![]() 「平成17年度廃棄物処理等科学研究費補助金」に係る交付対象研究等の決定について 環境省では、廃棄物に係る諸問題の解決及び循環型社会形成に資する研究・技術開発を推進する目的として、競争的資金である廃棄物処理等科学研究費補助金制度を設けています。 1.交付決定した研究 2.廃棄物処理対策研究審査委員名簿(50音順)
○ 研究の概要 K1701.野口 貴文:コンクリート産業における環境負荷評価マテリアルフローシュミレーターの開発および最適化支援システムの構築に関する研究 本研究では、各生産段階だけでなくコンクリートおよび無機系建材の関連産業を対象とした需要と供給のマテリアルバランスを、廃棄物抑制、輸送エネルギー削減、経済性などを考慮した上で成立させ、建築物の長寿命化やリサイクルに伴う環境負荷低減効果など、長期にわたる時間軸の考慮を可能とする環境評価ツールとして、マルチエージェントシステムを用いた環境負荷評価マテリアルフローシミュレーターの開発を行う.本シミュレータと連成し、他産業廃棄物利用、二酸化炭素排出、最終処分物量に加え、経済性や製品品質など複数の基準による総合評価に基づいた最適なマテリアルフローの提示可能な支援システムの構築を行う.さらに、都市圏および実建設現場を数箇所選び、コンクリート関連産業や廃棄物処理産業、各種関連統計や地理的条件などを諸元としたアクションスタディを行い、環境負荷最適化シナリオの提案と循環型社会形成に向けた意思決定支援を行う。 K1702.日引 聡:廃棄物対策が家計のごみ排出削減に及ぼす影響に関する計量経済学的研究 循環型社会システム構築のために、ごみ排出量の削減、リサイクル、再利用の促進が重要な政策課題となっている。近年各自治体においてごみ有料化制度の導入が急速に進んでいるが、導入後5年で一割以上の削減を実現した自治体もある一方で、導入数年後にごみの排出量が導入前の水準にまで戻ってしまった自治体もあり、有料化に対する、自治体の効果の評価にはばらつきがある。また、国内外で有料制のごみ削減効果に関する研究が多く見られるが、その削減効果の有効性に関して結論が分かれる。中環審廃棄物・リサイクル意見具申(案)では、循環型社会に向けた取組として、経済的手法(有料化)の推進、一般廃棄物処理コスト分析や効率化の推進の必要性をあげ、十分な減量効果発揮のために必要な料金設定の必要性を述べている。本研究は、有料化の有効性を評価し、廃棄物処理費用を分析し、望ましい廃棄物政策のあり方(望ましい料金設定)に関して明らかにする。 K1703.寺園 淳:アジア地域における資源循環システムの解析と指標化 これまでの調査研究により、日本から中国への輸出をはじめとして、アジア地域において越境移動される循環資源(副産物、使用済み物品・材料)のリサイクルについて、現状理解は概ね進んできた。これをさらに可能な限り定量的に明らかにし、モデル構築とシナリオ分析を含むマテリアルフロー分析と指標化、ならびに制度分析を行う。これによって、日本とアジア諸国の資源循環のあり方の検討に向けた、わかりやすい情報を提供することを本研究課題の目的とする。そのために、第一にアジア諸国の循環資源の輸出入と廃棄にかかる情報整備、第二にE-waste(電気電子廃棄物)およびプラスチックなどの循環資源を対象としたフロー調査とモデル分析、第三にアジア地域版資源循環システムの指標化と制度分析を行う。本研究課題を効率的に実施するために、アジア諸国の専門家を招いた国際ワークショップの開催や個別の研究協力、海外の現地調査なども行う。 K1704.藤田 壮:産業拠点地区での地域循環ビジネスを中核とする都市再生施策の設計とその環境・経済評価システムの構築 国内の先進的な産業集積「川崎エコタウン地区」を対象として、循環形成の環境・社会経済効果を定量的に評価するシステムを構築する。これまでの環境施策と循環ビジネスを評価したうえで、産業間の副産物の連携拡大や都市・産業連携のアクションプログラムを設計・評価するシステムを築く。すなわち、[1]地域の物質代謝の空間情報データベースを共有するGISネットワーク上で構築したうえで、[2]企業と連携して、循環施策の中核となる転換技術の代謝プロセス・輸送プロセスを含むLCA評価システムを構築する。そのうえで[3]個別事業から統合的な都市政策まで多様な代替的施策を設計して評価するシステムを構築する。[4]川崎地区での運用を通じて行政、企業の要請を反映してより実用的システムへ改善を行う。産官学連携によるシステムのデモンストレーション運用実験と改善を通じて、WebGIS上での廃棄物発生,受入情報の入力,更新ネットワークを構築する。 K1705.馬場 由成:バイオマス高機能化とめっき廃液の最適な資源循環システムの構築 めっき廃液は,有価な亜鉛やニッケルを大量に含んでいるにも関わらず、微量のクロム、鉛、錫等の重金属やリン酸を含んでいるため、有害難処理廃棄物となっている。一方、金めっき廃液は微量な金の回収技術が遅れているため、そのまま排水されている。本研究では、様々なバイオマス廃棄物を利用してこれらを除去・回収することにより、めっき廃液を無害化・資源化する技術開発を3年間で行う。すなわち、宮崎県の農業や水産加工業から大量に発生する貝殻、海藻類、果物の滓、海老や蟹の殻を利用して、簡単な化学修飾によりバイオマスの高機能化を図り、重金属の除去及びリン酸・貴金属を回収する研究を行う。平成17年度においては、[1]アオサ,渋柿タンニン、樹皮の吸着剤によるクロムや鉛の除去、[2]海老殻から得られるキトサン誘導体によるめっき廃液中の金・パラジウムの回収、[3]貝殻によるリン酸の回収について研究を行う。 K1706.武田 信生:廃棄物処理施設の爆発火災事故事例解析に基づく安全管理手法の構築 廃棄物焼却・エネルギー回収施設は施設数が多いうえ、新技術の開発も進んでいる。廃棄物焼却やエネルギー回収工程は可燃性物質に多大なエネルギーを加えるため、潜在危険性が大きい。一方、これらの設備は燃焼以外に前処理や貯蔵など工程が多様なうえ、組成の複雑な廃棄物を取り扱うため安全対策を標準化することが難しい。そこで典型的な事故事例を数種選択し、環境化学、廃棄物工学、安全工学の視点から、実験をともなう実証的解析および、事故の原因要素と進展事象の抽出・分類・体系化を試みる。得られた成果に基づく事故発生メカニズム、拡大要因、拡大防止要因、環境影響評価、再発防止対策等を知識化し、現場担当者、行政、設備設計者等が活用可能な、安全管理手法とそれを提供するシステムを構築する。