環境省では、廃棄物に係る諸問題の解決及び循環型社会形成に資する研究・技術開発を推進する目的として、競争的資金である廃棄物処理等科学研究費補助金制度を設けています。
本制度のうち、次世代廃棄物処理技術基盤整備事業について、「廃棄物適正処理技術」、「廃棄物リサイクル技術」、「循環型構築技術」及び「アスベスト廃棄物の無害化処理技術」の4つの分野を対象として公募を行い 、次世代廃棄物処理技術基盤整備事業審査委員会での評価を得て、交付対象を決定しました。
1.交付対象となった課題 (10事業)
分野名 |
事業者名 |
事業名 |
廃棄物適正処理
技術 |
東急建設株式会社 |
最終処分場再生を目的とした先端脱着式鋼管ケーシングによる好気的改善技術の開発 |
株式会社 日本総合研究所 |
医療廃棄物の減量化・適正分別の推進及び適正処理確認の技術開発 |
廃棄物リサイクル技術 |
松下電工株式会社 |
FRPの亜臨界水分解技術の実用化開発 |
日立造船株式会社 |
廃食用油のバイオディーゼルへのリサイクル技術高度化 |
三菱マテリアルテクノ株式会社 |
廃肉骨粉焼却灰のリサイクル技術開発 |
循環型社会構築技術 |
不動建設株式会社 |
焼却灰の焼成による再資源化と最終処分場プレミックス埋立技術の開発 |
アスベスト廃棄物の無害化処理技術 |
新日鉄エンジニアリング株式会社 |
アスベストの無害化処理技術の開発 |
クボタ松下電工外装株式会社 |
アスベスト含有窯業系建材の非飛散無害化処理システムの開発 |
石川島播磨重工業株式会社 |
アスベストの無害化処理技術の開発 |
三重中央開発株式会社 | アスベストの無害化処理技術の開発 |
2.平成17年度次世代廃棄物処理技術基盤整備事業審査委員
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氏名 |
所属 ・職名 |
委員長 |
田中 勝 |
岡山大学大学院 環境学研究科 教授 |
委員 |
井上 雄三 |
独立行政法人 国立環境研究所 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター 最終処分技術研究開発室長 |
岡田 光正 |
広島大学理事 副学長 |
嘉門 雅史 |
京都大学大学院 地球環境学堂 教授 |
河村 清史 |
埼玉県環境科学国際センター 研究所長 |
武田 信生 |
京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 教授 |
寺嶋 均 |
社団法人 全国都市清掃会議 技術部担当部長 |
市戸 万丈 |
独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所 飼料生産管理部長 |
永田 勝也 |
早稲田大学 理工学部 教授 |
馬場 寿 |
財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター 調査研究部長 |
林 愼也 |
独立行政法人 海上技術安全研究所 客員研究員 |
藤吉 秀昭 |
財団法人 日本環境衛生センター 環境工学部長 |
杉山 吉男 |
財団法人 廃棄物研究財団 研究企画・振興担当部長 |
安井 至 |
国際連合大学 副学長 |
※委員長以外の委員は50音順
3.採択課題における事業の概要
J1801「最終処分場再生を目的とした先端脱着式鋼管ケーシングによる好気的改善技術の開発」(東急建設株式会社)
廃棄物最終処分場再生技術のひとつとして,廃棄物層内を好気的雰囲気へ変換することが有効であることが知られている。そのためには廃棄物層内の浸出水排除や、ガス抜きを目的とした有孔管の建込みが必要となる。しかし、現在一般的に採用されるロータリー式ボーリング工法では廃棄物層の削孔は困難な場合が多くコストも高額となっている。また,有水削孔となるため廃棄物を地上へ噴出させ周辺環境の汚染や作業環境の悪化を伴うこととなる。前記の理由から国内では長期間放置されている不適正処分場は少なくない。
本技術の特徴は,先端部分が脱着可能なケーシングの採用し、無水・無排土削孔を可能としている点である。ケーシング内部には有孔管等を装着または挿入し、所定の深度へ削孔、残置した後,ケーシングのみを回収する工法であり、従来のボーリング工法と比較して低コスト,短時間での施工が可能となる。また,無水・無排土削孔により廃棄物を地上に掘り出すことなく,周辺環境や作業環境を良好な状態に保持できる。さらに,本技術を稼動中の最終処分場の通気追加設備として利用すれば,埋立廃棄物の早期安定化促進が期待でき、廃止までの維持管理期間を短縮が可能となり,環境汚染リスク低減や、維持管理コストの削減が可能となる。本事業では,ケーシング先端部分の脱着を確実にするための脱着機構の開発と,それに伴う実地試験を実施する。また,本工法で設置された井戸構造の機能を確認するため、管周辺及び管内モニタリングを実施する。

