添付資料1

水質汚濁防止法の排水規制等に係る項目追加等の経緯

 平成11年2月22日、「水質汚濁に係る環境基準について」(昭和46年12月環境庁告示第59号)が改正され、人の健康の保護に関する環境基準として硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素、ほう素が環境基準に追加設定されました。

 これに伴い、同年2月22日、環境庁長官から中央環境審議会会長に「水質汚濁防止法に基づく排出水の排出、地下浸透水の浸透等の規制に係る項目追加等について」諮問され、同水質部会に排水規制等専門委員会(委員長:松尾友矩東洋大学教授)を設置し、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素、ほう素の排水規制等の項目追加等について、調査・検討を進めることとなりました。

 同専門委員会は、計9回にわたって検討を重ね、平成12年10月19日の水質部会に専門委員会報告が提出されました。

 中央環境審議会水質部会は、この専門委員会報告を踏まえて、平成12年11月に「水質汚濁防止法に基づく排出水の排出、地下浸透水の浸透等の規制に係る項目追加等について」の答申案を取りまとめたところです。今般この答申案について広く国民から意見の募集を行うものです。


添付資料2

水質汚濁防止法の概要

目的
 工場・事業場からの排出水の排出、地下浸透水の浸透の規制や生活排水対策の推進等により、河川、湖沼、沿岸域等の公共用水域及び地下水の水質の汚濁の防止を図り、もって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全すること。

特定施設及び特定事業場
 一定の要件を備える汚水又は廃液を排出する施設を特定施設として政令で指定、特定施設を設置している工場または事業場を特定事業場としている。
 現在は約100業類等が特定施設として指定されており、約30万事業場(平成9年度末)が特定事業場となっている。

規制の仕組み
[1]排水基準
 特定事業場から公共用水域に排出される水(排出水)について、排水基準に照らした排水規制を実施。(排水基準には、人の健康に係るもの(有害物質)と生活環境に係るもの(生活環境項目)がある。)
[2]事前届出・計画変更命令等
 特定施設の設置を計画する者は、事前に都道府県知事等への届出が義務付けられており、都道府県知事等は、排出水が排水基準に適合しないと認めるときは、設置計画の変更又は廃止命令を行うことができる。特定施設の構造、汚水処理の方法等を変更する者についても同様である。
都道府県知事等は、排出水が排水基準に適合しないおそれがあると認めるときは、特定施設の構造等の改善又は特定施設の使用もしくは排出水の排出の一時停止命令を行うことができる。
排出水を排出する者は、排出水の汚染状態の測定等が義務づけられている。
都道府県知事等は、特定事業場の設置者に対し報告徴収・立入検査を行うことができる。
[3]排水基準又は命令等に違反した者には、罰則が科せられる。

地下浸透規制
 政令で定める有害物質を製造・使用・処理する特定施設から排出される有害物質を含む水の地下浸透を禁止
 3[2]と同様の義務及び命令に違反した者には罰則が科せられる。

添付資料3

水質汚濁防止法の排水基準

(有害物質)

有害物質の種類許容限度
カドミウム及びその化合物0.1mg/l
シアン化合物1mg/l
有機燐化合物
(パラチオン、メチルパラチオン、メチルジメトン及びEPNに限る。)
1mg/l
鉛及びその化合物0.1mg/l
六価クロム化合物0.5mg/l
砒素及びその化合物0.1mg/l
水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物0.005mg/l
アルキル水銀化合物不検出
PCB0.003mg/l
トリクロロエチレン0.3mg/l
テトラクロロエチレン0.1mg/l
ジクロロメタン0.2mg/l
四塩化炭素0.02mg/l
1,2-ジクロロエタン0.04mg/l
1,1-ジクロロエチレン0.2mg/l
シス-1,2-ジクロロエチレン0.4mg/l
1,1,1-トリクロロエタン  3mg/l
1,1,2-トリクロロエタン0.06mg/l
1,3-ジクロロプロペン0.02mg/l
チウラム0.06mg/l
シマジン0.03mg/l
チオベンカルブ0.2mg/l
ベンゼン0.1mg/l
セレン及びその化合物0.1mg/l
硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素※100mg/l
ふっ素海域外  8mg/l
海域   15mg/l
ほう素海域外 10mg/l
海域  230mg/l

