報道発表資料本文


(別添1)
                           平成9年6月20日

  環境庁長官
   石井 道子 殿
                      中央環境審議会会長
                          近藤 次郎


       ダイオキシン類の排出抑制対策のあり方について
        (有害大気汚染物質対策に関する第四次答申)


 平成7年9月20日付け諮問第24号により中央環境審議会に対してなされた「今
後の有害大気汚染物質対策のあり方について(諮問)」のうち、ダイオキシン類の排
出抑制対策のあり方については、下記のとおり結論を得たので答申する。

                 記

 ダイオキシン類の排出抑制対策のあり方については、別添の排出抑制専門委員会報
告のとおりとすることが適当であり、政府においては、この報告を踏まえ、ダイオキ
シン類を大気汚染防止法附則第9項の指定物質に指定する等の所要の措置を早急に講
じ、ダイオキシン類による健康リスクの低減に努められたい。
なお、ダイオキシン類については、その環境中への排出実態や環境中の挙動等に関す
る科学的知見が未だ十分ではないので、引き続き知見の収集整理を行い、新たな知見
等に基づき施策の見直しを行うことが必要である。



(別添2)
  ダイオキシン類に係る大気環境濃度低減のための目標に関する検討会報告
               (概要)

1.目標について
 ダイオキシン類については、発生源からの排出のほとんどが大気中であるにも関わ
らず、大気から人体に直接吸収される量は一部分であり、大部分は食品による摂取で
あること、また、大気から、水、土壌等を経て食品に至る環境中の挙動が必ずしも明
らかでないなど、従来環境基準が設定された物質とは異なる性質を有している。この
ため、現時点で、環境基準のような大気環境濃度に係る目標を科学的に厳密に設定す
ることは困難である。
一方、ダイオキシン類について大気系の発生源の排出抑制対策を進めていく場合、そ
の効果を評価するために、大気環境濃度に関する目標値があることが望ましく、特に
ダイオキシン類を大気汚染防止法の指定物質に指定して排出抑制対策を行う場合は、
指定物質排出施設の設置者に対して知事等が報告徴収を行う判断要件として、大気環
境濃度に関する目標値があることが望まれる。
このような状況を踏まえ、環境庁大気保全局は、平成9年4月に「ダイオキシン類に
係る大気環境濃度低減のための目標に関する検討会」(座長:鈴木継美前国立環境研
究所長)を設置し、健康リスクの評価結果と環境中での挙動に係る知見及び曝露アセ
スメントから大気環境濃度低減のための目標について検討を行い、6月に報告をとり
まとめた。

2.目標値の推定方法
目標となる大気環境濃度については、ダイオキシンリスク評価検討会の検討結果を基
礎データとして、曝露ケース等を想定した環境中での挙動と人への曝露に関するケー
ススタディを行った。
食品や水等を含めた全てのダイオキシン摂取量のうち大気経由による呼吸器からの吸
入による摂取の割合(大気経由割合)は、一般的な生活、魚からの摂取が多い食生
活、ごみ焼却炉周辺等のケースの中から「一般的な生活における食品摂取」を想定し
たケースを中心にみると、ダイオキシン類摂取量に占める大気経由割合は、おおよそ
5から10%程度ではないかと考えられた。この大気経由割合に基づき、健康リスク評
価指針値(5pg-TEQ/kg/day)を配分すると、0.83 から 1.67pg-TEQ/m3程度の大気環境
濃度が算出された。
一方、「魚からの摂取が大きい場合」を想定したケースでは、食品からの摂取のみで
既に健康リスク評価指針値の 5pg-TEQ/kg/dayを超えるケースがあり、また、「ごみ焼
却施設周辺」の1ケースでも合計摂取量が 5pg-TEQ/kg/dayを超えていた。これらに
ついて、大気環境濃度を低減した場合のケーススタディを行ったところ、大気環境濃
度の上限が 0.8〜1.0pg-TEQ/m3程度に低減された場合には、ダイオキシン類摂取量が
健康リスク評価指針値をほぼ下回ると推定された。
このように、現状のリスク評価、ダイオキシン類の環境中での挙動、曝露アセスメン
ト等の科学的知見に基づき、曝露ケース等を想定した環境中での挙動と人への曝露に
関するケーススタディを行った結果から、大気環境中のダイオキシン類濃度の現状を
勘案し総合的に判断すると、大気環境濃度低減のための目標は、当面、年平均値
0.8pg-TEQ/m3以下とすることが適当と考えられた。

3.目標に係る留意点等
この目標は、指定物質に係る措置を円滑に実施する見地から、必ずしも十分とはいえ
ない現状の科学的知見を最大限活用して導き出されたものであり、ダイオキシン類の
環境中の挙動等に関する科学的知見の充実に応じて、見直しを図ることが重要であ
る。
また、この目標は、ダイオキシン類の健康影響の未然防止のため維持されることが望
ましい水準として示された健康リスク評価指針値を踏まえて算定されたものであっ
て、将来にわたって人の健康に係る被害が未然に防止されるよう、一生涯という長期
にわたる曝露を想定している。従って、大気環境濃度がこの目標を超える場合であっ
ても、ただちにそれが人の健康に影響を及ぼすとはいえないことに留意する必要があ
る。
一方、ダイオキシン類の環境中の挙動が十分明らかにはなっていないこと、特に、大
気環境とその他の環境媒体におけるダイオキシン類の蓄積量の関係等が明らかではな
いことを考慮すれば、この大気環境に係る目標が達成されたとしても、発生源におい
てそれ以上排出削減を行う必要性がなくなるものではなく、健康影響の未然防止の見
地から、継続的に実施可能な最善の努力を払うべきである。



(参考)
          大気汚染防止法の指定物質関係規定

大気汚染防止法附則
(指定物質抑制基準)
9 環境庁長官は、当分の間、有害大気汚染物質による大気の汚染により人の健康に
係る被害が生ずることを防止するために必要があると認めるときは、有害大気汚染物
質のうち人の健康に係る被害を防止するためその排出又は飛散を早急に抑制しなけれ
ばならないもので政令で定めるもの(以下「指定物質」という。)を大気中に排出
し、又は飛散させる施設(工場又は事業場に設置されるものに限る。)で政令で定め
るもの(以下「指定物質排出施設」という。)について、指定物質の種類及び指定物
質排出施設の種類ごとに排出又は飛散の抑制に関する基準(以下「指定物質抑制基
準」という。)を定め、これを公表するものとする。

(勧告)
10 都道府県知事は、指定物質抑制基準が定められた場合において、当該都道府県の
区域において指定物質による大気の汚染により人の健康に係る被害が生ずることを防
止するために必要があると認めるときは、指定物質排出施設を設置している者に対
し、指定物質抑制基準を勘案して、指定物質排出施設からの指定物質の排出又は飛散
の抑制について必要な勧告をすることができる。

(報告)
11 都道府県知事は、前項の勧告をするために必要な限度において、同項に規定する
者に対し、指定物質排出施設の状況その他必要な事項に関し報告を求めることができ
る。





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