをはかれるものであればいいという形に、これまでの場合もなっていると思うのです。例えばβ線だとか、それから光散乱だとか。

【若松委員】 いや、そうじゃなくて、ろ紙でとる方法ありますよね。SASSと似た方法で、例えばアンダーセンとか。

【坂本委員】 当然、それはアンダーセンサンプラーかなんかの場合ですと、カット特性が違いますよね。これは、今後基準なりを考えていく場合には、その部分がやはり明確に定義をされないといけない。いわゆるアンダーセンローボリュームで何ミクロン、確かにカットされているものでは、これは個人的な見解ですが、まずい部分があるのかなというふうに。

【若松委員】 その粒径分布を見るためには、そういった方法が必要なのですけれども、いろんな方法があって、どこをどう曝露評価に結びつけるかという全体の絵がもしあれば、すごくいいのではないかなという気がするのですけれども。

【坂本委員】 これは、若松先生がおっしゃられる話で言えば、粒径分布別にとったデータがあって、それが曝露評価に使えるほど量的にも平均値を出せるようなものがあれば、いろんな解析の仕方はできるのかと思いますけれども、サンプリング方法、それから分析をする成分の種類だとか、そういったものを考えた場合には、あるところでカットしたものの方が、よりコストパフォーマンスもいいのかなと、個人的には思います。

【若松委員】 わかりました。どうもありがとうございました。

【内山座長】 そのほかにいかがでしょうか。

【佐藤委員】 PM2.5とは言いながら、例えば粒子の大きさのピークで見ると0.5と5ミクロンのところにピークがあるような形で見えているわけですけれども、やっぱり何か発生源が相当程度違うというようなことでこういう格好になるというふうに理解してよろしいのですかね。

【坂本委員】 今、お話は、これではなくてどれがいいか。

【佐藤委員】 7ページの下の方が比較的わかりやすい、(3.4)ですね。

【坂本委員】 今、これはこれまでの説明でも申し上げましたけれども、例えば、むしろ8ページもごらんをいただきたいと思いますが、8ページの下の方の図です。(3.4.2)元素状炭素のところがございますけれども、ここで0.5ミクロンのところ以下ぐらいに元素状炭素の大部分はあるという形がおわかりいただけると思います。それから、これはカリウムとか、それから幾つかいろいろな粒径分布がありますけれども、自然起源のものであれば、いわば粗大粒子側にあって、そして人為起源のものですと、比較的小さい2.5にあるわけですけれども、さらに燃焼起源であれば、もう少し小さいところにあって、あと二次生成の有機物等もこの辺にございますけれども、0.何ミクロンか。それから、さらに例えばディーゼル車から出たばかりの粒子ですと、もっと実は小さいところに粒径分布があるとかという形で、発生源を解析する場合には、粒径分布があった方がずっと役に立つということで、こういった測定をしてきたということでございます。

【高野委員】 調査地点の設定でございますけれども、固定発生源を代表するような地点があるかという点と、それから特に金属成分に関しまして、地域差とかも検討されているかという点、2点についてお願いいたします。

【坂本委員】 特に今回の場合、ある特定の固定発生源が非常に大きな影響を持つであろうという形の都市という形の選定はしてございません。これにつきましては、私より次の疫学の新田先生のところでお答えいただくのがよろしいかなと思いますけれども、粒子状物質の濃度、それからNOxの濃度とかという形で、高絡因子をなるべく除いて粒子状物質の濃度と健康影響の関係等が疫学の方で解析できるようなことを想定して測定地点を選定してございます。
 一方、解析をいたしますと、多少ここはもしかしたらこんな発生源があったのかもしれないとか、それから全体の測定成分を見た場合には、黄砂の影響なんかは、当然、西日本の方が影響は大きく受けているとか、そういった形は出てございますが、当初からそういったことを想定した形で測定地点を張ったということではございません。

【内山座長】 新田先生は後でよろしいですか。今何かコメントはよろしいですか。

【新田委員】 いえ。

【内山座長】 そのほかにございますでしょうか。
 私の方から1つ教えていただきたいのですが、当初から諸外国のPM2.5、微小粒子状物質と我が国の微小粒子物質では、何か性状が違うのではないかというようなことも言われていたのですが、そういうことに関して、報告書で考察はされておられますか。

【坂本委員】 今回は、主として淡々と今回の調査でやった結果をまとめたということでございますので、特にそこに細かく書き込んではございませんけれども、日本の場合ですと、例えば元素状炭素の濃度が諸外国に比べたらやや高く、最近では減ってきてございますけれども。それから、その一方では、金属成分の濃度が諸外国に比べ、やや低いのかもしれない、そのかわり今度は黄砂の影響が大きくなっているとか、そういうような形の特徴はございます。
 今、座長がおっしゃられたようなところにつきましては、今後、非常に重要であろうということで、さまざまな文献等々については、別途整備をされていくと思います。

【内山座長】 それからもう一つ、諸外国の文献での濃度、いわゆるPM2.5として測られている濃度を我が国に適用する場合に何か注意すべき点とかということはございますか。例えば、TEOMとSASSでは、気温によっては結構差が、8割ぐらいの差が出ているというお話がありましたが、諸外国で測られて疫学調査で重量濃度が出ているときに、それをそのまま日本に当てはめるのは。

【坂本委員】 その点につきましては、これもむしろ全体の曝露評価のグループで議論をしたことではございませんけれども、私自身として少し注意をしなければいけない点かなというのは、特に日本の場合には湿度が非常に高うございます。そういう意味で、湿度が高いことによって変わる部分がどういうふうにあるのか、その一方では、TEOMと、それからSASSの濃度比較で二、三十%ぐらいは飛んではいる部分はあるわけですけれども、それでも濃度的には結構高いなと、年平均値を見て高いなというような印象を持ってございます。

【若松委員】 TEOMもSASSも両方とも使おうとするわけですよね、厳密に言えば。だから、何がきちんとしているかというのは結構大事であって、そこはどうでしょうか。TEOMにしてもSASSにしても、どっちかといったら記載したよりも少な目に出るということは明らかなわけで。

【坂本委員】 ただ、どちらが真値かということですけれども、真値からのデビエーションはどちらが大きいかということで、これは非常に厳密な意味で言いますと、環境中に浮遊している状態の大気濃度と、それからフィルターの上に集めた濃度、そして、今回お示ししましたSASSの場合には、24時間のサンプルですけれども、これも日数を、例えば2日とか、1週間とか、そして、それを1日のサンプルを7個とったものと、それから1週間の1回のサンプルの濃度を比較すれば、当然、揮発の程度とか、そういったものは違ってまいります。そういう意味では、若松先生おっしゃられるような問題はあるわけですけれども、よりどちらが環境濃度を近く反映しているだろうかという観点からいえば、TEOMよりは、少なくとも24時間値として測定をしたSASSの方がいいというふうに思います。
 あと一つは、これは自動測定器で、例えば1時間ごとに測っているものの24時間値と、それからSASSのデータとの関係を見るとき、今、若松先生がおっしゃられたような形で、やはり24時間値でも多少は揮発性のものであったりした場合には、飛んでいる可能性はあるのかなという気がいたします。その場合に、今度どういうフィルターを使うかによっては、今度は吸着の問題もそこにはわずかに入って、今、テフロンろ紙を使うことによってそういう問題は非常に少なくなっているというふうには思いますけれども、このテフロンろ紙の問題と、もう一つは、そこに集まった粒子状物質について湿度が変わっていたときに、例えば湿度がだんだん上がっていったときには、そこに集まった粒子の中に水分が含まれていくような形というのも、1時間値で見たものと24時間値で見たものとは、やはり違ってくるという部分はあろうと思いますけれども、大気中濃度にAという方法とBという方法があったら、どちらがより大気中の濃度に近そうなものなのかということを考え、かつどの測定法は、プラス側かマイナス側かどっちへ偏っているのだろうかというようなことを考えながら最終的なデータを評価するときには使うべきだというふうに思います。

【若松委員】 今回のまとめはそれでよろしいかと思うのですけれども、やっぱり次のステップって、やっぱりそれはこれでいいのだということではなくて、今の測定が持つ意味を明らかにしつつ、さらにいい方法を目指すことは、やっぱり報告としてはどこかに入れておいた方がいいのかなという気がするのですけれども、これは感想ですけど。

【坂本委員】 それは必要なのですが、実はそこを詰めていきますと、非常に粒子状物質は、ガス濃度をはかるのとは全く違って、いわば、これでしたら間違いなく正しい値が、複合成分が非常にたくさんのものがあって、そういったものがあるかというと、実はそれに相当するようなものは、多分、AMS(Aerosol mass spectrometer)とかになり、粒子そのものを放り込んで測定をすると。ただし、それも成分によって感度が違ったりとか、粒径によって感度が違ったりとか、そういう問題があって、なかなかそこのところは難しいかなという気はいたしますが、おっしゃられるとおり、常にどういった方法が一番正しい方法であるか、どういう方向に改良すればそれに近づくのかという観点は、非常に重要なところと考えます。

【若松委員】 その環境アセスメント的な考えでは、日平均値と年平均値がターゲットになるのですけれども、日本の場合、1時間値の環境基準値というのもSPMに関してはありますし、測定は1時間単位で行われているわけですので、そことのリンクってどこかでやっぱりしっかり詰めておく必要があるのかなという気がするのですよね。そこはよろしくお願いします。

【坂本委員】 それについては、ここに、本日の説明では差し上げてございませんけれども、そういう測定をした平均値として出てきたものと、フィルター法での比較をして、それから自動測定法同士での比較もしてございます。

【内山座長】 ありがとうございました。大体よろしければ、曝露評価の方はこれぐらいにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、次に疫学ワーキンググループの調査結果につきまして、新田委員の方からお願いいたします。やはり20分ぐらいでおまとめいただけますでしょうか。

