報道発表資料本文

(別紙2)

石綿による健康被害の救済について(案)

I 救済給付について

 救済給付は、石綿を吸入することによって中皮腫や肺がんにかかった方やその遺族であって、労災補償を受けられない方に対し、医療費などを支給するものです。

(1)救済給付の認定申請の受付について

[1]
 救済給付の支給に係る認定の申請は、3月末の法の施行の1週間前から、独立行政法人環境再生保全機構(以下「機構」という。)の事務所(川崎、大阪)に直接又は郵送(消印日をもって申請日とします。)により提出するほか、全国に7ヵ所ある環境省地方環境事務所(札幌、仙台、さいたま、名古屋、大阪、岡山、熊本)を通じて機構に申請することもできます。
 また、なるべく早く、各都道府県にある保健所を通じても機構に申請ができるよう、現在、手続きを進めております。
[2]
 申請の時点で、あらかじめ指定された申請様式への必要な事項の記載と、あらかじめ指定された医学的所見を示す資料の添付がなされている必要があります。申請の様式や添付資料に関する情報など、申請に必要な書類の詳細については、現在検討中ですが、できるだけ早くお知らせできるようにする予定です。
[3]
 救済給付は、申請のあった日(法施行前に申請した場合は法施行日)から行われること、また、申請に必要な添付資料を用意するためには一定の時間がかかることから、申請は早め早めにお願いいたします。申請様式等の準備は、3月中旬に整うよう努力しております。
[4]
 なお、労災補償制度等により、同一の石綿による疾病に対する補償が行われている場合には、本制度による救済給付の支給の対象にはなりません。

(2)認定の対象となる指定疾病と認定基準について

[1]
 救済給付は、重篤な疾病にかかるかもしれないことを知らずに石綿にばく露し、石綿という明かな原因がありながら、個々の健康被害の原因者を特定することが極めて難しく、何ら補償を受けられないまま多くの方が1、2年で亡くなられるという、石綿による中皮腫、肺がんの特殊性にかんがみて、まずはこれらの被害者を迅速に救済するために構築された新たな制度であり、対象となる疾病(指定疾病)は、石綿を原因とする中皮腫及び肺がんとします。
 その他の石綿関連疾患のうち石綿肺については、古くからよく知られた代表的な職業病であるじん肺のひとつであること、これまで職業ばく露での発症しか知られていないこと、また、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚については、これまで職業性ばく露での発症しか知られていないこと、労災制度においても平成15年以降に対象とされ、まだ認定者数が少ないことなどから、現時点では本制度の対象とはしませんが、今後、医学的知見やデータの集積を図り、職業性ばく露以外のばく露による発症状況を踏まえつつ検討し、必要に応じて将来これらを指定疾病とすることはあり得ます。
[2]

 救済給付における指定疾病ごとの認定の考え方を以下に示します。

ア 中皮腫の場合
 中皮腫については、胸膜、腹膜、心膜又は精巣鞘膜の中皮腫であることが確認された場合、認定されるものとします。
 中皮腫は診断が困難な疾病であるため、臨床所見、臨床検査結果だけでなく、病理組織検査に基づく確定診断がなされることが重要です。また、確定診断に当たっては、肺がん、その他のがん、結核性胸膜炎、その他の炎症性胸水、などとの鑑別も必要となります。
 このため、中皮腫の認定に当たっては、病理組織検査記録等が求められ、確定診断が適正になされているか確認されるものとします。
 なお、病理組織検査が行われていない事案については、臨床所見、臨床経過、臨床検査結果、他疾患との鑑別の根拠等を主治医から求め、専門家による検討を踏まえて判断されるものとします。
イ 肺がんの場合
 肺がんについては、原発性肺がんであって、かつ、肺がんの発症リスクを2倍以上に高める量の石綿ばく露があったとみなされる場合に認定されるものとします。肺がんの発症リスクを2倍に高める量の石綿ばく露があったとみなされる場合としては、次の(ア)又は(イ)のいずれかに該当する場合が考えられます。
(ア)
胸部エックス線検査、胸部CT検査により、胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)が認められ、かつ、胸部エックス線検査でじん肺法に定める第1型以上と同様の肺線維化所見があり、胸部CT検査おいても肺線維化所見が認められること。
(イ)
肺内石綿小体又は石綿繊維の量が一定量以上(乾燥肺重量1g当たり5000個以上の石綿小体若しくは200万本以上(5μm超。2μm超の場合は500万本以上)の石綿繊維又は気管支肺胞内洗浄液1ml中5個以上の石綿小体)認められること。
[3]
 申請に当たっては、[2]のア又はイの内容を医学的に確認するための書類等の添付が原則的に求められます。詳細については検討中ですが、例えば、主治医の診断書、病理組織診断書、診断に必要な胸部エックス線写真又は胸部CTなどが必要になります。
[4]

