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![]() 「平成22年度循環型社会形成推進科学研究費補助金」に係る継続研究の中間評価結果について平成22年度で研究事業期間が3年計画の2年目に当たる研究37件について、循環型社会形成推進研究審査委員会において中間評価を実施しましたので、結果を次のとおり発表します。1.平成22年度中間評価対象研究(全37件) *評価結果は、審査委員ごとの評価点数の偏差値から算出したもの。 2.研究の概要 K22038 廃食品性バイオマスを用いたレアメタル高選択的分離技術の開発 丸山 達生 パラジウム、白金などのレアメタルはセンサーや自動車排ガス触媒等、工業的に幅広く利用され、その価値は計り知れない。現在我が国では、レアメタル資源は国外からの輸入に依存しているため、使用済み家電・工業製品に含まれるレアメタルを選択的に効率よく回収・再利用することが切に望まれている。提案者らは最近ある種のタンパク質が、パラジウム、白金、インジウムイオンなどのレアメタルと非常に強い相互作用を有することを発見した。本研究では、これまで食品産業等で主に廃棄されていた、タンパク質を多く含むバイオマスをレアメタルの吸着剤として利用する新しいレアメタルリサイクル技術の確立を目指す。これにより、"廃棄性バイオマスの再利用"および"レアメタルのリサイクル"という二つの革新的同時リサイクル技術の実現可能性を検証する。 K22039 石綿含有廃棄物の処理・再資源化過程における石綿の適正管理に関する研究 貴田 晶子 建築材料への非意図的な石綿の混入等により石綿含有廃棄物の発生量の増加が見込まれ、石綿のリスク管理の焦点は静脈側に移っている。本研究は、第一に、石綿含有廃棄物の処理・再資源化過程で必要となる全ての媒体の石綿分析法(光学顕微鏡及び電子顕微鏡)の確立、石綿のモニタリングにおける精度管理手法の確立、またその態勢づくりを図る。第二に、石綿含有廃棄物の発生量の再評価を行い、次に曝露リスクの高い場と考えられる廃棄物処理施設調査による石綿飛散実態を把握し、更に石綿除去装置の除去性能や再飛散の評価によって曝露リスク低減のための石綿の適正管理手法について提示する。 K22041 磁石スクラップから希土類元素を抽出・分離する新技術の開発 岡部 徹 申請者は、レアメタルのリサイクルの重要性について一般にはほとんど認識されていなかった頃から希土類磁石合金のスクラップからネオジムを効率良く回収する新しいプロセスの開発を目的とする基礎研究を続けており、希土類合金磁石のスクラップのリサイクル技術については、種々の要素技術やノウハウを蓄積している。 K22042 溶融飛灰及び焼却飛灰の資源化と有用金属回収を可能とする化学的ゼロエミッション技術の開発 長谷川 浩 近年、廃棄物中における重金属の汚染リスクに対する社会認識が向上する一方で、多数の金属元素の資源枯渇がレアメタル問題として危惧されている。本研究では、都市ごみ焼却残査の中でも重金属含有量が多い溶融飛灰や焼却飛灰等の廃棄物を対象として、キレート剤を主成分とする洗浄液を用いて重金属含有量を環境負荷の無いレベルまで低減するとともに、キレート洗浄液中に濃縮した重金属を新規固相抽出材に通すことにより分離精製して回収し、重金属・飛灰の双方を再資源化する技術を開発する。従来、キレート剤は、飛灰中重金属の不溶化処理に利用されてきたが、本技術では重金属と水溶性錯体を形成するキレート剤を用いて逆の目的に使用する。本法は、石油等の化石燃料を極力使用しない低エネルギー低炭素技術に基づく化学的処理プロセスであり、基本原理は多くのレアメタルや他の廃棄物に対して適用可能な汎用技術への発展が期待できる。 K22044 アモサイトの無害化処理生成物の安全性に関する研究 山内 博 非飛散性アスベストには建材由来のアモサイトが含まれることから、アモサイトの焼成無害化処理生成物に関する安全性の科学的検証が求められる。