「平成15年度廃棄物処理等科学研究費補助金」
に係る交付対象研究等の決定について
環境省では、廃棄物に係る諸問題の解決及び循環型社会形成に資する研究・技術開発を推進する目的として、競争的資金である廃棄物処理等科学研究費補助金制度を導入し、本年度は「廃棄物処理に伴う有害化学物質対策研究」、「廃棄物適正処理研究」、「循環型社会構築技術研究」の3つ分野で公募を行い廃棄物処理等科学研究企画委員会(推進事業)、廃棄物処理対策研究審査委員会(研究事業)による評価を得て、交付対象が決定されました。
1.交付決定した研究
2.交付決定した推進事業
代表研究者 |
法人名 |
推進事業名 |
石黒 智彦 |
財団法人 日本環境衛生センター |
廃棄物処理等科学研究及び次世代廃棄物処理技術基盤整備事業の成果発表等による普及・推進事業 |
概要 |
(1) 成果発表会の開催 |
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[1] |
開催予定時期 |
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平成15年11~12月 5日間 |
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発表対象 |
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平成14年度廃棄物処理等科学研究費補助金によって交付決定した研究及び平成14年度次世代廃棄物処理技術基盤整備事業補助金によって交付決定した事業 |
(2) 日本人研究者の国際会議等派遣 |
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日本人研究者を廃棄物関連の国際会議等に派遣して最新の情報や知見を入手し、成果発表会で報告することにより周知を図る。 |
(3) 成果発表等の情報発信 |
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成果発表会や国際会議等の報告内容及び研究成果に関する情報をインターネットやその他の広報媒体を通じて広く発信し、廃棄物処理等科学研究の推進を支援する。 |
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3.廃棄物処理対策研究審査委員名簿(50音順)
氏名 |
所属・職名 |
浅野 直人 |
福岡大学法学部 教授 |
飯野 靖四 |
慶應義塾大学経済学部 教授 |
市川 陽一 |
(財)電力中央研究所狛江研究所 大気科学部長・上席研究員 |
岩堀 恵祐 |
静岡県立大学環境科学研究所 教授 |
占部 武生 |
東京都環境科学研究所応用研究部廃棄物研究グループ 副参事研究員 |
小林 康彦 |
(財)日本環境衛生センター 理事長 |
寺嶋 均 |
(社)全国都市清掃会議 技術部担当部長 |
中杉 修身 |
独立行政法人国立環境研究所化学物質環境リスク研究センター センター長 |
中野 加都子 |
神戸山手大学人文学部環境文化学学科 助教授 |
花嶋 正孝 |
福岡県リサイクル総合研究センター センター長 |
原 雄 |
千葉県環境研究センター廃棄物・化学物質部 部長 |
平岡 正勝 |
立命館大学エコ・テクノロジー研究センター センター長 |
藤田 賢二 |
(財)水道技術研究センター 会長 |
藤田 正憲 |
大阪大学大学院工学研究科 教授 |
村山 武彦 |
早稲田大学理工学部 教授 |
森田 昌敏 |
独立行政法人国立環境研究所 総括研究官 |
4.廃棄物処理等科学研究企画委員名簿(50音順)
氏名 |
所属・職名 |
田中 勝 |
岡山大学大学院 教授 |
中島 尚正 |
放送大学東京多摩学習センター 所長 |
西岡 秀三 |
独立行政法人国立環境研究所 理事 |
平岡 正勝 |
立命館大学エコ・テクノロジー研究センター センター長 |
○ 研究の概要
K1501. 東條 安匡:都市ごみ埋立処分における量の大幅削減と質の適正化戦略に関する研究 |
循環型社会を目指す中で、埋立処分には(1)埋立量の削減、(2)長期的なリスク削減、(3)次世代に負の遺産とならない早期安定化・跡地の有効利用の実現、等の課題が課せられている。しかし、これらの問題に取り組む上で最も重要な「埋立ごみ」とは何かが茫漠としている。理由は、自治体ごとに埋立対象とするごみが多様であること、そして中間処理残渣(焼却残渣など)以外の埋立ごみ(不燃ごみや直接搬入ごみ等)の状況(組成、量、物理化学的性状等)が不明であるということにある。上記3課題に取り組む上で、「埋立ごみ」の姿を的確に捉え、効果的な戦略を立てることは不可欠である。本研究では不明な点が多い「埋立ごみ」に着目し、埋立搬入物の品目、組成、量、有機汚濁負荷、重金属負荷等を調査し、今日埋め立てられているごみの実態を明らかにすると共に、埋立量削減と埋立跡地の早期安定化を実現する埋立ごみのフロー制御方策と前処理戦略を提案する。

K1502.牛尾 誠夫:水蒸気プラズマによる残渣炭化物のクリーンガス化処理プロセスの開発 |
本研究グループでは、環境省による平成14年度廃棄物処理等科学研究費補助金を受けて、廃棄物の処理過程で発生する炭化物残渣を高温水蒸気プラズマで加熱処理することにより、水性ガス反応(C
+ H2O → H2 + CO
)を起こさせ、ダイオキシン類の発生を抑制しながら燃料ガスを生み出すとともに、固体分を溶融スラグ化するプロセス開発の可能性を検討してきた。その結果、炭化物残渣を水蒸気プラズマで処理することで、ダイオキシン類の発生を抑制しながらガス化とその他の固体分の同時溶融処理が可能性であることが示されるとともに、廃棄物を焼却せずとも焼却処理と同程度に減容化を図ることが可能である、ことが示唆された。そこで本研究では、プラズマ診断学、材料科学、熱化学等を駆使して当該プロセスの科学的根拠を明らかにするとともに、実用化を睨んで小規模のシステムをつくり、プロセスの高能率化と高効率化の検討を行おうとするものである。

