![]() 「平成20年度廃棄物処理等科学研究費補助金」に係る交付対象研究等の決定について
環境省では、廃棄物に係る諸問題の解決及び循環型社会形成に資する研究・技術開発を推進する目的として、競争的資金である廃棄物処理等科学研究費補助金制度を設けています。 1.交付決定となった研究課題 2.交付決定となった推進事業
3.廃棄物処理対策研究審査委員(50音順)
4.廃棄物処理等科学研究企画委員(50音順)
5.研究課題の概要 K2001.細見 正明:プラスチック類の破砕・圧縮工程(メカノケミカル反応)に伴う有害化学物質の挙動に関する研究 プラスチック類のリサイクル施設では、圧縮及び破砕工程などから多数の未知物質が排出される恐れがあると住民や一部の科学者から指摘されている。プラスチック類の圧縮及び破砕工程では一種の機械化学的反応であるメカノケミカル反応が起こっている可能性が高い。そこで、本研究では、圧縮・破砕・粉砕効率が高いとされている密閉式遊星ボールミルを用いて、各種プラスチック類のメカノケミカル反応に伴って生じるガス状物質ならびに固形の粉砕物に含まれている様々な化学物質を同定・定量することにより、有害な化学物質の挙動を明らかにする。一方、メカノケミカル反応によりPCBが脱塩素分解されることが実証され、PCBの分解処理技術として認証されている。そこで、臭素系難燃剤が含まれているプラスチック類に着目して、メカノケミカル反応における臭素系ダイオキシン類の挙動も明らかにする。 K2002.武田 信生:焼却灰及びばいじんにおけるレアメタルの賦存量とその回収に関する研究 一般廃棄物処理施設で発生する焼却灰及びばいじん(溶融設備からのばいじんを含む。以下、「焼却灰等」という。)を対象として、我が国の産業にとって欠くことにできない重要な原材料であり、かつ世界的に需要が著しく伸びているレアメタル(稀少金属)の賦存量について、濃度実測及び既存資料により推定する。この推定結果に、レアメタルの国際的需給動向、取引価格、回収技術、再資源化状況等の情報を合わせて考察し、レアメタルについてどのような状況下で焼却灰等が資源的価値を有するかを明らかにするとともに、焼却灰等における存在形態、焼却灰における粒度別存在量等のデータを基に効果的で地球環境調和型のレアメタル回収方法を検討する。 K2003.袋布 昌幹:不純物評価・制御技術とユビキタス電子マニフェストシステムを融合した,廃石膏ボード・建設汚泥の安心・安全リサイクルシステムの構築 近年,廃石膏ボードから製造された固化材を用いて,建設汚泥を改良土としてリサイクルするビジネスが急速に拡大している。しかし,廃石膏ボードの一部にはフッ素化合物等の不純物が含まれており,そのまま再生土に用いると土壌をブラウンフィールド化する可能性が危惧される。本研究では,リサイクル率の向上が求められている廃石膏ボード,建設汚泥の安心・安全なリサイクルの構築をめざし,(1)廃石膏ボード中に含まれる不純物のオンサイト分析装置の試作,(2)分析結果および対策技術を電子マニフェストに付与して提供できるユビキタス端末を用いた物流システムの構築,(3)富山県をフィールドとした実証試験,(4)アウトリーチ活動による普及・啓蒙を行う。本研究を通して,「富山発の石膏リサイクルワールド」の構築を目指すことが本研究の最終目標である。 K2004.泉澤 秀一:低濃度PCB汚染物の焼却処理に関する研究 本研究は、平成14年に存在が判明し、現在処理の見通しが立っていない低濃度PCB汚染物(PCBを使用していないとされるトランス等のうち、低濃度のPCBに汚染された絶縁油を含むもの)の処理について、現在稼働している産業廃棄物焼却施設を用い、焼却処理が及ぼす環境への影響等を調査し、安全かつ確実な処理条件を明らかにするとともに、今後行われるべきリスク評価に必要な基礎的知見を集積することにより、我が国における喫緊の課題である低濃度PCB汚染物の処理の早期実現を図るものである。 K2005.内藤 牧男:難処理複合廃材のワンポットプロセスによる循環再生利用に関するモデル的研究 廃材をモデル材料として選定し、これを高機能建材用原料へと変換し、かつ再生利用に要する費用の大幅削減を可能とするワンポットプロセスの確立を目指す。FRP廃材中のガラス繊維とマトリックスとの界面に集中的に機械的作用を加えてガラス繊維を分離した直後に、繊維表面に微粒子を多孔質膜状に均質複合化する連続流通式プロセスを開発する。再生された複合原料を成形することにより、軽量・高強度で断熱性等に優れた繊維強化多孔質高機能建材を開発する。これにより、これまで再生利用が困難とされてきた難処理複合廃材の再生利用を可能とし、21世紀の循環型社会の構築に資するとともに、開発した高機能建材により省エネルギー住宅等の実現に貢献する。 K2006.高岡 昌輝:循環型社会における回収水銀の長期安全管理に関する研究 国際的な使用低減政策の流れのもとで、水銀は回収後の利用が困難となりつつある有害金属であり、最終保管の形態を考えておくことが必要である。保管形態のあり方に関する基礎研究として、想定される水銀の形態(原子状水銀、合金(アマルガム)、水銀化合物(硫化物、酸化物等))及びその保管形態(容器素材等)について、安定な形態、想定しうる環境排出の極小化、保管期間の環境曝露の耐久性等の実験的検討、更に上記検討をふまえ水銀含有廃棄物からの回収技術の変更・改良の可能性を検討する。今後の回収量の推定に必要な情報整備として、不純物として水銀を含有する廃棄物・原燃料の同定等をふまえ水銀のサブスタンスフローを整備する。また使用製品への増加が見込まれる製品群(例えばバックライト)の回収体制の検討等を行い、全体として有害物質管理施策への提言を念頭においた基礎資料とする。 K2007.浅利 美鈴:3Rに関する環境教育プログラムの実証と社会行動モデルの開発 ごみ減量を始め、循環型社会構築や廃棄物管理、そして脱気候変動に向けた取り組みには、家庭や地域、企業等における個々人の理解と行動が欠かせない。しかし「ごみ」と言うと、生活に密着しているが故に情緒的に捉えられがちで、なかなか客観・専門的な知見が広がらず、3R活動や循環型社会構築に向けたムーブメントに限界をもたらしている可能性があると考えられる。そこで、3R関連情報(循環型社会構築や廃棄物管理、そして脱気候変動に関する知識・知恵)をまとめ、専門分野と生活・現場をつなぐような知識の体系化をはかり、3Rに関する環境教育プログラムのモデル開発研究を行う。環境教育プログラムについては、検定というスタイルを念頭におき、まず、プロトタイプ試行版の作成と実施、その検証を行う。その後、検定対象者の社会行動モデルに関する社会ニーズ調査や専門家パネル開催等により、検定プログラムと社会行動モデルの検証・進化を目指す。 K2008.細井 由彦:人口減少を踏まえた生活排水処理施設整備手法の評価システムの構築 我が国の生活排水処理システムは,流域下水道,公共下水道,農業集落排水施設,浄化槽,コミュニティ・プラントなどから構成され,排水の種類や施設の規模及び根拠法令等によって複雑な体系になっている。そのなかで集合処理としての下水道と個別処理としての浄化槽については,整備対象地区の人口密度及び住宅分布,将来人口予測などの地域特性を十分に反映した効率的な整備が必ずしも実施されているとは言い難い状況にある。地方自治体の行財政状況からみても生活排水処理事業がその負担の要因となっている例も多数認められ,人口規模の小さい自治体ほど新たな生活排水処理施設整備計画の見直しが求められている。 K2009.徳永 朋祥:不完全な半透膜としての挙動を考慮した最終処分場粘土遮水層における有害化学物質移行挙動の定量化 廃棄物最終処分場におけるベントナイト遮水層の合理的設計に資することを目的として、不完全な半透膜としての挙動を含めたベントナイト中の化学物質の移行挙動を理論的に評価するとともに、室内実験によって検証し、定量的に取り扱える化学物質移行モデルを構築する。まず、ベントナイトの主要構成鉱物であるモンモリロナイトの結晶表面に発達する電気二重層の状態と、電解質の濃度や電荷との関係に着目し、不完全な半透膜としての挙動を含めたベントナイト中の物質移行現象を定式化し、得られた構成方程式に基づいて数値解析プログラムを作成する。