【新田委員】 それでは、疫学ワーキンググループで実施いたしました疫学調査の結果に関しまして、ご報告させていただきます。
 まず、調査の計画に当たりまして、ワーキンググループで議論をいたしまして、まず量的な評価が可能なデザインを優先しようと、それから、エンドポイント、研究方法に関しましては、複数の組み合わせで行いたいと。ただ、すべての組み合わせをこの調査の中で実施するということは難しいものですから、まずエンドポイント、健康影響の指標としては、欧米で用いられている評価が定まっているものを採用すると。それから、研究手法としては長期、短期両方行う。特に短期影響に関する調査、知見が乏しかったということで、そちらを優先して実施すると。それから、長期影響に関しましては、国内で過去にたくさんの実績があります呼吸器症状に関する調査手法を用いた調査を実施するということで、調査全体を計画いたしました。
 概要は、既に第1回、前回ご説明させていただきましたので簡単に申し上げます。まず、個人曝露量、量的な評価をする上で一番重要なベースとなる、基礎となる調査でございます。この個人曝露調査を実施しております。それから、短期影響に関しましては、日死亡、毎日の死亡数と大気汚染の濃度との関係の解析、それから死亡以外では、一つは夜間の急病診療所の受診との関係、それから、子供のピークフロー、しかも感受性の異なると思われる集団、3つの集団に関するピークフローとの基本的に濃度との関連性の解析、それからもう一つ、循環器系として、埋込み型除細動器によって治療を受けている方の不整脈の発生との関係という、複数の項目を短期影響で取り上げております。それから、長期影響に関しましては、3歳児とその保護者を対象にした調査を5年間実施いたしました。
 まず、個人曝露調査の概要でございますが、ただいま申し上げましたように、大気汚染の疫学調査で最も基礎となるものですが、先ほど坂本先生の方からご説明がありましたように、測定は基本的に測定局、固定の測定局の情報が曝露情報としてあるということで、それを疫学調査の対象者に適用するためには、それぞれの対象者が実際に曝露されている大気汚染の濃度と測定局との関係を示しておく必要があると。通常の疫学調査ですと、個々の曝露情報が何らかの形で得られるというのが通常ですけれども、大気汚染の場合には、長期にわたって個人個人の曝露情報を詳細に得るということ、しかも実測で得るというのはまず不可能でございますので、ここに何らかの推計が入るということです。推計をするための基礎のデータを調査によって得たということです。
 まず、屋内外、対象者のお住まいの屋外の測定を4期にわたって、春・冬・秋・夏の順番になっておりますが実施いたしました。それから、実際の個人曝露、これは先ほど測定法の検討でご説明いただきましたが、その検討結果を受けて実施いたしました。制約がございまして、秋・夏と個人曝露測定に関しましては2期だけになっております。
 結果の一部を簡単にお示ししますと、屋外濃度と屋内濃度、それから長期の地域7地域ございますので、それと分けて表示しておりますが、概要を申し上げますと、それぞれ対象としたご家庭の屋外のPM2.5濃度と屋内の濃度は、非常に相関が高いということです。それから、屋内の濃度と個人曝露の濃度も非常に相関が高いということで、基本的には屋外の濃度と個人曝露濃度は相当相関が高いだろうというふうに判断をいたしました。それから、屋外の濃度をそれぞれ個別地域によって、お住まい、いろんな地点があるわけですけれども、その地点間の情報を考慮いたしまして、測定局での情報を曝露の指標として使うことは妥当であろうという結論に至りました。そういうことをまとめに書いております。ただ、制限としてはいろいろ今回の対象者、いわゆる常勤の職につかない女性の保護者を対象にしておりまして、対象数も限られているということで、どこまで一般化できるかということに関しては注意が必要だろうと思っております。
 また、こういう個人曝露調査を受けまして、基本的に測定局のデータを用いて、今後疫学調査での曝露の指標とするということでスタートするということにいたしました。まず、短期影響に関しましては、いろいろな調査があるわけですけれども、まず諸外国で最も知見が多い死亡との関係を検討いたしました。それから、その他の先ほど申し上げましたような呼吸機能に関する検討、それから受診に関する検討といったものがございます。
 まず、日死亡に関しましては、この20の地域を選びました。これは一般局相当の測定局でPM2.5が測定されている地域が調査開始時点で20地域あったということでございます。その20地域の人口動態死亡データを取得いたしまして、毎日の死因、平成14年から16年、3年間の毎日の死因別の死亡とPM2.5の濃度の関係を統計的な解析を行いました。ここでちょっと色が変わっている場所は、政令都市と東京23区ということで別途解析を行っております。基本的には20地域、それぞれの地域でPM2.5濃度と死亡との関係を解析して、さらに20地域全体をまとめた解析、それから政令都市のみをまとめた解析というような形で行っております。
 用いましたモデル、GAMと呼んでおりますが、一般加法モデルということで、諸外国で最もこの種の大気汚染と日死亡との関連性の解析で用いられているモデルをそのまま用いております。まずPM2.5、気温、相対湿度を入れたモデル、それから季節変数を入れたモデル、それにNO2、オキシダント、共存汚染物質と呼んでおりますが、を加えたモデル、それからLagと呼んでおりますが、ある日の濃度とその日の死亡の関係、それから、次の日の死亡の関係、次の次の日、3日遅れ、4日遅れ、5日遅れと、こういうことでそれぞれに関して解析を行っております。それから、先ほど申し上げましたように、死因ごとに得られた結果を併合した形で示しております。
 要因に関しましては、年齢別、それから死亡したところの種別、医療機関で亡くなられたか、自宅で亡くなられたか、それから、そのほかのモデルで解析した場合、モデルによって結果が変わらないというようなことを確認するためでございますが、それから死因に関しまして、事故を除く全死亡、呼吸器系による死亡、循環器系による死亡と大くくりでやっておりますので、一部細かい死因ごとに解析もいたしました。
 まず20地域の日平均値の分布を示しております。ちょっと見にくい図で申しわけないですが、ここが平均値になっておりまして、幾つか上に外れているところが、3年間で高濃度があった日が大体どれぐらいのレベルかと、大体70から80ぐらいが最高値ということで、こういう範囲で日死亡との関係を検討したということでございます。
 これは結果の第一です。まず、PM2.5のみを含めたモデルで解析した場合、気温、相対湿度は常に調整因子として調整をしております。結果をごらんいただきますと、呼吸器による死亡のところで1日遅れ、2日遅れ、3日遅れで、1を超えるところで少し死亡のリスクの上昇が見られます。これは、PM2.5を10μgの増加当たりのリスクということで示しております。3日おくれのところがいわゆる統計的な意味では有意な形になっておりますが、全体として3日だけが意味があって1日遅れ、2日遅れに意味がないというよりは、少し遅れて、数日遅れて死亡のリスクの上昇が見られること。全死亡、循環器系の死亡に関しては、そういう傾向はどうも見られなかったということでございます。
 それから、これはPM2.5に加えて共存汚染物質としてNO2とオキシダントを加えたモデルでございます。少し、この95%信頼区間の幅が大きくなっておりまして、有意なものではなくなっておりますが、先ほどお示しした、呼吸器系で1日遅れから2日、3日遅れで少し死亡のリスクが上昇するという傾向は保たれているというふうに考えております。
 これは、全死因で死亡に関して1日遅れのところで地域別に見たものでございます。かなり地域によってばらついているという印象かと思います。1よりも推計値を下回る地域もございます。つまり、こういう地域では統計モデルの解析の結果、10μg、PM2.5が上昇すると、死亡が逆に下がっている地域もあるということですが、全体を押しなべて見て併合しますと、ちょっと戻りますが、こういう全死亡20地域の併合ですと、1よりもやや大きい、上がっているという推計値になっているということになります。ちょっとスケールが違いますので、ここに併合値を示しております。それから、この地域の中ではちょっとスケールが小さくなっていてはっきりしませんが、東京23区とか、一部川崎市とか、地域単独でも統計的に有意な上昇が見られる地域がございます。
 まとめますと、PM2.5に関するリスク1を超える場合があって、呼吸器疾患などで統計的に有意な上昇があること。それから地域ごとでも一部の地域で上昇が見られるということで、特に呼吸器系でそういう傾向が、非常に一貫性が大きいというふうに判断しております。ただ、諸外国で、循環器系死亡で短期的にリスクが上昇するというようなたくさんの報告がございますが、それに関しましては、今回の解析では、同様の傾向は循環器系に関しては得られなかったということでございます。
 次に、他の短期影響に関してですが、一つは夜間の急病診療所、市川市の急病診療所に受診して喘息と診断された者を1年間調査いたしました。それから、それとPM2.5との受診のリスクを検討しましたが、PM2.5との関連性は認められませんでした。一部季節によって傾向の変動が見られるところもあるのですけれども、基本的にPM2.5の濃度が上昇すると受診もふえるというような傾向は見られませんでした。
 次に、ピークフローの調査ですが、3つの集団で行っています。1つは、入院時の調査ということで、入院時、朝と夜と2回ピークフローを測定して、その前のPM2.5の濃度という関係を見ております。入院時に関しましては、朝のピークフロー、夜のピークフロー、いずれも、その当日の夜もしくは翌朝のピークフローを低下させるという傾向が見られておりました。
 これは通院時ということで、喘息で通院している子供さんのピークフローを、同じように起床時と就寝時ということで測定しております。この傾向を見ますと、この地域ではこの調査期間、PM2.5の測定データを得られておりませんで、かわりにSPMで解析しておりますが、一部前日のピークフローの低下と有意な関連性が見られております。
 それから、これは一般の小学生を対象にしたやはりピークフロー、起床時と就寝時2回測定した結果でございます。これに関しましても、朝のピークフローに関してはPM2.5の上昇と有意な関係が見られておりますが、他の共存汚染物質を考慮した場合には、その結果は一致しておりませんでした。それから、夜のピークフローに関しましては、女子のみで関連性が見られたところがございました。
 埋め込み型除細動器に関して、その治療を受けている患者さんのデータ、不整脈の発生記録と大気汚染の濃度の検討をいたしました。これに関しましても、SPMとの関係ですが、除細動器による治療の発生との関連性は認められておりません。
 以上、まとめますと、死亡を除く短期影響に関しましては、基本的にはピークフロー、異なる3つの集団で検討いたしました結果、一部統計的な有意性が見られないようなものがございますが、基本的には数時間前の大気中のPM2.5もしくはSPM濃度の上昇がピークフロー値の低下と関連している傾向が示されたというふうに考えております。
 それから、最後になりますが、長期影響に関しましてご報告させていただきます。今回の調査、先ほどちょっとお話がありましたように、調査地域7地域、SPMとNO2の濃度の範囲がなるべく広くなるように調査地域を選んでおります。具体的には、茨城県取手市、千葉県の市川市・浦安市、新潟県上越、名古屋の緑区、大阪府の守口、宮崎県の日向という7地域を選んでおります。これに関しまして5年間の調査を、子供さんに関しましては3歳児検診をスタートして7歳まで毎年1回呼吸器症状の調査を行う、保護者に関しましては、1年目、3年目、5年目、隔年で実施したということでございます。
 そのデータに基づきまして、まず、ベースライン1年目の調査の有症状況とPM2.5との関係、それから子供の場合には5年間の繰り返し、保護者の場合には3回の繰り返しの調査を総合した解析、それから子供の場合に追跡中の発症率、つまりベースラインで喘息とか症状がなかったもので、途中で症状が出たものを発症と考えて発症率との関係、この基本的に3つの解析を行いました。
 濃度に関しまして、先ほど既に出ておりますが、一番低いところが上越市、それから高いところが市川市、なお、市川市と浦安市は隣接しているということで、PM2.5濃度としては1つの測定局で代表させております。
 結果でございます。子供の場合、まずベースラインの調査ですが、PM2.5の濃度と、一番濃度の低かった上越市を1とした場合の比として縦軸はあらわしております。ごらんいただけますように、PM2.5濃度に対して喘息の有症、オッズ比と呼んでおりますが、上昇するという傾向は全く見られておりません。NO2に関しても同様、オゾンに関しては少しこういう右肩上がりの傾向が見られるかなということです。
 繰り返し調査結果に関しましても、同様にPM2.5に関して関連性は認められていませんでした。
 これは発症に関しての結果です。5年の間に、実際には4回の調査の2年目以降で発症した子供さんの発症率とPM2.5濃度との関係、これに関しましても関連性は認められておりません。
 保護者に関しての結果です。これは持続性のせき・たんの結果を示しておりますが、PM2.5に関して、やや右肩上がりの傾向が見られるということです。これはNO2に関してですが、少し右肩上がりの傾向が見られたということです。
 これは繰り返し調査の結果でも、3回の調査でも同様だったということで、結論としては、小児の呼吸器症状の有症状況、それから発症状況に関しては、PM2.5と関連しているということを示す疫学的知見は得られませんでした。保護者に関しましては、持続性のせきやたん症状の有症状況に関して、曝露と関連しているのではないかというような可能性が示唆されたというふうに考えております。ただ、PM2.5を7地域で、実際には測定点6地点でございますが、他の共存性物質の相関が高いというようなことで、実際に保護者において示された関連性においても、実際にPM2.5単独のものか、何か共存性物質による影響なのか、今回の調査では残念ながら不明の点が多いというふうに考えております。
 今後の課題といたしましては、今回、冒頭に申し上げましたようにすべての諸外国で報告されているエンドポイントを取り上げて網羅的に実施したものではございません。いろんな制約の中で最善と思われる調査で実施いたしました。ですから、まず今回取り上げてないような健康影響に関して、今後の検討課題として最初に挙げられるのではないかと思っております。それから、今回、ただいまご報告させていただきました結果に関しましての一致性を、さらに検討する必要があるだろうというふうに考えております。
 それから、先ほども坂本先生のご説明への質問がございましたけれども、今回、質量濃度との関係ということで基本的に考えております。ですから、粒径別、それから成分別の影響というようなことも、今後十分に検討していく必要があるというふうに思いますし、その他統計的なモデルの問題、方法論上の問題も、短期影響に関してはまだいろいろ課題が残っております。そういうことも含めて検討が必要だというふうに思っております。
 以上でございます。