K1503.野口 貴文:解体コンクリートの次世代再生化技術の開発 |
現在、解体土木構造物・建築物から発生するコンクリート塊の大半は路盤材として利用されているが、本研究では、道路建設の減少、耐久性の劣る構造物から発生するコンクリート塊の増加、最終処分場の逼迫という将来のコンクリート廃棄物問題に鑑み、現在、路盤材として利用されているコンクリート塊をコンクリート用骨材として再利用できるだけでなく、将来、再利用された再生骨材を解体コンクリート塊から容易に取り出せるようにし、コンクリートのクローズドなリサイクルシステムを構築するための技術開発を実機レベルで行う。すなわち、平成15年度は、余分なエネルギーをかけずに処理されている低品質再生骨材に対して表面改質処理を施すことにより骨材品質改善と骨材回収率向上を図る技術を確立するとともに、構造性能を確保する検討を行う。平成16年度では、さらに耐久性・構造性能の向上を図る方策の検討を行い、「骨材回収型完全リサイクル再生コンクリートの製造・施工マニュアル(案)」を作成する。

K1504.酒井 伸一:残留性化学物質の物質循環モデルの構築とリサイクル・廃棄物政策評価への応用 |
本研究は、社会システムおよび自然システムにおける重金属類や臭素系難燃剤などの残留性化学物質の挙動を記述するモデル群を開発し、家電リサイクル法や自動車リサイクル法などの政策評価に応用、政策の方向付けに資する論考を行うものである。社会システム系では、自動車シュレッダーダスト(ASR)や廃家電、廃木材リサイクル施設などの新プロセスにおける物質収支のフィールド調査を行い、マテリアルフローモデルを構築する。自然システム系では、中古輸出された家電製品の終着場であるアジア途上国ダンピングサイト周辺環境の汚染解明を行うとともに、保護対象・早期警報網として注目される野生高等動物を対象とした残留性化学物質汚染を生物環境試料バンクの活用により解明し、環境運命モデル・生態モデルの構築に取り組む。また、長期的には経済モデルとの統合を視野に、廃バッテリーのデポジット・リファンド制度などの環境経済学的評価にも取り組む。

K1505.迫原 修治:分子インプリント感温性ゲルを用いた土壌洗浄排水中の重金属類の新規な吸着分離法に関する研究 |
近年、土壌汚染が判明する事例が多発しており、法律と浄化技術の両面で喫緊の対策が必要となっている。本研究は、土壌洗浄液中の微量有害金属の新規な分離回収方法として、分子インプリント感温性ゲルの適用を提案するものである。このゲルは、感温性成分の主モノマーと重金属に対して相互作用機能を示すキレートモノマーとの共重合体であり、土壌汚染に関連した各種重金属の選択分離と温度スイングによる重金属の吸・脱着制御が期待できる。本研究ではこのような吸着材の開発と実用化を目的とし、分子インプリントゲル微粒子の合成、温度スイングによる吸・脱着挙動の確認、吸着平衡とゲル内物質移動速度の測定と解析、各種重金属の選択吸着への展開、ゲル微粒子のモジュール化と性能評価について検討する。分子インプリント感温性ゲルによる吸着分離はエネルギーレス、薬品レスの理想的な分離操作であり、このプロセスの実用化の社会的意義は非常に大きい。

K1506.窪田 吉信:し尿処理にともなう水中のエストロゲンの酸化チタン光触媒による分解除去 |
水中に存在する内分泌攪乱化学物質の中でも女性ホルモン活性の高い17β-エストラジオール、エストロンやエチニルエストラジオールなどを分解除去することがし尿処理に伴う下水処理場などで課題になっている。既に目開きフッ素樹脂PTFEシートを密に充填した固定化酸化チタン光触媒を用いることによりこれらエストロゲンを速く分解除去する方法を見出した。さらに維持強度の強い酸化チタン光触媒を担持させたセラミックスフィルターは、効果的に自然光の利用も併用した分解ができると期待される。そこで、酸化チタン光触媒担持セラミックスフィルターを使った光触媒分解装置を作成し、これにより分解の基礎実験を行う。分解除去に関して、水中の微量のエストロゲンの濃度については固相カラム法とラジオイノムアッセイ法の併用により測定する。どの程度分解すれば、魚類等にとって安全であるかは、メダカを使いビテロジェニンの生成により解析する。

K1507.藤田 勇:水蒸気吸引式流出油回収機構の研究開発 |
海上に流出した油は海水との混合によりエマルジョン化し、非常に高い粘度を示すようになる。このような高粘度流出油を安全かつ効率的に回収除去するためには、回収作業を行う際に潤滑あるいは低粘度化等流出油の物理性状を能動的に制御する必要がある。本研究では海上流出油を吸引除去する方法として作動流体に水蒸気を用いる方法に関して研究する。水蒸気吸引式による油回収装置では、吸引というポンプ仕事と低粘度化のための加熱を流出油に対して同時に行うことができ、従来不可能であった超高粘度の海上流出油の吸引除去に有効だと考えられる。本研究ではそのような蒸気吸引式油回収装置の設計に必要となる基盤要素技術に関する研究開発を行い、更にそれらの知見を基に実際の油回収装置のプロトタイプを設計製作し性能試験を行い、その有効性を検証する。

K1508. 渡辺 義公:嫌気性アンモニア酸化型メンブレンバイオリアクターを核とした新規進出水処理システムの開発とDNAチップを用いた処理水の安全性評価手法の確立 |
本研究は、最新のバイオ技術(嫌気性アンモニア酸化細菌、16SrRNAアプローチ)とナノ技術(NF/RO膜分離、DNAチップ)を有機的に融合した新規高度浸出水処理システムの開発とその処理水の安全性評価のための新規バイオアッセイ法の確立を目指すものである。本研究では、主に浸出水中のアンモニア性窒素および内乱分泌撹乱化学物質(endocrine
disrupting compounds, EDCs)や医薬品由来化合物(pharmaceutically active compounds, PhACs)などの微量有機汚染物質の除去に焦点を絞る。提案する処理システムは、外部炭素源の添加、曝気および処理水循環エネルギーの少ない嫌気性アンモニア酸化反応を固液分離機能の優れた膜分離槽に組み込んだ、メンブレンバイオリアクター(MBR)を開発する。後段に設置するNF/RO膜装置によるEDCs/PhACs処理性能と膜材質の関係に関するデータベースを構築する。さらに処理水の安全性(毒性)評価を行うために、DNAチップを用いた新規多指標型バイオアッセイ手法の開発を行う(下図参照)。従来のバイオアッセイは単一指標型であり、複合的な化学物質汚染が考えられる浸出水処理水の総合的な安全性評価はできない。申請者の知る限り、本研究で提案するMBRおよび新規バイオアッセイ法は全く新規なアイデアであり、同様の研究事例は国内外において皆無である。

