2.第135回電源開発調整審議会等における当庁発言の内容

【和歌山発電所】

<審議会意見>

 本発電所が計画されている埋立地は、当初、住友金属和歌山製鉄所の一部移転により公害問題を解消する等地域の環境改善が図られることから、厳に埋立てを抑制すべきとされている瀬戸内海をやむを得ず埋立てて造成されたものである。
 本発電所計画は当初の埋立て目的を変更するものであることから、その具体化に際しては、本発電所、和歌山製鉄所等において十分な環境保全対策が講じられることにより、当初予定されていた製鉄所の一部移転と同等以上の環境保全効果が確保されることが前提である。さらに、瀬戸内海環境保全特別措置法の趣旨に鑑み、埋立てによって消失した海域環境の代償措置として十分な海域環境改善対策が必要である。
 ついては、通商産業省におかれては、事業者に対して、本発電所に係る環境保全対策及び海域環境改善対策を着実に実施するとともに、関係機関が実施する海域環境改善対策についても積極的に協力するよう指導されたい。


<幹事会意見>

1.大気環境の保全の観点から、環境負荷の少ない燃焼技術・排出ガス処理技術の積極的導入、維持管理の徹底等、大気汚染物質の一層の排出抑制に努力するとともに、窒素酸化物の排出量については、既設和歌山共同発電所と和歌山発電所の総排出量を既設和歌山共同発電所の現状排出量以下とするよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。
2.国道26号等の立地予定地点周辺の幹線道路においては、多くの地点で環境基準を超過しており、一部要請限度も超過している状況にある等、自動車交通騒音が深刻な状況にあるので、工事中の資機材の輸送にあたっては、関係行政機関と十分調整を図った上で、関連交通の臨港道路への誘導等による適切な分散化及び平準化などによる発生交通量の低減等、自動車交通騒音の防止に十分配慮するよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。
3.発電所建設予定地周辺海域は、一部で環境基準が超過しており、富栄養化の進行が懸念され、温排水の影響についても慎重な配慮が望まれる海域であると認識している。
事業者においては水質・水温の監視を実施し、所要の対策を講じることとしているが、通商産業省におかれては、これらが適切に実施されるよう事業者を適切に指導されたい。
また、当庁としては、温排水による水質及び海生生物への影響を極力抑制することが望ましいと考えているので、事業者において引き続き排熱エネルギー有効利用についての検討が進められるよう、通商産業省におかれては、事業者を指導されたい。


【湯之谷揚水発電所】

<審議会意見>

 新潟県北魚沼郡湯之谷村及び入広瀬村に電源開発株式会社が計画する湯之谷発電所の立地計画地周辺には、希少な猛禽類のイヌワシなど貴重な生物種が生息することから、野生生物の生息環境を保全するよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。


<幹事会意見>

1.本立地計画地周辺には、希少な猛禽類のイヌワシなどが数多く生息していることから、営巣等生息に極力影響が生じないよう、通商産業省におかれては、次の意見を踏まえ事業者を適切に指導されたい。
(1)以下の保全対策について可能な限り実施するよう努めること。
[1]地表部工事区域の縮小
[2]大型工事用車両が往来する工事用道路の短縮及びトンネル化
[3]発破工事を伴う原石山及び建設機械が稼働する仮設備等の適切な配置
[4]発破作業、建設機械、仮設備等における騒音対策
[5]工事後の速やかな野生生物の生息に配慮した緑化等復旧
(2)今後着工までの間も希少な猛禽類の調査を継続し、その結果を関係行政機関及び猛禽類に詳しい専門家等に報告すること。下部ダム周辺の調査については、特に留意しつつ実施すること。また、その調査結果をもとに、猛禽類に詳しい専門家等の見解を得、関係行政機関と協議し、上記(1)の保全対策を徹底するとともに、必要に応じて繁殖期における工事の休止期間の設定やその他所要の対策を講ずることにより、希少な猛禽類の営巣等生息に極力影響を及ぼさないよう努めること。
さらに、イヌワシ等希少猛禽類のモニタリング計画を策定したうえで工事中のモニタリングを確実に行い、その結果を関係行政機関及び猛禽類に詳しい専門家等に報告すること。
万一、繁殖活動の中断など生息状況に大きな変化が生じた際には、猛禽類に詳しい専門家等の見解を得、関係行政機関と協議のうえ、工事による影響が認められる場合は、工事を一時中断することを含め適切な対策を講じること。
なお、工事終了後も一定期間のモニタリングを行うこと。
(3)本立地計画地周辺に生息するイヌワシ等希少猛禽類、特にクマタカの生態については未解明な部分も多いので、今後も猛禽類に詳しい専門家等の指導助言を得ながら調査精度の向上のため調査手法の改善に努めること。
また、計画地周辺及び近傍には多くのイヌワシ等希少猛禽類の生息が確認されており、この近傍全体のイヌワシ等希少猛禽類に対する保全対策を関係行政機関及び猛禽類に詳しい専門家等と相談の上検討すること。

