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スナメリ

Neophocaena phocaenoides (G.Cuvier)

クジラ目 ネズミイルカ科 スナメリ属

1.名前について

 標準和名はスナメリであり、瀬戸内海東部ではナメ・ナメノウオ、瀬戸内海西部ではゼゴン・ゼゴンドウと呼ばれることもあります。漢字では「砂滑」と示されますが、英名ではFinless porpoiseというように、背びれのないイルカという意味を示しています。

スナメリ(写真提供:鳥羽水族館)

2.分布

 西はペルシャ湾から東は富山湾、仙台湾にまで達しており、日本における第1の生息地は瀬戸内海から紀伊水道までです。そのほか、伊勢湾から仙台湾まで、北九州から富山湾まで、西九州(有明海、八代海)で見られますが、それぞれ異なる地域個体群(成長や繁殖期の違い等)とされております。

3.形態

 体型は細長く、英名のごとく背びれはありません。背中の正中線に沿って高さ2〜3cmの隆起が首の後方から肛門付近にまで延びており、この隆起の存在がスナメリの特徴で、その幅や長さに地理的変異が見られます。また、その部分の皮膚には角質化した小突起が密生していて、内部に多くの神経終末が分布していることから、個体ごとの接触時に感覚器官として機能するのではないかと考えられています。

 体長は日本沿岸産では最大で192cm、平均160〜170cmです。  

図:スナメリ

4.瀬戸内海における生息域

 瀬戸内海ではほぼ周年観察されますが、生息密度の季節的な変化は認められています。生息密度が最も小さいのが秋から冬にかけての9〜12月ころで、その後密度は次第に上昇し、4月には秋の2.5倍前後で最大となります。このころ繁殖期となり、出産及び交尾の場所となります。その後、夏にかけて密度が次第に低下しますが、これは外洋に面した沿岸域に回遊して行くためです。

 また、水平的な密度分布としては、岸から2km以内に生息しており、岸から6km離れると密度は10分の1に低下します。外国では河川にも進入することから、かなり沿岸性の強い鯨類と言えます。すなわち、瀬戸内海沿岸のように多様な変化をする場所を生息環境として選択し、それに適応してきたため、種として広温性、広塩性といった環境耐性が大きいと言えます。

5.繁殖

 スナメリは1産1仔です。瀬戸内海における出産は4月に盛期が見られ、出生体長は78cmとされています。

 水族館での飼育経過から、生後3か月で歯が生え始め、離乳期間は6〜15か月、通常は7か月とされています。すなわち、産まれた年の秋ぐらいまでは親子で出現しますが、そのころから単独で遊泳する小型個体も見られるようになります。また、2年に1回の妊娠が最も一般的なサイクルとされており、瀬戸内海における成熟年齢はオスでは3〜9歳、メスでは4歳以下で、体長で見ると、オスは135〜155cm、メスは120〜150cmと言われています。

スナメリの親子(写真提供:鳥羽水族館)

スナメリの親子

6.行動と食性

 瀬戸内海における群れの大きさは1〜13頭の範囲にあり、その組成や大きさは季節によって変化します。そこでは、群れの50%近くが単独個体であり、社会性の未発達なことを反映しています。また、遊泳は緩やかで、船を避けたり、船首の下に潜水したりして、マイルカ科のように船首波に乗ることはありません。

 スナメリの餌生物は魚、エビ、イカ、タコ等多くの種類で、それぞれの生息地に分布する適当なサイズの動物を何でも食べており、1日当たり体重の5%前後の量を摂餌していると考えられています。

7.資源状況等現状

 戦後一時期には、スナメリから油を採取していたようですが、現在は定置網やトロール等で混獲されることを除いて、水産資源保護法によって本種の捕獲が禁止されています。また、広島県阿波島の南端から半径1.5kmの範囲は本種の群生海面として1930年に国の天然記念物に指定され、保護されているほか、「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(通称.ワシントン条約)」の付表Iに記載され、研究用以外の輸出入が禁止されています。このように保護されているものの、1970年代に瀬戸内海には約5,000頭が来遊すると推定されて以来、資源量は把握されていません。

 当時は高度経済成長期にあり、その後、埋立て等による海面の利用、海上交通の発達等多くの社会的開発と、それに伴う公害の増加、環境の悪化がスナメリの生存に脅威を与えているものでしょう。昨今、自然環境保護に対する意識が向上してきたとはいえ、このような希少生物にはまだまだ安心できる環境ではないかも知れません。スナメリのような希少生物を始め、私たち人間を含めた多様な生物がバランスよく生活できる環境(生態系)の保全に努めていきましょう。

【参考文献】

1) 粕谷俊雄:スナメリ.日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料,水産庁,東京,626-634(1994).

2) 大隅清治:スナメリ.日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料,水産庁,東京,264-265(1998).