平成10年12月22日



地球温暖化対策に関する基本方針(素案)




1.地球温暖化対策の推進に関する基本的方向

(1)基本方針の策定の背景と意義

 地球温暖化問題とは、人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることにより、地球全体として、地表及び大気の温度が追加的に上昇し、自然の生態系及び人類に悪影響を及ぼすものであり、その予想される影響の大きさや深刻さから見て、まさに人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の一つである。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告によれば、主要な要因に不確実性はあるが、様々な証拠を考慮すると地球の気候に対する検出可能な人間の影響があることが示唆されている。また、大気中の温室効果ガス濃度、その気候影響等に関する中位の予測によれば、2100年には約2oCの平均気温の上昇、約50cmの海面水位の上昇などの影響が予測され、植生、水資源、食料生産、洪水・高潮、健康影響の分野で大きな影響が出てくるものとされている。

 国際社会においては、この地球温暖化問題に対処するため、「気候変動に関する国際連合枠組条約(以下「条約」という。)」が1992年5月に採択され、我が国も同年6月の環境と開発に関する国連会議において署名、1993年5月に受諾し、条約は1994年3月に発効した。条約では、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることを究極的な目的とし、そのような水準は、生態系が気候変動に自然に適応し、食料の生産が脅かされず、かつ、経済開発が持続可能な態様で進行することができるような期間内に達成されるべきであるとしている。

 1997年12月に京都で開催された条約の第3回締約国会議(COP3)においては、長期的・継続的な排出削減の第一歩として、先進国の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六ふっ化硫黄(SF6)の6物質)の排出量について法的拘束力のある数値目標を盛り込んだ「京都議定書」が採択され、我が国については、温室効果ガスの総排出量を「2008年から2012年の第1約束期間に1990年レベル(HFC、PFC、SF6については1995年を基準年とすることができる。以下単に「1990年レベル」という。)から6%削減」するとの目標が定められた。京都議定書の発効の条件整備として、排出量取引等のいわゆる「京都メカニズム」等の国際的なルールの確立等が必要であり、1998年11月に開催された第4回締約国会議(COP4)では「ブエノスアイレス行動計画」が策定され、第6回締約国会議(COP6)での合意に向けて引き続き国際的な調整作業が行われることとなっている。

 地球環境問題、とりわけ、地球温暖化問題は、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式の見直しを迫るものであり、その意味で京都議定書の採択は転換点となるものである。温室効果ガスの排出量は、石油危機後の石油価格高騰期を除き一貫して増加基調にあり、また、多くの先進国で温室効果ガスの削減目標を設定し、取組が始まった1990年以降においても、一部の国を除き、その排出量は増加している。我が国においても、温室効果ガスの総排出量は、「地球温暖化防止行動計画」(1990年、地球環境保全に関する関係閣僚会議決定)において二酸化炭素の排出量の安定化目標が示され、取組が開始された1990年以降も増加傾向にある。ちなみに、1996年度の我が国の二酸化炭素の排出量は、1990年度比で9.8%の増加となっている。エネルギー需要側からみた場合、部門別には、二酸化炭素排出量全体の約4割を占める産業部門の排出量は微増で推移している。一方、運輸部門及び民生部門の排出量の伸びが著しい。エネルギー効率が既に世界最高水準にある我が国にとっては、温室効果ガスの抑制等を図ることは容易な課題ではないが、人類の将来のため、そして、地球温暖化問題の解決に向け、一貫して増加基調にある温室効果ガスの排出量をまず減少基調に転換させ、その上で京都議定書の目標の達成、さらなる長期的・継続的な排出削減を図っていかなければならない。

 我が国は、過去2度の石油危機を通じて、産業部門を中心に相当の省エネルギー努力を積み重ねており、更なる対策に要する費用は相対的に高いものと予想される。こうした費用を負担しつつ、地球温暖化問題の解決を図っていくためには、我が国社会経済が引き続き活力を維持しつつ地球温暖化対策(温室効果ガスの排出の抑制並びに動植物による二酸化炭素の吸収作用の保全及び強化(以下、「温室効果ガスの排出の抑制等」という。)その他の国際的に協力して地球温暖化の防止を図るための施策)を組み込んでいくことが必要である。その際、地球温暖化対策を講ずる上で、対症療法的な対策だけでは不十分であり、都市・地域構造、交通・物流体系、エネルギー供給構造、生産構造からライフスタイルまで広範な社会経済システムを、二酸化炭素、メタン、HFC等の温室効果ガスの排出量の削減等が図られるように転換していかなければならない。これは、社会を構成するすべての主体が取り組むことによって初めて実現される。その手法は、規制的なもの、市場メカニズムを活用するもの、国民のライフスタイルの変更につながる社会的な仕組みや社会資本を整備するもの、環境教育や情報開示の中で自らが努力するもの等多様である。そして、これらの過程で、新たな投資や技術革新、ビジネス等を創出し、活力のある持続可能な社会経済の発展を目指していく必要がある。