このシステムを活用することで、廃棄物の焼却・エネルギー回収プロセスでの事故の未然防止や、事故時の適切な対応による被害の拡大防止が可能となる。 K1707.石垣 智基:水素生成プロセスの導入による地域未利用バイオマスの適正循環システムの構築に関する研究 都市近郊における、リサイクル不能なバイオマス系廃棄物および余剰生産状態にあるバイオマス資源化物(合わせて未利用バイオマス)を利用する水素生産技術を確立し、新規エネルギー生産システムとしての最適化を図ることで、バイオマス系廃棄物の適正循環社会の実現に向けた技術的な選択肢の一つとして提案する。未利用バイオマス系廃棄物および廃棄物焼却灰の混合処理による、効率的な水素生成現象の実用化に向けて、化学的および生物学的な複合的反応メカニズムを解明するとともに、原料要求品質および組合せ特性が水素生成に与える影響、反応の制御因子を明らかにする。最終的には小規模スケールでの実証実験を念頭に置いた技術開発へと展開する。 K1708.藤田 昌史:廃棄物最終処分場内部の微生物コンソーシアに着目した安定化指標の構築 廃棄物最終処分場の再生化・延命化事業を実施する場合、まず、埋立地内部の現況を簡便かつ安価に把握するための調査技術が必要となる。本プロジェクトでは、埋立地内部の現況をそこに生息する微生物コンソーシアの情報から推定する方法を構築する。ただし、埋立地の深さは、数十メートルに達するうえに、埋め立てられている廃棄物の組成や量は一様ではないことから、直接土壌を採取し、その微生物群を調べることは労力を要するうえに、試料の代表性という観点で得られた結果の解釈が非常に難しくなる。そこで本プロジェクトでは、まず、浸出水に含まれる微生物プロファイルから埋立地内部の微生物群の現況を逆推定する手法を確立する。次に、埋め立て開始後の経過年数が異なる複数の埋立地を対象に微生物情報を蓄積する。浸出水水質や微生物活性も含めてデータベース化することにより、埋立地内部の現況を探る指標、すなわち安定化指標の構築を目指す。 K1709.逸見 彰男:製紙スラッジ産業廃棄物からハイドロキシアパタイト複合体の創製に関する研究 製紙スラッジは製紙工程から排出される産業廃棄物であり大部分は埋立て処分されているが、埋立てスペース不足等の問題により、ごみを生まないゼロエミッション的な再資源化方法の確立が急務となっている。本研究では、製紙スラッジ中からハイドロキシアパタイトとゼオライトを結晶化させると同時に酸化チタンを光触媒活性化し、ハイドロキシアパタイト-酸化チタン-ゼオライトナノ複合体を創製するとともに、これらナノ複合化のメカニズム解明及び酸化チタンの光触媒活性化メカニズム解明を行う。創製された機能性ナノ複合体は、ゼオライトのもつ有害物質の吸着性・陽イオン交換性に加えてハイドロキシアパタイトのもつ高分子吸着性・陽陰イオン交換性と酸化チタンの有する光触媒作用を組み合わせることで、高・多種機能を半永久的に持続させる環境浄化材料としての利用が期待できる。 K1710.坂東 博:バイオマスの循環型システム活用(CO2のサイクル化)における超音波による無水エタノール精製およびバイオディーゼル燃料の製造に関する研究 未利用および廃棄バイオマスの循環型システム活用(CO2のサイクル化)を図るため、超音波により、バイオマスから、常温、常圧の条件で、ほとんど薬品を添加せず、セルロース、ヘミセルロースを高純度分離する。また、超音波により、セルロース(ヘミセルロース)を(希)酸加水分解し、ブドウ糖(5炭糖を含む)を高速生成し、ブドウ糖等のアルコール発酵を促進する。さらに、超音波霧化器により、低濃度のエタノール水溶液から無水エタノールを分離精製し、付加価値の高い無水エタノールをバイオエタノール燃料(以下BEF)、工業用、消毒用に供給する。また、超音波により、パーム油等と、バイオ起源の無水エタノールとから純度が高く、低コストのバイオディーゼル燃料(以下BDF)を安定的に製造する。一方、BEFおよびBDFによる走行実験を実施し、燃費、品質の向上、自動車排ガス中の汚染物質の削減等について検討する。 K1711.嘉門 雅史:廃棄物最終処分場跡地の形質変更のための施工方法と環境リスクの相関に関する研究 廃棄物最終処分場の廃止が確認された場合、その跡地は土地資源としての活用(形質変更)が可能となる。しかし、最終処分跡地の形質変更には、[1]土地の掘削・構造物の建設に伴う処分場遮水工の損傷、[2]処分場内部の生化学的雰囲気の変化に伴う重金属等の溶出、[3]メタンガス・臭気等の発生、といった要因により周辺生活環境に支障を与えるリスクが付随する。このため、2004年3月の廃棄物処理法の改正において、形質変更により生活環境保全上の支障が生じるおそれのある区域を都道府県知事が指定し、その区域内での土地の形質変更は基準に従い実際することが義務付けられた。今後は適切な工法や技術的手法の細目を早急に確立する必要があることから、本申請研究は、[1]廃棄物の種類、埋立時期による廃棄物の有害性の評価、[2]跡地形質変更に伴う利用形態毎の環境リスクの評価、[3]環境リスクの評価結果に基づく適正な対策工法の確立、を行うものである。 K1712.清水 正賢:廃棄物を利用した鉄-水素コプロダクションシステムに関する研究 「廃棄物ゼロ」、「環境問題の解決」、「廃棄物利用新エネルギーの創出」、さらにCO2削減への寄与の大きい「製鉄分野でのCO2排出量の低減」を目的に、水素成分に富む廃プラスチック、RDF、古紙、廃木材等の有機系廃棄物を鉄鉱石の製錬反応と組み合わせて水素およびCOガスに転換する「鉄-水素コプロダクションシステム」を開発する。具体的には、[1]鉄鋼の高温熱処理技術を利用した有機系廃棄物の高効率ガス化技術、[2]分解生成ガスを利用した鉄鉱石の高速低温還元技術、[3]排ガスおよび残渣中に含まれる各種塩化物、重金属類の無害化技術、[4]前記[1]~[3]を融合した鉄-水素コプロダクションシステム、を開発する。平成17年度はPVCを含む廃プラスチックを対象に、平成18年度はRDF、古紙、廃木材、一般廃棄物を対象に研究を進め、平成19年度は鉄-水素コプロダクションシステムのモデル化とエネルギー評価および小型実証試験を実施する。 K1713.野城 智也:長期間使用製品の仕様・保守情報の表示及び利用方法に関する研究 長期間使用する製品については、技術的仕様及び保守方法に関する情報が散逸してしまうことが、長寿化のための維持保全や、製品使用終了時のリユース、リサイクル及び最適処理を妨げている。