報道発表資料本文

別添資料

  1. ILAS-IIの概要

     ILAS-II(参考資料)は、成層圏のオゾンおよびその破壊反応に関連する大気微量物質を観測するため、平成8年に打ち上げられた「みどり」搭載の改良型大気周縁赤外分光計(ILAS)の後継機として、環境省が平成7年度から35億円をかけて開発を行ってきたものである。
     本センサは、平成14年12月14日、宇宙開発事業団の環境観測技術衛星「みどりII(ADEOS-II)」に搭載され、種子島宇宙センターより打ち上げられた。
     ILAS-IIの特徴は以下の通り。なお、ILAS-IIの観測原理については参考資料1頁を参照。
      
    オゾン、硝酸、二酸化窒素、一酸化二窒素、メタン、水蒸気、硝酸塩素、エアロゾル等のオゾン層の破壊や回復に関連する多種類の物質を同時に測定。
    オゾン層の破壊が特に著しい北極・南極域を重点的に、長期間(3〜5年)連続して、高度別(高度10〜60kmの範囲を1kmごと)に高精度に観測。
     
       
  2. 初データの概要
      
     今回公表するデータ(参考資料2頁)は、日本時間の1月23日午前1時52分に、北緯65.2度、西経30.2度のグリーンランド付近上空、及び同日3時01分に、南緯64.1度、東経50.3度の南極昭和基地付近上空(参考資料3頁)において機能確認のために測定されたものを、宇宙開発事業団地球観測センターで受信し、国立環境研究所において速報的に処理・可視化したものである。この結果、高度10km〜50km(北半球側は高度15km〜50km)における、オゾンを始めとする微量気体成分の鉛直分布を、1kmの高度分解能で取得することに成功し、ILAS-IIは予定していた機能を発揮していることが判った。
      
      
  3. 期待される成果
     
     ILASでは、平成8年(1996年)11月から平成9年(1997年)6月にかけて、南北両半球でのオゾン層及びオゾン破壊に関連した微量気体成分の観測を行ってきた(参考資料4頁)。その結果、平成9年(1997年)春期での北極高緯度域でのオゾン破壊量の定量的把握や、北極上空での極成層圏雲(PSC)の分布及びその組成の推定、オゾン破壊に影響する硝酸の除去量の定量化などの科学的成果を上げることが出来た。
     ILAS-IIでは、引き続き南北両半球極域でのオゾン層破壊の様子の継続的監視を行っていく予定である。また、ILASでは8ヶ月という短期間の運用であったため観測できなかった、南極オゾンホールの成長から消滅までの連続監視を行い、PSCなどが関わるオゾン破壊メカニズムのより詳細な理解に貢献できるものと期待される(参考資料5頁)。
     また、硝酸塩素(ClONO2)などの観測により、成層圏における塩素量を測定することで、モントリオール議定書によるフロン等の規制効果の検証も行う予定である。さらに、オゾン及びオゾン破壊に関連する化学的要素と気象要素を組み入れたオゾン層変動モデル(化学気候モデル)への新たな知見を提示することにより、モデルの高度化に寄与し、オゾン層変動の将来予測の高精度化に貢献していく予定である。
     
      
  4. 今後の予定等
      
    (1) 本年2月から3月にかけて行なわれるILAS-II初期運用及び「みどりII」システム総合運用試験で取得されるデータをもとにして最終的な機能確認を行った後、本年4月以降定常的に運用を開始する予定。
    (2) 今後、さらにデータ導出アルゴリズムの高度化や、機器パラメータの最適化などを通じて、データの精度向上を行う予定である。
    (3) スウェーデン・キルナにおいて今年夏以降大気球を用いた検証実験を実施する他、米国アラスカ州フェアバンクス、南極昭和基地等においても比較用のデータを取得する。
    (4) 衛星の設計寿命は3年(燃料は5年分搭載)であり、衛星の運用期間を通してILAS-IIの定常観測を実施する。この定常観測においては、南北両半球の高緯度地域を中心に、1日にそれぞれ14地点(合計28地点)でデータが取得されることとなる。
    (5) ILAS-IIで取得されるデータは、国際的な公募で選定されたサイエンスチームメンバー(参考資料6頁)に配信され、検証解析がなされた後、オゾン層破壊メカニズムの解明を中心とした、様々な科学的解析に供せられる予定である。
    (6) また、取得されるデータは、上記検証解析により信頼性が確認された後、一般ユーザーへもインターネットを通じて公表される予定である。
     ( 国立環境研究所ILAS-IIホームページ:http://www-ilas2.nies.go.jp/ )
      
    (注)検証実験:同一の測定対象空気塊に対して衛星観測(ILAS-II)と時間的・空間的に同期させた独立の測定(気球観測など)を遂行し、衛星データとの比較検討を行い、衛星搭載機器の動作、データ処理システムの妥当性を評価するための観測実験。

     
問い合わせ先:
環境省地球環境局総務部研究調査室
 TEL:03-5521-8247
独立行政法人国立環境研究所成層圏オゾン層変動研究プロジェクト衛星観測研究チーム
 TEL:029-850-2800
宇宙開発事業団総務部広報室
 TEL:03-3438-6107〜9




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