![]() 「平成19年度廃棄物処理等科学研究費補助金」に係る交付対象研究等の決定について
環境省では、廃棄物に係る諸問題の解決及び循環型社会形成に資する研究・技術開発を推進する目的として、競争的資金である廃棄物処理等科学研究費補助金制度を設けています。 1.交付決定となった研究課題 2.交付決定となった推進事業
3.廃棄物処理対策研究審査委員(50音順)
4.廃棄物処理等科学研究企画委員(50音順)
5.研究課題の概要 K1901.古市 徹:不適正な最終処分システムの環境再生のための社会・技術システムの開発 豊島,青森・岩手県境,四日市等の大規模不法投棄問題が,循環型社会を構築する上で大きな支障となっている.特に,修復方法を巡る周辺住民との意見の相違,全量撤去時の膨大な修復費用等のため,修復対策がなかなか進まず,未だ大量の不法投棄廃棄物が放置されている事例も多い(不法投棄廃棄物の残余量は,1,000万トンを超すと言われている).不法投棄された廃棄物の崩落や,有害物質による土壌・地下水汚染などの生活環境の支障が懸念されており,一刻も早い解決が望まれている.一方,新規最終処分場の建設が年々困難となっており,循環型社会を構築する上で,この最終処分容量の確保が,一つのネックになっている.そのため,最終処分容量の確保が難しい自治体にとっては,不適正最終処分場を適正化した上で,再生して利用するニーズが高くなっている. つまり,循環型社会を構築する上で,このような不適正最終処分システム(不法投棄現場や不適正最終処分場)を適正化し,環境再生(跡地利用)を図っていくための社会(法律・制度,経済,教育,住民参加など)・技術(調査・解析・修復技術など)システムが,求められると言える.そこで,本研究では,不適正最終処分システムを環境再生するために,その汚染レベル(リスクの緊急度等)の調査・評価を行い,そして,リスクコミュニケーションを考慮した全量撤去だけではない,低コストの多様な修復・再生対策を提案することができる社会・技術システムの開発を行う.この環境再生のための社会・技術システムの提案により,対策が進んでいない不適正最終処分システムに対して,現実的かつ迅速な対策が可能になると考えられる. K1902.清家 剛:他産業も含めたマテリアルフローを考慮した建設系廃棄物の再資源化評価システムの構築に関する研究 建設系廃棄物は、産業廃棄物全量の18.2%(平成15年度)を占めており、建設分野は依然として大量の廃棄物の発生源となっている。中でも建築分野は、使用される材料の種類が多く、解体段階で不純物の混入が避けがたいこと等から、リサイクルが進みにくい分野であると考えられている。しかし、建築分野で使用される資材(以下、建材という)の中には、他産業製品の製造過程で生成される廃棄物(副産物)を原料とするものも少なくない。このように他産業との関わりの中で資源循環が成立しているものは、マテリアルフロー全体の観点から再資源化について評価する必要がある。 本研究は、わが国の代表的な建材であり、リサイクルの仕組みや物性が異なる3種の建材を対象に、他産業も含めた建設系廃棄物の再資源化を評価するシステムを構築し、マテリアルフロー全体の中で環境負荷の低減に寄与するための仕組みや、その実現に必要な施策を提示するものである。 K1903.泉澤 秀一:低濃度PCB汚染物の焼却処理に関する研究 本研究は、平成14年にその存在が判明し、現在処理の見通しが立っていない低濃度PCB汚染物(PCBを使用していないとされるトランス等のうち、低濃度のPCBに汚染された絶縁油を含むもの)の処理について、現に設置・稼働している産業廃棄物焼却施設を用い、焼却処理が及ぼす環境への影響等を調査し、安全かつ確実な処理条件を明らかにするとともに、今後行われるべきリスク評価に必要な基礎的知見を集積することにより、我が国における喫緊の課題である低濃度PCB汚染物の処理の早期実現を図るものである。 K1904.後藤 元信:水熱電解法を用いた難分解性有機廃液の高効率無害化技術の開発 具体的には、産業廃棄物焼却施設における焼却処理は、通常多種多様な廃棄物を混焼しているため、現実に低濃度PCB汚染物を焼却処理する場合を想定し、通常の混焼運転中に低濃度PCB汚染物を併せて処理し、排ガス、排水、処理後の残さ、周辺大気環境等のPCB、ダイオキシン類等の濃度を高感度かつ高精度で分析し、処理条件との相関を明らかにする。 K1905.大門 裕之:水熱反応による有機性循環資源の高品位液体飼料化 循環型社会形成を促進するための要素技術として、水熱反応を用いた高品位な液体飼料の製造技術の開発を行う。これまで、様々な有機性廃棄物に、本法を用いた本液体飼料化技術が適用できることが確認されている。これにより、食品副産物のみならず、多くの未利用有機資源の有効利活用を促進することが期待できる用になった。本法では、原料を単に液状化するだけでなく、原料中のタンパク質を家畜の成育において重要なアミノ酸およびジペプチドのレベルにまで短時間で分解することができる。本研究では、対象となる原料の種類の拡大を図るとともに、製造された生成物のデータベース化、製造された飼料を用いて肥育試験を行ってその有効性を確認する。さらに、本法を中心とした液体飼料および資源循環ネットワークシステムを設計し、これに基づく事業化シナリオを提案する。 K1906.永田 勝也:廃棄物処理・リサイクル施設における安全・安心対応策に関する研究 近年、廃棄物処理・リサイクル関連施設において、事故が多発している。事故やトラブルの発生や拡大を防止し、安全・安心な廃棄物処理システムの構築が重要である。そこで、本研究では廃棄物処理・リサイクルにおける安全・安心な処理システムの構築を目指す。廃棄物処理施設にて発生した事故やトラブル、ヒヤリハット事例を体系的に分析・整理し、データベースを構築する。これにより得られた知見を基に、設計段階では施設の安全性や適切な安全向上策とその効果を評価可能な安全設計解析手法の開発、操業段階では操業診断や目標値管理、IT技術を応用した情報管理など施設の操業を総合的に管理システムやバーチャルリアリティなどの先進的な技術を用いた効果的・効率的な運転員教育ツールを開発する。また、周辺市民の安全・安心を醸成するための積極的な情報発信をベースとした情報公開手法を開発する。各手法を実施設へ適用を試み、その効果を検証する。 K1907.後藤 雅宏:環境調和型溶媒イオン液体を用いた廃家電品からのレアメタル再資源化技術の開発 金属資源の安定確保および廃棄物の減量化のためには、使用済み製品からの金属のリサイクルが必須である。溶媒抽出法は、最も効率的で有望な金属の分離回収技術であるが、これを実用化するには従来法の分離効率を更に向上させ、また環境に配慮したプロセスの構築が必要となる。 本研究では、不揮発性の溶融塩であるイオン液体を溶媒に用いた新しい溶媒抽出システムを開発する。分子構造を設計して、容易に合成できるというイオン液体の特長を生かして、優れた物性の抽出溶媒を開発し、これにレアメタルに選択性の高い抽出剤を組み合わせることにより、高性能のイオン液体抽出系を創成する。金属の物質フローを調査・解析し、対象となる金属に対し、最適な抽出系を用いて分離回収プロセスを設計し、高効率のレアメタル再資源化技術を構築する。 K1908.加藤 雅彦:動物由来医療廃棄物のリスクとマネジメントに関する研究 医療廃棄物に関する従来の研究においては,人間に対する医療行為から排出される廃棄物(以下「人間由来医療廃棄物」という。)が研究の中心的対象であったが,獣医医療や動物実験から排出される動物由来医療廃棄物については,1)人畜共通感染症によるリスク,2)死体処理に伴うリスク及び3)産業動物往診によるリスクが人間由来医療廃棄物と異なるにもかかわらず,ガイドラインやマニュアルの段階において同じ扱いであった。