「被災地をサポートする」環境省 浄化槽推進室

水環境保全への取組(現場取材&インタビュー)

環境省 大臣官房廃棄物・リサイクル対策部 廃棄物対策課 浄化槽推進室 濱田 知広

被災地をサポートする災害に強い浄化槽

環境省 大臣官房廃棄物・リサイクル対策部 廃棄物対策課 浄化槽推進室 濱田 知広環境省では、「防災拠点における浄化槽整備モデル事業」という取組みを通して、災害に対して強い特性を持つ浄化槽の整備を開始しました。防災拠点に浄化槽を整備することで災害後の救援事業を円滑にすることと、人々の被災生活を衛生的にすることが期待されています。

避難生活をサポートする浄化槽

「防災拠点における浄化槽整備モデル事業」とは、避難所や消防基地など、防災の拠点となることができる場所に浄化槽を設置する場合に、今までよりも多くの補助を受けることができるようになる事業です。これまで国からの補助は、すべての事業費の1/3までが限度と決められていましたが、1/2まで引き上げることができるようになりました。
災害が起こった時、救援活動をされる方や、被災者の方のし尿処理が問題になっており、被災地で下水道が使用されている場合、災害で管が壊れたりするとその地域の下水道がすべて使えなくなってしまいます。その点、壊れにくい特性がある浄化槽を防災拠点に設置すれば、救援事業を円滑にすることと、人々の被災生活を衛生的にすることができます。 環境省では、災害に強い浄化槽をもっと整備してくださいと呼びかけも行っています。

平成16年の新潟中越大震災
モデル事業を進めるきっかけとなった平成16年の新潟中越大震災。浄化槽が災害に強いことを証明する結果となった
写真提供:社団法人 全国浄化槽団体連合会

きっかけは、新潟中越沖大震災

平成16年7月の新潟県中越沖大震災では、75箇所ある避難所のうち、浄化槽が使われていた5施設すべてで水洗便所が使用できました。この事例は、環境省でも地震に強い浄化槽としてモデル事業を進めるきっかけになりました。
災害時の浄化槽の被害調査については、現在報告書のかたちでまとめられており、将来また災害が起こった時に役に立つ、災害時の浄化槽取り扱いマニュアルの作成を進めています。

平成16年10月に台風23号が襲来した豊岡市内の避難所
被災地における避難所等のし尿処理についてはこれまでも問題となってきた。(写真は平成16年10月に台風23号が襲来した豊岡市内の避難所)
写真提供:豊岡市

事業の有効性を広く伝えていきたい

平成16年7月の新潟県中越沖大震災では、75箇所ある避難所のうち、浄化槽が使われていた5施設すべてで水洗便所が使用できました。この事例は、環境省でも地震に強い浄化槽としてモデル事業を進めるきっかけになりました。
防災が時代のキーワードとされる中、「環境省としての災害対策」については、日ごろから議論されていました。 浄化槽についてはモデル事業の成功事例や災害時の課題を広くまとめることで、次の災害に備える一歩になると考えています。これらを資料として、災害発生時の迅速な初期活動を可能にするマニュアルの作成を進めています。今後の統一的な見解として、できるだけ広くの方に使っていただきたいです。
また、今回のモデル事業に臨時の地方交付金を併せて使うことで、浄化槽を整備するのに自治体の負担はゼロにすることもできます。かなり前から国の補助を1/2に引き上げてほしいとの要望は多かったのですが、今回の事業は、浄化槽関連団体、自治体、環境省としても念願の事業でした。
現在はまだ、防災拠点の整備まで手が届く自治体はそんなに多くないという状況です。そのため、こちらから直接市などにモデル事業の説明なども行ってきました。仮設トイレでもいいと考える自治体に、浄化槽のメリットや必要性について、これからはもっと知ってもらう必要があります。そのために、浄化槽のメリットやモデル事業実施の結果を広く公表し、有効性を多くの人に伝えていくことがこれからの課題です。