【内山座長】 ありがとうございました。非常に膨大な大変な調査だったと思いますが、今回、疫学研究に関して、まず個人曝露濃度と、それから屋内・屋外の関係、それから短期影響・長期影響についてご報告をいただきましたが、はい、どうぞ。

【若松委員】 データの中身だけちょっと教えていただきたいのですけど、測定したデータというのはTEOMの測定結果を使っているのでしょうか。今回の6地点の疫学の解析で使ったデータが何かということが一つと、さっき坂本先生からお話があった曝露等のデータというのは、これには利用されたのでしょうか。もう一つ、SASSのデータに関しては活用して何か解析されたのでしょうか。その3点、よろしくお願いします。

【新田委員】 ちょっと話を少し省略してしまいましたけれども、まず長期影響での評価はSASSのデータを使っております。SASSのデータの年平均値、曝露評価ワーキングの方で検討していただいた結果を受けてSASSのデータを使っております。
 それから、短期影響に関しましては、基本的にTEOMのデータをそのまま何も補正なしに使っております。ただ、日死亡の調査地域、一般局相当の20地域と申し上げましたけれども、その中で1局だけβ線方式での時間値を測定している局がございましたので、その1局だけβ線のデータを使っておりますが、その他、日死亡その他の短期影響を含めて、原則TEOMのデータをそのまま使っております。
 個人曝露に関しましては、基本的に考察として測定局のデータが代表しているとみなせるという判断をするために使って、直接統計的な解析には使っておりません。

【上島委員】 最初の方のスライドで、死亡リスクの推計結果のパワーポイントがありましたが、呼吸器で一部リスク比が有意になっているところがあったと思います。そこで示されたリスク比ですが、もしも1SD当たりの上昇にしたら、リスク比は幾らぐらいになるのでしょうか。

【新田委員】 10μg当たりですので、地域ごとの濃度の幅の……。

【上島委員】 大体で結構です。

【新田委員】 すみません。表の中に平均値と25%タイル値、75%タイル値とか入れておるのですが、ちょっとSDが入っておりません。ですから75%、25%の値の四分位範囲のところが約7とか8ですので、ほぼ似たような値になっているかなと、10μgですね。今お示ししているリスクと大きさと、ちょっとSDの大きさ、記憶がちょっとはっきりしないですが。

【上島委員】 あと、そこのリスク比のところで循環器疾患とありますが、最初のご説明では心臓と脳卒中とまざったものとして解釈していいですか。

【新田委員】 初めに、大体の大くくりと申し上げていたので、全部含めたものでまず解析をしております。

【上島委員】 そうすると、このパワーポイントの発表では急性心筋梗塞がなかったように思うのですが、検討されたと思うのですが、その成績はいかがでしたでしょうか。

【新田委員】 急性心筋梗塞に関しましては、実はきょう、ちょっとスライドを省略してしまいましたが、約2日、3日遅れぐらいでリスクの上昇が見られております。

【上島委員】 有意ではないけど見られていると。あとは、そうすると脳卒中は見られない。

【新田委員】 見られてない。全く、時間おくれとか、リスクの上昇もパターンも、脳卒中に関してははっきりしておりませんでした。

【上島委員】 心筋梗塞では、ご存じように喫煙が非常に大きな影響を与えていますので、このような分析では個人ベースでないので交絡はとれないですが、もし男女を分けて検討することができたら、女性の喫煙率は低いのでひょっとすると出るかなと。でも逆に女性の心筋梗塞の死亡率は極めて低いので、4分の1ぐらいです、男性の。出にくい面もあるのですが、もし男女別に人口動態統計を検討すればどうなったのでしょうか。

【新田委員】 申しわけありませんが、心筋梗塞、個別の死因に関しましては、性別とか、そういう解析を行っておりません。報告書にもお示ししておりませんが、実は、先生ご指摘のように、少し死亡数が減りまして、ちょっとばらつきが大きくなって、安定した結果が得られなかったということがございます。

【上島委員】 わかりました。脳卒中と心筋梗塞は、発症と死亡までの日時が全然違いますので、また特性として、ひょっとすると心臓病の方に出やすいということも理解できますので、そういう意味では脳卒中が変わらずに、心筋梗塞の方で少しリスク比が高くなったというのは、ひょっとすると因果関係をあらわしているのかもしれないというふうにも理解できます。

【新田委員】 その点、この報告を検討いたしました検討会の中でも、他の先生にもご指摘をいただいております。まとめの結論部分にはその点記載しておりませんでした。それは、やはりちょっと死亡数が少ないということ、統計的に少し不安定な傾向があるということで、結論部分には書き込んでおりませんが、傾向としては急性心筋梗塞で少し上昇が見られているということで、今後の課題のところではかなり重要視をしております。

【上島委員】 もう一度ちょっと補足しますが、基本的に心筋梗塞の場合、発症して24時間以内に死ぬ確率が脳卒中よりもうんと高いですよね。ですから、もし急性の影響だとすると、そっちの方が出やすいというのは出てくると思います。

【内山座長】 その他にいかがですか。高野委員、どうぞ。

【高野委員】 長期影響のところでお伺いしたいのですけれども、このベースラインの調査の見方ですが、これは地域ごとに、かなり有症率がベースラインで差があったという意味でしょうか。

【新田委員】 ここでは調整済みオッズ比として示しておりますが、今回、かなり均一な集団を選んでおりますので、他の要因による違いはほとんどございません。ですから、粗有症率という意味でも、ここで示しているような地域の差が見られておりました。ですから、ここの一番低いところは名古屋市の緑区ですけれども、やはり有症率自体も低いということです。

【高野委員】 もう一つは、一番右側のデータですけれども、オゾンとPM2.5の相関というのは、各地点を比べましてどういうようになっていますでしょうか。

【新田委員】 今回、全部で7地域あるわけですけれども、7地域で言いますと、ちょっと今手元に数字がないですが、0.5以上の相関があったと思います。逆相関ですね。すみません。

【内山座長】 他によろしいでしょうか。はい、どうぞ。

【佐藤委員】 今の日本人、我々の生活行動パターンを考えてみると、ほとんど室内で過ごしていると思うのですね。一応、室内と大気中の屋外のPM2.5の濃度、同じようなものだという結果だったように思いますが、パワーポイント5枚目のそのデータが示したものを見ると、高いところでちょっとグラフがねているような感じがしないでもないんですけれども、これ、個人曝露の濃度の方から、何かもう少し室内の曝露、室内で過ごす時間の曝露というのを推定できるようなことにはなるんですかね。

【新田委員】 先生ご指摘の点は、大気汚染の疫学の分野で、もうこの20年ぐらいいろいろ検討されてまいりました。ただ、先ほど若松委員からもご指摘がありましたが、結局のところ、最終的なこういう解析に個人曝露量推計値を、今行動パターンとかいろんなものを含めたモデルの推計値を入れて解析するというところまでの精度を持つような個人曝露の推計モデルは完成してないというのが現状でございます。私ども、この個人曝露の検討の中で、もちろん生活行動、室内に何時間いてどんな行動をしたのかという調査もしておりますが、それの何かモデルとリスク値の関係も、今お示ししました疫学調査に使えるほどの精度にはなっていなかったということで、考察にとどめるということで全体として考えたわけでございます。

