「平成14年度廃棄物処理等科学研究費補助金」
に係る交付対象研究等の決定について
環境省では、廃棄物に係る諸問題の解決及び循環型社会形成に資する研究・技術開発を推進する目的として、競争的資金である廃棄物処理等科学研究費補助金制度を導入し、本年度は「廃棄物処理に伴う有害化学物質対策研究」、「廃棄物適正処理研究」、「循環型社会構築技術研究」の3つ分野で公募を行い廃棄物処理等化学研究企画委員会(推進事業)、廃棄物処理対策研究審査委員会(研究事業)による評価を得て、交付対象が決定されました。
1,交付決定した研究
2,交付決定した推進事業
法人名 |
推進事業名 |
概要 |
日本環境衛生センター |
廃棄物処理等科学研究及び 次世代廃棄物処理技術基盤 整備事業の成果発表等 による普及・推進事業 |
(1) 成果発表会の開催 |
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[1] |
開催予定時期 |
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平成14年9~10月 2日間、2回(延べ4日間) |
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[2] |
発表対象 |
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平成13年度廃棄物処理等科学研究費及び次世代廃棄物処理技術基盤整備事業の各補助金により行われた研究等の成果 |
(2) 日本人研究者の国際会議等派遣 |
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日本人研究者を廃棄物関連の国際会議等に派遣して最新の情報や知見を入手し、成果 発表会で報告することにより周知を図る。 |
(3)成果発表会や国際会議等の報告内容及び研究成果に関する情報をインターネットやその他の広報媒体を通じて広く発信し、廃棄物処理等科学研究の推進を支援する。 |
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3,廃棄物処理対策研究審査委員名簿(50音順)
氏 名 |
所属・職名 |
浅野 直人 |
福岡大学法学部教授 |
飯野 靖四 |
慶應義塾大学経済学部教授 |
市川 陽一 |
(財)電力中央研究所狛江研究所大気科学部上席研究員 |
占部 武生 |
東京都環境科学研究所廃棄物研究室副参事研究員 |
小林 康彦 |
(財)日本環境衛生センター専務理事 |
寺嶋 均 |
(社)全国都市清掃会議技術部担当部長 |
中杉 修身 |
独立行政法人国立環境研究所化学物質環境リスク研究センター長 |
永田 勝也 |
早稲田大学理工学部教授 |
中野 加都子 |
神戸山手大学人文学部環境文化学科助教授 |
花嶋 正孝 |
福岡県リサイクル総合研究所センター所長 |
原 雄 |
千葉県環境研究センター廃棄物・化学物質部部長 |
平岡 正勝 |
京都大学名誉教授、立命館大学エコ・テクノロシ゛ー研究センター長 |
藤田 賢二 |
(財)水道技術研究センター会長 |
森田 恒幸 |
独立行政法人国立環境研究所社会環境システム研究領域長 |
森田 昌敏 |
独立行政法人国立環境研究所総括研究官 |
4,廃棄物処理等科学研究企画委員名簿(50音順)
氏 名 |
所属・職名 |
田中 勝 |
岡山大学大学院自然科学研究科教授 |
中島 尚正 |
放送大学東京多摩学習センター所長 |
西岡 秀三 |
独立行政法人国立環境研究所理事 |
平岡 正勝 |
京都大学名誉教授、立命館大学エコ・テクノロジー研究センター長 |
○ 研究の概要
K1401.山口 光恒:拡大生産者責任(EPR)に関する費用便益・リスク便益分析 |
拡大生産者責任(EPR)は、今や世界の廃棄物政策の中心的課題となりつつある。日本でも1997年施行の容器包装リサイクル法、2001年施行の家電リサイクル法など、この概念を取り入れた立法が行われている。OECEにおいても1994年以来検討が進められ、2001年3月に加盟国政府に対するガイダンスマニュアルが刊行されたところである。2000年度に共同研究者の1人である山口光恒が本補助金を得て(当時は単独研究で)EPRの経済分析を実施した(「EPR経済分析序論」)が、これは序論の段階である。EPRの経済分析は今後ますます重要になるので、3年間かけて共同研究を進める。初年度(2002年度)は、EPRを適用した政策の評価を行うために、EPR政策に特有の費用便益分析の目的を明らかにし、その結果に基づいた本格的な費用便益分析のために必要な数値を計測した。2年目は、具体的な政策を取り上げて、上記の目的に添った費用便益分析を行う。3年目は用いる数値の精緻化と改良を行う。

K1402.稲森 悠平:生活排水処理システム浄化槽の窒素除去の律速因子となる硝化細菌の迅速測定・高度処理・維持管理技術の開発 |
閉鎖系水域としての湖沼、内海、内湾における富栄養化対策として、高度処理浄化槽が極めて重要な位置づけになってきている。特に、生物反応によりアオコ、赤潮の藻類増殖の制限因子である窒素を除去する上では、硝化・脱窒の律速反応を支配する硝化細菌の個体群動態を迅速に検出することが維持管理対策上極めて重要である。このことから、従来よりブラックボックスとして扱われてきた生物処理反応槽の維持管理の適正化に資する分子生物学的手法を用いた硝化細菌の迅速検出法の技術開発を開発途上国を視野に入れて行う。すなわち、本研究ではFISH法やPCR-DGGE法等の分子生物学的手法を導入し生物処理反応槽内における硝化細菌の個体群動態の解析を行い、簡易かつ迅速な硝化細菌測定技術の確立に基づく現場対応に資する効率的な維持管理技術と同時に既存型単独・合併処理浄化槽の高度処理化を図る上での微生物機能からの改善手法を構築する。

