生活環境審議会廃棄物処理部会特定家庭用機器処理基準等専門委員会報告

(特定家庭用機器廃棄物の処理について)の概要

 

  1. 特定家庭用機器廃棄物のリサイクルの基本的方向
     
    ・  特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法:以下「新法」という)の本格施行当初(平成13年度)においては、再商品化等(リサイクル)の義務が課せられる製造業者等の施設整備・委託先の確保等様々な準備が必要であること、料金に対する排出者の受忍限度を十分考慮する必要があること等の状況を考慮し、実現可能な妥当な水準をもって再商品化等の基準及び廃棄物処理基準(以下、両者をあわせ「再商品化等・処理基準」という。)とすることが適当。
     
    しかしながら、新法の本格施行後におけるリサイクルの水準の向上、リサイクルし易い製品の設計及び製造の促進を図る観点から、将来における再商品化等・処理基準を示し、新法の本格施行後のリサイクルの進展状況、処理施設の整備状況等を踏まえつつ、新法の本格施行当初の水準から段階的に引き上げていくことが適当。
     
     
  2. 具体的方策について
     
    (1) 金属類
     
    鉄、アルミニウム、銅は、製品に占める重量が大きく、リサイクルによる廃棄物の減量の効果も大きい上、素材の回収方法・再資源化の手法が確立していることから、新法の本格施行当初からリサイクルの対象とすべき。
    また、新法の本格施行後においては、これらの金属類の素材回収効率の向上が図られるべき。
    さらに、新法の本格施行当初からテレビジョン受信機の大型のプリント基板について、取り外し、鉛、スズ等の金属類を再資源化すべき。
    その他、特定家庭用機器に使用されている重金属についての情報収集、資源としての重要性・環境に対する有害性についての検討を進めていくべき。
     
    (2) ガラス類
     
    テレビジョン受信機のブラウン管は、新法の本格施行当初からガラスとしてのリサイクルの対象とすべき。
    また、新法の本格施行後においては、素材回収効率の向上が図られるべき。
     
    (3) プラスチック類
     
    【再商品化(マテリアルリサイクル)】
     
    現段階では、対象機器に含まれるプラスチック類全てについて、マテリアルリサイクルを義務付けることは困難。
    新法の本格施行後は、プラスチック類のマテリアルリサイクルの技術水準・能力の向上に応じ、順次再商品化等・処理基準に反映させていくべき。
    また、新法制定(平成10年)後に製造・販売された機器の廃棄が中心となり、マテリアルリサイクルに必要な条件が整備されると見込まれる新法制定後10年頃には、プラスチック類全般について、リサイクルの対象とすべき。
     
    【熱回収(サーマルリサイクル)】
    熱回収として認め得る適切な水準について検討し、新法におけるリサイクルとして適切に位置付けるべき。熱回収の実施に当たってはダイオキシン類の発生抑制等の生活環境保全の観点から適正な措置が確保されることが必要。
     
    (4) フロン類
    冷媒用フロン類は、新法の本格施行当初より実施を義務付けることが適当。
    断熱材フロン類は、断熱材フロン類の回収を行うための施設が極めて少ないこと、施設整備を含めた回収に係る費用が高く排出者の負担が高くなる可能性を考慮すると、新法の施行当初からその回収を義務付けることは困難。
      しかしながら、断熱材フロン類については、速やかにその回収・処理を義務付けるべき。
     
     
  3. 再商品化等の基準等、廃棄物処理基準の設定
    (1) 再商品化等の基準 (特定家庭用機器再商品化法(新法)関係)
     
    (1) 新法の本格施行当初(平成13年度)
     
    鉄、アルミ、銅及びこれらの化合物を原材料とする部品又は素材、テレビジョン受信機のガラス類及びプリント基板中の金属類を再商品化等の基準の算定根拠として盛り込む。
    再商品化の実施に当たっての素材回収効率については、現状の処理の状況を勘案し原則として80%程度を見込む。
    このような方法により再商品化等の基準を算定すると以下のようになる。
    エアコンディショナー 60%
    テレビジョン受信機 55%
    冷蔵庫及び洗濯機
     
    50% (重量比ベース、再商品化のみ)
     
    (2) 将来的な再商品化等の基準
     
    新法の本格施行当初において対象として見込んでいる金属類、ガラス類に加え、プラスチック類を対象とする。
    素材回収効率については、90%程度を算定に織り込む。
    したがって、製品の組成・構造の変化、リサイクル技術の進展が相当程度図られ、プラスチックのリサイクルに必要な条件が整うことを前提とし、80~90%とすることが適当。
    将来的な再商品化等の基準は、新法制定後に製造・販売される製品が廃棄の中心となる新法制定10年後(新法の本格施行後7年)を目途として達成されるべき。
    また、将来的な再商品化等の基準が達成されるまでの間については、リサイクルに関する技術水準の状況、施設整備等の状況を踏まえ、段階的に引上げを行っていくことが適当。
     
    (2) 再商品化等と一体的に行われるべき事項(特定家庭用機器再商品化法(新法)関係)
     
    新法の施行当初においては、エアコン、冷蔵庫の冷媒に使用されているフロン類の回収及び処理とすべき。
    冷蔵庫の断熱材に使用されているフロン類は、新法の本格施行後できるだけ早急にその回収・処理を義務付けることとすべき。
     
    (3) 廃棄物処理基準 (廃棄物処理法関係)
     
    市町村等廃棄物の処理を行う者の従前どおりの処理(資源回収を行わない破砕処理、直接埋立等)を認めると、廃棄物の減量・適正処理の効果・向上が確保できない上、処理費用の格差等の理由により特定家庭用機器廃棄物が製造業者等に引き渡されることなく処理され、新法の目的とする製造業者等による再商品化等の実施が困難になる事態が考えられる。
     
    このため、市町村、廃棄物処理業者等の製造業者等以外の者が特定家庭用機器廃棄物の処理を行う場合についても、製造業者等が義務付けられる再商品化等と同程度の水準の処理が行われるよう廃棄物処理基準の整備を行うことが必要。