また、ベントナイト中の物質移行挙動を計測するための室内実験装置を作成し、塩化ナトリウムなどの電解質の物質移行実験を実施するとともに、数値解析プログラムによる数値シミュレーション結果との比較検討を行い、定式化の妥当性を示す。 K2010.戸田 龍樹:単位プロセスの多機能化による含塩性有機性固形廃棄物の低コスト・低環境負荷処理プロセスの確立 本研究プロジェクトは、世界各地の沿岸域から間欠的かつ大量に排出されているムラサキイガイなどの海産汚損生物の低コスト、低エネルギー処理を実現する新たな処理プロセスの開発を目的としている。プロジェクト全体では、実験室における小規模プロセスにおける研究・解析から、プロトプラントの設計・製作までを含んでいる。 K2011.平山 修久:災害廃棄物フローを考慮した大規模水害時における水害廃棄物処理計画策定手法の開発 (1)研究目的と期待される成果 K2013.市浦 英明:紙スラッジに含まれるパルプ成分と無機成分の分離-低環境負荷を特徴とするリサイクル技術の開発- 紙パルプ産業から排出される製紙スラッジには、パルプ成分の有機成分とカルシウム化合物などの無機成分が混合した状態で含まれている。現在、これら製紙スラッジは、焼却によりパルプ成分が除去され、残った無機物質は、埋め立て処分もしくは再生填料としての利用が試みられている。本研究では、従来分離が不可能であった製紙スラッジ中のパルプ成分と無機成分をイオン液体により分離することを試みる。イオン液体は安定、難燃性、蒸気圧ゼロ、且つ回収でき再使用できるという特徴を有することからグリーンソルベントとして注目されている溶媒である。本年度は、主にこのイオン液体を用いて製紙スラッジに含まれるパルプ成分を溶解することを試み、パルプ成分と無機成分の分離を図る。この技術の確立により、製紙スラッジ中の全成分が再生利用することが可能になり、紙パルプ産業における循環型社会形成の推進につながることが期待される。 K2014.池田 行宏:訪問看護における在宅医療廃棄物の適正処理 訪問看護ステーションは、介護保険や健康保険に基づく訪問看護事業を行っており在宅医療を支援する重要機関である。訪問看護に伴い生じる在宅医療廃棄物は、法律上一般廃棄物に該当することから、市町村が処理責任を負っているが、現実は多くの市町村が在宅医療廃棄物のうち注射針を受け入れていないほか、それ以外の通常感染性を有さないと考えられるビニールバッグ類等についても、感染性の可能性が皆無ではない等の理由により受け入れられていないケースが見受けられる。そのためにこの研究では在宅医療廃棄物の適正処理方策を全国規模で提案することを最終目標におき、実際在宅医療に携わる訪問看護ステーションを対象とし、訪問看護における感染性廃棄物の処理・訪問看護中の取り扱い等問題となる点を抽出し、在宅医療廃棄物を適正に処理するための方策を提案しようとするものである。 K2015.寺園 淳:有害物質管理・災害防止・資源回収の観点からの金属スクラップの発生・輸出状況の把握と適正管理方策 近年大量に中国などへ輸出されている鉄スクラップは、鉛などの有害物質や使用済み家電などの混入により相手国から貨物が返送された事例もあるほか、近年は貨物船での火災事故も生じるなど、環境と災害上の問題が懸念されている。このような鉄スクラップについて、どのような有害物質や混合物が混入しているか、火災の発生・拡大の原因は何であるか、などの知見が非常に不足している。このため、発生源・分類・組成調査や火災実験などを通じて、現在輸出されている金属スクラップの実態と火災発生原因を解明し、適正管理方策を提示することを目的とする。そのために、金属スクラップの組成調査・物質フロー分析、火災実験による発生原因の解明、ならびに管理制度とその実施状況に関する法的検討を行い、有害物質管理・防災・資源回収の観点から必要な適正管理方策を提示する。 K2016.森 秀行:適正な国際資源循環を目指した製品中の有用物質および有害物質の管理のあり方に関する研究 「製品中の有用物質及び有害物質に関する情報」は、国際資源循環の促進、製品政策への産業界の対応支援、ならびに効率的な資源利用において、必要不可欠な管理情報である。一方で、廃棄物政策において重要な役割を果たしているEPRの概念にはこうした情報伝達について十分な考慮が払われていない。製品ライフサイクルの視点から廃棄物政策を考えていくうえで、「製品環境情報伝達メカニズム」をどのようにEPRの概念に組み込んでいくかという視点が必要となる。本研究はこうしたメカニズムを明らかにするとともに、それを効果的に運用するための新たな国際的なルールを検討する。 K2017.河田 悦和:ハロモナス菌を用いたBDF廃グリセロール利活用によるバイオプラスチックPHA生産 カーボンニュートラルな石油代替燃料として期待されるバイオディーゼルBDFは、主に油脂を分解して製造され、副生する廃グリセロールの増大が問題となっている。そこで、廃グリセロールの処理、活用を目指し、廃グリセロールに相当する性状の高塩濃度、高pHで生育する菌体をスクリーニングしたところ、乾燥菌体あたり80%以上のバイオプラスチック・ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を蓄積し、45℃程度まで増殖する菌体Halomonas sp. KM-1株を見いだした。ポリ乳酸とは異なる物性、生分解特性を持ったPHAを低コストに製造するために、酵母エキスなどを培養に要しない本菌株を用い、廃グリセロールの処理とPHAの生産を高効率に行うため、継続したスクリーニングや変異導入、培養条件維持のための菌相の遺伝子的なモニタリング、培養液組成の逐次迅速分析等を行い、PHA生産の最適化を目指した研究を実施する。 K2018.山内 正仁:焼酎粕・デンプン粕の機能性食品化を起点とする経済・物質同時循環システムの構築 焼酎粕はキノコ栽培に適した有機酸やアミノ酸、ミネラル等を多く含有する。一方、デンプン粕は繊維質に富み保水性が高く、おが屑の代替として利用可能であると考えられる。本研究では、鹿児島県内から排出されるこれらの食品廃棄物をキノコ栽培用の培地材料として利用し、機能性食品(キノコ)を製造することによる物質・経済合致循環モデルを構築することを最終目的としている。本年度はまず、焼酎粕、デンプン粕の配合比を変化させたキノコ培地を作製し、子実体(キノコ)を発生させることが可能か検討する。次に、従来培地で得られた子実体と成分比較を行い、本培地材料によるキノコの高機能性化を検討する。また、使用済み培地に含まれる菌糸代謝産物等を分析し、諸特性を明らかにする。さらに廃培地の高温高速乳酸発酵飼料製造技術の実現に向けて、焼酎粕(原液)と焼酎粕を基質とした高温嫌気性反応器内から高温乳酸菌の分離・培養を試みる。 K2019.八木 美雄:日本の3R制度・技術・経験の変遷に関する研究 21世紀は循環型社会構築の世紀といわれており、3Rを通じた循環型社会造りを推進する必要がある。一方、経済活動のグローバル化を背景として、特に経済成長の著しいアジア圏においては「3Rを通じた持続可能な資源循環」を推進する必要があり、アジアのリーダーである日本の3R制度・技術などの貴重な経験の積極的な情報発信が求められている。 K2020.池田 伸一:赤外線を用いた安全なアスベスト廃棄物溶融処理に関する研究 緊急の課題となっている、アスベスト含有廃棄物の処理について、本申請研究ではこれまで試みられていなかった赤外線集光による加熱方法を用いて1600℃以上の高温環境で完全溶融することによって、安全でエネルギー効率の高いアスベスト処理方法と装置を開発する。現場でのその場溶融処理を実現することを目指すテーマAと、大量の非飛散性アスベスト処理に関する赤外線溶融炉設計を行うテーマBを設定し、1年目である本年は、その場溶融処理できる装置を試作するために必要な、赤外線反射鏡設計基盤技術を確立する。また、スレート材などの非飛散性廃棄物溶融処理炉の基本的な設計原理を提案するために必要なデータを蓄積する。 K2021.