![]() 「平成18年度廃棄物処理等科学研究費補助金」に係る交付対象研究等の決定について 環境省では、廃棄物に係る諸問題の解決及び循環型社会形成に資する研究・技術開発を推進する目的として、競争的資金である廃棄物処理等科学研究費補助金制度を設けています。 1.交付決定となった研究課題 2.交付決定となった推進事業
3.廃棄物処理対策研究審査委員(50音順)
4.廃棄物処理等科学研究企画委員(50音順)
5.研究課題の概要 K1801.大迫政浩:近未来の循環型社会における技術システムビジョンと転換戦略に関する研究 近未来(10~20年後)における循環型社会の形成を目指し、社会条件の変化や政策動向とそれに伴う物質フローの時空間的な変化を、過去のトレンド解析等を踏まえた分析モデルに基づき推定し、今後資源循環のターゲットとすべき循環資源・廃棄物を予測する。また、それらを適切に資源循環していくために、技術システムシーズのレビューを基に、地域特性に応じた様々な空間スケール毎の、あるいは個別製品毎の技術システムを設計・提示し、天然資源消費抑制や環境負荷低減、資源エネルギーセキュリティ、国土保全などの観点から描く将来ビジョン(目標)の達成に向けて、バックキャスティング及びフォアキャスティングの視点から評価する。さらに、将来ビジョンに向けた転換戦略としての循環型社会形成推進交付金制度や再生利用認定制度、個別リサイクル法などの技術政策の在り方を検討し、シナリオ・ロードマップとして提示する。 K1802.松藤敏彦:ベンチマーク指標を活用した一般廃棄物処理事業の評価に関する研究 市町村の一般廃棄物処理事業について、排出抑制、再生利用、適正処理、環境負荷低減、その他市民へのサービス等の事業の現状評価・診断、施策の効果・費用効率性の評価を行い、効果及び費用効率性を的確に評価し、事業の改善分析にも応用できるベンチマーク指標を開発する。廃棄物処理事業の詳細分析、事業の評価・診断のために、マテリアルフロー、コストなどのミクロ的指標を作成する。また、投資(予算)、施策内容、施策の直接的結果(ごみ減量など)、最終アウトカム(環境負荷低など))などの指標の階層構造を明らかにし、施策効果や投資効率性を表し、自治体間比較が可能なマクロ的ベンチマーク指標を設計する。地域特性(地勢・産業・世帯構成・規模等)と各種施策効果の関係を明らかにし、地域の実情を踏まえた評価を可能とする。開発したベンチマーク指標を実際の複数の自治体に適用し事業評価と自治体間比較を行い、その適用性を実証するとともに、ベンチマーク指標の活用策の展開の方向性を提示する。 K1803.小島昭:アスベストの低温融解による無害化研究 アスベストの分解法は種々提案されているが、いずれも1300℃以上の高温処理であり、安全・安心で低コストな分解法とはいえない。アスベストの分解を化学反応を活用することで、出来る限り低温で、分解無害化し、さらに溶融する技術を開発することが本研究の目的である。本研究代表者は、アスベストとフロン分解物を混合し700℃に加熱することで、アスベストは分解してCaO-SiO2系の複合酸化物を作ることを見出し、特許を出願した(平成15年12月)。また、各種塩類と混合し加熱することで、アスベストは分解することを発見し、平成17年8月に特許を出願し11月には成立した。これらの方法で生成した分解物は、粉末X線回折測定および走査型電子顕微鏡観察によって、アスベストが完全に分解したことを確認した。生成した分解生成物は、一部焼結し融解していたが、すべてが溶融体になってなかった。さらに、安全で安心な技術とするには、アスベウトをガラス状の溶融体にすることが不可欠である。そこで、塩化合物と加熱することで無害となったアスベスト分解生成物にガラス化剤を添加し、できるだけ低い温度に加熱することで、処理物全体がガラス化し溶融体にすることを検討する。そのためには、ガラス化剤の選定、処理温度、処理時間、含浸方法などの諸条件を確定するとともに、ガラス化物の再資源化についても検討し、安全で安心なアスベスト分解技術および分解物の再利用技術の確立が最終的な目的である。 K1804.野馬幸生:アスベスト含有廃棄物の分解処理による無害化の確認試験方法の確立とその応用 本研究は、アスベスト廃棄物の無害化処理における処理物の有すべき条件を明確にするために、(1)処理物のアスベスト試験方法の確立、(2)土壌等一般環境レベルとの比較論的考察、及び(3)熱処理後の繊維状物質の毒性学的評価を行い、無害化処理を確認する手法を開発する研究である。(1)では既存の試験方法をベースに固体試料の前処理法を整備し、透過型電子顕微鏡を用いた高感度・高精度の分析法を組合せて処理の効率を確認する試験を、また併せて日常モニタリング手法との整合性を確認する。(2)では無害化処理のレベルを考慮するのに必要な自然のバックグラントレベルや現在の都市環境の存在レベルを把握する。(3)ではアスベスト繊維が熱処理過程によって形状・化学形態・結晶構造の変化に伴いどのように生体毒性が変化するかを、in vitro及び in vivoの毒性試験により確認する。更にマイクロ波照射による処理の実証試験を行う K1805.山崎仲道:アスベストの判別・無害化回収・無害化処理システムの確立に関する研究 緊要な問題となっているアスベストについて、一連の安全な回収・処理システムの確立を目的として研究を行う。[1]無害化回収方法の確立と[2]水熱法を応用した恒久的な無害化処理システム開発の二つを大きな研究指針とする。[1]無害化回収方法の確立については、水溶性塩基性染料によるアスベストの無害化をさらに発展させ、建築物中のアスベスト有無の簡便な判別法と建築物解体前の水溶液吹き付け法による無害化を目的に研究を行う。[2]水熱法を応用した恒久的な無害化処理システム開発では、廃熱を利用してアスベストを別種鉱物に転換して無害化することを目標とする。水熱法には、完全な閉鎖系での反応なので飛散・ばく露の恐れがない、反応温度が300℃以下と低温領域であり地球環境を考えた場合エネルギー的に有利、別種鉱物への転換が容易であり新規有価製品開発への展開が期待できると三点の利点がある。 K1806.葛西栄輝:アスベスト廃棄物と廃棄物焼却灰の高効率・高信頼性溶融無害化および資源化 アスベスト廃棄物(特に飛散性のある特別管理産業廃棄物)と焼却灰の高温溶融による無害化処理と再資源化を確実かつ効率的に行うためのマニュアルを、基礎研究によるデータベース構築と焼却灰溶融炉による実証試験からのフィードバックによって確立する。アスベスト廃棄物はモルタルなど他の物質と複合化しているため、局所的な成分偏在に加え、平均化学組成の大きなばらつきが存在する。これが、溶融処理におけるスラグ化不良の主たる原因であり、燃料比増加、耐火物損傷、稼働率低下に直結する。一方、焼却灰の組成も焼却対象物や排ガス処理法によって変動し、特に産業廃棄物の場合に顕著である。したがって、常に的確な組成制御を行い、低温で流動性が高い液相を形成する技術開発が不可欠である。