これまでに、クリソタイルの焼成処理生成物(フォーステライト)の安全性の証拠は蓄積されているが(当該研究補助金:K2159)、一方、この研究で実施したアモサイト焼成無害化処理生成物の気管内投与試験において、毒性の軽減が確認されず、スケールアップした継続研究(K2112)を平成21年度から開始した。アモサイトの焼成無害化処理生成物ではアスベストと異なる結晶構造(結晶質シリカと酸化鉄)による新たな有害性が危惧されることから、本研究では、アモサイトの焼成温度と粉砕形状を十分に考慮した試験材料を用いて、細胞毒性試験と動物実験を包括的に組み合わせた安全性試験、特に、発がん性試験(中皮腫)を重点的に行い、ヒトへの生体影響評価に外挿可能な基礎資料の集積を目的とする。 K22045 干潟の生態系サービスを持続的に提供する人工干潟の創出への製鋼スラグの適用 西嶋 渉 干潟は水産資源生産の場、水質浄化の場となるなど、様々な生態系サービスを提供してきたが、沿岸域での開発等により著しく減少した。そこで、人工干潟の造成が進められているが、近年、造成に用いる海砂、川砂の採取は困難となっている。一方、大量に発生する製鋼スラグは有望な海砂代替材として有害性を含めて検討されてきたが、普及促進には天然土砂に勝るメリットを見出すことが重要である。 K22047 アジア地域における液状廃棄物の適正管理のための制約条件の類型化および代替システムの評価 藤井 滋穂 開発途上国(以下,途上国)では液状廃棄物処理システムの整備が進められているものの,途上国の地域特有の制約条件が原因で,システムが適切に機能しないなどの問題は少なくない。本研究では,アジア諸都市での現地調査に基づき,液状廃棄物処理システムにおいて,地域ごとの特色を適切に把握できる,汎用性を踏まえた系統だった制約条件(ソフト面)の類型化を実施する。同時に,途上国で適用可能な技術・システムについてのレビューを行い,技術的制約条件(ハード面)の類型化を行う。さらに,ハノイ市などを対象に重点調査を行い,液状廃棄物の性状・フローを明らかにする。以上より,処理システム整備の課題を抽出するとともに,資源循環・温暖化対策とのコベネフィットを始めとした整備の波及効果を踏まえた代替システムの実現可能性を評価する。また,途上国において現地の制約条件に基づいた効果的な衛生改善戦略を構築する手順を提案する。 K22048 廃棄物リサイクル制度展開の国際比較と化学物質管理の統合システム解析 酒井 伸一 家電製品や自動車など主要製品に対する個別リサイクルや焼却・埋立といった廃棄物管理については、フロー管理や施設の側面から整備されつつある。その一方、積み残された大きな課題として、家庭系有害廃棄物(Household Hazardous Waste, HHW)の管理問題がある。本研究では、ガス関連製品や小型電気電子機器等の家庭系有害廃棄物を、重金属類やレアメタル、難燃剤、揮発性や残留性の有機物質の視点から類型化し、健康リスクを評価し、それらの管理方策を検討する。とくに室内ダスト、リサイクル過程や廃棄過程のダストの性状把握から、その由来の家庭系製品推定と影響に関する考察を行なう。そして、社会的に適正な循環システムを構想、設計し、そのルートへの誘導方策を実証的に検討する。こうした取り組みを、世界のリサイクル廃棄物政策の動向と比較論考しながら実施していくことで、より有効なシステムを考察する。 K22051 可逆凝集を用いたステップ超高圧圧搾による難脱水性有機汚泥の高速減量化技術の開発 入谷 英司 産業廃棄物の中で最大の排出量割合の汚泥を減量化するための高効率脱水技術の開発が、現在切望されている。特に、消化汚泥や食品廃棄物汚泥等の難脱水性有機汚泥は、現在の脱水技術では脱水度と処理速度の両面で不十分である。本研究では、可逆凝集とステップ超高圧圧搾を融合させた脱水技術を提案し、その有効性を検証する。