K1403.古市 徹:焼却灰中のダイオキシン類を対象とした微生物分解技術の開発に関する研究 |
焼却処理に伴って発生する有害化学物質の一つであるダイオキシン類(以下、DXNs)への一連の施策により、DXNsに対する国民の不安も軽減されつつある。しかし、昨年度の研究で我々は、焼却灰の野積み等の不適切な管理を行ってきた焼却炉周辺土壌及び焼却灰と飛灰の混合物を受け入れてきた最終処分場(特に、遮水工等がない不適正最終処分場)の廃棄物や周辺地下水は、基準を超えて汚染されている可能性があることを示した。このような汚染が発見された場合には、直ちに対策を講ずる必要があるが、物理化学的な既存のDXNs処理技術は、高コストで二次汚染の可能性が指摘されている。したがって、本研究では、不適正最終処分場の廃棄物や解体焼却炉周辺土壌中のDXNsを微生物分解する処理技術の開発を行う。昨年度は、我々が発見した菌を用いたリアクター試験により、スケールアップした条件でも土壌中DXNsの分解が可能であることを示した。今年度は、汚染現場の修復のための実用的な微生物処理技術の具体化を図る。特に、撤去処理を想定したバイオリアクター処理と囲い込みを前提としたバイオレメディエーション処理技術について、撤去や囲い込みに必要な土木工法の検討とともに行う。さらに、昨年度の研究成果を踏まえ、分解機構の解明のための中間生成物質の把握を行うと共に、実用化に向けた酵素・遺伝子解析と菌体の安全性評価を行う。

K1404.藤嶋 昭 :下水処理場における内分泌攪乱化学物質の固定化酸化チタン光触媒による分解除去 |
下水処理場で分解除去が困難な17β-エストラジオール、エストロンやエチニルエストラジオールなどの内分泌攪乱化学物質を処理することが緊急の課題になっている。水中で目開きフッ素樹脂PTFEシートを密に充填した固定化酸化チタン光触媒-往復運動方式では、従来の方法と比べ、より速く分解除去できる。実用化をめざした光触媒分解の水処理装置を下水処理場に設置し、最終放流前の水を、処理装置に入れて、長期間分解する実験を行う。長期間運転後も安全なレベル以下に分解除去ができているか、水中の微量のエストロゲンの濃度をRIA(ラジオイノムアッセイ)法により測定する。光強度や固定化酸化チタン光触媒シートの間隔、往復運動の速度などに関する装置コストと、分解速度との関係を調べる。分解後の水について、メダカを使ってビテロジェニンが生成しないか安全性のチェックを行う。

K1405.齋藤 健:遺伝子工学的手法による残留ダイオキシン類の低減化法の開発 |
近年、内分泌撹乱化学物質の一種であるダイオキシン類(ダイオキシン、ジベンゾフラン、コプラナーPCB)による環境汚染は、ヒトの発癌及び催奇形成の原因と考えられており、さらに世代を超えた影響をもたらす恐れがあることから、深刻な社会問題になりつつある。その環境中への汚染は、大気、土壌等のみならず、そこに棲む動植物を通じて、食品中にまで広がっている。特にダイオキシンはその化学的構造上、脂溶性であるため食物連鎖の過程で濃縮が進みやすく、魚介類、肉・卵類では比較的高濃度に蓄積されており、現状の暴露レベルは、健康リスク評価指針値に比べ十分に低いとは言えない。そのため、ダイオキシンに高感受性である胎児や乳幼児への安全性を確保する観点から、今後一層ダイオキシン類による汚染状況を詳細に把握し、環境中濃度の低減を図ることが現在、最も重要な課題とされている。そこで、本研究事業においては残留ダイオキシンのモニタリングシステムおよび低減化システムを遺伝子工学的手法を用いて同時に行う方法を考案した。

K1406.松藤 康司:最終処分場におけるダイオキシン類の抑制と環境安全性向上に関する研究 |
焼却灰等に含まれる最終処分場に持ち込まれたダイオキシン類を環境に放出させぬよう適切にコントロールし、さらには処分場の安定化を促進して安全性を向上させる手法を開発する。具体的には、以下の研究を行う。[1]処分場内のダイオキシン類の長期的挙動の解明 [2]処分場内のダイオキシン類の分解促進と安全性向上の手法の開発 [3]浸出水のダイオキシン類濃度管理と処理技術の開発 [4]埋立処分場閉鎖時のダイオキシン類に関する評価手法の開発 [5]ダイオキシン類に関する安全性向上・負荷低減を考慮した埋立システム、処分場設計(案)の策定。
年次計画としては、初年度より着手している[1][2][3]の研究及び2年度目から着手している[4]の研究の成果を加え、3年度目は特に、安全性向上及びその評価手法と設計(案)を考え、[5]を開始するとともに、総合とりまとめを行う。

K1407.酒井 伸一:非制御燃焼過程におけるダイオキシン類等の残留性有機汚染物質の生成と挙動 |
本研究は、非制御下の燃焼過程からの残留性有機汚染物質(POPs)の生成と挙動に種々の検討を加えるものである。具体的には、1)非制御下の燃焼過程から発生するPOPsの生成に関する実証的研究、2)POPsの環境進入と挙動に関する研究、を中心に検討する。1)の非制御燃焼過程に関する研究では、廃棄物埋立場の自然発火現象に関し、東南アジアをフィールドとして発生と影響に関する調査を行う一方、非制御下の燃焼過程からの発生と生成挙動を把握するための燃焼試験を実施する。2)の環境挙動研究では、非制御下の燃焼過程からの残留性有機汚染物質の生成は、物質文明の展開が顕著となった1世紀以上前から存在したものと考えられ、底質コアの年代特定研究から、POPsや重金属類の歴史トレンド解析に取り組む。POPsの底質蓄積と環境動態解析を行い、また海棲哺乳動物に含有されるPOPsの時系列変化をあわせて考察する。