2.本立地計画地は、越後三山只見国定公園内にあることから、関連する工事の実施も含めて、国定公園の景観及び自然環境の保全に十分な対策を講じるよう通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

3.通商産業省におかれては事業の実施に際し、本件事業に係る今までの経緯を踏まえ、事業者となる電源開発株式会社に対し、自然環境の保全及び関連諸法令の遵守について、十分指導されたい。

4.工事の実施に伴う濁水の流出を防止するため、適切な対策を講じるとともに、水質監 視に万全を期するよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

5.調整池の濁りの長期化を防止するため、関係行政機関と調整の上適正なダム管理を実施するとともに、水質監視に万全を期するよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。


【小丸川発電所】

<審議会意見>

 宮崎県児湯郡木城町に九州電力株式会社が計画する小丸川発電所の立地計画地周辺には、希少な猛禽類のクマタカが生息するなど貴重な生物種が存在することから、野生生物の生息環境を保全するよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。


<幹事会意見>

1.本立地計画地周辺には、希少な猛禽類のクマタカが生息していることから、営巣等生息に極力影響が生じないよう、通商産業省におかれては、次の意見を踏まえ事業者を適切に指導されたい。
(1)クマタカの営巣等生息に影響が生じないように工事工程等に十分な配慮を行うこと。
特に、繁殖活動に影響を及ぼすおそれのある発破工事等については、一定期間休止することを含め十分な対策を講じること。
(2)改変区域の縮小に努め、工事後は速やかに野生生物の生息に配慮した緑化等復旧に努めること。
(3)今後着工までの間も希少な猛禽類の調査を継続し、モニタリング計画を策定した上で、工事中のモニタリングを確実に行い、その結果を関係行政機関及び猛禽類に詳しい専門家等に報告すること。万一、繁殖活動の中断など生息状況に大きな変化が生じた際には、猛禽類に詳しい専門家等の見解を得、関係行政機関と協議のうえ、工事による影響が認められる場合は、工事を一時中断することを含め保全対策を見直すなど適切な対策を講じること。
また、工事終了後も一定期間のモニタリングを行うこと。

2.上部ダムについては、木本による修景緑化対策を施す等、周囲の景観と調和するような配慮がなされるように、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。また、下部ダムについては、尾鈴県立自然公園内に位置していることから、景観保全のためダム湖岸の裸地部、ダムサイトの掘削法面、作業道路及び土捨場等の緑化について十分な措置を行うよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

3.工事の実施に伴う濁水の流出を防止するため、適切な対策を講じるとともに、水質監 視に万全を期するよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

4.調整池の濁りの長期化を防止するため、関係行政機関と調整の上適正なダム管理を実施するとともに、水質監視に万全を期するよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。


【御坊第二発電所】

<幹事会意見>

1.当該発電所の燃料として使用が予定されるオリマルジョンについては、重油に比べ、成分中の硫黄分、窒素分及び灰分が高く、燃焼時には極めて高度な環境負荷低減対策が必要とされる。このため、通商産業省におかれては、下記につき事業者を適切に指導されたい。
(1)環境負荷が少なく、十分な信頼性を有する燃焼技術・排出ガス処理技術の積極的導入、維持管理の徹底等、大気汚染物質の一層の排出抑制に努力すること。
(2)オリマルジョン利用に伴い発生する可能性のある重金属等微量物質については、今後モニタリングを行うなどにより環境保全上支障を生じることがないよう措置すること。
(3)今後、使用可能な硫黄分、窒素分等の少ないオリマルジョン燃料が開発された場合速やかに利用の切替を行うなど、可能な限り大気汚染の防止に努めること。

2.周辺地域において発生している梅生育障害に関し、梅生育障害対策研究会等において既設御坊発電所に起因する大気汚染物質が原因であるか否かの解明を早急に行うとともに、その結果御坊発電所が原因であると確認された場合、今回計画に関して、和歌山県等関係行政機関とも調整の上、適切な見直しを行うよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

3.埋立による敷地造成等の工事の実施に当たっては、水質汚濁防止について十分配慮し、必要に応じ所要の対策を講じるよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

