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カキ

Crassostrea gigas Thunberg

二枚貝綱 ウグイスガイ目 イタボガキ科




1.カキの仲間・種類

 カキは軟体動物門、二枚貝綱、ウグイスガイ目、イタボガキ科に属し、世界で100種類以上もいますが、産業的に重要なのは10種類程度です。瀬戸内海ではマガキやイワガキの養殖や種苗生産が盛んに行われています。

写真:マガキの殻(外側)写真:マガキ左右の殻(内側)

写真 マガキ

表 イタボガキ科に属する主なカキ
Crassostrea 属 マガキ、イワガキ、スミノエガキ
Ostrea 属 イタボガキ

2.マガキの分布

 マガキは北海道から九州、朝鮮半島、沿海州、中国大陸沿岸に分布します。汽水性内湾の潮間帯から潮下帯の砂礫底でしばしばカキ礁を作ります。カキは市場に出回っているマガキのほとんどは養殖されたものです。養殖が盛んな所としては、厚岸湾、松島湾、伊勢湾などが有名です。瀬戸内海では広島湾がカキの養殖地として有名です。

3.マガキの形態

 イタボガキ科の特徴は左右の殻は不等殻で、左殻で岩礁などに固着することです。イタボガキ科に属するマガキは右殻が平らで表面が薄い板状になっており、左殻は大きく、深くふくらんだ形をしています。また、マガキは殻形が一定せず、卵形や細長い形のものまであります。寒冷地では殻が大きく細長くなることから「ナガガキ」とも呼ばれます。殻をあけると軟体部が下の写真のように入っています。一般的には貝柱と呼ばれる閉殻筋は殻の開閉に重要な部分で、カキの殻をあけるときにはこの部分を切断しないと開きません。カキの殻をあけるときは、カキむきナイフを右殻か左殻の内面に沿わせるようにして閉殻筋を切ると簡単にあけることができます。

写真:マガキの部位(殻頂、閉殻筋、外套膜)

写真 マガキの部位の名称

4.生態

生活史について

 マガキの放卵、放精は7月下旬〜8月上旬に行われます。受精後1時間程度で卵割が始まり、トロコフォア幼生、ベリジャー幼生、D型幼生期、アンボ期、成熟幼生期を経て付着生活に移行します。付着期に近い成熟幼生は気に入った基質の条件のよい場所を探します。好条件の場所が見つかると、成熟幼生は足と外套膜からセメント物質を出して2〜3分間でその場所に固着します。固着生活に入ると、うまみ成分であるグリコーゲンが秋から春にかけて蓄えられ、そのグリコーゲンをエネルギー源として消耗しながら夏の産卵期に向けて卵や精子を成熟させます。

マガキの雌雄について

 マガキは卵がそのまま産み出されて体外で受精する、いわゆる卵生型(oviparous type)で、マガキの他には北アメリカ大西洋岸産のバージニアガキ (Crassostrea virginica)が代表種です。繁殖期におけるこれらの成体の性はよく分離されており、雌雄同体の個体はほとんどいないようです。つまり、マガキには雌雄があり、雌雄同体個体はまれなケースと言えるでしょう。

カキの性転換について

 カキには雌雄があり、繁殖期に雌雄同体個体はまれであると紹介しました。しかし、カキは普段は雄性を示し、繁殖期である夏になると雌性が現れ産卵するという変わった特徴を持っています。カキは漢字で書くと牡蠣となり、「牡」という字が入っているのは古代中国ではカキは全てオスだと考えられていたためと言われています。

5.マガキの養殖

 マガキ養殖の工程は、採苗→養成→害敵駆除→収穫と出荷となっています。まずカキの産卵日から計算した付着日に採苗器を投入し、幼生を付着させます。わが国では採苗器はホタテガイやカキの貝殻が多く用いられています。幼生が採苗器に付着したら養成の工程に入ります。養成法としては地まき式、ひびたて式、垂下式など様々な方法があります。養成に適した場所は、風波の静かな内湾や入り江で、湾内の海水交換が良いことが大切です。マガキの害敵には直接カキを食害するものと垂下連に付着し潮通を悪くさせるものがいます。後者の付着生物に対する防除対策として、一定の時間空中露出(日干)処理などを行います。

写真:ホタテガイの殻を使った採苗器

写真 ホタテガイの殻を使った採苗器 (左側:裏面 右側:表面)

6.健康食品としてのカキ

 冒頭でも紹介しましたが、カキは「海のミルク」と言われるほど栄養価が高い強壮食品です。カキの旬は冬と言われますが、これは冬から春にかけてカキのうまみ成分のひとつであるグリコーゲンの含有量が増えるためで、このグリコーゲンは肝臓の働きを活発にします。カキのタンパク質に含まれるグルタミン酸、システインなどのアミノ酸は体内の毒素を分解し、放出させる働きがあり、カキの粘液にあるタウリンはコレステロールを低下させる役目があります。また、カキにはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という高度不飽和脂肪酸の含有量が高く、特にEPAは心筋梗塞や脳血栓などの血栓性疾患を予防します。一般に貝類にはビタミンB群が多く含まれ、カキには特にビタミンB2、B12が多く含まれています。これらは造血作用があると言われます。ビタミンB12にはコバルトというミネラルが含まれ、鉄分とともに貧血予防の効力を持っています。さらに、カキには子供の成長に欠かせない亜鉛を含んでいます。
 このようにビタミン類や鉄を多く含むカキは動物性食品には珍しいアルカリ性食品です。

表 貝類の可食部100g当たりに含まれる成分
成分
Ca P Fe Na K Mg Zn Cu
種類 (mg) (mg) (mg) (mg) (mg) (mg) (μg) (μg)
カキ
55
130
3.6
280
230
70
40000
3500
ホタテガイ
49
170
1.0
250
310
60
2500
100
ハマグリ
140
110
5.1
500
250
42
1400
210
アサリ
80
180
7.0
400
230
50
1300
130
サザエ
50
130
3.0
400
300
65
2200
530



【参考文献】

1)奥谷喬司編:決定版生物大図鑑,世界文化社,東京,298-299(1996).
2)奥谷喬司編著:日本近海産貝類図鑑,東海大学出版会,東京,924-925(2000).
3)隆島史夫・羽生功編:水産養殖学講座第4巻水族繁殖学,緑書房,東京,335-337(1989).
4)波部忠重著:日本産軟体動物分類学 二枚貝綱/掘足綱,図鑑の北隆館,東京,108-109(1977).

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