 また、地球規模の課題である地球温暖化への対応は、先進国のみならず、開発途上国の参加が不可欠であるが、これを促すためには、先進国が京都議定書上の目標を確実に達成する具体的道筋を明らかにしておくことが極めて重要である。

 本基本方針は、「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)」第7条の規定に基づき、地球温暖化対策の基本的な道筋を明らかにし、国、地方公共団体、事業者、国民の各主体の措置に関する基本的事項を定めるものである。

(2)地球温暖化対策の目指すべき方向

今後の地球温暖化対策に当たっては、まず、増加基調にある温室効果ガスの総排出量を早期に減少基調に転換し、その減少基調を京都議定書の目標の達成、さらなる長期的・継続的な排出削減へと導くことを目指す。

 ア 京都議定書の目標の達成
我が国として温室効果ガスの総排出量を「2008年から2012年の第1約束期間に1990年レベルから6%削減する」ことを内容とする京都議定書の採択に合意したことを踏まえ、そのため当面必要と考えられる地球温暖化防止のための取組を積極的に推進していく。対策が遅れれば遅れるほど、京都議定書の目標達成のために短期間で大幅な削減を達成しなければならなくなることから、今日の段階で地球温暖化防止行動計画、地球温暖化対策推進大綱(1998年、地球温暖化対策推進本部決定)に盛り込まれた個々の対策など実施可能な対策は直ちに実施し、早期に減少基調に転換した上で、京都議定書の目標の達成を図る。

 京都議定書の早期発効の条件整備を図るため、京都メカニズム等のCOP6での合意に向けた国際交渉に積極的に参画する。また、我が国として京都議定書の締結に備えるため、国際的なルールの策定を踏まえ、必要な措置について検討を進める。

イ 温室効果ガスの更なる長期的・継続的な排出削減
 京都議定書の目標の達成を図り、さらなる長期的・継続的な排出削減へと導く。このためには、個々の対策を計画的に実施していくと同時に、21世紀の我が国の社会経済動向を踏まえ、各分野の政策全体の整合性を図りつつ、温室効果ガスの排出削減が組み込まれた社会の構築を目指す。

(3)地球温暖化対策の策定・実施に当たっての指針となる事項

  我が国における地球温暖化対策は、以下の事項を指針として策定・実施する。

 ア 国内対策の着実な推進
 京都議定書で定められた我が国の排出削減目標の達成に当たっては、COP6において合意される予定の排出量取引等の活用は補足的なものとし、国内対策を基本とする。

 イ インセンティブ付与型の施策の重視
 温室効果ガス、とりわけ二酸化炭素の発生源は多種多様であることから、幅広い抑制効果を確保するためには、規制的措置のみならず、クリーンエネルギー自動車・低公害車、低燃費車や太陽光発電等対策の導入に際してのコストの制約があるものが多いことを踏まえ、技術開発・排出抑制・対策導入を誘導するような経済的措置を活用したインセンティブ付与型施策を重視していく。

 ウ すべての主体の参画及び透明性の確保
 地球温暖化対策の推進に当たっては、国、地方公共団体、事業者、国民といったすべての主体の積極的な取組が不可欠であるとともに、国民等が組織する民間の団体が積極的な役割を果たす必要がある。その際、各主体は相互間での連携を強化するために、事業者・国民・民間団体は、国・地方公共団体の対策について、策定から実施状況の点検、対策の見直しに至るプロセスに参画するとともに、その透明性の確保を図る。また、国と地方公共団体は、相互の情報交換等を通じて緊密な連携を図るものとする。

 エ 国際協力の推進
 地球温暖化は、その原因と影響が地球規模にわたることから、各国の努力のみならず、国際的協調の下での更なる取組が不可欠である。まず、京都議定書で提起された諸課題の解決のため、我が国としては率先的に国際協力に努めることが肝要である。また、二酸化炭素の排出は、今後の世界的な人口増加と経済発展に伴い急激に増加することが予想されることから、我が国は、優れた技術力と環境保全の蓄積された経験を背景に、国際協力を通じて世界の取組の先導的役割を果たしていく。

