(別紙)

自動車環境税制研究会報告書の概要



1.自動車に係る環境問題の現状 

・ 自動車交通は、現代の社会の発展に大きく貢献している一方、自動車保有台数や自動車走行距離の伸びに伴い、大気汚染、地球温暖化等の様々な問題をもたらしている。(参考1参照)
・ 自動車交通の分野では、政策の大きな転換が求められている。
・ 本研究会では、自動車の「利用」に伴う問題を中心に税制の活用に絞って検討を進めるという観点から、大気汚染と地球温暖化を対象として検討。

2.税制の活用の必要性

・ 自動車環境対策としては、発生源対策、交通対策、道路構造・沿道対策として、様々な施策が進められており、これらを引き続き充実・強化させていくとともに、新たな施策を積極的に検討、実現させていく必要がある。
・ 経済的措置の活用を通じ、環境への負荷に伴い社会に生じる外部費用を内部化することで、現代の社会を環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会へと転換させていくことができる。
・ 国際的にも環境政策における経済的措置の活用が勧められている。
・ 自動車環境対策としての税の活用は、例えば、環境負荷の大きな自動車より環境負荷の小さな自動車を選好するよう動機づけていくことに有効である。供給側における規制とともに需要側において税を活用することにより、効果的に環境負荷の小さな自動車を普及させていくことが可能となる。

3.自動車環境対策としての税制の現状

・ OECD諸国の中では、自動車関係諸税に様々な形で既に環境保全の視点を取り入れている。(参考2参照)
・ 我が国における自動車関係諸税及び自動車環境税制の現状(参考3参照)

4.環境保全の観点からの税の考え方

・ 自動車に関する環境面からの税制の見直しの基本的考え方は次のとおり。
 @ 「環境への負荷を生じさせる活動等を行う者はその負荷に応じた費用を負担するべきである」との考え方に立ち、自動車から排出される環境負荷物質の量に応じて課税を行う。
 A 大気汚染と地球温暖化の両方の防止の観点を加味した税制としていく必要がある。
 B 一台当たりの環境負荷の原単位と自動車の交通量の各要素をそれぞれ低減させる観点から、将来的には、自動車関係税制全体が見直されることが望ましい。
・ 基本的考え方を踏まえ、当面、次のような考え方で見直しを行う。
 @ 環境負荷の大きな自動車を環境負荷の小さな自動車へ代替させることにより一台当たりの環境負荷物質の排出量を削減することを主眼として、税制の活用を重点的に検討する。燃料に係る税についての環境保全の観点からの見直しは、中長期的な検討課題として整理する。
 A 自動車の生産者が、環境負荷の大きな自動車の代替車種として低公害車等を積極的に開発、供給していく効果的なインセンティブとなるようなものとする。
 B 取得段階に加え、保有段階の税を環境保全の観点から見直すことにより、環境負荷の小さな自動車への代替を強力に促進していく。また、取得段階の税の低公害車等への税率の軽減を更に拡充していくことも必要である。
 C 現在の経済、財政状況にも十分配慮する。
 D 当面の見直しについては、できる限り早期に導入すべく、まずは実施可能なところから検討を行っていく。

5.大気汚染の観点からの当面の見直し

・ 大気汚染の観点を取り入れた税制は全国規模で適用していくことが望ましい。
・ 税は、自動車排出ガス量を評価軸とし、また、評価に当たっては自動車から排出される様々な大気汚染物質全てを考慮することが適当。具体的には、次のようなものが考えられる。なお、現行の税率の評価軸を残しつつ新たな評価軸を加味することにより、既存制度との整合性を図ることができる。
 @ 型式による評価
A 規制年次と低公害車等排出ガス技術指針による評価
 B 車齢による評価
  なお、ディーゼル車により高い税率を課すこと、燃料や車種の別を問わず、規制基準の値が大きい自動車に対してより高い税率を課すことも考えられる。

6.地球温暖化の観点からの当面の見直し

・ 地球温暖化対策としての自動車関係諸税のグリーン化は、運輸政策審議会が本年5月に、次のような基本的考え方をとった答申を取りまとめている。研究会としては、基本的に同答申と同様の考え方を採用する。
@ 需要側からの支援が必要である。
A 自動車関係諸税を活用し、また、税収中立とすることが望ましい。
B 保有に係る税のグリーン化は取得に係るものより効果的である。
C グリーン化は早期導入が望ましいが、景気等を勘案し、段階的導入についても検討するべき。
・ グリーン化の具体的方法については、同答申に示されている方法のうちどの考え方をとるかについて、様々な意見があった。

7.大気汚染対策と地球温暖化対策との組み合わせ

・ 大気汚染防止と地球温暖化防止のそれぞれの観点から独立して税額・付加軽減額を決め、これを足し合わせて環境面からの税額としていくことが適当である。
・ この場合、それぞれの観点からの税額等は、相互のバランスを十分考慮して決定する必要がある。
・ 例えば大気汚染と地球温暖化の両方の点で明らかに優れている電気自動車等については、双方の観点から軽減し、普及促進を図ることが適当である。
・ 運政審答申においてグリーン化の実施内容について今後の検討が必要とされている車両重量2.5t超の貨物車については、当面は、技術開発の動向を踏まえつつ、大気汚染防止の観点からの税制の見直しを先行して実施することも必要。

8.中長期的な課題

 当面見直すべき事項のほか、自動車関係税制に関し、今後、環境保全の観点から、以下の中長期的な課題について、検討していくことが必要。
 @ 軽自動車とその他の自動車との間の税率・税額格差について
 A 営業用と自家用の税率・税額格差について
 B 燃料課税の水準・在り方について
 C ガソリンと軽油の税率格差について
 D 自動車の社会に対して負うべき費用と税負担の関係について
 E 交通政策としての経済的措置の在り方について