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(旧厚生省情報)


平成8年10月2日
<照会先>
 厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課
担 当
電 話
坂川(内4044)
(代)3503ー1711

ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会の中間報告について

1. 趣旨
 今年6月に厚生省水道環境部に「ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会」を設置して検討を進めてきたが、今般、中間報告がとりまとめられた。中間報告を踏まえて、厚生省は、地方公共団体に対し、ごみ焼却施設におけるダイオキシン類の排出削減対策を指導する。


2. 中間報告の要点
1.  ごみ処理に係るダイオキシン対策を「恒久対策(排出総量を計画的に可能な限り削減するための対策)」と「緊急対策」に分類し、検討を進めてきたが、今回の中間報告では、緊急対策についてとりまとめたものである。

2.  緊急対策として、ごみ焼却施設の周辺におけるダイオキシン類の摂取量が当面のTDI(耐容一日摂取量)を超えるおそれがないよう、ダイオキシン類の排出濃度が80ng-TEQ/Nm3を超える施設にあっては、燃焼管理の適正化、間欠運転から連続運転への変更、施設の改造、施設の休廃止等の所要の対策を早急に進める必要がある。

3.  排出濃度が80ng-TEQ/Nm3以下の施設にあっても、可能な限りダイオキシン類の排出を削減するため、対策を進める必要がある。

4.  恒久対策としては、施設の建替え、小規模施設の集約化、ごみ固形燃料化施設(RDF)への転換等があり、検討会において引き続き検討のうえ、年内を目途にとりまとめる予定である。また、併せて、今後建設される施設の排出濃度を0.1ng-TEQ/Nm3程度以下とすることを検討する。


3. 中間報告を踏まえた今後の対応
1.  厚生省は、地方公共団体に中間報告を送付し、排出濃度が80ng-TEQ/Nm3を超える施設における緊急対策の実施など、ごみ焼却施設に係るダイオキシン対策の推進について通知する。

2.  対策の推進状況について継続的にフォローアップし、その状況及び新たな知見等を踏まえ、対策の強化を図る。


 
 

ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会中間報告
概  要

  
1. 経緯
 厚生省においては、平成2年に「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン」を策定し、対策の実施について市町村を指導してきたところである。その後、平成8年6月、当面のTDI(耐容一日摂取量)を10pg-TEQ/kg/dayと低減する報告がまとめられた。このTDIを新たな評価指針として、ダイオキシン対策を一層推進するため、平成8年6月に厚生省水道環境部に本検討会を設置し、ごみ処理に係るダイオキシン削減対策の検討を行ってきた。
 本検討会では、最近のダイオキシン削減対策技術に関する新たな知見を活用し、対策を恒久対策と緊急対策に分けて検討してきたが、このたび緊急対策に係る部分を中間報告としてとりまとめた。
 今後、引き続き恒久対策について検討を続け、年内にガイドラインを見直すこととしている。


2. 現在のガイドラインに基づく対策の実施状況
 現時点までに得られたダイオキシン類の排出濃度に関するデータによれば、
新設炉(平成2年のガイドラインに即して設計した施設)は濃度が低くなっており、ガイドラインの効果がみられる
一方、その他の施設にあっては、排出濃度の高い施設が多く残されている。
24時間の連続的運転を行う施設の方が、毎日8~16時間程度の運転を行う施設よりも排出濃度が低い。


3. 今後のダイオキシン対策の基本的考え方
3- 1.恒久対策の推進
 ダイオキシン類の排出量を総体として可能な限り削減することを基本とし、計画的に取り組む。この場合、
ごみの排出抑制、リサイクル等により焼却量をできるだけ減らしたうえで、できるだけダイオキシン類の排出の少ない適切な焼却を行う。
(具体例)
・完全燃焼のための燃焼管理の適正化・施設の改造
・小規模施設の集約化・全連続炉への転換
・ごみの固形燃料化施設(RDF)に転換
今後、これらの恒久的な対策(恒久対策)について引き続き検討し、年内を目途にガイドラインを見直す。また、今後建設される施設の排出濃度を0.1ng-TEQ/Nm3程度以下とすることを検討。

3- 2.緊急対策の実施
既存の施設については、ダイオキシン類の排出濃度が判断基準を超える場合には、緊急対策を実施(4章及び5章参照)
(具体例)
・燃焼管理の適正化
・間欠運転から連続運転への変更
・施設の改造
・施設の休廃止

3- 3.対策の推進方法
各市町村において、それぞれのごみ焼却施設の排出濃度を測定し、その結果を踏まえて対策を検討。
排出濃度が判断の基準を超える場合→至急具体的な削減対策を検討し、実施
判断の基準を超えない場合→燃焼管理の適正化を図り、恒久対策を計画的に推進
対策の推進状況を継続的にフォローアップし、その状況及び新たな知見等を踏まえ、対策の強化を図る。


