パブリックコメントの概要及び環境庁の見解等

コメント環境庁の見解等
<総論> 
1.今回の検討では、精度管理指針のみの検討か。指針の冒頭に記してあるとおり、ダイオキシン類の環境測定における的確な精度管理を実現するため、ダイオキシン類の環境測定を担当する試験所等が自ら講ずべき措置等を定めたもの。
2.ダイオキシン分析について、試料が低濃度の水質と高濃度の飛灰や土壌などが同じ精度管理でよいのか。今回の指針では、測定精度管理の観点から、整備すべき組織や試料採取、前処理、GC-MSによる測定等における配慮事項を横断的に記述している。ご指摘のとおり、低濃度の水質と高濃度の飛灰や土壌などでは、個々の取り扱いに当たって注意すべき事項は若干異なると考えられるが、そこまでは立ち入った記述をしていない。なお、第1部第2章2(3)に高濃度試料測定用器具と低濃度測定用器具とを区別するなど、いわゆるコンタミの防止のための配慮については記述している。
3.統括責任者、品質管理者、技術管理者については、「環境計量士(濃度)」取得者でかつ、公的機関において業務に関係する講習会を開き、その受講者をもって、担当資格を与え、また、測定担当者についても、公的機関においてダイオキシン類測定技能に関する講習会を開き、その受講修了者をもって、担当資格を与えることが望ましいと考える。今回の指針は、いわゆる内部精度管理に必要な事項を記述したもの。したがって、計量法に基づく環境計量士制度等とは直接の関係はない。
4.運営に当たっては、関係省庁と十分な連携を図り、重複した制度とならないように配慮してほしい。本指針は、いわゆる内部精度管理に必要な事項を記述したものであり、外部精度管理の指針ではないので、何ら制度を定めるものではない。しかしながら、本指針の作成に当たっては、検討会に関係省庁のオブザーバー出席を求めているところであり、関係省庁との連携については配慮している。
5.案の位置付けが不明確。試験所が自ら講ずるべき措置としながらも、義務ではなく当然罰則もない。これでは丁寧な精度管理をすればするほど手間と時間ばかりかかってしまうため、進んで指針に沿って測定する測定機関は多くない。指針を守ることによる実質的なメリットのあるような制度にしなければ、指針は”絵に描いた餅”となる。指針の冒頭に記してあるとおり、本指針は、ダイオキシン類の環境測定における的確な精度管理を実現するため、ダイオキシン類の環境測定を担当する試験所等が自ら講ずべき措置等を定めたもの。したがって、いわゆる内部精度管理に必要な事項を記述したものであり、外部精度管理のための指針ではない。
<ISO/IEC17025との関係> 
6.品質システムを定める品質マニュアルについての規定、依頼及び契約内容を確認することについての規定、苦情処理に関する規定などがない。今回の指針は、測定精度管理の観点から、整備すべき組織や試料採取、前処理、GC−MSによる測定等における配慮事項を記述したもの。したがって、ご指摘の事項を記述する必要は、特段ないと考えている。
7.組織についての独立性や公平性などに関する規定がない。上記6.に同じ
8.不適合の潜在的原因を特定し、対策を実施するための予防処置の規定がない。上記6.に同じ
9.内部監査について、ISO/IEC17025規格の要求事項の全てを対象としていない(例えば、内部監査員に関する規定及び試験結果の妥当性に懸念が生じた場合の依頼者への通知に関する規定がない)。本指針の作成に当たっては、ISO/IEC17025及びその前身のISO/IECガイド25を十分配慮しており、これらの規格に相反するような記述は行っていないと考えている。しかし、その一方で、その要求事項を全て満足する必要はないと考えている。
10.測定のトレーサビリティ及び測定の不確かさの推定に関する規定がない。測定のトレーサビリティの確保は重要であり、これは本指針全体を通じて確保していくものであると考えている。「測定の不確かさの推定」も重要な問題であるが、これを実際に担保するとなると実施すべきことは多岐にわたっており、具体的な記述は難しい。なお、指針案第2部第2章4で調整した測定用試料に併せて測定を行う試料の測定、第4章1の検出下限及び定量下限の算出などにより測定の不確かさについての推定はある程度可能となっている。
11.ISO/IEC17025で定める経営管理主体、品質管理者、技術管理主体と、本指針に規定する統括責任者、品質管理者、技術管理者の間で、権限、機能、能力等に関する整合性が取れていない。上記9.に同じ
12.指針(案)とISO/IEC17025との非整合について、どのように考えているか。上記9.に同じ
