気候変動枠組条約締約国会議第8回会合(COP8)
(10/23〜11/1〔閣僚級会合:10/30〜11/1〕、於:デリー)


平成14年11月1日
日本政府代表団
 
 
1.全体の概要
 
(1)  気候変動枠組条約締約国会議第8回締約国会議(COP8;議長:バールー印環境森林大臣)は、11月1日夜、「デリー宣言」及び関連文書を採択して閉会した。我が方より、鈴木環境大臣、土屋外務大臣政務官、西村地球環境問題等大使他が出席した。
(2)  鈴木環境大臣、土屋政務官他は、気候変動に対する取り組みの現状と将来等について各国代表レベルで議論を行う閣僚級ラウンドテーブル会合に参加し、
[1] 京都議定書の早期発効に向けた国際的モメンタムを維持すべき、
[2] グローバルな課題である気候変動への対処の際にはグローバルな参加が必要、
[3] 気候変動枠組条約の究極目標の達成に向けた2013年以降の更なる行動について新しい道を拓くこと
を主張するとともに、京都議定書発効に向けて議定書の早期締結を訴えた。
(3)  10月31日から1日にかけての徹夜交渉の結果、「デリー宣言」においては、
(イ) 京都議定、書のタイムリーな締結を強く求めるとの文言、
(ロ) 先進国・途上国ともに排出削減を進めており、排出削減は適応とともに高い優先性を有すること、
(ハ) (途上国を含む)各国は排出削減のための行動に関する非公式な情報交換を促進すべき
 との文言が盛りこまれた。これらはいずれも我が国が特に強く主張したものである。(ハ)については、これまで途上国が自らの排出削減活動につき話し合うことさえ拒否してきた経緯に鑑みればその意義は評価できる。交渉の過程で、我が国はできるだけ意味のある内容を盛りこむべく、案文の提案、各国との調整等に先導的役割を果たした。
(4)  また、今次会合では、昨年のCOP7マラケシュ合意で積み残された京都議
 定書実施のための細則につき、京都議定書に基づく報告・審査ガイドラインが策定され、クリーン開発メカニズム(CDM)の手続きについて整備されるなど、京都議定書の実施に向けて進展があった。
(5) 上記のほか、鈴木環境大臣及び土屋外務大臣政務官は米、英、豪、印、ニュージーランドの政府代表と会談し、京都議定書の未締結国に対して締結を促したほか、デリー宣言について意見交換した。
(6) 来年12月上旬に予定される次回COP9の開催国については、伊が立候補し、承認された。議長は東欧グループの国(未定)が努める予定。
 
 
2.個別問題の討議の結果
 
(1) 京都議定書に基づく報告及び審査:
 マラケシュ合意(COP7)で積み残し事項となっていた割当量(排出枠)及び国別登録簿の報告、審査の形式、京都メカニズム参加資格の回復に関する迅速な手続き、登録簿の技術基準等(京都議定書5,7,8条関連の詳細ルール)に関し、合意達成。
(2)吸収源のクリーン開発メカニズム(CDM):
 吸収源活動によるCDMプロジェクトの手続き(COP9で決定予定)について、伐採等による非永続性の処理方法や不確実性(注)の問題について議論がなされ、今後の取り進め方につき合意。
(注) 非永続性・不確実性:吸収源となる森林の伐採・焼失により吸収した炭素を排出した場合等のクレジットの扱い(非永続性)や森林による温室効果ガス吸収量の計測値が一定していないこと等(不確実性)。
(3) 国別報告書:
 各国ごとの温室効果ガス排出・吸収量や気候変動対策に関する国別報告書につき、先進国は第4次国別報告書を2006年1月1日までに提出することとなった。途上国を対象とした国別報告書作成のためのガイドラインの改訂は、ガイドラインの充実を主張する先進国に対し、途上国は作業の負担が大きくなることに反対したが、結局、現行ガイドラインよりも内容が充実した改訂ガイドラインが策定された。
(4) 資金メカニズム:
 資金メカニズムの実施機関である地球環境ファシリティ(GEF)からの活動報告が行われた他、COP7で設立された特別気候変動基金及びLDC(後発途上国)基金の運営指針、資金メカニズムのレビュー、GEFに対する追加的指針につき、検討がなされた。途上国側は基金の早期運用等を求めたが、拙速・曖昧な指針提出に反対した先進国側の主張にほぼ沿った形で決着。
(5) COPとCOP/MOP(京都議定書の締約国会合)の関連性:
 京都議定書発効後に開催されるCOP/MOP(京都議定書の締約国会合としての役割を果たす条約締約国会合)の運営について、米国など議定書未批准国の扱い等の観点から開催形式(合同開催とするか分離開催とするか)が課題となっており、議論はまとまらず、次回の補助機関会合(来年6月頃予定)でさらに検討することとなった。
(6) CDM理事会からの報告等:
 CDM理事会の運営規則を採択。プロジェクトの承認を行う運営機関についてはCOPの決定を経ずに理事会において運営機関を決めることができるとする暫定措置を継続させることに合意(11月1日現在、世界で7機関が申請中。うち5件は日本から)。また、小規模CDMプロジェクトの簡略手続きの策定などについて進展があった。
(7) 研究及び組織的観測:
 国際的な研究計画等(注)の活動について、締約国に情報提供を行い、研究のニーズ及び優先事項を検討するため、気候変動研究に関連する事項を定常的に検討することを決定。
(注) 国際的な研究計画:地球圏・生物圏国際共同研究計画(IGBD)、地球環境変動の人間・社会的側面に関する国際研究計画(IHDP)、世界気候研究計画(WCRP)等。政府間研究計画を含む。
  (了)