本研究では、フラックス材添加や溶融炉の操業条件を最適化するための基礎研究に基づきデータベースを構築、操業マニュアル化を図り、実証試験によって検証する。 K1807.堀尾正靭:廃棄物系バイオマスからの粉炭燃料の製造可能性と有害物質除去方法の研究 コーヒーカスや茶殻などの食品廃棄物や、剪定枝、各種廃木材などの廃棄物系バイオマスから、申請者らが福岡県田川郡添田町と共同で別途開発してきた「バイオマス粉炭ストーブ」(給湯器・ボイラーにも発展可能)の燃料として安全に使用できる新しい「粉炭燃料」を製造するための基礎研究として、炭化物の密度、硬度、内部表面積、流動性、化学組成、燃焼特性、エミッション特性、灰物性などの指標について測定を行い、基礎的評価を行う。また、農薬など有害物を含む場合については、有害物質が炭化物に残留しないようにする方法を検討するとともに、炭化時に発生するガスやタール等の処理方法についても検討する。これらに基づいて、これら廃棄物のリサイクル方法として、粉炭燃料製造が持つ社会的意義をその除去方法を明らかにする。 K1808.三木貴博:マイクロ波を利用したアスベスト無害化に関する研究 繊維状のアスベストは、肺がん・悪性中皮腫を引き起こす人体に極めて有害な物質である。現在のアスベストの処分方法は保管や埋め立てであり、将来のアスベスト飛散の危険性は払拭できない。これまで研究されているアスベストの酸処理は、廃酸へのアスベストの懸濁の危険性があり、アスベストの溶融化処理は、大きなエネルギーを必要とする。本研究では、マイクロ波を利用したアスベストの無害化技術の開発を行う。アスベスト中の酸化ケイ素を酸化りん等と低温で反応させ、繊維構造を破壊し無害化を行う。アスベストに混合するものとしては、例えば、酸化りんを豊富に含むポリ鉄処理した下水汚泥が考えられる。酸化鉄はマイクロ波によって加熱されやすく、また、酸化りんはアスベストに含まれる酸化ケイ素と化合物を形成する。クリーンなマイクロ波を利用し、エネルギー消費が小さく、迅速かつ確実に処理できるアスベストの無害化技術の開発を行う。 K1809.関耕平:地方自治体による産業廃棄物処理への「公共関与」政策の分析と評価 本研究の対象は、廃棄物政策における公共部門の役割と範囲である。廃棄物処理施設や最終処分場の整備、廃棄物の収集運搬などの社会サービスなどを歴史的に担ってきたのが公共部門であった。1991年までのわが国における廃棄物政策の基本理念は「公衆衛生の確保」であり、公共部門は廃棄物の適正処理手段を確保すべく社会資本整備を行ってきた。しかしその結果、廃棄物の量的拡大と質の多様化を招いてしまった。廃棄物の適正処理だけでなく、廃棄物の発生を抑制するという政策目標をも達成する公共部門の介入のあり方が今問われているのである。本研究では、この廃棄物の適正処理と発生抑制の両方の政策目標を同時に達成する公共部門の介入のあり方を、主に地方財政論の観点から解明する。具体的には、1970年以降、わが国およびドイツにおいて地方自治体がとってきた「産業廃棄物処理への公共関与」政策を分析することである。 K1810.橋本征二:物質ストック勘定体系の構築とその適用による廃棄物・資源管理戦略研究 大量生産・消費・廃棄に象徴されるフロー型社会に対するものとしてストック型社会が提示されているが、既存の物質ストックを有効に活用するためには、具体的にどのような物質がどの程度社会に蓄積され、活用され、将来にわたって廃棄物として発生し、また、資源としての再活用が可能で、もしくは有害性を有するのかを明らかにすることが必要である。このようなことから、本研究では、物質フローの勘定体系と整合した物質ストックの勘定体系を構築してこれを適用し、いくつかの製品や素材を対象として近未来のシナリオ分析を行うことで、ストックに関わる廃棄物・資源管理戦略について検討する。フローとストックを整合的に取り扱う勘定体系の構築には学術的な貢献が期待できる。また、その適用から得られる物質ストックに関する情報は、ストック型社会に向けた廃棄物・資源管理戦略構築の基礎情報となることから、社会的な貢献が期待できる。 K1812.川本克也:プラスチック含有廃棄物の処理およびリサイクル過程における有害物質の生成特性解析と効率的対策手法の開発 プラスチック類の処理と資源循環に適用される技術では温度が重要な因子となり、焼却(800℃程度)を始め、ガス化・炭化(500℃前後)、RPF製造などの比較的低温(300℃程度以下)操作まで幅広い。プラスチック類は多種類の添加物質を含むこともあり、各温度域で有害物質を含む多様な反応生成物が生じる。ダイオキシン類の排出抑制が進むとともに含窒素有機化合物の生成が懸念されるほか、リサイクル施設での有害物質排出の実態や機構はほとんど明らかになっていない。本研究では、廃プラスチック類から各種温度条件下で生成する有機窒素化合物を対象に、個別物質の測定方法やスクリーニング方法を開発し、生成上の諸特性と実施設での排出実態を明らかにし、さらにガス中の対象物質を高効率触媒の適用などによって適正に低減する技術開発を行う。これにより、資源循環過程での化学物質に関する安全性確保に必要な物質管理方策に寄与する。 K1813.樋口壯太郎:循環型社会に対応した最終処分システムの研究 最終処分場は、循環型社会を目指す基盤事業として欠くことのできないものである。しかし、新規の立地は極めて困難な状況におかれている。このような背景下、循環型社会における最終処分場のあり方として以下の三項目をあげ、その実現に向けて、概念設計、基礎実験による検証、課題の整理と対応策の検討を行う。 K1814.吉岡敏明:塩素系プラスチック製品の置換型脱塩素によるアップグレードリサイクルと有価金属回収 廃プラスチックの中でもポリ塩化ビニル(PVC)等の塩素系プラスチック処理の実情は,一部を除いてほとんどがリサイクルよりも,むしろ処理という観点が先行している。これには塩素による環境上の問題と再生製品の品質保証に課題があり,新しい脱塩素処理法の開発と脱塩素処理PVCのアップグレード化による再利用が不可欠である。本研究では,これまで高炉還元や油化等,様々な分野で採用されている乾式熱分解による脱塩素ではなく,湿式法による脱塩素法の開発を行なう。つまり,乾式法とは異なる脱塩素反応の特徴(乾式法ではラジカルによる脱離反応,湿式法ではイオンによる置換反応)を活かして,燃焼によるエネルギー回収に限定される炭素残渣を発生させることなく,機能性を付与した脱塩素PVCとして再利用することを検討する。また,家電,自動車等から排出される電線,ワイヤーハーネス等についても,PVCを脱塩素し機能化させると同時に有価金属を回収することも検討する。 K1815.稲森悠平:高度処理浄化槽におけるリン除去・回収・資源化技術の開発とシステム評価 環境低負荷資源循環型の社会システムを構築するための新技術開発は重要な位置づけにある。