K1408.鈴木 茂:不法投棄廃棄物等に含まれる化学物質の包括的計測手法の開発に関する研究 |
不法投棄等による発生起源、化学組成の不明な廃棄物の処理・処分と汚染地域の原状回復、処理後の経過観測等に資するため、廃棄物等に含まれる化学物質の包括的計測システムを開発する。このシステムは、応急対応策のため短時間に廃棄物に含まれる化学物質の概要を把握する「即応フェーズ」、最終的処理方法決定、処理後の経過観測等のため廃棄物の化学物質組成を詳しく分析する「精密フェーズ」で構成される。即応フェーズでは、廃棄物の毒・劇性等応急対応に関する安全確認指標、含有する化学物質の化合物群などを迅速かつ簡易に検知する分析システムを開発する。精密フェーズでは、廃棄物中の主要な化学物質を分離し同定するシステムで、廃棄物中化学物質の9割以上を占めると言われるながら従来分析できなかった難揮発性化学物質を含む系統分析法を開発する。

K1409.武政 剛弘:新燃焼方式よるダイオキシンフリーの小型焼却炉の開発研究 |
本研究においては水性ガス反応と旋回流燃焼による燃焼メカニズムを解明し、2002年に完全施行されるダイオキシン類の排出基準(新設の大型炉に対し0.1ng/Nm3)を完全にクリアーする新型の小型焼却炉を開発する。
具体的には、小型実験炉及び排ガス処理装置を製作し、燃焼メカニズムの解明、最適燃焼条件の把握、排ガスの無害化処理技術を確立する。
本研究の小型焼却炉が開発できれば、廃棄物焼却に伴うダイオキシン類の発生の抑制に大きく寄与することができ、廃棄物の発生量の増大、埋立処分場の逼迫の問題の解決にもつながるものと考える。また、2002年以降の法規制により、現在保有中の焼却炉の自廃止の危機に晒されている中小企業にとっては、非常に有効な焼却炉となり、極めて市場性も高くなると考えられ、廃棄物処理業界の救世主となりうる。

K1410.民谷 栄一:新規ガス滅菌システムによる感染性廃棄物の適正処理法及びリサイクル技術に関する研究 |
本大学、産総研、企業による産学官共同研究により開発された新規ガス滅菌法であるMRガス滅菌システムは、画期的なシステムであり、酸化エチレンガスの代替システムの最右翼と評価されている。唯一の既存ガス滅菌法であり、その使用が問題となっている酸化エチレンガスの問題点をことごとく解決している。
酸化エチレンガスよりも強い殺菌力、材質への無腐食・無残留性により初めて精密機器への適用が可能となった。コストパフォーマンスの高さというその優れた特性を利用し、医療廃棄物、遺伝子増幅廃棄物等のバイオハザードを惹起する感染性廃棄物への適正処理技術の研究、更には医療機器・器具等の適正滅菌処理を視野に入れ、安全な再利用技術の研究を行う。

K1411.田中 勝:ダイオキシン類低減化技術の総合化に関する研究 |
ごみ焼却施設では、ダイオキシン類の排出抑制を狙いとして設備の高度化が図られているが、そのために運転管理すべき要素が多くなってきている。また、これらの要素は相互にトレードオフの関係にあるものが多いため、要素間のバランスを図り最適な状態で施設を維持管理することが重要である。
本研究では、燃焼状態および排ガス性状のモニタリング技術の高度化を図り、それらを使った総合的な燃焼制御システムの確立を狙いとしている。具体的にはダイオキシン類の迅速測定結果を運転制御に取り込むことを狙って、ダイオキシン類の代替指標としてクロロベンゼン類および全有機炭素(TOX)等を迅速に連続的に測定する技術の開発を試みている。これにより長期的な前駆体およびダイオキシン類の発生挙動を把握すると同時にダイオキシン類の排出抑制に繋がる総合的な燃焼管理手法を確立する。

K1412.山田 正人:最終処分場管理における化学物質リスクの早期警戒システムの構築 |
環境汚染への関心の高まりにより設置や運営が困難となっている最終処分場において、より予防的かつ効率的なリスク管理のための現場監視ツールとして、細菌や環境生物を用いたバイオアッセイやバイオモニタリング等の「複合毒性パラメータ」の適用を考え、バイオセンサー等として現場用に簡易自動化するとともに、これらを用いて問題となる有害化学物質群を絞り込み、また施設の構造、運営方法また公害防止施設がリスク削減に与える効果を評価したうえで、施設の状況に対応した監視手法の組みあわせ(テストバッテリー)と、監視結果より合理的な対策発動を行うための基準値(アクションレベル)を設定することにより、最終処分場における監視技術と予防的対策を総合化した「早期警戒システム」を構築することを目指す。

K1413.寺澤 勉:展示会における廃棄物処理対策の研究 |
本研究は「展示会・見本市」の廃棄物処理に関する研究である。日本において産業界の重要なプレゼンテーションの場である「展示会・見本市」は、東京モーターショーなどに代表されるように一般大衆に企業による新製品をアピールし、その業界の未来情報を提供するなどの目的をもって開催されている。
そうした「展示会・見本市」の開催にともなって排出される廃棄物は相当な数量にのぼることは明らかであるが、その実態を正確に把握できていない。そこで、その廃棄物排出の実態がどうなっているのか、日本の代表的な展示会場(東京・大阪・千葉、等)及びアジアの展示会の主要国としての韓国・中国・シンガポールの主な展示会場での実態を明らかすることが研究目的である。アジアの実態的データを比較分析し、適正な廃棄物処理の方法を探る。最終的には「展示会の廃棄物予測システム」の構築を目指すが、今年度はそのための基礎研究である。

K1414.野村 春治:リサイクルにより劣化した古紙パルプ繊維のナノ粒子化により新規資源循環システム構築に関する研究 |
リサイクルにより劣化し、短小化した古紙パルプ繊維は、回収された古紙の約30%にものぼり、現在は大部分が焼却されている。これを微粉砕しナノ粒子を作成することが本研究の目的である。具体的には、古紙の主成分であるセルロースは、粉砕しても水素結合により直ちに再結合しナノ粒子化が困難であるため、これを高水素イオン濃度条件下などで粉砕し、再結合を阻止する方法について検討する。この際、ナノ粒子径を非破壊でリアルタイム測定する装置を新たに開発し付加することにより、生成する粒子径を制御する。これによりナノ粒子の特徴を生かした製品、例えば熱成型による透明なシートを試作する。以上のことから、新規な資源循環システムの構築を目指す。また、これにより大気中への二酸化炭素の放出が大幅に削減されることが見込まれ、地球の温暖化防止に貢献すると考えられる。