4.事業実施に当たり、埋立により消失する藻場については、消滅する藻場の機能を十分に補完するための適切な代替措置を講じるよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

5.本計画の実施により、温排水の拡散範囲が拡大することから、水質及び周辺の海生生物への影響が懸念される。
事業者においては水質・水温の監視を実施し、所要の対策を講じることとしているが、通商産業省におかれては、これらが適切に実施されるよう、事業者を適切に指導されたい。
また、当庁としては、温排水による水質及び海生生物への影響を極力抑制することが望ましいと考えているので、事業者において引き続き発電施設の熱効率の向上や排熱エネルギーの有効利用についての検討が進められるよう、通商産業省におかれては、事業者を適切に指導されたい。

6.本計画発電所は、燃料としてオリマルジョンの使用が計画されているが、当該燃料は、一旦海域に流出した場合、水平方向のみならず水深方向へも拡散しやすいこと、主成分である天然オリノコは流出後、時間の経過とともに浮上し、高い粘着性を持つこと等の特性を有することから重・原油と比べて、海生生物等へ広く影響が及ぶことが懸念される。
また、当該燃料に混入されている界面活性剤についても、生分解性に乏しく、毒性が懸念されており、世界的に見ても使用が抑制されつつある物質であることから、当庁としては、当該燃料に混入されている界面活性剤について、より環境影響の小さいものへ変更することを含めた環境保全上の配慮・検討が必要であるものと認識している。
以上のことから、通商産業省においては、以下の事項について事業者を適切に指導されたい。
(1)オリマルジョンが海域へ流出した場合の挙動、海生生物等への影響について、引き続き検討を行い、漏洩防止対策、漏洩時の回収・除去対策に反映するとともに、今後、環境影響の小さい界面活性剤を用いたオリマルジョンの開発を促進し、その採用を図ること。
(2)揚陸作業時及び貯蔵施設からの燃料の流出事故を未然に防止するために、緊急離脱装置、落下防止装置等の漏洩防止設備を導入するとともに、安全管理組織の整備、教育訓練を実施する等、十分な漏洩防止対策を講じること。
(3)オリマルジョンが海上へ漏洩した場合に備え、必要かつ十分な除去・回収機材を整備する等、海域環境への影響を極小化するために万全の対策を講じること。

7.埋立材の調達予定地である御坊市の採石場周辺には希少な猛禽類のハヤブサが生息していることから、発破工事等による繁殖活動への影響が懸念される。また、貴重種を移植(殖)するとあるが、その後の生育生息状況の悪化が懸念される。
このため、埋立材の調達にあたっては、下記の点に十分な配慮がなされるように、通商産業省におかれては事業者を指導されたい。
(1)ハヤブサの営巣等生息に影響が生じないよう工事工程等に十分な配慮を行うこと。 特に、発破工事等は猛禽類に詳しい専門家の意見も踏まえ、繁殖活動に影響を及ぼすおそれのないよう、休止も含め十分な検討を行うこと。
(2)工事開始までの調査を継続して行い、モニタリング計画を策定したうえで工事中のモニタリングを確実に行い、猛禽類に詳しい専門家等の見解を得、関係行政機関と協議のうえ、必要に応じ適切な保全対策を講じること。
(3)貴重種の移植(殖)についての調査・検討を事前に十分行い、保全のための対策を確実に講じるとともに、その後のモニタリング調査についても確実に行い、学識経験者及び関係行政機関と協議し、生育生息状況の悪化があった場合は、適切な対策を講じること。


【碧南火力発電所】

<幹事会意見>

1.立地予定地の周辺地域においては、浮遊粒子状物質に係る環境基準の達成状況が極めて低く、二酸化窒素濃度が環境基準の上限値に近いことから、大気環境への負荷低減対策の推進が不可欠である。このため、通商産業省におかれては、下記につき事業者を適切に指導されたい。
(1)環境負荷の少ない燃焼技術・排出ガス処理技術の積極的導入、維持管理の徹底等、大気汚染物質の一層の排出抑制に努力すること。
(2)硫黄分、窒素分等の少ない石炭の利用に配慮すること。
(3)石炭利用に伴い発生する可能性のある重金属等微量物質については、今後モニタリングを行うなどにより、環境保全上支障を生じることがないよう措置をすること。
(4)既設1〜3号機においても排出抑制対策を講じることにより、発電所全体からの硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんの排出量を現状以下とすること。