13.また、どのような理由により、指針(案)の規定となったのか。ダイオキシン類の環境測定に係る的確な精度管理を実現するために作成したもので、「ダイオキシン類環境測定精度管理検討会」で、ご審議いただいたもの。
14.今後、ISO/IEC17025と整合化させることについての見解を教えてほしい。上記9.に同じ
<業務の発注> 
15.環境庁発注業務の受注を希望する試験所が提出する資料について、審査不合格となった試験所に対しては当該試験所に理由を開示すると共に不服申立てを受付けること。また、再申請を受付けること。本指針は、いわゆる内部精度管理に必要な事項を記述したものであり、環境庁等からの業務の発注とは直接の関係はない。
16.発注仕様書には正確な積算を行うことができるよう、必要事項(条件、数量等)を具体的且つ詳細に記述すること。直接コストに影響する事項については特に留意してほしい。上記15.に同じ
17.発注者においても全ての必要なコストを正確に把握し、予定価格に適正に反映してほしい。上記15.に同じ
18.各自治体や民間企業においても同様な調査を発注していることを考えると、今回の審査結果については、皆が関心を抱いてることと思う。この審査結果は公表するのか。公表するとすればそれはいつ頃か。公表しないのならそれは何故か。上記15.に同じ
19.また企業の育成というキーワードもあったが、審査の結果に対して不適とされた場合何らかの指導を行うといったことはあるのか。上記15.に同じ
<組織> 
20.組織について、各責任者や管理者の配置とあるが、職歴、学歴、人数についてはうたっていない。微量分析なだけにその辺はいかがなものか。品質管理者、技術管理者及び測定担当者について定性的な記述を行っている。職歴、学歴、人数は試験所によって態様が様々であり、これらを具体的に規定することは考えていない。
<検討会> 
21.検討委員会の中に民間企業の方も入っているのは何故か。当然この企業に対しては、別の審査基準を設けるのか。今回の指針は、環境測定に係る内部精度管理のために必要な事項を記述するものであり、ダイオキシン類の分析に精通している民間企業の方にも検討会に参画していただくことが適当であると考えたもの。また、検討会には指針の作成をお願いしており、審査基準の検討をお願いしているものではない。
<公的機関への適用> 
22.昨今ダイオキシンというキーワードが無作為に飛び回っている状況において、単に入札指名という観点だけにとどまらず、ダイオキシンを測定している機関は官民問わず全てこうした基準でもって一律に管理し、できないところには確実にペナルティを付加するようにしないといけないと思うが、公的機関についてはどのような管理をするのか。この指針は、いわゆる内部精度管理指針であり、公的機関においても、この指針が活用され、精度管理が図られることを期待している。
<品質保証に関する文書の添付> 
23.少なくとも行政が主体となって調査したデータには、市民等からの請求の有無に拘わらず、報告書には品質保証に関わる文書は全て添付することとすべき。行政が主体となって調査したデータの信頼性の確保は重要であり、そのためにも本指針が活用されるべきと考えている。
<データの信頼性> 
24.この(案)のような管理がされなければ、正確なデータがでないということであれば、これまで発表された行政のダイオキシン類調査のデータにも品質上の信頼性の低いものがあるということになる。精度管理が的確に実施されていない機関があれば、データの信頼性に問題のある可能性がある。
<内部監査> 
25.内部監査:内部監査を行うことは推奨されるべきだが、内部がゆえの監査の甘さをどのように回避するかが明確でない。どれほど多くの書類上で品質改善を講じても、実際に正しい操作がなされたか否かは確認できないのではないか。逆に測定の不備が、多数の書類の作成を求めており、書類の乱発は有害無益であると思う。なお、上記の内部監査の欠点を補うものとして、独立した外部の監査機関を早急に設ける必要がある。外部監査機関の設立にあたっては、市民の意見もバランス良く取り入れるべき。またこの外部監査のプロセスにも透明性がなければならない。本指針では、内部監査の実施に関する記述にとどめており、外部監査は本指針の対象ではない。また、本指針において、多数の文書、記録を求めていることは事実であり、このために相当な事務量が発生することも承知している。しかしながら、精度管理のためのシステムを構築し、得られたデータが的確な作業により生み出されたものであることを検証するために、これらの文書、記録が必要となっている。
<データの書き換え> 