すなわち、汚泥を緩く凝集させて粗大フロックを形成させ、0.1~0.5Mpaで低圧圧搾して自由水を迅速に除去し脱水ケークを得た後、可逆凝集によりフロックを崩壊させ、さらに圧力のステップ増加により5~20MPaの超高圧下で束縛水を除去し極低含水率ケークを得て、汚泥の高速減量化を図る。本年度は、初年度のpH調整や電解質添加に加え、バイオ凝集剤、アルコール、界面活性剤等による可逆凝集も検討し、低圧圧搾での高速脱水と超高圧圧搾での含水率低減化への効果を示し、より優れた可逆凝集の手法と最適な超高圧圧搾の操作条件を見出す。 K22052 鉄鋼スラグからのリン回収新規リサイクルプロセスの開発 難波 徳郎 鉄鋼製造プロセスから発生する鉄鋼スラグについては,環境保全および資源の有効利用の観点から,これまで以上に多様な用途開拓,再資源品の高付加価値化,再資源化プロセスの低コスト化が望まれており,スラグ中のリン成分の回収技術も注目されるところである。申請者は,スラグ中に含まれる汎用ガラス成分に着目し,多孔質ガラス等の製造で一般的な相分離過程を適用し,リン成分を効率的に回収することを考えた。これまでの研究で,鉄鋼スラグや都市ゴミスラグに分相促進剤を添加してガラスを形成させ,ガラスの相分離現象と相分離後のガラス相の酸に対する溶解度差を利用して,有害かつ着色の原因となる遷移金属イオンを効率的に除去すると同時に,高純度シリカ成分の選択的抽出を実現している。本研究は,スラグ,特に脱リンスラグ中に存在するリン成分に着目し,ガラスの相分離過程におけるリンの挙動を解明し,リン回収・再資源化プロセスの開発を目指す。 K22053 製鋼スラグと腐植物質による生態系修復技術の受容性と環境リスクの総合評価 駒井 武 製鋼スラグと腐植物質の活用による生態系修復技術は、フィールドにおける実証試験によりその効果が検討されており、その実用化はバイオマスと工業副生物の有効利用の側面からも期待が大きい。この修復技術は腐植物質と溶存鉄との錯体形成による海水中の溶存鉄濃度の上昇によるものと考えられ、海域バイオマスの回復による二酸化炭素吸収効果も期待できる。本研究では、製鋼スラグと腐植物質の相互作用により、環境中で可溶性のフルボ酸鉄を新たに生成させ、海域の藻場再生を促進させるための化学的、生物学的な研究を行う。また、製鋼スラグと腐植物質の長期安定性の評価を行い、人や生態系への環境リスクに関わる基礎データを集積し、環境安全性に関わる技術的な指針を得る。 K22056 廃棄物発生抑制行動を推進する心理要因の構造化と市民協働プログラムの実践 栗栖 聖 家庭部門における実効性を伴う廃棄物発生抑制施策を提案することを最終目的とし、住民の廃棄物発生抑制行動を支配する因子構造のモデル化と、構築モデルに基づく市民協働プログラムの設計と実践を行う。第一段階では、家庭における環境配慮行動を網羅的に取り上げ、行動実施の有無とその理由を、日本全国を対象とした4万人規模のオンラインアンケートで調査する。これにより、住民の廃棄物発生抑制行動を支配する因子の抽出、及びモデル化を行う。同時に、具体的な廃棄物削減行動の効果をLCAにより算定する。第二段階では、市民協働廃棄物抑制プログラムを設計し、各地域100名程度の住民に対し実践する。プログラムでは、構築したモデルに基づいた行動マニュアルを作成し、住民の廃棄物発生抑制行動を促すと同時に、CO2や家庭からのごみ量に関する情報提供シートを作成の上適用し、その教育効果を検証する。これらの結果に基づき、有効な施策提案へと繋げる。 K22057 循環過程を含む製品ライフサイクルにおけるBFR のリスクコントロールに関する研究 滝上 英孝 製品・循環製品中の化学物質の曝露を考える上で、ヒトをはじめとする生物や環境中での蓄積性や毒性が高い臭素系難燃剤(BFR)は問題視されており、幾つかの物質がPOPs候補物質に挙げられ、使用規制を受けるようになっている。また、BFRは、不純物や変換産物によるリスクも同時に有しており、意義ある研究対象物質と考えられる。本研究では、製品中BFRのリスク管理を考える上で世界的に重要なホットトピックスとなっている3課題に集中して取り組み、併せて循環製品の安全性についても考察する。