![]() 「平成16年度廃棄物処理等科学研究費補助金」に係る交付対象研究等の決定について環境省では、廃棄物に係る諸問題の解決及び循環型社会形成に資する研究・技術開発を推進する目的として、競争的資金である廃棄物処理等科学研究費補助金制度を導入し、本年度は前年度まで実施していた一般枠(「廃棄物処理に伴う有害化学物質対策研究」、「廃棄物適正処理研究」、「循環型社会構築技術研究」の3分野)に加えて、若手研究者の育成を目的とした若手枠、行政ニーズを効果的・効率的に実現するために重点枠(「循環型社会形成推進のための社会システム分析・評価研究」、「生産・消費段階における廃棄物発生抑制・資源循環システム化技術研究」、「安全、安心のための廃棄物管理技術に関する研究」の3テーマ)の2つの枠を創設して公募を行い、廃棄物処理等科学研究企画委員会(推進事業)、廃棄物処理対策研究審査委員会(研究事業)による評価を得て、交付対象が決定されました。1.交付決定した研究 2.交付決定した推進事業
3.廃棄物処理対策研究審査委員名簿(50音順)
4.廃棄物処理等科学研究企画委員名簿(50音順)
○ 研究の概要 K1601.安田 八十五:容器包装の分別収集・処理に係る拡大生産者責任の制度化に関する研究 自治体の分別収集・処理費用は算出方法が自治体毎に異なる。飲料容器リサイクル研究会および全国都市清掃会議等では自治体の分別収集・処理費用の調査を実施してきたが、標準偏差が大きいことやその他プラスチックの費用が未調査などの課題を抱えている。 本研究では、初年度は6自治体の分別収集・処理費用を綿密に調査し、分別収集・処理費用積算マニュアルを作成する。次年度にはこの積算マニュアルを使用して全国調査を実施し、類型別費用実態の標準を算出する。類型は全国平均と民間委託(民活)とする。さらに、フランスとドイツの拡大生産者責任制度(以下EPRという)の普及割合や効果等を調べる。以上から日本型EPRの制度化に関する政策提言を行う。容器包装リサイクル法は同法附則第3条により、施行後10年を経過した時点で検討し、必要な措置を講じることができる。本研究で提示する政策はこの議論に活用され、容器包装に係るEPRの制度化についての社会的合意形成に役立つことが期待される。 K1602.東 順一:有害重金属を含む海産物廃棄物の包括的再資源化 カドミウム、亜鉛、ヒ素等の有害重金属元素を多量に含むホタテ中腸腺(ウロ)、イカ内臓(ゴロ)、アコヤ貝、ヒトデ、褐藻等の多様な海産物廃棄物を出所・起源を問わずウメエキスやレモン果汁等の天然物やその成分との加熱による重金属の脱着(天然物による有害天然物の浄化)と新規に見出した樹脂等を用いた選択的重金属の除去の組み合わせで再資源化する包括的な環境配慮型・低コストな海産物産業廃棄物の再資源化システムを構築する。樹脂は再生してリサイクル利用する。また、有害重金属を除去した海産物は食品、調味液等の食品添加物、釣り餌、飼料、肥料等としての再資源化を実現する。 K1603.井村 秀文:地域資源循環に係る環境会計表の作成とその適用 地域の資源循環と自治体の一般廃棄物処理事業に焦点を当てた環境会計表を開発し、地域における製品の製造、流通、廃棄・リサイクル、最終処分に係る一連の物質フローとそれに付随する金銭フローの体系的記述を可能とする。これによって、循環型社会実現の観点から、地域の物質循環及び一般廃棄物処理事業の効率性に関する評価、地域間比較などが容易かつ体系的に実施できるようにする。また、地域の一般廃棄物処理事業に対する戦略的環境影響評価において環境会計表を活用する手法を提示する。このため、名古屋市及び北九州市を対象にケーススタディを実施してシステム要素間の連関構造の同定と原単位の算出を行い、この結果に基づいて一般に適用可能な環境会計表の枠組みを決定する。開発したシステムは、パソコン画面上において対話型で入出力可能なソフトウェアとしてまとめ、その成果は自治体等において利用可能にする。 K1604.早瀬 光司:実団地における資源循環型ライフスタイル普及のための環境コミュニケーションとその効果に関する実証的研究 循環型社会の形成には、一般家庭における環境意識や行動の普及・拡大が不可欠である。 K1605.井上 勝利:バイオマス廃棄物を有効使用した重金属含有魚介類廃棄物の適正処理技術の開発 本研究においては農業、水産業において発生している大量のバイオマス廃棄物、あるいは環境中に大量に繁茂しているバイオマスを用いて水産業で発生する別の難処理有害廃棄物の安全処理と有効利用を行うという、循環型社会構築のための嚆矢的研究を行う。 K1606.北條 純一:マイクロ波照射を用いたフライアッシュゼオライトの工業化プロセスの開発 火力発電所から大量に排出される石炭灰(フライアッシュ)は増加の一途である。埋立処分地が枯渇しつつある近年、その有効利用として、水熱合成によるゼオライト化が研究されている。ゼオライトは高いイオン交換能をもち、アンモニアなどの有害物質を吸着する環境浄化材料として有用である。また、このプロセスでは原料灰に含まれる有害重金属を除去することができ、埋立処分に比べて格段に優れている。しかしながら、従来の水熱合成では生産効率が低く、実用化の大きな妨げになっていた。 K1607.近藤 勝義:Si-0系燃焼灰の高付加価値・再資源化技術の開発に関する研究 石炭灰や籾殻灰などのSi-O系燃焼灰の高付加価値再利用技術を開発する.例えば石炭灰の発生量約600万トンの約4割はセメント原料に再利用されるが,他は埋立て処分するため処理地の制約により発電自体に支障が生じている.他方,今後セメント需要の増加が見込まれず灰使用量も減少傾向にある.本研究では各燃焼灰の主成分がSiO2であることに着目し,最軽量金属であるマグネシウム(Mg)と灰中のSiO2との低温固相反応を利用したMg2Si合成プロセスを構築し,Mg合金中に分散することで従来材の約2倍の高強度・超軽量素材創製による燃焼灰の革新的な高付加価値・再資源化技術の実用化を目指す.特に反応性向上の点から燃焼灰のナノスケール微粒化技術とその低コスト化のための量産対応型連続式微粒化装置を開発する.