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廃棄物処理等科学研究費補助金
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「平成18年度廃棄物処理等科学研究費補助金」に係る継続研究の中間評価結果について

平成18年度で研究事業期間が3年計画の2年目に当たる研究11件について、廃棄物対策研究審査委員会において中間評価を実施しましたので、結果を次のとおり発表します。

1.平成18年度中間評価対象研究(全11件)

研究番号 研究課題名 代表研究者名 評価結果
K1829 コンクリート産業における環境負荷評価マテリアルフローシミュレーターの開発および最適化支援システムの構築に関する研究 野口 貴文 51.2
K1830 廃棄物対策が家計のごみ排出削減に及ぼす影響に関する計量経済学的研究 日引 聡 43.4
K1831 産業拠点地区での地域循環ビジネスを中核とする都市再生施策の設計とその環境・経済評価システムの構築 藤田 壮 57.0
K1832 バイオマスの高機能化とめっき廃液の最適な資源循環システムの構築 馬場 由成 49.3
K1835 水素生成プロセスの導入による地域未利用バイオマスの適正循環システムの構築に関する研究 石垣 智基 42.0
K1838 再生製品に対する環境安全評価手法のシステム規格化に基づく安全品質レベルの合理的設定手法に関する研究 大迫 政浩 62.6
K1839 消化ガス再生利用を可能にする新規燃料電池電極材料の開発 佐々木 一成 47.8
K1847 バイオマスの循環型システム活用(CO2のサイクル化)における超音波による無水エタノールの精製およびバイオディーゼル燃料の製造に関する研究 坂東 博 40.6
K1848 廃棄物を利用した鉄-水素コプロダクションシステムに関する研究 清水 正賢 56.8
K1850 長期間使用製品の仕様・保守情報の表示及び利用方法に関する研究 野城 智也 46.3
K1852 循環廃棄過程を含めた水銀の排出インベントリーと排出削減に関する研究 貴田 晶子 53.0

*評価結果は、審査委員ごとに評価点数の偏差値を算出し、当該偏差値を研究課題ごとに平均したもの。

2.研究の概要

K1829 コンクリート産業における環境負荷評価マテリアルフローシミュレーターの開発および最適化支援システムの構築に関する研究(野口 貴文)

本研究では,各生産段階だけでなくコンクリートおよび無機系建材の関連産業を対象とした需要と供給のマテリアルバランスを、廃棄物抑制、輸送エネルギー削減、経済性などを考慮した上で成立させ,建築物の長寿命化やリサイクルに伴う環境負荷低減効果など,長期にわたる時間軸の考慮を可能とする環境評価ツールとして,マルチエージェントシステムを用いた環境負荷評価マテリアルフローシミュレーターの開発を行う.本シミュレータと連成し、他産業廃棄物利用、二酸化炭素排出,最終処分物量に加え,経済性や製品品質など複数の基準による総合評価に基づいた最適なマテリアルフローの提示可能な支援システムの構築を行う.
さらに,都市圏および実建設現場を数箇所選び,コンクリート関連産業や廃棄物処理産業,各種関連統計や地理的条件などを諸元としたアクションスタディを行い,環境負荷最適化シナリオの提案と循環型社会形成に向けた意思決定支援を行う。

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K1830 廃棄物対策が家計のごみ排出削減に及ぼす影響に関する計量経済学的研究(日引 聡)

循環型社会システム構築のために、ごみ排出量の削減、リサイクル、再利用の促進が重要な政策課題となっている。近年各自治体においてごみ有料化制度の導入が急速に進んでいるが、導入後5年で一割以上の削減を実現した自治体もある一方で、導入数年後にごみの排出量が導入前の水準にまで戻ってしまった自治体もあり、有料化に対する、自治体の効果の評価にはばらつきがある。また、国内外で有料制のごみ削減効果に関する研究が多く見られるが、その削減効果の有効性に関して結論が分かれる。中環審廃棄物・リサイクル意見具申(案)では、循環型社会に向けた取組として、経済的手法(有料化)の推進、一般廃棄物処理コスト分析や効率化の推進の必要性をあげ、十分な減量効果発揮のために必要な料金設定の必要性を述べている。本研究は、有料化の有効性を評価し、廃棄物処理費用を分析し、望ましい廃棄物政策のあり方(望ましい料金設定)に関して明らかにする。

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K1831 産業拠点地区での地域循環ビジネスを中核とする都市再生施策の設計とその環境・経済評価システムの構築(藤田 壮)