J1802「FRPの亜臨界水分解技術の実用化開発」(松下電工株式会社)
樹脂と無機物の複合材であるFRP(繊維強化プラスチック)は浴室ユニットやプレジャーボート等幅広く使用されてきたが、再資源化が困難で大部分は埋立処分されている。当社の研究で高温高圧(230℃、2.8MPa)の亜臨界水でFRP樹脂を分解し、全体の80%(樹脂の70%、無機物の90%)をFRP原料に再資源化できることを確認し、40kg/バッチのベンチスケールで実証した。
実用化に向けたスケールアップでは、分解槽の伝熱効率が低下し、昇温・冷却時間が長くなるという問題がある。また、固液混合流体の高温高圧条件下での供給と排出は実用化されておらず、それらを解決する処理時間の短縮可能な亜臨界水分解プロセス技術の確立が課題である。そのために固液混合流体の高速加熱技術、供給・排出技術を開発し検証を行う。また、上記プロセスに対応したFRPの粉砕及び無機物分離プロセスのパイロット実証設備を設計製作し、0.8t/日規模(年間200t相当)の実証を目指す。

J1803「廃食用油のバイオディーゼルへのリサイクル技術高度化」(日立造船株式会社)
最近の原油価格高騰及び二酸化炭素排出削減の点からカーボンニュートラル燃料であるバイオディーゼル(BDF)が注目を集めている。日本においても京都市での廃食用油を原料としたBDFの公用車への利用をはじめとして自治体を中心にBDF利用が始まっているが、日本においては主として廃食用油を原料に利用することから以下の問題点がある。
・廃食用油を原料とするため原料の品質(劣化度=AV:遊離脂肪酸(植物油が一部分解したもの)の含有量)が一定しない。劣化度は製品品質に影響することから製品の品質も一定しない。
・BDF製造時にグリセリンが副生するが、廃食用油を原料とするため、副生したグリセリンを医薬グレードまで精製しても買い取り先がない。(動物油が含まれるためBSE問題等との関連で医薬化粧品に使用できない。)従って燃焼させサーマルリサイクルすることが有効な利用方法となるが、グリセリン中に触媒であるアルカリ金属が混入してしまうことから小型の燃焼炉ではアルカリにより炉壁を痛めてしまい、サーマルリサイクルが困難である。
そこで、本事業においては上記の問題解決を目的としてBDF製造設備の高度化を行う。

J1804「医療廃棄物の減量化・適正分別の推進及び適正処理確認の技術開発」(株式会社 日本総合研究所)
本事業では、医療機関が抱える廃棄物関連の課題を解決するサービスシステムを開発する。
感染性廃棄物の発生時点で(容器)にICタグを貼付し、各処理過程(内部集積、外部排出、運搬、処理受取、処理)のデータ抽出から、廃棄物及び関連業務の「見える化」を実現する。
「見える化」とは、廃棄物1つ1つの種類、重量、容器種類、処理フローなどのデータを抽出・分析し、廃棄物関連業務の改善対策を当該者に具体的に指示するシステムである。本システムで、医療機関は主に次の効果や改善が期待できる。
[1]発生から処理までの過程をトレースし適正処理を証明
[2]年々増加する廃棄物量の要因を分析し改善対策の実施
[3]処理委託費の適正状況を確認し改善対策の実施
[4]分別の進まない現場を特定し具体的な改善対策の実施
[5]分別の進む現場の手法やノウハウを吸収し全現場へ周知

J1805「廃肉骨粉焼却灰のリサイクル技術開発」(三菱マテリアルテクノ株式会社)
BSE予防対策のため廃肉骨粉は現在焼却処理されているが、単に焼却され、焼却灰は溶融後埋立または建設資材、一部がセメント化されているのみで再生利用は限られていた。
肉骨粉は揮発分が高く発熱量の高い良質のバイオマス燃料であり、この肉骨粉を発生源の工場で焼却し、発生する熱エネルギーを蒸気として回収し工場に供給することにより、工場での化石燃料消費とCO2発生量を大幅に削減可能である。一方肉骨粉を焼却したものはリン酸カルシウムを多く含み、N分が多い有機性廃棄物を堆肥と
して施用する際、この焼却灰を活用することによりP分を補うことが可能となる。さらにはCa分は土壌中の石灰質を補うことが可能である。
そのため焼却灰を、肥料利用解除の条件である「空気の流通下で1,000℃以上、5分間以上」の熱処理を行い、焼却灰を安全に安心して利用可能とする。この熱処理灰を良質なリン酸肥料である骨灰として農業分野を中心に活用を計ることでリンのリサイクルが可能となる。

J1806「焼却灰の焼成による再資源化と最終処分場プレミックス埋立技術の開発」(不動建設株式会社)
本事業は、都市ごみ焼却灰を新たな資源化用途※1で活用するための実用化に向けた実証試験を行うものである。具体的には、安定化材※2をプレミックス工法で埋め立てる際の、品質※3確保に向けた実証試験を行う。
プレミックス工法とは、廃棄物と安定化材を事前に攪拌混合し埋め立てる工法である。透水係数が低くなることから浸出水量の軽減による維持管理費の低減や、廃棄物の飛散、悪臭防止及び景観の改善など処分場の環境改善が期待される。無機物主体の埋立処分場においては、約3割を占めるといわれる最終処分場の即日覆土や中間覆土を不要とすることも期待され、処分場の延命化、早期安定化及び跡地の早期利用が期待される。
※1新たな用途:最終処分場の覆土に変わり安定化を促進する資材
※2安定化材:都市ごみ焼却灰と石灰石を焼成し自硬性を有する資材
※3品質:既埋立物が埋立作業に用いるダンプトラック等のトラフィカビリティを確保し、また亀裂が生じない状態を有する。