また民間企業と共同で大型軽量素材の製造および自動車用可動部品の試作・性能評価を行い,本プロセスの有効性を実証する. K1608.滝上 英孝:循環資源・廃棄物中の有機臭素化合物およびその代謝物管理のためのバイオアッセイ/モニタリング手法の開発 難燃剤使用に由来すると考えられる有機臭素化合物(臭素化ジフェニルエーテル類、臭素化ダイオキシン類等)の検出法として、親化合物はもとより生体内で生成される代謝物(水酸化物等)の毒性を漏れなく評価できるバイオアッセイ/化学分析モニタリング手法の構築に取り組む。有機臭素化合物のヒトへの曝露評価を行い、廃棄物処理に関連する種々の曝露源とヒトにおける毒性発現との関連性解明を意識したトキシコゲノミクス手法の導入を図る。そして、物質循環・廃棄過程での排出実態について、特に難燃剤含有物の破砕、圧縮といったリサイクル過程、残渣の焼却過程等に焦点を当てて調査を行い、環境排出を防止する制御方策について提案を行う。EUでは有機臭素系難燃剤の製品使用を禁止するRoHS規制が公布されているが、国内においても今後の難燃剤対策、製品開発戦略に科学的示唆を与える環境工学/毒性学上の知見を提供することを目指す。 K1609.古市 徹:バイオ技術を中心とした不法投棄現場及び不適正最終処分場の修復・再生システムの開発 循環型社会の構築に向けた廃棄物管理技術をより安全、安心なものとするためには、特に重要課題である青森・岩手県境に代表される大規模不法投棄現場の原状回復を適切に行う技術の開発と、さらに、不適正最終処分場の適正化を図るシステム開発が必要である。その際には、環境にやさしい方法として、二次汚染の可能性が少ない省エネ型のバイオ技術の積極的な導入が望まれる。そこで、本研究では、バイオ技術を中心とした不適正最終処分場及び不法投棄現場の修復・再生システムの開発を行う。具体的には、[1]不法投棄・埋立廃棄物等の選別・資源化システムの構築を、特に有機系廃棄物のバイオ処理技術に注目して行う。[2]難分解性有機化合物(DXNs等のハロゲン化合物、POPs)の微生物処理技術を開発する。[3]修復・再生に係わる作業及び作業完了後の有害物質と病原体の無害化、さらに廃棄物の安定化に係わるバイオモニタリングシステムを確立する。[4]そして、[1]~[3]の新技術と従来の物理化学的修復技術を融合し、不法投棄現場及び不適正最終処分場の修復・再生システムの構築を行う。 K1610.神野 健二:海底における有害廃棄物に汚染された底質の安全な処理に関する研究 神野は有害物質含有泥水からの凝集沈澱 シート吸着効果 砂・活性炭濾過の一連の除去メカニズム 本田は特にダイオキシンの無害化処理の実際的研究を行ってきた。本年2月小規模な実証現地試験―底質剥層吸引除去から凝集沈澱・余水処理・有害物質付着微粒子(ダイオキシン・TBT)の分離濃縮堆積物抽出・同物無害化処理処分―を行った。これは民間側の底質剥層吸引除去装置開発に協力、実施であったが、結果は同不良底質除去 大幅な減容化 無害化処理に、様々の有効性を示唆する知見を得た。当一連工法の有効性を高める為には、更に一層の実現象の理論的解析からの除去最適メカニズム・システム構築が必要の結論に達した。除去装置の開発は別途研究で行うが、当研究では複数実施事例から各除去メカニズムの理論実証的構築及び信頼性検証を行い、地層処理に至る一連処理工法の実用化を目指している。大嶋は有害物質に汚染された底質と除去後の底質における分析と、藻類,ミジンコ,ベントスでの生態リスク評価、分析結果との対照で環境リスク評価手法の研究を行なう。 K1611.袋布 昌幹:廃石膏ボードの安全・安心リサイクル推進を可能とする石膏中フッ素の簡易分析・除去技術の開発 近年,建設廃棄物として発生する石膏ボードの廃棄量の増大が問題化している。近年の埋め立て処分場不足の状況を受けて,平成14年12月に「廃石膏ボードのリサイクルの推進に関する報告書」においてそのリサイクル率を2010年までに3%から20%に向上させる数値目標が設定された。しかしながら,数十年前の石膏ボード中には高濃度のフッ素が含有しており潜在的なリサイクルの障害要因となっている。そこでリサイクル・廃棄物処分の現場で石膏中のフッ素濃度を測定することが求められるが,簡便なフッ素分析法は現在ない。本研究では,(1)廃石膏ボード中のフッ素濃度をオンサイトで簡便に分析できる手法・デバイスの開発(2)廃石膏ボード中のフッ素の不溶・安定化技術開発および(3)ソフトケミカルプロセスによる廃石膏ボード中のフッ素の除去技術の開発を通して安心・安全な石膏リサイクル技術の構築に貢献するものである。 K1612.遠藤 和人:最終処分場の早期跡地利用を考慮した多機能型覆土の検討 廃棄物最終処分場の早期跡地利用を実現させるためには、発生ガス対策(排除)や環境への調和が不可欠であり、早期廃止には廃棄物層内の安定化促進を目的とした適切な水分と酸素の供給が必要とされる。水分と酸素を上部より廃棄物層に供給しながら、廃棄物層より発生するガスを排除しなければならない。この二律背反する課題を克服し、処分場の上部環境を安全・安心なものとすると同時に、構造的な安定性を有することが最終覆土に求められる機能となる。現状の単一層で構成される覆土構造では、覆土に多機能を持たせることが工学的に難しく、複合的な要素を含んだ多機能型覆土構造の構築が不可欠となる。この多機能型覆土構造として、建設発生土、副産物を使用し、その材料特性を把握するとともに、覆土構造システムを提案することが目的である。多機能型覆土は、安定化、跡地利用の度合いにしたがい、段階施工よってその機能を変更することが可能となる。 K1613.姫野 修司:小規模処理場における高効率ガス発電を可能とする熱分解-ガス改質技術の開発 循環型社会構築に向けた気運が高まる中、廃棄物の持つエネルギーを電力として効率よく回収できる技術として、廃棄物を熱分解ガス化した後ガス改質を行い高品質な燃料ガスに変換し発電を行う熱分解-ガス改質発電システムが注目されている。本研究では、これらの技術開発を効率的に推進するために[1]一般廃棄物の熱分解-ガス改質に関する数学モデルを構築し、その反応条件を明確化することと[2]それに基づいて本技術の環境安全性を評価することを目的としている。