また,行政や獣医関係団体による動物由来廃棄物に限定した管理や処理に関する規則やマニュアルは,獣医医療状況が違う米国やEUにはあるものの,我が国にはない。以上の現状から,動物由来医療廃棄物の現状を調査した結果,上記1)~3)の対策となる試行ガイドラインを作成し,実際に試行し評価する研究を経た後に最終ガイドライン作成する。 K1909.八木 美雄:循環型社会形成に向けての廃棄物処理施設のリニューアルモデル構築に関する研究 循環型社会の形成に向け、環境負荷の低減を目指して、既存の廃棄物処理施設の延命化が強く求められている。一方、自治体では、3R推進によるごみ減量施策や脱温暖化対策の進展に加えて、三位一体改革の推進による自治体の統廃合や財政の逼迫によって、廃棄物処理施設の整備の方向性が見出しにくい状況となっている。そこで、本研究では、廃棄物処理施設の現況について全国レベルでの解析を行うとともに、脱温暖化対策を積極的に推進するための機能が付加された施設延命化のリニュ―アルモデルを構築し、そのモデルをLCCO2をもとにシステム解析を行い、経済性、実行性の見地からも検証を加える。 以上の研究成果は、自治体の地域特性に応じた適正な延命化対策を合理的に推進する指針としてとりまとめられ、今後の自治体の廃棄物処理施設整備の効率的・効果的な推進に大きく寄与することが期待されるものである。 K1910.有薗 幸司:一斉化学分析および分子生物学的手法を用いた最終処分場由来有害物質の包括的リスク評価 最終処分場由来の化学物質は多種多様なため、未知化学物質や非意図的生成物などの複合した総体として、化学物質の包括的モニタリングや生物影響評価が必要である。また、廃棄物に対する住民の不安感を払拭し、予防原則に基づいたより安心・安全な循環型社会形成の推進において、化学物質の環境負荷の増低減をより定量的に情報提供することが極めて重要である。当該研究では、最終処分場の土壌や浸出水を対象として、(1)化学物質約700種類の一斉スクリーニング、(2)DNAマイクロアレイ解析による発現遺伝子変動からの潜在的毒性影響評価を行い、優先的にリスク評価の必要な有害物質を特定するとともに、廃棄物最終処分場の土壌や浸出水由来の有害物質に関するデータベース構築を試みる。すなわち、化学分析により明らかにした有害物質のインプットから予測される毒性影響についてその可能性を検知するためのデータベース構築を目指す。さらに、それらをターゲットとした(3)生物学的測定法を用いた簡易モニタリング手法の開発を行い、最終処分場における包括的な化学物質のリスク管理・リスクコミニケーションを目指す。すなわち、バイオセンサなどにより実環境中におけるオンサイトモニタリングを試み、有害物質による環境負荷の増低減をより定量的に住民に情報提供でき、廃棄物に対する住民の不安感を払拭することにより、予防原則に基づいた安心・安全な循環型社会形成の推進を目指す。 K1911.加茂 徹:廃棄物系バイオマスと熱硬化性樹脂の共処理による有用資源の回収と燃料の製造 エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂は加熱してもほとんど低分子化されないが、提案者らは最近、アルカリ触媒を添加して木材の乾留タール中で処理すると常圧で200℃の穏和な条件下で可溶化できることを見出した。本研究ではこの新しい知見に基づき、エポキシ製プリント基板やFRP廃材から有用な資源を回収する技術を開発する。本法では初めに木材等の廃棄物系バイオマスと循環溶媒とを共熱分解し、クレゾール類を多く含む重質タールを製造する。次に重質タールを溶媒としてプリント基板やFRP廃材を可溶化し、鉛等の有害物を分離除去し、銅やタンタル等の有用金属や希少金属およびガラス繊維や炭素繊維等の高付加価値な材料を回収する。最後に重質タール中に可溶化した廃プラスチックを分解改質し、一部を循環溶媒として再利用し、残りを化学原材料あるいは重油代替燃料として利用する。 K1912.山田 正人:破砕選別による建設系廃棄物の地域循環システムの設計に関する研究 破砕選別施設は最終処分のための減容・減量だけでなく、廃棄物から資源を回収し再生利用へと向かわせる分岐点としての機能を担っている。しかし、現状では、資源回収技術としての位置づけとその効果が明示されておらず、木くず、廃プラ、残土、石膏ボード、重金属類、廃石綿等が混在する建設混合廃棄物の破砕選別残さの多くが、経済性と環境安全性が満たせず最終処分に向かうため、最終処分量の減量が進まないとともに循環利用率が向上しない実態がある。破砕選別施設を循環型とするためには、多様な発生源からもたらされる建設系廃棄物の地域物流を見極め、費用効果の高い適正な技術導入により、残さ等の環境安全性を向上させることが必須である。本研究では、建設系廃棄物・副産物から循環資源を高品質かつ高効率で選別し、かつ、残さの量と含まれる有害物や有機物を低減する技術を導入することにより、資源生産性と循環利用率を向上させ、最終処分量を低減させる地域循環システムを設計する。 K1913.中村 崇:有機臭素系難燃剤を含有した低級廃プラスチックの熱分解を利用した重金属含有汚泥の資源化プロセスに関する研究 めっきスラッジなどの重金属含有汚泥ならびに低級廃プラスチックの資源化は、3R技術開発の重要課題の一つである。本研究では、重金属含有汚泥と臭素系難燃剤を含有した低級廃プラスチックの同時資源化処理プロセスの開発を行うものである。臭素系難燃プラスチックを400~500℃で熱分解することにより、炭化水素ガス、臭化水素ガス(HBr)ならびに難燃助剤であるアンチモンの臭素化物(SbBr3)が揮発生成する。生成した炭化水素を重金属含有汚泥の高温乾燥・焼成用の燃料として利用し、同時に生成した臭素化ガスを含有重金属類(Zn, Pb, Cd等)と反応させて低沸点の臭素化物として揮発分離する。臭素系難燃プラスチックの熱分解特性や、臭素と各重金属類との競合反応ならび臭素化物の揮発性を熱力学的観点から整理しながら、示差熱天秤-ガスクロ質量分析計ならびに小型反応炉を用いて資源化プロセスの開発を行う。 K1914.近藤 勝義:安全・安価なハイブリッド式バイオマス利活用技術による農作物非食部のエネルギー・再資源化と産地での完全消費・循環システムの基盤構築に関する研究 農作物非食部である籾殻・稲藁のエネルギー・再資源化と産地での完全消費・循環システムの基盤構築を目指す. [1]人体・環境に無負荷なクエン酸洗浄(キレート反応)を利用したバイオマス中のアルカリ金属不純物の除去とセルロースの加水分解プロセスの開発 [2]焼成廃熱・エタノール等のバイオマスエネルギーの抽出と,その残渣からの高純度・非晶質シリカの生成を両立できるハイブリッド式バイオマス利活用技術の構築 [3]上記[2]のシステムを利用した農作物非食部の産地でのエネルギー・高付加価値資源化と完全消費に関する実証実験.具体的には,秋田県大潟村において可溶性シリカ肥料の農地還元による硬い苗を持つ多収穫米の育成や焼成廃熱を用いた冬季ハウス栽培等のフィールドテストの他,植物由来シリカの新規用途として日本酒製造用ろ過剤や食品香料担体などの地場産品,工業用素原料としてゴム・樹脂用補強材への利用に関する性能評価を自治体と共同で行う. K1915.進藤 昌:木材系微粉末からの並行複発酵技術による連続バイオエタノール生産技術の開発 本研究では、間伐材などの木質系バイオマスから低コストでバイオエタノールを生産するシステムの開発を目指す。木質はセルロースとヘミセルロースから構成されており主成分は6炭糖と5炭糖である。6炭糖はSaccharomyces cereviseae等の酵母で発酵可能だが5炭糖の発酵は困難である。そこで本研究では、5炭糖を発酵できる酵母であるPichia stipitisを用いて効率よく発酵できるシステムの構築を目指す。具体的には、P. stipitisは、エタノール耐性が低いためエタノール耐性変異株を取得する。