K1415.松藤 敏彦:資源循環型都市ごみ資源化・処理システム構築のための重金属フロー分析 |
資源循環型社会構築の目的は、環境負荷が小さく資源消費が抑制された持続可能な社会を作り上げることにある。製品中に含まれる重金属は、[1]製品使用後の処理が不適正であれば大きな環境負荷となり、[2]同時に資源の損失となるため、資源循環型社会の廃棄物処理において優先的に対処すべき対象である。さまざまな資源化・処理方法を、どのように選択し組み合わせればよいのか、明確な根拠をもって示すことが必要だが、個々のプロセスにおける重金属の挙動に関する情報はほとんどない。まず重金属フローを明らかにすることが必要である。
本研究は資源循環型の都市ごみ資源化・処理システム構築のため、重要な基礎データとして、廃棄物資源化・処理施設における重金属フローを明らかにする。そして都市ごみ処理システム全体の重金属フローモデルを作成し、システム提案を試みる。

K1416.島岡 隆行:埋立処分量削減を目的とした廃棄物処理残さの土木資材化と環境負荷低減化技術 |
資源循環型社会の構築をめざし,各方面で取り組みがなされつつある。旧厚生省は,2010年度における一般廃棄物の最終処分量を1996年度の50%に削減することを目標としている。減量化目標値50%は,埋め立られている焼却残さ量にほぼ相当し,焼却残渣の全量を有効利用することが可能となれば,最終処分量を半減できる。本研究では,平成13年度より,埋立廃棄物の約40%を占める焼却灰の埋立処分の回避を目的として,焼却灰の「土木資材化」に関する研究と環境への負荷を最小限とする焼却灰の「海面埋立用材」としての高度埋立工法の開発を行っている。具体的には,次の3つを研究の課題とする。
(1)リサイクル促進に伴う,焼却処理される廃棄物質及び処理残さの性状変化の予測
(2)焼却灰の土木資材化のための環境負荷低減技術の開発
(3)環境負荷低減が図れる焼却灰の海面埋立用材としての高度埋立工法の開発

K1417.近藤 元博:PCB廃棄物一貫処理システムの安全性、信頼性向上に関する研究 |
本研究は、今後実稼働するPCB廃棄物の一貫処理システムの安全性、信頼性の向上を図るため、以下の研究課題に取り組むものである。PCBの化学分解プロセスは金属固体粒子と液相物との反応系からなり、混合、拡散、伝熱、復化学反応、重合反応等数多くのプロセスを経て進行する。このため秩序よく安全にプロセスを操作するために反応機構、反応速度並びにPCBから分離される塩素の挙動解明など技術的、学術的研究を行い、暴走反応の抑制や非意図生成物の生成抑制等プロセスの信頼性向上を行う。また反応により生成する塩素やビフェニール等の分解生成物の拡散、混合、消失等を解明し、その処理方法を検討することで、一貫したPCB無害化、安全処理のプロセスを構築する。さらに処理系外に移動するPCB並びに生成物の排出量管理を迅速かつ簡易に管理、監視、モニタリング技術を研究し、PCB処理一貫システムの信頼性を確保し、住民の安心向上を図る。

K1419.高松 武次郎:次世代技術利用金属の環境溶出特性と土壌中動態の解明に関する研究 |
近い将来、エレクトロニクス産業などで多用され、それにともなって環境負荷量が急増すると予想される銀、ビスマス、インジウム、アンチモンなど(次世代技術利用金属)の溶出特性、土壌中動態、および土壌微生物影響を解明するために以下の検討を行う: 1)降雨に暴露された金属の可溶化機構を雨の化学特性(pH、溶存イオン・元素、溶存有機物など)との関連で検討する; 2)土壌に埋設された金属の可溶化機構を土壌特性(土壌種、土壌層位、pH、Eh、pFなど)との関連で検討する; 3)土壌に負荷された金属の動態(集積、移動、地下浸透、形態変化など)を土壌条件(土壌種、土壌の物理・化学特性など)や降雨条件との関連で検討する; 4)微生物影響(毒性)を微生物のバイオマス、活性、及び群集構造(多様性)の3側面から検討する; 5)1)から4)の結果を総合し、次世代技術利用金属による土壌汚染の可能性を予測するとともに土壌生態系影響の評価を試みる。

K1420.森口 祐一:耐久財起源の循環資源の適正管理に関する研究 |
既に建設解体廃棄物や耐久消費財は、廃棄物発生量に大きな割合を占めているが、今後、蓄積された財が寿命を終えた段階で生じる循環資源・廃棄物はますます重要度を増すと考えられる。本研究は、こうした耐久財起源の循環資源に焦点をあて、マテリアルフロー分析や統計的手法等を用いて耐久財起源の循環資源の発生量を予測する手法や、循環利用可能な物質、有害・適正処理困難な物質など耐久財の物質構成を把握する手法を開発し、質的側面を考慮した発生量予測を主要耐久財について行う。また、これらのリサイクル・適正処理促進のための技術、経済的手段、法制度等について検討することにより、循環型社会形成に資する知見を提供することを目的とする。初年度に行った主要耐久財からの循環資源の発生量予測をふまえ、今年度は耐久財の主要構成材料の把握とその有用性・有害性の評価、これらの適正管理のための方策の検討を進める。