その中でも、環境負荷削減項目のリンは、閉鎖性域では規制値対応施設の導入が行われつつあるが、流域に分散する合併処理浄化槽においても、浄化槽法改正のこれからの課題である流域単位でリン対策を実行しやすいリン除去のみならず回収・資源化技術の開発と導入は最大の課題である。リンは枯渇化資源であり、リンを100%海外依存する我が国では、リン回収循環利用を図るシステムの構築が将来的な見通しから重要課題となっている。そのため、本研究では、合併処理浄化槽を中心に、公共用水域の汚濁負荷の50~70%を占める生活排水のリン対策として、環境低負荷資源循環型の理念を取り入れた吸着・電解脱リン法等を導入したシステム技術開発と、派生する回収リンの肥料化、工業薬品化の適正技術開発と社会受け入れ度評価に基づく適正システム構築を目途として研究を実施する。 K1816.古川憲治:バイオガス化プラント排水中の高濃度アンモニアのMAP-ANAMMOXハイブリッド処理技術の開発 高濃度アンモニア排液に固体状熱処理MAPを接触させることで直接アンモニアを吸収・除去させ、さらにそのMAPを風乾後105℃で放散させたアンモニアを部分亜硝酸化とANAMMOXによって生物学的に高速で除去させることで、バイオガス化によるエネルギー回収効率を飛躍的に向上させる。本研究では、実用化に向けて実際の排液を用いたMAPの劣化に対する技術的課題を克服するための実験を行う。また、ANAMMOXではスケールアップ課題を克服するための実験を行う。なお、本技術はこれらの技術がそれぞれ持っている弱点のために実用化が進まなかった。すなわち、前者はアンモニアを回収してもその利用先がなく、後者は有機物が多いために著しい阻害を受けて実用化が困難であった。本研究ではこの2つの技術をハイブリッド的に繋ぐことによって両者の能力を最大限に高めたシステムを開発する。 K1817.泉澤秀一:低濃度PCB汚染物の焼却処理に関する研究 本研究は、平成14年にその存在が判明し、現在処理の見通しが立っていない低濃度PCB汚染物(PCBを使用していないとされるトランス等のうち、低濃度のPCBに汚染された絶縁油を含むもの)の処理について、現に設置・稼働している産業廃棄物焼却施設を用い、焼却処理が及ぼす環境への影響等を調査し、安全かつ確実な処理条件を明らかにするとともに、今後行われるべきリスク評価に必要な基礎的知見を集積することにより、我が国における喫緊の課題である低濃度PCB汚染物の処理の早期実現を図るものである。具体的には、産業廃棄物焼却施設における焼却処理は、通常多種多様な廃棄物を混焼しているため、現実に低濃度PCB汚染物を焼却処理する場合を想定し、通常の混焼運転中に低濃度PCB汚染物を併せて処理し、排ガス、排水、処理後の残さ、周辺大気環境等のPCB、ダイオキシン類等の濃度を高感度かつ高精度で分析し、処理条件との相関を明らかにする。 K1818.谷口正之:担子菌を用いた脱リグニン処理法の開発による農産廃棄物の利用法の拡大に関する研究 持続可能な社会を構築するためには、各種廃棄物の利用法を拡大する再資源化技術の開発が極めて重要である。そこで、異なる起源の廃棄物である農産廃棄物(稲わら、もみ殻など)と食用きのこ(担子菌)廃菌床を組み合わせて、トータルの廃棄物量を削減するばかりでなく、適正で安全に発酵原料などとして利用を拡大するための基盤技術を開発する必要がある。本研究では,稲わら、もみ殻などの農産廃棄物を、食用きのこ廃菌床を用いて脱リグニンする処理法を確立した後、キシロースやアラビノースなどの五炭糖(ペントース:全重量の20~30%)も含めた全糖質からエネルギー物質や循環型(生分解性)プラスチック原料を生産する生物変換技術を開発することを目的とした。本研究の成果によって、農産廃棄物をエネルギー物質・工業原料へ変換する1.5次産業(農産物などからエネルギー・工業原料を生産する産業)を創出・育成することが期待される。 K1819.渡辺義公:ヒトDNAチップを用いた多指標型環境汚染化学物質の毒性評価システムの開発 現在、廃棄物最終処分由来で環境中に蓄積・排出されている合成化学物質は数万種類に上ると推定され、その数は年々増加している。これら有害化学物質の人の健康に与える影響を迅速に評価しなければならない。しかし、低濃度かつ複合汚染が予想される浸出水の毒性評価には、微生物等を用いた従来のバイオアッセイ法では限界がある。そこで本研究では、環境中に蓄積・排出されるすべての化学物質に対して有害性を評価することは不可能であるので、特定の有害作用(タンパク変性、酸化ストレス、細胞膜障害性、DNA障害性等)を持つ代表的な化学物質の存在下において、特異的に発現するヒト遺伝子(群)を、DNAマイクロアレイ技術を用いて網羅的に検出・選定し、選定されたそれぞれの化学物質特異的応答遺伝子を組み込んだ細胞を作成し浸出水に暴露させ、これらの遺伝子発現を同時に検出することにより、浸出水の複数の毒性作用を一度の試験でスクリーニングできる、迅速・簡便・安価な多指標型バイオアッセイシステムの開発を行う。これにより、試料水中の毒性の有無に加えて、発現遺伝子パターンから原因化学物質の簡易的な推定が可能となり、その後の化学的機器分析による定量・同定および汚染源対策の方策を示唆することが可能となる。 K1820.細見正明:ダイオキシン類汚染底質の間接加熱処理に伴うダイオキシン類の除去挙動に関する研究 ダイオキシン類汚染土壌の処理法として間接加熱処理が注目され、これまでに能勢町のダイオキシン類汚染土壌を効率よく除去または分解できることが示されてきた。しかしながら、申請者らはPCBsや他の有機塩素化合物を含む底質に間接加熱処理を適用すると、ポリクロロジベンゾフラン(PCDFs)が生成される可能性を認めた。そこで、本研究ではダイオキシン類の由来(汚染源)が異なる底質を、温度、雰囲気(窒素、酸素濃度)、雰囲気ガス流量を変えた条件で処理し、PCDFsの生成が起こる底質の特徴を明らかにする。さらに、PCDFsの生成が認められた底質の性状に基づきPCDFsの前駆体を分析し、検出された前駆体(安定同位体でラベル)をスパイクした底質を間接加熱処理する。PCDFs生成量を評価し、PCDFsの生成経路を明らかにする。以上を踏まえて、ダイオキシン類汚染底質を適切に間接加熱処理するための条件を見出す。 K1821.酒井伸一:家庭系廃製品の残留性化学物質と3Rシナリオ解析 製品に含まれている重金属類や難燃剤成分等の有害物質は、リサイクル工程や廃棄物処理に伴って環境へ排出されるおそれがあり、こうした観点から特定有害物質使用制限(RoHS)指令等の国際的な規制も導入されるようになっている。アジア地域における国際資源循環を構想する上で、製品に含まれている有害物質がリサイクルや廃棄物処理の過程で環境中へ放出されることを防止するための仕組みが必要不可欠である。このため、代表的な家庭系廃製品について、アジア地域におけるリサイクルや廃棄物処理を念頭において、重金属類や臭素系化合物等の残留性化学物質を取り上げた環境化学的研究、システム論的研究を行う。