 オ 施策の実効性の確保
 本基本方針の下に実施される対策については、各主体がそれぞれ自らの対策について、その特性を踏まえ、定期的に実施状況の点検を行いその実効性を検討するとともに、対策の見直しを随時行うこととし、それらの結果について公表する。また、国は、常に温室効果ガスの総排出量を把握し、その動向について分析・評価するものとする。環境庁長官は、必要に応じ、関係行政機関の長に対し、温室効果ガスの排出の抑制等に資する施策の実施に関し、地球温暖化対策の推進について協力を求めるとともに、関係都道府県知事に対し、必要な資料の提出又は説明を求めるものとする。


2.国、地方公共団体、事業者及び国民のそれぞれが講ずべき温室効果ガスの排 出の抑制等のための措置に関する基本的事項

(1)国の措置に関する基本的事項

 国は、我が国全体の温室効果ガスの排出の抑制等に関し、最も重要な責任を有しており、全省庁挙げて対策を講ずることとする。国の措置に関しては、以下の事項を基本とする。

 ア 国は、あらゆる政策手段を動員して、着実に温室効果ガスの排出の抑制等が達成されるよう、総合的な地球温暖化対策を策定・実施する。その際、国は、各主体の参加を得て、政策立案、全体の調整及び実効性の確保といった役割を果たし、社会全体としての温室効果ガスの排出の抑制等を総合的に進める。また、自らの施策について当該施策の目的の達成との調和を図りつつ、温室効果ガスの排出の抑制等が行われるよう配意するものとする。

 イ 国は、2010年に向けて緊急に推進すべき地球温暖化対策として策定された地球温暖化対策推進大綱に盛り込まれたエネルギー需給両面の対策、代替フロン等の排出抑制対策、吸収源対策、国際協力の推進、ライフスタイルの見直しをはじめ、幅広い分野の対策について、具体的目標の設定に努めつつ、関係省庁の十分な連携を図り推進するものとする。さらに、その実施状況について、地球温暖化対策推進本部において毎年定期的にフォローアップを行う。併せて、地球温暖化対策の効果を評価する手法について検討を行う。

 ウ こうした施策を実現する手段としては、社会資本の整備、規制的措置、経済的措置、環境影響評価等の措置の活用を図る。経済的手法については、その温室効果ガスの排出削減上の効果、国民生活・経済活動や財政の影響等に関して総合的な検討を進める。また、夏時間等の温室効果ガスの排出抑制につながる国民全員に関わる社会的な制度についての国民的議論を行う。さらに、ラベリング等の活用により、事業者及び国民による温室効果ガスの排出が少ない製品の開発・選択を促すとともに、全国地球温暖化防止活動推進センターを積極的に活用し、製品による温室効果ガスの排出量に関する情報の収集・提供等を行う。

 エ 地球温暖化対策の効果的な推進を図るため、地方公共団体とも連携し、先駆的なモデル事業を集中的に実施する。

 オ 地球温暖化対策の必要性について環境教育・広報を推進するとともに、民間団体の活動の支援を行う。また、我が国における温室効果ガスの総排出量を速やかに算定し、国民にわかりやすい形で公表する。

 カ 革新的な環境・エネルギー技術について研究開発を強力に推進する。その際、温室効果ガスの貯留、固定化技術についても追求する。また、クリーンエネルギー自動車・低公害車、低燃費車や太陽光発電等は、技術的には十分実用可能な段階に達しつつあるが、現状では経済性の面における制約が存在することから、普及促進策を推進するとともに、低コスト化、性能面での向上に向けた技術開発等を推進する。

 キ 全国地球温暖化防止活動推進センターの運営に当たっては、民間団体や国民の協力・参加が適切に確保されるものとする。

(2)地方公共団体の措置に関する基本的事項

ア 温室効果ガスの排出の抑制等の施策
地方公共団体は、地域の自然的・社会的条件に応じて、とるべき施策を判断し、きめ細かい温暖化対策を講ずる。地方公共団体の措置に関しては、例えば、以下の事項を基本とする。

① 地方公共団体は、地域づくりの推進者として、温室効果ガスの排出の抑制等に資する都市整備の推進、社会資本整備等の基盤づくり、木質資源の利用の推進並びに植林、里山林の整備、国土緑化運動の推進及び都市緑化等の吸収源対策を実施する。

  ② 地方公共団体は、事業者や国民に身近な公的セクターとして、地球温暖化対策やエネルギーに関する教育、民間団体の活動の支援等を行うとともに、先駆的な取組の紹介や相談対応等を実施する。その際、都道府県地球温暖化防止活動推進センター及び地球温暖化防止活動推進員が設置・委嘱されている場合には、これらを活用し、きめ細かな対応を行う。