【佐藤委員】 もう1点よろしいですか。あと、地域別というか、20地域の死亡リスクの比較の問題ですけれども、これ測定局の方はそれぞれの地域で1つ、そのカバーをしているというか、そこで代表されている地域の面積とか人口とかというのは随分違うわけですよね、それぞれのポイント。

【新田委員】 今回、データで申しますと、一番大きいところ東京23区で約700万、報告の方には人口を出しておりましたが、65歳以上の人口でいきますと、東京23区が130万人、それから一番少ない宮城県の湧谷町の場合が約5,000人ぐらいですので、大きな差がございます。ですから、統計的なモデルによる推計値の幅も相当違いがあるということで、ただ、大気汚染の状況としていろんなところで検討した結果を総合して判断をしようという基本的な考えのもとに20地域の併合値をまず基本にお示ししております。

【内山座長】 よろしいでしょうか。ちょっと私も確認させていただきますが、個人曝露量濃度との関連で、これは一般局のデータですか、自排局ではなくて。

【新田委員】 一般局のデータでございます。

【内山座長】 一般局のデータですね。そうすると、高濃度になってもいわゆる一般局の方が高いということですので、過小評価にはなっていないということでよろしいですね。

【新田委員】 今回の調査は、確かに佐藤先生ご指摘のように、少しグラフがねているというような傾向が見られますが、対象者数が限られておりますので、そこまで今回の調査で限定して結論として示せるかどうか、ちょっとはっきりしないところはございます。ただ、諸外国でもいろんなデータをとられておりますので、その傾向と一致しているということはあると思います。

【内山座長】 限られてはいるけれども、今回の調査で見る限り、一般局のデータあるいは自排局でもいいですが、屋外のデータを用いてもそれほど個人の曝露量はそれと変わらないというふうなに判断してよろしいということですね。

【新田委員】 そういうふうに判断しております。

【上島委員】 もう1点お聞きしたいのですが、季節変動について、大気汚染のPM2.5と季節変動の関係はあるのでしょうか。

【新田委員】 これは坂本先生にお答えいただいた方がよろしいかと。

【上島委員】 季節変動があるとすると、循環器疾患の発症には季節変動がありますね、明らかに。それとの関係をもしあったら検討されたかどうかお聞きしたかったのです。

【新田委員】 日死亡の解析に関しましては、一応、季節変数を調整因子として入れております。それから、PM2.5濃度自体も季節変動がございます。

【上島委員】 もしPM2.5に季節変動があるとすると、高い季節に調査された、検討された循環器疾患、あるいは心筋梗塞の死亡の季節変動と合うのかどうか、教えてください。例えば、観察研究でモニタリングして発症を見ていますと、夏には脳卒中は、季節変動としては最も少ないです。例えば、6、7、8月は少ないです。秋と春は多いです、発症が。明らかに有意に多いです。冬もちょっと多いですが、春と秋の方がむしろ高いですね。夏は低いとすると、PM2.5は、例えばどのようになっているのか、季節ごとに。それから心筋梗塞の場合はどうか、もしわかれば教えてください。

【新田委員】 大変申しわけないのですが、死亡の季節パターンに関しましては、今データを持ち合わせておりません。

【上島委員】 とりあえずPM2.5の季節変動を教えてください、わかりましたら。

【新田委員】 本体の報告書を見ると季節変動がございますが、基本的には春が少し高くて秋が、でも地域によってちょっと傾向が違いますので、それほど大きいものではないと表現した方が正しいかもしれません。

【坂本委員】 例えば、西日本と東日本では、黄砂の影響とか、それからあと夏少し高くなるようには、光化学による影響で高くなる部分、それから、冬季は、今度は気象影響によって高くなる部分とがあって、比較的最近では季節変動の傾向が少なくなって、例えば、それは冬季の逆転層の出現がしにくくなっているのではないか、要するに温度が少し冬に上がっているのではないかというような解析もできるところでございます。

【上島委員】 そうしますと、例えば心筋梗塞も脳卒中もそうだと思いますが、夏、特に脳卒中も少ないんですね、発症が。だから、PM2.5の季節変動と実際の発症とはマクロ的に見れば合わないと、関係ないというふうになると思います。

【松田補佐】 今の点については、資料としてはハードファイルの方の資料、この中に微小粒子状物質曝露影響調査報告書というのが、最初は概要版ですが、中に報告書というところがありまして、それの目次から32ページ目のところに、PM2.5のTEOMの質量濃度の月変動が示されております。

【上島委員】 これを見ていますと、11月が高くて、6月ぐらいが高いでしょうか。11月が少なくとも、そうでもない。都市部では11月高いですよね。32ページ、そうですか。

【松田補佐】 はい。これです。この上の方に文章として示されているのがまさにこの図に書かれてある評価というか、記述ということになろうかと思います。全国的には春から夏にかけて、または晩秋から初冬期に濃度が高くなる傾向にあるといったことは示されていると。

【工藤委員】 工藤ですが、短期影響の日死亡との関係で呼吸器系の死亡が上昇しているということは、大変ショッキングな、私自身は呼吸器の臨床をやっている者として、こういう調査でこういうデータが出てくるというのは、外国のデータは知っておりましたが、日本のデータでもこういうデータが出てきたということは、大変大きなことだと思うのですが。ここでちょっと確認をしておかないといけないのですが、人口動態統計での呼吸器系疾患、要するに死因別の分類の中で取り扱っているものの中で、例えば肺がんなんかは、あれは呼吸器系の中に入ってないで腫瘍の中に入っていますね。それからインフルエンザ、あるいは結核等々は、感染症といって分離しているのではないかと思いますけれども、ここで呼吸器系と言っているものの中には、その辺の定義をちょっともう1回確認をしておいた方が良いのではないかと思いますので。

【新田委員】 ここで呼吸器系による死亡ということで解析の対象といたしましたのは、インフルエンザ、それから肺炎、急性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、それからその他の呼吸器系疾患と分類されているものでございます。ですから、肺がんは含まれておりません。それから結核も含まれておりません。

【内山座長】 インフルエンザは含まれていると。

【新田委員】 インフルエンザは含まれております。ただ、一部インフルエンザを除いた解析、それからインフルエンザの影響を排除するということで、冬季の季節だけ除いた解析をいたしましたけれども、傾向としては変わりございませんでした。

【工藤委員】 それから、これに関連してですが、インフルエンザ、肺炎あるいは気管支炎というのは呼吸器系の感染症ですね。それと喘息と慢性閉塞性肺疾患、COPD、これはかなり違う分野の疾患ですので、これを分離したものが今後どうなるかという問題、それからもう一つは、同じ気道系の閉塞性の障害を特徴とする疾患の中でも、気管支喘息とCOPDというのは大変紛らわしいんですが、現在、我が国ではいわゆる喘息死というのは約3,000名、年間ございます。それからCOPDの死亡は1万2,000人ぐらいあると思いますので、これが20地域になると数が減ってしまって、統計的にものが言えるかどうかはわかりませんが、基本的には喘息の方は、今後の検討課題にも出ております、いわゆる高感受性者に属してくるわけですね。ですから、その点で喘息と慢性閉塞性肺疾患、COPD、これは基本的には喫煙由来、80%以上は喫煙由来の疾患ですが、これを分けた場合にどうなるかというようなことも今後の検討課題としてあるのではないかと思います。以上です。

【内山座長】 ありがとうございました。何かコメントございますか。

【新田委員】 実は、呼吸器系の感染、つまりインフルエンザと急性気管支炎をあわせた解析、それから喘息とCOPDをあわせた解析もいたしました。時間おくれのパターンにやや違いがございますが、基本的にいずれもやや1日、2日おくれるところで死亡の上昇が見られるという傾向は両者で見られております。ただ、統計的な有意性の問題、少し数が少なくなることにより有意になったり、有意でない状況のもの多くなっておりますが、傾向としては両者とも少しおくれて死亡リスクが上昇するということが観察されておりました。

【内山座長】 工藤先生、よろしいですか。

【工藤委員】 喘息とCOPDをあえて分離した解析はしておりませんですよね。

【新田委員】 そこまでやっておりません。

【工藤委員】 多分、数が非常に少ない……。

【内山座長】 今回の分析は14、15、16の3年間でしたか。

【新田委員】 日死亡数の平均で申し上げますと、東京23区での呼吸器系疾患の死亡が約20名です。そのうちさらに少なくなりますので、なかなか、もし関連性があったとしても統計的な解析の結果、安定したものを得られるというところで、少しぎりぎりのところかなと思っております。

【工藤委員】 ありがとうございました。

【内山座長】 そのほかございますでしょうか。
 それでは、ご質問も出尽くしたようですので、また最後に総合討論の時間もありますので、一応、これで疫学ワーキンググループのご報告と質疑応答は終わりたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、次に毒性評価ワーキンググループの調査検討結果につきまして、小林先生の方からお願いいたします。やはり20分ぐらいでお願いします。

