アジア太平洋地球変動研究ネットワーク




1.APNを取り巻く環境
(1)国際的な位置づけ
 APNは、世界を「南北アメリカ」、「欧州・アフリカ」、「アジア太平洋」の3極地域に分け、各地域ごとに政府間の地球環境研究支援ネットワークを形成して、地球環境に関する国際共同研究を推進していくという考えのもと、アジア太平洋地域の地球環境研究支援ネットワークとして設立された。南北アメリカにおいては「米州地球変動研究機関(IAI)」という国際機関が、欧州・アフリカにおいてはEU内に「地球変動に関する欧州ネットワーク(ENRICH)」という組織が同様の目的で設置されている。

(2)沿革
 1.平成4年1月の日米首脳会談で取り決められた「日米グローバルパートナーシップ行動計画」に基づき、アジア太平洋地域の地球環境研究の推進を我が国が担当し、地球規模の環境変動に関する地域研究ネットワークの構築を推進することとなった。
 2.さらに、平成6年5月に開催された日米包括協議「地球的展望に立った協力のための共通課題(コモン・アジェンダ)」次官級会合において、「地球変動研究のための地域ネットワーク/機関」が新たな協力項目として取り上げられ、IAIとAPNの間の連携について日米が合意した。
 その後、日米コモンアジェンダの地域的地球変動研究ネットワーク分野における主要議題として、APNは毎年取り上げられている。

 3.これまでの経過
   平成7年3月 第3回APN設立準備ワークショップ開催
          :APNの正式な発足を確認
   平成8年3月 第1回政府間会合(タイ・チェンマイ)
          :以後2年間の活動方針を決定
       8月 第1回科学企画グループ会合(クアラルンプール)
          :科学的な見地から具体的な活動内容を検討・評価・提案
   平成9年3月 第2回APN科学企画グループ会合(東京)
          :来年度以降実施する具体的な活動内容を検討・評価・提案
       3月 第2回APN政府間会合(東京)
          :政府間会合等の運営規則、科学的活動の選定手順、予算・決算、今後の資金確保方策等について検討
   平成10年1月 第3回APN科学企画グループ会合(キャンベラ)
          :支援研究課題の公募制を導入。平成10年度の研究課題、今後のAPNの方向性について検討。
       3月 第3回APN政府間会合(北京)
          :APN財務ガイドライン及び組織規定の策定、今後の方向性についての採択
   平成11年2月 第4回APN科学企画グループ会合(ジャカルタ)
          :平成11年度の研究課題、APN戦略計画等について検討。
       3月 第4回APN政府間会合(日本)
          :平成11年度の研究課題、APN戦略計画等について採択。
(3)学術サイドとの連携
 学術サイドからは地球環境保全に関する取り組みとして、国際学術連合(ICSU)のプログラムである地球圏−生物圏国際協同研究計画(IGBP)等の国際的な共同プロジェクトが推進されている。また、IGBP・IHDP・WCRPの3つの国際科学プログラムを支える組織として、「地球変動に関する分析、研究、トレーニングのためのシステム(START)」が設立され、世界十数地域に地域支部を設けて途上国における研究を指導・支援している。しかし、途上国では、政府レベルの支援がなく、また、地域内各国の研究者の地球環境研究への対処能力が不均衡のため、アジア太平洋地域においてはAPNがSTARTの4つの地域委員会(温帯東アジア、東南アジア、南アジア、オセアニア)と特に密接な連携を取りつつ、研究支援活動を進めている。

2.APNの活動方針
(1)目的
 ・地球環境研究の地域的協力の推進
 ・地球環境研究に係るデータの標準化、収集、分析、交換
 ・科学的技術的対処能力の向上
 ・他地域のネットワークとの協力促進  等

(2)APNが現在優先的に取り組んでいる地球環境研究の主な領域
 1.気候システムの変化
  ・アジアモンスーン研究
  ・物質/エネルギー海洋循環プロセス
  ・エルニーニョ南方振動(ENSO)
  ・温室効果ガスと大気組成の変化
  ・地域気候モデルの構築
  ・陸域生態系への影響
 2.海面変動を含む沿岸域の物質循環とその影響
 3.陸域生態系変化とその影響
  ・森林、草地、農用地
  ・生物多様性
  ・土地利用被覆変化
  ・土地劣化
 4.その他の重要なトピック
  ・酸性雨
  ・農業が環境に与える影響     等

(3)組織、運営等
@法的性格
 条約などに縛られることのない緩やかな恒常的政府間協議の場として、域内における地球環境に関する国際共同研究活動等を支援。

A組織
 ・事務局:日本(環境庁地球環境部研究調査室)
 ・現在のAPN参加国(21カ国)(平成10年7月現在)
 オーストラリア、バングラデシュ、ブルネイ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マレーシア、モンゴル、ネパール、ニュージーランド、 パキスタン、フィリピン、ロシア、スリランカ、タイ、米国、ヴェトナム
 (これまでの会議には、START及びSTART地域委員会〔温帯東アジア、東南  アジア、南アジア〕、IAI、ENRICH、国連大学等も参加)

B活動
 ○政府間会合や科学企画グループ会合、優先的に取り組むべき分野に係る域内専門家ワークショップ等の開催を通じた地球環境研究支援活動の実施
 ○IAI、ENRICH及びIGBP、世界気候研究計画(WCRP)、地球環境変化の人間社会的側面国際研究計画(IHDP)等の関係国際機関との連携、START及びその地域委員会(温帯東アジア、東南アジア、南アジア、オセアニア)の支援
 ○APN共同観測事業の実施(アジアモンスーンの変動に関する観測等を実施)
 ○ニュースレター等の出版、ホームページの運営等