特にこれまであまり知見が得られていない一般廃棄物のガス改質過程について、ラボ実験によりガス改質過程の主な反応について反応速度などの緒元に関する知見を得て、ガス改質剤(水蒸気、酸素)や改質温度などの改質条件に応じた熱分解プロセスの解析モデルの構築を行う。こうした熱分解-ガス改質モデルを構築することで、これまで十分な知見が得られていなかった熱分解-ガス改質プロセスの挙動に関する適切な条件の探索と安定的かつ効率的な運転管理を行うことによる環境安全性の評価が可能になる。 K1614.島岡 隆行:焼却・溶融残渣の有効利用における鉱物学的・土壌生成学的安定化に関する研究 廃棄物最終処分量の削減へ向け,焼却・溶融処理残渣を有効利用する取り組みがなされつつある。しかし,それらを安心して利用するには,環境中での長期的安全性を評価する必要があるが,利用前の溶出試験,含有量試験のみでは十分とはいえず,残渣中の有害物質,特に重金属について,環境中における化合形態の変化を明らかにし,長期溶出特性と関連づける必要がある。本研究では,走査型電子顕微鏡(SEM-EDX),X線回折法(XRD),赤外分光法(IR), X線光電子分光法(XPS),電子プローブ微小部分析法(EPMA),およびX線微細吸収分光法(XAFS)等を駆使し,鉱物学的・土壌生成学的視点から残渣中に含有する有害重金属の化合形態の変化を解明し,その長期溶出挙動を理論的に明らかにする。また,これらをデータベース化し,焼却・溶融処理残渣の有効利用における環境安全性の評価手法を確立するとともに,新たな前処理技術を開発する。 K1615.三宅 通博:使用済みニッケル水素2次電池をモデルケースとした環境に優しい資源循環プロセスの構築 携帯電話、デジタルカメラ、ハイブリッドカー等の電源として、2次電池の需要が拡大している。しかしその一方で、使用済み電池量も増加の一途を辿っている。2次電池の中で、最も生産量の多いニッケル水素2次電池には、種々の有用かつ希少元素が使われている。本研究は、使用済みニッケル水素2次電池をモデルケースとして、有用かつ希少元素を再びニッケル水素2次電池用金属原料として循環できる環境にやさしいプロセスを構築し、その技術の実用化を図る。具体的には、以下の3段階から成るプロセスを構築する。(1)エネルギー投入を抑えた化学的手法による有用かつ希少元素含有化合物の分離プロセス、(2)分離化合物のメタンリフォーミング触媒(メタンと二酸化炭素から水素と一酸化炭素を生成させるための触媒)への転換プロセス、(3)メタンリフォーミングの利用により触媒から分離されるニッケル水素2次電池用金属原料の回収プロセスを開発する。 K1616.松田 仁樹:減圧加熱/塩化揮発の組合わせによる固体残渣類の完全無害化と重金属の高効 率分離回収・再資源化 焼却飛灰、スラッジ、ダスト等に高濃度で含まれている多成分の重金属(Cu, Pb, Zn, Ni, Cr等)を「減圧加熱法」と「塩化揮発法」との組み合わせによって効率的に分離回収し、金属資源の高度回生と残渣の無害化を同時に達成しうる難処理性固体廃棄物の適正処理技術を開発する。 K1617.丑田 公規:マイクロ波誘電加熱によるPVC脱塩素技術の超効率化による環境リスク低減 鉄鋼業界はプラスティック廃棄物を石炭やコークスの代わりに用いて、炭酸ガス排出削減を目指している。主要プラのうちポリ塩化ビニル(PVC)のみは、塩素を含み設備を痛めるので、事前に脱塩素が必要である。我々は神戸製鋼所との共同研究でマイクロ波による誘電加熱によりPVCのみが選択的に加熱、脱塩素されることを確認し、事前選別の要らない脱塩素技術として実用化レベルにまで高めた。本法は特に有害物質の環境への放出リスクが少ないことが特徴であるが、平行競争技術に比してコスト負担が大きく、普及が困難である。本研究では装置の心臓部であるマイクロ波処理槽(アプリケータ)の設計を根本的に改善し、世界的にも困難とされるマイクロ波領域での誘電率測定技術と、加速器設計に用いられる高度なシミュレーション技術を連携することによって、理論上可能な1桁程度処理効率の高い処理装置を開発し、本法の市場競争力を十分なものにする。 K1618.大谷 肇:ゴム・プラスチック材料廃棄物のリサイクリング過程における化学構造変化の精密解析 と実用プロセスの構築 ゴム・プラスチック材料廃棄物を、高分子の形態を保ったまま再利用する、マテリアルリサイクリング工程でしばしば生成するミクロ架橋構造は、材料物性の低下などを引き起こすことから、リサイクリング工程の実用化の大きな阻害要因となる。本研究ではまず、通常の方法では解析が不可能な、工程中に生成したミクロ架橋構造を解析する画期的な手法の開発を目指す。この手法は、超臨界流体場における特異な反応分解により試料を分解し、生成物を高性能クロマトグラフィーやソフトレーザーイオン化質量分析法などによりオンラインで解析する、全く新しい方法論に基づくものである。さらに、この手法により初めて明らかにされる、ミクロ架橋構造の生成メカニズムの解明を通じて、最終的には、社会的にも強く要請されている、ゴム・プラスチック廃棄物の実用リサイクリングプロセスの構築を図り、地球環境保全などに大きく資することを目標に置いている。 K1619.石原 達己:廃棄物処理施設の排水からの有害物イオンの選択除去用無機イオン交換体の開発 廃棄物処理施設とくに、産業廃棄物を地中埋設した施設からの排水中には、フッ素や砒素などの有害な無機イオンが濃縮され、含有されており、これらの有害物質の除去は環境保全の観点から重要な課題である。しかし、廃棄物処理施設からの排水中には、無機イオンのみでなく、有機物を含め多種類のイオンが含まれており、これらの多くの物質が含まれる排水中から特定のイオンのみを除くのはコストとエネルギーを要する。そこで、本研究では選択性に優れた無機イオン交換体を開発し、主に、環境に有害な砒素とフッ素イオンをターゲットとして、選択的にイオン交換により、有害物質を除去することを目的とし、新規なイオン形状記憶型の無機イオン交換体を開発するとともに、その無機イオン交換体を用いる排水の処理プロセスについても検討を行う。