  ③ 地方公共団体は、対策の実効性を確保するため、社会資本の整備等その実施する対策について、具体的目標の設定に努めつつ実施することとし、定期的にフォローアップを行う。
 
  ④ 都道府県地球温暖化防止活動推進センターの運営に当たっては、民間団 体や住民の協力・参加が適切に確保されるものとする。

 イ 地方公共団体の事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のため  の措置に関する計画
 地方公共団体の事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置に関する計画(以下、「地方公共団体の実行計画」という。)の策定・公表等については、以下を基本とする。

  ① 地方公共団体は、本基本方針3.に定める「政府の実行計画」の規定に準じて、実行計画の策定、点検、公表等を行うものとする。また、その策定に当たっては、地域の自然的・社会的条件に応じ、創意工夫して行うものとする。なお、市町村は、その規模能力に応じて地方公共団体の実行計画を策定する。

  ② 地方公共団体の事業には、廃棄物処理、水道、下水道、公営交通、公立学校、公立病院等も含まれること。

(3)事業者の措置に関する基本的事項

事業者は、製造等に伴い温室効果ガスを排出するとともに、家庭の消費生活で利用する自動車、電気製品等を製造・販売する立場にあり、温室効果ガスの排出抑制に関し様々な工夫をすることができる。事業者の措置に関しては、以下を基本とする。

 ア それぞれの事業者が創意工夫を凝らしつつ、事業内容等に照らして適切で効果的・効率的な対策を自主的かつ積極的に実施するとともに、従業員等への環境教育を推進する。特に、地球温暖化対策は、資源やエネルギーの有効利用を通じて、経済的な利益も生み出し得るものであり、これらを踏まえた創意工夫が望まれる。また、温室効果ガスの排出の少ない製品の開発、廃棄物の減量等、他の主体の温室効果ガスの排出抑制等に寄与するための措置についても可能な範囲で推進する。

 イ 事業者は、社会的存在であり、単独に又は共同して、自ら策定した地球温暖化への取組に関する計画及び実施状況を積極的に公表するなど、地球温暖化対策に関する情報を可能な限り開示するよう努める。また、国及び地方公共団体が実施する温室効果ガスの排出の抑制等のための施策に協力する。

 ウ 特に最終消費財を製造する事業者は、ライフサイクルアセスメントの考え方を踏まえつつ、製品のライフサイクルを通じ、温室効果ガスの排出量等を把握するとともに、消費者の商品選択の際の参考情報として活用できるよう、その結果の提供に努める。

 エ 地球温暖化対策は、あらゆる社会経済活動にかかわり、また、それを見直していく作業であり、その過程で、投資を呼び、技術革新を生み、新たなビジネスをもたらすものであり、広範な事業者にとって新事業の大きなチャンスであることを念頭に置いて取組を進める。

(4)国民の措置に関する基本的事項

 近年、国民の日常生活に起因する温室効果ガスの排出量が増大し、その排出の抑制等は重要な課題となっていることから、例えば、以下の事項を基本としつつ、地球温暖化防止のための活動に参加することが期待される。

 ア 大量消費、大量廃棄型の生活様式を見直し、温室効果ガスの排出の少ない製品・設備やサービスの選択、住宅・建築物における断熱性の向上、節電、不要不急の自家用乗用車使用の自粛、自動車の空ぶかし・急加速・急発進の自粛、経済走行による走行等環境にやさしい運転方法の推進、公共交通機関の利用促進等、日常生活に伴う温室効果ガスの排出の抑制に努める。

 イ 家庭からの温室効果ガスの排出量は、自動車・各種電気製品等の効率、機器の台数、使用時間に左右されるので、これらの要因に即して排出抑制のための工夫を行う。

 ウ 水道使用の節約、リサイクル等は間接的に温室効果ガスの排出抑制に資するので、工夫して取組を行う。

 エ 地域のリサイクル活動、国民参加による森林づくり、緑化活動など、国、地方公共団体及び民間団体の地球温暖化対策に関する活動への参加に努める。

 オ 需要側の行動・提案が、機器等の供給側の工夫を促すので、消費者として積極的に事業者に対して提案するよう努める。

 カ 地球温暖化の機構や影響、地球温暖化対策及びエネルギーについて理解を深めるよう自ら学習に努める。また、国及び地方公共団体が実施する温室効果ガスの排出の抑制等のための施策に協力する。