K1509.黒田 泰弘:コンクリート解体微粉の地盤材料としての品質保証に関する研究 |
都市部では,廃コンクリートの増大に対し,現状の路盤材への再利用は限界に達しており,資源である骨材の有効利用の観点からも,コンクリート分野での骨材リサイクル技術の確立が急務である。近年,再生骨材の製造技術の開発が進み,構造用コンクリートへ適用できる高品質再生骨材の製造が可能となった。しかし,その普及展開には,付着セメント分を除去する過程で発生する多量の解体微粉の有効利用技術の確立が不可欠である。解体微粉は高い粉末度と弱い硬化特性を有することから,地盤材料としての適用が有望と考えられるが,その固化特性について系統だった研究がなされていないばかりでなく,近年問題視されている土壌環境保全に係る重金属の溶出に関する検討も不十分である。
本研究では,解体微粉を地盤材料として広く普及させる際の品質保証を目的に固化特性および土壌環境保全に係る六価クロムを始めとする重金属の溶出特性について検討する。

K1510.吉岡 敏明:素材構成と地域性を活かしたポリエステル廃棄物からのBTX転換処理技術の開発 |
申請者らは無機材料や他の高分子材料と複合化されているポリエステル類(フィルム、テープ、プリペイドカードや繊維類)を消石灰(Ca(OH)2)と水蒸気を利用した熱分解法によって、最終的に埋立処分されている分解残渣を発生させずに処理できる技術を開発した(特願2003-052640)。また、この技術は処理と同時にBTXなどの油分や合成ガスに転換できることも大きな特徴での一つである。
本プロセスを開発成果を実用に結び付けるためには、連続的に試料投入し反応させるためのシステム設計と技術開発が必要である。さらに消石灰を触媒として用いるためには、反応後に生成するCaOを連続的に水和することが必要である。そこで、本研究では、CaOを流動媒体とした流動層に展開し、ミニプラントによって実用化に資するデータの収集と展開研究を行う。

K1511.木戸口 善行:水ラジカル反応を利用した廃油の再燃料化と低エミッション燃焼技術の研究開発 |
本研究では,廃油処理問題の解決と廃油の再生有効利用、汚染物質低減のため、廃油を水と混合して水エマルジョン燃料として再燃料化し、重質油・廃油の需要があるボイラー用バーナーの燃料に適用する。とくに、高温燃焼場において水分子から生成するラジカル成分の挙動に着目して、水エマルジョン燃料の低汚染燃焼機構および発生熱量の増加要因を解明し、高効率低汚染燃焼のための燃焼条件、設計変数を求める。研究は3年計画で行い、当該年度の1年目は、燃料分子構造の解析と燃料製造方法の最適化、バーナー火炎の燃焼特性の計測を行って、微細な燃料および水粒子による燃焼促進効果を明らかにする。2年目以降では、燃焼火炎のラジカル測定も行って水ラジカルが低汚染燃焼に及ぼす効果を調べるとともに、熱量測定法の検討と熱量増加要因の解明を行う。これらの結果をもとに、水エマルジョン燃焼装置の最適設計を図る。

K1512.西野 徳三:生ごみ処理機の微生物活動評価を通しての再検討 |
各社各様の家庭用電動式生ごみ処理機が上市されているが、市場に出たうちの約8割が死蔵されているという。その理由は使用中に発生する臭いであり、処理能力の不足ないしは欠如である。業務用処理機も食品リサイクル法の施行に合わせて設置したところが多いが、その多くが機能していないと報道されている。我々が開発してきたアシドロ菌方式の家庭用処理機は3000台ほどが市場に出ているが、その8割は問題なく継続使用されている。その装置の微生物活動を評価し、それと表裏一体の形で機能している処理ソフトの方式を評価し、他の方式と比較検討することによって、より普遍的な高効率な処理方式を提案したい。今年度は同方式による生ごみ処理において機能する微生物群集の構造解析を中心として研究を進め、処理過程および処理産物の安全性評価を含めてアシドロ方式の総合的検証を行いたい。
K1513.高橋 惇:ダイオキシン類汚染水質・土壌の浄化バイオリアクター構築のための研究 |
物理化学的浄化手法に比べて低コストで環境調和型の微生物によるダイオキシン類汚染水質・土壌の浄化システムの構築を目指した研究開発を行っている。今までに、毒性が最も高い2,3,7,8-テトラクロロジベンゾパラダイオキシン等を分解する好気性好熱細菌であるBacillus
midousuji (SH2B-J2)菌株を獲得・権利化(United States Patent
6,190,903、日米欧に出願中)すると共に、ダイオキシン類浄化処理用バイオリアクターの開発(特開2002-301466)と性能評価を行ってきた。SH2B-J2菌株を利用する利点は、高度に塩素化されたダイオキシン類を分解できること、平均世代時間が約8分と早く、培養コストが低いことである。本提案は、保有するSH2B-J2菌株の増殖特性を生かしたダイオキシン類汚染水質・土壌のための浄化バイオリアクターの確立と実用化を目指すものである。

K1514.高岡 昌輝:焼却飛灰上での微量有機汚染物質の再合成における重金属の役割解明 |
ごみ焼却施設からのダイオキシン類等の排出総量を削減するためには、ガス冷却過程におけるダイオキシン類等の再合成を抑制するような技術が期待される。この再合成を生じさせないようにするためには、基礎的な知見を集積し、再合成メカニズムを明らかにする必要がある。多くの研究者がこの課題に取り組んできており、未燃分がその源で重金属は触媒作用を示すことが一般的に信じられているが、現実には飛灰中の重金属の存在状態すらほとんど知見がなく、重金属の詳細な役割についてはいまだ不明なところが多い。本研究では、大型放射光施設SPring-8においてX線吸収微細構造(XAFS)分析により飛灰中重金属の存在状態を明らかにし、さらに実際の温度およびガス雰囲気における重金属の存在状態の変化をとらえ、同条件でのダイオキシン類の再合成量を別途大学内実験室にて実験を行い把握することにより、再合成メカニズムにおける重金属の役割を解明する。