K1421.柴崎 康:廃棄物に係るダイオキシン類等分析の体系化に関する研究 |
廃棄物処理施設からの排ガス、排水及び灰中のPOPs、さらに、廃油及び汚泥等の混合系である
廃棄物中のPOPsについて、迅速で高精度な分析方法の確立を目指し以下の6テーマの研究を行った。
(1) 廃棄物中POPsの分析方法の検討
(2) 臭素系ダイオキシン類等の調査分析方法の検討
(3) 廃棄物処理に係るダイオキシン類簡易測定法の検討
(4) ダイオキシン類分析法の高感度・高精度化に関する検討
(5) イムノアッセイ等の適用に関する検討
(6) ダイオキシン類等代替物質による簡易分析法の検討
平成14年度は、前年度に継続し、6テーマの研究を行う。

K1422.谷口 初美:廃棄物処分場のバイオ評価に関する研究 |
地球環境も、動物や人の生体内環境同様、多種類の微生物が共存・共役しながら物質循環、エネルギー代謝を行い、有用或いは有害な環境を提供している。廃棄物処分に伴う有害化学物質のために、処分場の生物環境が阻害されている。そこで、色々な処分場の微生物環境の実体を把握することが重要である。しかし我々が培養法で検出できるのは、環境微生物のわずか数%程度に過ぎない。従来の培養法だけで、微生物環境を究明するのは不正確な情報を提供する危険性が高い。本研究では、処分場の微生物叢の動態を可能な限り正確に且つ簡便に把握するため、遺伝学的手法を応用した微生物学的評価法を構築する。その検査結果を従来の理化学的検査と共に総合的に判断して、人間に有害又は安全な環境の指標となる微生物叢を評価するシステムを確立し、廃棄物処理に伴う有害化学物質対策に寄与することを目指すものである。

K1423.志村 利夫:廃棄物処理残さ物に係るダイオキシン類の分解・安定化技術に関する研究 |
平成12年1月のダイオキシン類対策特別措置法施行により、廃棄物処理残さ物に関し新たな基準が適用された。本研究では、廃棄物処理過程で発生する残さ物(焼却灰、ばいじん、洗煙排水、洗煙排水汚泥等)に含まれるダイオキシン類の実態を把握し、発生抑制、環境汚染防止の観点からダイオキシン類対策特別措置法に適応する分解・安定化技術について検討する。
また資源の有効活用、最終処分地の確保難から残さ物のリサイクルが望まれることから、リサイクル製品の流通とダイオキシン類に関する実態調査を実施するとともにダイオキシン類に関しての基準化を検討し流通拡大を目指す。さらに、排ガス洗浄施設のダイオキシン類挙動とりわけ洗浄水への溶解因子の解明を目指し、ダイオキシン類の排出抑制を図る。

K1424.秋山 友宏:廃アルミを原料として、水素、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどを製造するプロセスの開発と、その評価のためのエクセルギー概念に基づくライフサイクルアセスメント(LCA)手法の開発 |
本研究は以下の2項目のから構成し、平成14年度と平成15年度の2年間にて実施する。
(1) 廃アルミから水素等を製造する技術の開発:本研究では廃アルミと廃石灰または廃苛性ソータ゛等アルカリ溶液での反応により、エネルキ゛ー源となる水素、且つ副生成物として生み出されるアルミン酸ナトリウム並びに水酸化アルミまたはアルミン酸カルシウムなどを高効率にて回収するシステムを開発する。平成14年度は1/50スケールのハ゛ッチ試験機、平成15年度は1/10スケールの連続装置にて開発を実施する。
(2)エクセルキ゛ー概念による、評価手法の開発:上記技術の環境保全に対する効果を、関与する全熱量による単純評価に基づくLCA(従来型LCA)と、外部に有効エネルキ゛ーとして取り出して利用できるエネルキ゛ーであるエクセルキ゛ーに基づくLCA(ELCA)の2つの手法によって評価する。平成14年度はLCA手法により評価し、平成15年度は手法自体が未開発であるELCAの開発を行い、その手法での評価を行う。

K1425.玉置 幸道:歯科鋳造用鋳型材の汎用リサイクルシステムの開発 |
歯科治療では齲蝕によって部分的に喪失した部分や、歯冠部の崩壊が大きく補強した上で歯牙形態を再構築する場合に、審美的な許容度が大きい臼歯部ではしばしば金属が第一材料として選択される.ところが歯の形態は入り組んだ複雑な形状を呈するため、あらかじめワックスなど形態付与が容易な材料で外形を作り、それを高品質な酸化物内に埋没(包埋)して加熱し、ワックスが溶融して空洞となった場所に金属を流し込んでワックスと同形状のものを金属で再現するという手法を採択している.これはロストワックス鋳造法と呼ばれているが、この方法では製作後の型材は不燃ゴミとして廃棄されるのが常である.この廃棄される鋳型は例えば義歯のような大型製作物では必然的に必要量が大きく、製作に500-600gも費やさなくてはならず非常に無駄が多いのであるが、今まで確たる再利用の方向性は打ち出されていなかった.そこで、この材料の再利用の検討を試みたのである.

K1426.寺園 淳:アジア地域における資源循環・廃棄の構造解析 |
本研究は、アジア地域における日本発の国際的な資源循環の構造を解明し、日本の輸出と関係のある相手国での環境汚染を解明及び防止することを目的としている。そのためにまず、アジア地域における国ベースでの既存の廃棄物や資源の統計情報を収集し、経済・法制度などの背景を分析する。次に、自動車・家電製品の対象として、アジア地域における静脈系フローを推計しながら、処理処分における環境汚染事例を質量両面から調査する。最後に、廃棄側の隠れたフローを加味した、日本とアジア地域における資源循環の構造を明らかにする。本研究は途上国を含めた廃棄物・資源循環分野の国際共同研究を立ち上げるものであり、3年間は情報基盤整備のためのプラットフォームづくりに向けて、年に一、二回程度の国際ワークショップを日本で開催する。初年度は年内に一度開催を予定し、各国専門家との連携によって既存統計整理、情報源探索などを開始し、認識の共有に努める。

