平成19年度で研究事業期間が3年計画の2年目に当たる研究26件について、廃棄物対策研究審査委員会において中間評価を実施しましたので、結果を次のとおり発表します。
1.平成19年度中間評価対象研究(全26件)
*評価結果は、審査委員ごとに評価点数の偏差値を算出し、当該偏差値を研究課題ごとに平均したもの。
2.研究の概要
K1927 バイオガス化プラント排水中の高濃度アンモニアのMAP-ANAMMOXハイブリッド処理技術の開発
古川 憲治
高濃度アンモニア排液に固体状熱処理MAPを接触させることで直接アンモニアを吸収・除去させ、さらにそのMAPを風乾後105℃で放散させたアンモニアを部分亜硝酸化とANAMMOXによって生物学的に高速で除去させることで、バイオガス化プラントのエネルギー回収効率を飛躍的に向上させる。本研究では、実用化に向けて実際の排液を用いたMAPの劣化に対する技術的課題を克服するための実験を行う。また、ANAMMOXでは不織布を活用する上向流カラムリアクタのスケールアップに関する課題を解決するための実験を行う。なお、本技術はこれらの技術がそれぞれ持っている弱点のために実用化が進まなかった。すなわち、前者はアンモニアを回収してもその利用先がなく、後者は有機物が多いために著しい阻害を受けて実用化が困難であった。本研究ではこの2つの技術をハイブリッド的に繋ぐことによって両者の能力を最大限に高めたシステムを開発する。

K1928 循環型社会に対応した最終処分システムの研究 樋口 壯太郎
最終処分場は、循環型社会を目指す基盤事業として欠くことのできないものである。しかし、新規の立地は極めて困難な状況におかれている。このような背景下、循環型社会における最終処分場のあり方として以下の三項目をあげ、その実現に向けて、概念設計、基礎実験による検証、課題の整理と対応策の検討を行う。
[1] 負の遺産解消:過去に建設された最終処分場の安定化促進、再生、修復、適正化の手法研究
[2] 信頼性(安全・安心)回復と向上:水源地の安全性を確保する視点から、最終処分場立地回避地域設定手法を開発するとともにモニタリング位置の決定方法を提案する。また降水量特性に応じた浸出水管理システム(浸出水調整施設規模、水処理施設規模)を構築し安心・安全な処分場のありかたについて提案する。
[3] 資源保管型埋立地:資源利用可能廃棄物の保管庫として、繰り返し使用可能な埋立地等の提案を行なう。(分割埋立、被覆型埋立地、前処理機能付埋立地)

K1929 マイクロ波を利用したアスベスト無害化に関する研究 三木 貴博
繊維状のアスベストは、肺がん・悪性中皮腫を引き起こす人体に極めて有害な物質である。現在のアスベストの処分方法は保管や埋め立てであり、将来のアスベスト飛散の危険性は払拭できない。これまで研究されているアスベストの酸処理は、廃酸へのアスベストの懸濁の危険性があり、アスベストの溶融化処理は、大きなエネルギーを必要とする。本研究では、マイクロ波を利用したアスベストの無害化技術の開発を行う。アスベスト中の酸化ケイ素を酸化りん等と低温で反応させ、繊維構造を破壊し無害化を行う。アスベストに混合するものとしては、例えば、酸化りんを豊富に含むポリ鉄処理した下水汚泥が考えられる。酸化鉄はマイクロ波によって加熱されやすく、また、酸化りんはアスベストに含まれる酸化ケイ素と化合物を形成する。クリーンなマイクロ波を利用し、エネルギー消費が小さく、迅速かつ確実に処理できるアスベストの無害化技術の開発を行う。