物質代替、回収再生などの3R方策を主たる検討対象とし、適正処理や不適正処分を対照に据えたシナリオ研究を推進する。なお、事実の発見、モデルとパラメータ解析、3Rシナリオの導入、これらを相互フィードバックさせた研究展開を心がける。 K1822.森口祐一:国外リサイクルを含むシナリオ間のライフサイクル比較手法と廃プラスチックへの適用 日本で消費された物品がリサイクル目的に輸出される、いわゆる国際資源循環を取り上げ、国内完結型のリサイクルと国外での工程を含むリサイクルについて、ライフサイクル分析による環境負荷やコストの比較を行う。このため、国外のプロセスを含むライフサイクル評価手法の枠組みを設計する。また、事例研究として、廃プラスチックの国内外でのリサイクルをとりあげ、国内外でのリサイクルシナリオを設定し、リサイクルプロセスに関するインベントリデータやプロセスフローの情報、当該プロセス以外で必要となるユーティリティ部門、物流部門のインベントリデータを現地調査等により収集する。これらをもとにシナリオ間の環境負荷やコストの比較を行い、結果の解釈を行って、リサイクル制度の設計等のための知見を得る。 K1823.寺園淳:アジア地域における廃電気電子機器と廃プラスチックの資源循環システムの解析 廃電気電子機器(E-waste)と廃プラスチックはアジア地域において適正な資源循環システムを構築するための重要な検討対象であるが、基礎となるべき各国国内及び国際的なマテリアルフロー情報が不足している。本研究では、国内・国際両面からのマテリアルフロー解析と影響因子の把握を行うとともに、将来の制度や経済などの変動にも対応しながら、適正な資源循環システムを構築するために必要な条件などの知見を提供することを目的とする。そのために、各種統計調査、国内外の現地調査や海外専門家との研究協力によって、国内発生・輸出・リサイクル状況の調査と貿易統計を基にして、廃電気電子機器と廃プラスチックの国内・国際両面からのマテリアルフローの解析を行う。また、指標化、モデル分析ならびに制度分析によって資源循環システムの解析を行い、規制動向や需給変化などを考慮した複数のシナリオに対してマテリアルフローや指標の変化を見る。 K1824.柳下正治:中国における廃棄物資源管理能力向上に関する政策研究-地域循環システム実現のための地方における廃棄物資源管理の実効性と地域社会浸透- 本研究は、アジア3カ国(日本・中国・韓国)の国レベルでの廃棄物処理・資源管理に関する制度・政策が、どのように地域レベル(都市部)において実施されているのか、その制度・政策運用の実態を把握するとともに、実施を促進する重要な要素(公衆参加、情報公開、経済的インセンティブ等)および阻害要因・課題を日中韓の3都市、特に中国の都市に注目し抽出・分析し、アジア地域における循環型経済社会システム構築に向けての政策提案を行うものである。アジア地域においては都市部でいかに廃棄物処理・資源管理を実施していくかが重要なポイントであるが、実際には理念を掲げる国の政策と地方(都市部)における乖離が著しい。本研究では、こうした実情を踏まえ、現在急速に進展している中国の循環型経済政策を補強すべき政策課題、都市における廃棄物資源管理能力の向上のための政策と地域協力の方向を明らかにする。その際には、EUにおける欧州の地域間協力との比較の視点も考慮する。また、現地調査の実施過程で入手した資料・データ等をデータベース化する作業も行う。 K1825.黒岩宙司:アジア地域における国際保健政策と医療廃棄物の現状とマネージメントの研究 医療廃棄物は不適切に処理されると患者の血液を介し医療従事者や一般大衆に感染を広げる。欧米主導の保健政策の目標達成のために新たな診断・治療技術が次々と導入されるが途上国の処理能力は十分考慮されていない。グローバリゼーションの中で医療廃棄物がもたらす感染は途上国のみならず出稼ぎを通して日本などにも広がる。当教室はラオス、モンゴル、中国の大連で針刺し事故や医療廃棄物の基礎研究を行った。代表研究者はJICAプロジェクトで国際機関と「ポリオ根絶活動」に従事し、途上国の処理能力を超えた新型注射器導入や期限切れ生ワクチン廃棄の現状、援助機関の制度上の制約に通ずる。当研究は日本と親交の深い中国山東省・大連を中心にアジア諸国で行い、各国の医療廃棄物の現状と適正技術、トレーニングの介入効果を検証する。途上国の処理能力を算定して保健政策を策定し、国際的なルール作りを提言する。 K1826.劉庭秀:日韓における拡大生産者責任制度の実態分析とパートナーシップ構築に関する研究 韓国は80年代後半、首都圏埋立地が満杯となり、日本のJICAから焼却政策への転換が提案された。しかし、強い反対運動があり、廃棄物行政は埋め立てからリサイクルへ急転した。その後デポジット制、ごみ従量制、レジ袋有料化、負担金制度などを導入し、2003年には「生産者再活用責任制度(EPR)」を施行することになった。韓国がこのように厳しいリサイクル政策を導入し、成果をあげていることは、幾つかの要因があると思われる。そこで、本研究は、日韓のリサイクル制度と運営実態を明らかにした上、その特徴を環境NGO、リサイクル市場、政策決定プロセスなどの視点から比較分析し、国内外のパートナーシップのあり方を探る。両国はアジア地域へ廃棄物輸出量が多く、政策・技術的な影響も大きい。本研究ではこれらの研究成果に基づき、両国がアジアの物質循環政策に如何にイニシアティブを取っていくべきかについて政策提言をまとめる。 K1827.小島道一:アジア地域におけるリサイクルの実態と国際資源循環の管理・3R政策 アジア諸国のリユースやリサイクルの状況、再生資源の越境移動に関する規制、その実態等を踏まえながら、国際資源循環のあり方、国際資源循環を踏まえたアジア各国における3Rに関する制度設計について検討する。実態の把握については、アジア各国での政府・企業等からのヒアリングに加え、バーゼル条約や3Rイニシアティブ関連の国際会議へ参加し情報を収集する。また、ベトナム、フィリピン等で委託研究を実施し、循環資源の輸出入の影響を含めてリユース・リサイクルの実態を明らかにする。国際資源循環のあり方については、各国の有害廃棄物等の越境移動にかかわる制度の相違点等を明らかにし、EU等の経験を参考にしながら、アジアにおける循環型社会形成へ向けた提言を行う。また、各国内の3Rに関する制度設計については、e-wasteのリサイクルを対象として、各国の制度を比較し、国際資源循環を踏まえた制度設計について提案する。 K1828.外川健一:アジア地域における自動車リサイクルシステムの比較研究 2005年の自動車リサイクル法の本格施行後に、日本発の使用済自動車およびそれに由来する部品や素材・ASRの処理・リサイクルの構造が、大きく変化してきた。そこで日本の新しい制度が、日本国内のみならず、アジア諸国のELV処理・リサイクルシステムに、そしてそれに起因する環境負荷にどのような変化をもたらしているのかを、理論的に明らかにすることは、5年後の自動車リサイクル法の見直し、および国際展開する自動車産業の拡大生産者責任のあり方を考える際にきわめて重要な意義をもつ。