K1515.松藤 敏彦:シュレッダーダスト資源化・適正処理のための物理化学特性調査分析 |
資源循環型社会を目指してさまざまな資源化・処理技術の開発、応用が試みられているが、「残渣」の処理に困難を伴う場合がしばしばある。例えば廃棄物をスラグ化する溶融処理は、重金属濃度の高い溶融飛灰をいかに安全に処理あるいは資源化するかが課題である。本研究は、産業廃棄物の代表的な処理残渣であるシュレッダーダスト(SR)に注目する。自動車リサイクル法の施行によってカーシュレッダーダスト(ASR)の資源化を行う必要が生じたが、その特性に関するデータは少ない。また自動車以外にも、金属を含むさまざまな製品がシュレッダー処理されておりダストは多様である。本研究では、処理対象物、処理プロセスの異なるシュレッダー施設から試料を採取し、資源化、適正処理のための重要な情報となる組成、発熱量、金属含有量・溶出量などの物理化学特性、および時間変動を明らかにする。さらに、炭化処理による資源化の可能性、および自動車解体施設において回収される部品の組成、重金属含有量を分析することにより、部品回収による資源化および環境影響削減効果を評価する。

K1516.田中 勝:医療廃棄物の戦略的マネジメントに関する研究 |
医療廃棄物に関しては、ダイオキシン類対策特別措置法の規制強化により外部委託処理に頼らざるをえない傾向が強くなる一方、感染性廃棄物の解釈により各病院で多様な分類、処理が行われている。本研究では、一年目に医療廃棄物の最新動向調査、先進事例調査、科学的判断基準作成等により、国内医療廃棄物処理マニュアルを作成する。また、2年目以降は、そのマニュアルに基づいたモデル事業を実施し、実際適用した際の減量・費用削減の課題を抽出、対策を講じることにより、現場に即したマニュアル作成を目指す。また引き続き、科学的判断基準の為の試験を行う。
さらに、自治体の焼却施設への受け入れ、医療機器メーカーの拡大生産者責任、諸外国の動向を調査整理することにより、現行の処理方法にとらわれない医療廃棄物の戦略的マネジメントの策定を目的とする。

K1517.松野 裕:資源生産性等の生産・消費形態に関する指標の開発とその国際比較 |
本研究の目的は、国際共通目標を設定可能な生産消費形態の指標の開発およびそのための標準的なマテリアル・フロー会計の開発を通じて我が国及び国際社会における循環型社会・持続可能な社会の形成に貢献することである。
その方法は、各国・機関における研究状況等の情報収集および定性的・定量的な検討を通じた合意可能なマテリアル・フロー会計手法、それを用いた生産消費形態の指標の追求である。
こうした研究は人口・経済活動が今後ますます増大・活発化すると予想される地球社会の存続のために必要であり、客観的な知見の提供により生産消費形態に関する我が国・各国の取組及び対策のための国際的な合意形成に資する。
この種の研究は日米独蘭墺における共同研究やEU、OECDといった国際機関においても進められてきているが未だ途上にあり、本研究はマテリアル・フロー分析と経済学による学際的な取組で、この分野の研究を牽引しようとするものである。

K1518.
乙間 末廣:ビジネススタイルの相違による廃棄物排出抑制及び再生利用促進効果の検証と変革のための成立要件に関する研究 |
本研究は、製品ライフサイクル管理型のビジネススタイルあるいはその類似モデルにおける廃棄物排出抑制及び再生利用促進効果を明らかにするとともに、それがビジネスとして成立する条件、地域社会・日本経済に対してメリットとなる条件を明らかにする。
初年度は、既存の製品ライフサイクル管理型に属するビジネスの調査を通して、研究対象製品、対象ビジネススタイル別の廃棄物排出抑制及び再生利用促進効果の概要を明らかにする。また、消費者メリットのためのニーズ調査を行う。
次年度は、対象製品を拡大させる。さらに、ライフサイクルシミュレーションを実施し、製品ライフサイクル管理型ビジネススタイルを環境面、機能面及びコスト面から評価する。
最終年度は、地域社会及び日本全体の経済及び環境に対する影響を評価し、社会的メリットが成立する条件を明らかにする。

K1519.田路 和幸:下水処理場をモデルケースとした太陽光利用水素生産システムの構築 |
循環型社会形成の一翼を担うエネルギー生産/廃棄物排出抑制システムの構築を目指し、下水処理場をモデルケースとして、下水汚泥の減量化と有害廃棄物の排出抑制を図りつつ、処理場に流入する硫黄を循環利用しながら太陽光を用いたストラティファイド光触媒による硫化物イオンからの水素生産を行う連続プロセスを基本設計する。素材工学、材料化学、無機化学、生物工学、プロセス工学、環境工学の各部門の研究者、技術者を結集した研究チームを組織し、その有機的連携のもとで、高効率水素生産プロセスの確立、硫化物イオン再生、システムの最適化を3つの柱として、学術的な新規性も高い要素研究を展開する。本研究の成果をベースとして、下水処理場を核とした循環型の地域分散型エネルギー供給システムを構築することが可能となるとともに、硫黄廃棄物の大量発生源に転用することにより、大規模な水素生産プロセスの構築も可能となる。
K1520.田中 幹也:無電解ニッケルめっきにおけるミニマムエミッション化の研究 |
無電解めっきの中でも最も多用される無電解ニッケルめっきのミニマムエミッション化を達成するため、使用済みめっき液中のニッケルの分離回収技術、めっき液の繰り返し使用にともなってめっき液中に蓄積する不純物金属イオンや亜りん酸の選択除去によるめっき液の長寿命化技術を確立する。
具体的には、申請者らが特許出願中である混合抽出剤を用いて、ニッケルの溶媒抽出連続処理実験を行い、その有用性を実証するとともに、抽出機構を解明する。また、申請者らが特許出願中である溶媒含浸繊維を用いて、めっき液中の鉄や亜鉛といった不純物金属イオンを選択除去し、めっき液寿命を延ばす技術を開発するとともに、溶媒含浸繊維による金属の除去機構を明らかにする。さらに、吸着法や沈殿法を用いて亜りん酸を選択除去し、めっき液の長寿命化を図る技術も開発する。