K1427.後藤 元信:超臨界二酸化炭素抽出法による固体廃棄物中の重金属類の除去技術 |
本研究では環境低負荷の超臨界二酸化炭素を溶媒としてキレート剤を用いることにより、固体廃棄物中に存在する重金属類を効率的に除去し、回収するシステムを構築する。超臨界二酸化炭素に重金属は溶解しないが、錯体を形成させるためにキレート剤を導入することで、重金属類の効率的な抽出が可能となる。本プロセスでは有機溶媒や水を用いないため、環境への2次汚染を防ぐことができる。また、超臨界流体は優れた物質移動特性を有している為、固体廃棄物中の細孔に容易に浸透し、効率的に重金属類を回収することができる。
対象物質としては、焼却飛灰、再生が困難な使用済み廃触媒、土壌など重金属含有の固体廃棄物あるいはそのモデル物質を用いる。また、キレート剤はプロセス内でリサイクルされるため、低コストで環境に低負荷のプロセスとなる。

K1428.渡辺 征夫:廃棄物焼却炉の排ガス中のダイオキシン類制御のためのクロロフェノール類およびガス状総有機ハロゲン化合物の連続監視手法および排出抑制システムの開発 |
都市ごみ,産業廃棄物,汚泥などの処理法としての焼却は,我が国のような人口過密な国や地域では今後も主要な処理形態であり続けると推察される。焼却施設からのダイオキシン類などの難分解性で毒性の高いハロゲン系の汚染物の排出を,広域の生態系を含めた環境に影響をしないレベルまで削減するには,不断の排出モニタリングと継続的な低減対策が不可欠である。
しかしダイオキシン類の場合,それらの排出を直接モニターするには,複雑な前処理と大型の分析計,それに多大な時間と労力を必要とするので,それを一般的な焼却炉で実現することは,現時点では困難である。そこで,本研究ではダイオキシン類と関連の深いクロロフェノール類などの前駆物質を連続モニターする装置の開発と,それらをモニターして,ダイオキシン類の排出抑制を図ることを目的としている。

K1429.樋口 壮太郎:埋立地再生総合技術システムの開発 |
廃棄物の最終処分場の整備と適切な運営は、循環型社会を目指す基盤事業として欠くことのできないものである。しかし、最終処分場は施設として必要不可欠であるが、埋立構造や埋立廃棄物に対する不安などから住民との合意形成が難しく、新規の立地は極めて困難な状況におかれている。環境省より最終処分量を平成22年度までに半減する目標が示されているが、量が減っても最終処分場は今後も必要と考えられる。この様な背景のもと、現在の知見・基準からすると、[1]環境保全上の機能回復を必要とする処分場、[2]処分場の活用可能な土地への修復、[3]汚染土壌の浄化を必要とする処分場などがあり、これらに対して[4]新しい技術を適用すれば上記問題が解決するだけでなく新たに埋立容量の確保が可能と考えられる処分場(延命化)が存在する。こうした、既存処分場を対象に多様な埋立廃棄物層の特性、性状に適応した再生技術を検討し、埋立地の再生に係る総合技術システムを確立するものである。
今年度は、事前調査手法の確立を図るとともに既存処分場を用いて掘り起こす際の粉じん及び有害ガス等に対する対策を研究するとともに埋立物の無害化技術を研究する。
次年度以降は、初年度の研究結果から得られる課題等に対してさらに研究を深めるとともに費用対効果手法について研究する。

K1430.井上 雄三:バイオ指標導入による最終処分場の安定化促進技術の評価 |
既存処分場への安定化促進工法導入や実証規模型安定化促進モデル埋立槽による実験から、既存の物理化学的モニタリングによる安定化挙動と微生物群集との関連について検討し、処分場の安定化を判定する新たな指標(バイオ指標)提案する。また、近年の既存安定型処分場の安定化(硫化水素発生抑制)評価へのバイオ指標導入を検討する。さらに、既存最終処分場の埋立物サンプルや浸出水の微生物生態調査を行い、効果的な微生物群集モニタリング手法を確立するとともに、安定化過程における微生物学的な知見の集積と体系化を行う。また、微生物の有効利用の観点から維持管理の適正化を図る。すなわち、最終処分場における安定化を、[1]含有有機物の分解・安定化、[2]無機物の溶出による安定化、[3]有害物質の視点から見た安定化、[4]構造的安定化と捉え、主要な安定化因子が含有有機物の生物分解反応であるとして、安定化促進技術導入処分場の最適制御手法を構築する。

K1431.中村 崇:臭素系ダイオキシン類の生成および排出抑制に関する研究 |
本研究では、臭素系難燃剤含有プラスチックの焼却過程で発生する臭素系ダイオキシン類の生成・分解挙動の特性把握や焼却灰の水洗浄処理時における排水汚染防止および循環廃棄過程からの環境中への放出防止のための基礎的データとして臭素系ダイオキシン類の物理化学的物性値の測定を行う。具体的には、蒸気圧の測定、熱分析および分子軌道法による熱力学データの決定、水への溶解度、オクタノール/水分配係数の測定を行う。さらに、環境動態モデルを用いて得られた物性値の妥当性と精度を検証する。三年計画の一年目に当たる本年度は、(1)臭素系ダイオキシン類縁化合物を用いたクヌッセンセルによる蒸気圧測定法の確立、(2)分子軌道法による臭素系ダイオキシン類の熱力学的データの計算、(3)水への溶解度測定・オクタノール/水分配係数測定装置の製作および標準試料を用いた装置の健全性確認を行う。