このため日本発のELVという視点に加え、日本以外のアジア諸国発・ドイツ発さらには自動車大国であるアメリカ合衆国発のそれをできるだけ構造的に分析し、これまで検討してきた、自動車由来の様々な循環資源のアジア諸国における輸出入と、リユース・リサイクル、さらには廃棄にかかる情報整備をさらにすすめていく。 K1829.野口貴文:コンクリート産業における環境負荷評価マテリアルフローシミュレーターの開発および最適化支援システムの構築に関する研究 修復と再生作業においては、処理施設の数や規模、処理できる廃棄物の種類に制約がある場合が多く、処理能力に応じて廃棄物の撤去作業を行う必要がある。つまり、掘削から運搬、処理といった全体の作業を適正かつ効率的に行うためには、図2に示すような「前処理」が重要であることを、これまでの研究で指摘し、その一部としてバイオ技術を用いた前処理方法について、その技術的適用可能性を示してきた。前処理を徹底することにより、撤去された廃棄物中の有害物質濃度を低減化することができ、処理施設の確保が容易になるだけではなく、資源化の選択肢も可能となる。さらに、運搬・処理にかかる全体コストの低減化も期待される。そこで、最終年度である平成18年度の研究では、過去2年間の研究成果をふまえ、室内及び現地試験を通して,我々が提案する前処理技術を,現地への適用性を考慮し具現化する.そして,撤去作業のバッファとして機能する前処理が後段プロセス(運搬,処理及び資源化)に及ぼす効果を明らかにすることにより,既存の物理化学的技術との組み合わせによる修復・再生作業全体が,安全,適正かつ効率的に行うことができることを示す.以上より,不適正最終処分場及び不法投棄現場の廃棄物の掘削から処理までの全体作業を安全かつ適正に行うことのできる,バイオ技術と物理化学技術を組み合わせた修復・再生(適性化、資源化、延命化)システムの提案を行うこととする。 K1830.日引聡:廃棄物対策が家計のごみ排出削減に及ぼす影響に関する計量経済学的研究 循環型社会システム構築のために、ごみ排出量の削減、リサイクル、再利用の促進が重要な政策課題となっている。近年各自治体においてごみ有料化制度の導入が急速に進んでいるが、導入後5年で一割以上の削減を実現した自治体もある一方で、導入数年後にごみの排出量が導入前の水準にまで戻ってしまった自治体もあり、有料化に対する、自治体の効果の評価にはばらつきがある。また、国内外で有料制のごみ削減効果に関する研究が多く見られるが、その削減効果の有効性に関して結論が分かれる。 K1831.藤田壮:産業拠点地区での地域循環ビジネスを中核とする都市再生施策の設計とその環境・経済評価システムの構築 国内の先進的な産業集積「川崎エコタウン地区」を対象として,循環形成の環境・社会経済効果を定量的に評価するシステムを構築する.循環形成がもたらす効果を定量化することで,これまでの環境施策と循環ビジネスを評価する.加えて,産業間の副産物の連携拡大や都市・産業連携のアクションプログラムを設計・評価するシステムを築く.すなわち,[1]地域の物質代謝の空間情報データベースを共有する地理情報システム・ネットワークで構築したうえで,[2]企業と連携して循環施策の中核となる転換技術の代謝プロセスモデルと,輸送プロセスを含むLCA評価システムを構築する.そのうえで[3]個別事業から統合的な都市政策まで多様な代替的施策を設計して評価するシステムを構築する.[4]川崎地区での運用を通じて行政,企業の要請を反映してより実用的システムを実現しつつ,国際共同研究者とともに産業共生型の都市再生システムの国際的ベンチマークモデルを構築する. K1832.馬場由成:バイオマスの高機能化とめっき廃液の最適な資源循環システムの構築 めっき廃液は,有価な亜鉛やニッケルを大量に含んでいるにも関わらず,微量のクロム,鉛,錫等の重金属やリン酸を含んでいるため,有害難処理廃棄物となっている。一方,金やパラジウム等の貴金属めっき廃液は微量な貴金属の回収技術が遅れているため,そのまま排水されている。本研究では,様々な地域バイオマス廃棄物を利用してこれらを除去・回収することにより,めっき廃液を無害化・資源化する技術開発を行う。すなわち,宮崎県の農業や水産加工業から大量に発生する海老や蟹の殻,果物滓,貝殻,海藻類を利用して,簡単な化学修飾によりバイオマスの高機能化を図り,重金属の除去及び貴金属・リン酸を回収する研究を行う。研究戦略としては,除去・回収する対象金属に最適な(バイオマスの種類),しかも素材のよさ(細孔構造,ビーズや繊維)を生かしながら,新しい機能を付与する方法(分子インプリント法,グラフト重合法)を開発し,実用化を目指す。 K1833.武田信生:廃棄物処理施設の爆発火災事故事例解析に基づく安全管理手法の構築 廃棄物焼却・エネルギー回収施設は施設数が多いうえ、新技術の開発も進んでいる。廃棄物焼却やエネルギー回収工程は可燃性物質に多大なエネルギーを加えるため、潜在危険性が大きい。一方、これらの設備は燃焼以外に前処理や貯蔵など工程が多様なうえ、組成の複雑な廃棄物を取り扱うため安全対策を標準化することが難しい。そこで典型的な事故事例を数種選択し、環境化学、廃棄物工学、安全工学の視点から、実験をともなう実証的解析および、事故の原因要素と進展事象の抽出・分類・体系化を試みる。得られた成果に基づく事故発生メカニズム、拡大要因、拡大防止要因、環境影響評価、再発防止対策等を知識化し、現場担当者、行政、設備設計者等が活用可能な、安全管理手法とそれを提供するシステムを構築する。このシステムを活用することで、廃棄物の焼却・エネルギー回収プロセスでの事故の未然防止や、事故時の適切な対応による被害の拡大防止が可能となる。 K1834.藤田昌史:廃棄物最終処分場内部の微生物コンソーシアに着目した安定化指標の構築 廃棄物最終処分場の再生化・延命化事業を実施する場合、まず、埋立地内部の現況を簡便かつ安価に把握するための調査技術が必要となる。本プロジェクトでは、埋立地内部の現況をそこに生息する微生物コンソーシアの情報から推定する方法を構築する。ただし、埋立地の深さは、数十メートルに達するうえに、埋め立てられている廃棄物の組成や量は一様ではないことから、直接土壌を採取し、その微生物群を調べることは労力を要するうえに、試料の代表性という観点で得られた結果の解釈が非常に難しくなる。そこで本プロジェクトでは、まず、浸出水に含まれる微生物プロファイルから埋立地内部の微生物群の現況を逆推定する手法を確立する。次に、埋め立て開始後の経過年数が異なる複数の埋立地を対象に微生物情報を蓄積する。浸出水水質や微生物活性も含めてデータベース化することにより、埋立地内部の現況を探る指標、すなわち安定化指標の構築を目指す。 K1835.