さらにキシリトールへの変換を抑える発酵システムの開発を目指し、効率よく5炭糖からエタノールを生産させる。また、6炭糖を発酵できるS.cereviseaeとP.stipitisを同時に固定化したバイオリアクターシステムを構築し、微粉砕された木質からバイオエタノールを生産するシステムを構築する。 K1916.仲上 健一:バイオマス利活用に関する地域環境の診断手法及び環境効率評価手法の研究 本研究は, バイオマスに関する地域資源診断と利活用シナリオ評価が可能な「バイオマス資源循環利用診断評価モデル(以下「診断評価モデル」と略記する)」を開発し,バイオマス利活用に関わる新たな政策展開手法を研究する。研究内容は3項目である。1)既存の統計データを基にバイオマスの発生,フロー,ストックの量とその含有成分を把握するメインシステム(農林水産省系の8独立行政法人等が開発したモデル)を基礎とし,エネルギー,経済性,温室効果ガスを解析するためのサブモデルを追加した「診断評価モデル」を開発する。2) 地域特性が異なる複数地区のケーススタディを実施し,バイオマス政策展開が地域に及ぼす環境影響レベル診断及び環境効率評価の標準マトリクスを作成する。3)標準地区を選定し,新たな政策展開に関する課題を整理し,診断評価のマニュアル案を提案する。 K1917.植田 和弘:拡大生産者責任とリサイクル市場に関する研究 本研究では、廃棄物・リサイクル政策において近年注目されている政策概念「拡大生産者責任」について、その概念の政策的意義を他の政策概念との関連で正確に理解し多岐にわたる諸議論を整理することで、拡大生産者責任の理論的根拠ならびに責任配分や費用負担のあり方といった政策指針を明らかにする。そのうえで、容器包装リサイクル法の下で制度化されたリサイクル市場について、その構造と変化の推移を実証的に分析することで、拡大生産者責任政策とリサイクル市場との相互関係を明らかにし、拡大生産者責任制度の効果を検証するとともに政策をめぐる新たな着眼点を提示する。 K1918.藤原 健史:地方自治体における循環型社会形成のための廃棄物政策決定支援システムの開発 本研究では、地方自治体の将来の理想的な資源循環型社会を明らかにし、その社会に到達すべき廃棄物政策オプションを評価検討できる政策決定支援システムを構築する。このシステムでは、中長期的な社会変化(人口、世帯、ライフスタイル)や経済変化(産業構造、成長率)のシナリオを設定し、消費理論や物質フロー、産業プロセスをベースとして、一般廃棄物並びに産業廃棄物の発生量及び資源化量を緻密に計算し、廃棄物政策オプションを設定することによりシミュレートされる循環型社会像を、各種指標値で表現することによってその政策オプションを評価する。従来の廃棄物処理計画で行われてきた計画処理量の簡易計算を排除し、経済モデルと物質収支モデルをコアとするシステマティックな廃棄物量推計手法および政策評価手法を提示する。ターゲット年を2030年に設定し、対象として滋賀県を取り上げ、具体的な廃棄物政策オプションについて検討する。 K1919.神山 宣彦:アスベスト廃棄物の無害化処理品の生体影響評価に関する研究 アスベスト含有廃棄物の無害化処理として様々な技術が開発されているが、これまで無害化処理生成物の生体影響については十分な評価がされていない。廃棄量の多いアスベスト含有建材の無害化・再資源化処理として注目される技術として、建材中のアスベスト(クリソタイル)を焼成によりフォーステライトあるいは酸分解改質により繊維状シリカゲルといった工業的に再利用可能な材料に転換する技術がある。そこで、これらの無害化処理生成物の再利用の際の安全性を科学的に検証するために、実験動物を用いた生体影響評価試験を行い、呼吸器影響およびその他の全身臓器への影響とくに発がん性に関して、クリソタイルの毒性と比較し、総合的に評価する。さらに、アスベストによる発がんに関与する酸化的DNA損傷などのバイオマーカーの動態に関する基礎的研究をもとに、アスベスト無害化処理生成物を取扱う作業者に対する生物学的影響モニタリングの応用に関する研究も行う。 K1920.川端 邦明:画像処理に基づいたアスベスト定性分析支援手法に関する研究 建材等のアスベスト含有率測定を行う際に,まず定性分析による含有判定が行われる.この判定で含有が認められた際には詳細な定量分析に移行するため,定性分析での判定は大変重要である.しかしながら,現状の分散染色法による定性分析は非効率かつ作業者にとって負担が大きい.今後,ますますアスベスト分析のニーズが高まることが予想されるため,この問題を解決する支援手法の開発が急務である.そこで本研究では,アスベスト含有に関する定性分析を支援するための,画像処理によるアスベスト含有判定手法について研究開発を行う.公定法である分散染色法の基準に従い,画像処理技術および識別処理手法を用いて,顕微鏡写真内からサンプリングされた複数の領域に存在する全粒子数およびアスベスト結晶数を計数し,全粒子に対してアスベスト結晶が基準値以上含まれているかについて計算する.開発する手法は無害化処理後の再確認等にも利用可能である. K1921.小島 昭:アスベスト含有廃材の低温分解による無害化と処理物の再利用に関する研究 アスベストを含む材料を低温で分解し、非繊維化・非石綿化・無害化・溶融化をすべて満足する技術を開発し、処理物の安全性および再資源化を検討する。18年度の環境省科学研究(アスベストの低温融解による無害化研究(K1803))では、試薬アスベストに分解剤およびガラス化剤を加え加熱することで、目的に近い技術を構築することができた。この研究成果を基盤とし、スレートなどの工業製品として使用されたアスベスト含有材料を対象に非繊維化・非石綿化・無害化・溶融化する技術を開発する。具体的には、次の4つの方法で研究を遂行し、無害化技術を確立する。 1.アスベスト含有材料の分解剤およびガラス化剤を用いた低温分解ガラス化技術の深化。2.高性能走査電子顕微鏡による処理物中に残るアスベストの有無、含有量、サイズ計測。3.分解処理物の再利用技術の基礎的検討。4.人体への安全性を確認するラットを用いた長期にわたる動物毒性実験。 K1922.斎藤 直人:海岸流木のリサイクルに向けたシステム提案(漂着ごみ問題解決に関する研究 不安定に漂着する海岸流木の発生予測とリサイクルフローからなるシステムを提案する。海岸流木の処理・活用を促進するため、リモートセンシング技術を用いて森林環境、地形、河畔林の流出状況等から流木の発生源、発生量を推定する。また、リサイクル技術の現状、地域における処理の実態を把握し、例えば緑化資材、敷料、暗渠疎水材、海藻礁等の用途に対しての処理技術を、塩分を含む木材に適応させる。用途と処理技術は、環境負荷、コスト、市場性、効果等から評価し、地域のリサイクル技術として選定、フロー(活用の流れ)を形成する。すなわち、発生量に基づいて計画的なフローを形成させることにより、リサイクルの継続性・安定性の向上を図る。 さらに、リサイクルを後押しする法的整理と、公共事業のみに頼らず民間活力を活かすための政策提言を行う。また、流木漂着マップ、フローの形成マニュアルを作成し、各地の海岸にも適用可能なものとする。 K1923.浪平 隆男:コンクリート内パルスパワー放電による骨材再生 現在、コンクリート解体材のリサイクル率は、舗装用路盤材としての需要高により95%以上と高い水準にて推移しているが、今後日本の高度経済成長期に建設された数多くのコンクリート構造物が次々と寿命を迎えるためコンクリート解体材の排出量急増が予想され、また新規道路建設も縮小するため、現状での将来にわたる高リサイクル率維持は困難である。