大迫 政浩:循環型社会ビジョン実現に向けた技術システムの評価モデル構築と資源効率・環境効率の予測評価 近未来の循環型社会ビジョンにおいて、家畜糞尿、下水汚泥、食品廃棄物等のバイオマスや廃プラ等の含炭素資源、各種産業系スラグ、石炭灰、建設発生土等の土石系の循環資源、電子・電気製品等に含まれるベースメタルやレアメタル等の金属系の循環資源を対象に、モノの特性に応じた空間スケール(循環圏)の中で実現可能な具体的な循環技術システムを設計する。また、地域自治体や業界等のステークホルダーを巻き込みながら、実際のフィールドでのシステムづくりの事例や技術開発の状況等を調査することによって、投入-産出(I-O)型のシステム評価モデルとしてプロセス関数を定義するための物質フローやコスト等の統合的な情報基盤を整備する。それによってシステム評価モデルを構築し、資源効率(脱物質化)や環境効率(脱温暖化)等の観点からシステム実現の効果を予測評価し、近未来ビジョンへの転換の意義を定量的に明らかにする。 K2022.山川 肇:リデュース・リユースの分析・評価手法の体系化とその適用研究 本研究は、リデュース・リユース(2R)について、その分析・評価手法の体系化をはかるとともに、これを応用してリデュース・リユースを評価する研究で、以下の3つのサブテーマに分かれている。 K2023.藤田 壮:有機再生廃棄物を対象とする多層複合型資源循環圏の設計と評価システムの構築 循環資源の発生と、その受け入れ施設である既存動脈産業を含む循環産業施設やその集合体について、東京・神奈川・千葉を中心とする首都地域においてその分布的特性を調査し、データベースを構築する作業に着手する。対象は一般・産業両廃棄物の、厨芥を含むバイオマス及びプラスチックなどの有機系資源を中心とする。廃棄物の特性に合った循環圏を想定し、圏域の一部については調査により求められた発生・受け入れ双方の分布や制約条件(地価や交通網など)との比較を行って、新規施設や拠点の将来の立地のあり方について、基礎的検討を行う。この際必要となる循環技術の評価には、従来の相対的評価によるものではなく、絶対値としても資源の効果的な活用方法であるかを判断できる手法を検討する。また、広域移動も含めて適正規模の資源循環を促進するために、各ステークホルダーにそれぞれメリットがある制度・システムとなるための基礎的な枠組みを検討する。 K2024.森田 昌敏:木質系バイオエタノールのための環境低負荷型生産技術の開発 廃棄物に係わる木質系原料を活用して、バイオエタノール及びバイオディーゼル油を生産する環境低負荷型の新たな技術の開発を行なう。バイオマス資源の有効活用の点から、新たな3つの要素技術即ち[1]リグニンを亜臨界アルコール・水により抽出し、抽出物を水素添加・リフォーミングにより油化し、バイオディーゼル油に変換する技術、[2]抽出後得られるセルロースをセルラーゼ/キシラナーゼで加水分解した後、6単糖および5単糖ともに耐熱酵母でエタノールに誘導するフラッシュ連続発酵生産技術、[3]生成物を逐次分離して、生成物阻害を防ぎ発酵生産効率を高め、また最終のエタノールを低コストで分離・脱水する技術を開発する。更にこれらの各プロセスをシステムとして最適化を図ると共に、廃棄物が発生しないゼロエミッションシステムとして練り上げ、実験室プラントとして構築する。 K2025.二階堂 満:木質系バイオエタノール製造のためのコンバージミル連続粉砕技術開発 従来、木質バイオマスからの糖化・発酵によるバイオエタノール製造では、硫酸を用いた酸加水分解法が主流であったが、糖化収率や環境負荷の問題があり、最近は、硫酸を用いない酵素糖化・発酵によるエタノール製造に注目が集まっている。しかし、木質組織は非常に強固であるため、効率よく酵素糖化を行うためには前処理技術開発が極めて重要である。我々は、コンバージミルという新型粉砕機を開発し、木質原料を短時間メカノケミカル粉砕(機械的粉砕)するだけで、酵素糖化特性を大幅に向上させることに成功した。本年度は、小型バッチ式コンバージミルを使用し、杉大鋸屑を原料した場合の最適なコンバージミル粉砕条件を見出す。同時に、杉大鋸屑を粉砕物とした場合の酵素反応性を調べ、最適な酵素の選択と最適酵素糖化条件を見出す。平行して、粉砕機メーカー(アーステクニカ)と共同で連続粉砕対応可能なコンバージミル本体の設計・開発を行う。 K2026.後藤 雅宏:環境調和型溶媒イオン液体を用いた廃家電品からのレアメタル再資源化技術の開発 金属資源の安定確保および廃棄物の低減化のためには、使用済み製品からの金属のリサイクル技術の確立が必須である。溶媒抽出法は、最も有望な金属の分離回収法であるが、これを実用化するには分離効率をさらに向上させ、また環境に配慮した分離プロセスの構築が必要となる。本研究では、不揮発性の溶融塩であるイオン液体を溶媒に用いた新しい溶媒抽出システムを開発する。イオン液体の分子構造を設計し、新たに合成することで、優れた物性の抽出溶媒を開発し、これにレアメタルに選択性の高い抽出剤を組み合わせ、高性能のイオン液体抽出系を創成する。本年度は、希土類をモデルとした昨年度の基礎データをもとに、実廃液への応用を検討し、イオン液体を組み込んだプロセスの設計を行うとともに、本法の性能評価と回収による経済効果を明らかにする。これらの成果をフィードバックしてさらに高性能のイオン液体の開発を行い、対象製品、金属を拡大する。 K2027.有薗 幸司:一斉化学分析および分子生物学的手法を用いた最終処分場由来有害物質の包括的リスク評価 当該研究では、未知化学物質や非意図的生成物などの複合した総体として、最終処分場由来の土壌や浸出水を対象に、(1)化学物質約700種類の一斉スクリーニング、(2)DNAマイクロアレイによる発現遺伝子変動の解析と潜在的毒性影響評価を行い、優先的にリスク評価の必要な有害物質を特定し、それらのインプットから予測される毒性影響の可能性を検知するためのデータベースを構築する。さらに、それら有害物質を対象とした(3)生物学的測定法を用いた簡易・オンサイトモニタリング手法の開発を行い、最終処分場における包括的な化学物質のリスク管理・リスクコミニケーションを行う。これら有害物質による環境負荷の増低減をより定量的に住民に情報提供し、廃棄物に対する住民の不安感を払拭することで、予防原則に基づいた安心・安全な循環型社会形成の推進を目指す。 K2028.川本 克也:プラスチック含有廃棄物の処理およびリサイクル過程における有害物質の生成特性解析と効率的対策手法の開発 都市ごみ、廃プラスチック類の中間処理・リサイクル時に排出可能性のある有機窒素化合物等について、実態把握と生成特性の解明を行い、さらに排出低減技術を開発する。焼却温度の高温化に伴うニトロ化多環芳香族化合物(ニトロPAHs)の生成増大について検証するとともに、その排出実態、および900℃程度までの高温域での基礎的な生成特性を解明する。次に、廃プラスチック類のリサイクル工程において100~500℃程度までの幅広い温度域から排出される樹脂原料、添加物質および二次生成物質の情報が十分でないことから、加熱試験等の要素実験や実施設の調査等によって、生成・排出特性の解明とともに実態把握を行う。また、これらの測定を通じて有機窒素化合物類の分析手法を確立する。さらに、ガス中での高効率な分解触媒系を探索・開発することにより排出低減技術を確立する。以上により、資源循環過程での化学物質管理の向上に寄与する。 K2029.吉岡 敏明:塩素系プラスチック製品の置換型脱塩素によるアップグレードリサイクルと有価金属回収 廃プラスチックの中でもポリ塩化ビニル(PVC)等の塩素系プラスチック処理の実情は,一部を除いてほとんどがリサイクルよりも,むしろ処理という観点が先行している。これには塩素による環境上の問題と再生製品の品質保証に課題があり,新しい脱塩素処理法の開発と脱塩素処理PVCのアップグレード化による再利用が不可欠である。本研究では,これまで高炉還元や油化等,様々な分野で採用されている乾式熱分解による脱塩素ではなく,湿式法による脱塩素法の開発を行なう。つまり,乾式法とは異なる脱塩素反応の特徴(乾式法ではラジカルによる脱離反応,湿式法ではイオンによる置換反応)を活かして,燃焼によるエネルギー回収に限定される炭素残渣を発生させることなく,機能性を付与した脱塩素PVCとして再利用することを検討する。