3.政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画に関する事項

(1)政府の実行計画の策定、変更及び公表
 政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(以下、「政府の実行計画」という。)を策定し、又は変更しようとするときは、その案を公表し、閣議の決定を求めるとともに、閣議決定があったときは、遅滞なく公表しなければならない。

(2)政府の実行計画に定めるべき措置の内容、当該措置により達成すべき目標  等
 ア 政府の実行計画に定めるべき措置の内容
  ① 財やサービスの購入・使用に当たっての配慮
 低燃費・低公害車の導入、自動車の効率的利用、自転車の活用、エネルギー消費効率の高い機器の導入、用紙類の使用量の削減及び再生紙の使用、代替フロン系冷媒の回収・破壊や非フロン系エアゾール製品の購入・使用の徹底等
  ② 建築物の建築、管理等に当たっての配慮
 温室効果ガスの排出量の低減に資する素材の選択、温室効果ガスの排出の少ない空調設備の導入、冷暖房における適正な温度管理、太陽光利用等新エネルギーの有効利用、水の有効利用、周辺や屋上の緑化等
  ③ その他の事務・事業に当たっての環境保全への配慮
    エネルギー使用量の抑制、ごみの分別、廃棄物の減量等
  ④ 職員に対する研修等
    職員に対する地球温暖化対策に関する研修の機会の提供、情報提供等
  ⑤ 計画の推進体制の整備と実施状況の点検
    推進体制、点検体制の整備等

 イ 当該措置により達成すべき目標
 計画の期間は5年間とし、計画には、それぞれの措置の目標とともに、温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標を定めるものとする。

(3)政府の実行計画に基づく措置の実施状況(温室効果ガスの総排出量を含む。)の公表
 政府は、自らの事務及び事業の実施に伴って排出される温室効果ガスの総排出量を含め、当該計画の実施状況を毎年点検し、その結果を公表するものとするともに、必要に応じ、計画の見直しを行うものとする。



4.温室効果ガスの総排出量が相当程度多い事業者について温室効果ガスの排出の抑制等のための措置(他の者の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与するための措置を含む。)に関し策定及び公表に努めるべき計画に関する基本的事項

(1)温室効果ガスの総排出量が相当程度多い事業者にあっては、温室効果ガスの種別、発生源及び排出抑制対策の態様も多様であることに鑑み、効果的な対策を推進するため、単独に又は共同して、排出抑制等のための措置に関する計画を策定するよう努めるものとする。その際、各事業者が講ずる措置の具体的内容は事業者の自主的な判断に委ねられるものとする。

(2)計画を策定する事業者は、その規模及び形態が多様であるため、それぞれの実情に応じて創意工夫を凝らして計画を策定するものとする。この場合、事業者は、当該計画においていかなる要素及び内容の計画を策定するかは、その自主性に委ねられるものである。また、温室効果ガスの排出の少ない製品の開発、廃棄物の減量化等、他の主体の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与するための措置についても可能な範囲で計画に盛り込むこととする。

(3)計画を策定した事業者は、当該計画を公表するよう努めるとともに、当該計画に基づき講じた措置の実施状況についても公表するよう努める。



5.その他地球温暖化対策に関する基本的事項

(1)国は、大気中における温室効果ガスの濃度変化の状況並びにこれに関連する大気、海洋、陸域等での気候に係る変動及び生態系の状況を把握するため、次に掲げるような観測・監視に関する業務を推進するものとする。
  ① 組織的な観測・監視の実施
  ② 観測・監視手法の研究開発
  ③ 観測・監視データの利用・提供

(2)国は、地球温暖化及びその影響の予測に関する調査研究、温室効果ガスの排出の抑制等のための技術に関する調査及び研究開発その他の地球温暖化対策の策定に必要な次に掲げるような調査研究を実施するものとする。
  ① 地球温暖化に関連する地球の諸現象の解明及び予測に関する調査研究
  ② 人の活動が地球温暖化の動向に及ぼす影響に関する調査研究
  ③ 地球温暖化が人の健康、生態系等に及ぼす影響等に関する調査研究  
  ④ 地球温暖化に対処するための施策の立案に関する調査研究
  

(3)国は、地球温暖化に関する調査研究等の国際協力を推進するために、次に掲げるような措置を講ずるものとする。
  ① 観測・監視に関する国際的な連携の確保
  ② 研究交流・ネットワークの推進
  ③ 開発途上地域における専門家の育成及びその他の国際協力
  ④ 地方公共団体及び民間団体が国際協力に参加するための情報提供及び支援