K1432.長田 純夫:不法投棄等による環境リスク低減化に関する研究 |
本研究は、平成12,13年度において日本における廃棄物の不法投棄・不適正処分等により発生した土壌・地下水汚染に係るダイオキシン,重金属,有機物質主体又はこれらの複合汚染に対し、早期に汚染の程度を把握する調査手法や適正な汚染リスク低減化技術の検証、事例調査等を主として実施した。
本年度は、これらの研究成果を踏まえ汚染リスク低減化技術の選定、措置後のモニタリング手法等を、総括的に網羅した「汚染診断リスク低減化システム」を構築し、「汚染修復マニュアル」を作成するものである。

K1433.平石 明:固相バイオリアクターによる廃棄物処理 |
本研究は、急性毒性、発ガン性、内分泌撹乱性等の有害作用を有する難分解性化学物質で汚染された環境および廃棄物の除染・無害化へ向けた環境技術開発を主旨とする。これまで申請者らは、処理環境や処理物の再利用のしやすさという観点から生物学処理技術の適用を考え、当該事業「生物学的ダイオキシン分解技術の開発研究」(平成11-13年度)を遂行した。その結果、ダイオキシン汚染土壌や焼却灰を生物系有機廃棄物と混合した場合、複合微生物群集によって比較的効率よくダイオキシンが分解除去される事実を見いだした。このような固相微生物反応系は、今後、汚染化学物質を含有する廃棄物の処理に有望な基盤技術となり得ることが示唆される。本研究では、この知見を踏まえて固相微生物反応の生化学的機構と生態学的特性を明らかにし、固相バイオリアクターによる有害化学物質と生物系有機廃棄物の同時処理を可能にしたハイブリッド型廃棄物処理技術の確立を目指す。

K1434.中村 修:食品リサイクルにおける社会技術の研究・開発 |
本研究では、食品リサイクル事業を地域環境・経済・農業回復のための重要な戦略として展開する。つまり食品リサイクル事業によって、その地域に様々なメリットをうみだす。実際に、我々は福岡県三潴郡大木町を実証フィールドとしてここ数年、循環のための様々な社会技術の開発をおこなってきた。安価でシンプルでかつ地域に利益をもたらす循環のありようを探ってきた。バイオガスプラントの簡素化、バイオガスプラント由来の液肥を水田で利用、農産物の地場産利用、循環のための地域通貨の開発などである。今年度は食品リサイクルを実施する上でもっとも効果的で有効な、バイオガスプラント由来の汚水を水田で液肥として利用する技術の実証研究と環境評価を中心におこなう。日本各地にある広大な水田を利用する本技術が開発・実用化されることで、停滞する食品リサイクル事業は大きく展開することが可能になる。

K1435.田中 信壽:可燃性都市ごみの炭化処理法の確立と高度化に関する研究 |
自治体が処理するごみ(都市ごみ)の主要成分は厨芥と紙であり、湿ベースで70~80%にも達する。したがって都市ごみ処理における資源化率を上げるためには、厨芥やその他の可燃ごみ(容器包装リサイクル物などを除く)を資源化する技術を発展させる必要がある。その一つとして、最近、炭化技術が注目されている。この技術は、[1]高度の技術を要しない・比較的低温で低圧のローテクノロジーである、[2]熱処理なのでバオハザードに強い、[3]ごみの発熱量低下に強い、[4]用途の多い回収物が得られる、[5]熱的に自立できる可能性がある 等の利点を持つと考えられる。そのため、今後広く利用される可能性がある。
そこで、都市ごみの炭化処理に対して、基礎的な研究を行って、[1]現時点の可燃性都市ごみに対する明確で応用性の大きい設計理論とLCA評価、[2]炭化処理をより高度で付加価値の高いものとするための技術開発 に取り組む。

K1436.吉永 陽一:処理拠点網の形成および静脈物流運営に関する計画・評価技術の研究 |
循環社会形成推進基本法が2000年に成立し、廃棄物の発生抑制や資源の有効利用に対する社会システムの構築のための枠組みが法制面からも整備されてきた。静脈系社会システムの機能は廃棄物の個別収集、選別、焼却処理などの中間処理、処理拠点間の中継輸送、再資源化といった機能から形成される。資源循環の仕組みを円滑に進めるために、広く分散して排出される廃棄物の広域リサイクルシステムの構築、分散処理と集中処理の再資源化機能の適切な分担と情報技術を基盤にした効率的な静脈系社会システムの運営の実現など拠点機能、収集機能を一体評価して全体最適運営を目指した取組みが求められている。
地図情報システムと、静脈物流シミュレーション技術を基盤技術として、全体最適を目指した処理拠点網の形成、運営に関する実証研究を行い、コスト問題と環境負荷を考慮したリサイクル拠点網の形成と効率的な運営の提案、実現を目指す。

K1437.齋藤 祐二:リグニン分解酵素を含む培養液を用いた焼却灰中ダイオキシン類の分解に関する研究 |
難分解化学物質の微生物による分解が注目されており、ダイオキシン類についても分解能を有する微生物が数多く報告されている。特に、木材腐朽菌の一種である白色腐朽菌が生成するリグニン分解酵素は、基質特異性が低いためにダイオキシン類を始めとする様々な化学物質を分解することが報告されている。我々は、日本国内の森林から数千株の白色腐朽菌を分離しパルプ脱色性に優れる株を選抜した。さらに、選抜株の増殖特性および生成するリグニン分解酵素を評価した。その結果、増殖と酵素活性の優れる株の絞込みに成功し、これらを用いたダイオキシン類汚染物質処理への適用を検討している。本研究では、環境影響の少ない新しい処理技術の確立を目指し、選抜した白色腐朽菌の培養液(部分精製酵素液)を用いた焼却灰中ダイオキシン類の分解・無害化方法を検討する。