2.工事中に排出される窒素酸化物により、発電所敷地内の一部で環境基準を超える二酸化窒素濃度が予測されているが、周辺において環境基準の超過が生じないよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

3.石炭灰の処理については、引き続き有効利用技術の開発に努め、利用分野と利用量の拡大を図り既設灰捨地埋立完了時には全量有効利用となるよう、通商産業省におかれては、事業者を適切に指導されたい。

4.衣浦湾は、閉鎖性が高く一部で環境基準を超過し、富栄養化の進行している海域であり、温排水の影響についても慎重な配慮が望まれる海域であると認識している。本計画は、出力当たりの温排水排熱量は抑制されているものの、温排水の拡散範囲が拡大することから、水質及び周辺の海生生物への影響が懸念される。
事業者においては水質・水温及び海生生物の監視を実施し、所要の対策を講じることとしているが、通商産業省におかれては、これらが適切に実施されるよう事業者を適切に指導されたい。
また、当庁としては、温排水による水質及び海生生物への影響を極力抑制することが望ましいと考えているので、事業者において、引き続き発電施設の熱効率の向上や排熱エネルギーの有効利用についての検討が進められるよう、通商産業省におかれては、事業者を適切に指導されたい。


【武豊火力発電所】

<幹事会意見>

1.立地予定地の周辺地域においては、浮遊粒子状物質に係る環境基準の達成状況が極めて低く、二酸化窒素濃度が環境基準の上限値に近いことから、大気環境への負荷低減対策の推進が不可欠である。このため、通商産業省におかれては、下記につき事業者を適切に指導されたい。
(1)環境負荷の少ない燃焼技術・排出ガス処理技術の積極的導入、維持管理の徹底等、大気汚染物質の一層の排出抑制に努力すること。
(2)既設1〜4号機においても排出抑制対策を講じることにより、発電所全体からの硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんの排出量を現状以下とすること。

2.国道247号等の立地予定地点周辺の幹線道路においては、環境基準を全ての時間帯において超過しており、一部要請限度も超過している状況にある等、自動車交通騒音が深刻な状況にあるので、工事中の資機材の輸送にあたっては、関係行政機関と十分調整を図った上で、関連交通の臨港道路への誘導による適切な分散化及び平準化などによる発生交通量の低減等、自動車交通騒音の防止に十分配慮するよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

3.衣浦湾は、閉鎖性が高く一部で環境基準を超過し、富栄養化の進行している海域であり、温排水の影響についても慎重な配慮が望まれる海域であると認識している。本計画は、出力当たりの温排水排熱量は抑制されているものの、温排水の拡散範囲が拡大することから、水質及び周辺の海生生物への影響が懸念される。事業者においては水質・水温及び海生生物の監視を実施し、所要の対策を講じることとしているが、通商産業省におかれては、これらが適切に実施されるよう事業者を指導されたい。
また、当庁としては、温排水による水質及び海生生物への影響を極力抑制することが望ましいと考えているので、事業者において、引き続き発電施設の熱効率の向上や排熱エネルギーの有効利用についての検討が進められるよう、通商産業省におかれては、事業者を適切に指導されたい。


【小国地熱発電所】

<幹事会意見>

1.本計画は阿蘇くじゅう国立公園及び耶馬日田英彦山国定公園内にあることから、関連する工事の実施も含めて、国立公園並びに国定公園の景観及び自然環境の保全に十分な対策を講じること。特に、輸送管については、地下化を行う等遮蔽に十分配慮するとともに、植栽木等の適切な維持管理を行うよう、通商産業省におかれては事業者を適切に指導されたい。

2.地熱発電所の環境に及ぼす影響については、地熱流体の挙動等未だ不明な点も少なくない現状を踏まえ、通商産業省におかれては、以下の点について万全を期すよう事業者を指導されたい。
周辺の温泉に対する影響を把握するために計画されているモニタリングに当たっては、学識経験者の意見を踏まえて行い、また、地元県等と調整を図る等、モニタリングの実施に万全を期すとともに、温泉利用との状況を勘案し、必要に応じ、温泉の保護のための措置を講ずること。


○佐梨川発電所については意見なし

<参考>

電源開発調整審議会について
 [設置根拠]電源開発促進法(昭和27年7月31日法律第283号)
 (抜粋)第8条(設置)総理府に、電源開発調整審議会(以下「審議会」という。)を置く。
 第10条(組織)審議会は、会長及び委員16人をもって組織する。
 2 会長は、内閣総理大臣をもって充てる。
 3 委員は、左に掲げる者をもって充てる。
一〜六 (略)
七 環境庁長官
八〜九 (略)