このために、本研究では規則細孔を有するメソポーラス材料に着目し、そのイオン交換特性を検討する。 K1620.我妻 和明:金属スクラップ素材の硬度循環利用のための新しい高速定量分析法の開発 本研究は、減圧レーザ誘起プラズマ発光分析法を測定原理とする元素分析装置を開発して、市中の金属スクラップ素材の高度・迅速選別を可能とする、新たな分析・計測システムの実用化を目的とする。資源循環型社会の構築は、近未来の社会の姿として行政各レベルにおいてさまざまな施策が実行されている。とりわけ鋼スクラップ素材の循環に関しては、鉄鉱石還元と比較してスクラップ利用によりエネルギー消費が1/3程度に節約できること、市中スクラップが100万トン/年の割合で増加していること等の理由により、強力に推進されるべき課題である。鋼スクラップ材には鉛、スズ等の有害金属元素が混入する場合があり、またニッケル、クロム等の高価金属が合金元素として添加されたものも含まれる。これらを的確かつ迅速に分別することは、その後の循環使用に際して大きな助けとなる。従来分析法ではこのような方途に適用できるものがなく、新しい分析方法/装置の開発が求められている。 K1621.牛尾 誠夫:水蒸気プラズマによる残渣炭化物のクリーンガス化処理プロセスの開発 本研究グループでは,環境省による平成14年度廃棄物処理等科学研究費補助金を受け,廃棄物の処理過程で発生する炭化物残渣を高温水蒸気プラズマで加熱処理するためのプロセスについて検討した.その結果,水蒸気プラズマで処理することで,ダイオキシン類の発生を抑制しながらガス化とその他の固体分の同時溶融処理が可能であることが示され,また焼却処理と同程度に廃棄物の減容化が可能であることが示唆された.そこで本研究は,プラズマ診断学,材料科学,熱化学等を駆使して当該プロセスの科学的根拠を明らかにするとともに,実用化を睨んで小規模のシステムをつくり,プロセスの高能率化と高効率化の検討を行おうとするものである.平成15年度においては,移行型および非移行型のプラズマアークを選択発生させることが可能なプラズマ源を有する小規模システムを試作し,科学的メカニズムの解明を目指した基礎実験をおこなっている. K1622.野口 貴文:解体コンクリートの次世代再生化技術の開発 現在、解体土木構造物・建築物から発生するコンクリート塊の大半は路盤材として利用されているが、本研究では、道路建設の減少、耐久性の劣る構造物から発生するコンクリート塊の増加、最終処分場の逼迫という将来のコンクリート廃棄物問題に鑑み、現在、路盤材として利用されているコンクリート塊をコンクリート用骨材として再利用できるだけでなく、将来、再利用された再生骨材を解体コンクリート塊から容易に取り出せるようにし、コンクリートのクローズドなリサイクルシステムを構築するための技術開発を実機レベルで行う。すなわち、平成15年度は、余分なエネルギーをかけずに処理されている低品質再生骨材に対して表面改質処理を施すことにより骨材品質改善と骨材回収率向上を図る技術を確立するとともに、構造性能を確保する検討を行う。平成16年度では、さらに耐久性・構造性能の向上を図る方策の検討を行い、「骨材回収型完全リサイクル再生コンクリートの製造・施工マニュアル(案)」を作成する。 K1623.酒井 伸一:残留性化学物質の物質循環モデルの構築とリサイクル・廃棄物政策評価への応用 本研究は、社会システムおよび自然システムにおける難燃剤や重金属類などの残留性化学物質の挙動を記述するモデル群を開発し、家電リサイクル法や自動車リサイクル法などの政策評価に応用、政策の方向付けに資する論考を行うものである。社会システム系では、廃家電、廃家庭製品リサイクル施設などの従来プロセスと自動車シュレッダーダスト(ASR)の新規開発プロセスにおけるフィールド研究を行い、マテリアルフローモデルを構築する。自然システム系では、中古輸出された家電製品の終着場であるアジアダンピングサイト周辺の汚染解明を行うとともに、保護対象・早期警報網として注目される野生高等動物を対象とした残留性化学物質汚染を生物環境試料バンクの活用により解明し、環境運命モデル・生態モデルの構築に取り組む。また、長期的には経済モデルとの統合を視野に、廃バッテリーのデポジット・リファンド制度などの環境経済学的評価にも取り組む。 K1624.迫原 修治:分子インプリント感温性ゲルを用いた土壌洗浄排水中の重金属類の新規な吸着分 離去に関する研究 近年、土壌汚染が判明する事例が多発しており、法律と浄化技術の両面で喫緊の対策が必要となっている。本研究は、土壌洗浄液中の微量有害金属の新規な分離回収方法として、分子インプリント感温性ゲル吸着材を用いた分離プロセスを提案するものである。このゲルは、感温性成分の主モノマーと重金属と相互作用するキレートモノマーの共重合体であり、標的重金属を温度スイングにより選択的に吸・脱着する。実用化された場合の社会的意義は非常に大きいといえる。平成15年度には、この種の微粒子吸着材の合成を行い、期待通りの吸・脱着特性をもつことを確認した。また、分離プロセス設計に必要な吸・脱着平衡および速度の測定・解析を行った。16、17年度ではキレートモノマーの高機能化、ゲル形態の検討、さらに各種重金属の吸着への展開を行い、提案している新規な分離プロセスの構築を目指す。 K1625.窪田 吉信:し尿処理にともなう水中のエストロゲンの酸化チタン光触媒による分解除去 水中に存在する内分泌攪乱化学物質の中でも女性ホルモン活性の高い17β-エストラジオール、エストロンやエチニルエストラジオールなどを分解除去することがし尿処理に伴う下水処理場などで課題になっている。既に目開きフッ素樹脂PTFEシートを密に充填した固定化酸化チタン光触媒を用いることによりこれらエストロゲンを速く分解除去する方法を見出した。さらに維持強度の強い酸化チタン光触媒を担持させたセラミックスフィルターは、効果的に自然光の利用も併用した分解ができると期待される。そこで、酸化チタン光触媒担持セラミックスフィルターを使った光触媒分解装置を作成し、これにより分解の基礎実験を行う。