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アユ

Plecoglossus altivelis altivelis Temminck et Schlegel

サケ目 キュウリウオ科 アユ属


1.名前について

 標準和名はアユであり、広く使われています。そのほか、地方名としてはアイ、アイナゴ、アイノイオ、エノヨ、アア等がありますが、使われるのはまれです。

 一方、あて字としては、鮎のほかに安由、香魚、年魚、王魚、細鱗魚、黄頬魚、国栖魚、渓鰮魚(谷川のイワシ)、銀口魚等、多くあります。

 古事記や風土記にはアユが多く出ています。「鮎」の字は、占いによく使われたことに由来しており、「神武天皇が東征の際、夢のお告げで土器と壺を作り川に沈めて占った。」とか、「記紀の神功皇后が、遠征の際、飯粒をエサにして『新羅に勝つことができるなら魚が釣れますように』と祈って川の中に投げ入れたところ釣れた魚がアユだった。」などの話があります。

写真:アユの体

アユの体

2.分布

 北海道西部の天塩川から沖縄まで日本全土に広く分布しますが、奄美大島と沖縄島に生息しているものはリュウキュウアユと呼ばれ、亜種として分化しています。なお、沖縄島では北部の西海岸沿いの河川を中心に生息していましたが、1970年代末に絶滅したとされており、現在生息しているものは奄美大島に生息している個体群を移入、放流したものです。この奄美大島に分布するリュウキュウアユは環境省から絶滅危惧種の指定を受けています。

 一方、屋久島以北に分布するアユは、ロシア、中国、北朝鮮が国境を接するあたりから、朝鮮半島全域に分布し、中国沿岸を経てベトナム付近の広西壮(チワン)族自治区に達する大陸沿岸域にも生息しています。ただし、産卵場が形成される中流域から海までの距離が長いと仔魚は飢え死にするので、長江(揚子江)や黄河のような大河川に生息することはなく、日本のような中・小河川に限られます。

 さて、我が国のアユについてですが、ふ化した仔魚が海まで下り、幼魚になるまで海で生活するタイプ(両側回遊型)と、海の代わりに湖と流入河川との間で生活史を完結するタイプ(陸封型)に分かれ、後者はいわゆる琵琶湖のアユ(湖産アユ)です。湖産アユはDNA解析等では河川のアユと分けることができますが、亜種のレベルまでには至らず、分化の途中のようです。

アユの分布域図(日本列島)

アユの分布域

3.形態

 天然のアユは、体色も鮮やかで、スマ−トです。背は青みのかかったオリーブ色で腹部は銀白色、死ぬと全体に黄色みを帯びます。なわばりを持つ個体は、胸びれ基部の後方に縦長長円形の黄斑(追星)が強く現れ、背びれは長く黒色を帯び、あぶらびれの縁は鮮やかなオレンジ色になります。また、天然のアユはスイカに似た特有の香りがします。

 7月下旬から9月下旬頃の成熟期になると、オスは背・胸・腹びれが伸びて、逆に尻びれが短くなり、メスは尻びれの前方が著しく突き出てきます。特に、産卵期は「さび鮎」と呼ばれ、雌雄とも黒みを帯び、腹両側部に婚姻色と呼ばれる、オレンジ色の帯がはっきりと現れ、体表はざらざらになります。

4.アユの一生

図:アユの一生

4.1 なわばり

 海から川に遡上する時には群れをなしてきますが、川に定住するようになるとなわばり行動を示すようになります。なわばりは、餌場となる石を中心に1u程度で、餌を守るための摂餌なわばりと呼ばれています。一般に、放流された湖産アユの方が早くなわばりを形成し、成長も早いのですが、天然遡上アユは群れから離れるのが遅いためになわばりを持てず、成長が遅いと言われています。このなわばりについては、現在の河川では餌となる藻類が豊富に存在するため、食糧難であった氷河期の名残りとみられています。

4.2 産卵と仔魚の流下

 産卵は、秋(10月下旬から12月)に、川の中流域と下流域の境目にある砂利底の浅瀬で行われます。主に、夜間に多くの親魚が集まって産卵するのですが、オスは何回も産卵に加わるのに対して、メスは1回で全て放卵します。産卵を終えたほとんどの親魚はその一生の幕を閉じます。

 さて、産み付けられた卵は2週間ほどでふ化します。ふ化した仔魚の全長は5〜7mmで、体は透明なシラス型をしています。その後、仔魚は川の流れに乗って、ほぼ1〜2日ぐらいで海へと下っていきます。海に出た仔魚は、数週間のうちに砕波帯と呼ばれる波打ち際に集まり、動物性のプランクトンを食べて冬を過ごします。

写真:アユのシラス期

アユのシラス期

写真:アユの成長

アユの成長

4.3 遡上

 翌年の3月から5月になると、海で5〜6cmほどに育った稚アユが川を上り始めます。稚アユが自分の生まれた川に上るかどうかは不明ですが、海での分散は小規模なので、最寄りの川に上ることとなります。

 川に入ったアユは、中流域をめざして遡上し、食べ物も川底の石に付着した藍藻や珪藻に変わります。この時、これらの藻類をこそげ落として食べるのに便利な櫛(くし)状の歯に生え変わります。この食痕を「はみあと」と言います。

写真:アユの「はみあと」

写真:アユの「はみあと」(クリックすると拡大写真を表示)

写真左、上:アユの「はみあと」

5.利用

 早春に河口付近に集まってきた稚アユは、沿岸の港や海岸で、巻き網や地曳網等で採捕され、海産稚アユとして河川への放流や養殖用の種苗として利用されます。また、川に入ってからは、6月の解禁で有名な友釣りを始め、毛針、コロガシ、投網、梁等で漁獲されます。なお、これら釣りのために各地で放流がなされており、ほとんどが湖産アユですが、天然遡上アユとの遺伝的混合は進行していないようです。

 料理法としては、塩焼き、鮎ご飯、鮎雑炊、甘露煮、天ぷら、刺身、寿司、干し物、粕漬け、うるか等があります。

写真:友釣りの様子

友釣りの様子

【参考文献】

1) 西田 睦:アユ.川那部浩哉・水野信彦編,日本の淡水魚,山と渓谷社,東京,66-79(1993).

2) 井口恵一朗:サケ亜目.日高敏隆監修,日本動物大百科−6.魚類,平凡社,東京,43-45(1998).


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