また,家電,自動車等から排出される電線,ワイヤーハーネス等についても,PVCを脱塩素し機能化させると同時に有価金属を回収することも検討する。 K2030.小野田 弘士:一般廃棄物処理システムにおける環境負荷・経済性の実効性評価手法に関する研究 一般廃棄物処理システムの環境負荷・経済性をLCA(Life Cycle Assessment)、LCC(Life Cycle Assessment)の観点から包括的に評価する実効性評価ツールとして「BAS for WM (Best Available System for Waste Management)」評価手法(以下、「BAS評価手法」という)の開発および高度化を図ることが目的である。 K2031.橋本 征二:物質ストック勘定体系の構築とその適用による廃棄物・資源管理戦略研究 大量生産・消費・廃棄に象徴されるフロー型社会に対するものとしてストック型社会が提示されているが、既存の物質ストックを有効に活用するためには、具体的にどのような物質がどの程度社会に蓄積され、活用され、将来にわたって廃棄物として発生し、また、資源としての再活用が可能で、もしくは有害性を有するのかを明らかにすることが必要である。このようなことから、本研究では、物質フローの勘定体系と整合した物質ストックの勘定体系を構築してこれを適用し、いくつかの製品や素材を対象として近未来のシナリオ分析を行うことで、ストックに関わる廃棄物・資源管理戦略について検討する。フローとストックを整合的に取り扱う勘定体系の構築には学術的な貢献が期待できる。また、その適用から得られる物質ストックに関する情報は、ストック型社会に向けた廃棄物・資源管理戦略構築の基礎情報となることから、社会的な貢献が期待できる。 K2032.永田 勝也:廃棄物処理・リサイクル施設における安全・安心対応策に関する研究 廃棄物処理・リサイクル関連施設において、事故やトラブル等が多発している。そこで、本研究では、事故・トラブル・ヒヤリハット(ATH)事例DBを原点に、定量的な安全設計評価手法や操業診断手法を開発し、事故等の未然防止と発生した場合の被害拡大を回避可能な安全・安心な静脈システムの構築を目指す。 K2033.古市 徹:不適正な最終処分システムの環境再生のための社会・技術システムの開発 物流管理の不徹底により生じた大規模不法投棄が問題となっている。このような不適正最終処分システム(物流管理の不徹底により生じる不法投棄現場や不適正最終処分場)を適正化し,環境再生(跡地利用などの時空間活用)を図っていくための社会(法律・制度,経済,教育,住民参加など)・技術(調査・解析・修復技術など)システムが求められている。昨年度は,不法投棄現場等の「場」の議論を中心に展開してきたが,今年度からはさらに「物流管理」をも視野に入れ,研究展開を図ることにした.本研究では,不適正最終処分システムを環境再生するために,「適正な物流管理」による未然防止対策を提案し,不法投棄現場等の「場」の汚染レベルの調査・評価を行い,そしてリスクコミュニケーションを考慮し,リスクに応じた低コストの多様な修復・再生対策(適正な場の設計)を提案することができる社会・技術システムの開発を行う。 K2034.古川 憲治:バイオガス化プラント排水中の高濃度アンモニアのMAP-ANAMMOXハイブリッド処理技術の開発 高濃度アンモニア排液に熱処理MAPを接触させてアンモニアを吸収・除去させ、そのMAPを風乾後105℃で放散させ、放散したNH3を炭酸ガス水溶液に吸収させる。その吸収液に含有されるNH4-Nを、部分亜硝酸化とANAMMOXによって生物学的に高速除去させるMAP-ANAMMOXハイブリッド技術を開発する。MAP処理ではNH3を回収してもその利用先がなく、ANAMMOXは有機物によって阻害を受けることから実用化が進まなかったが、この2つの技術をハイブリッド的に繋ぐことにより両者の能力を最大限に高めることが可能となる。本研究では、実用化に向け実際の排液を用いたMAPの劣化に対する技術的課題を解決する。続く揺動床によるNH4-Nの部分亜硝酸化処理で許容負荷量の決定を行う。ANAMMOX処理は、不織布を活用する上向流カラムリアクタで行うが、このANAMMOXリアクタのスケールアップに関する検討を行う。 K2035.平井 康宏:京都地域におけるごみ有料化施策による資源循環変化の3R行動モデル解析 本研究では、政令市3番目のごみ有料化自治体である京都市を含む京都地域を対象に、有料化施策の効果を解析する。一次データ取得のため、ごみ組成調査や住民アンケート調査を行い、既存資料とあわせ、1)自治体のごみ施策要因、2)住民の意識・行動、3)資源循環・ごみ流れの変化、の情報を整備する。また、これらの関係を、1)と2)をつなぐ「ごみ分別行動の規定因モデル」、2)と3)をつなぐ「減量効果積み上げモデル」からなる3R行動モデルにより解析し、以下の成果を得ることを目指す。 K2036.山川 肇:家庭ごみ有料化とEPR政策による発生抑制効果に関する研究~容器包装に注目して 循環型社会形成にとって発生抑制の促進は非常に重要な課題であるが、未だ十分進んでいるとは言いがたい。本研究では、これまで発生抑制促進策として注目される有料化とEPR政策について、主として容器包装の有料化の影響と、そのリサイクル費用の商品価格への上乗せの影響について検討してきた。本年は、有料化のリバウンド効果について明らかにすることを目的とする。 K2037.稲森 悠平:高度処理浄化槽におけるリン除去・回収・資源化技術の開発とシステム評価 環境低負荷・資源循環型社会を構築する上で、リンを100%海外依存する我が国では、浄化槽法改正で指摘されたリン除去・回収資源化技術の開発と導入は最大の課題である。このことから本研究事業では、「高度処理浄化槽におけるリン除去・回収・資源化技術の開発とシステム評価」を行うこととし、前年度まで、吸着・鉄電解脱リン法を中核として、吸着脱リン法においては、モデル地域における長期的現場試験、連続リン回収システムの基盤構築、鉄電解脱リン法においては、汚泥性状分析に基づく物質収支解析、脱リン汚泥からのリン溶出・回収技術の基盤を構築する等、リン除去のみならず資源循環を考慮した除去安定性の高い脱リン・回収システムの実用化の基盤を構築化した。 K2038.中山 裕文:ライフサイクル環境負荷評価を完結させるための最終処分場環境会計に関する研究 本研究では、廃棄物最終処分場のライフサイクルを対象とし、特に、これまで研究蓄積の少ない埋立終了後から廃止に至るまでの期間をターゲットとした詳細な環境負荷インベントリデータを整備するとともに、廃止までの期間を含めて考慮した最終処分場の環境会計枠組みを構築し、廃棄物処理事業のライフサイクル環境・経済評価を完結させるものである。 K2039.藤原 健史:地方自治体における循環型社会形成のための廃棄物政策決定支援システムの開発 本研究では、地方自治体における将来の理想的な資源循環型社会を明らかにし、その社会に到達するための廃棄物政策オプションを評価検討できる政策決定支援システムを構築する。このシステムでは、中長期的な社会変化(人口、世帯、ライフスタイル)や経済変化(産業構造、成長率)のシナリオを設定し、住民や企業へのアンケートと、消費や物質フロー、産業プロセスのモデルをベースとして、一般廃棄物並びに産業廃棄物の発生量と資源化量を緻密に計算し、また廃棄物政策オプションをそれが実行されたときにシミュレートされる地域社会像の資源循環量と環境負荷によって評価する。従来の廃棄物処理計画で行われてきた計画処理量の簡易計算に変わる、経済モデルと物質収支モデルをコアとするシステマティックな廃棄物量推計法および政策評価法を提示する。ターゲット年を2030年に設定し、対象として滋賀県を取り上げ、具体的な廃棄物政策オプションについて検討する。 K2040.亀田 知人:マグネシウム-アルミニウム複合酸化物を利用した塩化水素排ガスの新規乾式処理方法の開発 マグネシウム-アルミニウム複合酸化物(Mg-Al酸化物)を用いた、塩化水素(HCl)排ガスの新規乾式処理方法を開発する。