K1438.三浦 浩之:NIMBY対応としての廃棄物中間処理施設のエネルギー・資源供給施設化 |
廃棄物の処理・処分施設の設置は、周辺住民との合意が容易には得られないこと等から、きわめて困難となっている。その背景には、処理・処分施設の立地に伴う地価下落と施設の信頼性や安全性に対する不信感、施設の稼動に伴って憂慮される周辺環境の汚染等がある。また不法投棄を含む不適正な処分等が、さらにイメージの悪化に拍車をかけている。これによって廃棄物中間処理施設は、誰もがその施設の必要性を認めているが、自分の居住地区や地域には建設してほしくない施設となっている。いわゆるNIMBY(Not In My BacK Yard)問題である。本研究では、中間処理施設を周辺地域へのエネルギー・再生資源・環境空間資源の供給施設とすることにより、住民の施設建設合意が形成される可能性と、および具体的なサービス提供手法を検討する。また、同時に、建設における住民合意形成を円滑に進めるための手法を検討する。

K1439.長坂 徹也:排ガス処理過程におけるDXN類の挙動に与える固定炭素の影響に関する研究 |
都市ごみ焼却飛灰中に存在する未燃炭素は、ダイオキシン類(DXN)に対する吸着能力が高くバグフィルタ(BF)でのDXN除去に大きく影響する一方、その性状如何ではDXN生成要因となることが分かっているが、その影響について定量的評価はなされていない。
本研究は高温反応炉における鉄・非鉄金属の挙動と製錬工程で多用される炭素の物性・挙動に豊富な知見を有する鉄鋼および非鉄製錬分野の知見を導入し、廃棄物処理プロセスにおけるDXNの生成挙動と固定炭素の関係を明らかにし、併せて飛灰の主要な成分である金属化合物の影響についても解析しようとするものである。
また、高純度酸素および窒素から構成される模擬ガス雰囲気下において固定炭素性状に係る種々のパラメータとDXN生成レベルとの相関をラボ試験で調査すると共に、実排ガスを用いたフィールド試験を並行して実施することによりラボ試験で得られた知見の確認を行う。

K1440.大森 英昭:生活排水等の処理過程で発生する水、汚泥のリサイクル技術の向上に関する研究 |
生活排水等の処理過程で発生する水、汚泥のリサイクル技術の向上に資する方法を見出すために、平成14年度は応用的研究及び取りまとめを実施する。
処理水の再利用に対し、膜処理法の導入による処理水質の高度化、処理水に対するウイルス・ファージによる衛生学的な検討、小規模に適用される消毒技術の基礎的・応用的研究、及び処理水の農業利用に関する研究を行う。また、浄化槽汚泥の再利用に対し、既存浄化槽に適用可能な簡易な減量・減容化技術の応用的研究、コンポスト化に係る有用微生物の動態解析等応用的研究、衛生学的安全性確保について、処理過程における病原性微生物の消長の研究、病原性細菌のファージによる抑制法の応用的研究、及び汚泥を農業利用するための施用技術等の研究を行う。さらに、汚泥の農業利用以外の利用法について、浄化槽汚泥からプラスチックや活性炭を生産するための応用的試験、研究を行う。

K1441.牛尾 誠夫:水蒸気プラズマによる残渣炭化物のダイオキシンフリープロセスの開発 |
本研究グループでは,これまでに高温水蒸気を用いて廃棄物を熱分解しダイオキシンの発生を十分に抑制出来る装置を開発し実用化を図っている(中部電力(株)と(株)アドバンストの共同研究)しかし,熱分解後にできる炭化物(残渣)をそのままでは処理できないため,一旦燃焼して灰化し,その後この灰の溶融処理を行っている.これには空気導入および超高温処理を要するため,エネルギー的にも,コスト的にも良策ではなく,ダイオキシンの発生も完全には無くならないため改良が望まれている.
本研究は,熱プラズマの研究に十分の実績のある大阪大学のグループと共同して,この炭化物(残渣)を適度の高温水蒸気プラズマで加熱処理することにより,水性ガス反応(C + H2O → H2 + CO )を起こさせ,燃料ガスを生み出すとともに,固体分を溶融スラグ化するプロセスの開発を目指すものである.特に,発生した水蒸気プラズマの特性を把握し,その特性と炭化物の温度や状態との相互関係を調査する基礎研究であり,水蒸気プラズマを用いた当該プロセスの将来的な実現可能性を検討するものである.

K1442.後藤 純雄:木材系廃棄物の利用法の拡大に関する研究 |
木材系廃棄物の利用法を拡大するため、炭化物や炭化物プラスチック複合材などの再生品開発やその有効利用法について検討する。即ち、種々の再生製品(材料を含む)を試作しその加工、製造法や利用法拡大について検討するとともに、再生製品の使用時や最終処分時における人体又は環境の安全性を確保するため、木材系廃棄物や再生製品中に含まれる有害物質の挙動について検討を加える。また、有害物質の挙動や特性に応じた有害物質の除去法の適用、更に開発した再生製品の有用性や安全性などの確認やリスク評価に資するための小規模なモデル試験を実施する。特に、炭化物(ボード)に関しては室内での利用を想定し、室内汚染物質の吸着除去効果などについての検討を加える。

K1443.朝倉 祝治:熔融飛灰中の重金属の分離除去技術の開発 |
近年、廃棄物の減容化、重金属の固定化、ダイオキシンの分解処理の目的から、焼却灰をスラグ溶融して建築材料としてリサイクルされはじめている。しかしながら、スラグ溶融することによって排出される飛灰には特定の重金属が濃縮されるなど問題点も多く、大量の塩を含むことから通常の還元リサイクルが行えず、不溶化埋め立て処理されているのが実情である。本研究では、リサイクルによって回収されたアルミニウムや、有害な廃棄物を吸収させた活性炭などを利用し有害な廃棄物を分解すると同時に飛灰中に含まれる鉛などの有害な重金属を還元し、有価金属として分離することで、溶融飛灰の安全かつ適正な処理方法の開発を行うことを目的とする。本研究が商業規模で実現すれば飛灰中の重金属を有価金属としてリサイクルできるだけでなく、従来まで埋め立てられていた飛灰についても建築材料等へのリサイクルが可能となる。