J1807「アスベストの無害化処理技術の開発」(新日鉄エンジニアリング株式会社)
スレート製品等アスベスト含有廃棄物の適正処理が喫緊の課題となっているが、これらの製品の処理に際しては下記の条件が前提になると考えられる。[1]1500℃以上の高温溶融、[2]通常のごみ供給とは別系統での供給系の確保、[3]排ガス処理設備に対するセーフティネットの設置。このニーズに応えるにはシャフト炉式ガス化溶融炉の特徴を活かし、極力破砕せずに廃棄物を一括高温溶融し、排ガス処理設備の最終段にHEPAフィルタを設置することが有効である。こうした基本コンセプトのもと、シャフト炉式ガス化溶融炉におけるアスベスト含有廃棄物の処理性を確認すべく、10トン/日規模の実験施設を用いた溶融試験を平成17年度に実施したが、良好な結果が得られた。さらに本格的な実用化を展開するためには100トン/日規模の実機施設での溶融性能、HEPAフィルタを含めた排ガス処理性能を確認し、さらには周辺環境や作業環境への影響について評価しておくことが必要である。

J1808「アスベスト含有窯業系建材の非飛散無害化処理システムの開発」(クボタ松下電工外装株式会社)
電子レンジで代表されるマイクロ波により、アスベスト含有建材を安全に、効率よく無害化する、溶融法とは違った新しい切り口の処理法を実用化する。自然科学研究機構核融合科学研究所等が高周波技術の応用から考案した、アスベスト含有建材に含まれるセメント中のカルシウム成分にマイクロ波を選択的に吸収させ均一・迅速に加熱し無害化する省エネタイプの方法を、実際の化粧石綿スレート瓦等に適用した共同技術開発を行い、実用化を図る。
本技術は解体・改修により剥がされたアスベスト含有建材を破砕によって二次飛散させることなく、そのままの大きさで均一・迅速に加熱し、かつ排気が極小の状態で無害化することを特徴とするものであり、更に装置を溶融炉などに比べ小型化・低廉化できるため、専用の処理設備とし各地に多数設置することができる。解体等の際にアスベスト含有建材は湿潤化して剥がし、破砕せずに区別して埋め立てすることで最終処分場が一層の不足を来たす問題に対し、無害化物は容易かつ安全に破砕、減容化でき、安定型処分場に区別なく埋め立てできるとともに、セメント原料化や自社の建材のフィラーにリサイクルできる可能性をひめており、実用化をめざす。

J1809「アスベストの無害化処理技術の開発」(石川島播磨重工業株式会社)
スレ-ト製品等の非飛散性アスベストを中心としたアスベスト廃棄物を梱包状態のまま実用溶融施設(実機)に投入して溶融実証試験を行うことにより、排ガス処理設備がアスベスト廃棄物の無害化処理に適していることを確認する。通常操業条件下において安定溶融できることを確認するとともに、下流側への飛散物の性状把握を行い、既存排ガス処理設備の適用性を評価する。
60 t/24 h 規模の実用溶融施設(実機)に、非飛散性アスベストを中心としたアスベスト廃棄物を、破砕、選別等の前処理を一切行わず、梱包状態のまま、直接投入し、別途、発生した焼却灰(主灰および飛灰)とともに溶融する。この時、排ガスに同伴される下流側への飛散物について、アスベスト混入の有無確認も含めた性状分析や溶融特性等を把握し、通常操業条件の範囲内で既存の排ガス処理設備が大幅な改造を行わずにアスベスト廃棄物の無害化処理に適応できることを確認する。なお、実証試験時、大気中の粉じん測定を行い、アスベストの飛散がないことをあわせて確認する。

J1810「アスベストの無害化処理技術の開発」(三重中央開発株式会社)
飛散性アスベスト廃棄物の発生量増加や非飛散性アスベスト含有製品の処理が実質直接埋立となったことは、国内における最終処分場残容量の逼迫を招いており、中間処理によるアスベストの無害化、減容化、再資源化が緊急の課題となっている。管理型最終処分場を有しこれらのアスベスト廃棄物を取り扱っている三重中央開発株式会社においては、深刻な経営課題であり特に非飛散性アスベスト含有製品(以下、アスベスト廃棄物という)の無害化技術の確立並びに実処理の開始は、一刻も早く成し遂げなければならない案件である。
本事業は、当初POPs廃農薬の無害化処理を目的に平成17年12月に三重中央開発株式会社敷地内に設置したジオメルト無害化施設(電気抵抗式溶融炉:9.5t/48時間/1バッチ)を使用し、アスベスト廃棄物の無害化に対するジオメルト技術の有効性を検証し無害化処理技術を確立するものである。