K1930 物質ストック勘定体系の構築とその適用による廃棄物・資源管理戦略研究
橋本 征二
大量生産・消費・廃棄に象徴されるフロー型社会に対するものとしてストック型社会が提示されているが、既存の物質ストックを有効に活用するためには、具体的にどのような物質がどの程度社会に蓄積され、活用され、将来にわたって廃棄物として発生し、また、資源としての再活用が可能で、もしくは有害性を有するのかを明らかにすることが必要である。このようなことから、本研究では、物質フローの勘定体系と整合した物質ストックの勘定体系を構築してこれを適用し、いくつかの製品や素材を対象として近未来のシナリオ分析を行うことで、ストックに関わる廃棄物・資源管理戦略について検討する。フローとストックを整合的に取り扱う勘定体系の構築には学術的な貢献が期待できる。また、その適用から得られる物質ストックに関する情報は、ストック型社会に向けた廃棄物・資源管理戦略構築の基礎情報となることから、社会的な貢献が期待できる。

K1931 担子菌を用いた脱リグニン処理法の開発による農産廃棄物の利用法の拡大に関する研究
谷口 正之
持続可能な社会を構築するためには、各種廃棄物の利用法を拡大する再資源化技術の開発が極めて重要である。そこで、異なる起源の廃棄物である農産廃棄物(稲わらなど)と食用きのこ(担子菌)廃菌床を組み合わせて、トータルの廃棄物量を削減するばかりでなく、適正で安全に発酵原料などとして利用を拡大するための基盤技術を開発する必要がある。本研究では,稲わらなどの農産廃棄物を、食用きのこ廃菌床を用いて脱リグニンする処理法を確立した後、キシロースやアラビノースなどの五炭糖(ペントース:全重量の20~30%)も含めた全糖質からエタノールなどのエネルギー物質や循環型(生分解性)プラスチック原料(乳酸)を生産する生物変換技術を開発することを目的とした。本研究の成果によって、農産廃棄物をエネルギー物質・工業原料へ変換する1.5次産業(農産物などからエネルギー・工業原料を生産する産業)を創出・育成することが期待される。

K1932 高度処理浄化槽におけるリン除去・回収・資源化技術の開発とシステム評価
稲森 悠平
環境低負荷資源循環型社会を構築する上で、リンを100%海外依存する我が国では、浄化槽法改正で指摘されたリン除去・回収・資源化技術の開発と導入は最大の課題である。このことから本研究事業では、「高度処理浄化槽におけるリン除去・回収・資源化技術の開発とシステム評価」を行うこととし、初年度では、吸着・鉄電解脱リン法を中核として、モデル地域における現場試験を行うと同時に連続リン回収システムを構築する等、リン除去のみならず資源循環を考慮したリン回収のための除去安定性の高い脱リンシステムの基盤を構築することができた。
本年度は、リン除去・回収・資源化技術および維持管理の容易化技術開発を行うと同時に、浄化槽からのリン回収量・純度・コスト等の適正条件の確立等を行い、リン対策システム技術の開発と、回収リンの適正利用技術システム構築を目途として研究を実施する。

K1933 ヒトDNAチップを用いた多指標型環境汚染化学物質の毒性評価システムの開発
渡辺 義公
現在、廃棄物最終処分由来で環境中に蓄積・排出されている合成化学物質は数万種類に上ると推定され、その数は年々増加している。これら有害化学物質の人の健康に与える影響を迅速に評価しなければならない。しかし、低濃度かつ複合汚染が予想される浸出水の毒性評価には、微生物等を用いた従来のバイオアッセイ法では限界がある。
そこで本研究では、環境中に蓄積・排出されるすべての化学物質に対して有害性を評価することは不可能であるので、特定の有害作用(タンパク変性、酸化ストレス、細胞膜障害性、DNA障害性等)を持つ代表的な化学物質の存在下において、特異的に発現するヒト遺伝子(群)を、DNAマイクロアレイ技術を用いて網羅的に検出・選定し、選定されたそれぞれの化学物質特異的応答遺伝子を組み込んだ細胞を作成し浸出水に暴露させ、これらの遺伝子発現を同時に検出することにより、浸出水の複数の毒性作用を一度の試験でスクリーニングできる、迅速・簡便・安価な多指標型バイオアッセイシステムの開発を行う。これにより、試料水中の毒性の有無に加えて、発現遺伝子パターンから原因化学物質の簡易的な推定が可能となり、その後の化学的機器分析による定量・同定および汚染源対策の方策を示唆することが可能となる。