分解除去に関して、水中の微量のエストロゲンの濃度については固相カラム法とラジオイノムアッセイ法の併用により測定する。どの程度分解すれば、魚類等にとって安全であるかは、メダカを使いビテロジェニンの生成により解析する。 K1626.藤田 勇:水蒸気吸引式流出油回収機構の研究開発 海上に流出した油は海水との混合によりW/O型エマルジョンを形成し、非常に高い粘度を示すようになり、現場回収作業は困難を極める。このような高粘度流出油を安全かつ効率的に回収除去するためには、回収作業の際、流出油の物理性状を能動的に制御する必要がある。本研究では作動流体に水蒸気を用いて海上流出油を吸引除去あるいは回収油の改質する方法について研究する。水蒸気吸引式油回収装置では、蒸気噴流による吸引仕事と蒸気凝縮による加熱を同時に行うことができ、流出油の低粘度化及びエマルジョンブレーキング等が可能となり、従来不可能であった超高粘度の海上流出油の吸引除去及び改質に有効である。本研究ではそのような蒸気吸引式油回収装置の設計に必要となる基盤要素技術に関する研究開発を行う。更にそれらの知見を基に実際の油回収装置のプロトタイプを設計製作し性能試験を行い、その有効性を検証する。 KK1627.渡辺 義公:嫌気性アンモニア酸化型メンブレンバイオリアクターを核とした新規浸出水処理シス テムの開発とDNAチップを用いた処理水の安全性評価手法の確立 本研究は、最新のバイオ技術(嫌気性アンモニア酸化細菌、16S rRNAアプローチ)とナノ技術(NF/RO膜分離、DNAチップ)を有機的に融合した新規高度浸出水処理システムの開発とその処理水の安全性評価のための新規バイオアッセイ法の確立を目指すものである。本研究では、主に浸出水中のアンモニア性窒素および内乱分泌撹乱化学物質(EDCs)や医薬品由来化合物(PhACs)などの微量有機汚染物質の除去に焦点を絞る。提案する処理システムは、外部炭素源の添加、曝気および処理水循環エネルギーの少ない嫌気性アンモニア酸化反応を固液分離機能の優れた膜分離槽に組み込んだ、メンブレンバイオリアクター(MBR)を開発する。後段に設置するNF/RO膜装置によるEDCs/PhACs処理性能と膜材質の関係に関するデータベースを構築する。さらに処理水の安全性(毒性)評価を行うために、DNAチップを用いた新規多指標型バイオアッセイ手法の開発を行う。従来のバイオアッセイは単一指標型であり、複合的な化学物質汚染が考えられる浸出水処理水の総合的な安全性評価はできない。申請者の知る限り、本研究で提案するMBRおよび新規バイオアッセイ法は全く新規なアイデアであり、同様の研究事例は国内外において皆無である。 K1628.吉岡 敏明:素材構成と地域性を活かしたポリエステル廃棄物からのBTX転換処理技術の開発 申請者らは無機材料や他の高分子材料と複合化されているポリエステル類(フィルム、テープ、プリペイドカードや繊維類)を消石灰(Ca(OH)2)と水蒸気を利用した熱分解法によって、最終的に埋立処分されている分解残渣を発生させずに処理できる技術を開発した(特願2003-052640)。また、この技術は処理と同時にBTXなどの油分や合成ガスに転換できることも大きな特徴での一つである。 K1629.木戸口 善行:水ラジカル反応を利用した廃油の再燃料化と低エミッション燃焼技術の研究開発 廃油処理問題の解決と廃油の再生利用、汚染物質低減のため、廃油を水と混合して水エマルジョン燃料として再燃料化し、ボイラー用バーナーの燃料に適用する。とくに、燃焼場において水分子から生成するラジカル成分の挙動に着目して、水エマルジョン燃料の低汚染燃焼機構を解明し、熱量評価により燃焼効率を調べる。 K1630.西野 徳三:生ごみ処理機の微生物活動評価を通しての再検討 各社各様の家庭用電動式生ごみ処理機が上市されているが、市場に出たうちの約8割が死蔵されているという。その理由は使用中に発生する臭いであり、処理能力不足ないしは欠如である。業務用処理機も食品リサイクル法の施行に合わせて設置したところが多いが、その多くが機能していないと報道されている。我々が開発してきたアシドロ菌方式の家庭用処理機は1万台ほどが市場に出ているが、その8割は問題なく継続使用されている。その装置の微生物活動を評価し、それと表裏一体の形で機能している処理ソフトの方式を評価し、他の方式と比較検討することによって、より普遍的な高効率な処理方式を提案したい。また、家庭用から業務用までの処理も可能であり、広く有機性廃棄物の適正な処理方式が整うと、廃棄物の処理が高効率で行われ、なおかつ安全で、安心して使用できる堆肥や飼料が得られることになり、循環型社会の形成に大いに役立つ研究である。 K1631.高橋 惇:ダイオキシン類汚染水質・土壌の浄化バイオリアクター構築のための研究 物理化学的浄化手法に比べて低コストで環境調和型の微生物によるダイオキシン類汚染水質・土壌の浄化システムの構築を目指した研究開発を行っている。今日までに、毒性が最も高い2,3,7,8-TCDDや2,3,7,8-TCDF等を分解する好気性好熱細菌であるBacillus midousuji(SH2B-J2)菌株を獲得・権利化(United States Patent 6,190,903、日欧に出願中)すると共に、ダイオキシン類浄化処理用バイオリアクターの開発(特開2002-301466)と性能評価を行っている。SH2B-J2菌株を活用する利点は、高度に塩素化されたダイオキシン類を分解できること、平均世代時間が約8分と早く、培養コストが低いことである。本提案は、保有するSH2B-J2菌株の増殖特性を活用したダイオキシン類汚染水質・土壌のための浄化バイオリアクターの確立と実用化を目指すものである。 K1632.高岡 昌輝:焼却飛灰上での微量有機汚染物質の再合成における重金属の役割解明 都市ごみ焼却施設からのダイオキシン類の排出総量を削減するためには、ガス冷却過程におけるダイオキシン類の再合成を抑制するような技術が期待される。再合成を生じさせないようにするためには、基礎的なダイオキシン類の再合成メカニズムを詳細に調べ,明らかにする必要がある。