本研究は、このような現状を踏まえて、技術的仕様及び保守方法に関する情報の保存・表示・利用方法を開発するとともに、表示内容及び方法に係わる標準規格原案を作成するものである。本研究の構想自体は、ICタグなど個体自動認識技術が近年めざましい発展を遂げているなかで、提案者のほかにも多くの識者が提唱している。しかしながら、(1)個体認識媒体の耐用性への不安(2)長期にわたって情報を保持するための関与主体間のコスト負担の不明確さ(3)情報表示方法に関する標準規格の欠如などで実現が阻まれてきた。本研究は、社会技術的手法も併せて適用することにより、これらの隘路を突破することを目指すものである。 K1714.貴田 晶子:循環廃棄過程を含めた水銀の排出インベントリーと排出削減に関する研究 水銀に対する世界規模で排出な排出量制御及び処分方策が喫緊の課題となっている。大気への水銀排出量の46%はアジアからと推定され、排出源の寄与は石炭燃焼・廃棄物燃焼が大きいとされているが、その見積もり自体の不確定性は大きいとされている。そこで、世界における水銀排出量に対する日本及びアジアの大気排出インベントリーの作成を目標とし、自然由来発生量と共に人為的発生量をカテゴリー別排出係数と排出量から推定する。排出インベントリー及び物質フローモデルに必要な循環資源・廃棄物中の水銀賦存量について情報整理し、実験的取り組みにより熱処理過程からの排出量推定の精度を向上させる。またリサイクルの推進により廃棄物・二次資源や回収された水銀がアジアへ流入している状況をふまえ、水銀の物質フローモデル及び環境動態モデルを、アジア地域を見据えて開発する。更に水銀の形態別分析や連続モニタリングについても取り組む。 K1715.佐々木 一成:消化ガス再生利用を可能にする新規燃料電池電極材料の開発 下水処理場などにおいて多量に発生する消化ガスはメタンを主成分としているが、それを燃料として燃料電池を作動させることが可能になれば、高効率に電気を生み出し同時に熱の有効利用も可能になる。本研究では、この循環型リサイクルエネルギーシステムのボルトネックの一つとなっている、消化ガスの再生利用を可能にする固体酸化物形燃料電池の電極材料の開発に集中して取り組む。消化ガス供給時には電極上への炭素析出や硫化水素などによる電極劣化などが起こり得る。そこで本研究ではこのような電極上での反応を制御できる新規材料を開発する。具体的には、Niとの合金触媒などを開発し、粒子径や表面積、電気化学活性や酸化還元性、電子・イオン伝導性などを制御する。これにより、このリサイクルエネルギー資源にフレキシブルに対応できる電極材料を提案し、材料設計指針を構築する。 K1716.大迫 政浩:再生製品に対する環境安全評価手法のシステム規格化に基づく安全品質レベルの合理的設定手法に関する研究 量的に多い建設資材系の再生製品を対象とした土壌・地下水への溶出リスクに焦点をあて、その性状や多様な利用形態による影響の違いを適切に評価でき、かつ外部環境変化や長期経過に伴う影響など、目的に応じた複数の試験方法を設計し、実試料を用いた実験的検討等を行って妥当性を検証し、一連の試験群を体系的なシステム規格として提案する。具体例としては、粒状・成型状製品について、有害物質の拡散フラックスの評価(拡散試験)、外部環境としての降雨接触条件(液固比依存試験)やpH変化を考慮した評価(pH依存性試験)、想定環境により近い動的評価(カラム試験)などである。また、一連の試験群から得られるデータを用いた土壌・地下水への影響予測手法を確立し、科学的な不確実性と社会的影響を勘案した合理的な安全品質レベルの決定手法を構築する。 K1717.安田 八十五:容器包装の分別収集・処理に係る拡大生産者責任の制度化に関する研究 本研究は、各自治体の分別収集・処理費用算出方法の違いや廃棄物データ調査方法の問題に着目して調査を進めている。まず、初年度は6自治体の分別収集・処理費用を綿密に調査し、分別収集・処理費用積算マニュアルを作成した。また、フランスとドイツの各自治体における拡大生産者責任制度(Extended Producer Responsibility: EPR)の調査を行い、容器包装リサイクルに関する最新の情報やデータを収集した。今年度は分別収集・処理費用積算マニュアルを使用して全国都市調査を実施し、類型別費用実態の標準を算出する。また、初年度行ったフランス・ドイツの調査から収集した資料の詳細分析を実施する。欧米諸国のEPRの実態を比較分析した上、日本型EPR制度の政策提言に向けた準備作業を行う。 K1718.東 順一:有害重金属を含む海産物廃棄物の包括的再資源化 カドミウム、亜鉛、ヒ素等の有害重金属を多量に含むホタテ中腸腺(ウロ)、イカ内臓(ゴロ)、アコヤ貝、ヒトデ、褐藻等の多様な海産物廃棄物を出所・起源を問わずウメエキスやレモン果汁等の天然物やその成分との加熱による重金属の脱着(天然物による有害天然物の浄化)と新規に見出した樹脂を用いた選択的重金属除去の組合せで再資源化する包括的な環境配慮型・低コストな海産物産業廃棄物の再資源化システムを構築する。樹脂はリサイクル利用し、有害重金属を除去した海産物は食品、調味液等の食品添加物、釣り餌、飼料、肥料等としての再資源化を実現する。前年度はホタテウロ、アコヤ貝等の脂溶成分の少ない海産物廃棄物を対象とした。本年度はイカゴロや魚の内蔵等脂溶成分の多い海産物廃棄物に対して有害無機重金属の脱着法(天然物による有害天然物の浄化法)を完成させるとともに、有害無機重金属を除去したエキスと残渣の再資源化をはかる。 K1719.井村 秀文:地域資源循環に係る環境会計表の作成とその適用 地域の資源循環と自治体の一般廃棄物処理事業に焦点を当てた環境会計表を開発し、地域における製品の製造、流通、廃棄・リサイクル、最終処分に係る一連の物質フローとそれに付随する金銭フローの体系的記述を可能とする。これによって、循環型社会実現の観点から、地域の物質循環及び一般廃棄物処理事業の効率性に関する評価、地域間比較などが容易かつ体系的に実施できるようにする。また、地域の一般廃棄物処理事業に対する戦略的環境影響評価において環境会計表を活用する手法を提示する。本手法をケーススタディとして名古屋市及び北九州市に適用することで地域の環境政策立案への応用可能性について探るとともに、一般に提供可能なソフトウェアとしての開発を実施する。本年度は地域資源循環に係る環境会計表の概念設計・構造同定、名古屋市及び北九州市を対象にしたケーススタディ、環境会計表ソフトの基礎設計の三点について研究を実施する。 K1720.