K1934 プラスチック含有廃棄物の処理およびリサイクル過程における有害物質の生成特性解析と効率的対策手法の開発
川本 克也
本研究は、プラスチック含有廃棄物の処理・リサイクル過程時に排出される有機窒素化合物等について、その実態を把握し生成特性を解明、処理技術を開発する。具体的には、ダイオキシン類の排出削減対策により焼却温度を高温化するに伴いニトロ多環芳香族化合物(ニトロPAH)の生成が増大するという仮説を検証し、その生成実態・特性を解明する。また、拡大する廃プラスチック類のリサイクルは、RPF製造工程などの100~200℃程度から500℃前後のガス化・炭化など幅広い温度領域・雰囲気下で行われるが、これらの工程で排出される樹脂原料や添加剤或いは二次生成物質の情報は少ない。本研究は、要素実験や実施設調査によって、その実態を把握し生成・排出特性を明らかにする。また、これら研究に適した分析手法を確立すると共に、高効率触媒の適用など有機窒素化合物等の低減技術開発を行うことで、資源循環過程での化学物質管理の向上に寄与する。

K1935 地方自治体による産業廃棄物処理への「公共関与」政策の分析と評価
関 耕平
本研究の対象は、廃棄物政策における公共部門の役割と範囲である。廃棄物処理施設や最終処分場の整備、廃棄物の収集運搬などの社会サービスなどを歴史的に担ってきたのが公共部門であった。1991年までのわが国における廃棄物政策の基本理念は「公衆衛生の確保」であり、公共部門は廃棄物の適正処理手段を確保すべく社会資本整備を行ってきた。しかしその結果、廃棄物の量的拡大と質の多様化を招いてしまった。廃棄物の適正処理だけでなく、廃棄物の発生を抑制するという政策目標をも達成する公共部門の介入のあり方が今問われているのである。
本研究では、この廃棄物の適正処理と発生抑制の両方の政策目標を同時に達成する公共部門の介入のあり方を、主に地方財政論の観点から解明する。具体的には、1970年以降、わが国およびドイツにおいて地方自治体がとってきた「産業廃棄物処理への公共関与」政策を分析することである。

K1936 塩素系プラスチック製品の置換型脱塩素によるアップグレードリサイクルと有価金属回収
吉岡 敏明
廃プラスチックの中でもポリ塩化ビニル(PVC)等の塩素系プラスチック処理の実情は,一部を除いてほとんどがリサイクルよりも,むしろ処理という観点が先行している。これには塩素による環境上の問題と再生製品の品質保証に課題があり,新しい脱塩素処理法の開発と脱塩素処理PVCのアップグレード化による再利用が不可欠である。本研究では,これまで高炉還元や油化等,様々な分野で採用されている乾式熱分解による脱塩素ではなく,湿式法による脱塩素法の開発を行なう。つまり,乾式法とは異なる脱塩素反応の特徴(乾式法ではラジカルによる脱離反応,湿式法ではイオンによる置換反応)を活かして,燃焼によるエネルギー回収に限定される炭素残渣を発生させることなく,機能性を付与した脱塩素PVCとして再利用することを検討する。また,家電,自動車等から排出される電線,ワイヤーハーネス等についても,PVCを脱塩素し機能化させると同時に有価金属を回収することも検討する。

K1941 ベンチマーク指標を活用した一般廃棄物処理事業の評価に関する研究
松藤 敏彦
市町村の一般廃棄物処理事業について、排出抑制、再生利用、適正処理、環境負荷低減、市民へのサービス等の事業の現状評価・診断、施策効果・費用効率性の評価を行い、事業の改善分析にも応用できるベンチマーク指標を開発する。
廃棄物処理事業の詳細分析、事業の評価・診断のために、マテリアルフロー、コストなどのミクロ的指標を作成する。また、投資(予算)、施策内容、施策の直接的結果(ごみ減量など)、最終アウトカム(環境負荷低など)の階層構造を明らかにし、施策効果や投資効率性を表し、自治体間比較が可能なマクロ的ベンチマーク指標を設計する。地域特性(地勢・産業・世帯構成・規模等)と各種施策効果の関係を明らかにし、地域の実情を踏まえた評価を可能とする。開発したベンチマーク指標を実際の複数の自治体に適用し事業評価と自治体間比較を行い、その適用性を実証するとともに指標活用策の方向性を提示する。