多くの研究者がこの課題に取り組んできており、未燃分がその源で重金属が触媒作用を示し、ダイオキシン類を合成することがわかっているが、未燃分および重金属の詳細な役割についてはいまだ不明なところが多い。本研究では、SPring-8の大型放射光施設においてX線吸収微細構造分析(XAFS)により飛灰中の重金属の存在状態を明らかにし、また実際の温度およびガス雰囲気における重金属の存在状態の変化をとらえるとともに、同条件でのダイオキシン類の再合成量を別途の実験室にて実験を行い把握することにより、再合成メカニズムに対する重金属の役割を明らかにする。 K1633.田中 勝:医療廃棄物の戦略的マネジメントに関する研究 医療廃棄物に関しては、ダイオキシン類対策特別措置法の規制強化により外部委託処理に頼らざるをえない傾向が強くなる一方、感染性廃棄物の解釈により各病院で多様な分類、処理が行われている。本研究では、医療廃棄物の最新動向調査、先進事例調査、科学的判断基準作成等により、医療廃棄物処理マニュアルを作成する。また、そのマニュアルに基づいたモデル事業を実施し、実際適用した際の減量・費用削減の課題を抽出、対策を講じることにより、現場に即したマニュアル作成を目指す。さらに、自治体の焼却施設への受け入れ、医療機器メーカーの拡大生産者責任、諸外国の動向を調査・整理することにより、現行の処理方法にとらわれない日本における医療廃棄物の戦略的マネジメントの施策を提言する。 K1634.乙間 末廣:ビジネススタイルの相違による廃棄物排出抑制及び再生利用促進効果の検証と変 革のための成立要件に関する研究 本研究は、製品売り切り型ではない製品ライフサイクル管理形態をとるビジネススタイルを対象に、その廃棄物の排出抑制効果及び再生利用促進効果について実データをもとに検証し、そのボトルネックと成立条件を明らかにすることを目的とするものである。機能提供型あるいはサービス提供型(以下、サービス提供型のみで表記)ビジネスといわれるリース/レンタル型のビジネススタイルやその類似モデルについてはこれまで断片的な調査しかされてこなかったが、それを体系的・包括的研究に発展させることで、廃棄物削減に寄与するビジネススタイルを明らかにする。同時に、それを実社会へ汎用性のあるものとするための条件、継続的に資源を循環させるためのリスクやボトルネック等をも明らかにする。これらは、大量生産、大量リサイクル社会からの脱却、脱物質化社会の端緒へと大きく寄与するものである。 K1635.田路 和幸:下水処理場をモデルケースとした太陽光利用水素生産システムの構築 循環型社会形成の一翼を担うエネルギー生産/廃棄物排出抑制システムの構築を目指し、下水処理場をモデルケースとして、下水汚泥の減量化と有害廃棄物の排出抑制を図りつつ、処理場に流入する硫黄を循環利用しながら太陽光を用いたストラティファイド光触媒による硫化物イオンからの水素生産を行う連続プロセスを基本設計する。素材工学、材料化学、無機化学、生物工学、プロセス工学、環境工学の各部門の研究者、技術者を結集した研究チームを組織し、その有機的連携のもとで、高効率水素生産プロセスの確立、硫化物イオン再生、システムの最適化を3つの柱として、学術的な新規性も高い要素研究を展開する。本研究の成果をベースとして、下水処理場を核とした循環型の地域分散型エネルギー供給システムを構築することが可能となるとともに、硫黄廃棄物の大量発生源に転用することにより、大規模な水素生産プロセスの構築も可能となる。 K1636.田中 幹也:無電解ニッケルめっきにおけるミニマムエミッション化の研究 無電解めっきの中でも最も多用される無電解ニッケルめっきのミニマムエミッション化を達成するため、使用済みめっき液中のニッケルの分離回収技術、めっき液の繰り返し使用にともなってめっき液中に蓄積する不純物金属イオンや亜りん酸の選択除去によるめっき液の長寿命化技術を確立する。 K1637.松崎 邦男:研磨スラッジ産業廃棄物の再資源化及び利用技術に関する研究 研磨スラッジ産業廃棄物は極めて微細な砥粒や研磨液を含んでいる等の問題があり、これまで有効な再資源化技術が確立されておらず、年間約720トン以上も廃棄処分されている。本研究開発は、鉄系研磨スラッジについて、プレスレス精製処理技術、プラズマ溶射法による粉体化技術、再溶融技術の開発を行い、有効な再資源化技術の確立を図るものである。また、粉末成形法及び粉末射出成形法による研磨スラッジの成形技術の開発を行うとともに、金型部品、微細形状部品の試作・試験を行い、研磨スラッジの利用技術の確立を図る。 K1638.松山 喜代志:PCB廃棄物の一貫処理システムの安全性、信頼性向上に関する研究 本研究はPCB廃棄物の一貫処理システムの安全性,信頼性の向上を図るため、以下の研究課題に取り組むものである。PCBの化学処理は金属固体粒子と液相物との反応系からなり、混合,拡散,伝熱,分解反応,重合反応等数多くのプロセスを経て進行する。このプロセスを秩序よく確実に操作するために反応機構,反応速度並びに塩素等の挙動等を理論的に解析し、反応異常や有害物生成の抑制等に向けたメカニズム解明を行う。また、PCB廃棄物からのPCB除去回収処理においては、処理条件の抽出特性,熱特性,拡散特性等への影響を分析し、PCB処理性への有意因子の明確化を行う。更にPCB無害化反応の確認,PCB漏洩・暴露防止,副生成物生成・排出等を迅速かつ簡易に監視するためのモニタリング技術の研究を行う。これらの研究知見より、安定的で確実なPCB無害化を行うPCB一貫処理システムの評価・検討が可能となる。 K1639.