小資源国かつ最終処分場が逼迫しつつある我が国にとっては、資源循環を導く高リサイクル率の維持は命題であり、現在、コンクリート解体材からの骨材再生及びその構造物用コンクリートへの再利用の促進するJIS規格が制定されているが、既存の骨材再生技術はエネルギー効率や発生する二次廃棄物等の問題を有し、未だ十分な対応策は見出されていない。本申請研究課題では、新しい骨材再生技術として「コンクリート内パルスパワー放電による骨材再生」を提案し、その実用化を目指す。 K1924.中山 裕文:ライフサイクル環境負荷評価を完結させるための最終処分場環境会計に関する研究 本研究では、廃棄物最終処分場のライフサイクルを対象とし、特に、これまで研究蓄積の少ない埋立終了後から廃止に至るまでの期間をターゲットとした詳細な環境負荷インベントリデータを整備するとともに、廃止までの期間を含めて考慮した最終処分場の環境会計枠組みを構築し、廃棄物処理事業のライフサイクル環境・経済評価を完結させるものである。上記を達成するため、本研究では、(1)最終処分場における環境負荷物質のフローとストックの把握、(2)最終処分場にかかるコストとベネフィットの把握および環境会計枠組みの構築、(3)早期安定化が最終処分場のライフサイクルとコスト・ベネフィットに与える影響の推定を行う。 K1925.亀田 知人:マグネシウム-アルミニウム複合酸化物を利用した塩化水素排ガスの新規乾式処理方法の開発 マグネシウム-アルミニウム複合酸化物(Mg-Al酸化物)を用いた、塩化水素(HCl)排ガスの新規乾式処理方法を開発する。申請者は、既に、Mg-Al酸化物が塩酸から塩化物イオン(Cl-)を捕捉し、且つ酸を中和することを見出している。基礎研究では、気相中でのMg-Al酸化物によるHClの処理を検討する。ゼロエミッション化の観点から、捕捉したCl-の高濃度塩酸としての回収、Mg-Al酸化物の再生及びHCl処理への繰り返し利用を技術開発課題とする。さらに、実用研究として、Mg-Al酸化物吹き込み装置を備えた小型の廃棄物焼却炉と、Mg-Al酸化物再生炉を開発し、HCl排ガス処理へのMg-Al酸化物の循環利用のプロセス化を実現する。本方法は、水酸化カルシウムを使用する従来の乾式HCl処理法に比べ、埋立処分される飛灰量を大幅に減らすことができ、且つ埋立処分場浸出水の高塩濃度化を防ぐことができる。 K1926.藤田 昌史:バイオマーカーを用いた途上国の廃棄物最終処分場の安定化診断手法の開発 インドネシア、台湾において、埋立後の経過年数が異なるオープンダンピング型、衛生埋立型の各10ヶ所程度の最終処分場を対象に、浸出水の水質、微生物呼吸活性(酸素利用活性、硝酸還元活性、硫酸還元活性)を調べ、データベース化するとともに、キノンプロファイル法*)、16S rDNAに着目したT-RFLP解析**)、シークエンス解析を駆使して、浸出水に含まれるバイオマーカーの解析を行う。そして、統計学的な手法を利用しながら両者を統合した解析を進めるとともに、埋立廃棄物の分解の進行に関係するキーとなるバイオマーカーを抽出する。そして、バイオマーカーの活用方法を整理することで、目的とする安定化診断手法を構築する。また、バイオマーカーという従来にはない視点を考慮した新しい安定化の概念についても検討する。 *) キノンとは、微生物が呼吸に利用する補酵素であり、呼吸形態に応じてさまざまな種類がある。また、一微生物種は必ずひとつのキノン種を持つ。したがって、対象とする試料からキノンを抽出して、分離・定量すれば複合微生物系をキノンに基づいて特徴付けることが可能になる。このように、キノンをバイオマーカーとして利用する方法をキノンプロファイル法という。 **) T-RFLP法とは、PCR法により増幅させたDNAを制限酵素により処理し、電気泳動でその断片を検出する遺伝子解析手法である。DNAの塩基配列を調べるシークエンス解析も行うことにより、微生物種の同定が可能になる。 K1927.古川 憲治:バイオガス化プラント排水中の高濃度アンモニアのMAP-ANAMMOXハイブリッド処理技術の開発 高濃度アンモニア排液に固体状熱処理MAPを接触させることで直接アンモニアを吸収・除去させ、さらにそのMAPを風乾後105℃で放散させたアンモニアを部分亜硝酸化とANAMMOXによって生物学的に高速で除去させることで、バイオガス化プラントのエネルギー回収効率を飛躍的に向上させる。本研究では、実用化に向けて実際の排液を用いたMAPの劣化に対する技術的課題を克服するための実験を行う。また、ANAMMOXでは不織布を活用する上向流カラムリアクタのスケールアップに関する課題を解決するための実験を行う。なお、本技術はこれらの技術がそれぞれ持っている弱点のために実用化が進まなかった。すなわち、前者はアンモニアを回収してもその利用先がなく、後者は有機物が多いために著しい阻害を受けて実用化が困難であった。本研究ではこの2つの技術をハイブリッド的に繋ぐことによって両者の能力を最大限に高めたシステムを開発する。 K1928.樋口壯太郎:循環型社会に対応した最終処分システムの研究 最終処分場は、循環型社会を目指す基盤事業として欠くことのできないものである。しかし、新規の立地は極めて困難な状況におかれている。このような背景下、循環型社会における最終処分場のあり方として以下の三項目をあげ、その実現に向けて、概念設計、基礎実験による検証、課題の整理と対応策の検討を行う。 [1] 負の遺産解消:過去に建設された最終処分場の安定化促進、再生、修復、適正化の手法研究 [2] 信頼性(安全・安心)回復と向上:水源地の安全性を確保する視点から、最終処分場立地回避地域設定手法を開発するとともにモニタリング位置の決定方法を提案する。また降水量特性に応じた浸出水管理システム(浸出水調整施設規模、水処理施設規模)を構築し安心・安全な処分場のありかたについて提案する。 [3] 資源保管型埋立地:資源利用可能廃棄物の保管庫として、繰り返し使用可能な埋立地等の提案を行なう。(分割埋立、被覆型埋立地、前処理機能付埋立地) K1929.三木 貴博:マイクロ波を利用したアスベスト無害化に関する研究 繊維状のアスベストは、肺がん・悪性中皮腫を引き起こす人体に極めて有害な物質である。現在のアスベストの処分方法は保管や埋め立てであり、将来のアスベスト飛散の危険性は払拭できない。これまで研究されているアスベストの酸処理は、廃酸へのアスベストの懸濁の危険性があり、アスベストの溶融化処理は、大きなエネルギーを必要とする。本研究では、マイクロ波を利用したアスベストの無害化技術の開発を行う。アスベスト中の酸化ケイ素を酸化りん等と低温で反応させ、繊維構造を破壊し無害化を行う。アスベストに混合するものとしては、例えば、酸化りんを豊富に含むポリ鉄処理した下水汚泥が考えられる。酸化鉄はマイクロ波によって加熱されやすく、また、酸化りんはアスベストに含まれる酸化ケイ素と化合物を形成する。クリーンなマイクロ波を利用し、エネルギー消費が小さく、迅速かつ確実に処理できるアスベストの無害化技術の開発を行う。 K1930.橋本 征二:物質ストック勘定体系の構築とその適用による廃棄物・資源管理戦略研究 大量生産・消費・廃棄に象徴されるフロー型社会に対するものとしてストック型社会が提示されているが、既存の物質ストックを有効に活用するためには、具体的にどのような物質がどの程度社会に蓄積され、活用され、将来にわたって廃棄物として発生し、また、資源としての再活用が可能で、もしくは有害性を有するのかを明らかにすることが必要である。このようなことから、本研究では、物質フローの勘定体系と整合した物質ストックの勘定体系を構築してこれを適用し、いくつかの製品や素材を対象として近未来のシナリオ分析を行うことで、ストックに関わる廃棄物・資源管理戦略について検討する。フローとストックを整合的に取り扱う勘定体系の構築には学術的な貢献が期待できる。また、その適用から得られる物質ストックに関する情報は、ストック型社会に向けた廃棄物・資源管理戦略構築の基礎情報となることから、社会的な貢献が期待できる。 