国内の先進的な産業集積「川崎エコタウン地区」を対象として,循環形成の環境・社会経済効果を定量的に評価するシステムを構築する.循環形成がもたらす効果を定量化することで,これまでの環境施策と循環ビジネスを評価する.加えて,産業間の副産物の連携拡大や都市・産業連携のアクションプログラムを設計・評価するシステムを築く.すなわち,[1]地域の物質代謝の空間情報データベースを共有する地理情報システム・ネットワークで構築したうえで,[2]企業と連携して循環施策の中核となる転換技術の代謝プロセスモデルと,輸送プロセスを含むLCA評価システムを構築する.そのうえで[3]個別事業から統合的な都市政策まで多様な代替的施策を設計して評価するシステムを構築する.[4]川崎地区での運用を通じて行政,企業の要請を反映してより実用的システムを実現しつつ,国際共同研究者とともに産業共生型の都市再生システムの国際的ベンチマークモデルを構築する。

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K1832 バイオマスの高機能化とめっき廃液の最適な資源循環システムの構築(馬場 由成)

 めっき廃液は,有価な亜鉛やニッケルを大量に含んでいるにも関わらず,微量のクロム,鉛,錫等の重金属やリン酸を含んでいるため,有害難処理廃棄物となっている。一方,金やパラジウム等の貴金属めっき廃液は微量な貴金属の回収技術が遅れているため,そのまま排水されている。本研究では,様々な地域バイオマス廃棄物を利用してこれらを除去・回収することにより,めっき廃液を無害化・資源化する技術開発を行う。すなわち,宮崎県の農業や水産加工業から大量に発生する海老や蟹の殻,果物滓,貝殻,海藻類を利用して,簡単な化学修飾によりバイオマスの高機能化を図り,重金属の除去及び貴金属・リン酸を回収する研究を行う。研究戦略としては,除去・回収する対象金属に最適な(バイオマスの種類),しかも素材のよさ(細孔構造,ビーズや繊維)を生かしながら,新しい機能を付与する方法(分子インプリント法,グラフト重合法)を開発し,実用化を目指す。

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K1835 水素生成プロセスの導入による地域未利用バイオマスの適正循環システムの構築に関する研究(石垣 智基)

 都市近郊における、リサイクル不能なバイオマス系廃棄物および余剰生産状態にあるバイオマス資源化物(合わせて未利用バイオマス)を利用する水素生産技術を確立し、新規エネルギー生産システムとしての最適化を図ることで、バイオマス系廃棄物の適正循環社会の実現に向けた技術的な選択肢の一つとして提案する。未利用バイオマス系廃棄物および廃棄物焼却灰の混合処理による、効率的な水素生成現象の実用化に向けて、化学的および生物学的な複合的反応メカニズムを解明するとともに、原料要求品質および組合せ特性が水素生成に与える影響、反応の制御因子を明らかにする。最終的には小規模スケールでの実証実験を念頭に置いた技術開発へと展開する。

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K1838 再生製品に対する環境安全評価手法のシステム規格化に基づく安全品質レベルの合理的設定手法に関する研究(大迫 政浩)

量的に多い建設資材系への廃棄物再生製品を対象とした土壌・地下水への溶出リスクに焦点をあて、その性状や多様な利用形態による影響の違いを適切に評価でき、かつ外部環境変化や長期経過に伴う影響等、目的に応じた複数の試験方法を設計する。その上で、実試料を用いた実験的検討等を行って妥当性を検証し、一連の試験群を体系的なシステム規格として提案する。具体例としては、粒状・成型状製品について、有害物質の拡散フラックスの評価(拡散試験)、外部環境としての降雨接触条件(液固比依存試験)やpH変化を考慮した評価(pH依存性試験)、想定環境により近い動的評価(連続バッチ試験)、およびアルカリ側を考慮した最大溶出可能量評価(アベイラビリティ試験)等である。また、一連の試験群から得られるデータを用いた土壌・地下水への影響予測手法を確立し、科学的な不確実性と社会的影響を勘案した合理的な安全品質レベルの決定手法を構築する。

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K1839 消化ガス再生利用を可能にする新規燃料電池電極材料の開発(佐々木 一成)

下水処理場などにおいて多量に発生する消化ガスはメタンを主成分としているが、それを燃料として燃料電池を作動させることが可能になれば、高効率に電気を生み出し同時に熱の有効利用も可能になる。本研究では、この循環型リサイクルエネルギーシステムのボルトネックの一つとなっている、消化ガスの再生利用を可能にする固体酸化物形燃料電池の電極材料の開発に集中して取り組む。消化ガス供給時には電極上への炭素析出や硫化水素などによる電極劣化などが起こり得る。そこで本研究ではこのような電極上での反応を制御できる新規材料を開発する。具体的には、Niとの合金触媒などを開発し、粒子径や表面積、電気化学活性や酸化還元性、電子・イオン伝導性などを制御する。これにより、このリサイクルエネルギー資源にフレキシブルに対応できる電極材料を提案し、材料設計指針を構築する。