平成19年度は、Mg-Al酸化物が気相中においてもHClを処理できることを見出した。水蒸気量の増加に伴ってHCl除去率も増加し、Mg-Al酸化物の層状複水酸化物(LDH)構造再生反応が選択的に進行することがわかった。平成20年度は、Mg-Al酸化物のLDH構造再生反応によるHCl除去がさらに選択的に行われる条件を探索する。併せて、反応に及ぼすMg-Al酸化物量、HClガス初期濃度の影響を明らかにし、加えてHClガス処理速度を解析し、反応機構を求める。また、Mg-Al酸化物のHCl排ガス処理への循環利用回数を明らかにする。さらには、NOx及びSOxが、Mg-Al酸化物によるHCl排ガスの処理に与える影響を明らかにする。 K2041.加藤 雅彦:動物由来医療廃棄物のリスクとマネジメントに関する研究 獣医療や動物実験から排出される動物由来医療廃棄物について,平成19年度は,飼育動物診療所又は実験動物施設において,収集調査,ヒアリング調査及び微生物調査を実施した。この結果をもとに,平成20年度は,飼育動物診療所及び実験動物施設を対象としたアンケート調査を全国的に実施し,動物由来医療廃棄物の現状を更に明らかにする。以上の結果から導かれた知見をもとに,動物由来医療廃棄物に関する試行ガイドラインを作成し,いくつかの施設に実際に試行してもらう。この結果は,平成21年度に取りまとめる。 K2042.小島 昭:アスベスト含有廃材の低温分解による無害化と処理物の再利用に関する研究 アスベスト含有材料を低温で分解し、非繊維化・非石綿化・溶融化をすべて満足する技術を開発し、分解物の安全性および再資源化を検討する。19年度の環境省科学研究(K1921)では、飛散性アスベストに融解剤を加え加熱することで、低温での非繊維化、非石綿化を達成した。ラットでの安全性試験でも無害化を確認、特許を出願。これらの研究成果を基盤にスレートなどの工業材料に使用された非飛散性アスベスト含有材料を対象に非繊維化・非石綿化・ガラス化に取り組む。分解物の形態や構造は、高性能の透過型および走査型顕微鏡で詳細な解析を行い再資源化技術を開発する。具体的には、次の研究を遂行し、無害化技術を確立する。 K2043.清家 剛:他産業も含めたマテリアルフローを考慮した建設系廃棄物の再資源化評価システムの構築に関する研究 現在、建設系廃棄物の排出量は産業廃棄物全体の18.1%にあたる76,466万トンを占め、建設業は業種別廃棄物排出量の第3位に該当する(平成17年度実績)。建設分野は使用する材料の種類が多く、解体段階で不純物の混入が避け難いため、リサイクルが進みにくい分野であると考えられているが、建材の中には他産業製品の製造過程で生成される廃棄物(副産物)を原料とするものや、建設分野の廃棄物が他産業の原料となっているものも少なくない。このように他産業との関わりの中で資源循環が成立している材料は、マテリアルフロー全体の観点から再資源化を評価する必要がある。 K2044.松井 康弘:分別収集・中継輸送に関する費用対効果・費用便益の分析 本研究は、容器包装・生ごみの分別収集、各戸収集及び中継輸送に焦点を当て、そのコスト・環境負荷及び費用対効果・費用便益を明らかにし、3R推進・環境負荷削減を適切に進めるための施策立案に資する基礎資料を提供することを目的とする。具体的には、GPS・GISを援用して収集・運搬車両の走行速度・収集作業速度等と収集・地域特性との関連を解析、これら成果を統合した分別収集のコスト・環境負荷の評価モデルを構築する。中継輸送については、広域ブロック化・最適立地のロジックを確立する。また、岡山大学が開発した戦略的廃棄物マネジメント支援ソフトウェアを援用して各種の分別収集・各戸収集・中継輸送シナリオについて、処理システム全体の費用対効果・費用便益を事例的に評価する。また評価に用いる原単位・モデルパラメーターの不確実性分析により推定精度を悪化させる主要因を明らかにし、その修正・推定精度の向上を図る。 K2045.藤田 昌史:バイオマーカーを用いた途上国の廃棄物最終処分場の安定化診断手法の開発 インドネシア、台湾において、埋立後の経過年数が異なるオープンダンピング型、衛生埋立型の各10ヶ所程度の最終処分場を対象に、浸出水の水質、微生物呼吸活性(酸素利用活性、硝酸還元活性、硫酸還元活性)を調べ、データベース化するとともに、キノンプロファイル法、16S rDNAに着目したT-RFLP解析、シークエンス解析を駆使して、浸出水に含まれるバイオマーカーの解析を行う。そして、統計学的な手法を利用しながら両者を統合した解析を進めるとともに、埋立廃棄物の分解の進行に関係するキーとなるバイオマーカーを抽出する。そして、バイオマーカーの活用方法を整理することで、目的とする安定化診断手法を構築する。また、バイオマーカーという従来にはない視点を考慮した新しい安定化の概念についても検討する。 K2046.浪平 隆男:コンクリート内パルスパワー放電による骨材再生 コンクリート廃材のリサイクルについては、現在、高度経済成長期に建設されたコンクリート構造体の解体へ伴う廃材の急激な増加と新規道路建設縮小に伴う廃材再利用需要の大幅な減少との2重苦のような状態が続いており、我々はその打開策として良質な再生粗骨材を安価に供給できる新しい粗骨材再生技術「コンクリート内パルスパワー放電による骨材再生」を提案している。3年の総研究期間における本研究の目標は、骨材再生に伴う消費エネルギーの削減及びその処理速度の向上であり、かつ、その実用化へ向けた課題の抽出である。2年目となる本年度は、昨年度同様、更なる消費エネルギーの削減及び処理速度の向上をもたらす放電条件の最適化、及びメンテナンス性の向上をもたらす複数放電の形成を実現するとともに、日本にて使用されている砂岩・安山岩・石灰岩といったあらゆる骨材種に対するその再生特性を把握する。 K2047.加茂 徹:廃棄物系バイオマスと熱硬化性樹脂の共処理による有用資源の回収と燃料の製造 エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂は、加熱しても大部分が固体残渣となるためにこれまで再生利用することはできなかった。提案者らは最近、エポキシ樹脂にアルカリ触媒を添加し木材の乾留タール中で処理すると、常圧で200℃の穏和な条件下で可溶化できることを見出した。本研究ではこの新しい知見に基づき、エポキシ製プリント基板やFRP廃材から有用な資源を回収する技術を開発する。本法では初めに木材等の廃棄物系バイオマスと循環溶媒とを共熱分解し、クレゾール類を多く含む重質タールを製造する。次にこの重質タール中でプリント基板やFRP廃材を可溶化し、鉛等の有害物を分離除去し、銅やタンタル等の有用金属や希少金属およびガラス繊維や炭素繊維等の高付加価値な材料を回収する。最後に重質タール中および可溶化した熱硬化性樹脂を分解改質し、一部を循環溶媒として再利用し、残りを化学原材料あるいは燃料として利用する。 K2048.八木 美雄:循環型社会形成に向けての廃棄物処理施設のリニューアルモデル構築に関する研究 循環型社会の形成に向け、環境負荷の低減を目指して、既存の廃棄物処理施設の延命化が強く求められている。一方、自治体では、3R推進によるごみ減量施策や脱温暖化対策の進展に加えて、三位一体改革の推進による自治体の統廃合や財政の逼迫によって、廃棄物処理施設の整備の方向性が見出しにくい状況となっている。そこで、本研究では、廃棄物処理施設において、温暖化防止対策を積極的に推進するための改修を行う施設延命化のリニュ―アルモデルを構築し、そのモデルについて温暖化防止対策指標指標であるLCCO2を中心としたシステム解析を行い、経済性、実行可能性の見地からも検証を加える。 K2049.後藤 元信:水熱電解法を用いた難分解性有機廃液の高効率無害化技術の開発 農畜産業、医療、教育・研究活動等で生じる難分解性有機系廃液の水熱電解法による高効率無害化処理ミニプラントの開発を最終目標とする。有機廃液処理法の一つである超臨界水酸化法は過酷な条件と酸化剤を必要とするため、安全の観点から小規模処理法としては実用化が難しい。加圧熱水である水熱条件下で電気分解を適用することにより、温和な雰囲気で酸化分解反応を電気化学的に進行させることが可能となる。