※アンモニア性窒素の硝酸性窒素への換算係数は0.4とする。
(注)下線の項目は今回排水基準を新たに設定しようとするもの

(生活環境項目)

生活環境項目の種類許容限度
水素イオン濃度(水素指数)海域外 5.8-8.6
海域   5.0-9.0
BOD(生物化学的酸素要求量)160mg/l
(日平均120mg/l)
COD(化学的酸素要求量)160mg/l
(日平均120mg/l)
SS(浮遊物質量)200mg/l
(日平均150mg/l)
ノルマルヘキサン抽出物質含有量
(鉱油類含有量)
5mg/l
ノルマルヘキサン抽出物質含有量
(動植物油脂類含有量)
30mg/l
フェノール類含有量5mg/l
銅含有量3mg/l
亜鉛含有量5mg/l
溶解性鉄含有量10mg/l
溶解性マンガン含有量10mg/l
クロム含有量2mg/l
弗素含有量15mg/l
大腸菌群数(1cmにつき)日平均3,000個
窒素含有量120mg/l
(日平均60mg/l)
燐含有量16mg/l
(日平均8mg/l)

(注)ふっ素については、有害物質として排水基準を設定することに伴い、生活環境項目から削除することを予定


添付資料4

水質汚濁防止法に基づく有害物質の地下浸透規制について

規制対象者:有害物質使用特定事業場1)から水を排出する者
規制内容:一定の要件2)に該当する特定地下浸透水3)を浸透させてはならない
1)有害物質使用特定施設(有害物質を製造、使用又は処理する特定施設)を設置する特定事業場
有害物質:下表参照
製    造:当該特定施設において有害物質を製品として製造すること
使    用:当該特定施設において有害物質をその施設の目的に沿って原料、触媒等として使用すること
処    理:当該特定施設において有害物質又は有害物質を含む水を処理することを目的として有害物質を分解又は除去すること
2)有害物質が検出されること
3)有害物質使用特定事業場から地下に浸透する水で有害物質使用特定施設に係る汚水等(これを処理したものを含む。)を含むもの

有害物質の項目

1カドミウム及びその化合物15シス-1,2-ジクロロエチレン
2シアン化合物161,1,1-トリクロロエタン
3有機燐化合物(パラチオン、メチルパラチオンメチルジメトン及びEPNに限る。)171,1,2-トリクロロエタン
4鉛及びその化合物181,3-ジクロロプロペン
5六価クロム化合物19チウラム
6砒素及びその化合物20シマジン
7水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物21チオベンカルブ
8PCB22ベンゼン
9トリクロロエチレン23セレン及びその化合物
10テトラクロロエチレン24硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素
11ジクロロエチレン25ふっ素
12四塩化炭素26ほう素
131,2-ジクロロエタン
141,1-ジクロロエチレン

太字は新規追加項目


添付資料5

追加項目の主な排出源について

1.硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及びアンモニア性窒素

1-2畜産農業又はサービス業の用に供する施設
27無機化学工業製品製造業の用に供する施設
32有機顔料又は合成染料の製造業の用に供する施設
61鉄鋼業の用に供する施設
62非鉄金属製造業の用に供する施設
63金属製品製造業又は機械器具製造業の用に供する施設
64ガス供給業又はコークス製造業の用に供する施設
65酸又はアルカリによる表面処理施設
66電気めっき施設
72し尿処理施設
73下水道終末処理施設

2.ふっ素

24化学肥料製造業の用に供する施設
27無機化学工業製品製造業の用に供する施設
53ガラス又はガラス製品の製造業の用に供する施設
58窯業原料(うわ薬原料を含む)の精製業の用に供する施設
61鉄鋼業の用に供する施設
62非鉄金属製造業の用に供する施設
63金属製品製造業又は機械器具製造業の用に供する施設
65酸又はアルカリによる表面処理施設
66電気めっき施設
66-2旅館業の用に供する施設

3.ほう素

1-1鉱業又は水洗炭業の用に供する施設
24化学肥料製造業の用に供する施設
27無機化学工業製品製造業の用に供する施設
53ガラス又はガラス製品の製造業の用に供する施設
58窯業原料(うわ薬原料を含む)の精製業の用に供する施設
63金属製品製造業又は機械器具製造業の用に供する施設
64ガス供給業又はコークス製造業の用に供する施設
65酸又はアルカリによる表面処理施設
66電気めっき施設
電気業の用に供する廃ガス洗浄施設(石炭を燃料とする発電所に設置されるものに限る。)