早瀬 光司:実団地における資源循環型ライフスタイル普及のための環境コミュニケーションとその効果に関する実証的研究 本研究は、資源循環型ライフスタイルの評価の普及・拡大のための有効な環境コミュニケーション手法の検討を目的とし、継続的な社会実験を実施し検討を行う。1年目である昨年度は今年度以降に行う環境コミュニケーション効果を評価するための基礎データの収集、及び、生活者の環境配慮行動の規定要因モデルを構築し、規定要因の解明と異なる環境配慮行動間の構造の相違などについて検討した。その結果、行動間で因果性が異なるものの、環境配慮行動を促進する共通の要因として「やりがい感」「健康・安全性」の因子が抽出された。今年度はこれらの研究成果をふまえ、「情報提供型」と「生活者参加型」の性質の異なる環境コミュニケーションを実際に提示する社会実験を行い、それによる生活者の環境保全意識や行動の変化を分析する。 K1721.井上 勝利:バイオマス廃棄物を有効使用した重金属含有魚介類廃棄物の適正処理技術の開発 農林水産業や関連の食品加工業において発生している大量のバイオマス廃棄物、あるいは環境中に大量に繁茂している難処理バイオマスに秘められた未利用の機能を発掘、活用することにより、水産業で発生している別の難処理有害廃棄物の安全処理と有効利用、資源化を行うという、今後の循環型社会構築のための嚆矢的研究を行う。ホタテ貝やイカの内臓はカドミウム等の重金属を高濃度に含有しているため、有害難処理廃棄物となっている。本研究では重金属を梅干の廃液等に含まれるクエン酸を用いて溶出させ、さらにリンゴやミカンのジュースカス、あるいはワカメやアオサ等のバイオマス廃棄物を丸ごと用いて製造した吸着剤により、吸着・除去する技術の開発を行う。 これら魚介類の内臓廃棄物は栄養価の高いタンパク質や脂肪を多く含んでおり、それらは溶出処理後の内臓廃棄物あるいは溶出液中に含まれる。これらを家畜飼料や肥料として回収・再利用する。 K1722.北條 純一:マイクロ波照射を用いたフライアッシュゼオライトの工業化プロセスの開発 火力発電所から大量に排出される石炭灰(フライアッシュ)のゼオライト化による有効活用を考えるとき、製造効率の低さが問題となる。本研究は、マイクロ波照射の導入により効率的かつ安定な合成技術の確立を目指すものである。昨年度までの研究によりゼオライト生成機構が明らかとなり、各段階におけるマイクロ波効果が簡易型マイクロ波装置によって検証された。本年度は、大型マイクロ波装置への拡張を行うとともに、更なる性能向上のため、チタニアなどの適当な触媒物質とゼオライトを複合化するためのプロセスについて検討する。すなわち、ミクロ・ナノ複合、被覆型・内包型複合あるいはそれらの共生的複合構造を形成するための添加方法、ゼオライト化条件、後処理条件などを調査し、複合構造と環境浄化性能との関連を明らかにし、環境浄化作用の機能向上を目指す。そして、有害物(NH4+イオンなど)の除去性能を検証する。 K1723.近藤 勝義:Si-0系燃焼灰の高付加価値・再資源化技術の開発に関する研究 籾殻灰や石炭灰などのSi-O系燃焼灰をマグネシウム(Mg)合金の強化材といった「工業原料」として利用するための高付加価値・再資源化技術を開発する。燃焼灰の主成分がSiO2であることに着目して、最軽量金属であるMgとSiO2との低温固相反応を利用したナノスケールのMg2Si粒子合成プロセスを開発し、それらの微粒子をMg合金中に分散することで従来材の2倍以上の高強度を有する超軽量素材の製造技術の構築を目指す。特に、低温合成(400℃以下)を実現するため、[1]燃焼条件の最適化による反応活性な非晶質燃焼灰の抽出、[2]燃焼灰のナノスケール微細粒化加工法の開発と微視的構造解析による組織制御の検証を行う。また本プロセスの実用化に向けて、作製したMg2Si粒子分散型Mg合金の強度特性の燃焼灰添加量への依存性を定量化し、循環・再資源化が可能な燃焼灰の消費量とその際の省エネ効果・CO2削減量を解析し、環境軽負荷効果ならびに素材コストを算出する。 K1724.滝上 英孝:循環資源・廃棄物中の有機臭素化合物およびその代謝物管理のためのバイオアッセイ/モニタリング手法の開発 難燃剤使用に由来すると考えられる有機臭素化合物(臭素化ジフェニルエーテル類、臭素化ダイオキシン類等)の検出法として、親化合物はもとより生体内で生成される代謝物(水酸化物等)の毒性を漏れなく評価できるバイオアッセイ/化学分析モニタリング手法の構築に取り組む。有機臭素化合物のヒトへの曝露評価を行い、廃棄物処理に関連する種々の曝露源とヒトにおける毒性発現との関連性解明を意識したトキシコゲノミクス手法の導入を図る。そして、物質循環・廃棄過程での排出実態について、特に難燃剤含有物の破砕、圧縮といったリサイクル過程、残渣の焼却過程等に焦点を当てて調査を行い、環境排出を防止する制御方策について提案を行う。EUでは有機臭素系難燃剤の製品使用を禁止するRoHS規制が公布されているが、国内においても今後の難燃剤対策、製品開発戦略に科学的示唆を与える環境工学/毒性学上の知見を提供することを目指す。 K1725.古市 徹:バイオ技術を中心とした不法投棄現場及び不適正最終処分場の修復・再生システムの開発 循環型社会の構築に向けた廃棄物管理技術をより安全、安心なものとするためには、特に重要課題である青森・岩手県境に代表される大規模不法投棄現場の原状回復を適切に行う技術の開発と、さらに、不適正最終処分場の適正化を図るシステム開発が必要である。すなわち、最終処分システムの共生化(図1)を、“適正化”、“資源化”、そして“延命化”をキーワードに推進していく必要がある。その際には、環境にやさしい方法として、二次汚染の可能性が少ない省エネ型のバイオ技術の積極的な導入が望まれる。そこで、本研究では、バイオ技術を中心とした不適正最終処分場及び不法投棄現場の修復・再生システムの開発を行う(図2参照)。昨年度の研究により、実際の不法投棄現場では、メタン、硫化水素、VOC等ガスにより、現実的に撤去等の修復・再生作業が困難な場合が多く、これら有害・危険性を除去するための前処理が必要なことが分かった。よって、今年度より、これら廃棄物の前処理・選別技術の検討を新たに加えることとした。そこで、今年度は、昨年度の研究成果をベースに、[1]廃棄物の前処理としてメタンガス、硫化水素の発生抑制・除去、VOCの分解除去を目的とした原位置前処理試験を実施し、その効果を確認する。[2]埋立・不法投棄廃棄物等から、効率的にバイオガス(メタン、水素)を回収する条件を明確にする。