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K1847 バイオマスの循環型システム活用(CO2のサイクル化)における超音波による無水エタノールの精製およびバイオディーゼル燃料の製造に関する研究(坂東 博)

未利用および廃棄バイオマスは、超音波により、常温、常圧の条件で、薬品を添加せず、セルロース、ヘミセルロース、プロトリグニン、タンニン等を高純度分離し、新素材として資源化する。また、バイオマスのCO2サイクル化を図るため、超音波により、セルロース(ヘミセルロース)を(希)酸加水分解し、ブドウ糖(5炭糖含む)を高速生成し、ブドウ糖等のアルコール発酵を促進する。さらに、超音波霧化器により、低濃度のエタノール水溶液から無水エタノールを分離精製し、付加価値の高い無水エタノールをバイオエタノール燃料(以下BEF)、工業用、消毒用に供給する。また、超音波により、パーム油等と、バイオ起源の無水エタノールとから純度が高く、低コストのバイオディーゼル燃料(以下BDF)を安定的に製造する。一方、BEFおよびBDFによる走行実験を実施し、燃費、品質の向上、自動車排ガス中の汚染物質の削減等について検討する。

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K1848 廃棄物を利用した鉄-水素コプロダクションシステムに関する研究(清水 正賢)

研究の狙いは、廃プラスチック、RDF、古紙、廃木材等の有機系一般廃棄物を鉄鉱石の製錬反応と組み合わせて水素およびCOガスに転換する「鉄-水素コプロダクションシステム」の開発にある。具体的には、水素成分を多量に含む有機系廃棄物を鉄鋼の高温熱処理技術や乾留技術、鉱石原料中への内装法等によって熱分解させ、得られる水素および炭化水素系ガスを利用して鉄鉱石の還元反応を高速化、低温化させるとともに、還元反応で生成するH2OとCO2ガスを炭化水素から分解析出する活性な遊離炭素によって、還元と同時に水素とCOガスに瞬時に改質する鉄-水素コプロダクション技術を開発する。この鉄鋼製錬反応を利用した有機系廃棄物の高度利用技術は、石炭系燃料に頼ってきた製鉄分野の大幅なCO2排出量の削減に繋がるだけでなく、廃棄物利用新水素エネルギーの創生など環境保護ならびに廃棄物処理の負荷低減に大きく寄与するものである。

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K1850 長期間使用製品の仕様・保守情報の表示及び利用方法に関する研究(野城 智也)

長期間使用する製品については、技術的仕様及び保守方法に関する情報が散逸してしまうことが、長寿化のための維持保全や、製品使用終了時のリユース、リサイクル及び最適処理を妨げている。
本研究は、このような現状を踏まえて、技術的仕様及び保守方法に関する情報の保存・表示・利用方法を開発するとともに、表示内容及び方法に係わる標準規格原案を作成するものである。
本研究の構想自体は、ICタグなど個体自動認識技術が近年めざましい発展を遂げているなかで、提案者のほかにも多くの多くの識者が提唱している。しかしながら、(1)個体認識媒体の耐用性への不安(2)長期にわたって情報を保持するための関与主体間のコスト負担の不明確さ(3)情報表示方法に関する標準規格の欠如などで実現が阻まれてきた。本研究は、社会技術的手法も併せて適用することにより、これらの隘路を突破することを目指すものである。

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K1852 循環廃棄過程を含めた水銀の排出インベントリーと排出削減に関する研究(貴田 晶子)

水銀に対する世界規模で排出な排出量制御及び処分方策が喫緊の課題となっている。大気への水銀排出量の46%はアジアからと推定され、排出源の寄与は石炭燃焼・廃棄物燃焼が大きいとされているが、その見積もり自体の不確定性は大きいとされている。そこで、世界における水銀排出量に対する日本及びアジアの大気排出インベントリーの作成を目標とし、自然由来発生量と共に人為的発生量をカテゴリー別排出係数と排出量から推定する。排出インベントリー及び物質フローモデルに必要な循環資源・廃棄物中の水銀賦存量について情報整理し、実験的取り組みにより熱処理過程からの排出量推定の精度を向上させる。またリサイクルの推進により廃棄物・二次資源や回収された水銀がアジアへ流入している状況をふまえ、水銀の物質フローモデル及び環境動態モデルを、アジア地域を見据えて開発する。更に水銀の形態別分析や連続モニタリングについても取り組む。

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環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課

TEL: 03-5501-3154 FAX: 03-3593-8263 E-mail: hairi-haitai@env.go.jp

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