K1944 最終処分場におけるアスベスト廃棄物の安全性評価手法の開発 山田
正人
アスベスト問題の安全・安心かつ究極的な解決を図るためには、過去から現在までにアスベストが埋め立てられたアスベスト最終処分場を特定して封じ込めの実態を確認すると共に、掘り起こし再生事業や跡地の形質変更時における再放出の防止を図る必要がある。本研究では、各種記録や現場調査によってアスベストを埋め立てた処分場を特定する手法、飛散を防ぐ埋立試料のサンプリング方法、保有水等や埋立地ガスに含まれるアスベストの存在量を把握する手法を示し、室内実験によって処分場内におけるアスベストの廃棄物層内の移動特性と掘削時における飛散特性を把握する。これら一連の手法を既存最終処分場に埋め立てられたアスベストの安全性確認手法として体系化し、適正埋立を行うための情報管理システム、埋立層内のアスベスト移動を抑止する埋立技術の開発や容量増加や形質変更時における指針、封じ込め能力を高める埋立工法や管理手法を提示する。

K1946 アスベスト廃棄物と廃棄物焼却灰の高効率・高信頼性溶融無害化および資源化
葛西 栄輝
アスベスト廃棄物(特に飛散性のある特別管理産業廃棄物)を廃棄物焼却灰と共に溶融・固化し、無害化・再資源化するプロセスを確実かつ効率的に行うためのマニュアルを、基礎研究によるデータベース構築と焼却灰溶融炉を用いた実証試験によって確立する。
アスベスト廃棄物はモルタル等と複合化しているため、局所的な成分偏在に加え、平均化学組成の大きなばらつきが存在する。これが溶融処理でのスラグ化不良の主たる原因であり、溶融炉の燃料比増加、耐火物損傷、稼働率低下に直結する。一方、焼却灰組成も対象廃棄物や焼却炉の操業条件によって変動し、特に産業廃棄物の場合に顕著である。したがって、常に的確な組成制御を行い、低温で流動性が高い液相を形成する技術開発が不可欠である。本研究では、基礎研究に基づき、フラックス材添加や溶融炉操業の条件を最適化するためのデータベース構築と操業条件のマニュアル化を図り、実証試験によって検証する。

K1947 アスベスト含有廃棄物の分解処理による無害化の確認試験方法の確立とその応用
野馬 幸生
本研究は、アスベスト廃棄物の無害化処理における処理物の有すべき条件を明確にするために、(1)処理物のアスベスト試験方法の確立、(2)土壌等一般環境レベルとの比較論的考察、及び(3)熱処理後の繊維状物質の毒性学的評価を行い、無害化処理を確認する手法を開発する研究である。(1)では既存の試験方法をベースに固体試料の前処理法を整備し、透過型電子顕微鏡を用いた高感度・高精度の分析法を組合せて処理の効率を確認する試験を、また併せて日常モニタリング手法との整合性を確認する。(2)では無害化処理のレベルを考慮するのに必要な自然のバックグラントレベルや現在の都市環境の存在レベルを把握する。(3)ではアスベスト繊維が熱処理過程によって形状・化学形態・結晶構造の変化に伴いどのように生体毒性が変化するかを、in
vitro及び in vivoの毒性試験により確認する。更にマイクロ波照射による処理の実証試験を行う。

K1951 国外リサイクルを含むシナリオ間のライフサイクル比較手法と廃プラスチックへの適用
森口 祐一
日本で消費された物品がリサイクル目的に輸出される、いわゆる国際資源循環を取り上げ、国内完結型のリサイクルと国外での工程を含むリサイクルについて、ライフサイクル分析による環境負荷やコストの比較を行う。このため、国外のプロセスを含むライフサイクル評価手法の枠組みを設計する。また、事例研究として、廃プラスチックの国内外でのリサイクルをとりあげ、国内外でのリサイクルシナリオを設定し、リサイクルプロセスに関するインベントリデータやプロセスフローの情報、当該プロセス以外で必要となるユーティリティ部門、物流部門のインベントリデータを現地調査等により収集する。これらをもとにシナリオ間の環境負荷やコストの比較を行い、結果の解釈を行って、リサイクル制度の設計等のための知見を得る。