高松 武次郎:次世代技術利用金属の環境溶出特性と土壌中動態の解明に関する研究 近い将来、エレクトロニクス産業などで多用され、それにともなって環境負荷量が急増すると予想されるAg、In、Sb、Biなど(次世代技術利用金属)の溶出特性、土壌中動態、および土壌微生物影響を解明するために以下の検討を行う: 1)降雨に暴露された金属の可溶化機構を雨の化学特性(pH、溶存元素や有機物の種類と濃度など)との関連で検討する; 2)土壌に埋設された金属の可溶化機構を土壌特性(土壌種、層位、pH、Ehなど)との関連で検討する; 3)土壌に負荷された金属の動態(集積、移動、地下浸透、形態変化など)を土壌条件(土壌種、土壌の物理・化学特性など)や水文条件との関連で検討する; 4)微生物影響を微生物のバイオマス、活性、及び群集構造(多様性)の3側面から検討する; 5)1)から4)の結果を総合し、次世代技術利用金属による土壌・地下水汚染の可能性を予測するとともに土壌生態系影響の評価を試みる。 K1640.中村 崇:臭素系ダイオキシン類の生成および排出抑制に関する基礎的研究 本研究では、臭素系ダイオキシン類およびその類縁化合物の物理化学的物性値の測定を行い、焼却処理過程や循環廃棄過程からの環境中への排出防止対策の科学的基盤とするものである。具体的には、蒸気圧の測定、量子化学計算による熱力学データの決定、水への溶解度、オクタノール/水分配係数ならびにヘンリー定数の測定を行う。三年計画の最終年に当たる本年度は、昨年度に引き続き、(1)臭素系難燃剤ならびに類縁化合物の蒸気圧測定、示差熱分析による融点・融解エンタルピーの測定、(2)量子化学計算による臭素化塩素化ダイオキシン類の熱力学的データの計算および燃焼排ガス中における臭素系ダイオキシン類の挙動シミュレーション、(4)水への溶解度・オクタノール/水分配係数の測定ならびに活量係数によるヘンリー定数の導出、(5)UNIFACモデルによる臭素系ダイオキシン類縁化合物の物理化学パラメータの推算および環境動態評価を行う。 K1641.谷口 初美:廃棄物処分場のバイオ評価に関する研究 2003年2月、アメリカのスーパーファンド法にならい、日本でも土壌汚染防止法が施行された。汚染土壌の修復技術の開発が喫緊の課題である。土壌浄化の主体は微生物である。理化学的な土壌成分検査に加え、土壌中の微生物叢の解析技術はますます重要になる。培養不能なviable but nonculturable (VBNC) な細菌をも含む菌叢を網羅的に評価するシステムは、廃棄物処分場のみならず、様々な汚染土壌の安定化における微生物学的汚染度指標やバイオレメディエーションへの応用など、幅広い利用が期待される。本研究は、廃棄物処分場の危険度予測、安定化評価のために、現在行なわれている理化学検査に微生物学的評価を加えることを目的として、処分場土壌の微生物叢全体の動態を網羅的に分析・評価する迅速・簡便な検査方法を構築するものである。 K1642.鈴木 茂:不法投棄廃棄物等に含まれる化学物質の包括的計測手法の開発に関する研究 不法投棄等による発生起源、化学組成の不明な廃棄物の処理・処分と汚染地域の原状回復、処理後の経過観測等に資するため、廃棄物等に含まれる化学物質の包括的計測システムを開発する。このシステムは、応急対応策のため短時間に廃棄物に含まれる化学物質の概要を把握する「即応フェーズ」、最終的処理方法決定、処理後の経過観測等のため廃棄物の化学物質組成を詳しく分析する「精密フェーズ」で構成される。即応フェーズでは、廃棄物の毒・劇性等応急対応に関する安全確認指標、含有する化学物質の化合物群などを迅速かつ簡易に検知する分析システムを開発する。精密フェーズでは、廃棄物中の主要な化学物質を分離し同定するシステムで、廃棄物中化学物質の9割以上を占めると言われるながら従来分析できなかった難揮発性化学物質を含む系統分析法を開発する。 K1643.斎藤 祐二:リグニン分解酵素を含む培養液を用いた焼却灰中ダイオキシン類の分解に関する研究 白色腐朽菌が生成するリグニン分解酵素は、基質特異性が低く強い酸化力を有するために様々な化学物質を分解することが報告されている。我々は、日本国内から数千株の白色腐朽菌を分離しパルプ脱色性に優れる株を選抜した。さらに、選抜株の増殖性および生成するリグニン分解酵素を評価した。その結果、増殖と酵素活性の優れる株の絞込みに成功し、これらを用いたダイオキシン類汚染物質処理への適用を検討している。中でも本研究で使用する白色腐朽菌MS325株は、DF、1,3,6,8-TeCDD、2,3,8-TCDFを明確に分解することを本事業参画前に確認している。そこで本研究では、環境影響の少ない処理技術の確立を目指し、選抜したMS325株の培養液を用いた灰中ダイオキシン類の酵素分解性を検討する。さらに、本処理方法をシステム化するとともに、焼却灰以外の土壌、底質ダイオキシン類の分解性を評価し、本システムの適用範囲を明確化する。 K1644.稲森 悠平:生活排水処理システム浄化槽の窒素除去の律速因子となる硝化細菌の迅速測定・高度処理・維持管理技術の開発 窒素除去型の高度処理浄化槽は富栄養化対策としての重要な位置づけにあるが、効率的な維持管理対策を図る上では、律速反応を支配する硝化細菌の個体群動態を迅速に検出することが重要である。本研究事業では、初年度において、生物処理反応槽の維持管理の適正化に資する分子生物学的手法を用いた硝化細菌の迅速検出技術の確立化を行い、次年度では、硝化細菌の測定解析に基づく現場浄化槽のモニタリングから、現場対応に資する効率的な維持管理技術と同時に新設型高度処理浄化槽のシステム化、既存型単独・合併処理浄化槽の高度処理化を図る上での微生物機能からみた構造等改善手法の確立について検討を行ってきた。本年度は、微生物機能としての質的・量的特性の認識開発技術を基盤とし、高度処理浄化槽における硝化細菌保持能力、硝化液循環システムの維持管理、容量設計等の現場対応に資する高度処理・維持管理技術の高度化、実証化と汎用化技術を構築する。 K1645.井上 雄三:バイオ指標導入による最終処分場の安定化促進技術の評価 既存処分場への安定化促進工法導入や実証規模型安定化促進モデル埋立槽による実験から、既存の物理化学的モニタリングによる安定化挙動と微生物群集との関連について検討し、処分場の安定化を判定する新たな指標(バイオ指標)提案する。また、近年の既存安定型処分場の安定化(硫化水素発生抑制)評価へのバイオ指標導入を検討する。さらに、既存最終処分場の埋立物サンプルや浸出水の微生物生態調査を行い、効果的な微生物群集モニタリング手法を確立するとともに、安定化過程における微生物学的な知見の集積と体系化を行う。