(別紙)
G8環境大臣会合(リーズ城、英国、1998年4月3日〜5日)
共同コミュニケ(概要)
<気候変動>
- 我々は、法的拘束力を有する目標を伴う京都議定書の採択は、温室効果ガスの排出削減の努力を進める上で歴史的な転換点であったと確認した。我々は今後1年間に議定書に署名する意志を確認し、必要な作業を直ちに始めることを決意する。
- 我々は、気候変動対策をリードする責任を認識し、国内的には温室効果ガスの相当の削減を直ちに開始する。
- 国際的には、京都会議のモーメンタムを維持しなければならない。排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズム等の柔軟なメカニズムは、国内措置を補完するものである。これらのメカニズムは、コミットメントを費用効果的に実現するに当たり、不可欠な役割を果たすことが出来る。これらのメカニズムを真に環境に便益あるものにするための原則、方法、規則、指針を明確にすることが優先課題である。これらの柔軟なメカニズム、特に、排出量取引については、これを行わない場合に比べて全体としてより大きな温室効果ガスの削減に資するようにすることが重要である。規則は、実施可能で(enforceable)、説明できる(accountable)、検証可能な(verifiable)、開かれた(open)、かつ、透明な(transparent)取引システムを確保しなければならない。炭素吸収源の取り扱いに関する作業も、同時に行わなければならない。
- 議定書の法的拘束力を有するコミットメントを支える強力、効率的かつ効果的な遵守確保措置(compliance regime)が必要である。議定書の非遵守状態にある締約国に対する拘束力のある措置(binding consequence)に関する手続き及びメカニズムの検討作業を第4回締約国会議までに開始することが必要である。
- 気候変動に取組むため、全ての国によってより多くの努力がなされることが必要であり、「COP4において法的拘束力を有する目標を課されていない国による法的拘束力のある目標の自発的な採択について議論を行うべき」との提案に留意する。我々は、この提案や他のオプションを全ての国と議論する意志があることを強調する。
- 我々は、コミットメントは、共通であるが差異のある責任の原則を反映し、客観的なクライテリアに基づかなけれなならないこと、並びに、貧困を根絶し、持続可能な発展を達成するという開発途上国の正当なプライオリティーについて最大限の考慮を払うものでなければならないことを、再確認する。
<環境と雇用>
- 環境政策は、公衆衛生と生活の質に意味ある改善をもたらすだけでなく、経済横断的に雇用を創出する機会をもたらすものであることを合意した。我々は、このメッセージを、バーミンガムのG8サミットの首脳に伝える。
- 我々は、特定の産業や社会的な弱者に対する環境政策の影響が考慮されなければならいこと、このような状況下では移行期における援助が不可欠であろうことを認識する。
- しかし、そういうことに拘わらず、環境技術産業を含む多くのセクターにおいて、雇用が創出されるという見通しを最大限考慮しなければならない。環境を改善することは、それを通じて、社会的な結束を促し社会的な便益をもたらす。例えば、劣悪な大気や水質は、均衡を失した形で、子供や貧困者を含む社会的な弱者グループに影響を及ぼす。
<海洋生物多様性の保全>
- 海洋の生物多様性は、地球規模の生物多様性の不可欠かつ統合的な部分である。調和のとれた国際的な行動がなければ、脅威に曝されたままとなろう。
- 国際海洋年の今年、海の重要な役割について、より大きな国民の関心を喚起する必要がある。
- 地域海間の状況に幅広い違いがあるため、海洋環境保全の行動は、最も効果的な実施が可能な地域レベルのものに特に焦点が当てられる必要がある。このことは、陸上活動に特に脆弱な閉鎖性及び半閉鎖性の海域や北極海にとって、とりわけ重要である。
- 我々は、ブラチスラバで開催される生物多様性条約締約国会議において、明確なプライオリティーを付した、ジャカルタ・マンデートの下で実施される作業計画が採択され、また、これと持続可能な観光との間の関連を検討することを求める。
<多国間環境協定及び国内環境法の違反並びに環境犯罪>
- 我々は、多国間環境協定(MEAs)の違反、特に国際的な犯罪組織による違反の証拠が増大している状況を深刻に懸念する。
- MEAs
違反による深刻な環境影響とMEAs違反における組織犯罪取り締まりの必要性に鑑み、G8諸国は、
- 既存の
MEAs、特にワシントン条約、モントリオール議定書及びバーゼル条約への参加及び効果的な履行を全面的に支持する。
- オゾン層破壊物質、有害廃棄物及び保護対象野生動植物種の違法取引との戦いを継続する。
- これらの
MEAsの履行に高いプライオリティを与え執行のための適正な資金を振り向ける。
- これらの
MEAs事務局との協力改善に係る提案を策定するようUNEPに要請する。
- 環境法執行を促進するため開発途上国との協力を強化する。
- 1998
年1月の環境法執行担当官協議会合での作業を支持し、越境環境犯罪の摘発と処罰に関し情報の共有及び協力、情報及び経験の交換、環境法執行機関の強化及び執行官の育成、環境協定執行に関わる既存の国際機関の十分な活用、国内での啓発活動の推進を図る。
- 次回会合において本分野での進捗状況をレビューする。
<子供の環境健康>
- 我々は、子供達が様々な環境上の危険に曝されていることを懸念しており、これらの脅威を低減する措置をとるとの約束を再確認する。
<まとめ>
- 我々は、議長が本報告をバーミンガム・サミットに伝達するよう要請する。我々は、気候変動、環境と雇用、海洋の生物多様性及び子供の環境健康について更なる行動のための新たな重要な理解に達した。我々は、既存のMEAs違反の低減措置をとることを約束した。我々は、関連する国際的フォーラム及び二国間チャネルを通じ、これらの重要課題への取組を遂行することを約束する。