K1931.谷口 正之:担子菌を用いた脱リグニン処理法の開発による農産廃棄物の利用法の拡大に関する研究 持続可能な社会を構築するためには、各種廃棄物の利用法を拡大する再資源化技術の開発が極めて重要である。そこで、異なる起源の廃棄物である農産廃棄物(稲わらなど)と食用きのこ(担子菌)廃菌床を組み合わせて、トータルの廃棄物量を削減するばかりでなく、適正で安全に発酵原料などとして利用を拡大するための基盤技術を開発する必要がある。本研究では,稲わらなどの農産廃棄物を、食用きのこ廃菌床を用いて脱リグニンする処理法を確立した後、キシロースやアラビノースなどの五炭糖(ペントース:全重量の20~30%)も含めた全糖質からエタノールなどのエネルギー物質や循環型(生分解性)プラスチック原料(乳酸)を生産する生物変換技術を開発することを目的とした。本研究の成果によって、農産廃棄物をエネルギー物質・工業原料へ変換する1.5次産業(農産物などからエネルギー・工業原料を生産する産業)を創出・育成することが期待される。 K1932.稲森 悠平:高度処理浄化槽におけるリン除去・回収・資源化技術の開発とシステム評価
環境低負荷資源循環型社会を構築する上で、リンを100%海外依存する我が国では、浄化槽法改正で指摘されたリン除去・回収・資源化技術の開発と導入は最大の課題である。このことから本研究事業では、「高度処理浄化槽におけるリン除去・回収・資源化技術の開発とシステム評価」を行うこととし、初年度では、吸着・鉄電解脱リン法を中核として、モデル地域における現場試験を行うと同時に連続リン回収システムを構築する等、リン除去のみならず資源循環を考慮したリン回収のための除去安定性の高い脱リンシステムの基盤を構築することができた。 K1933.渡辺 義公:ヒトDNAチップを用いた多指標型環境汚染化学物質の毒性評価システムの開発 現在、廃棄物最終処分由来で環境中に蓄積・排出されている合成化学物質は数万種類に上ると推定され、その数は年々増加している。これら有害化学物質の人の健康に与える影響を迅速に評価しなければならない。しかし、低濃度かつ複合汚染が予想される浸出水の毒性評価には、微生物等を用いた従来のバイオアッセイ法では限界がある。そこで本研究では、環境中に蓄積・排出されるすべての化学物質に対して有害性を評価することは不可能であるので、特定の有害作用(タンパク変性、酸化ストレス、細胞膜障害性、DNA障害性等)を持つ代表的な化学物質の存在下において、特異的に発現するヒト遺伝子(群)を、DNAマイクロアレイ技術を用いて網羅的に検出・選定し、選定されたそれぞれの化学物質特異的応答遺伝子を組み込んだ細胞を作成し浸出水に暴露させ、これらの遺伝子発現を同時に検出することにより、浸出水の複数の毒性作用を一度の試験でスクリーニングできる、迅速・簡便・安価な多指標型バイオアッセイシステムの開発を行う。これにより、試料水中の毒性の有無に加えて、発現遺伝子パターンから原因化学物質の簡易的な推定が可能となり、その後の化学的機器分析による定量・同定および汚染源対策の方策を示唆することが可能となる。 K1934.川本 克也:プラスチック含有廃棄物の処理およびリサイクル過程における有害物質の生成特性解析と効率的対策手法の開発 本研究は、プラスチック含有廃棄物の処理・リサイクル過程時に排出される有機窒素化合物等について、その実態を把握し生成特性を解明、処理技術を開発する。具体的には、ダイオキシン類の排出削減対策により焼却温度を高温化するに伴いニトロ多環芳香族化合物(ニトロPAH)の生成が増大するという仮説を検証し、その生成実態・特性を解明する。また、拡大する廃プラスチック類のリサイクルは、RPF製造工程などの100~200℃程度から500℃前後のガス化・炭化など幅広い温度領域・雰囲気下で行われるが、これらの工程で排出される樹脂原料や添加剤或いは二次生成物質の情報は少ない。本研究は、要素実験や実施設調査によって、その実態を把握し生成・排出特性を明らかにする。また、これら研究に適した分析手法を確立すると共に、高効率触媒の適用など有機窒素化合物等の低減技術開発を行うことで、資源循環過程での化学物質管理の向上に寄与する。 K1935.関 耕平:地方自治体による産業廃棄物処理への「公共関与」政策の分析と評価 本研究の対象は、廃棄物政策における公共部門の役割と範囲である。廃棄物処理施設や最終処分場の整備、廃棄物の収集運搬などの社会サービスなどを歴史的に担ってきたのが公共部門であった。1991年までのわが国における廃棄物政策の基本理念は「公衆衛生の確保」であり、公共部門は廃棄物の適正処理手段を確保すべく社会資本整備を行ってきた。しかしその結果、廃棄物の量的拡大と質の多様化を招いてしまった。廃棄物の適正処理だけでなく、廃棄物の発生を抑制するという政策目標をも達成する公共部門の介入のあり方が今問われているのである。 本研究では、この廃棄物の適正処理と発生抑制の両方の政策目標を同時に達成する公共部門の介入のあり方を、主に地方財政論の観点から解明する。具体的には、1970年以降、わが国およびドイツにおいて地方自治体がとってきた「産業廃棄物処理への公共関与」政策を分析することである。 K1936.吉岡 敏明:塩素系プラスチック製品の置換型脱塩素によるアップグレードリサイクルと有価金属回収 廃プラスチックの中でもポリ塩化ビニル(PVC)等の塩素系プラスチック処理の実情は,一部を除いてほとんどがリサイクルよりも,むしろ処理という観点が先行している。これには塩素による環境上の問題と再生製品の品質保証に課題があり,新しい脱塩素処理法の開発と脱塩素処理PVCのアップグレード化による再利用が不可欠である。本研究では,これまで高炉還元や油化等,様々な分野で採用されている乾式熱分解による脱塩素ではなく,湿式法による脱塩素法の開発を行なう。つまり,乾式法とは異なる脱塩素反応の特徴(乾式法ではラジカルによる脱離反応,湿式法ではイオンによる置換反応)を活かして,燃焼によるエネルギー回収に限定される炭素残渣を発生させることなく,機能性を付与した脱塩素PVCとして再利用することを検討する。また,家電,自動車等から排出される電線,ワイヤーハーネス等についても,PVCを脱塩素し機能化させると同時に有価金属を回収することも検討する。 K1937.細見 正明:ダイオキシン類汚染底質の間接加熱処理に伴うダイオキシン類の除去挙動に関する研究 ダイオキシン類汚染土壌の処理法として間接加熱処理が注目され、これまでに能勢町のダイオキシン類汚染土壌を効率よく除去または分解できることが示されてきた。しかしながら、申請者らはPCBsや他の有機塩素化合物を含む底質に間接加熱処理を適用すると、ポリクロロジベンゾフラン(PCDFs)が生成される可能性を認めた。そこで、本研究ではダイオキシン類の由来(汚染源)が異なる底質を、温度、雰囲気(窒素、酸素濃度)、雰囲気ガス流量を変えた条件で処理し、PCDFsの生成が起こる底質の特徴を明らかにする。さらに、PCDFsの生成が認められた底質の性状に基づきPCDFsの前駆体を分析し、検出された前駆体(安定同位体でラベル)をスパイクした底質を間接加熱処理する。PCDFs生成量を評価し、PCDFsの生成経路を明らかにする。以上を踏まえて、ダイオキシン類汚染底質を適切に間接加熱処理するための条件を見出す。 K1938.大迫 政浩:再生製品に対する環境安全評価手法のシステム規格化に基づく安全品質レベルの合理的設定手法に関する研究 量的に多い建設資材系への廃棄物再生製品を対象とした土壌・地下水への溶出リスクに焦点をあて、その性状や多様な利用形態による影響の違いを適切に評価でき、かつ外部環境変化や長期経過に伴う影響等、目的に応じた複数の試験方法を設計する。その上で、実試料を用いた実験的検討等を行って妥当性を検証し、一連の試験群を体系的なシステム規格として提案する。