本研究では、この水熱電解法により、含窒素化合物、色素等をモデル物質とした無害化実験の処理条件の策定を行う。次に、モデル物質の混合系を用いた基質相互の影響、処理効率等を精査する。最終的には、廃液発生ユニット毎への水熱電解無害化処理ミニプラントの設置を視野に入れた小型連続処理装置を試作し、廃液等を処理能力10~20 L/日程度で無害化するミニプラントの開発を目指す。本処理法の優位性の明確化、プロセス経済性の評価も行う。 K2050.植田 和弘:拡大生産者責任とリサイクル市場に関する研究 本研究では、廃棄物・リサイクル政策において近年注目されている政策概念「拡大生産者責任」について、その概念の政策的意義を他の政策概念との関連で正確に理解し多岐にわたる諸議論を整理することで、拡大生産者責任の理論的根拠ならびに責任配分や費用負担のあり方といった政策指針を明らかにする。その上で、容器包装リサイクル法の下で制度化されたリサイクル市場について、その構造と変化の推移を実証的に分析することで、拡大生産者責任政策とリサイクル市場との相互関係を明らかにし、拡大生産者責任政策の効果を検証するとともに政策をめぐる新たな着眼点を提示する。 K2051.野馬 幸生:アスベスト含有廃棄物の分解処理による無害化の確認試験方法の確立とその応用 本研究は、アスベスト廃棄物の無害化処理における処理物の有すべき条件を明確にするために、(1)処理物のアスベスト試験方法の確立、(2)土壌等一般環境レベルとの比較論的考察、及び(3)熱処理後の繊維状物質の毒性学的評価を行い、無害化処理を確認する手法を開発する研究である。(1)では既存の試験方法をベースに固体試料の前処理法を整備し、透過型電子顕微鏡を用いた高感度・高精度の分析法を組合せて処理の効率を確認する試験を、また併せて日常モニタリング手法との整合性を確認する。(2)では無害化処理のレベルを考慮するのに必要な自然のバックグラントレベルや現在の都市環境の存在レベルを把握する。(3)ではアスベスト繊維が熱処理過程によって形状・化学形態・結晶構造の変化に伴いどのように生体毒性が変化するかを、in vitro及び in vivoの毒性試験により確認する。更にマイクロ波照射による処理の実証試験を行う。 K2052.近藤 勝義:安全・安価なハイブリッド式バイオマス利活用技術による農作物非食部のエネルギー・再資源化と産地での完全消費・循環システムの基盤構築に関する研究 農作物非食部である籾殻や稲藁を対象に, クエン酸洗浄によるセルロース系有機物の加水分解挙動を示差熱重量分析およびガスクロマトグラフ質量分析により調査した結果,ヘミセルロースは200℃付近の低温域で,セルロースは350~500℃でそれぞれ単分子への構造変化が生じることを明らかにし,500℃を1次焼成温度としてSiO2含有量99%以上の焼成灰の作製条件を抽出した。H20年度は,第1次・2次焼成からなる2段階中型焼成装置の開発を目的に,高燃焼効率の達成に向けた焼成条件の適正化(主に空気供給量と残留炭素の相関調査)を熱分析により確認した上で小型焼成炉にて検証し,その結果に基づき,焼成装置の設計を行う。また東南アジアでの籾殻原料を用いて本プロセスの有効性を実証する。一方,他のセルロース多含有バイオマス(木質チップ等)を対象に,クエン酸洗浄による加水分解法を展開し,高純度焼成灰の試作の可能性を検証する。 K2053.斎藤 直人:海岸流木のリサイクルに向けたシステム提案(漂着ごみ問題解決に関する研究) 海岸流木の処理・活用を促進するため、不安定に漂着する海岸流木の発生予測とリサイクルフローからなるシステムを提案する。当該年度は、[1]モデル河川、[2]モデル海岸における流木の移動、漂着等を調査して、流木の発生源、発生量を推定するとともに、流木化ならびに漂着メカニズムを考察する。また、[3]海岸流木における病害菌、雑草種子、土砂の混入状況を把握するとともに、燃料等の用途に対しての処理技術を精査し、屋外堆積による簡易脱塩法を開発する。昨年に引き続き、リサイクル技術の現状、地域における処理の実態を把握し、[4]各々の用途と処理技術を環境負荷、コスト、市場性、効果等から評価・選定する。これらの手法により、モデル地域におけるリサイクルフロー(活用の流れ)を作成する。また、[5]リサイクルの継続性・安定性の向上を図るため、リサイクルに係る法的整理と処理のあり方を検討する。 K2054.松藤 敏彦:ベンチマーク指標を活用した一般廃棄物処理事業の評価に関する研究 市町村の一般廃棄物処理事業について、排出抑制、再生利用、適正処理、環境負荷低減、市民へのサービス等の事業の現状評価・診断、施策効果・費用効率性の評価を行い、事業の改善分析にも応用できるベンチマーク指標を開発する。 K2055.山田 正人:最終処分場におけるアスベスト廃棄物の安全性能評価手法の開発 アスベスト問題の安全・安心かつ究極的な解決を図るためには、過去から現在までにアスベストが埋め立てられたアスベスト最終処分場を特定して封じ込めの実態を確認すると共に、掘り起こし再生事業や跡地の形質変更時における再放出の防止を図る必要がある。本研究では、各種記録や現場調査によってアスベストを埋め立てた処分場を特定する手法、飛散を防ぐ埋立試料のサンプリング方法、保有水等や埋立地ガスに含まれるアスベストの存在量を把握する手法を示し、室内実験によって処分場内におけるアスベストの廃棄物層内の移動特性と掘削時における飛散特性を把握する。これら一連の手法を既存最終処分場に埋め立てられたアスベストの安全性確認手法として体系化し、適正埋立を行うための情報管理システム、埋立層内のアスベスト移動を抑止する埋立技術の開発や容量増加や形質変更時における指針、封じ込め能力を高める埋立工法や管理手法を提示する。 K2056.神山 宣彦:アスベスト廃棄物の無害化処理品の生体影響評価に関する研究 アスベスト含有廃棄物の無害化処理として様々な技術が開発されているが、これまで無害化処理生成物の生体影響については十分な評価がされていない。廃棄量の多いアスベスト含有建材の無害化・再資源化処理として注目される技術として、建材中のクリソタイルを焼成によりフォーステライトといった工業的に再利用可能な材料に転換する技術がある。そこで、これらの無害化処理生成物の再利用の際の安全性を科学的に検証するために、19年度より実験動物を用いた安全性試験を開始した。本研究では、呼吸器影響およびその他の全身臓器への影響を検証し、とくに発がん性に関して、クリソタイルの毒性と比較し、総合的に評価する。さらに、アスベストによる発がんに関与する酸化的DNA損傷、メソテリンなどの中皮腫などのバイオマーカーに関する研究により、アスベスト無害化処理生成物のヒトへの健康リスク評価法を確立することを目的とする。 K2057.中村 崇:有機臭素系難燃剤を含有した低級廃プラスチックの熱分解を利用した重金属含有汚泥の資源化プロセスに関する研究 本研究では、めっきスラッジなどの重金属含有汚泥と電気機器等に使用される臭素系難燃プラスチックの同時資源化処理プロセスの開発を行う。臭素系難燃プラスチックを熱分解することにより、炭化水素ガス、臭化水素ガス(HBr)ならびに難燃助剤である三酸化アンチモン(Sb2O3)が臭素化して臭素化アンチモンガス(SbBr3)が生成する。環境影響が懸念される臭素系難燃剤を熱分解処理すると同時に、分解生成した炭化水素ガスを重金属含有汚泥の高温乾燥・焼成用の燃料として利用する。同時に分解生成した臭素化ガスを含有重金属類(Zn, Cu, Pb等)と反応させて低沸点の臭素化物として揮発分離する。三年計画の二年目である本年度は、プロセス開発へ向けて、昨年度に引き続き示差熱天秤-ガスクロ質量分析計ならびに小型炉を用いて、臭素系難燃剤の熱分解機構ならびに分解生成した臭素化ガスと各種重金属酸化物との反応機構の解明を行う。 K2058.山田 正人:破砕選別による建設系廃棄物の地域循環システムの設計に関する研究 破砕選別施設は最終処分のための減容・減量だけでなく、廃棄物から資源を回収し再生利用へと向かわせる分岐点としての機能を担っている。