3課題は、①製品中BFRからの曝露メカニズムの詳細解明、②ホットスポットにおけるend-of-pipe制御方策とライフサイクル管理方策の検討、③代替難燃剤のリスク関連データの獲得とBFRとの得失評価から構成され、製品ライフサイクルを通じた化学物質のリスク評価と管理を適切に実施する上でのプロトタイプ研究として位置づける。 K22058 アジア地域における廃電気電子機器の処理技術の類型化と改善策の検討 吉田 綾 近年、アジア地域においては、経済成長に伴う廃棄物発生量増加や循環資源の国際貿易が盛んになっており、中でも電気電子機器廃棄物(E-waste)については、不適正なリサイクル・廃棄による環境汚染の問題が指摘されるとともに、発生・流通量の増大や環境規制・処理施設の未整備などから対策が急務となっている。本研究では、日本と韓国におけるE-waste発生・輸出状況、アジアの発展途上国の発生・リサイクル状況を調査し、信頼性のある各国内および国際的なマテリアルフローを提供する。さらに、アジア3ヶ国程度の現地において、処理・リサイクル技術レベルが異なる施設や地域を類型化し、資源回収および環境汚染の側面から定量的に評価を行い、各国の技術レベル、法制度施行、社会経済状況などの課題を踏まえた上で環境負荷低減に向けた技術・社会システム導入等の改善策を検討する。 K22059 東南アジアにおける廃棄物データベースの構築及び廃棄物処理システムの評価 大迫 政浩 (1) 都市廃棄物データ蓄積 K22060 溶融炭酸塩を用いた使用済み電子機器からのレアメタルの回収 加茂 徹 レアメタルは近い将来、資源が逼迫することが予想されており、使用済みの電子機器からレアメタルを回収することは、資源の有効利用に留まらず、戦略資源を確保する安全保障上の課題でもある。 K22063 鉛製錬工程を利用したブラウン管鉛ガラスカレットの資源化処理プロセスに関する研究 柴田 悦郎 本研究では、廃ブラウン管鉛ガラスカレットを国内の鉛製錬プロセスで高度に再資源化するための研究開発を行う。想定するプロセスとしては、家電リサイクル工場で回収したフッ化カルシウムから作製したフッ酸で鉛ガラスカレットを溶解し、鉛ガラスを溶解したケイフッ酸溶液は、鉛製錬所の鉛電解精製の電解液に導入、または、既存の電解槽を利用した鉛電解採取の電解液として鉛を回収する。さらに一部の鉛含有溶液に関しては、硫化物沈殿などにより鉛を回収し、鉛溶鉱炉への原料とする。三年計画の二年目である本年度は、このプロセスの実現に向け、前年度に引き続き鉛ガラスカレットのフッ酸溶解ならびに鉛沈殿回収の高効率プロセスフローの確立を行なう。その際、鉛沈殿の熱物性や鉛への還元性も調査する。さらに、鉛電解採取に向け、鉛含有ケイフッ酸溶液を用いた各種条件下での鉛電解採取の実験的検討も行う。 K22066 廃棄物からの乾式法による選択的インジウム回収プロセスの基礎研究 平澤 政廣 継続研究の2年目にあたり、研究概要に当初計画からの変更はない。近年の素材原料の高騰も相俟って、限られた金属資源の効率的な利用及び廃棄物からの素材再生・変換技術の開発は必須となっている。本研究では、とくにリサイクルの重要性が認識されているインジウムに着目し、廃液晶材料、歯科用廃材リサイクルスラッジなどの廃棄物からの乾式塩化法によるインジウムの回収プロセスの確率を目的とし、反応プロセスに関する基礎的研究を行う。乾式プロセスの問題のひとつとして、エネルギー消費が多いという点が挙げられる。この点を克服するため、本研究では塩化剤を適切に選択することにより、比較的低温で効率良く回収するプロセスパラメータの最適化を目指す。また、既存の湿式プロセスの前処理工程として本プロセスを適用できるようプロセスの検討を行う。 K22067 抽出分離と晶析剥離を利用したレアメタルの高度分離技術の開発 芝田 隼次 タングステンカーバイド(WC)は超硬工具材料として用いられている。WC粉にCo粉を混合し、成型後に焼成して粗製品となる。