K1952 アジア地域における廃電気電子機器と廃プラスチックの資源循環システムの解析
寺 園 淳
廃電気電子機器(E-waste)と廃プラスチックはアジア地域において適正な資源循環システムを構築するための重要な検討対象であるが、基礎となるべき各国国内及び国際的なマテリアルフロー情報が不足している。本研究では、国内・国際両面からのマテリアルフロー解析と影響因子の把握を行うとともに、将来の制度や経済などの変動にも対応しながら、適正な資源循環システムを構築するために必要な条件などの知見を提供することを目的とする。
そのために、各種統計調査、国内外の現地調査や海外専門家との研究協力によって、国内発生・輸出・リサイクル状況の調査と貿易統計を基にして、廃電気電子機器と廃プラスチックの国内・国際両面からのマテリアルフローの解析を行う。また、指標化、モデル分析ならびに制度分析によって資源循環システムの解析を行い、規制動向や需給変化などを考慮した複数のシナリオに対してマテリアルフローや指標の変化を見る。

K1953 家庭系廃製品の残留性化学物質と3Rシナリオ解析 酒井 伸一
製品に含まれている重金属類や難燃剤成分等の有害物質は、リサイクル工程や廃棄物処理に伴って環境へ排出されるおそれがあり、こうした観点から特定有害物質使用制限(RoHS)指令等の国際的な規制も導入されるようになっている。アジア地域における国際資源循環を構想する上で、製品に含まれている有害物質がリサイクルや廃棄物処理の過程で環境中へ放出されることを防止するための仕組みが必要不可欠である。このため、代表的な家庭系廃製品について、アジア地域におけるリサイクルや廃棄物処理を念頭において、重金属類や臭素系化合物等の残留性化学物質を取り上げた環境化学的研究、システム論的研究を行う。物質代替、回収再生などの3R方策を主たる検討の対象とし、適正処理や不適正処分を対照に据えたシナリオ研究を推進する。なお、事実の発見、モデルとパラメータ解析、3Rシナリオの導入、これらを相互フィードバックさせた研究展開を心がける。

K1954 中国における廃棄物資源管理能力向上に関する政策研究―地域循環システム実現のための地方における廃棄物資源管理の実効性と地域社会浸透―
柳下 正治
中国では、都市レベルでの廃棄物処理・資源管理に関し、理念を掲げる国の政策と地方(都市部)における取組実態との乖離が著しい。そこで、本研究は、[1]
日中韓の3都市を事例に、国レベルでの廃棄物処理・資源管理に関する制度・政策が、都市部ではどのように実施されているか、その制度・政策の運用実態を把握し、都市における廃棄物資源管理能力を向上させるために重要な要素(市民社会による取組、情報公開、経済的インセンティブ等)・阻害要因および課題を抽出する。[2]
中国では地方における資源管理を実施していくうえで公衆参加をいかに実現していくかが課題であるという問題意識に基づき、中国の代表的4都市における公衆参加の実態を分析し公衆参加の阻害要因を明らかにする。これらの[1][2]の研究成果を踏まえ、融合させる形で、中国の都市レベルにおける廃棄物資源管理能力向上およびそのための地域協力のあり方に関する政策提言を行う。

K1955 アジア地域における自動車リサイクルシステムの比較研究 外川 健一
2005年の自動車リサイクル法の本格施行以降、日本発の使用済自動車およびそれに由来する部品や素材・ASRの処理・リサイクルの構造が、大きく変化している。このような構造変化の要因を分析し、日本発のELVという視点に加え、日本以外のアジア諸国発・ドイツ発さらには自動車大国であるアメリカ合衆国発のそれを比較・検討する。さらにアジア・太平洋地域における自動車リサイクルシステムの特質を、[1]放棄車両問題や解体作業に伴う汚染問題など環境問題への対応、[2]リサイクル部品・素材のフロー分析(国際的に展開するリサイクルシステムの形成メカニズムの解明という視点を含む)、[3]自動車リサイクルの制度改革に関するEUあるいは日本からの影響とその内実、という観点で、それぞれを明白にしていく。