K1521.松崎 邦男:廃棄物に係るダイオキシン類等分析の体系化に関する研究 |
研磨スラッジ産業廃棄物は極めて微細で砥粒や研磨液を含んでいる等の問題があり、これまで有効な再資源化技術が確立されておらず、年間約720トン以上も廃棄処分されている。本研究開発は、研磨スラッジについて、プレスレス精製処理技術、プラズマ溶射法による粉体化技術、再溶解技術の開発を行い、有効な再資源化技術の確立を図るものである。また、粉末成形及法及び粉末射出成形法による研磨スラッジの成形技術の開発を行うとともに、金型部品、微細形状部品を試作・試験を行い、研磨スラッジの利用技術の確立を図る。
本年度は、研磨スラッジの溶媒洗浄、CO2超臨界による精製処理技術を開発し、研磨スラッジの研磨液含有量8%以下を目指すとともに、研磨スラッジのプラズマ溶射装置を試作し、球状粉末化するための最適条件を明らかにする。また、研磨スラッジの粉末成形及び金属粉末射出成形を行い、成形条件を明らかにする。

K1522.平石 明:固相バイオリアクターによる廃棄物処理 |
本研究は、ダイオキシン等の有害作用を有する難分解性化学物質で汚染された環境および廃棄物の除染・無害化へ向けた環境技術開発を目標とする。これまで申請者らは、処理環境や処理物の再利用のしやすさという観点から生物学処理技術の適用を考え、平成11-13年度において「生物学的ダイオキシン分解技術の開発研究」を遂行した。その結果、ダイオキシン汚染土壌や焼却灰を生物系有機廃棄物と混合した場合、複合微生物群集によって比較的効率よくダイオキシンが分解除去される事実を見いだした。このような固相微生物反応系は、今後、汚染化学物質を含有する廃棄物の処理に有望な基盤技術となり得ることが示唆される。本研究では、この知見を踏まえて固相微生物反応の生化学的機構と生態学的特性を明らかにし、固相バイオリアクターによる有害化学物質と生物系有機廃棄物の同時処理を可能にしたハイブリッド型廃棄物処理技術の確立を目指す。

K1523.古市 徹:焼却灰中のダイオキシン類を対象とした微生物分解技術の開発に関する研究 |
焼却処理により発生するダイオキシン類(以下、DXNs)への国の一連の対策により、今後発生するDXNsへの国民の不安は軽減されつつある。しかし、過去の遺産としてのDXNsによる環境汚染リスク、つまり、焼却灰の野積み等の不適切な管理を行ってきた焼却炉周辺土壌、焼却灰・飛灰の混合物を受け入れてきた最終処分場(特に、遮水工等がない不適正最終処分場)や周辺地下水は、環境基準を超えて汚染されている可能性がある。このような汚染が発見された場合には、直ちに対策を講ずる必要があるが、物理化学的な既存のDXNs処理技術は、高コストで二次汚染の可能性がある。したがって、本研究では、不適正最終処分場の焼却灰や解体焼却炉周辺土壌中DXNsの微生物分解処理技術を開発し、その実施可能性を検討する。特に、実際の汚染現場を想定し、汚染の特徴や地域条件等を考慮して、撤去処理の場合のリアクター処理技術と囲い込みによる原位置攪拌処理技術を組み合わせた修復プロセスの設計条件を明確にする(添付図参照)。
K1524.松山 喜代志:PCB廃棄物の一貫処理システムの安全性、信頼性向上に関する研究 |
本研究は、今後実稼働するPCB廃棄物の一貫処理システムの安全性,信頼性の向上を図るため、以下の研究課題に取り組むものである。PCBの化学分解プロセスは金属固体粒子と液相物との反応系からなり、混合、拡散、伝熱、重合反応等数多くのプロセスを経て進行する。このため秩序よく安全にプロセスを操作するために反応機構、反応速度並びにPCBから分離される塩素の挙動解明など技術的,学術的研究を行い、暴走反応の抑制や非意図生成物の生成抑制等プロセスの信頼性向上を行う。また反応により生成する塩素やビフェニール等の分解生成物の拡散、混合、消失等を解明し、その処理方法を検討することで、一貫したPCB無害化、安全処理のプロセスを構築する。さらに処理系外に移動するPCB並びに生成物の排出量管理を迅速かつ簡易に管理、監視するモニタリング技術を研究し、PCB処理一貫システムの信頼性を確保し、住民の安心向上を図る。

K1525.高松 武次郎:次世代技術利用金属の環境溶出特性と土壌中動態の解明に関する研究 |
近い将来、エレクトロニクス産業などで多用され、それにともなって環境負荷量が急増すると予想される銀、ビスマス、インジウム、アンチモンなど(次世代技術利用金属)の溶出特性、土壌中動態、および土壌微生物影響を解明するために以下の検討を行う:
1)降雨に暴露された金属の可溶化機構を雨の化学特性(pH、溶存イオン・元素、溶存有機物など)との関連で検討する;
2)土壌に埋設された金属の可溶化機構を土壌特性(土壌種、土壌層位、pH、Eh、pFなど)との関連で検討する;
3)土壌に負荷された金属の動態(集積、移動、地下浸透、形態変化など)を土壌条件(土壌種、土壌の物理・化学特性など)や降雨条件との関連で検討する;
4)微生物影響(毒性)を微生物のバイオマス、活性、及び群集構造(多様性)の3側面から検討する;
5)1)から4)の結果を総合し、次世代技術利用金属による土壌・地下水汚染の可能性を予測するとともに土壌生態系影響の評価を試みる。

K1526.中村 崇:臭素系ダイオキシン類の生成および排出抑制に関する基礎的研究 |
本研究では、臭素系ダイオキシン類およびその類縁化合物の物理化学的物性値の測定を行い、焼却処理過程や循環廃棄過程からの環境中への排出防止対策の科学的基盤とする。具体的には、蒸気圧の測定、量子化学計算による熱力学データの決定、水への溶解度、オクタノール/水分配係数ならびにヘンリー定数の測定を行う。さらに、環境動態モデルを用いて環境中での分布挙動を検証する。三年計画の二年目に当たる本年度は、(1)臭素系難燃剤ならびに類縁化合物、臭素系ダイオキシン類異性体の蒸気圧測定、(2)量子化学計算による臭素化塩素化ダイオキシン類の熱力学的データの計算、(3)
熱力計算による燃焼排ガス中における臭素系ダイオキシン類の挙動シミュレーション、(4)水への溶解度・オクタノール/水分配係数の測定ならびに活量係数によるヘンリー定数の導出、(5)UNIFACモデルによる臭素系ダイオキシン類縁化合物の物理化学パラメータの推算を行う。