具体例としては、粒状・成型状製品について、有害物質の拡散フラックスの評価(拡散試験)、外部環境としての降雨接触条件(液固比依存試験)やpH変化を考慮した評価(pH依存性試験)、想定環境により近い動的評価(連続バッチ試験)、およびアルカリ側を考慮した最大溶出可能量評価(アベイラビリティ試験)等である。また、一連の試験群から得られるデータを用いた土壌・地下水への影響予測手法を確立し、科学的な不確実性と社会的影響を勘案した合理的な安全品質レベルの決定手法を構築する。 K1939.清水 正賢:廃棄物を利用した鉄-水素コプロダクションシステムに関する研究 研究の狙いは、廃プラスチック、RDF、古紙、廃木材等の有機系一般廃棄物を鉄鉱石の製錬反応と組み合わせて水素およびCOガスに転換する「鉄-水素コプロダクションシステム」の開発にある。具体的には、水素成分を多量に含む有機系廃棄物を鉄鋼の高温熱処理技術や乾留技術、鉱石原料中への内装法等によって熱分解させ、得られる水素および炭化水素系ガスを利用して鉄鉱石の還元反応を高速化、低温化させるとともに、還元反応で生成するH2OとCO2ガスを炭化水素から分解析出する活性な遊離炭素によって、還元と同時に水素とCOガスに瞬時に改質する鉄-水素コプロダクション技術を開発する。この鉄鋼製錬反応を利用した有機系廃棄物の高度利用技術は、石炭系燃料に頼ってきた製鉄分野の大幅なCO2排出量の削減に繋がるだけでなく、廃棄物利用新水素エネルギーの創生など環境保護ならびに廃棄物処理の負荷低減に大きく寄与するものである。 K1940.貴田 晶子:循環廃棄過程を含めた水銀の排出インベントリーと排出削減に関する研究 水銀に対する世界規模で排出量制御及び処分方策が喫緊の課題となっている。大気への水銀排出量の46%はアジアからと推定され、排出源の寄与は石炭燃焼・廃棄物燃焼が大きいとされているが、その見積もり自体の不確定性は大きいとされている。そこで、世界における水銀排出量に対する日本及びアジアの大気排出インベントリーの作成を目標とし、自然由来発生量と共に人為的発生量をカテゴリー別排出係数と排出量から推定する。排出インベントリー及び物質フローモデルに必要な循環資源・廃棄物中の水銀賦存量について情報整理し、実験的取り組みにより熱処理過程からの排出量推定の精度を向上させる。またリサイクルの推進により廃棄物・二次資源や回収された水銀がアジアへ流入している状況をふまえ、水銀の物質フローモデル及び環境動態モデルを、アジア地域を見据えて開発する。更に水銀の形態別分析や連続モニタリングについても取り組む。 K1941.松藤 敏彦:ベンチマーク指標を活用した一般廃棄物処理事業の評価に関する研究 市町村の一般廃棄物処理事業について、排出抑制、再生利用、適正処理、環境負荷低減、市民へのサービス等の事業の現状評価・診断、施策効果・費用効率性の評価を行い、事業の改善分析にも応用できるベンチマーク指標を開発する。 廃棄物処理事業の詳細分析、事業の評価・診断のために、マテリアルフロー、コストなどのミクロ的指標を作成する。また、投資(予算)、施策内容、施策の直接的結果(ごみ減量など)、最終アウトカム(環境負荷低など)の階層構造を明らかにし、施策効果や投資効率性を表し、自治体間比較が可能なマクロ的ベンチマーク指標を設計する。地域特性(地勢・産業・世帯構成・規模等)と各種施策効果の関係を明らかにし、地域の実情を踏まえた評価を可能とする。開発したベンチマーク指標を実際の複数の自治体に適用し事業評価と自治体間比較を行い、その適用性を実証するとともに指標活用策の方向性を提示する。 K1942.大迫 政浩:近未来の循環型社会における技術システムビジョンと転換戦略に関する研究 近未来(10~20年後)における循環型社会の形成を目指し、社会条件の変化や政策動向とそれに伴う物質フローの時空間的な変化を、過去のトレンド解析等を踏まえた分析モデルに基づき推定し、今後資源循環のターゲットとすべき循環資源・廃棄物を予測する。また、それらを適切に資源循環していくために、技術システムシーズのレビューを基に、地域特性に応じた様々な空間スケール毎の、あるいは個別製品毎の技術システムを設計・提示し、天然資源消費抑制や環境負荷低減、資源エネルギーセキュリティ、国土保全などの観点から描く将来ビジョン(目標)の達成に向けて、バックキャスティング及びフォアキャスティングの視点から評価する。さらに、将来ビジョンに向けた転換戦略としての循環型社会形成推進交付金制度や再生利用認定制度、個別リサイクル法などの技術政策の在り方を検討し、シナリオ・ロードマップとして提示する。 K1943.野 口 貴 文:コンクリート産業における環境負荷評価マテリアルフローシミュレーターの開発および最適化支援システムの構築に関する研究 "本研究では,各生産段階だけでなくコンクリートおよび無機系建材の関連産業を対象とした需要と供給のマテリアルバランスを、廃棄物抑制、輸送エネルギー削減、経済性などを考慮した上で成立させ,建築物の長寿命化やリサイクルに伴う環境負荷低減効果など,長期にわたる時間軸の考慮を可能とする環境評価ツールとして,マルチエージェントシステムを用いた環境負荷評価マテリアルフローシミュレーターの開発を行う.本シミュレーターと連成し、他産業廃棄物利用、二酸化炭素排出,最終処分物量に加え,経済性や製品品質など複数の基準による総合評価に基づいた最適なマテリアルフローの提示可能な支援システムの構築を行う. さらに,都市圏および実建設現場を数箇所選び,コンクリート関連産業や廃棄物処理産業,各種関連統計や地理的条件などを諸元としたアクションスタディを行い,環境負荷最適化シナリオの提案と循環型社会形成に向けた意思決定支援を行う. K1944.山田 正人:最終処分場におけるアスベスト廃棄物の安全性評価手法の開発 アスベスト問題の安全・安心かつ究極的な解決を図るためには、過去から現在までにアスベストが埋め立てられたアスベスト最終処分場を特定して封じ込めの実態を確認すると共に、掘り起こし再生事業や跡地の形質変更時における再放出の防止を図る必要がある。本研究では、各種記録や現場調査によってアスベストを埋め立てた処分場を特定する手法、飛散を防ぐ埋立試料のサンプリング方法、保有水等や埋立地ガスに含まれるアスベストの存在量を把握する手法を示し、室内実験によって処分場内におけるアスベストの廃棄物層内の移動特性と掘削時における飛散特性を把握する。これら一連の手法を既存最終処分場に埋め立てられたアスベストの安全性確認手法として体系化し、適正埋立を行うための情報管理システム、埋立層内のアスベスト移動を抑止する埋立技術の開発や容量増加や形質変更時における指針、封じ込め能力を高める埋立工法や管理手法を提示する。 K1945.堀尾 正靭:廃棄物系バイオマスからの粉炭燃料の製造可能性と有害物質除去方法の研究 コーヒー粕や茶殻等の食品廃棄物や、剪定枝、廃木材等の廃棄物系バイオマスから、申請者らが福岡県田川郡添田町と共同で別途開発してきた「バイオマス粉炭ストーブ」(給湯器・ボイラーにも発展可能)の燃料として安全に使用できる新しい「粉炭燃料」を製造するための基礎研究として、炭化物の密度、硬度、内部表面積、流動性、化学組成、燃焼特性、エミッション特性、灰物性などの指標について測定を行い、基礎的評価を行う。また、農薬などを含む場合については、有害物質が炭化物に残留しない方法を検討すると共に、炭化時に発生するガスやタール等の処理方法も検討する。これらに基づき、廃棄物リサイクルと無害化に粉炭燃料製造が持つ意義を明らかにする。平成18年度は、炭化物、炭化時の発生ガスの農薬など有害物質挙動を明らかにした。平成19年度は、18年度の課題をさらに補強するとともに、各種廃棄物からの高効率粉炭燃料製造法の検討を行う。 K1946.