「環境保全の担い手を育てる環境学習プログラム」徳島県

水環境保全への取組(現場取材&インタビュー)

徳島県 県民環境部 環境局 環境首都課 環境戦略担 河村 正子さん

環境保全の担い手を育てる環境学習プログラム

太陽、海、清らかな水と自然環境に恵まれた徳島県では、独自の環境学習推進方針を設置し、それに基づいて「太陽」「水環境」「生き物」「ごみ」の4つの重点テーマをもつ独自の環境学習プログラムを提供しています。ストーリー性のあるプログラムを体験していくことで、順序立った学習が可能となり、今回はその中で浄化槽を使ったアクティビティについてお話をうかがいました。

県内の自然環境を通して、さらに大きな環境問題を学ぶ

平成17年、徳島県は県民と民間団体、事業者、行政が協力して、学び、行動するための指針として、「とくしま環境 学びプラン」を策定しました。これは、徳島県内の自然環境をきっかけにして、そこからもっと大きな環境問題を勉強していこうという取組みです。その中で徳島県の自然環境の特徴から「太陽」「水環境」「生き物」というテーマと、地域の人々の関心が高いことから「ごみ」を重点分野に決めました。この4つの重点分野から、学習を通して、新しいコミュニケーションを作っていく、という展開を目指しています。
平成19年3月からは、小・中学校、高校等で環境学習を支援するためのツールとしてこの学習プログラムの提供を始めました。プログラムは「アクティビティ」というそれぞれ具体的な目標や、狙いをもった活動をいくつか組み合わせて作られています。
4つの各重点分野に合わせた学習プログラムは、県と県内4大学の連携による「とくしま環境科学機構」によって作成されています。例えば、日照時間の長い徳島県らしいプログラムとして、太陽エネルギーを使った調理体験のアクティビティなどを通して、エネルギーや温暖化を学ぶものがあります。


実際に授業で使われた、ペットボトルを再利用した水質調査のための教材
写真提供:徳島県

現場に合わせて応用可能な汎用性の高い学習プログラム

平成19年度から、徳島県内の学校版環境ISOの認定校(リサイクルや省エネルギーなどの環境保全活動を計画的・継続的に実施する学校として徳島県教育委員会が認定した学校)などに、この学習プログラムを配布し、活用をよびかけています。
徳島県では、この学習プログラムの支援に、モデル校へ教材の提供などを行っています。学校によっては、研究テーマを「水環境」と「ごみ」の2つをあわせた独自のものにするところもあり、提供されているプログラムを授業の目的にあわせて変化させていく、といったような自由で幅の広い使い方も行われているようです。


学習プログラムのひとつ「水の透視度測定」。生徒たちが中心になって行われました
写真提供:徳島県

自然の浄化作用を学ぶ「浄化槽調べ」アクティビティ

「浄化槽調べ」アクティビティは、「干潟の生きものと人の暮らし」を学ぶという学習プログラムの中で、干潟の役割を理解するために設けられました。
干潟と浄化槽が、それぞれ生物を利用した水質浄化を行っていることに注目して作成され、排水のCOD濃度測定体験などを通じて浄化槽の機能を学び、干潟が行っている自然の浄化作用と浄化槽を比べていきます。
また、校内にある浄化槽を見学したり、学校の浄化槽管理を行っている業者から仕組みの説明を聞いたりして、浄化槽について勉強するという学校もありました。

水環境学習プログラムを授業で活用した中学校の先生の感想

中学2年生の総合学習での環境学習でプログラムを活用しました。学校の合併浄化槽、水路の現地での調査、地元工場の水浄化システムなどの見学を通して、生徒たちは机上だけでは学べない大切なことを体験できたと思います。
環境問題は大切とわかっていても、いざ学習を進めるとなると私たち教師も生徒たちも手探り状態で、とても大変でした。モデル校に指定されたことで、徳島県環境学習プログラム推進委員会の委員・専門委員の中から「スーパーバイザー」とよばれる専門家が派遣され、学習計画の具体な計画などを話し合いました。
水環境プログラムを通じて、地域の水環境の実態を知り、改善するためには行動することが重要だということを実感しました。その後、学校で学習のまとめ発表会を行い、家庭に対しても行動を呼びかける文書を作り配布しました。
生徒たちも水や電気の無駄遣いを減らしたり、資源ゴミを回収するなど、行動に移せるようになりました。3学期のみの短い期間でしたが、とても内容の濃い学習をすることができたと思います。