しかし、資源回収技術としての位置づけとその効果が明示されておらず、木くず、廃プラ、石膏ボード、重金属類、廃石綿等が混在する建設混合廃棄物の破砕選別残さの多くが、経済性と環境安全性が満たせないため、最終処分量の減量が進まないとともに循環利用率が向上しない実態がある。破砕選別施設を循環型とするためには、多様な発生源からもたらされる建設系廃棄物の地域物流を見極め、費用効果の高い適正な技術導入により、残さ等の環境安全性を向上させることが必須である。本研究では、建設系廃棄物・副産物から循環資源を高品質高効率で選別し、残さの量と含まれる有害物や有機物を低減する技術を導入することにより、資源生産性と循環利用率を向上させ、最終処分量を低減させる地域循環システムを設計する。 K2059.葛西 栄輝:アスベスト廃棄物と廃棄物焼却灰の高効率・高信頼性溶融無害化および資源化 アスベスト廃棄物はモルタル等と複合化し、局所的な成分偏在がある上、廃棄物の種類によって平均化学組成も大きく変動する。これが溶融処理でのスラグ化不良の主要因であり、溶融固化プロセスでの燃料比増加、耐火物損傷、稼働率低下に直結する。本研究で提案する廃棄物焼却灰との共溶融処理では、塩基度低下と共に成分変動の緩和が期待できるが、焼却灰組成の時間変動も考慮すると、リアルタイムに対応可能なさらに信頼性のある溶融炉操業技術の確率が必要である。 K2060.仲上 健一:バイオマス利活用に関する地域環境の診断手法及び環境効率評価手法の研究 本研究は、バイオマスに関する地域資源診断と利活用シナリオ評価が可能な「バイオマス資源循環利用診断評価モデル(以下「診断評価モデル」と略記する)」を開発し、バイオマス利活用に関わる新たな政策展開手法を研究する。研究内容は3項目である。1)既存の統計データを基にバイオマスの発生、フロー、ストックの量とその含有成分を把握するメインシステム(農林水産省系の8独立行政法人等が開発したモデル)を基礎とし、エネルギー、経済性、温室効果ガスを解析するためのサブモデルを追加した「診断評価モデル」を開発する。2) 地域特性が異なる複数地区のケーススタディを実施し、バイオマス政策展開が地域に及ぼす環境影響レベル診断及び環境効率評価の標準マトリクスを作成する。3)標準地区を選定し、新たな政策展開に関する課題を整理し、診断評価のマニュアル案を提案する。 K2061.川端 邦明:画像処理に基づいたアスベスト定性分析支援手法に関する研究 建材中のアスベスト含有率判定を行う際には,まず定性分析による含有判定が行われる。この判定で含有が認められた際には詳細な定量分析に移行するため,定性分析での判定は大変重要である。しかしながら,現状の分散染色法による定性分析は非効率かつ作業者にとって負担が大きい。現在,アスベスト分析の社会的ニーズが高まっており,この問題を解決するための支援手法の開発は急務である。本研究では,アスベスト含有に関する定性分析,特に分散染色法による分析を支援するための,画像処理を用いた含有判定手法およびシステムについて研究開発を行う。公定法の基準に従い,画像処理技術および識別処理手法を用いて,顕微鏡写真内からサンプリングされた複数の領域に存在する全粒子数およびアスベスト結晶数を計数し,全粒子に対してアスベスト結晶が基準値以上含まれているかについて計算する。開発する手法は無害化処理後の再確認等にも利用可能である。 K2062.酒井 伸一:家庭系廃製品の残留性化学物質と3Rシナリオ解析 製品に含まれている重金属類や難燃剤成分等の有害物質は、リサイクル工程や廃棄物処理に伴って環境へ排出されるおそれがあり、こうした観点から特定有害物質使用制限(RoHS)指令等の国際的な規制も導入されるようになっている。アジア地域における国際資源循環を構想する上で、製品に含まれている有害物質がリサイクルや廃棄物処理の過程で環境中へ放出されることを防止するための仕組みが必要不可欠である。このため、代表的な家庭系廃製品について、アジア地域におけるリサイクルや廃棄物処理を念頭において、重金属類や臭素系化合物等の残留性化学物質を取り上げた環境化学的研究、システム論的研究を行う。物質代替、回収再生などの3R方策を主たる検討の対象とし、適正処理や不適正処分を対照に据えたシナリオ研究を推進する。なお、事実の発見、モデルとパラメータ解析、3Rシナリオの導入、これらを相互フィードバックさせた研究展開を心がける。 K2063.森口 祐一:国外リサイクルを含むシナリオ間のライフサイクル比較手法と廃プラスチックへの適用 日本で消費された物品がリサイクル目的に輸出される、いわゆる国際資源循環を取り上げ、国内完結型のリサイクルと国外での工程を含むリサイクルについて、ライフサイクル分析による環境負荷やコストの比較を行う。このため、国外のプロセスを含むライフサイクル評価手法の枠組みを設計する。また、事例研究として、PETボトル等の廃プラスチックの国内外でのリサイクルを取り上げ、国内外でのリサイクルシナリオを設定し、リサイクルプロセスに関するインベントリデータやプロセスフローの情報、当該プロセス以外で必要となる電力、石油精製などのユーティリティ部門、物流部門、廃棄物処理部門などのいわゆるバックグラウンドプロセスのインベントリデータを現地調査や文献調査等により収集する。これらをもとにシナリオ間の環境負荷やコストの比較を行い、結果の解釈を行って、リサイクル制度の設計等のための知見を得る。 K2064.寺園 淳:アジア地域における廃電気電子機器と廃プラスチックの資源循環システムの解析 廃電気電子機器(E-waste)と廃プラスチックはアジア地域において適正な資源循環システムを構築するための重要な検討対象であるが、基礎となるべき各国国内及び国際的なマテリアルフロー情報が不足している。本研究では、国内・国際両面からのマテリアルフロー解析と影響因子の把握を行うとともに、将来の制度や経済などの変動にも対応しながら、適正な資源循環システムを構築するために必要な条件などの知見を提供することを目的とする。 K2065.柳下 正治:アジア諸国における地域循環システムに関する比較研究 東アジア各国共通の課題である3R推進に際しては、各国の社会文化・経済条件により状況が大きく相違することを基本に置く必要があるが、国際化の進展の中、廃棄物の国際移動の急増等の課題の浮上等を考慮すれば、東アジア地域での3R推進には、「各国による廃棄物管理・3Rの主体的な取組」と共に、「地域全体での循環型経済・社会の構築を目指した各国間の政策調整や国際協力」が重要である。この基本理解の下、本研究は、都市における都市生活系廃棄物・資源管理の能力向上に焦点を当て、[1]日中韓都市比較分析を通じた制度・技術・人材・情報・関係アクター等からなる都市のガバナンス能力の向上のための条件の明確化、[2]中国社会で最近注目される地域最小単位「社区」に着目し、市民社会の3R推進へのイニシアティブの可能性の模索を進めることにより、特に中国を視野に都市レベルでの廃棄物資源管理の能力向上を提言し、地域協力の方向を模索する。 K2066.外川 健一:アジア地域における自動車リサイクルシステムの比較研究 2005年の自動車リサイクル法の本格施行以降、日本発の使用済自動車およびそれに由来する部品や素材・ASRの処理・リサイクルの構造が、大きく変化している。このような構造変化の要因を分析し、日本発のELVという視点に加え、日本以外のアジア諸国発・ドイツ発さらには自動車大国であるアメリカ合衆国発のそれを比較・検討する。さらにアジア・太平洋地域における自動車リサイクルシステムの特質を、[1]放棄車両問題や解体作業に伴う汚染問題など環境問題への対応、[2]リサイクル部品・素材のマテリアル・フローの比較(国際的に展開するリサイクルシステムの形成メカニズムの解明という視点を含む)、[3]自動車リサイクルの制度改革に関するEUあるいは日本からの影響とその内実、という観点で、それぞれを明白にしていく。 K2067.小島 道一:アジア地域におけるリサイクルの実態と国際資源循環の管理・3R政策 アジア諸国のリユースやリサイクルの状況、再生資源の越境移動に関する規制、その実態等を踏まえながら、国際資源循環のあり方、国際資源循環を踏まえたアジア各国における3Rに関する制度設計について検討する。 K2068.