この後にダイヤモンド等による研磨加工によって所定の形状の超硬工具製品となる。本工程で生じる粉体は、通常珪藻土による濾過工程を経るので、55%のWCと6.5%のCoと不純物(SiO2, Al2O3など)を含有しており、資源量はおよそ1000トン/年である。タングステンの鉱石は灰重石または鉄マンガン重石で、含有量はWO3換算で1%程度である。提案する高度分離製錬技術はタングステン鉱石やその選鉱廃滓にも適用できる。研究内容は、超硬工具材料粉体の焙焼、酸による浸出、溶媒抽出法によるタングステンの分離、アンモニア水による晶析剥離、抽残液からのコバルトの溶媒抽出分離、シュウ酸塩としてのコバルトの晶析剥離から構成される。この研究を石油脱硫廃触媒からのMo,V,Niなどの分離・回収にも展開する。 K22068 溶融塩および合金隔膜を用いた廃棄物からの希土類金属分離・回収プロセスの開発 小西 宏和 廃棄物から希土類金属を分離・回収する手法として、溶融塩および合金隔膜を用いたプロセスを提案している。本年度も昨年度に引き続き、希土類磁石の構成元素であるDy、Ndを取り上げ、Ni-RE(REはDy、Nd)および他の遷移金属基板を用いた合金形成について検討を行う。また、不純物として他の遷移金属が共存する系での合金形成、温度の効果を検討する。作成した合金の分析結果から、希土類金属の分離に適した合金隔膜の形成や電解条件の最適化を行う。フッ化物系溶融塩においても同様に合金形成速度の温度依存性・電位依存性を明らかにする。特に、塩化物系溶融塩での結果との比較検討を通じてフッ化物・塩化物イオンが合金の高速形成に与える影響を明らかにする。最終的には、合金隔膜を用いて溶融塩中にDy、Nd、Feイオンを溶解した模擬条件で希土類金属イオンを透過させる実験を行い、希土類金属の相互分離・遷移金属との分離の可能性を実証する。 K22070 廃油脂類を原料とした動脈静脈連携型の次世代バイオディーゼル燃料製造技術の開発と評価 倉持 秀敏 動脈(生産側)静脈(廃棄物処理側)連携型のバイオ燃料製造システムとして、廃食用油を含む廃油脂類から既存の石油精製プラントで軽油類似炭化水素である次世代バイオディーゼル燃料(BDF)を製造することを目標に、本年度は様々な廃油脂類に対して原料成分と不純物成分を明らかにし、低品質な原料に対しては原料成分を回収するための前処理技術の開発を行う。次に、高品質な廃油脂類を原料として、脱硫触媒をベースに水素化脱酸素技術の開発を行う。水素化脱酸素技術の開発では、触媒の選定を行い、得られた燃料の品質を評価しつつ、最適な操作条件を見出す。両技術開発では相平衡研究から実験の考察や開発技術の高効率化を支援する。また、石油精製プラントの周辺地域における原料の賦存量を推定し、原料のフローや回収法を調査・整備するとともに、回収コストやCO2発生量に関する推定についても着手する。 K22075 バイオマス廃棄物を有効利用した使用済み小型家電製品からのレアメタル回収技術の開発 大渡 啓介 携帯電話等の使用済み小型家電製品に含まれる様々な有用金属のうち、比較的含有量の高いパラジウムの回収とクロムの除去に焦点を絞り、バイオマス廃棄物より調製される吸着剤を用いて、これらの選択的回収・除去を行う。小型家電製品の基板中の金属分は塩素ガスを吹き込んだ塩酸で浸出される。この浸出液から、最初にパラジウムに高親和性を有する官能基を固定化したバイオマス廃棄物の吸着剤によりパラジウムを選択的に回収する。官能基の固定化は従来の化学的手法のほかに、放射線グラフト法を用いた固定化を行い、高密度の固定化を試みる。次に渋柿やブドウなどの廃棄物に架橋処理、または炭化処理のみを施した吸着剤によりクロムの選択的分離・除去を試みる。モデル液を用いた吸着実験と共に、企業より提供される実液を用いた吸着実験も行う。また吸着剤についても企業に調製の一部を委託し、コストの評価も行う。 