報道発表資料概要

平成13年度化学物質環境汚染実態調査結果について
 
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  1. 平成13年度化学物質環境安全性総点検調査の結果
     
     化学物質による環境汚染の未然防止と汚染の早期発見及び適切な化学物質環境安全対策の立案に資するため、化学物質の環境残留性等の安全性について総点検を行うものである。
      
    (1)  環境調査
       水系・大気系の一般環境において、平成13年度は合計25物質(群)(うち新規3物質)について環境残留性の調査を実施したところ、結果は次のとおりであった。なお、同年度を含むこれまでの調査の累計では、797物質(群)について調査が行われ、そのうち338物質(群)が一般環境から検出されたこととなる。 
      [1]  水系調査
         水系環境中に残留していると予測される12物質(群)(表1参照)について、それぞれ残留が予測される媒体(水質・底質・魚類)を選び、全国57地点で調査を実施した。
     その結果、7物質(群)が検出された。このうち長鎖塩素化パラフィン類については、環境リスク評価を行う化学物質の候補とする必要があるとされた。また、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール及びポリ塩化ナフタレンについては、本調査におけるモニタリング調査の候補物質とする必要があるとされた。
      [2]  大気系調査
         大気系環境中に残留していると予測される13物質(群)(表2参照)について、全国22地点で調査を実施した。
     その結果、11物質(群)が検出された。1,1,2−トリクロロエタン、塩化エチル、塩化メチル及びアクリル酸エチルは、環境リスク評価を行う化学物質の候補とする必要があるとされた。
     
    表1 環境調査(水系)検出状況表2 環境調査(大気系)検出状況
     
    (2)  底質モニタリング(底質の経年監視)
      [1]  環境中に残留する物質の底質中の濃度を経年監視する調査であり、平成13年度は化学物質審査規制法に基づく第一種特定化学物質*1を中心に、p,p'-DDT等20物質について全国20地点で調査を実施した。
      [2]  その結果、底質からは20物質すべてが検出された。これらのPOPs条約*2に掲げられた物質等は今後とも監視を継続する必要があるとされた。
        *1 :  第一種特定化学物質13物質(平成14年末現在)
        *2 :  残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)は、残留性有機汚染物質(POPs)に対して、人の健康の 保護及び環境の保全を図る事を目的とした条約であり、わが国は平成14年8月に加入した。同条約では、POPsとしてPCB等12物質が掲げられている。
      
    (3)  生物モニタリング(指標生物の経年監視)
      [1]  生物を対象に、環境中に残留する物質の濃度を経年監視する調査であり、平成13年度は化学物質審査規制法に基づく第一種特定化学物質を中心とする18物質について全国21地点の魚類7種、貝類2種、鳥類2種について調査を実施した。
      [2]  その結果、魚類からはPCB、p,p'-DDE等18物質すべて、貝類からはtrans-クロルデン、p,p'-DDE等15物質、鳥類からはβ-HCH、p,p'-DDE等12物質が検出された。これらのPOPs条約に掲げられた物質等は今後とも監視を継続する必要があるとされた。
     
      
  2. 平成13年度指定化学物質等検討調査の結果
     
     化学物質審査規制法に基づく指定化学物質又は第二種特定化学物質について、環境中での残留性及び人への暴露状況を調査するものである。
     * : 指定化学物質673物質、第二種特定化学物質23物質(平成14年末現在)
      
    (1)  環境残留性調査
       クロロホルム等9物質について、全国の水質・底質35地点、大気31地点で調査を行ったところ、9物質すべてが検出された。
      
    (2)  暴露経路調査(日常生活で、人がさらされている媒体(室内空気、食事等)別の化学物質量に関する調査)
       室内空気について、全国7地区各3世帯でクロロホルム等6物質の調査を行ったところ、全6物質が6地区(4物質ついては7地区全て)で検出され、食事について、全国7地区各3世帯でクロロホルムの調査を行ったところ、7地区すべてで検出された。
     
    (3)  環境残留性調査及び暴露経路調査の結果からの考察
       クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン及び1,4−ジオキサンは、環境中に広範囲に残留している。これらの物質については、経年変化があまり見られないことから調査間隔を長くして、調査を継続する必要があるとされた。
      
     
  3. 平成13年度有機スズ化合物に関する環境調査の結果
     
     環境中に広範囲に残留しているトリブチルスズ化合物及びトリフェニルスズ化合物について、生物(魚類、貝類、鳥類)、水質及び底質を対象として調査を実施するものである。
     * :  TBTOが平成元年12月、化学物質審査規制法に基づく第一種特定化学物質に、TBTOを除くトリブチルスズ化合物のうち13物質が平成2年9月、同法に基づく第二種特定化学物質に指定された。
     トリフェニルスズ化合物のうち7物質が平成元年12月、化学物質審査規制法に基づく第二種特定化学物質に指定された。
     
    (1)  調査結果
       トリブチルスズ化合物の汚染レベルは、近年では概ね横ばいの傾向にある。
     トリフェニルスズ化合物の汚染レベルは、近年では概ね横ばいの傾向にある。
     
    (2)  考察
       両物質については、現在、我が国での生産、開放系用途の使用はほとんどないことから、汚染状況は更に改善されていくものと期待されるが、未規制国等の存在に伴う汚染も考えられることから、引き続き、環境汚染状況を監視していく必要があるとされた。また、内分泌かく乱作用を含め毒性関連知見の収集に努めることも必要であるとされた。
     
      
  4. 平成13年度非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査の結果
     
     PCBについて、環境中(水質、底質、生物及び大気)の存在状況の調査を行った。
     PCBは、昭和47年までに製造、輸入及び開放系用途の使用が中止されたが、依然として広範な地点の環境中に存在しており、平成13年度調査結果でも、全地点の全媒体において検出された。
     PCBは、POPs条約に掲げらている物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続しその消長を追跡する必要があるとともに、PCBの環境中の組成等を調査することにより、非意図的生成割合、環境中挙動などの汚染機構の解明に努める必要があるとされた。

     



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