[3]DXNs及びPCBs分解バイオリアクター試験の実施と分解機構の解明を行う。[4]修復・再生の際に使用する微生物のモニタリング手法を確立する。[5]上記[1]~[4]及び既存の物理化学的技術との統合化により、跡地利用レベルも考慮した、現実に適用可能な修復・再生システムの構築を行う。 K1726.神野 健二:海底における有害廃棄物に汚染された底質の安全な処理に関する研究(減容除去、分解、生態リスク評価) 有害汚染底質の影響を受けた海域環境を改善する為に、別途行う汚染底質だけを効率的に最小限度除去する方法(別途研究課題で別のグループが研究中)で泥水を陸上に一旦揚泥する。この泥水を簡便な処理プラントで土砂と余水に分離するとともに、夫々を同時に無害化処理する廉価で且つ信頼性に富む一連処理工法のシステムを製作する。○ 次に、固液両相に存在する有害物質を同時に無害化処理するための現地実証試験を行い、その効果を実証する。稼働試験によって得られるプラントの処理特性や新たな技術的課題を整理し、理論面および技術面から検討する。これらの検討から、より合理的なプラントのシステムを構築するとともに、実現象のモデル化のためのパラメータ及びコストパフォーマンス・施工仕様の提案を行ない実用化に供する。○ 珪藻食生線虫を指標にした生態リスク手法を適用し汚染海域における底質除去前後の除去効果の判定手法を開発する。 K1727.袋布 昌幹:廃石膏ボードの安全・安心リサイクル推進を可能とする石膏中フッ素の簡易分析・除去技術の開発 近年の埋め立て処分場不足の状況を受けて、平成14年12月に「廃石膏ボードのリサイクルの推進に関する報告書」においてそのリサイクル率を2010年までに3%から20%に向上させる数値目標が設定された。しかしながら、数十年前の石膏ボード中には高濃度のフッ素が含有しており潜在的なリサイクルの障害要因となっている。そこでリサイクル・廃棄物処分の現場で石膏中のフッ素濃度を測定することが求められる。本研究において平成16年度に廃石膏ボード中フッ素濃度のオンサイト分析法の開発に成功しているが、今年度は、(1)石膏中フッ素濃度分析システムの開発(2)廃石膏ボード中のフッ素の不溶・安定化技術開発および(3)ソフトケミカルプロセスによる廃石膏ボード中のフッ素の除去技術の開発を通して安心・安全な石膏リサイクル技術の構築に貢献することを目指す。 K1728.遠藤 和人:最終処分場の早期跡地利用を考慮した多機能型覆土の検討 廃棄物最終処分場の早期跡地利用を実現させるためには、発生ガス対策(排除)や環境への調和が不可欠であり、早期廃止には廃棄物層内の安定化促進を目的とした適切な水分と酸素の供給が必要とされる。水分と酸素を上部より廃棄物層に供給しながら、廃棄物層より発生するガスを排除しなければならない。この二律背反する課題を克服し、処分場の上部環境を安全・安心なものとすると同時に、構造的な安定性を有することが最終覆土に求められる機能となる。現状の単一層で構成される覆土構造では、覆土に多機能を持たせることが工学的に難しく、複合的な要素を含んだ多機能型覆土構造の構築が不可欠となる。この多機能型覆土構造として、建設発生土、副産物を使用し、その材料特性を把握するとともに、覆土構造システムを提案することが目的である。多機能型覆土は、安定化、跡地利用の度合いにしたがい、段階施工よってその機能を変更することが可能となる。 K1729.姫野 修司:小規模処理場における高効率ガス発電を可能とする熱分解-ガス改質技術の開発 本研究では、廃棄物を熱分解ガス化した後ガス改質を行い高品質な燃料ガスに変換し発電を行う熱分解-ガス改質発電システムの技術開発を行うために[1]一般廃棄物の熱分解-ガス改質に関する数学モデルを構築すること、[2]本技術の環境安全性を評価することを目的としている。計画1年目で一般廃棄物の熱分解-ガス改質実験炉を作成して一般廃棄物の分解実験を行い、熱分解-ガス改質モデルの基礎となる熱分解モデルを構築した。計画2年目、3年目では一般廃棄物のガス改質過程について、ガス改質過程の主な反応について反応速度などの緒元に関する知見を得て、ガス改質剤(水蒸気、酸素)や改質温度などの改質条件に応じた熱分解プロセスの解析モデルの構築を行い、熱分解-ガス改質プロセスの挙動に関する適切な条件の探索と安定的かつ効率的な運転管理を行うことによる環境安全性の評価を可能にすることを目指す。 K1730.島岡 隆行:焼却・溶融残渣の有効利用における鉱物学的・土壌生成学的安定化に関する研究 廃棄物最終処分量の削減へ向け、焼却・溶融処理残渣を有効利用する取り組みがなされつつある。しかし、それらを安心して利用するには、環境中での長期安全性を評価する必要があるが、利用前の溶出試験、含有量試験のみでは十分とはいえず、残渣中の有害物質、特に重金属について、環境中における化合形態の変化を明らかにし、長期溶出特性と関連づける必要がある。本研究では、走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)、X線回折法(XRD)、電子プローブ微小部分析法(EPMA)、およびX線微細吸収分光法(XAFS)等を駆使し、鉱物学的・土壌生成学的視点から、焼却・溶融処理残渣中に含有する重金属の化合形態の変化を解明し、廃棄物埋立層の安定化指標を構築する。また、焼却・溶融処理残渣の環境安全な前処理技術として、粒度選別と炭酸化処理を併用した方法、及び水熱処理によって生成させた粘土鉱物に重金属を吸着させ、安定化させる方法を開発する。 K1731.三宅 通博:使用済みニッケル水素2次電池をモデルケースとした環境に優しい資源循環プロセスの構築 本研究は、使用済みニッケル水素2次電池をモデルケースとして、電池中のニッケルをはじめ種々の有用かつ希少元素を再びニッケル水素2次電池用金属原料として循環できる環境に優しいプロセスを構築し、その技術の実用化を図ることを目的とする。具体的には、平成16~18年度の3年間で、以下の3段階から成るプロセスを構築する。(1)エネルギー投入を抑えた化学的手法による有用かつ希少元素含有化合物の分離プロセス、(2)分離化合物のメタンリフォーミング触媒への転換プロセス、(3)メタンリフォーミングの利用により触媒から分離されるニッケル水素2次電池用金属原料の回収プロセスを開発する。今年度は、第1段階(平成16年度)の研究開発で、電池廃棄物に酸及びアルカリ処理を施すことにより得られた有用かつ希少元素含有化合物(酸化ニッケル系化合物等)のメタンリフォーミング触媒への転換プロセス開発を重点的に行なう。 K1732.