葛西 栄輝:アスベスト廃棄物と廃棄物焼却灰の高効率・高信頼性溶融無害化および資源化 アスベスト廃棄物(特に飛散性のある特別管理産業廃棄物)を廃棄物焼却灰と共に溶融・固化し、無害化・再資源化するプロセスを確実かつ効率的に行うためのマニュアルを、基礎研究によるデータベース構築と焼却灰溶融炉を用いた実証試験によって確立する。アスベスト廃棄物はモルタル等と複合化しているため、局所的な成分偏在に加え、平均化学組成の大きなばらつきが存在する。これが溶融処理でのスラグ化不良の主たる原因であり、溶融炉の燃料比増加、耐火物損傷、稼働率低下に直結する。一方、焼却灰組成も対象廃棄物や焼却炉の操業条件によって変動し、特に産業廃棄物の場合に顕著である。したがって、常に的確な組成制御を行い、低温で流動性が高い液相を形成する技術開発が不可欠である。本研究では、基礎研究に基づき、フラックス材添加や溶融炉操業の条件を最適化するためのデータベース構築と操業条件のマニュアル化を図り、実証試験によって検証する。 K1947.野馬 幸生:アスベスト含有廃棄物の分解処理による無害化の確認試験方法の確立とその応用 本研究は、アスベスト廃棄物の無害化処理における処理物の有すべき条件を明確にするために、(1)処理物のアスベスト試験方法の確立、(2)土壌等一般環境レベルとの比較論的考察、及び(3)熱処理後の繊維状物質の毒性学的評価を行い、無害化処理を確認する手法を開発する研究である。(1)では既存の試験方法をベースに固体試料の前処理法を整備し、透過型電子顕微鏡を用いた高感度・高精度の分析法を組合せて処理の効率を確認する試験を、また併せて日常モニタリング手法との整合性を確認する。(2)では無害化処理のレベルを考慮するのに必要な自然のバックグラントレベルや現在の都市環境の存在レベルを把握する。(3)ではアスベスト繊維が熱処理過程によって形状・化学形態・結晶構造の変化に伴いどのように生体毒性が変化するかを、in vitro及び in vivoの毒性試験により確認する。更にマイクロ波照射による処理の実証試験を行う。 K1948.山崎 仲道:アスベストの判別・無害化回収・無害化処理システムの確立に関する研究 喫緊の課題であるアスベストの汚染防止、無害化処理システムの確立を目標とした研究を遂行した。水熱プロセスの特徴は 1)完全閉鎖系であること。2)湿式プロセスであるために微粉末飛散がないこと。3)300℃以下の温度であって、あらゆる焼却プロセスの廃熱が利用でき、エネルギー消費を低く抑えることができること。の3点を大きな特徴とする。いいかえれば最も事業化が容易であると考えられ、事業化への基礎固めを目標とし、初年度で以下の成果目指した方法論の確立と予備試験に成功した。(1)アスベスト鉱物相の水熱変質相の同定 (2)アスベストの完全分解(3)鉱物相の有価物質への転換 (4)有価鉱物層合成の原料への転換 (5)土木材料への展開可能性 (6)水熱プロセスの事業化のための概念設計。2年時である19年度ではこれらの予備成果をもとにして事業化のデータベースを明確化し、事業化への展望を明確にする。 K1949.馬場 由成:バイオマスの高機能化とめっき廃液の最適な資源循環システムの構築 めっき廃液は,有価な亜鉛やニッケルを大量に含んでいるにも関わらず,微量のクロム,鉛,錫の重金属等を含んでいるため,有害難処理廃棄物となっている。一方,金やパラジウム等の貴金属めっき廃液は,微量な貴金属の回収技術が遅れており,そのまま排水されている。本研究では,地域バイオマス廃棄物を利用してこれらを回収・除去することにより,めっき廃液の無害化・資源化技術の開発を行う。今まで蓄積してきたバイオマスの機能化技術(簡易型グラフト重合法,分子インプリント法,超多孔性球状化技術)により,高選択的,高吸着速度,高吸着容量を有する分離材・吸着材を製造し,めっき実廃液からの貴金属や有価金属の回収,あるいは重金属の除去に関する小規模の分離・吸着プラントを作成し,実用化プロセスを構築する。さらに,キチン・キトサンの素材のよさ(ビーズ,繊維,中空糸,膜)を生かしながら,対象めっき廃液に最適なプロセスを確立する。 K1950.藤田 壮:産業拠点地区での地域循環ビジネスを中核とする都市再生施策の設計とその環境・経済評価システムの構築 国内の先進的な産業集積「川崎エコタウン地区」を対象として,循環形成の環境・社会経済効果を定量的に評価するシステムを構築する.循環形成がもたらす効果を定量化することで,これまでの環境施策と循環ビジネスを評価する.加えて,産業間の副産物の連携拡大や都市・産業連携のアクションプログラムを設計・評価するシステムを築く.すなわち,[1]地域の物質代謝の空間情報データベースを共有する地理情報システム・ネットワークで構築したうえで,[2]企業と連携して循環施策の中核となる転換技術の代謝プロセスモデルと,輸送プロセスを含むLCA評価システムを構築する.そのうえで[3]個別事業から統合的な都市政策まで多様な代替的施策を設計して評価するシステムを構築する.④川崎地区での運用を通じて行政,企業の要請を反映してより実用的システムを実現しつつ,国際共同研究者とともに産業共生型の都市再生システムのベンチマークモデルを構築する. K1951.森口 祐一:国外リサイクルを含むシナリオ間のライフサイクル比較手法と廃プラスチックへの適用 日本で消費された物品がリサイクル目的に輸出される、いわゆる国際資源循環を取り上げ、国内完結型のリサイクルと国外での工程を含むリサイクルについて、ライフサイクル分析による環境負荷やコストの比較を行う。このため、国外のプロセスを含むライフサイクル評価手法の枠組みを設計する。また、事例研究として、廃プラスチックの国内外でのリサイクルをとりあげ、国内外でのリサイクルシナリオを設定し、リサイクルプロセスに関するインベントリデータやプロセスフローの情報、当該プロセス以外で必要となるユーティリティ部門、物流部門のインベントリデータを現地調査等により収集する。これらをもとにシナリオ間の環境負荷やコストの比較を行い、結果の解釈を行って、リサイクル制度の設計等のための知見を得る。 K1952.寺 園 淳:アジア地域における廃電気電子機器と廃プラスチックの資源循環システムの解析 廃電気電子機器(E-waste)と廃プラスチックはアジア地域において適正な資源循環システムを構築するための重要な検討対象であるが、基礎となるべき各国国内及び国際的なマテリアルフロー情報が不足している。本研究では、国内・国際両面からのマテリアルフロー解析と影響因子の把握を行うとともに、将来の制度や経済などの変動にも対応しながら、適正な資源循環システムを構築するために必要な条件などの知見を提供することを目的とする。 そのために、各種統計調査、国内外の現地調査や海外専門家との研究協力によって、国内発生・輸出・リサイクル状況の調査と貿易統計を基にして、廃電気電子機器と廃プラスチックの国内・国際両面からのマテリアルフローの解析を行う。また、指標化、モデル分析ならびに制度分析によって資源循環システムの解析を行い、規制動向や需給変化などを考慮した複数のシナリオに対してマテリアルフローや指標の変化を見る。 K1953.酒井 伸一:家庭系廃製品の残留性化学物質と3Rシナリオ解析 製品に含まれている重金属類や難燃剤成分等の有害物質は、リサイクル工程や廃棄物処理に伴って環境へ排出されるおそれがあり、こうした観点から特定有害物質使用制限(RoHS)指令等の国際的な規制も導入されるようになっている。アジア地域における国際資源循環を構想する上で、製品に含まれている有害物質がリサイクルや廃棄物処理の過程で環境中へ放出されることを防止するための仕組みが必要不可欠である。このため、代表的な家庭系廃製品について、アジア地域におけるリサイクルや廃棄物処理を念頭において、重金属類や臭素系化合物等の残留性化学物質を取り上げた環境化学的研究、システム論的研究を行う。