黒岩 宙司:アジア地域における国際保健政策と医療廃棄物の現状とマネージメントの研究 医療廃棄物は不適切に処理されると血液を介し医療従事者や一般大衆に感染を広める。そしてグローバリゼーションによってその感染は国内外に広がっていく。一般に欧米主導の途上国に対する保健政策は目標達成のために新たな薬・技術を投入する反面、それらの使用後の処理能力までは考慮されておらず、環境汚染が進んでいる。そこで中国、ラオス、モンゴル、タイなど代表研究者と研究協力関係のあるアジア地域において、まずは各国の保健政策・医療廃棄物の現状を調査し、その後改善のためのトレーニング等における介入効果を検証する。管理・事故予防の教育プログラムを医学・看護教育現場に導入し、また、注射針処理機を用いて安心して予防注射ができるようにし、アジア地域の廃棄処理能力に即した医療廃棄物管理を考慮するよう提言をする。最終年に東京大学でシンポジウムを開催し、環境に配慮した医療廃棄物管理のアジアでの研究ネットワークを発展させる。 K2069.劉 庭秀:日韓における拡大生産者責任制度の実態分析とパートナーシップ構築に関する研究 韓国はEPR原則に基づき、2008年1月から「電気・電子製品及び自動車の資源循環に関する法律(資源循環法)」を施行した。本研究班は、一昨年前から日韓の自動車リサイクル制度を事例に挙げてその現状と問題点を分析した。昨年は韓国における自動車リサイクル制度施行の政策決定過程、法律を巡る議論、各主体の関係を明確にした。今年は韓国の自動車リサイクル制度をモニタリングしながら、日本の自動車リサイクル制度の改善のポイントを分析していく。殊に解体現場からデータを蓄積し、基礎的な情報管理ツールの考え方を確立する。また、「アジア自動車リサイクルフォーラム」の設立を通して、アジアにおけるEPR概念の見直し、開発途上国への政策支援のあり方、国内外におけるパートナーシップの構築方法を探る。最終的にはこれらの分析結果に基づき、アジアにおける日韓の役割を吟味し、アジア型EPRのガイドラインと国際協力のあり方を提案する。 K2070.大門 裕之:水熱反応による有機性循環資源の高品位液状飼料化 循環型社会形成を促進するための要素技術として、水熱反応を用いた高品位な液状(液体)飼料の製造技術の開発を行う。これまで、様々な有機性廃棄物に対して、本法を用いた液状飼料化技術を適用できることが確認されている。これにより、食品副産物のみならず、多くの未利用有機資源の有効利活用を促進することが期待できるようになった。本法では、原料を単に液状化するだけでなく、原料中のタンパク質を家畜の成育において重要なアミノ酸およびジペプチドのレベルにまで短時間で分解することができる。本研究では、対象となる原料の種類拡大を図るとともに、製造された生成物のデータベース化、製造された飼料を用いた肥育試験を行い、その有効性を確認する。さらに、本法を中心とした液状飼料および資源循環ネットワークシステムを設計し、これに基づく事業化シナリオを提案する。 K2071.高橋 徹:防腐剤(CCA)処理木材の自動判別方法および有効利用に関する研究 全国で発生する建築廃材を安全な再資源化原料として利用するためには、有害金属を含むCCA(クロム・銅・ひ素化合物系防腐剤)処理木材を正確に選別する必要がある。本研究では、リアルタイム計測、種々の形態試料(固体・液体・気体)の高感度元素分析が可能であり、現場分析に適しているLIBS法(レーザー誘起ブレークダウン分光分析法)を用いてCCA処理木材を高精度に判別できる装置の開発を行い、その精度を検討する。さらにCCA処理木材選別の現状を調査し、CCA処理木材を貴重なバイオマス原料として有効利用することにより、埋立地の延命化、資源活用が促進されるため、硫酸浸出法を用いた糖化による原料化、有害金属の除去および副産物の回収を行う「CCA処理木材のリサイクルシステム」について検討する。 K2072.原田 浩幸:ミカン搾汁残渣を有効利用したリンの回収方法 これまでの研究により、農業廃棄物であるミカンジュースカスをそのまま生石灰でケン化処理し、さらにジルコニウム(IV)イオンを吸着・担持することにより調製される吸着剤はリン酸イオンを広いpH領域から効率的、選択的に吸着し、吸着されたリン酸イオンは希薄なアルカリ水溶液により高濃度で溶離され、吸着剤は再生されることを見出した。本研究においてはこれまでの基礎研究の成果をさらに発展させ、様々な実際の廃液(家畜し尿やその生物処理水)、廃棄物(下水汚泥の焼却残渣等)中からのリンの回収を試みることにより、本吸着剤の有効性、実用性を検証する。さらに実用規模での操業に適した吸着剤の改良と本吸着剤の特性に適合した新規の連続的な操作方法について研究する。 K2073.前野 祐二:各種廃棄物焼却灰を主原料とした環境低負荷型混合セメントの開発 都市ごみ焼却灰と屠畜牛危険部位の焼却灰、石炭火力発電所から排出される石炭灰と廃石膏ボード石膏の混合粉砕物とセメントを混合して混合セメントを作製する。この混合セメントは、水と混合するだけで高強度コンクリートを製造できるとともに重金属類の溶出が防止できることを見出した。そこで、本研究では、焼却灰を主原料として上記廃棄物を混合した混合セメントを作製し、この混合セメントの固化メカニズムと有害物質の溶出特性を明らかにする。この混合セメントは、セメント量全体量の20%程度であるにもかかわらず、高強度に硬化することが、特筆すべきで、このメカニズムの解明により、安定的に高強度コンクリートが製造できるようになる。また、酸性雨などを考慮した溶出特性、長期溶出特性を明らかにする。この混合セメントで製造されたコンクリートを対象に様々な条件で環境影響試験を行い、溶出の特性、安全性を明らかにする。 K2074.大門 弘幸:梅干調味廃液の酵母発酵によるアミノ酸液肥の開発とその肥効の実証 調味梅干の製造過程で廃棄物として生じる調味廃液を有用な副産物として捉え,その有効な利活用法の一つとして,含有成分を明確にした有機質液肥としての「アミノ酸液肥」の開発を試みる。さらに,製造したアミノ酸液肥の地域農産物(ウメ,エンドウ,葉菜類)における肥効実証試験を行い,梅,梅干の全国一の生産地である和歌山県日高郡みなべ町の地域農業の有機農業への転換の一助とする。すなわち,海洋投棄が禁止された梅干調味廃液を,アミノ酸液肥製造のための酵母生産用の培地として再利用や有機物資源としての直接利用を試み,廃液処理経費の削減と,地域農業の慣行農業から有機農業への進化を促し,梅,梅干製造を中心とした地域における循環型農業の構築に寄与することを目的とする。なお,NPO法人南高梅の会と協力して研究を遂行し,初年度には主として液肥の肥効についての科学的な根拠を明確にする。 K2075.森 達摩:可視光応答型光触媒の廃棄物埋立処分場浸出水浄化技術への応用 光触媒は環境に優しい技術として注目されているが、これまで開発されている触媒の多くは紫外線応答型であった。紫外線は液相中の有機物に吸収されやすいため、このタイプの触媒は、水質や付着物の影響を受けやすい。新しく開発した酸化チタン光触媒は、500 nmの可視光にも反応する性質を持つため、太陽光照射によっても高い反応効率を維持することができる。また、光ファイバーやガラスを通して紫外線領域がカットされた太陽光でも反応が励起される特徴を持つ。廃棄物埋立処分場においても省エネ、安全・安心なシステムが求められていることから、この研究では、可視光応答型光触媒を用いて太陽光を利用し、埋立地浸出水に含まれるフミン等の難分解性有機物やフタル酸エステル類、アルキルフェノール類およびビスフェノールA等微量有機性化学物質の除去を目的とした浄化処理技術の開発に取り組む。 |
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環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課 TEL: 03-5501-3154 FAX: 03-3593-8263 E-mail: hairi-haitai@env.go.jp |
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