4. 緊急対策の必要性を判断するための基準
4- 1.判断基準の設定の考え方
次の摂取量の合計が当面のTDIの範囲内となるような排出濃度を判断基準とする。

通常の一般的な摂取量
ごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類によって増加するおそれのある摂取量

大気の吸入による摂取
大気から食品を経由した摂取
4- 2.判断基準の設定方法
通常の一般的な摂取量(既存のデータから次のように設定)
・大気の吸入による摂取 0.18 pg-TEQ/kg/day(都市部の平均)
・食品からの摂取 5.9 pg-TEQ/kg/day(平均+標準偏差)
(安全性を高めるため、個人の嗜好、食習慣の差を考慮して平均値よりも大きな値を設定)
ごみ焼却施設から排出されたダイオキシン類によって増加するおそれのある摂取量
大気中濃度が増加すると、周辺で生産される食品に含まれるダイオキシン類も同じ割合で増加すると仮定
大気中での拡散倍率を200,000 倍と仮定(安全性を高めるため、比較的拡散しにくい気象条件を設定)
以上の考え方のもとに、摂取量の合計が当面のTDIに達する場合の排出濃度を計算すると、80ng-TEQ/Nm3。この濃度を判断のための基準として提案。


5. 既設のごみ焼却施設に係る緊急対策の内容
5-

1.全連続炉

-施設運営- -適正負荷 ・ごみ質の均一化、適正負荷運転
 | -連続運転の長期化
 |
-燃焼設備- -燃焼温度 ・800℃以上(850 ℃以上の維持が望ましい)
 | -CO濃度 ・50ppm 以下(O212%換算値の4時間平均値)
 | -安定燃焼 ・500ppmを超えるCO濃度瞬時値のピークを極力発生させない
 |
-ガス冷却- -廃熱回収ボイラ ・ボイラ伝熱面上のダスト堆積を抑制
 | 設備  | ・ボイラ出口排ガス温度の低温化
 | -炉頂型ガス冷却室の改造
 | -空気予熱器 ・空気予熱器内のダスト堆積を抑制
 |
-排ガス - -電気集じん器 ・入口排ガス温度を低温化(200~280℃)
処理設備  | ・ろ過式集じん器に交換
-ろ過式集じん器 ・入口排ガス温度を低温化(200℃以下)

5-

2.准連続炉及び機械化バッチ炉

-施設運営- -適正負荷 ・ごみ質の均一化、適正負荷運転
 | -連続運転化 ・間欠運転を連続運転化
 |
-燃焼設備- -燃焼温度 ・800℃以上(850 ℃以上の維持が望ましい)
 | -CO濃度 ・50ppm 以下(O212 %換算値の4時間平均値)
 | -安定燃焼 ・500ppmを超えるCO濃度瞬時値のピークを極力発生させない
 |
-ガス冷却- -炉頂型ガス冷却室の改造
 | 設備 -空気予熱器 ・空気予熱器内のダスト堆積を抑制
 |
-排ガス-- -電気集じん器 ・入口排ガス温度を低温化(200~280℃)
処理設備  | ・ろ過式集じん器に交換
-ろ過式集じん器 ・入口排ガス温度を低温化(200℃以下)
-マルチサイクロン ・ろ過式集じん器に交換

5- 3.固定バッチ炉
基本的には准連続炉、機械化バッチ炉の対策と同様。
[留意点]
・燃焼管理に十分注意する。
・ごみの量及び質を一定化・均質化する。
・停止の際には、埋火を行わずに燃し切り停止を行う。

5- 4.対策の効果
既存の施設において、以上の対策を適切に組み合わせて実施することにより、判断基準以下とすることが可能。
引き続きこれらの対策を全て実施した場合には、次の濃度レベルまで削減されることが期待される。
炉の種類 区   分 対策実施後
全連続炉 現行ガイドライン適用炉 0.5 ng-TEQ/Nm3程度
現行ガイドライン非適用炉 1  ng-TEQ/Nm3程度
准連続炉・機械化バッチ炉 長期の連続運転 1  ng-TEQ/Nm3程度
間欠運転 5  ng-TEQ/Nm3程度
5- 5.広域的な対応
施設ごとの対策だけではなく、広域的な対策についても検討
・小規模施設では、安定的な燃焼を長期間継続することは困難
→緊急対策: 施設を休止又は廃止した上で、他の施設の活用を図ることを検討(近隣の全連続炉での処理等)
→恒久対策: 大規模施設への集約化