K1956 アジア地域におけるリサイクルの実態と国際資源循環の管理・3R政策
小島 道一
アジア諸国のリユースやリサイクルの状況、再生資源の越境移動に関する規制、その実態等を踏まえながら、国際資源循環のあり方、国際資源循環を踏まえたアジア各国における3Rに関する制度設計について検討する。
実態の把握については、アジア各国での政府・企業等からのヒアリングに加え、バーゼル条約や3Rイニシアティブ関連の国際会議へ参加し情報を収集する。また、ベトナム、フィリピン等で委託研究を実施し、循環資源の輸出入の影響を含めてリユース・リサイクルの実態を明らかにする。国際資源循環のあり方については、各国の有害廃棄物等の越境移動にかかわる制度の相違点等を明らかにし、EU等の経験を参考にしながら、アジアにおける循環型社会形成へ向けた提言をおこなう。また、各国内の3Rに関する制度設計については、e-wasteのリサイクルを対象として、各国の制度を比較し、国際資源循環を踏まえた制度設計について提案する。

K1957 日韓における拡大生産者責任制度の実態分析とパートナーシップ構築に関する研究
劉 庭秀
韓国は2003年から「生産者再活用責任制度(EPR)」を施行し、その成果を踏まえて昨年末から改正議論が始まっている。殊にEPR関連制度の強化のため、2008年から「電気・電子製品及び自動車の資源循環に関する法律」を施行する予定である。本研究班は、昨年韓国におけるEPR制度全般の改正ポイントを分析しながら、日韓の自動車リサイクル制度を事例に挙げてその現状と問題点を分析した。日韓の自動車リサイクル制度がアジア諸国に与えると影響は非常に多く、2年目は生産国(日韓)、環境規制国(中国)、途上国(モンゴル国)の3つのタイプに分け、それぞれのシナリオ分析を試みる。また、アジアにおけるEPR概念の見直し、環境NGO及びリサイクル市場の役割、政策決定プロセスの特徴等を考慮しながら、国内外におけるパートナーシップの構築を探る。これらの分析結果や事例分析に基づき、アジア型EPRのあり方と協力方案を提案する。

K1958 アジア地域における国際保健政策と医療廃棄物の現状とマネージメントの研究
黒岩 宙司
医療廃棄物は不適切に処理されると血液を介し医療従事者や一般大衆に感染を広める。そしてグローバリゼーションによってその感染は国内外に広がっていく。一般に欧米主導の途上国に対する保健政策は目標達成のために新たな薬・技術を投入する反面、それらの使用後の処理能力までは考慮されておらず、環境汚染が進んでいる。そこで中国、ラオス、モンゴル、タイ、パキスタンなど代表研究者と研究協力関係のあるアジア地域において、まずは各国の保健政策・医療廃棄物の現状を調査し、その後改善のためのトレーニング等における介入効果を検証する。管理・事故予防の教育プログラムを医学・看護教育現場に導入したり、注射針処理機を用いて安心して予防注射ができるようにしたりするなど、アジア地域の廃棄処理能力に即した医療廃棄物管理を考慮するよう提言をしていきたい。最終的には環境に配慮した医療廃棄物管理のアジアでの研究ネットワークを発展させていきたい。

K1959 京都地域におけるごみ有料化施策による資源循環変化の3R行動モデル解析
平井 康宏
本研究では、政令市3番目のごみ有料化自治体である京都市を含む京都地域を対象に、有料化施策の効果を解析する。一次データ取得のため、ごみ組成調査や住民アンケート調査を行い、既存資料とあわせ、1)自治体のごみ施策要因、2)住民の意識・行動、3)資源循環・ごみ流れの変化、の情報を整備する。また、これらの関係を、1)と2)をつなぐ「ごみ分別行動の規定因モデル」、2)と3)をつなぐ「減量効果積み上げモデル」からなる3R行動モデルにより解析し、以下の成果を得ることを目指す。
・京都市を対象に、家庭ごみ有料化前後のごみ流れの変化を推定し、ごみ減量効果の内訳を明らかにする。
・京都府域を対象に、自治体間のごみ有料化手法の違いや地域特性が減量効果に及ぼす影響を、住民の意識レベル・住民の行動レベル・市町村のごみ流れレベルで解析し、効果的なごみ有料化手法に関する示唆を得る。
・上記知見を、全国自治体データで検証する。