石垣智基:水素生成プロセスの導入による地域未利用バイオマスの適正循環システムの構築に関する研究 都市近郊における、リサイクル不能なバイオマス系廃棄物および余剰生産状態にあるバイオマス資源化物(合わせて未利用バイオマス)を利用する水素生産技術を確立し、新規エネルギー生産システムとしての最適化を図ることで、バイオマス系廃棄物の適正循環社会の実現に向けた技術的な選択肢の一つとして提案する。未利用バイオマス系廃棄物および廃棄物焼却灰の混合処理による、効率的な水素生成現象の実用化に向けて、化学的および生物学的な複合的反応メカニズムを解明するとともに、原料要求品質および組合せ特性が水素生成に与える影響、反応の制御因子を明らかにする。最終的には小規模スケールでの実証実験を念頭に置いた技術開発へと展開する。 K1836.滝上英孝:循環資源・廃棄物中の有機臭素化合物およびその代謝物管理のためのバイオアッセイ/モニタリング手法の開発 難燃剤使用に由来すると考えられる有機臭素化合物(臭素化ジフェニルエーテル類、臭素化ダイオキシン類等)の検出法として、親化合物はもとより生体内で生成される代謝物(水酸化物等)の毒性を漏れなく評価できるバイオアッセイ/化学分析モニタリング手法の構築に取り組む。有機臭素化合物のヒトへの曝露評価を行い、廃棄物処理に関連する種々の曝露源とヒトにおける毒性発現との関連性解明を意識したトキシコゲノミクス手法の導入を図る。そして、物質循環・廃棄過程での排出実態について、特に難燃剤含有物の破砕、圧縮といったリサイクル過程、残渣の焼却過程等に焦点を当てて調査を行い、環境排出を防止する制御方策について提案を行う。EUでは有機臭素系難燃剤の製品使用を禁止するRoHS規制が公布されているが、国内においても今後の難燃剤対策、製品開発戦略に科学的示唆を与える環境工学/毒性学上の知見を提供することを目指す。 K1837.嘉門雅史:廃棄物最終処分場跡地の形質変更のための施工方法と環境リスクの相関に関する研究 廃棄物最終処分場の廃止が確認された場合,その跡地は土地資源としての活用(形質変更)が可能となる。しかし,最終処分場跡地の形質変更には,[1]土地の掘削・構造物の建設に伴う処分場遮水工の損傷,[2]処分場内部の生化学的雰囲気の変化に伴う重金属等の溶出,[3]メタンガス・臭気等の発生,といった要因により周辺生活環境に支障を与えるリスクが付随する。このため,2004年3月の廃棄物処理法の改正において,形質変更により生活環境保全上の支障が生じるおそれのある区域を都道府県知事が指定し,その区域内での土地の形質変更は基準に従い実際することが義務付けられた。今後は適切な工法や技術的手法の細目を早急に確立する必要があることから,本申請研究は,[1]廃棄物の種類,埋立時期による廃棄物の有害性の評価,[2]跡地形質変更に伴う利用形態毎の環境リスクの評価,[3]環境リスクの評価結果に基づく適正な対策工法の確立,を行うものである。 K1838.大迫政浩:再生製品に対する環境安全評価手法のシステム規格化に基づく安全品質レベルの合理的設定手法に関する研究 量的に多い建設資材系への廃棄物再生製品を対象とした土壌・地下水への溶出リスクに焦点をあて、その性状や多様な利用形態による影響の違いを適切に評価でき、かつ外部環境変化や長期経過に伴う影響等、目的に応じた複数の試験方法を設計する。その上で、実試料を用いた実験的検討等を行って妥当性を検証し、一連の試験群を体系的なシステム規格として提案する。具体例としては、粒状・成型状製品について、有害物質の拡散フラックスの評価(拡散試験)、外部環境としての降雨接触条件(液固比依存試験)やpH変化を考慮した評価(pH依存性試験)、想定環境により近い動的評価(連続バッチ試験)、およびアルカリ側を考慮した最大溶出可能量評価(アベイラビリティ試験)等である。また、一連の試験群から得られるデータを用いた土壌・地下水への影響予測手法を確立し、科学的な不確実性と社会的影響を勘案した合理的な安全品質レベルの決定手法を構築する。 K1839.佐々木一成:消化ガス再生利用を可能にする新規燃料電池電極材料の開発 下水処理場などにおいて多量に発生する消化ガスはメタンを主成分としているが、それを燃料として燃料電池を作動させることが可能になれば、高効率に電気を生み出し同時に熱の有効利用も可能になる。本研究では、この循環型リサイクルエネルギーシステムのボルトネックの一つとなっている、消化ガスの再生利用を可能にする固体酸化物形燃料電池の電極材料の開発に集中して取り組む。 K1840.井村秀文:地域資源循環に係る環境会計表の作成とその適用 地域の資源循環と自治体の一般廃棄物処理事業に焦点を当てた環境会計表を開発し、地域における製品の製造、流通、廃棄・リサイクル、最終処分に係る一連の物質フローとそれに付随する金銭フローの体系的記述を可能とする。これによって、循環型社会実現の観点から、地域の物質循環及び一般廃棄物処理事業の効率性に関する評価、地域間比較などが容易かつ体系的に実施できるようにする。また、地域の一般廃棄物処理事業に対する戦略的環境影響評価において環境会計表を活用する手法を提示する。本手法をケーススタディとして名古屋市及び北九州市に適用することで地域の環境政策立案への応用可能性について探るとともに、一般に提供可能なソフトウェアとしての開発を実施する。 K1841.東順一:有害重金属を含む海産物廃棄物の包括的再資源化 カドミウム、亜鉛、ヒ素等の有害重金属を多量に含むホタテウロ、イカゴロ、アコヤ貝、ヒトデ、褐藻等の多様な海産物廃棄物をウメエキスやレモン果汁等の天然物やその成分との加熱による重金属の脱着(天然物による有害天然物の浄化)と新規に見出した樹脂を用いた選択的重金属除去の組合せで再資源化する包括的な環境配慮型・低コストな海産物産業廃棄物の再資源化システムを構築する。樹脂はリサイクル利用し、有害重金属を除去した海産物の食品、調味液等の食品添加物、釣り餌、飼料、肥料等としての再資源化を実現する。これまでホタテウロ、アコヤ貝、ヒトデ、イカゴロ等動物性の海産物廃棄物を対象として天然物による有害天然物の浄化法を開発した。本最終年度はコンブやヒジキ等の褐藻に対して同法を適用するとともに、有害無機重金属の脱着法(天然物による有害天然物の浄化法)の完成と有害無機重金属を除去したエキスと残渣の再資源化をとりまとめる。 K1842.我妻和明:金属スクラップ素材の高度循環利用のための新しい高速定量分析法の開発 本研究は、減圧レーザ誘起プラズマ発光分析法を測定原理とする元素分析装置を開発して、市中の金属スクラップ素材の高度・迅速選別を可能とする、新たな分析・計測システムの実用化を目的とする。資源循環型社会の構築は、近未来の社会の姿として行政各レベルにおいてさまざまな施策が実行されている。とりわけ鋼スクラップ素材の循環に関しては、鉄鉱石還元と比較してスクラップ利用によりエネルギー消費が1/3程度に節約できること、市中スクラップが100万トン/年の割合で増加していること等の理由により、強力に推進されるべき課題である。