K22076 適正な国際資源循環を目指した製品中の有用物質および有害物質の管理のあり方に関する研究 堀添 浩俊 本研究は加圧熱水中に粗粉砕のバイオマスを保持して緩やかな加水分解と組織の緩和を行い、その後急激に大気開放(爆砕)することにより、組織内の熱水の強力な膨張エネルギーを利用して組織を一気に破壊するもので、その結果、・リグニンの剥離、・セルロースの結晶化度低下、・微細化により表面積増大が促進され、酵素糖化率や糖化速度の増大とエタノール発酵阻害物質の分離が可能となる。所要エネルギーは従来の水蒸気爆砕の約1/3以下のエネルギーで、原料は粗粉砕でよいので従来法より簡便で省エネ効果が大きい。また、本方法ではバイオマス濃度を高くできるのでエタノール濃縮脱水エネルギーの低減も可能となる。本研究では、各種バイオマスに対して水熱爆砕条件と組織変化や酵素糖化特性との関係を把握し、本技術の有効性を評価・検証する。 K22077 水蒸気-水添ハイブリッドガス化によるバイオマス・廃棄物からの高品位液体燃料の製造 野田 玲治 未利用バイオマス資源転換技術の導入は、生産物の利用先が確保されるかどうかにかかっている。現在、もっとも活発に開発が行われているガス化では生成ガスによるガスエンジン発電を想定しているが、発電量と需要がマッチングした利用先が限定されており、マイクログリッドなど導入障壁の高い技術の導入を待たなければならない。他方、生物学的エタノール製造プロセス技術は熱化学的変換にくらべ反応速度が圧倒的に遅く、プロセスが著しく大規模化する問題を解決できない。 K22078 完了を迎えた廃棄物処分場の安全保障のための有害物質長期動態シミュレーターの開発 島岡 隆行 廃止後の最終処分場の安全・安心を保障することを目的に、最終処分場の埋立完了とその後の跡地管理の期間に埋立廃棄物が辿る反応過程を数値計算モデルによって表現する。特に、廃棄物中のPOPsを中心とした有害化学物質及び重金属類に焦点をあて、埋立完了後の暫定・恒久的跡地利用や廃止に向けて、適切なリスク管理を行う上で必要となる有害物質の長期的挙動シミュレーターを開発する。研究は、申請者らによって既に開発済みの数値計算モデルをベースに、有害物質の長期動態解明に重要な固体マトリクス(有機物・無機物)の土壌化過程(腐植化)を組み込み、さらに有害物質の相関分配、吸着、生分解を含めて高度化する。モデルの検証は、埋立地での観測孔のモニタリング及びコアサンプルを用いた室内実験の結果によって行う。本研究により、埋立完了後の処分場が有するリスクが明確となり、最終処分場を制御するための適切な措置を講じることが可能となる。 K22082 微生物を活用した使用済家電品からのインジウム再資源化プロセスに関する研究 小西 康裕 インジウムはFPD(フラットパネル ディスプレイ)の導電性薄膜を製造するうえで必須のレアメタルであり、使用済FPD(家電品)、FPDエッチング廃液(製造工程で発生)等を処理対象として、環境負荷を最小化しつつ効率よくインジウムを回収できる要素技術を確立することは意義深いことである。本研究では、使用済FPDの溶解処理液とエッチング廃液を対象に、微生物機能を活用するインジウム回収におけるソフトパス(環境に配慮した低エネルギー型プロセス)を構築する。すなわち、溶存インジウムを溶液中から細胞内に分離・濃縮する機能をもつ微生物を見出し、この微生物機能を活用してインジウムが効率的かつ経済的に回収できる操作条件を確立することにより、実在するインジウム含有溶液の連続処理に適用できる新規回収プロセスを開発する。 K22083 日本海に面した海岸における海ごみの発生抑制と回収処理の促進に関する研究 田中 勝 国内外の海上、あるいは陸上から排出された海ごみについて、(1)排出源と漂着ごみとの位置関係について調べる。特定の河川から排出されたごみが、日本海側の何処に流れ着くのかの可能性を調べる。(2)漂着ごみについては、どのようなごみがいつ、どこにどの程度発生するのかの実態を明らかにする。