松田 仁樹:減圧加熱/塩化揮発の組合わせによる固体残渣類の完全無害化と重金属の高効率分離回収・再資源化 焼却飛灰、スラッジ、ダスト等に高濃度で含まれている多成分の重金属(Cu, Pb, Zn, Ni, Cr等)を「減圧加熱法」と「塩化揮発法」との組み合わせによって効率的に分離回収し、金属資源の高度回生と残渣の無害化を同時に達成しうる難処理性固体廃棄物の適正処理技術を開発する。固体廃棄物中の重金属は共存する無機塩化物(NaCl, KCl, CaCl2等)、あるいは廃塩酸、塩素系廃プラスチックから供給されるCl元素を有効利用して低沸点金属塩化物に変換し、それらの塩化揮発特性に基づいて乾式分離する。本研究ではまず、(1)塩化剤種ごとに重金属塩化物の生成条件ならびに固体廃棄物中の共存成分の影響等を基礎観点から明らかにする。つぎに、(2)試作の減圧加熱/塩化揮発装置を用いて各種固体廃棄物から重金属塩化物を効率的に分離・回収するための実証試験を行い、金属の再資源化ならびに処理後の固体残渣の高度無害化を目指す。 K1733.丑田 公規:マイクロ波誘電加熱によるPVC脱塩素技術の超高効率化による環境リスク低減 鉄鋼業界はプラスティック廃棄物を石炭やコークスの代わりに用いて、炭酸ガス排出削減を目指している。主要プラのうちポリ塩化ビニル(PVC)のみは、塩素を含み設備を痛めるので、事前に脱塩素が必要である。我々は神戸製鋼所との共同研究でマイクロ波による誘電加熱によりPVCのみが選択的に加熱、脱塩素されることを確認し、事前選別の要らない脱塩素技術として実用化レベルにまで高めた。本法は特に有害物質の環境への放出リスクが少ないことが特徴であるが、平行競争技術に比してコスト負担が大きく、普及が困難である。本研究では装置の心臓部であるマイクロ波処理槽(アプリケータ)の設計を根本的に改善し、世界的にも困難とされるマイクロ波領域での誘電率測定技術と、加速器設計に用いられる高度なシミュレーション技術を連携することによって、理論上可能な1桁程度処理効率の高い処理装置を開発し、本法の市場競争力を十分なものにする。 K1734.大谷 肇:ゴム・プラスチック材料廃棄物のリサイクリング過程における化学構造変化の精密解析と実用プロセスの構築 ゴム・プラスチック材料廃棄物を、高分子の形態を保ったまま再利用する、マテリアルリサイクリング工程でしばしば生成するミクロ架橋構造は、材料物性の低下などを引き起こすことから、同工程の実用化の大きな阻害要因となる。本研究ではまず、通常の方法では解析が不可能な、工程中に生成したミクロ架橋構造を解析する画期的な手法の開発を、初年度の基礎検討結果をもとに引き続き進める。この手法は、超臨界流体などの反応場において試料を分解し、生成物を高性能クロマトグラフィーやソフトレーザーイオン化質量分析法などによりオンラインで解析する新しい方法論に基づくものである。さらに、この手法により明らかにされる、ミクロ架橋構造の生成メカニズムの解明を通じて、最終的には、社会的にも強く要請されている、ゴム・プラスチック廃棄物の実用リサイクリングプロセスの構築を図り、地球環境保全などに大きく資することを目標に置いている。 K1735.石原 達己:廃棄物処理施設から排出される廃液からの有害イオンの選択除去用無機イオン交換体の開発 廃棄物処理施設とくに、産業廃棄物を地中埋設した管理型廃棄物処理施設からの排水中には、フッ素や砒素などの有害な物質が濃縮されており、これらの有害物質の除去は環境保全の観点から重要な意義がある。廃棄物処理施設からの排水中には、無機イオンのみでなく、有機物を含め多種類の陽および陰イオンが含まれており、これらの多くの物質が含まれる排水中から特定のイオンのみを除くのはコストとエネルギーを要する。そこで、本研究ではイオン選択性に優れた無機イオン交換体を開発し、主に、環境に有害な砒素とフッ素イオンをターゲットとして、選択的にイオン交換により、これらの有害物質を除去することを目的とし、新規なイオン記憶型の無機イオン交換体を開発する。また、無機イオン交換体を用いる排水の処理プロセスについても検討を行う。本研究では規則細孔を有するメソポーラス材料を合成し、そのイオン交換特性を検討することを目的とする。 K1736.我妻 和明:金属スクラップ素材の高度循環利用のための新しい高速定量分析法の開発 本研究は、減圧レーザ誘起プラズマ発光分析法を測定原理とする元素分析装置を開発して、市中の金属スクラップ素材の高度・迅速選別を可能とする、新たな分析・計測システムの実用化を目的とする。資源循環型社会の構築は、近未来の社会の姿として行政各レベルにおいてさまざまな施策が実行されている。とりわけ鋼スクラップ素材の循環に関しては、鉄鉱石還元と比較してスクラップ利用によりエネルギー消費が1/3程度に節約できること、市中スクラップが100万トン/年の割合で増加していること等の理由により、強力に推進されるべき課題である。鋼スクラップ材には鉛、スズ等の有害金属元素が混入する場合があり、またニッケル、クロム等の高価金属が合金元素として添加されたものも含まれる。これらを的確かつ迅速に分別することは、その後の循環使用に際して大きな助けとなる。従来分析法ではこのような方途に適用できるものがなく、新しい分析方法/装置の開発が求められている。 K1737.酒井 伸一:残留性化学物質の物質循環モデルの構築とリサイクル・廃棄物政策評価への応用 本研究は、社会システムおよび自然システムにおける臭素系難燃剤などの残留性化学物質の挙動を記述するモデル群を開発し、家電リサイクル法や自動車リサイクル法などの政策評価に応用、政策の方向付けに資する論考を行うものである。社会システム系では、自動車シュレッダーダスト(ASR)や廃家電、廃家庭製品リサイクル施設などの従来プロセスと新規開発プロセスにおけるフィールド研究を行い、マテリアルフローモデルを構築する。自然システム系では、中古輸出された家電製品の終着場であるアジアダンピングサイト周辺の汚染解明を行うとともに、保護対象・早期警報網として注目される野生高等動物を対象とした残留性化学物質汚染を生物環境試料バンクの活用により解明し、環境運命モデル・生態モデルの構築に取り組む。また、長期的には経済モデルとの統合を視野に、廃バッテリーのデポジット・リファンド制度などの環境経済学的評価にも取り組む。 K1738.迫原 修治:分子インプリント感温性ゲルを用いた土壌洗浄排水中の重金属類の新規な吸着分離去に関する研究 近年、土壌汚染が判明する事例が多発しており、浄化技術の高度化および省エネルギー化が求められている。