K1527.谷口 初美:廃棄物処分場のバイオ評価に関する研究 |
アメリカのスーパーファンド法にならい、日本でも土壌汚染の修復技術開発や、汚染の責任所在及び浄化義務を強化すべきとの風潮が高まりつつ有る。理化学的な土壌成分検査のみならず、土壌中の微生物叢の解析技術は今後増々重要になると考えられる。培養不能なviable
but nonculturable (VBNC)
な細菌をも含む全体の菌叢を遺伝学的手法を用いて評価するシステムは、廃棄物処分場の安定化における微生物学的な指標としてだけでなく、様々な汚染土壌の汚染度指標としてや、バイオレメディエーションへの応用等幅広い利用が期待される。本研究は、廃棄物処分場の有害化学物質に対する従来の理化学的分析・評価方法に、処分場の微生物叢全体の動態を網羅的に分析・評価する方法を新たに開発・導入する事により、処分場の危険度予測、安定化評価を可能にする事を目的とする。

K1528.鈴木 茂:不法投棄廃棄物等に含まれる化学物質の包括的計測手法の開発に関する研究 |
不法投棄等による発生起源、化学組成の不明な廃棄物の処理・処分と汚染地域の原状回復、処理後の経過観測等に資するため、廃棄物等に含まれる化学物質の包括的計測システムを開発する。このシステムは、応急対応策のため短時間に廃棄物に含まれる化学物質の概要を把握する「即応フェーズ」、最終的処理方法決定、処理後の経過観測等のため廃棄物の化学物質組成を詳しく分析する「精密フェーズ」で構成される。即応フェーズでは、廃棄物の毒・劇性等応急対応に関する安全確認指標、含有する化学物質の化合物群などを迅速かつ簡易に検知する分析システムを開発する。精密フェーズでは、廃棄物中の主要な化学物質を分離し同定するシステムで、廃棄物中化学物質の9割以上を占めると言われるながら従来分析できなかった難揮発性化学物質を含む系統分析法を開発する。

K1529.斎藤 祐二:リグニン分解酵素を含む培養液を用いた焼却灰中ダイオキシン類の分解に関する研究 |
難分解化学物質の微生物による分解が注目されており、ダイオキシン類についても分解能を有する微生物が数多く報告されている。特に、木材腐朽菌の一種である白色腐朽菌が生成するリグニン分解酵素は、基質特異性が低いためにダイオキシン類を始めとする様々な化学物質を分解することが報告されている。我々は、日本国内の森林から数千株の白色腐朽菌を分離しパルプ脱色性に優れる株を選抜した。さらに、選抜株の増殖特性および生成するリグニン分解酵素を評価した。その結果、増殖と酵素活性の優れる株の絞込みに成功し、これらを用いたダイオキシン類汚染物質処理への適用を検討している。本研究では、環境影響の少ない新しい処理技術の確立を目指し、選抜した白色腐朽菌の培養液(部分精製酵素液)を用いた焼却灰中ダイオキシン類の分解・無害化方法を検討する。

K1530.山口 光恒:拡大生産者(EPR)に関する費用便益・リスク便益分析 |
拡大生産者責任(EPR)の原則を適用した政策の評価を行うために、なぜEPRの原則がとられるかという根拠を理論的に明らかにし、それを実証する。

K1531.山田 正人:最終処分場管理における化学物質リスクの早期警戒システムの構築 |
環境汚染源であるという疑念により設置や運営が困難となっている最終処分場において、より予防的かつ効率的なリスク管理のための現場監視ツールとして、細菌や環境生物を用いたバイオアッセイやバイオモニタリング等の「複合毒性パラメータ」の適用を考え、バイオセンサー等として現場用に簡易自動化するとともに、これらを用いて問題となる有害化学物質群を絞り込み、また施設の構造、運営方法また公害防止施設がリスク削減に与える効果を評価したうえで、施設の状況に対応した監視手法の組み合わせ(テストバッテリー)と、監視結果より合理的な対策発動を行うための基準値(アクションレベル)を設定することとにより、最終処分場における監視技術と予防的対策を総合化した「早期警戒システム」を構築することを目指す。

K1532.後藤 元信:超臨界二酸化炭素抽出法による固体廃棄物中の重金属類の除去技術 |
本研究では環境低負荷の超臨界二酸化炭素を溶媒としてキレート剤を用いることにより、固体廃棄物中に存在する重金属類を効率的に除去し、回収するシステムを構築する。超臨界二酸化炭素に重金属は溶解しないが、錯体を形成させるためにキレート剤を導入することで、重金属類の効率的な抽出が可能となる。本プロセスでは有機溶媒や水を用いないため、環境への2次汚染を防ぐことができる。また、超臨界流体は優れた物質移動特性を有している為、固体廃棄物中の細孔に容易に浸透し、効率的に重金属類を回収することができる。
対象物質としては、焼却飛灰、再生が困難な使用済み廃触媒、土壌など重金属含有の固体廃棄物あるいはそのモデル物質を用いる。また、キレート剤はプロセス内でリサイクルされるため、低コストで環境に低負荷のプロセスとなる。

K1533.島岡 隆行:埋立処分量削減を目的とした焼却残さの土木資材化と環境負荷低減技術 |
資源・エネルギーの枯渇,それらを確保するに伴う環境破壊などを背景に,循環型社会の一日でも早い構築が望まれている。また,新設の最終処分場用地の確保が困難であることから,最終処分量を減少させることが迫られている。これらを受け,焼却処理を単なる廃棄物の減容・サーマルリサイクルと位置づけるだけではなく,清掃工場を骨材製造プラントとして位置づける。廃棄物は「原料」に相当し,清掃工場は「骨材工場」,焼却灰は「製品(骨材)」に相当することになる。今年度は,(1)焼却対象廃棄物の性状からの焼却灰の性状予測,(2)焼却灰の有効利用に伴う環境負荷低減化技術として,清掃工場の高温・高圧蒸気を利用する水和熱処理の実証試験,(3)水和熱処理に伴う重金属不溶化の現象解明と最適処理条件の決定,(4)高度跡地利用,早期安定化を可能とする焼却灰の埋立用材としての利用を図る海面埋立システムの開発に関する研究を行う。