(3)漁業に伴う海ごみ発生の可能性を無くし、また海ごみを減らすために河川などへの市民によるごみの投棄、散乱をなくすための啓発活動を推進する。(4)漁業由来の海ごみの持ち帰りに関する現状把握を行い、平成21年に制定された海岸漂着物処理推進法の枠組みの中で、漁民による海底ごみ、浮遊ごみの持ち帰り、それらを自治体による引き取り、漁業協同組合や市民のサポートによる一時保管、分別、回収処理等を促進する手立て(制度)を研究する。また韓国等の関係者との情報交換や国際協力によって問題解決のためのネットワーク構築に向けて始動する。 K22086 ナノ膜分離プロセスを組み込んだ熱分解ガス化-触媒改質技術の開発 川本 克也 廃棄物系バイオマスを対象とし、熱分解ガス化および低温で触媒を適用した改質工程からなるプロセスにナノサイズ膜分離工程を組み込むことによって、有用な可燃性ガスを高純度かつ高効率に回収する技術システムを開発する。 K22087 ヒ素の無毒化法とレアメタルのリサイクル技術の開発 中村 浩一郎 我々は、発ガン性、急性・慢性毒性物質である無機ヒ素を無毒化処理する簡易的な合成技術を開発した(中村等、Chem. Commun.,2008年; J. Organomet Chem., 2009)。この新たなヒ素廃棄技術は注目され、日本学術会議による「提言」として報告された(2008年)。III-V族化合物半導体(GaAs他)は我が国が世界供給の中核をなすが、希少金属であるガリウム(Ga)、インジウム(In)の安定供給に困窮している。本研究の初年度は、ヒ素の無毒化処理技術をGaAs半導体からGaの安全で効率的な回収に対して適応し、希少金属の回収に対して有効な支援技術となることを検証した。2年目は、ヒ素の無毒化処理技術の収率の向上、プロセス効率化とコストダウン、そして、希少金属の安全な回収と再利用技術の効率改善を行い、併せてヒ素の無毒化反応で生成される中間体と最終生成物の安全性試験を実施する。 K22088 バイオマス廃棄物を利用した希少元素含有スクラップからのレアメタルの回収および適正処理技術の開発 馬場 由成 廃小型電子機器や廃触媒には有価なレアメタルが数多く使われており,これらを含むスクラップからの資源回収・リサイクル技術の開発は,ゼロエミッションの観点からも極めて重要であり,技術立国日本の持ち味を活かす道である。 K22089 貴金属のリサイクル 前田 正史 本研究では、貴金属のリサイクルに伴う環境負荷を低減するために、工業製品スクラップ中の貴金属を容易に分離するための手法を探索する。とくに、貴金属を卑金属との合金としてから、その合金の物理化学的性質を利用して貴金属を回収する方法に焦点を当てる。 K22090 使用済み廃棄物等の炭化処理によるレアメタルおよび炭素の資源回収 藤田 豊久 使用済み製品等、廃棄物からレアメタルを分離回収するための一手段として、炭化処理を導入する。廃棄物中の有機成分(主にプラスチック)を炭化処理によってレアメタル成分と単体分離し、後の分離工程で高濃度のレアメタルを得る。レアメタルの単体分離性を高めるため、炭化処理条件の調査を行う。分離工程では、低エネルギーでの処理を目指し、浮選、比重選別、磁力選別、誘電選別等の湿式選別処理を中心に検討する。分離した炭素分は、石炭代替の燃料源としてリサイクルし、廃棄物の発生量およびCO2排出量の削減に貢献する。分離したレアメタル粉は素材生成に用いる。 K22091 有価廃棄物からのレアメタルの統合的抽出分離回収システムの開発 吉塚 和治 本研究事業では、リチウム二次電池の正極剤や負極剤の微粉末、自動車触媒を回収・分解選別された微粉末からレアメタルを効率良く抽出するプロセスと抽出液中からレアメタルを選択的に分離回収するプロセス、ならびにこれらプロセスを統合したシステムを開発する。