本研究は、土壌洗浄液中の微量有害重金属の新規な分離法として分子インプリント感温性ゲル吸着材を用いた分離プロセスを提案するものである。この吸着材は、温度変化によって可逆的に膨潤・収縮する感温性ゲルに重金属との相互作用基を分子インプリント法によって導入したものであり、標的重金属を温度スイングにより選択的に吸・脱着する。環境負荷の極めて小さい分離プロセスの構築が可能となる。具体的には、この分離プロセスの構築に必要な分離の高速化、吸着材の高機能化および装置化を検討する。15年度には、高速化のための微粒子ゲル吸着材の合成、吸・脱着の平衡および速度の測定・解析を行い、16年度には種々の相互作用基を用いた新規な吸着材の開発を主に行った。17年度は、これらの知見を基に吸着材モジュールの開発を行う。 K1739.藤田 勇:水蒸気吸引式流出油回収機構の研究開発 海上に流出した油は海水との混合によりW/O型エマルジョンを形成し、非常に高い粘度を示すようになり、現場回収作業は困難を極める。このような高粘度流出油を安全かつ効率的に回収除去するためには、回収作業の際、流出油の物理性状を能動的に制御する必要がある。本研究では作動流体に水蒸気を用いて海上流出油を吸引除去あるいは回収油の改質する方法について研究する。水蒸気吸引式油回収装置では、蒸気噴流による吸引仕事と蒸気凝縮による加熱を同時に行うことができ、流出油の低粘度化及びエマルジョンブレーキング等が可能となり、従来不可能であった超高粘度の海上流出油の吸引除去及び改質に有効である。本研究ではそのような蒸気吸引式油回収装置の設計に必要となる基盤要素技術に関する研究開発を行う。更にそれらの知見を基に実際の油回収装置のプロトタイプを設計製作し性能試験を行い、その有効性を検証する。 K1740.渡辺 義公:嫌気性アンモニア酸化型メンブレンバイオリアクターを核とした新規浸出水処理システムの開発とDNAチップを用いた処理水の安全性評価手法の確立 本研究は、最新のバイオ技術(嫌気性アンモニア酸化細菌、16S rRNAアプローチ)とナノ技術(NF/RO膜分離、DNAチップ)を有機的に融合した新規高度浸出水処理システムの開発とその処理水の安全性評価のための新規バイオアッセイ法の確立を目指すものである。本研究では、主に浸出水中のアンモニア性窒素および内乱分泌撹乱化学物質(endocrine disrupting compounds, EDCs)や医薬品由来化合物(pharmaceutically active compounds, PhACs)などの微量有機汚染物質の除去に焦点を絞る。提案する浸出水処理システムは、前段に外部炭素源の添加、曝気および処理水循環エネルギーの少ない嫌気性アンモニア酸化細菌バイオリアクターを設け、後段にNF/RO膜装置を組み込んだハイブリッド型処理プロセスの開発を行う。前段の嫌気性アンモニア酸化細菌バイオフィルムリアクターは、多くの種汚泥をスクリーニングし、ポテンシャルの高い汚泥を植種源として立ち上げる。後段に設置するNF/RO膜装置によるEDCs/PhACs処理性能と膜材質の関係に関するデータベースを構築する。さらに処理水の安全性(毒性)評価を行うために、DNAチップを用いた新規多指標型バイオアッセイ手法の開発を行う。従来のバイオアッセイは単一指標型であり、複合的な化学物質汚染が考えられる浸出水処理水の総合的な安全性評価はできない。申請者の知る限り、本研究で提案するMBRおよび新規バイオアッセイ法は全く新規なアイデアであり、同様の研究事例は国内外において皆無である。 K1741.吉岡 敏明:素材構成と地域性を活かしたポリエステル廃棄物からのBTX転換処理技術の開発 申請者らは無機材料や他の高分子材料と複合化されているポリエステル類(フィルム、テープ、プリペイドカードや繊維類)を消石灰(Ca(OH)2)と水蒸気を利用した熱分解法によって、最終的に埋立処分されている分解残渣を発生させずに処理できる技術を開発した(特願2003-052640)。また、この技術は処理と同時にBTXなどの油分や合成ガスに転換できることも大きな特徴での一つである。本プロセスの開発成果を実用に結び付けるためには、連続的に試料投入し反応させるためのシステム設計と技術開発が必要である。さらに消石灰を触媒として用いるためには、反応後に生成するCaOを連続的に水和することが必要である。そこで、本研究では、CaOを流動媒体とした流動層に展開し、ミニプラントによって実用化に資するデータの収集と展開研究を行う。 K1742.木戸口 善行:水ラジカル反応を利用した廃油の再燃料化と低エミッション燃焼技術の研究開発 廃油の再生利用、汚染物質低減のため、廃油を水と混合して水エマルジョン燃料として再燃料化し、ボイラー用バーナーの燃料に適用する。とくに、燃焼場において水分子から生成するラジカル成分の挙動に着目して、水エマルジョン燃料の安定化と低汚染燃焼機構を調べる。研究は3年計画で行う。1年目の平成15年度は、光学計測による燃料分子構造の解析とバーナーを用いた燃焼試験により、燃料構造と燃焼特性を把握した。2年目の平成16年度は、水エマルジョン燃料製造において、水と燃料の混合で超音波を印加したときの燃料構造や燃料安定性を調べた。また、数値計算によりバーナー燃焼で重要な保炎器の構造を検討した。これらを踏まえて平成17年度では、添加剤と水混合方法による燃料構造の変化および低汚染燃焼との関連も明らかにして、水エマルジョン燃料製造法を確立する。また、保炎器や噴霧バーナーを試作して燃焼試験を行い、燃焼の最適化を図る。 K1743.西野 徳三:生ごみ処理機の微生物活動評価を通しての再検討 各社各様の家庭用電動式生ごみ処理機が上市されているが、市場に出たうちの約8割が死蔵されているという。その理由は使用中に発生する臭いであり、処理能力不足ないしは欠如である。業務用処理機も食品リサイクル法の施行に合わせて設置したところが多いが、その多くが機能していないと報道されている。我々が開発してきたアシドロ方式の家庭用処理機は1.5万台ほどが市場に出ているが、その8割は問題なく継続使用されている。その装置の微生物活動を評価し、それと表裏一体の形で機能している処理ソフトの方式を評価し、他の方式と比較検討することによって、より普遍的な高効率な処理方式を提案したい。また、家庭用だけではなく業務用の大型の処理についても最後に検討し、広く有機性廃棄物の適正な処理方式を整え、廃棄物の処理が高効率で行われ、なおかつ安全で、安心して使用できる堆肥や飼料が得られるように、循環型社会の形成に大いに役立てる研究である。 