「バイオマス活用の浄化槽機能調整剤」株式会社 静内衛生社

水環境保全への取組(現場取材&インタビュー)

株式会社 静内衛生社 開発部 係長 武部 史彦さん

株式会社 静内衛生社 開発部 係長 武部 史彦さん

バイオマスを利用した新技術で水環境改善

浄化槽の機能を向上させる新技術としてクローズアップされているのがバイオマス(生物資源)の活用。北海道新ひだか町の静内衛生社が開発した浄化槽の機能調整剤は、全国で初めて牛糞等の家畜排泄物を利用したもので、廃棄物を利用し、環境に配慮している点が注目されています。 開発の担当者である武部さんに、技術内容や現場での活用状況などについてお話をうかがいました。

環境に配慮したリサイクル製品の開発が認められました

私たちが北海道大学との共同研究の末に開発したのは、バイオマスを汚水処理分野に活用した浄化槽用固形シーディング剤(機能調整剤)です。これは牛糞など家畜の排泄物と下水道終末処理場から排出される脱水汚泥を主原料に適切な発酵処理を施し、調整したものを固形化した製品で、発酵過程で蓄積される有効成分や有機物分解に関わる複数種の有用バクテリア群を含有しています。これにより、浄化槽内に投入すると多様な環境でバクテリアが安定的に増殖し、主に浄化槽機能の早期立ち上げや臭気改善、発泡状態の改善等に効果を発揮します。また、固形化されているため取扱いが容易な点も特長のひとつです。
これまで家畜糞尿の処理方法は主に堆肥化による農地還元が行われて来ましたが、季節により利用率が変動することや、受け入れ農地の減少からこうした利用法は行き詰まることも予想されています。しかし、本製品においては、季節の変化に関わらず継続的な利用が可能、用途先も幅広く、地域の水環境の保全にも有効なため、普及により循環資源の適正な利用や廃棄物の減量化の促進に影響を与えるものとして期待されています。平成20年4月には北海道が主催しているリサイクル製品認定制度の厳しい審査に合格し、環境に配慮したリサイクル製品として認定され、10月には「超モノづくり部品大賞」・「3R推進協議会会長賞」などを受賞しました 。


前例のない開発実験は試行錯誤の中、粘り強く続けられた。写真は製造試験の状況
写真提供:静内衛生社

さらなる高機能化を目指し、水環境改善の一端を担いたい

近年、浄化槽法が改正され、浄化槽機能の立ち上がりの法定検査(7条検査)が浄化槽施工・使用開始後、6ヶ月後から3ヶ月後に早まったことを受けて、早期立上げを可能にするシーディング剤の必要性が各浄化槽メーカーの間で高まっています。こうした背景を受け、今後は単独・合併浄化槽の他、農業集落排水処理施設・下水道終末処理施設・食品排水処理施設・有機性排水処理施設等などへも利用展開していきたいと考えています。
一般家庭の合併浄化槽に利用されることが多いのですが、維持管理業者さんやメーカーさんからは、「槽内に発生したミズワタが本製品を投入した後に減少した」「浄化槽内から漂っていた異臭が投入後改善され、その後も継続的な利用により臭気発生が抑制された」という報告を受けています。また、浄化槽以外にも利用したいという声もあり、例えば「仮設トイレや一般便槽に投入したところ臭気発生が抑制された」という一般利用者からの声もいただいています。
今後はバイオマスを使用するメリットを含めて、さらなる高機能化や用途拡大を目指しつつ、これからも水環境の改善の一端を担えるよう努力して行きたいと思います。


完成した浄化槽用固形シーディング剤
写真提供:静内衛生社