【小林委員】 それでは、毒性評価ワーキンググループの報告を行います。
 まず、背景ですけれども、疫学の報告にありましたように、微小粒子状物質が循環器系への影響に伴う過剰死と関連があることが示唆されるような報告が出てきておりました。しかしながら、実際にそういったことが実験的に確認されてはおりませんで、細胞や小動物を用いた実験的研究によって、そういったことが本当に起こり得るのか、どういう状態で起こり得るのかを検討する必要がございました。また、そのメカニズムに関しましても不明なところが多く、その検討が必要とされておりました。こういった背景のもとに、本当にこういった微小粒子状物質を吸入した場合に、循環器系あるいは呼吸器系への影響があるのかどうか、あるとすればどういったことを考えればいいのかということで、我々は、まず微小粒子状物質が循環器等に直接作用する可能性、これは粒径が小さくなった物質は、組織透過性が出てくるということから、直接粒子が作用する可能性があるのではないか、また同時に、そこに吸着している物質が溶出して血流中に入り、それが循環器系に影響を及ぼす可能性があるのではないか、それが直接的な物質の移動によって起こる作用、もう一つは、肺に沈着しました微小粒子が炎症等を引き起こしたり、凝固線溶性の変化を起こしたり、交感・副交感神経のバランスを変化させて循環器機能に影響を及ぼす可能性があるのではないか。そういったことから、可能性として影響はあり得るのではないかという想定のもとにこの研究が始められたわけですが、疫学研究で報告されているものとしまして、循環器や呼吸器に障害を持っているような人たちが高感受性群であるというような報告が一方でございました。このようなこともありまして、今回の毒性ワーキングの評価は、微小粒子状物質の呼吸器系、循環器系に与える生態影響を、高感受性群と思われるような動物モデルをつくりまして、それにPM2.5を短期間吸入曝露しまして、その影響を見るというようなことで行いました。
 用いました高感受性群としましては、肺に炎症を起こしたような動物、それから不整脈を薬物で誘発したような動物、それから老齢ラット、それから高血圧ラット、この4種類に関して主に検討をいたしました。
 結果の全体の流れといたしましては、PM2.5を濃縮して動物に吸入曝露するシステムというものがまだございませんでしたので、システムをつくり動物に曝露するという経過をたどりましたが、曝露システムを作成している段階のときには吸入曝露ができませんので、大気中の微小粒子状物質を捕集いたしまして、その抽出物を動物の気管内投与あるいは細胞に曝露いたしまして、その影響を見るということを第1期に行いました。曝露システムが完成いたしました後は、同システムを用いた吸入曝露実験を行いました。
 まず、第1期のPM2.5の抽出物を用いた検討に関する報告をいたします。大気中の微小粒子状物質PM2.5を捕集いたしまして、有機成分、ジクロロメタン抽出をしたものの構成成分を検討いたしました。同時にその抽出物を培地あるいは生理食塩水に溶かしまして、それを細胞あるいは動物への気管内投与を行って、その影響を検討いたしました。
 まず、抽出物ですが、捕集した後、ここに書いてあります、ちょっと見にくいんですが、ジクロロメタンで有機成分を抽出いたしまして溶媒を飛ばした後、培地あるいは生理食塩水に溶解いたしまして、それを細胞や動物に曝露するという方法をとりました。
 これは概要でありますが、結果と一緒に次にお示ししたいと思います。
 細胞は、循環器系への影響ということで、血管内細胞への影響を見ました。細胞に曝露すると、酸化的ストレスを与えたりして、凝固線溶系に影響を及ぼすことが示唆される結果が得られました。また、肺炎、肺障害を細菌毒素で起こさせました動物の肺障害がさらに増悪するかどうかの可能性に関して検討いたしましたが、炎症を増悪する可能性があることが示されました。また、心不全ラット及びマウスを使った実験では、特異な影響は認められませんでした。老齢及び高血圧ラットの心肺機能及び肺組織・血管系に及ぼす影響に関しましては、老齢ラットの場合、初期に軽度の局所炎症を引き起こしますが、機能的なところにまで影響を及ぼすほどのものではございませんでした。一方、高血圧ラットの呼吸・循環器機能に及ぼす影響に関しましては、投与によりまして副交感神経活動の亢進を示唆するような肺抵抗の増加、心拍数の減少が認められました。気管内投与の結果は、この図でございますが、DEP抽出物との影響比較では、細胞に与える影響といたしましては、若干DEP抽出物の方が酸化的ストレスを動物に与えるのではないかというようなことが見出されました。一方、動物への投与の場合におきましては、若干、DEPの抽出物と異なる点も見られまして、成分の違いということもあると思いますが、増悪メカニズムが異なる可能性が示唆されております。
 このように気管内投与実験の影響を見てきたわけですけれども、気管内投与の実験は吸入曝露の実験の代替として用いられることが結構ありますけれども、比較的同様の結果が得られることもありますけれども、一時に気道内に投与物質が入ることや、入った物質の気道内分布も若干異なるために、やはり吸入曝露の影響を見るということが影響を見る場合の基本となりますので、吸入曝露実験を行いました。
 吸入曝露に当たりましては、PM2.5を濃縮して比較的高い濃度で曝露するということを検討いたしました。まず、濃縮された粒子(Concentrated Air Particles)を曝露するシステムということで、CAPs曝露システムと呼びますが、これを製作いたしまして、その性能について検討いたしました。
 次に、それで動物を曝露いたしましたが、その結果を解析するに当たって統計の解析方法の検討も行いました。先ほど申し上げました4つの高感受性と思われる動物のモデルを用いまして影響を検討いたしました。
 次に、どういうシステムで曝露したか、並びに統計解析及び動物曝露実験の結果をお話しいたします。まず、CAPs曝露システムでございますが、この絵にありますように、国道16号線沿いにある施設から大気を取り入れまして、サイクロンによって2.5ミクロン以下の粒子を分離いたしまして、その後、ここに書いてあるようなバーチャルインパクタによりまして、0.1μmから2.5μmの粒子を3段階に分けて濃縮いたしております。残念ながら0.1μ以下の粒径のものは、拡散がありますために濃縮はされない状態であります。
 この図は、曝露システム内のCAPsの濃度とPM2.5の濃度の関係を示したものですが、外気のPM2.5濃度とCAPs濃度はよい相関があることが示されております。
 これは、統計の手法の検討を行ったものですが、解析は実験回ごとに有意差があるかどうかの解析と、実験は6回から8回ぐらい行っておりますが、それのプールした解析(プール解析)を行っております。同時にCAPs曝露濃度や各成分との関係に関しましての検討も行っております。
 次に、CAPs曝露がマウスの細菌毒性に関連する肺障害に与える影響とメカニズム解明に関する研究でありますが、肺に細菌毒素(lipopolysaccharide)を投与いたしまして、肺に炎症を起こした動物をCAPsで曝露いたしまして、その影響を見るというものでございす。投与のうち4群に分けて気管内投与をした後、5時間後の炎症の状態をいろいろな指標を用いて検討しております。結果の一部でございますが、統計解析で、横軸は測定回、8回の実験を行っておりますが、回と、それから全体のプールした解析、縦軸は好酸球の数を示しておりますが、CAPs曝露と除粒子対照群の差を示しておりますが、このように全体といたしまして高いときもあるし、若干、減少した回のときもありますが、全体といたしましてCAPs曝露群は除粒子群よりも好酸球数が増加するということが認められました。
 次に、キニジン投与モルモット、キニジンというのは脱分極過程と再分極過程を抑制する作用がありますが、これを用いて不整脈を示す心電図変化を実験的に誘導しまして、その心電図変化がCAPs曝露であらわれやすくなるかどうか、これに関して検討したものですが、動物には4回、一日4時間、曝露をいたしまして、この1回目の終わりと4日目の終わりに、ここに書いてありますような麻酔下で検討を行っております。全体としますと、これは心拍数の変動でございますが、心拍数が高くなるような傾向が見られております。
 次に老齢ラットの心機能に与える影響に関する研究でございますが、テレメトリーを埋め込みまして、チャンバー内におきまして安定化させた後、PM2.5曝露を行っております。測定は、心電図、血圧、核心温度を指標に検討しております。ここで曝露しておりますが、曝露の1日後及び2日後で、若干、血圧が高くなるような傾向も見られます。一方、核心温度、自律神経系HF/LF、こういった指標に関しましては、明確な影響は認められませんでした。
 最後になりますが、自然発症高血圧ラット、これは自然発症高血圧ラットであるSHRを用いまして、PM2.5曝露の影響をR-R間隔、心拍変動スペクトル、HRVつまりHeart Rate Variabilityですね、これに関して検討したものであります。曝露は5時間行いまして、肺抵抗の指標であるPenhは、この曝露前と曝露後2時間の時点で計測いたしました。また、心電図に関しましては、このようなときに計測しております。
 その結果でありますが、こちらは副交感神経の指標とされているHFの変動でありますが、曝露によって若干高く、曝露群の方が高い傾向が見られ、曝露5時間後あたりから優位に上がる時点もあることが見出されました。また、心拍数の変動に関しては、大きな変化はございませんが、若干下がり目であるということが見出されました。
 全体として、非常に大きな影響があるというようなところは見られませんでしたが、統計解析の結果、どんな傾向があるかというところでは、まず、肺傷害が悪化するかどうかというところですが、好酸球数の上昇が見られたということや、好中球数も上昇する傾向が見られておりまして、全体としては、全く炎症に対して影響を否定するということはできないのではないかということが言えるのではないかと思います。
 また、キニジン投与モルモットでは、心拍数が上昇、それから、老齢ラットでも心拍数は上昇する傾向が見られました。
 一方、自然発症高血圧ラットでは、逆に心拍数の低下傾向あるいは肺気流抵抗の上昇といった副交感神経活動に影響を及ぼす可能性がありそうな結果が得られております。
 全体、今、申し上げたとおりなんですけれども、モルモットキニジン投与した実験から、CAPs曝露が不整脈誘発に何らかの影響を与えている可能性は否定できないというような表現で今回の結果をまとめました。
 また、老齢ラット、SHRラットを用いた実験から、CAPs曝露によりラットの自律神経系に変調を来した可能性が、これも否定できないというような表現をとっております。
 それから、SHRラットを用いた実験では、CAPs曝露中に心拍数の減少、CAPs曝露終了後に心拍数の増加、モルモットにキニジンを投与した実験、老齢ラットを用いた実験では増加していることから、循環機能に何らかの変化が生ずることは否定できないと。一致した傾向の結果ではなかったですけれども、増減があったということで、こういう表現をとっております。
 以上の結果、今後の課題でありますけれども、例数が比較的チャンバーの制約上もありまして少ないということもあり、それとPM2.5の構成成分や濃度、これも大きく変わってきておりますので、もう少し同様の実験を続けて、知見を蓄積していく必要があるのではないかということが1点と、これは急性の影響に関して検討をした結果ですので、慢性曝露の影響とか、そういった検討も今後、必要であろうかと思います。
 また、ここで行った検討以外の生体影響指標、例えばアレルギー関係とか脳神経系への影響とか、そういったことはまだ検討されておりませんので、今後の課題であろうかと思います。
 以上でございます。

【内山座長】 どうもありがとうございました。ただいま、毒性学研究で、特に疫学研究で高感受性と言われております高齢者、あるいは心不全、あるいは高血圧を持っている高感受性のメカニズム、あるいは動物実験的に検証できるかと、こういうことが中心だったと思いますが、ご意見・ご質問ございますでしょうか。