本年度は3年計画の2年目として、レアメタルの高効率な抽出プロセスと選択的分離回収プロセスの開発を行う。具体的研究内容は以下の2点である。 K22092 レアメタル再資源化総合システム評価技術開発 中村 崇 本研究では、各種廃棄物からのレアメタル再資源化ルートの社会システム的問題点、ならびに技術課題を明らかにし、それぞれの廃棄物のレアメタル再資源化のボトルネックを明らかにする。昨年度の小型家電・電子機器によるレアメタル廃棄量の把握に引き続き、今年度は廃自動車によるレアメタル廃棄量を調査する。情報収集は、既存の文献資料を中心に、ヒアリングなども行うが、最新鋭情報の効率的収集法として関連のシンポジウムを開催し、多くの研究者から生のデータを公表してもらう。評価の一部として、CO2発生量を基にしたLCI(Life Cycle Impact)データを使用するので、レアメタル再資源化におけるLCIの評価を、廃棄物産業連関表(WIO)を用いた手法で行う。その手法の確立ならびにそのためのデータの採取を行う。 K22096 常温処理済アスベストの安全・安定化に関する研究 田端 正明 飛灰を原料として製造した多硫化カルシウム(F型CaS)溶液をアスベスト含有材料に常温で吹き付けると、アスベストは分解した。処理済アスベストを形状顕微鏡や位相・分散、偏光顕微鏡によって観測するほか、シンクロトロン光施設による粉末X線回折やXANES測定によってアスベストの崩壊過程を解析し、常温アスベスト分解の反応機構を明らかにする。更に、複数の異なる種類の飛灰を原料とした多硫化カルシウム溶液の製造と数種類のアスベスを含む複合建材を対象にして常温分解技術を確立する。処理済アスベスト(改質物(エコパウダー))にあっては、長期間自然環境下に暴露した状態における安定性、化学変化、重金属の溶出など環境に及ぼす影響について評価を行う。また、処理済アスベストの再利用法について土木工学の立場から検討し、軟弱地盤との混合による地盤硬化剤、路盤剤、特別廃棄物管理区域の覆土剤などの再資源化方法を確立する。 K22099 常圧過熱水蒸気によるコンプレックス材料の分解メカニズムと回収物の再利用―低コストかつ高回収率のFRP リサイクル法と装置の開発 鮑 力民 FRPのようなコンプレックス材料は、強化繊維と樹脂を組み合わせて作られたもので、その比弾性と比強度が金属材料に比べて極めて大きいことから広い分野で用いられており、使用済みFRP製品は年々増加しているのが現状である。一方、FRPは熱硬化性樹脂が中心のため再成形できず、無機物比率が高いため自己燃焼せず、リサイクルが非常に困難であるため、回収物の実用価値がリサイクルコストより大きい研究成果は見当たらない。 K22101 廃石膏ボードのリサイクル技術の総合化に関する研究 佐藤 研一 2007年度の廃石膏ボード排出量は合計152万トン、2013年度のそれを合計199万トンと推計されている。この内解体系の廃石膏ボード排出量は,約88%を占めている。これら廃石膏ボードは、管理型最終処分場に処分するよう定められている。しかしながら、不適正処理が目立ち硫化水素ガスや黒水の発生等が報じられており、廃石膏ボードの再資源化は循環型社会の形成では緊急の課題である。そこで、本研究では廃石膏ボード(二水石膏)を焼成して半水石膏を製造し、これを地盤改良材料(中性固化材)として有効利用する地盤改良技術開発を行う。また、半水石膏からは土壌環境基準以上の有害物質の溶出および土壌環境中での硫化水素の発生が懸念される.そこで、半水石膏に含まれる土壌環境影響物質の解析・評価およびその対策技術の研究を行う。さらに、半水石膏の品質管理の観点から、廃石膏ボードの分別解体手法を検討・実施・評価する。 |
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環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課 TEL: 03-5501-3154 FAX: 03-3593-8263 E-mail: hairi-haitai@env.go.jp |
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