 制度開始時に既に死亡している方については、次のとおりとします。

 中皮腫の場合は、中皮腫であったことが記載された死亡診断書の写しなど、中皮腫であったことを客観的に証明できる書類があれば、認定されるものとします。
 肺がんの場合は、肺がんであったことが記載された死亡診断書の写しなど、かつて肺がんであったことを客観的に証明できる書類があり、かつ、[2]のイの(ア)又は(イ)のいずれかに該当したことを客観的に証明できる書類がある場合に認定されるものとします。

(3)指定疾病に係る認定の有効期間

[1]
 本制度は、現に指定疾病により健康被害を受けている方について、その被害に着目して救済給付を行う制度であるため、疾病が治った方については法律上、認定を取り消すこととなっております(法第9条)。
[2]
 一般的に、中皮腫、肺がんなどの悪性疾患については、医学的には、手術によってがんに冒された部分を摘出等しても治癒したとはみなされず、その5年後に再発・転移等していなければ治癒したものとみなされます。このため、中皮腫と肺がんについては、認定期間を5年間とすることを考えております。

(4)救済給付の額について

○認定を受けられたご本人への救済給付
[1]医療費

 指定疾病にかかっていると認定された方には石綿健康被害医療手帳が交付されます。
 保険医療機関、保険薬局、診療所、介護保険法の適用を受ける医療を提供する者等のところで、石綿による健康被害についての医療を受ける際に、石綿健康被害医療手帳を提示いただければ、一般的に、医療費の自己負担分は窓口で支払う必要はありません。

[2]療養手当

 療養手当の額は、入通院に伴う諸経費という要素に加え、日常生活にも近親者等の介護が必要となること、他の救済制度とのバランス*注を勘案して、定型化した額として、毎月約10万円とする考えです。石綿健康被害救済制度は、賠償責任に基づく制度ではないため、療養手当についても療養に要した実費を全て積み上げて厳密にてん補するものではなく、一定の定型化を行った上で一律の給付を行うものです。

*注:
入通院に伴う諸経費については医薬品副作用被害救済制度による医療手当の額を、介護手当に該当する部分については原子爆弾被爆者援護制度による介護手当(中度)の限度額をそれぞれ勘案しております
[3]葬祭料

 現在、闘病生活を送られている認定された方が、石綿による指定疾病に起因してお亡くなりになった場合に給付される葬祭料の額は、他の救済制度とのバランスを勘案して、約20万円とする考えです。

[4]救済給付調整金

 制度施行前にお亡くなりになった方の遺族には特別遺族弔慰金(280万円)が支給されるのに対して、制度施行後に申請して認定されても、その直後にお亡くなりになった被害者等には、制度施行後生存されたわずかな間に相当する医療費と療養手当しか支給されません。
 このような不公平感を解消するため、制度施行前に発症し、制度施行後2年以内に認定され亡くなられた被害者については、ご本人が支給を受けた医療費と療養手当の合計額と特別遺族弔慰金(280万円)との差額について、救済給付調整金として御遺族に対して支給されます。

○本年3月末の法の施行日より以前に、石綿に起因する指定疾病によりお亡くなりになった方のご遺族への給付
[5]特別遺族弔慰金

 特別遺族弔慰金は、本制度の施行前に既にお亡くなりになった被害者に特別の弔慰を表明してその遺族の方々に給付する本制度特有の給付項目であり、その額は、280万円とする考えです。請求期限は下記の特別葬祭料と併せて、法施行日から3年以内と法に定められております。

[6]特別葬祭料

 特別葬祭料の額は法律で、葬祭料の額と同額(約20万円)とすることが定められております。

II 特別遺族給付金について

 特別遺族給付金は、労働者等の御遺族であって、労災保険法の規定による遺族補償給付の支給を受ける権利が、施行日において既に時効によって消滅している方に対して支給するものです。

(1)特別遺族給付金の支給の申請の受付について

[1]
 特別遺族給付金の支給については、3月末の法の施行の1週間前から、労働基準監督署に対して申請することができます。
[2]
 申請の時点で、あらかじめ指定された申請様式への必要な事項の記載と、あらかじめ指定された医学的所見を示す資料の添付がなされている必要があります。申請の様式や添付資料に関する情報など、申請に必要な書類の詳細については、現在検討中ですが、できるだけ早くお知らせできるようにする予定です。
[3]
 特別遺族給付金のうち特別遺族年金は、請求のあった日の翌月分以降について支給の対象となること、申請に必要な添付資料を用意するためには一定の時間がかかることから、申請の準備は早め早めにお願いいたします。申請様式等の準備は、3月中旬に整うよう努力しております。