【上島委員】 キニジン投与のモルモットの心拍数に対する影響と、それからSHR、高血圧発症ラットの心拍数に対する急性期の曝露影響が、心拍数において異なったように思いました。これは、モルモットでは心拍数を上げる傾向を示したと。SHRでは低下と、急性期は。もし、そうだとすると、これはキニジンの影響ですか、それともモルモットとラットの違いなのでしょうか。

【小林委員】 これは、種差の問題も多分あるのではないかと思いますが、もう一つは、実験のデザインといいますか、どこの時点で、結構、その心拍数とかといったものは測定する時期によって変動するもので、そういったデザインの違いも一つあるのではないかなと思っています。といいますのは、これは4時間曝露した直後からの測定で、モルモットの場合はありますけれども。

【上島委員】 モルモットは4時間後ですか。

【小林委員】 ええ。それでもう一つ、SHRの場合は、その時点でも測定しておりますけれども、12時間後、曝露した次の日に測定したりというような、そういうデザインの違い、それからもう一つは、ラットの場合は無麻酔ということで検討しておりますが、モルモットの場合は、ウレタン麻酔下で行っているという、いろいろな諸条件の違いがこういった結果の違いを生み出しているんではないかと思っております。そこら辺を精査する必要は多分、必要なのではないかと思っております。

【上島委員】 あと、もう一ついいですか。喫煙の影響と比べるとよくわかるかなと思ったのですが、といいますのは、このCAPs等の曝露実験で炎症性の作用とか、血管内皮に障害作用があるとかというのは、極めて喫煙の影響と似たところもありますよね。心拍数に関して、喫煙だと急性期は上がりますし、そこら辺をちょっとどう解釈するかは問題、一部似たところが少なくともあると。似たところがあるかどうかを調べられるのにされたこともあるとは思いますが、それで、喫煙との影響の比較がもしあれば、イメージとしてわかりやすいですが、それはなされてなかったのでしょうか。

【小林委員】 喫煙との比較はしておりません。ただ、ディーゼルの吸入曝露といいますか、ディーゼルの抽出成分との比較という点からいいますと、同じ、例えば酸化ストレスという一つの指標でしかないですけれども、そういう視点から見ると、PM2.5もディーゼルの抽出物も、同じような酸化ストレスを組織とか細胞に与えるというような、似ている点もあるという。ですから燃焼由来の喫煙のときに出てくる成分に関しても、燃焼由来という点では同一のような物質は存在しているのではないかなとは想像しておりますが、詳しくはやっておりません。

【内山座長】 どうもありがとうございました。今の喫煙との比較の問題は、ニコチンの薬理作用の方が心拍数・血圧に、初期のときは強い影響がでると思いますので、喫煙の場合はそちらの方でマスキングされてしまうのではないかと思います。もう少し長期でやれば、内皮細胞に影響したものがどういうふうにかかわってくるかというのがわかるかもしれませんが、なかなか難しいところではあると思います。
 そのほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。

【佐藤委員】 曝露実験の方法について、ちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、このCAPsで濃縮するということで、多分、これ絵を見ると、50倍くらいになっているという解釈でよろしいですか、濃度としては。

【小林委員】 10から6~70倍ぐらいです。

【佐藤委員】 数十倍の範囲であるということで、これで例えば、粒子の統合みたいなものが起きているとか、あるいは化学的な構成成分同士の何か相互作用のようなものが起きているという可能性はどうですかね。

【小林委員】 そこら辺の精査はしておりませんが、各粒径ごとの濃縮率を見た場合に、ピークである粒径のところの濃縮率が一番高く、その両わきは低いというような結果から言うと、もし粒径分布で成分が粒径ごとに異なるということであれば、若干、もとのものとは異なってきている可能性はあるのではないかと思います。

【佐藤委員】 それと、もう少しよろしいですか。どれくらいの数の動物が一回のチャンバーに入ったか、ちょっとよくわからなかったですけど、これは動物ごとにかなり曝露のばらつきというのは、同じ群の動物でもあるというふうに考えてよろしいのですか。

【小林委員】 そうですね。一群、大体キャパシティーから言うと、いろいろな配線もあるので、4匹ぐらいが1回の実験に使われておりますので、そこら辺のばらつきで結果が見えにくくなっているということもあるのではないかと。

【佐藤委員】 もう一つは濃縮して曝露しているわけですけれども、その曝露濃度がこういう実験で十分ぐらい上がっているのかどうかというのは、もっと高くても実験だったらいいのかなという気もちょっとしたのですけれども。

【小林委員】 これを上げるにはバーチャルインパクタというものを使わなければ、これは減圧になってきますね。そうしますと、3段階ですと、大体、その3,000mぐらいの山の上の空気の薄さになってしまって、それ以上というのはなかなか厳しいかなという。別の方法を考える必要があるのではないかと思います。いろいろな曝露の手法というのが考えられるので、そのCAPsの濃縮の仕方以外の方法というのを、やっぱり技術開発みたいなのが必要なのではないかと。

【内山座長】 そのほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

【上島委員】 CAPsの実験のところで、CAPsかな、どっちだったか、マウスでしたか、肺抵抗の増加と、脈拍の減少がありましたね、SHR。これはある意味では、ベータブロッカーと似たような作用もあると解していいでしょうか。ベータブロッカーを投与しますと脈拍数が下がりますし、肺抵抗も増加するように思うのですが。

【小林委員】 我々の議論の中では、ブロッカーというより、むしろ知覚神経を介した作用かなと。いわゆる刺激物のようなものが呼吸器のところにあって、そこら辺あたりを刺激したために起きてくるのではないのかなと、そんなことを考えているわけです。

【内山座長】 よろしいでしょうか、そのほか。
 それでは、どうもありがとうございました。そうしましたら、最後に今回の調査のまとめにつきまして、横山先生の方からまとめていただけますでしょうか。

【横山委員】 私の方から、この3分野、8年間にわたる分野ごとの研究の総まとめをお話ししろというふうになっておりますけれども、分野ごとには各ワーキンググループの座長からそれぞれの結果と、また、その後の課題も報告されておりますので、私の方から一応、この資料にはそれは書いてありますけれども、私の方ではそれは触れなくてもよろしいかと思います。ただ、前から申し上げていましたように、これはプロジェクト研究でございますので、分野ごとの結果がただ上へ上がってきて、はいそれまでよというわけにはまいりませんので、この曝露影響調査検討会でも、これらの三つの分野の研究結果をどのように総合して次につなげるかということについての討論が行われましたので、そこら辺のところをひとつご紹介したい。若干、この厚い報告書の方には触れていない点も私の責任においてお話しするかもしれませんが、その点はお許し願いたいと思います。
 結局、疫学と、曝露の方は曝露の方できちんとやっていただきましたが、健康影響という点では、この疫学研究と動物研究、二つの分野でやったわけでございますから、この分野の結果についてどのように評価するか。これはなかなかそう簡単な仕事ではございませんでした。これは後で触れますけれども、人間とか生き物を相手とするプロジェクト研究では、途中でこうだからこういうふうに変更するということは容易ではございませんのでなかなか難しい点もあったのですけれども、もちろん種差という問題を考えなきゃなりません。それらのことをいろいろ考えた上で、まず、呼吸器系の影響についてどうであろうかという点を見ますと、これはもう既に各座長からやられていることですけれども、疫学の方では入院喘息児、それから小学生とPM2.5の関係が、一部優位の関係が見られている。それから、通院喘息児とSPMの関係においても一部優位な関係が認められている。もちろん、その優位な関係のありようというものは、必ずしもユニフォームではないですが、どうやら粒子状物質の曝露があった場合に、その後、子供たち、特に喘息の子供たちのピークフローが下がるという傾向は把握できたじゃないかと思われます。
 一方、動物実験では、これに類するものがあるか。ストレートにこれにぶつけるというものは、もちろんピークフローレートによるものでございますから、ない訳ですけれども、動物に細菌毒素を与えまして、実はこの実験の報告書にはそこまで書いてございませんけれども、細菌毒素を与えるということは少し強過ぎるストレスではないかと。したがって、そのストレスで後から与えるCAPsの影響がカバーし切れないじゃないかという議論はございましたが、それはともかくとして、細菌毒素を与えた動物に、後からCAPsを曝露すると、その細菌毒素を与えられた動物の肺内反応が強まるという結果がございます。
 この二つを考えますと、先ほども言いましたように示唆という問題、それから、細菌毒素という、人々に強過ぎるかもしれないストレスという点も考えなきゃいけませんけれども、どうやらPM2.5と呼吸器の影響というものについては、何らかの関係があると。このことは国際的に報告されているものと矛盾するものではないと。そこら辺をそういうふうに考えました。
 ただ、ちょっと気になるのは、喘息児の夜間急病診療所の受診件数とPM2.5の間の関係が認められておりません。ところが、アメリカの最近のクライテリア・ドキュメントをお読みになった方は多いと思いますけれども、それではいわゆる呼吸器及び循環器疾患によります急診患者の受診とPM2.5とは、かなり強い相関があるという報告がたくさん出てきておりまして、これを彼らは非常に高く評価しております。今回の調査では千葉県の一診療所のみであって、複数の診療所の調査はまだやっておりません。しかも、夜間だけであるということで、国際比較することの危険性はありますけれども、これも、今後の課題として考えていかなきゃならないんじゃないかと。いずれにしましてもPM2.5と呼吸器の影響というものは、はっきりしたものとまではいかないですけれども、可能性としては、今回の研究でつかんだというふうに言えるのではないかと思います。
 さて次は、このPM2.5となりますと、国際的にはどうしても循環器影響というものが重要視されております。先ほど、新田委員の方から、いわゆる日死亡のことが報告されまして、また、多くの討論がされたと思いますけれども、それも日本の場合は、20都市についてやった一つの報告があるだけでございます。一方、アメリカの最近のクライテリア・ドキュメントでは、1996年のドキュメント以降、34の新しい研究がこの日死亡について報告されているそうでございまして、これらのデータを見ますと、例えばPM2.5、10μg/m3、アメリカのクライテリア・ドキュメントでは、前回のところでは0.8から2.4%ふえているのに対して、今回の調査では大体0.3%ぐらいで、循環器がアメリカのあれでは1.2から2.8%なのが、今回の我々の調査では0.4%。呼吸器は、アメリカの0.8から2.8%が、今回の我々の調査では1.1%といって、繰り返しますけれども、これは1回だけの調査でございますので、これで決定的に云々するということはできませんし、もちろん統計的に違いがあるかどうかは検討もしていませんので、その数字だけを見て言っているわけですけれども、どうやらこれだけから考えると、日死亡に対するPM2.5の影響は、少なくともアメリカの報告よりは小さいのではないか。特に循環器が小さいのではないかということが考えられるわけでございまして、このことは今後の研究、あるいは、さらに今、環境基準ということが環境省の中でもなってきているわけですけれども、環境基準を考える場合に留意してもいいのではなかろうかなと。繰り返しますけれども、統計学的にどうかと言われますと、これは必ずしも有意な問題ではございません。あくまでも数字の印象から言っているわけでございますけれども。そんなことがあえて、もちろん実はこれ以外にもあろうかと思います。例えば先ほど、動物実験で心拍数の増減が言われましたけれども、増えるというのは、麻酔しておりますので、僕は麻酔している動物の心拍数を評価するというのはいろいろ問題があると思うのですが、麻酔していない、要するにSHRラットでは心拍数が減るのですよね。心拍数が減るということは、例えば除細動器なんかで見ている場合には、あれは頻脈におけるいろいろな影響、あるいは細動を見ているわけでございますから、どうもこれは違うのではないかというふうなことも考えられまして、全体としては、今回の調査研究では、PM2.5と循環器影響についてははっきりとしたことは言えない。あるいは、アメリカからの報告よりは影響は小さいのかもしれないということを考えたわけでございます。
 一応、総括としてはそのとおりでございまして、もう一点、あえて時間をいただいて、今後の研究課題、循環器影響、ここのところでいろいろとこれも討論いたしました。先ほど、日本のたしか内山座長の方からのご質問だったと思いますけれども、PM2.5の化学組成の違いはどうかという点が、ご質問がありましたが、元素状炭素であるとか金属あるいは硫酸イオンなんかで違いがあるということが報告されておりますが、もう一つ、気がついたことがございます。これは日本とアメリカ及びイギリスの間では、心疾患の死亡率が全然違うのです。2003年、日本におきますと、人口10万当たり心疾患の死亡率は128、これに対して、ちょっと二、三年ずれますけれども、アメリカの場合は242、英国の場合は263で大体2倍以上です。そのうちの虚血性心疾患によるものは、日本の場合は65、それに対してアメリカは189、英国は223、3倍以上です。今申し上げましたのは男性のデータですけれど、女性の場合も大体同じようなデータです。こうしますと、やはりPMの組成の違いというものと、それから対象としている一般人口というものの、本当は、これは遺伝子のところまで行くのでしょうけれども、病気のなりやすさということが、日本人と外国人とは違うということが言えるのではないかと思うのですね。そこら辺のところを、そこまでは触れていませんけれども、微小粒子状物質の構成成分、循環系疾患の死亡率あるいは罹患状況、このところはこのことを申し上げおるわけでございまして、ここら辺のところを十分に踏まえて、PM2.5と日本の循環器疾患との関係というものを読み取る場合に、外国のデータはもちろん尊重しなきゃいけませんけれども、外国のデータを直接持ってくることができるかどうか。私は持ってくることができないとは言っておりませんよ、繰り返しますけれども、持ってくることができるかどうかということは、慎重に留意しなきゃいけないのではないかというふうに思います。これは今後の課題でございます。
 若干、言い過ぎたかもしれません。言い過ぎたでしょう。私が今申し上げたこと、この報告書にすべて書いてあるわけではございませんけれども、8年間という長い期間かけてやってまいりました研究の総括のまとめを述べるに当たりまして、若干、私個人の意見も交えて、環境省の方に僕の意見を言ってもいいかと言ったら、いいよと言いましたので申し上げている訳ですけれども、ひとつそんなようなことで、長い間、曝露、疫学、それから動物実験のワーキンググループの方々には大変ご苦労さまでしたと。改めて御礼申し上げるものでございます。
 以上ですけれども。

