農薬生態影響評価検討会第2次中間報告について(概要)
第1部 農薬生態影響評価の基本的考え方について
第1 農薬生態影響評価の基本認識
1.生態影響評価を巡る最近の情勢
2.農薬による生態系への影響の実態
3.現行制度上の課題
4.今後の農薬生態影響評価の基本認識
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第2.当面の農薬の生態影響評価の基本的な考え方
現段階で施策の具体化を図ることができる部分を整理すると以下のとおり。 | ||
1. | 評価対象とする生態系 | |
水域生態系に加え陸域生態系及び遷移帯生態系も含めて農薬の生態影響を評価するのが望ましいが、複雑な生態系を総体としてとらえるのは技術的に困難であり、水域生態系を除いて毒性試験法が十分確立されていないことから、知見の進んだ分野から施策を具体化するため、当面の評価対象とする生態系は水域生態系とする。 | ||
2. | 対象農薬 | |
農薬取締法で定義される農薬のうち、今回の評価方法で評価が可能な農薬として化学合成農薬を対象とする。ただし、樹木注入剤等水域生態系での曝露が想定されない農薬は対象としない。 | ||
3. | 農用地・農業用施設の扱い | |
農薬の使用が当然視され、農作業や水環境によって変化する人為的な生態系である水田や、灌漑による水量変動等農業生産活動に伴う他の影響と農薬による影響を区別することが困難な排水路の水生生物への農薬影響は、当面生態影響評価の対象とはせず、今後の検討課題とする。水田や農業用施設に生息する水生生物については、農薬の使用方法の遵守やより影響の少ない代替剤の使用など地域における生物種の重要度等に応じた個別のリスク削減対策等異なる手法により保全を行うことが重要。 | ||
4. | 生態保全の目標及び評価の基本的な考え方 | |
「持続可能な農薬使用」、「自然共生型の農薬使用」が将来的な目標になる。しかしながら、農薬の生態系への影響の程度を実環境において定量的に分離・特定するのが困難な現状では、少なくとも水質環境基準点があるような河川等の公共用水域において農薬取締法の保全対象とされる水産動植物への影響が出ないように現状の評価手法を改善し、影響の可能性を現状より削減することを当面の目標とすることが適当。 | ||
5. | 評価方法 | |
当面、農薬の単回散布による短期的な環境濃度を予測し、急性毒性に係る毒性試験値と比較することにより、生態影響を評価することとする。 (1)リスク評価及びリスク削減(新規登録の場合)
(2)リスク評価及びリスク削減(既登録農薬の場合)
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第2部 具体的な当面の生態影響評価手法等について
第1 具体的なPEC算定方法 (別紙1) 第2 具体的な毒性評価手法 (別紙2) 第3 評価体系図 (別紙3) |
第3部 今後の検討課題
1. | 当面の施策の具体化に向けた課題 | |
既登録農薬の効率的評価に向け、毒性試験データ等のデータベースの整備、モニタリングデータの具体的収集方法の検討等を行う。 | ||
2. | 水域生態系の評価手法の更なる充実に向けた課題 | |
(1)「持続可能な社会」、「自然共生型社会」の実現に向けた生態系保全目標の検討 (2)慢性毒性と他の生物種の導入の是非と具体的な手法の検討 (3)一過性の散布の際の回復性試験の必要性と具体的な手法の検討 (4)複数農薬による相加的・相乗的あるいは拮抗的な影響に関する検討 (5)生態影響モデルであるマイクロコズム試験に関する研究の推進 (6)水域生態系をめぐるその他の問題 |
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3. | 陸域生態系及び遷移帯生態系の評価手法の確立に向けた課題 | |
農地内生態系を含め、これまで評価の対象とされていない全ての生態系においても、生態系保全の在り方や、評価手法の検討が必要である。 陸域生態系及び遷移帯生態系影響評価に関して、実態の把握、曝露シナリオ、定量化のための手法の開発を進める。 蓄積のおそれのある農薬について、食物連鎖を通じた高次の生物の生息に関与する可能性もあることから、幅広く影響の可能性を検討する必要がある。 |
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