K1534.
稲森 悠平:生活排水処理システム浄化槽の窒素除去の律速因子となる硝化細菌の迅速測定・高度処理・維持管理技術の開発 |
高度処理浄化槽は富栄養化対策としての重要な位置づけにあるが、アオコ、赤潮の藻類増殖の制限因子である窒素を除去する上では、律速反応を支配する硝化細菌の個体群動態を迅速に検出することが維持管理対策上極めて重要である。このことから、本研究事業では「生活排水処理システム浄化槽の窒素除去の律速因子となる硝化細菌の迅速測定・高度処理・維持管理技術の開発」を行うこととし、初年度では従来よりブラックボックスとして扱われてきた生物処理反応槽の維持管理の適正化に資する分子生物学的手法を用いた硝化細菌の迅速検出技術の確立化を行い、基盤を構築することができた。本年度は、確立化された硝化細菌迅速測定手法および活性モニタリング技術を活用し、簡易かつ迅速な硝化細菌の測定技術の確立に基づく現場対応に資する効率的な維持管理技術と同時に新設型高度処理浄化槽のシステム化、既存型単独・合併処理浄化槽の高度処理化を図る上での微生物機能からの改善手法を構築する。

K1535.井上 雄三:バイオ指標導入による最終処分場の安定化促進技術の評価 |
既存処分場への安定化促進工法導入や実証規模型安定化促進モデル埋立槽による実験から、既存の物理化学的モニタリングによる安定化挙動と微生物群集との関連について検討し、処分場の安定化を判定する新たな指標(バイオ指標)提案する。また、近年の既存安定型処分場の安定化(硫化水素発生抑制)評価へのバイオ指標導入を検討する。さらに、既存最終処分場の埋立物サンプルや浸出水の微生物生態調査を行い、効果的な微生物群集モニタリング手法を確立するとともに、安定化過程における微生物学的な知見の集積と体系化を行う。また、微生物の有効利用の観点から維持管理の適正化を図る。すなわち、最終処分場における安定化を、[1]含有有機物の分解・安定化、[2]無機物の溶出による安定化、[3]有害物質の視点から見た安定化、[4]構造的安定化と捉え、主要な安定化因子が含有有機物の生物分解反応であるとして、安定化促進技術導入処分場の最適制御手法を構築する。

K1536.朝倉 祝治:溶融飛灰中の重金属の分離除去技術の開発 |
近年、廃棄物の減容化、重金属の固定化、ダイオキシンの分解処理の目的から、焼却灰をスラグ溶融して建築材料としてリサイクルされはじめている。しかしながら、スラグ溶融することによって排出される飛灰には特定の重金属が濃縮されるなど問題点も多く通常の還元リサイクルが行えず、不溶化埋め立て処理されているのが実情である。本研究では、リサイクルによって回収されたアルミニウムや、有害な廃棄物を吸収させた活性炭などを利用し有害な廃棄物を分解すると同時に飛灰中に含まれる鉛などの有害な重金属を還元し、有価金属として分離することで、溶融飛灰の安全かつ適正な処理方法の開発を行うことを目的とする。本研究が商業規模で実現すれば飛灰中の重金属を有価金属としてリサイクルできるだけでなく、従来まで埋め立てられていた飛灰についても建築材料等へのリサイクルが可能となる。なお、研究の進捗状況と変更点については別紙に記載した。

K1537.
秋山 友宏:廃アルミを原料として、水素、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどを製造するプロセスの開発と、その評価のためのエクセルギー概念に基づくライフサイクルアセスメント(LCA)手法の開発 |
本研究は、以下の2項目のから構成される。
(1)廃アルミニウムから水素等を製造する技術の開発:廃アルミはエネルギーの塊と言われ、数多くの特許が出されているが、実際にエネルギーとして回収し、産業界に有効活用する技術は確立されていない。本研究では廃アルミと廃石灰または廃苛性ソーダ等アルカリ溶液での反応により、エネルギー源となる水素、且つ副生成物として生み出される付加価値の高いアルミン酸ナトリウム並びに水酸化アルミまたはアルミン酸カルシウムなどを高効率にて回収するシステムを開発する。
(2)エクセルギー概念による、評価手法の開発:上記技術の環境保全に対する効果を、関与する全熱量による単純評価に基づくLCA(従来型LCA)と、外部に有効エネルギーとして取り出して利用できるエネルギーであるエクセルギーに基づくLCA(ELCA)の2つの手法によって評価する。後者による評価は、手法自体が未開発であり、本研究ではそのELCAの開発も行う。

K1538.野村 春治:リサイクルにより劣化した古紙パルプ繊維のナノ粒子化による新規資源循環システム構築に関する研究 |
リサイクルにより劣化した古紙パルプ繊維は、回収された古紙の約30%にものぼり、現在は大部分が焼却されている。これを微粉砕ナノ粒子化し、機能性材料として再生利用するシステム構築を本研究の主目的とする。ここで、古紙の主成分であるセルロースは、粉砕しても水素結合により直ちに再凝集しナノ粒子化が困難であるため、再凝集を阻止する方法について検討する。この際、ナノ粒子径を非破壊でリアルタイム測定するラマン分光システムを新たに開発し付加することにより、生成する粒子径を制御する。これによりナノ粒子の特徴を生かした製品、例えば、熱成型による生分解性透明複合樹脂材料を試作する。以上のことから、新規な資源循環システムの構築を目指す。また、これにより大気中への二酸化炭素の放出が大幅に削減されることが見込まれ、地球の温暖化防止にも貢献すると考えられる。