【内山座長】 ありがとうございました。これで一応、各ワーキンググループ、それから今、横山先生の方から総合的なまとめ、あるいは私見も入っているということでございましたけれども、報告をいただきました。調査全体としまして、微小粒子状物質の健康影響の項目、先ほど申しました検討項目等踏まえまして、最後に皆さんの方からご意見・ご質問ございましたら、あるいはコメントでも結構ですので、もう少し時間がありますので、よろしくお願いいたします。はい、どうぞ。

【新田委員】 スライドの資料を2カ所訂正させていただきます。スライドの番号で申しますと、ちょっとかすれておりますが、スライド16番で、喘息による夜間急病診療所の受診との関連性というスライドの中で、調査の期間、2000年10月から12月24日の毎日を対象というところ、これは実は次のスライドの入院児のピークフローに関してのデータに関する記述でございます。それで実際には、この市川市の急病診療所のデータは2002年9月1日から1年間、2003年8月31日までのデータを使用しております。
 それからもう1カ所、スライドの番号でいきますと19番目のスライド、小学生のピークフローに関してですが、この中で2番目の・のところで、この調査の期間、2002年10月から12月のうちの4カ月と書いてございますが、4週間の誤りでございます。大変申しわけありません。ご訂正をお願いいたします。

【内山座長】 2カ所、ご訂正がございましたけど、おわかりになりましたでしょうか。よろしいでしょうか。本報告の方は正しいということですね。今、傍聴に来られている方で配布資料を引用なさることもあるかと思いますが、ご訂正よろしくお願いいたします。
 そのほかにございますでしょうか。はい、どうぞ。

【上島委員】 横山委員がおっしゃられたことを、少しコメントとして私の意見を述べたいと思います。横山先生が言われた循環器疾患の欧米の特徴、日本との差というのは事実でして、例えば1990年代のWHOの発症登録の研究と日本の同様の基準でも続いて発症登録のデータを比較しますと、例えば40歳からか35歳からか忘れましたが、多分35歳から64歳だと思いますが、その年齢調整の発症率の比較がございます。それによりますと、例えばフィンランドと日本と比べると10倍ぐらい発症率が違います。日本は6集団、発症率の調査をしていますが、これは比較した先進工業国の中では最も少ない心筋梗塞の発症率です。これはずっと今も続いております。死亡率ももちろん先進工業国の中では少ないという特徴がございます。一方、脳卒中は1965年のときには世界一、脳卒中の死亡率が高い国でしたが、発症率は1990年では、このモニカのプロジェクトと比較しますと約真ん中あたりにばらついています。やはりまだ日本の脳卒中は下がったとはいえ、発症率は高いという特徴があります。したがいまして、心筋梗塞は極めて発症の低い中での検討になりますので、今までの私たちの経験では、欧米と従来の古典的なリスク因子は異なるものではありません。異なるものではありませんが、国民全体の曝露の程度が異なっていました。それによるものがあるだけで、リスクは変わりません。例えばコレステロールが高いと心筋梗塞を起こすとか、スモーキングで起こすとかというふうなことは変わりませんが、曝露量が違っている。一番違っていたのは、コレステロールを上げるような脂肪の取り方が違っていたということがあって、心筋梗塞はアジア、日本では低いです。その中でこのような、さらに次のリスクの検討をやるというのは極めて難しい。基本的になかなか出にくいだろうと思います。
 以上、コメントです。

【内山座長】 いろいろ貴重なデータ、ありがとうございました。そのほかにございますでしょうか。新田先生、何かコメントございますか、よろしいですか。

【新田委員】 先ほど申し上げましたけれども、今、あるデータで、もし時間的に少しいただければ、先ほど上島先生、コメントいただいたような追加解析をして、本検討会に追加としてご報告させていただければというふうに思っております。

【島委員】 横山先生の方から最後に触れていただきましたけれども、この疫学調査の中で受診に関するデータが、疫学調査全体としていろいろ制約がある中でも、特に今回、この我が国における受診に関するデータというのは極めて制約が大きいものだということに留意していただく必要があると思います。横山先生からもお話がありましたけれども、これは千葉県の市川市で、夜間だけ市が設置している初期救急についての解析でありますので、より重症なものは2次、3次の病院に直接搬送されているケースもありましょうし、特に日中の喘息発作等に関しては、ほとんど把握できていないといったような問題があります。ただ、これは日本における救急体制の問題もあるかと思いますけれども、いろいろ疫学のワーキングの中で受診に関するデータをどういうふうに解析するかという条件を検討した結果、当時としては実現可能性も考えて、こういうデータを使わざるを得なかったということでありますが、喘息による受診、あるいは先ほどからお話が出ている心疾患、急性心筋梗塞による受診等も含めて、やはり受診の、特に救急受診に関するデータの扱い方というのは、これから実施方法も含めて、さらに検討をしていく必要があろうかと思います。
 以上です。

【内山座長】 ありがとうございます。これは私もちょっと感じているのですが、日本と米国での、いわゆる保険制度の違いも随分あって、向こうは夜間救急に行くと無料で引き受けてくれるということで、昼間行かないで夜間に行かれる方も結構、今、それでその救急外医療の非常に財政的な問題というのが、大きな病院でも夜間の救急はやめてしまおうかとか、そこはもう非常に赤字になってしまうのでというようなこともありますので、そういうこともいろいろ考慮しなければいけないところもあるかと思います。ありがとうございました。
 そのほかにございますか。はい、どうぞ。

【佐藤委員】 前の検討会のときもちょっと申し上げたのですけど、PM2.5の何といいますか、一体何なのというのは、大分、今回、お話聞いてはっきりしてきた訳ですが、それでもまだよくわからない部分というのが残っていますね。小林先生のご報告の中にもあったのですけど、メカニズムというような話もあるのですけれども、要するに、微小粒子として何か悪さするのか、あるいはその中のケミカルコンポジション、何か含まれているもので悪いことを起こすのか、あるいはその両方が重なっているのか。多分、いろいろなことが考えられると思うのですけれども、やっぱりその辺の話もin vitroの実験でいいから、もう少しやっていくようなことが必要なのではないだろうか。いろいろ結果の違いとかなんかもあるのですけれども、PM2.5といいつつ、本当に同じものを見ているのかなという、多分そうだとは思うのですけれども。国際比較なんかの話になってくると、やはり世情が違うというお話を、最初のフォローにもありましたけれども、細かい話をしていく上では、やっぱりその辺の検討というのも、これまではやっておられると思うのですけれども、もう少し明確にしていただければというふうに思います。