26.文書の管理等:”後日データの書き換えをする”ということは、つまり改ざんや捏造にあたるが、これを防ぐための必要な措置を講ずるとともに、万が一、改ざんが行われた場合は測定者・測定会社ともに環境計量士等の免許の剥奪・許可の取り消しなど、厳しい罰則を定めることが必要。測定者としてあるまじき行為であるため、改ざん・捏造に関しては厳然とした対処をするべき。特に法の執行に関わる行政主体の測定調査である場合、住民の環境や健康に大きく影響するため責任は重大。また、何回か再測定したうちの都合のよい値のみを報告するなど、意図的な操作が行われていることが判明した場合も、同様な処分が必要。本指針は、内部精度管理のためのもの。
<スパイクの添加時期> 
27.試料の前処理:添加したクリーンアップスパイクの種類及び量だけでなく、添加時期も記載するべき。ところで、JIS法には、クリーンアップスパイク添加時期について、本来はサンプルからの抽出の前に添加すべきところ、良好な回収率が得られなければ抽出後に添加してもよいという記載があるが、これは大きな問題。抽出効率は大きなファクターであり、回収率を上げるため、添加時期を調整するのは、本末転倒。ご指摘を踏まえて、追加する。なお、JIS法には、クリーンアップスパイク添加時期について、良好な回収率が得られなければ抽出後に添加してもよい、という記載はないと専門家から聞いている。
<異常値・欠測値> 
28.異常値・欠測値の発生原因等:何をもって異常値とするかが不明。単に他の測定値から数値が大きく離れているだけでは異常値とは言わず、また異常な値の中の多くの情報を包含している場合もある。そこで単に記録として測定機関が保存文書とするのではなく、異常値(欠測値と含む)とその原因として検討された事項とその処理について、測定結果報告書に記載し、クライアントに必ず報告する必要がある。ここでは、指針案第2部第4章の定量結果の確定において、確定できなかったものを異常値・欠測値としているもので、単に他の測定値から数値が大きく離れているものを異常値としているわけではない。
<スパイクの添加量等> 
29.回収率:それぞれの測定に際して、適当な量の内標準物質が添加されたか否かの確認が一目瞭然となるよう、(1)に表にはクリーンアップスパイクの添加量及び回収量を記入する項目を、また(2)の表にはサンプリングスパイクの添加量及び回収量の欄を足すべき。ところで低濃度の食品や水、人体成分中のダイオキシン類測定の際に、クリーンアップスパイクを1000pgも添加することは、回収率は高くなるが、サンプル中のわずかなダイオキシン類を余さず捕らえているという指標にはならない。そこで、上記のように、得られた回収率自体の評価ができるような情報をも記載する必要がある。ご指摘を踏まえて、添加量の記述を追加する。
<一般環境大気> 
30.一般環境大気(項目1):ガス状ダイオキシン類捕獲のためのウレタンフォームは、メーカーによって捕獲能力が大きく異なるとの報告があります。そこで項目1に、使用したウレタンフォームのメーカーとロット番号を記録することが必要。ご指摘を踏まえて、追加の記述を行う。
31.一般環境大気:前日(できれば前前日も)の天候、降水量、風向、風速も記録するべきです。少しでも前日に雨の降ったときや、強い風邪の吹いた日などの翌日は、異常に低い測定値がでることがある。ただでさえ年間3,4回程度でしか測定できず、通年の状況を掴むことはできない上に、特別な条件の日に測定した値などは代表的な数値とは言えない。そこでせめて当日だけでなく前日の気象条件も記録することが必要。ご指摘を踏まえて、「前日」を追加する。
<土壌> 
32.土壌:記載事項として、その地点の地表の状況(例えば、落ち葉がどれだけ堆積していたか、草や苔が生えていたか、あるいは裸地であったかなど)も追加するべきである。ご指摘を踏まえて、追加の記述を行う。
<排出ガス> 
33.排出ガス:焼却炉などの発生源の種類や使用状況以外に、最も重要な項目は、焼却物の内容、成分、及び量である。測定者は焼却物への点火の時点から、これらの項目を自ら確認し(炉の所有者などの自己申告でなく)、記録するべきである。この項目が欠落していれば、排ガス測定値は何の意味もない。「その他の追加事項」の「使用状況」を「運転状況」と修正する。
<ばいじん及び焼却灰> 
34.ばいじん及び焼却灰:サンプルである焼却灰やばいじんの、元の焼却物の成分を把握しておくべき。ただし、すでに焼却された後であるため、多少困難ではあるかもしれないが、あるいは排ガス測定のあとに残った焼却灰、ばいじんをサンプルとすれば一貫したデータが得られるはず。本指針は、ダイオキシン類の環境測定を担当する試験所等が自ら講ずべき措置等を定めたものであり、環境測定のみを行う試験所等が元の焼却物の把握やサンプル対象物を自ら決めることは困難。