鋼スクラップ材には鉛、スズ等の有害金属元素が混入する場合があり、またニッケル、クロム等の高価金属が合金元素として添加されたものも含まれる。これらを的確かつ迅速に分別することは、その後の循環使用に際して大きな助けとなる。従来分析法ではこのような方途に適用できるものがなく、新しい分析方法/装置の開発が求められている。 K1843.松田仁樹:減圧加熱/塩化揮発の組合わせによる固体残渣類の完全無害化と重金属の高効率分離回収・再資源化 焼却飛灰、スラッジ、ダスト等に高濃度で含まれている多成分の重金属(Cu, Pb, Zn, Ni, Cr等)を「減圧加熱法」と「塩化揮発法」との組み合わせによって効率的に分離回収し、金属資源の高度回生と残渣の無害化を同時に達成しうる難処理性固体廃棄物の適正処理技術を開発する。固体廃棄物中の重金属は共存する無機塩化物(NaCl, KCl, CaCl2等)、あるいは廃塩酸、塩素系廃プラスチックから供給されるCl元素を有効利用して低沸点金属塩化物に変換し、それらの塩化揮発特性に基づいて乾式分離する。本研究ではまず、(1)塩化剤種ごとに重金属塩化物の生成条件ならびに固体廃棄物中の共存成分の影響等を基礎観点から明らかにする。つぎに、(2)試作の減圧加熱/塩化揮発装置を用いて各種固体廃棄物から重金属塩化物を効率的に分離・回収するための実証試験を行い、金属の再資源化ならびに処理後の固体残渣の高度無害化を目指す。 K1844.島岡隆行:焼却・溶融残渣の有効利用における鉱物学的・土壌生成学的安定化に関する研究 廃棄物最終処分量の削減へ向け,焼却・溶融処理残渣を有効利用する取り組みがなされつつある。しかし,それらを安心して利用するには環境中での長期安全性を評価する必要があるが,利用前の溶出試験や含有量試験のみでは十分とはいえず,残渣中の有害物質,特に重金属について環境中における化合形態の変化を明らかにし,長期溶出特性と関連づける必要がある。本研究では,走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)やX線微細吸収分光法(XAFS)等の機器を駆使し,鉱物学的・土壌生成学的視点から,焼却・溶融処理残渣中に含有する重金属の化合形態の変化を解明するとともに,残渣中の有機物と重金属の関係を把握し,廃棄物埋立層の安定化指標を構築する。また,焼却・溶融処理残渣の環境安全な前処理技術として,焼却残渣の風化過程で見られる炭酸化現象と粘土化現象に着目し,これを促進させることにより焼却残渣を安定化させる方法の開発に取り組む。 K1845.近藤勝義:Si-O系燃焼灰の高付加価値・再資源化技術の開発に関する研究 H17年度に開発した連続式塑性加工プロセスを用いたSi-O系燃焼灰とMg合金粉末との固相反応によりMg2Si微粒子をマグネシウム合金内に合成することで,本微粒子の内部均一分散によるマグネシウム合金の高強度化を実現する.同時に,塑性加工過程でMg2Si微粒子に蓄積した歪エネルギーを利用して動的再結晶を促進させることで,Mg結晶粒の超微細化(目標;1μm以下)を実現し,上記[1]のMg2Si粒子分散強化とのシナジー効果により更なる高強度化(目標引張強さは400MPa以上;現行の汎用アルミニウム合金6061(T6熱処理)の1.2倍以上)を目指す.また本提案の製造プロセスにおける素材コストを算出すると同時に,全エネルギー消費を各設備の動力源単位に基づいて算出し,既存の溶解・鋳造法との比較において省エネ効果ならびにCO2ガス排出量の削減効果を定量化する.それにより環境負荷トータル削減量を算定する. K1846.袋布昌幹:廃石膏ボードの安全・安心リサイクル推進を可能とする石膏中フッ素の簡易分析・除去技術の開発 近年の埋め立て処分場不足の状況を受けて,平成14年12月に「廃セッコウボードのリサイクルの推進に関する報告書」においてそのリサイクル率を2010年までに3%から20%に向上させる数値目標が設定された。しかしながら,数十年前のセッコウボード中には高濃度のフッ素が含有しており潜在的なリサイクルの障害要因となっている。そこでリサイクル・廃棄物処分の現場でセッコウ中のフッ素濃度を測定することが求められる。本研究においてこれまでに廃セッコウボード中フッ素濃度のオンサイト分析法の開発,廃セッコウボード中のフッ素の不溶・安定化技術開発に成功しているが,今年度は(1)ソフトケミカルプロセスによる廃セッコウボード中のフッ素の除去技術の開発(2)廃セッコウボードのリサイクル技術の可能性・経済性評価を通して安心・安全なセッコウリサイクル技術の構築に貢献することを目指す。 K1847.坂東博:バイオマスの循環型システム活用(CO2のサイクル化)における超音波による無水エタノールの精製およびバイオディーゼル燃料の製造に関する研究 未利用および廃棄バイオマスは、超音波により、常温、常圧の条件で、薬品を添加せず、セルロース、ヘミセルロース、プロトリグニン、タンニン等を高純度分離し、新素材として資源化する。また、バイオマスのCO2サイクル化を図るため、超音波により、セルロース(ヘミセルロース)を(希)酸加水分解し、ブドウ糖(5炭糖含む)を高速生成し、ブドウ糖等のアルコール発酵を促進する。さらに、超音波霧化器により、低濃度のエタノール水溶液から無水エタノールを分離精製し、付加価値の高い無水エタノールをバイオエタノール燃料(以下BEF)、工業用、消毒用に供給する。また、超音波により、パーム油等と、バイオ起源の無水エタノールとから純度が高く、低コストのバイオディーゼル燃料(以下BDF)を安定的に製造する。一方、BEFおよびBDFによる走行実験を実施し、燃費、品質の向上、自動車排ガス中の汚染物質の削減等について検討する。 K1848.清水正賢:廃棄物を利用した鉄-水素コプロダクションシステムに関する研究 研究の狙いは、廃プラスチック、RDF、古紙、廃木材等の有機系一般廃棄物を鉄鉱石の製錬反応と組み合わせて水素およびCOガスに転換する「鉄-水素コプロダクションシステム」の開発にある。具体的には、水素成分を多量に含む有機系廃棄物を鉄鋼の高温熱処理技術や乾留技術、鉱石原料中への内装法等によって熱分解させ、得られる水素および炭化水素系ガスを利用して鉄鉱石の還元反応を高速化、低温化させるとともに、還元反応で生成するH2OとCO2ガスを炭化水素から分解析出する活性な遊離炭素によって、還元と同時に水素とCOガスに瞬時に改質する鉄-水素コプロダクション技術を開発する。この鉄鋼製錬反応を利用した有機系廃棄物の高度利用技術は、石炭系燃料に頼ってきた製鉄分野の大幅なCO2排出量の削減に繋がるだけでなく、廃棄物利用新水素エネルギーの創生など環境保護ならびに廃棄物処理の負荷低減に大きく寄与するものである。 K1849.三宅通博:使用済みニッケル水素2次電池をモデルケースとした環境に優しい資源循環プロセスの構築 本研究は、使用済みニッケル水素2次電池をモデルケースとして、電池中のニッケルをはじめ種々の有用かつ希少元素を再びニッケル水素2次電池用金属原料として循環できる環境に優しいプロセスを構築し、その技術の実用化を図ることを目的とする。