【内山座長】 これは坂本先生、何かコメントはございますか。

【坂本委員】 今の点はPM2.5の組成そのものが、成分なんかが影響するというのがわかればいいんでしょうけど、今の時点では成分分析をしているのは、将来、そういうことができるようになった場合に、そういうデータを我々は担保しておくような形をとっておこうというような形でやっているのが一つと、それからその一方、先生おっしゃられるような点については、粒径別に、例えば変異原性とかなんかを見ていくと、やはり微小粒子の方にかなり変異原性の質量当たりの割合としては相当高いものがあるということから考えていくと、やっぱりだんだん物質的なところも先々見ていかなければいけないであろうということを想定して、今、申し上げたようなことをやってはいるわけですけれども、非常にどちらかというとリスクの高いようなものが、低濃度である可能性も同時にあるわけですね。ですから、その辺が非常に考え方としてはわかるのですが、現実にそういう何かという形で特定していくところは、かなり道のりが大変だけれども、それは意識しながらやっていく必要があるというのは、まさにおっしゃられるとおりであろうと思います。

【内山座長】 そのほかによろしいでしょうか。

【工藤委員】 今回の検討の全体的な私の印象というか評価というような点から、まず、第一に言えることは、とにかく例えば曝露のPM2.5の測定の方法論にしても、それから疫学調査の出発点である個人の曝露というのを、何をもって代表性を設定するかという問題にしても、また、毒性についてもCAPsというのは初めて導入したというような、そういういろいろなことを考えますと、とにかくゼロからの出発点という、外国のデータはいろいろありましたけど、我が国においてはとにかくゼロからの出発点だったという点で、今回の成果というのはやっぱり非常に重要なものが出ているというふうに私は思っております。
 それから、先ほど、心筋梗塞の人種的な発生頻度の問題がありましたけれども、少なくとも気管支喘息については、やはり喘息死の発生率というのは、人口対比で言うと、我が国はまだまだ高いですね。にもかかわらず、10年以上前になると、大体6,000人ぐらい亡くなっておりましたから、それが今3,000人を割るところまで来ているということで、今、恐らく夜間診療をやられている、気管支喘息、ご承知のように夜間に発作が起こるのが特徴ですので、夜間診療所でもかなり把握できるのかなとは思うのですが、にもかかわらず今日、例えばステロイド吸入療法とかといったような、気管支喘息の治療のあり方そのものが、この10年間で非常に変わってきているということで、喘息の急性発作が起こってくる頻度は非常に減ってきております。そういうことがありますので、今後の調査というのがより少なくなっていく中で行うので、大変難しいものがあるかなということが、そういうふうに感じております。
 それから、三つ目の問題は、今回、CAPsで曝露実験をやったときに、動物で好酸球がふえていましたね。あれは通常のディーゼル曝露なんかで、必ずしも上がらないものがCAPsでふえていて、あれ磯子のところでのCAPsの、いろいろなところのものをとったわけではないと思うので、そこの場所にもよるかもしれませんが、CAPsに含まれている何か特殊なものがあったりする可能性もある訳ですよね。余り好酸球の増大というのは聞かないですが、そういったようなメカニズムの解明も今後ちょっとやっていかなきゃならないのかなというふうに思っております。
 以上です。

【内山座長】 ありがとうございます。
 さっきの私の発言で、アメリカの夜間救急は無料になるというのはちょっと間違いで、夜間で救急ですと、保険証を持っていなくても受け付けてくれる。昼間ですと、それを持っていないとなかなか受け付けてくれないところがあるということで、無料になるというのはちょっと誤解を受けるかもしれませんでした。訂正します。
 そのほか、よろしいですか。今の工藤先生のご発言で、どなたかコメントなりはございますか、よろしいですか。今はもうあれですか、喘息のいわゆる予防的に吸入をするのがもう随分ガイドラインとして完成していて、余り夜間に発作を起こして病院に来るような方が少なくなったということで解してよろしいですか。

【工藤委員】 これはもう、いわゆる需要者そのものが、やっぱり減ってきている傾向がありますね。これはなぜかというと、さっき申し上げたようなことで、まだ今日、世界的には、気管支喘息というのは単なるアレルギー反応じゃなくて、気道の好酸球を中心とした慢性の炎症であるというとらえ方をしていますので、ステロイド吸入療法が基本になっている訳ですね。しかし、日本でのステロイド吸入療法の普及率というのは、先進諸国に比べてもまだ低い。ただし、10年ぐらい前から比べると、はるかにふえてきておりまして、大体、外来診療あるいは夜間の当直で、昔ですと梅雨どきとか9月とか、喘息発作の起こる季節変動があります。そういうピークのときに夜間当直というのは、もう喘息の発作の患者さんがどんどん来て、ほとんどそれで眠れなくなっちゃうということがあったのですけど、今はもうそういうことが非常に減ってきているのですよね。そういう大きな変化もあるということです。しかし、なお日本はまだ先進諸国に比べて高い、しかし下がっていると、そういうことだろうと思います。

【内山座長】 ほかにいかがでしょうか。

【森田委員】 本当に長い研究期間の間、先生方にはご苦労さまでした。それで全体をまとめていただいて、横山先生、ある種の総合的な判断を踏まえて、ひょっとすると循環器系への影響というのが欧米に比べて小さいかもしれない、小さく見えるかもしれない。つまり感度というか、背景になっているものがあるために小さく見えるかもしれないという。しかし、ひょっとすると、それも線形の関係になっているかもしれないことを含めて、上島先生からご指摘があり、大体、納得する線はあるのかなという感じはいたします。多分、こういったものが背景になっている、例えば心筋梗塞の例証というものにあるファクターをかけるとすると、そういう数字が出るか。それがひょっとすると数分の一になっているというと、つじつまが合うような状態かなという感じがします。
 もう一つは、実はそれとは別に動物実験側の、毒性実験側の方がまだちょっと研究が弱いので、これは引き続きかどうか、ちょっとプログラムを立て直して、もう少しちゃんとした研究というか、研究を進めていただくことは必要かなという印象を受けましたので、また、機会がありましたらそういうことをお願いしたいと思います。

【内山座長】 工藤先生、どうぞ。その後、高野先生。

【工藤委員】 一つだけ、誤解があるといけないからつけ加えておきますと、気管支喘息の患者数そのものが減っていっているというわけではないですね。急性発作を起こす人、あるいは喘息死、これが減っているということです。

【高野委員】 毒性の立場からちょっと二つコメントを述べさせていただきます。一つは、先ほど上島先生のお話にもありましたけれども、脂肪摂取と心筋梗塞等の循環器系の問題です。最近、我々の実験でも、ディーゼルの粒子を用いた実験ですが、肥満のマウスのみが脂肪肝を増悪するような作用が見られたのですけれども、ノーマルなマウスでは見られないというようなこともありまして、やはり、そういった肥満とか生活習慣病をベースに持っている方を中心とした疫学というのを今後考えていかないといけないなということは、毒性からも同様の意見であります。
 それと、もう一つは、やはりオゾンの件が気になっております。もともと気道の過敏性というのはオゾンの実験で出るというところからまず明らかにされておりまして、例えば今後もピークフローなどの値を目安に疫学に進めていくとすると、やはりオゾンの影響が無視できないのではないかとーーー、最近、結構、高濃度が出る地域がありますので、PM2.5とオゾンが逆相関をするような状態が出る上で疫学を進めていくと、その辺で、どうもPM2.5に関して誤った結果を導く可能性もあるのではないかという点で、オゾンの扱いが非常に難しくなってくるのではないかというふうに感じました。

【内山座長】 ありがとうございました。オゾンは、以前は喘息との発作との関連の調査が、随分行われていましたが、このごろはちょっとそれが下火になってしまっています。しかし、また、オゾンの曝露濃度が上がってきているということで再度注目されているところですので、今、非常に示唆に富んだご意見をいただきましたので、また、そういうところも今後の疫学調査の解析に含めていただければというふうに思いますが。横山先生、どうぞ。

【横山委員】 まだ時間があるようです。一つ終わったので、最後にこの資料の最後のところの調査研究体制というところを読んでみると、今、森田先生がおっしゃっていたことと若干関係があるのですけれども、やっぱり、これはプロジェクト研究なのですけれども、理学・工学の方面の研究と違って、対象とするのは人間であり、動物であるわけです。そうしますと、この研究、出発当初は各ワーキンググループでもって意見を交換して、大体研究を決めてゴーサインが出た訳ですけれども、動き出しちゃいますと、なかなか人間対象の場合、例えば新田さんの方の疫学でも少し汚染の違ったところを選ぼうと思ったってそんな簡単にはいかないし、それから、動物実験の方でもいろいろと曝露が始まっちゃいますと、途中でもって曝露条件を変えちゃうということも一貫性の問題でできないし、なかなか困難な面、実際、始まっちゃうと途中でもってこういう目的があるのだけど、その目的を達成するのになかなか変えにくい。これが恐らく工学や何かだったら、すぐ変えられるのですけれどね。ですから、そこら辺のところ、繰り返しますように、これはかなり大気環境行政にとりましても、これは画期的なプロジェクト研究であったと思う訳ですけれども、今後、もしも同じようにする場合には、人間や動物を相手にするような場合には、やっぱりスタート時点でもって相当に計画を練ってから実施するということが必要になるのではないかなと思いますので、また、今後の参考になればと思います。

【内山座長】 ありがとうございました。
 それでは、大体これで皆さんのご意見も出たようでございますので、ちょうど時間も12時半、予定していた時間になりましたので、きょうの会議はこのぐらいで終わらせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、どうも長い間、ありがとうございました。事務局の方から何かございますでしょうか。

【課長補佐】 本日は長時間にわたってのご審議、どうもありがとうございました。本日の議事要旨、議事録につきましては、各位にご確認いただいた上で公開することとさせていただきます。
 また、この微小粒子状物質の曝露影響調査検討会の報告書につきましては、本日、環境省のホームページに掲載いたします。
 また、次回の検討会では別途行っております文献レビューの報告をさせていただきたいと考えております。具体的な日程につきましては、この文献レビューの取りまとめ状況を踏まえ、後日、事務局から調整させていただきますので、ご協力をよろしくお願いいたします。

【内山座長】 それでは、どうもありがとうございました。