(2)認定の対象となる疾病と認定基準について

[1]

 特別遺族給付金については、中皮腫、肺がん、石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚を対象とすることとします。以下、対象疾病ごとに認定の考え方を示します。

ア 中皮腫により死亡された場合
1)
 石綿ばく露作業に従事し、胸膜、腹膜、心膜又は精巣鞘膜の中皮腫により死亡された場合、次の(ア)又は(イ)に該当すれば認定されます。
(ア)
じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺の認定を受けていたこと。
(イ)
石綿ばく露作業への従事期間が1年以上あったこと。
イ 肺がんにより死亡された場合
1)
 石綿ばく露作業に従事し、原発性肺がんにより死亡された場合、次の(ア)又は(イ)に該当すれば認定されます。
(ア)
じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺の認定を受けていたこと。
(イ)
次の(i)又は(ii)の医学的所見が得られ、かつ、石綿ばく露作業への従事期間が10年以上あったこと。
ただし、次の(ii)に掲げる肺内の石綿小体又は石綿繊維が一定量以上(乾燥肺重量1g当たり5000本以上の石綿小体若しくは200万本以上(5μm超。2μm超の場合は500万本以上)の石綿繊維又は気管支肺胞洗浄液1ml中5本以上の石綿小体)認められた場合は、石綿ばく露作業への従事期間が10年に満たなくとも、本要件を満たすものとします。
(i)
胸部エックス線検査、胸部CT検査等により、胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)が認められること。
(ii)
肺内に石綿小体又は石綿繊維が認められること。
ウ 石綿肺により死亡された場合
 じん肺管理区分が管理4に該当する石綿肺又は石綿肺に合併したじん肺法施行規則第1条第1号から第5号までに掲げる疾病により死亡された場合には認定されます。
エ 良性石綿胸水により死亡された場合
 石綿ばく露作業に従事し、良性石綿胸水により死亡された場合、個別に厚生労働本省に協議されます。
オ びまん性胸膜肥厚により死亡された場合
 石綿ばく露作業に従事し、びまん性胸膜肥厚で死亡された場合、次の(ア)及び(イ)のいずれの要件にも該当すれば認定されます。
(ア)
胸部エックス線写真で、肥厚の厚さについては、最も厚いところが5mm以上あり、広がりについては、片側にのみ肥厚がある場合は側胸壁の1/2以上、両側に肥厚がある場合は側胸壁の1/4以上あるものであって、著しい肺機能障害を伴っていたこと。
(イ)
石綿ばく露作業へ3年以上従事したこと。
[2]
 特別遺族給付金に係る医学的所見等の証明資料としては、死亡原因が各々の対象疾病によるものであることが記載された死亡診断書の写しなど、死亡原因を客観的に証明できる書類が必要です。その他、肺がんの場合には、上記[1]のイの要件に該当することを示す客観的な資料が、良性石綿胸水の場合には、その診断の根拠となった医学的資料が、、びまん性胸膜肥厚の場合には、上記[1]のオの(ア)の要件に該当することを示す客観的な資料が必要です。

(3)特別遺族給付金の額について

 特別遺族給付金は、特別遺族年金又は特別遺族一時金とされています。特別遺族年金は、死亡労働者等の配偶者等であって、死亡労働者等の死亡の当時その収入によって生計を維持していたことなどの要件を満たす人に対して、特別遺族一時金は、特別遺族年金を受けることができる遺族がいないときに配偶者等の遺族に対して、その請求に基づき支給されます。

[1]特別遺族年金
 労災保険法に基づく遺族補償年金の額等を勘案し、特別遺族年金を受ける権利を有する遺族及びその遺族と生計を同じくしている特別遺族年金を受けることができる遺族の人数に応じて以下の額とする考えです。
一人 240万円/年
二人 270万円/年
三人 300万円/年
四人以上 330万円/年
[2]特別遺族一時金
 労災保険法に基づく遺族補償一時金の額等を勘案して、次に掲げる場合に応じてそれぞれに定める額とする考えです。
施行日において特別遺族年金の受給権者がない場合には、1200万円。
特別遺族年金の受給権者の権利が消滅し、他に受給権者がなく、かつ、それまでに支給された年金額が1200万円に満たない場合には、その1200万円に満たない額。

III その他

 石綿による健康被害者が迅速に給付を受けられるよう、救済給付の申請受付窓口(機構の事務所等)と、特別遺族給付金の申請窓口(労働基準監督署)において、できるだけ両給付について適切に情報提供できるよう、連携を図りたいと考えております。



 報道発表本文に戻る