各番号は水質汚濁防止法施行令別表第1の特定施設番号

添付資料6

追加項目に係る汚染の状況について
平成6年度〜平成10年度環境庁要監視項目調査結果

1.硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素(指針値 10mg/l)

調査件数超過件数(超過率)最高濃度
公共用水域11,76612(0.1%)56mg/l
地下水12,099656(5.4%)140mg/l

公共用水域で指針値を超過した原因は、工場・事業場排水(6件)、複合汚染(5件)、施肥(1件)と推測。
地下水で指針値を超過した原因は、施肥、家畜ふん尿、生活排水と推測。

2.ふっ素(指針値 0.8mg/l)

調査件数超過件数(超過率)最高濃度
公共用水域6,70947(0.6%)2.4mg/l
地下水3,25334(1.0%)10mg/l

※1.公共用水域については海域を除いている。
※2.公共用水域で指針値を超過した原因は、工場・事業場排水(7件)、自然由来(22件)、海水の影響(16件)と推測。地下水で指針値を超過した原因は、いずれも地質等由来と推測。

3.ほう素(指針値 1.0mg/l)

調査件数超過件数(超過率)最高濃度
公共用水域2,279125(5.5%)6.1mg/l
地下水1,2764(0.3%)2.0mg/l

※1.公共用水域については海域を除いている。
※2.公共用水域で指針値を超過した原因は、自然由来(3件)、海水の影響(122件)と推測。
地下水で指針値を超過した原因は、いずれも地質等由来と推測。

添付資料7

追加項目の特性について

1.硝酸性窒素(NO3-N)、亜硝酸性窒素(NO2-N)及びアンモニア性窒素(NH4-N)

(1)性状
 各々、硝酸イオン(NO3-)、亜硝酸イオン(NO2-)及びアンモニウムイオン(NH4+)の化合物。
 基準値はこれら化合物中の窒素量として定義される。環境中には硝酸・亜硝酸性窒素のまま、もしくはその他の窒素化合物として排出される。
 窒素化合物は環境中で形態変化して硝酸性窒素を生成し、アンモニア性窒素は好気的条件下で微生物の働きにより硝化され、亜硝酸性窒素を経て、硝酸性窒素を生じる。

(2)人の健康影響
 高濃度の硝酸・亜硝酸性窒素を含む水の摂取によって、特に乳幼児にメトヘモグロビン血症を発症する。これまで北米とヨーロッパで約2,000の発症例があり、そのうち7〜8%が死亡したとの報告がある。

(3)用途と発生源
 電気めっきにおける洗浄剤・防錆剤、希土類精鉱の溶解剤、その他、製品の触媒等として用いられる。
 硝酸・亜硝酸性窒素やアンモニア性窒素は、これらを製造・使用する工場・事業場から排出されるほか、生活排水、人や家畜のし尿等として広く排出される。また、窒素肥料の施用も発生源となる。

2.ふっ素(F)

(1)性状
 化学作用は極めて強く、すべての元素と直接反応する。自然状態ではホタル石等の形態で存在し、温泉水や海水中には比較的高濃度で存在する。

(2)人の健康影響
 高濃度のふっ素を含む水の摂取によって斑状歯が発生するほか、ふっ素沈着症が生じる。

(3)用途と発生源
 金属の研磨やステンレスの洗浄目的で使用するほか、原料として使用するホタル石に由来してふっ素を含む排水が排出される。
 ふっ素を排出する主要な業種としては、鉄鋼業、無機薬品製造業・フルオロカーボン製造業等がある。

3.ほう素(B)

(1)性状
 ほう素は様々な化合物を形成するが、自然界で多くはほう砂等として存在し、温泉水や海水中には比較的高濃度で存在する。

(2)人の健康影響
 高濃度のほう素を含む水の摂取によって嘔吐、腹痛、下痢及び吐き気等が生ずる。動物実験ではラットの体重増加抑制等の影響が見られる。

(3)用途と発生源
 電気めっき工程の緩衝剤・めっき液として、また釉薬等製造工程等でほう酸を使用するほか、原料に由来してほう素を含む排水が排出される。
 ほう素を排出する主要な業種としては、鉱業、石炭火力発電所、釉薬瓦・釉薬製造業等がある。