K1744.高橋 惇:ダイオキシン類汚染水質・土壌の浄化バイオリアクター構築のための研究 物理化学的浄化手法に比べて低コストで環境調和型の微生物によるダイオキシン類汚染水質・土壌の浄化システムの構築を目指した研究開発を行っている。今日までに、毒性が最も高い2,3,7,8-TCDDや2,3,7,8-TCDF等を分解する好気性好熱細菌であるBacillus midousuji (SH2B-J2)菌株を獲得・権利化(United States Patent 6,190,903、日欧に出願中)すると共に、ダイオキシン類浄化処理用バイオリアクターの開発(特開2002-301466)と性能評価を行っている。SH2B-J2菌株を活用する利点は、高度に塩素化されたダイオキシン類を分解できること、平均世代時間が約8分と早く、培養コストが低いことである。本提案は、保有するSH2B-J2菌株の増殖特性を活用したダイオキシン類汚染水質・土壌のための浄化バイオリアクターの確立と実用化を目指すものである。 K1745.田中 勝:医療廃棄物の戦略的マネジメントに関する研究 医療廃棄物に関しては、ダイオキシン類対策特別措置法の規制強化により外部委託処理に頼らざるをえない傾向が強くなる一方、感染性廃棄物の解釈により各病院で多様な分類、処理が行われている。本研究では、医療廃棄物の最新動向調査、先進事例調査、科学的判断基準作成等により、医療廃棄物処理マニュアルを作成する。また、そのマニュアルに基づいたモデル事業を実施し、実際適用した際の減量・費用削減の課題を抽出、対策を講じることにより、現場に即したマニュアル作成を目指す。さらに、自治体の焼却施設への受け入れ、医療機器メーカーの拡大生産者責任、諸外国の動向を調査・整理することにより、現行の処理方法にとらわれない日本における医療廃棄物の戦略的マネジメントの施策を提言する。 K1746.乙間 末廣:ビジネススタイルの相違による廃棄物排出抑制及び再生利用促進効果の検証と変革のための成立要件に関する研究 本研究は、製品売切り型ではない製品ライフサイクル管理形態をとるビジネススタイルを対象に、その廃棄物の排出抑制効果及び再生利用促進効果について実データをもとに検証し、そのボトルネックと成立条件を明らかにすることを目的とするものである。機能提供型あるいはサービス提供型(以下、サービス提供型のみで表記)ビジネスといわれるリース/レンタル型のビジネススタイルやその類似モデルについてはこれまで断片的な調査しかされてこなかったが、それを体系的・包括的研究に発展させることで、廃棄物削減とそれに伴う温暖化抑制について効果的に寄与するビジネススタイルを明らかにする。同時に、それを実社会へ汎用性のあるものとするための条件、継続的に資源を循環させるためのリスクや阻害要因をも明らかにする。これらは、大量生産、大量リサイクル社会からの脱却、脱物質化社会へ踏み出す第一歩となるものである。 K1747.田路 和幸:下水処理場をモデルケースとした太陽光利用水素生産システムの構築 循環型社会形成の一翼を担うエネルギー生産/廃棄物排出抑制システムの構築を目指し、下水処理場をモデルケースとして、下水汚泥の減量化と有害廃棄物の排出抑制を図りつつ、処理場に流入する硫黄を循環利用しながら太陽光を用いたストラティファイド光触媒による硫化物イオンからの水素生産を行う連続プロセスを基本設計する。素材工学、材料化学、無機化学、生物工学、プロセス工学、環境工学の各部門の研究者、技術者を結集した研究チームを組織し、その有機的連携のもとで、高効率水素生産プロセスの確立、硫化物イオン再生、システムの最適化を3つの柱として、学術的な新規性も高い要素研究を展開する。本研究の成果をベースとして、下水処理場を核とした循環型の地域分散型エネルギー供給システムを構築することが可能となるとともに、硫黄廃棄物の大量発生源に転用することにより、大規模な水素生産プロセスの構築も可能となる。 K1748.田中 幹也:無電解ニッケルめっきにおけるミニマムエミッション化の研究 無電解ニッケルめっきは、電子産業、精密部品の製造において不可欠の表面処理技術であるが、その使用済み液は、わが国において年に13万トンも排出され、非常に多様な成分を含んでいるためきわめて処理が難しく、現状では沈殿法によりスラッジを生成させ廃棄している。しかし、スラッジ処分場の逼迫を考えると、廃棄物をできるだけ排出しないプロセスの確立が急務である。そこで、本研究では、使用済みめっき液中のニッケルの分離回収技術、めっき液の繰り返し使用にともなってめっき液中に蓄積する不純物金属イオンや亜りん酸の選択除去によるめっき液の長寿命化技術を確立する。本年度は、ニッケル回収に関し連続溶媒抽出実験、抽出機構解明および環境影響評価を行い、さらにリサイクルされた硫酸ニッケルを用いためっき試験も行い、プロセスを実用化につなげる。また溶媒抽出法を用いためっき液の長寿命化法を確立する。最後にプロジェクトの総括を行う。 K1749.研磨スラッジ産業廃棄物の再資源化及び利用技術に関する研究 研磨スラッジ産業廃棄物は極めて微細な砥粒や研磨液を含んでいる等の問題があり、これまで有効な再資源化技術が確立されておらず、年間約720トン以上も廃棄処分されている。本研究開発は、鉄系研磨スラッジについて、プレスレス精製処理技術、プラズマ溶射法による粉体化技術、再溶融技術の開発を行い、有効な再資源化技術の確立を図るものである。また、粉末成形法及び粉末射出成形法による研磨スラッジの成形技術の開発を行うとともに、金型部品、微細形状部品の試作・試験を行い、研磨スラッジの利用技術の確立を図る。本年度は、リサイクル処理の最適条件について検討し、リサイクル材の不純物(砥粒、研削液)含有量1%以下を目指すとともに、再溶融、固化成形した研磨スラッジの機械的強度が実用材の95%以上を目指す。また、研磨スラッジから打ち抜き金型を試作し、その性能を評価するとともに、リサイクル粉末を用いて粉末製品の試作を試みる。 |
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環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課 TEL: 03-5501-3154 FAX: 03-3593-8263 E-mail: hairi-haitai@env.go.jp |
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