また、微生物の有効利用の観点から維持管理の適正化を図る。すなわち、最終処分場における安定化を、[1]含有有機物の分解・安定化、[2]無機物の溶出による安定化、[3]有害物質の視点から見た安定化、[4]構造的安定化と捉え、主要な安定化因子が含有有機物の生物分解反応であるとして、安定化促進技術導入処分場の最適制御手法を構築する。 K1646.朝倉 祝治:溶融飛灰中の重金属の分離除去技術の開発 近年、廃棄物の減容化、重金属の固定化、ダイオキシンの分解処理の目的から、焼却灰をスラグ溶融して建築材料としてリサイクルされはじめている。しかしながら、スラグ溶融することによって排出される飛灰には、特定の重金属が濃縮されるなどの問題点も多く、通常の還元リサイクルが行えず、不溶化させて埋め立て処理されているのが実情である。本研究では、リサイクルによって回収されたアルミニウムや有害な廃棄物を吸収させた活性炭などを利用し、有害な廃棄物を分解すると同時に飛灰中に含まれる鉛などの有害な重金属を還元し、有価金属として分離することで、溶融飛灰の安全かつ適正な処理方法の開発を行うことを目的とする。本研究が商業規模で実現すれば飛灰中の重金属を有価金属としてリサイクルできるだけでなく、従来まで埋め立てられていた飛灰についても建築材料等へのリサイクルが可能となる。 K1647.寺園 淳:アジア地域における資源循環・廃棄の構造解析 本研究は、アジア地域における日本発の国際的な資源循環の構造を解明し、日本の輸出と関係のある相手国での環境汚染を解明及び防止することを目的としている。そのためにまず、アジア地域における国ベースでの既存の廃棄物や資源の統計情報を収集し、経済・法制度などの背景を分析する。次に、家電製品・プラスチックなどを対象として、アジア地域における静脈系フローを推計しながら、リサイクル・処理処分過程における環境負荷を調査し、課題を整理する。最後に、廃棄側の隠れたフローを加味した、日本とアジア地域における資源循環の構造を明らかにする。これらの作業により、持続可能な資源循環のあり方を議論するために必要な情報を提供する。本研究は途上国を含めた廃棄物・資源循環分野の国際共同研究を立ち上げるものであり、3年間は情報基盤整備のためのプラットフォームづくりに向けて、年に一回の国際ワークショップを日本で開催する。 K1648.中村 修:食品リサイクルにおける社会技術の開発・研究 本研究では、食品リサイクル事業を地域環境・経済・農業回復のための重要な戦略として展開する。つまり食品リサイクル事業によって、その地域に様々なメリットをうみだす。実際に、我々は福岡県三潴郡大木町を実証フィールドとしてここ数年、循環のための様々な社会技術の開発をおこなってきた。安価でシンプルでかつ地域に利益をもたらす循環のありようを探ってきた。バイオガスプラントの簡素化、バイオガスプラント由来の液肥を水田で利用、農産物の地場産利用、循環のための地域通貨の開発などである。食品リサイクルを実施する上でもっとも効果的で有効な、バイオガスプラント由来の消化液を水田で液肥として利用する技術の実証研究と環境評価を中心におこなう。日本各地にある広大な水田を利用する本技術が開発・実用化されることで、停滞する食品リサイクル事業は大きく展開することが可能になる。 K1649.後藤 純雄:木材系廃棄物の利用法の拡大に関する研究 木材系廃棄物の利用法を拡大するため、炭化物や炭化物複合材などの再生品開発やその有効利用法について検討する。即ち、種々の再生製品(材料を含む)を試作しその加工、製造法や利用法拡大について検討するとともに、再生製品の使用時や最終処分時における人体又は環境の安全性を確保するため、木材系廃棄物や再生製品中に含まれる有害物質の挙動について検討を加える。また、有害物質の挙動や特性に応じた有害物質の除去法の適用、更に開発した再生製品の有用性や安全性などの確認やリスク低減化に資するための小規模なモデル試験を実施する。特に、炭化物(ボード)に関しては室内での利用を想定し、室内汚染物質の吸着除去効果などについての検討を加える。 K1650.民谷 栄一:新規ガス滅菌システムによる感染性廃棄物の適性処理法及びリサイクル技術に関する研究 本大学、産総研、企業による産学官共同研究により開発された新規ガス滅菌法であるMRガス滅菌システムは、画期的なシステムであり、酸化エチレンガスの代替システムの最右翼と評価されている。唯一の既存ガス滅菌法であり、その使用が問題となっている酸化エチレンガスの問題点をことごとく解決している。 K1651.樋口 壮太郎:埋立地再生総合技術システムの開発 最終処分場は、循環型社会を目指す基盤事業として欠くことのできないものである。しかし、新規の立地は極めて困難な状況におかれている。循環型社会形成基本計画には最終処分量を平成22年度までに25%(平成2年比)にする目標が示されており、循環型社会のイメージの中に既存処分場の再生利用をあげている。この様な背景のもと、既存処分場の再生利用技術の開発が望まれている。現在の知見・基準からすると、[1]環境保全上の機能回復を必要とする処分場、[2]処分場の活用可能な土地への修復、[3]汚染土壌の浄化を必要とする処分場などがあり、これらに対して[4]新しい技術を適用すれば上記問題が解決するだけでなく新たに埋立容量の確保が可能と考えられる処分場(延命化)が存在する。こうした、既存処分場を対象に多様な埋立廃棄物層の特性、性状に適応した再生技術を検討し、埋立地の再生に係る総合技術システムを確立するものである。 |
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環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課 TEL: 03-5501-3154 FAX: 03-3593-8263 E-mail: hairi-haitai@env.go.jp |
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