具体的には、平成16~18年度の3年間で、以下の3段階から成るプロセスを構築する。(1)エネルギー投入を抑えた化学的手法による有用かつ希少元素含有化合物の分離プロセス、(2)分離化合物のメタンリフォーミング触媒への転換プロセス、(3)メタンリフォーミングの利用により触媒から分離されるニッケル水素2次電池用金属原料の回収プロセスを開発する。最終年度である平成18年度は、現在までの研究開発を基に、第3段階であるメタンリフォーミング触媒からの電池用金属原料の回収プロセスの開発を行なうと共に、第1及び第2段階での成果を見直し、実用化できる資源循環プロセスの構築を試みる。 K1850.野城智也:長期間使用製品の仕様・保守情報の表示及び利用方法に関する研究 長期間使用する製品については、技術的仕様及び保守方法に関する情報が散逸してしまうことが、長寿化のための維持保全や、製品使用終了時のリユース、リサイクル及び最適処理を妨げている。本研究は、このような現状を踏まえて、技術的仕様及び保守方法に関する情報の保存・表示・利用方法を開発するとともに、表示内容及び方法に係わる標準規格原案を作成するものである。本研究の構想自体は、ICタグなど個体自動認識技術が近年めざましい発展を遂げているなかで、提案者のほかにも多くの多くの識者が提唱している。しかしながら、(1)個体認識媒体の耐用性への不安(2)長期にわたって情報を保持するための関与主体間のコスト負担の不明確さ(3)情報表示方法に関する標準規格の欠如などで実現が阻まれてきた。本研究は、社会技術的手法も併せて適用することにより、これらの隘路を突破することを目指すものである。 K1851.北條純一:マイクロ波照射を用いたフライアッシュゼオライトの工業化プロセスの開発 火力発電所から大量に排出される石炭灰(フライアッシュ)は増加の一途である。埋立処分地が枯渇しつつある近年、その有効利用として、水熱合成によるゼオライト化が研究されている。ゼオライトは高いイオン交換能をもち、アンモニアなどの有害物質を吸着する環境浄化材料として有用である。また、このプロセスでは原料灰に含まれる有害重金属を除去することができ、埋立処分に比べて格段に優れている。しかしながら、従来の水熱合成では生産効率が低く、実用化の大きな妨げになっていた。本研究では、マイクロ波を用いた石炭灰のゼオライト化プロセスを開発する。マイクロ波照射が溶媒分子を活性化し、原料固相の溶解を促進し、ゼオライト結晶の析出を制御することによって、従来法に比べて著しい効率化が期待される。斯様な期待は研究代表者らのラボレベルの実験によって既に確信されており、本研究では特にその工業的スケールアップを目指すものである。 K1852.貴田晶子:循環廃棄過程を含めた水銀の排出インベントリーと排出削減に関する研究 水銀に対する世界規模で排出な排出量制御及び処分方策が喫緊の課題となっている。大気への水銀排出量の46%はアジアからと推定され、排出源の寄与は石炭燃焼・廃棄物燃焼が大きいとされているが、その見積もり自体の不確定性は大きいとされている。そこで、世界における水銀排出量に対する日本及びアジアの大気排出インベントリーの作成を目標とし、自然由来発生量と共に人為的発生量をカテゴリー別排出係数と排出量から推定する。排出インベントリー及び物質フローモデルに必要な循環資源・廃棄物中の水銀賦存量について情報整理し、実験的取り組みにより熱処理過程からの排出量推定の精度を向上させる。またリサイクルの推進により廃棄物・二次資源や回収された水銀がアジアへ流入している状況をふまえ、水銀の物質フローモデル及び環境動態モデルを、アジア地域を見据えて開発する。更に水銀の形態別分析や連続モニタリングについても取り組む。 K1853.古市徹:バイオ技術を中心とした不法投棄現場及び不適正最終処分場の修復・再生システムの開発 循環型社会の構築に向けた廃棄物管理技術をより安全、安心なものとするためには、特に重要課題である青森・岩手県境に代表される大規模不法投棄現場の原状回復を適切に行う技術(修復)の開発と、さらに、不適正最終処分場の適正化を図るシステム開発(再生)が必要である(図1参照)。その際には、環境にやさしい方法として、二次汚染の可能性が少ない省エネ型のバイオ技術の積極的な導入が望まれる。 K1854.逸見彰男:製紙スラッジ産業廃棄物からハイドロキシアパタイト複合体の創製に関する研究 製紙スラッジは製紙工程から排出される産業廃棄物であり大部分は埋立て処分されているが、埋立てスペース不足等の問題により、ごみを生まないゼロエミッション的な再資源化方法の確立が急務となっている。本研究では、製紙スラッジ中からハイドロキシアパタイトとゼオライトを結晶化させると同時に酸化チタンを光触媒活性化し、ハイドロキシアパタイト-酸化チタン-ゼオライトナノ複合体を創製するとともに、これらナノ複合化のメカニズム解明及び酸化チタンの光触媒活性化メカニズム解明を行う。創製された機能性ナノ複合体は、ゼオライトのもつ有害物質の吸着性・陽イオン交換性に加えてハイドロキシアパタイトのもつ高分子吸着性・陽陰イオン交換性と酸化チタンの有する光触媒作用を組み合わせることで、高・多種機能を半永久的に持続させる環境浄化材料としての利用が期待できる。 K1855.山田正人:最終処分場におけるアスベスト廃棄物の安全性評価手法の開発 アスベスト問題の安全・安心かつ究極的な解決を図るためには、過去から現在までにアスベストが埋め立てられたアスベスト最終処分場を特定して封じ込めの実態を確認すると共に、掘り起こし再生事業や跡地の形質変更時における再放出の防止を図る必要がある。本研究では、各種記録や現場調査によってアスベストを埋め立てた処分場を特定する手法、飛散を防ぐ埋立試料のサンプリング方法、保有水等や埋立地ガスに含まれるアスベストの存在量を把握する手法を示し、室内実験によって処分場内におけるアスベストの廃棄物層内の移動特性と掘削時における飛散特性を把握する。これら一連の手法を既存最終処分場に埋め立てられたアスベストの安全性確認手法として体系化し、適正埋立を行うための情報管理システム、埋立層内のアスベスト移動を抑止する埋立技術の開発や容量増加や形質変更時における指針、封じ込め能力を高める埋立工法や管理手法を提示する。 |
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環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課 TEL: 03-5501-3154 FAX: 03-3593-8263 E-mail: hairi-haitai@env.go.jp |
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