K1539.森口 祐一:耐久財起源の循環資源の適正管理に関する研究 |
既に建設解体廃棄物や耐久消費財は、廃棄物発生量に大きな割合を占めているが、今後、自動車や家電製品といった耐久消費財や、建造物や生産設備といった固定資本などストックとして蓄積された財が寿命を終えた段階で生じる循環資源・廃棄物はますます重要度を増すと考えられる。そこで本研究は、こうした耐久財起源の循環資源に焦点をあて、マテリアルフロー分析や統計的手法等を用いて耐久財起源の循環資源の発生量を予測する手法や、循環利用可能な物質、有害・適正処理困難な物質など耐久財の物質構成を把握する手法を開発し、質的側面を考慮した発生量予測を主要耐久財について行うとともに、これらのリサイクル・適正処理促進のための技術、経済的手段、法制度等について検討することにより、循環型社会形成に資する知見を提供することを目的とする。

K1540.寺園 淳:アジア地域における資源循環・廃棄の構造解析 |
本研究は、アジア地域における日本発の国際的な資源循環の構造を解明し、日本の輸出と関係のある相手国での環境汚染を解明及び防止することを目的としている。そのためにまず、アジア地域における国ベースでの既存の廃棄物や資源の統計情報を収集し、経済・法制度などの背景を分析する。次に、家電製品・プラスチックなどを対象として、アジア地域における静脈系フローを推計しながら、処理処分における環境汚染事例を質量両面から調査する。最後に、廃棄側の隠れたフローを加味した、日本とアジア地域における資源循環の構造を明らかにする。これらの作業により、持続可能な資源循環のあり方を議論するために必要な情報を提供する。本研究は途上国を含めた廃棄物・資源循環分野の国際共同研究を立ち上げるものであり、3年間は情報基盤整備のためのプラットフォームづくりに向けて、年に一回の国際ワークショップを日本で開催する。

K1541.中村 修:食品リサイクルにおける社会技術の開発・研究 |
本研究では、食品リサイクル事業を地域環境・経済・農業回復のための重要な戦略として展開する。つまり食品リサイクル事業によって、その地域に様々なメリットをうみだす。実際に、我々は福岡県三潴郡大木町を実証フィールドとしてここ数年、循環のための様々な社会技術の開発をおこなってきた。安価でシンプルでかつ地域に利益をもたらす循環のありようを探ってきた。バイオガスプラントの簡素化、バイオガスプラント由来の液肥を水田で利用、農産物の地場産利用、循環のための地域通貨の開発などである。食品リサイクルを実施する上でもっとも効果的で有効な、バイオガスプラント由来の消化液を水田で液肥として利用する技術の実証研究と環境評価を中心におこなう。日本各地にある広大な水田を利用する本技術が開発・実用化されることで、停滞する食品リサイクル事業は大きく展開することが可能になる。

K1542.後藤 純雄:木材系廃棄物の利用法の拡大に関する研究 |
木材系廃棄物の利用法を拡大するため、炭化物や炭化物複合材などの作製法について検討し、その有効利用法についても検討を加える。即ち、種々の再生製品(炭化物等)を試作しその加工、製造法や利用法拡大について検討するとともに、それらの使用時や最終処分時における人体又は環境の安全性を確保するため、木材系廃棄物や再生製品中に含まれる有害物質の挙動について検討を加える。また、有害物質の挙動や特性に応じた有害物質の除去法の作成、更に開発した再生製品の有用性や安全性などの確認やリスク評価に資するための小規模なモデル試験を実施する。特に、炭化物の室内での利用を想定し、室内汚染物質の吸着除去効果などについての検討を加える。

K1543.民谷 栄一:新規ガス滅菌システムによる感染性廃棄物の適正処理法及びリサイクル技術に関する研究 |
本大学、産総研、企業による産学官共同研究により開発された新規ガス滅菌法であるMRガス滅菌システムは、画期的なシステムであり、酸化エチレンガスの代替システムの最右翼と評価されている。唯一の既存ガス滅菌法であり、その使用が問題となっている酸化エチレンガスの問題点をことごとく解決している。
酸化エチレンガスよりも強い殺菌力、材質への無腐食・無残留性により初めて精密機器への適用が可能となった。コストパフォーマンスの高さというその優れた特性を利用し、医療廃棄物、遺伝子増幅廃棄物等のバイオハザードを惹起する感染性廃棄物への適正処理技術の研究、更には医療機器・器具等の適正滅菌処理を視野に入れ、安全な再利用技術の研究を行う。

K1544.武政 剛弘:新燃焼方式よるダイオキシンフリーの小型焼却炉の開発 |
本研究においては水性ガス反応と旋回流燃焼による燃焼メカニズムを解明し、2002年に完全施行されたダイオキシン類の排出基準(新設の大型炉に対し0.1ng/Nm3)を完全にクリアーする新型の小型焼却炉を開発する。
具体的には、小型実験炉及び排ガス処理装置を製作し、燃焼メカニズムの解明と、最適燃焼条件の把握を行い、廃棄物の無害化処理技術を確立する。
本研究の小型焼却炉が開発できれば、廃棄物焼却に伴うダイオキシン類の発生の抑制に大きく寄与することができ、廃棄物の発生量の増大、埋立処分場逼迫の問題の解決にもつながるものと考える。また、2002年以降の法規制により、現在保有中の焼却炉の自主廃止の危機に晒されている中小企業にとっては、非常に有効な焼却炉となり、極めて市場性も高くなると考えられ、廃棄物処理業界の救世主となりうる。

K1545.樋口 壮太郎:埋立地再生総合技術システムの開発 |
最終処分場は、循環型社会を目指す基盤事業として欠くことのできないものである。しかし、新規の立地は極めて困難な状況におかれている。循環型社会形成基本計画には最終処分量を平成22年度までに25%(平成2年比)にする目標が示されており、循環型社会のイメージの中に既存処分場の再生利用をあげている。この様な背景のもと、既存処分場の再生利用技術の開発が望まれている。現在の知見・基準からすると、[1]環境保全上の機能回復を必要とする処分場、[2]処分場の活用可能な土地への修復、[3]汚染土壌の浄化を必要とする処分場などがあり、これらに対して[4]新しい技術を適用すれば上記問題が解決するだけでなく新たに埋立容量の確保が可能と考えられる処分場(延命化)が存在する。こうした、既存処分場を対象に多様な埋立廃棄物層の特性、性状に適応した再生技術を検討し、埋立地の再生に係る総合技術システムを確立するものである。