物質代替、回収再生などの3R方策を主たる検討の対象とし、適正処理や不適正処分を対照に据えたシナリオ研究を推進する。なお、事実の発見、モデルとパラメータ解析、3Rシナリオの導入、これらを相互フィードバックさせた研究展開を心がける。 K1954.柳下 正治:中国における廃棄物資源管理能力向上に関する政策研究―地域循環システム実現のための地方における廃棄物資源管理の実効性と地域社会浸透― 中国では、都市レベルでの廃棄物処理・資源管理に関し、理念を掲げる国の政策と地方(都市部)における取組実態との乖離が著しい。そこで、本研究は、[1] 日中韓の3都市を事例に、国レベルでの廃棄物処理・資源管理に関する制度・政策が、都市部ではどのように実施されているか、その制度・政策の運用実態を把握し、都市における廃棄物資源管理能力を向上させるために重要な要素(市民社会による取組、情報公開、経済的インセンティブ等)・阻害要因および課題を抽出する。[2] 中国では地方における資源管理を実施していくうえで公衆参加をいかに実現していくかが課題であるという問題意識に基づき、中国の代表的4都市における公衆参加の実態を分析し公衆参加の阻害要因を明らかにする。これらの[1][2]の研究成果を踏まえ、融合させる形で、中国の都市レベルにおける廃棄物資源管理能力向上およびそのための地域協力のあり方に関する政策提言を行う。 K1955.外川 健一:アジア地域における自動車リサイクルシステムの比較研究 2005年の自動車リサイクル法の本格施行以降、日本発の使用済自動車およびそれに由来する部品や素材・ASRの処理・リサイクルの構造が、大きく変化している。このような構造変化の要因を分析し、日本発のELVという視点に加え、日本以外のアジア諸国発・ドイツ発さらには自動車大国であるアメリカ合衆国発のそれを比較・検討する。さらにアジア・太平洋地域における自動車リサイクルシステムの特質を、[1]放棄車両問題や解体作業に伴う汚染問題など環境問題への対応、[2]リサイクル部品・素材のフロー分析(国際的に展開するリサイクルシステムの形成メカニズムの解明という視点を含む)、[3]自動車リサイクルの制度改革に関するEUあるいは日本からの影響とその内実、という観点で、それぞれを明白にしていく。 K1956.小島 道一:アジア地域におけるリサイクルの実態と国際資源循環の管理・3R政策 アジア諸国のリユースやリサイクルの状況、再生資源の越境移動に関する規制、その実態等を踏まえながら、国際資源循環のあり方、国際資源循環を踏まえたアジア各国における3Rに関する制度設計について検討する。実態の把握については、アジア各国での政府・企業等からのヒアリングに加え、バーゼル条約や3Rイニシアティブ関連の国際会議へ参加し情報を収集する。また、ベトナム、フィリピン等で委託研究を実施し、循環資源の輸出入の影響を含めてリユース・リサイクルの実態を明らかにする。国際資源循環のあり方については、各国の有害廃棄物等の越境移動にかかわる制度の相違点等を明らかにし、EU等の経験を参考にしながら、アジアにおける循環型社会形成へ向けた提言をおこなう。また、各国内の3Rに関する制度設計については、e-wasteのリサイクルを対象として、各国の制度を比較し、国際資源循環を踏まえた制度設計について提案する。 K1957.劉 庭秀:日韓における拡大生産者責任制度の実態分析とパートナーシップ構築に関する研究 韓国は2003年から「生産者再活用責任制度(EPR)」を施行し、その成果を踏まえて昨年末から改正議論が始まっている。殊にEPR関連制度の強化のため、2008年から「電気・電子製品及び自動車の資源循環に関する法律」を施行する予定である。本研究班は、昨年韓国におけるEPR制度全般の改正ポイントを分析しながら、日韓の自動車リサイクル制度を事例に挙げてその現状と問題点を分析した。日韓の自動車リサイクル制度がアジア諸国に与えると影響は非常に多く、2年目は生産国(日韓)、環境規制国(中国)、途上国(モンゴル国)の3つのタイプに分け、それぞれのシナリオ分析を試みる。また、アジアにおけるEPR概念の見直し、環境NGO及びリサイクル市場の役割、政策決定プロセスの特徴等を考慮しながら、国内外におけるパートナーシップの構築を探る。これらの分析結果や事例分析に基づき、アジア型EPRのあり方と協力方案を提案する。 K1958.黒岩宙司:アジア地域における国際保健政策と医療廃棄物の現状とマネージメントの研究 医療廃棄物は不適切に処理されると血液を介し医療従事者や一般大衆に感染を広める。そしてグローバリゼーションによってその感染は国内外に広がっていく。一般に欧米主導の途上国に対する保健政策は目標達成のために新たな薬・技術を投入する反面、それらの使用後の処理能力までは考慮されておらず、環境汚染が進んでいる。そこで中国、ラオス、モンゴル、タイ、パキスタンなど代表研究者と研究協力関係のあるアジア地域において、まずは各国の保健政策・医療廃棄物の現状を調査し、その後改善のためのトレーニング等における介入効果を検証する。管理・事故予防の教育プログラムを医学・看護教育現場に導入したり、注射針処理機を用いて安心して予防注射ができるようにしたりするなど、アジア地域の廃棄処理能力に即した医療廃棄物管理を考慮するよう提言をしていきたい。最終的には環境に配慮した医療廃棄物管理のアジアでの研究ネットワークを発展させていきたい。 K1959.平井 康宏:京都地域におけるごみ有料化施策による資源循環変化の3R行動モデル解析
本研究では、政令市3番目のごみ有料化自治体である京都市を含む京都地域を対象に、有料化施策の効果を解析する。一次データ取得のため、ごみ組成調査や住民アンケート調査を行い、既存資料とあわせ、1)自治体のごみ施策要因、2)住民の意識・行動、3)資源循環・ごみ流れの変化、の情報を整備する。また、これらの関係を、1)と2)をつなぐ「ごみ分別行動の規定因モデル」、2)と3)をつなぐ「減量効果積み上げモデル」からなる3R行動モデルにより解析し、以下の成果を得ることを目指す。 K1960.小野田 弘士:一般廃棄物処理システムにおける環境負荷・経済性の実効性評価手法に関する研究 一般廃棄物処理システムの環境負荷・経済性をLCA(Life Cycle Assessment)、LCC(Life
Cycle Assessment)の観点から包括的に評価する実効性評価ツールとして「BAS for WM (Best Available
System for Management System )」評価手法(以下、「BAS評価手法」という)の開発および高度化を図ることが目的である。 K1961.山川 肇:家庭ごみ有料化とEPR政策による発生抑制効果に関する研究~容器包装に注目して
本研究では、発生抑制促進策として注目される有料化とEPR政策の効果を、容器包装を中心として実証的に検討することを目的とする。本年度は、以下の2点に取り組む。 K1962.松井 康弘:分別収集・中継輸送に関する費用対効果・費用便益の分析
本研究では、容器包装・生ごみの分別収集、近年導入例が増加してきている各戸収集、及び中継輸送に焦点を当て、そのコスト・環境負荷及び費用対効果・費用便益を明らかにし、3R推進・環境負荷削減を適切に進めるための施策立案に資する基礎資料を提供することを目的とする。 |
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環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課 TEL: 03-5501-3154 FAX: 03-3593-8263 E-mail: hairi-haitai@env.go.jp |
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