(参考)
臭気判定士制度の概要

 平成8年4月の改正悪臭防止法の施行により、嗅覚測定法を用いた臭気指数規制が 導入され、新たに「臭気判定士」の国家資格制度が創設された。

1.臭気指数規制の導入

 臭気指数規制は、都道府県知事または政令市長による区域の指定により導入される こととなっており、指定された区域内の工場・事業場への立入検査や監視測定は市区 町村長が行うこととされている。

 臭気指数による規制区域内においては、「臭気指数の算定方法」(平成7年9月環 境庁告示第63号)に基づき、人の嗅覚を用いて悪臭を測定する方法である「嗅覚測定 法」によって悪臭の測定を行うこととなっている。(別紙図 参照)
 この測定法は、においがするかしないかを判断し、においをその検知閾値まで希釈 する希釈倍数をもって数量化する方法で、簡単な訓練を施したパネルの嗅覚により測 定できるもので、「嗅覚を用いる臭気の判定試験の方法」(平成4年12月環境庁告示 第92号)により定められ、従来から多くの地方自治体で条例や指導要綱などの測定法 として使われていたが、今回の悪臭防止法の改正により、法律に基づく規制手法とし て新たに導入された。

2.臭気判定士について

 臭気判定士は、悪臭防止法の施行に当たって必要となるこの臭気指数の測定につい て、市町村等からの委託により測定業務を担当する者で、測定の的確かつ公正な実施 を確保するため、国家資格が付与されるものである。
 これは、嗅覚測定法の精度の確保には、試験統括実施者であるオペレータの資質が 最も重要な要素であるためで、「臭気判定士」は嗅覚測定法のオペレータに与えられ る資格であるといえる。
 オペレータは、試料の採取、パネルの選定、試料の調整と試験の実施、結果のまと め等、判定試験全体についての責任者で、試料採取時期の決定や当初希釈倍数の決定 など自らも正常な嗅覚の持ち主でなければならない。また、人間の嗅覚や生理に関す る知識、結果のまとめに必要な統計学に関する知識、においに関する測定法全般に関 する知識、パネルの心理状況が試験結果にどのような影響を与えるか、臭気に関する 行政的な立場と基本的な臭気対策等の幅広い知識が要求され、これらを十分理解して いなければならない。
 このため、臭気判定士の資格は、悪臭防止行政や臭気指数の測定等に関する臭気判 定士試験に合格し、かつ、正常な嗅覚を有することについての嗅覚検査に合格した者 に与えられるものとなっている。なお、臭気判定士免状は3年を期限に更新すること となっており、更新に当たっては嗅覚検査を再度受験する必要がある。

3.臭気判定技士からの移行措置

 また、「嗅覚を用いる臭気の判定試験に関する知識及び技能の審査・証明事業の認 定に関する規定第1条第1項の規定に基づく審査・証明事業」(平成5年1月環境庁 告示第4号)により臭気対策研究協会に登録している「臭気判定技士」は、環境庁長 官が指定する臭気指数の測定に関する講習会の課程を平成8年12月31日までに修了し た場合に「臭気判定士」の資格が与えられることとされ、臭気判定技士の役割は新制 度の臭気判定士に引き継がれることとなった。

4.臭気判定士試験について

 臭気判定士試験は、臭気指数の測定に関し必要な知識について行うもので、試験科
目とその内容は次のとおりである。
 なお、本試験を受験するには、試験日において18歳以上の者でなければならない。

表 臭気判定士試験の試験科目とその内容 
嗅覚概論
1) 人の嗅覚とにおいの役割等に関する事項
2) 嗅覚の順応等、嗅覚の基本的な特性に関する事項
3) 嗅覚閾値等、におい物質の特性に関する事項
悪臭防止行政
1) 悪臭防止法、施行規則、告示等の内容とその運用に関する事項
2) 地方自治体の条例による規制及び指導と法令との関係に関する事項
3) 悪臭防止対策の基礎的な知識等に関する事項
悪臭測定概論
1) 機器測定法、官能試験法等の臭気測定法の全般に関する事項
2) 特定悪臭物質や臭気指数、臭気強度等に関する事項
3) 嗅覚測定法に関する基本的な考え方と具体的な方法に関する事項
分析統計概論
1) 度数分布、代表値、散布度、単回帰、相関等のデータの基本構造に関する事項
2) 統計的仮説検定等に関する事項
3) 2点試験法、3点試験法その他の試験法における精度管理に関する事項
臭気指数の定実務
1) 臭気発生源の特徴に関する事項
2) パネルの選定とその管理に関する事項
3) 測定に使用する器材とその取り扱いに関する事項
4) 試料採取方法に関する事項
5) 判定試験の実施に関する事項
6) 結果の求め方に関する事項
 
5.嗅覚検査について

 嗅覚検査は、臭気指数の測定に係る嗅覚の適格性について行うもので、本検査に合格することが、臭気判定士試験に合格することと並んで、免状交付の要件となっている。
 これは、試料の採取時や、パネルににおいを嗅がせる試験に際しての当初希釈倍数の決定時などに、自らの嗅覚による判断が要求されるため、臭気判定士自身も「正常な嗅覚」を持っていることが必要であることによるものである。
 なお、「正常な嗅覚」とは普通の人が持っている嗅覚で、特に他の人より敏感な嗅覚が要求されているわけではなく、鼻の病気でもない限り、大多数の人(統計的には95%の人)が持っているとされている。

 検査内容としては、嗅覚測定におけるパネルの選定方法と同様に、5種類の基準臭液により嗅覚の検査を行う。
 これは、1から5までの番号の付いた5本の紙(におい紙)のうち、2本だけに基準臭が付けてあり、基準臭の付いたにおい紙の番号を嗅ぎ当てるもので、5種類の基準臭ごとに判定を繰り返して嗅覚検査は終了する。

6.臭気判定士に関する指定機関について

 悪臭防止法施行規則(昭和47年総理府令第39号)第22条第1項に規定される、臭気判定士に関する指定事務(臭気判定士試験、嗅覚検査の実施および臭気判定士免状の交付等)を行う機関として、平成8年4月環境庁告示第19号をもって(社)臭気対策研究協会が指定されている。なお、嗅覚検査の実施に関する事務の一部は、委託検査機関が行う。
 なお、臭気判定士試験及び嗅覚検査の実施は、毎年、環境庁長官の公示による試験等の実施計画に基づき行われる。

指定機関名称  社団法人 臭気対策研究協会
所在地  東京都文京区本郷2丁目25番5号
電話番号  03-3811-9854