K1960 一般廃棄物処理システムにおける環境負荷・経済性の実効性評価手法に関する研究
小野田 弘士
一般廃棄物処理システムの環境負荷・経済性をLCA(Life Cycle Assessment)、LCC(Life
Cycle Assessment)の観点から包括的に評価する実効性評価ツールとして「BAS for WM (Best Available
System for Management System )」評価手法(以下、「BAS評価手法」という)の開発および高度化を図ることが目的である。
本年度は、開発した評価ソフトの自治体関係者の試用を通じて実用化に向けた課題を抽出する。また、千葉県内の自治体(市川市、松戸市、船橋市)をモデルとしたケーススタディを行い、収集・運搬、中間処理、広域化・バイオマス促進等を考慮した一般廃棄物処理システム改善提案を行うことを通じて、本評価ソフトの有効性の検証や具体的な活用方策を検討する。さらに、事業系ごみの処理に関する先進事例を体系化し、その民営化・コスト縮減方策の計画・方法等について検討する。

K1961 家庭ごみ有料化とEPR政策による発生抑制効果に関する研究~容器包装に注目して
山川 肇
本研究では、発生抑制促進策として注目される有料化とEPR政策の効果を、容器包装を中心として実証的に検討することを目的とする。本年度は、以下の2点に取り組む。
[1] 容器包装に関するEPR政策が、消費者の容器包装の選択に及ぼす影響に関する分析 今年度はびんビールと缶ビール等について、CVMを用いることで価格と購買行動の関係を推定し、EPR政策によりリサイクル費用の価格上乗せが行われた場合の効果について定量的に推計する。
[2]プラ製容器包装の分別・有料化がごみ排出量に及ぼす影響に関する分析今年度は、プラスチック製容器包装を分別・有料化している自治体の事例研究を行い、インタビュー調査等により、制度導入過程や小売店の状況の違いなどとごみの減量との関係を明らかにする。
また、引き続き有料化とEPRの発生抑制効果の実証的、理論的研究の文献レビューを行い、その関係を整理する。

K1962 分別収集・中継輸送に関する費用対効果・費用便益の分析 松井 康弘
本研究では、容器包装・生ごみの分別収集、近年導入例が増加してきている各戸収集、及び中継輸送に焦点を当て、そのコスト・環境負荷及び費用対効果・費用便益を明らかにし、3R推進・環境負荷削減を適切に進めるための施策立案に資する基礎資料を提供することを目的とする。
具体的には、収集・運搬のコスト・環境負荷を評価するため、GPS・GISを援用して収集・運搬車両の走行速度・収集作業速度等のデータを収集・地域特性との関連を解析するとともに、地域の排出分布・施設立地をGIS上で表現して走行距離を算出、これら成果を統合した各種分別収集のコスト・環境負荷の評価モデルを構築する。中継輸送については、広域ブロック化・最適立地のロジックを確立する。また、収集・運搬以外の過程の評価として、排出過程については岡山大学で収集・整備した施策動向データを用いて政策特性と排出量の関連を検討し、中間処理・再商品化・最終処分過程については岡山大学が開発した戦略的廃棄物マネジメント支援ソフトウェアを活用して各種技術(技術特性)とコスト・環境負荷の関連を検討する。
以上に示した研究成果を統合して、各種の分別収集シナリオ・各戸収集シナリオ・中継輸送シナリオについて、排出から最終処分に至る処理システム全体の費用対効果・費用便益を事例的に評価する。また評価に用いる原単位・モデルパラメーターに確率密度分布を設定し、モンテカルロシミュレーションにより各シナリオのコスト・環境負荷の区間推定を行うとともに、不確実性分析により推定精度を悪化させる主要因を明らかにし、その修正・推定精度の向上を図る。
