持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)
(概要と評価)
 

平成14年9月4日
日本政府代表団
1.概観
 (1)8月26〜9月4日、ヨハネスブルグ(南アフリカ)で持続可能な開発に関する世界首脳会議が開催された(首脳級会合は2〜4日)。世界各国の首脳、関係閣僚、国際機関の長が参加。
 (2)我が国よりは、小泉総理が出席し(9月2〜3日)、演説、ラウンドテーブルへの参加を通じて、持続可能な開発にとって人づくり、就中教育の重要性を強調、「小泉構想」(開発・環境面での人材育成等の具体的支援策)の実施を通じた我が国の貢献の決意を示した。また、川口外務大臣、大木環境大臣を始めとして関係省庁の副大臣・政務官が出席した他、超党派の国会議員団と多数のNGO等が参加。
 (3)成果:4日未明、「実施計画」(持続可能な開発を進めるための各国の指針となる包括的文書)については、主要委員会で採択の後、同日午後4時半すぎ、首脳級全体会合で採択。また、持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言(首脳の持続可能な開発に向けた政治的意志を示す文書)については、首脳級全体会合で午後8時頃に採択。今後は、「実施計画」の着実な実施が重要。
 
2.「実施計画」
 (1)経緯:バリでの準備会合では、途上国の開発問題(ODAの対GNP比0.7%問題、債務救済、途上国産品の先進国市場へのアクセス改善等)をめぐり先進国と途上国が対立。今次交渉においては、資金問題は比較的早期に合意が成立。他方、リオ原則、数値目標(衛生(sanitation)、再生可能エネルギー)等については議論が首脳級会合開始後も交渉が継続。
 (2)我が国の取組:「実施計画」交渉については、我が国は合意達成のため、議長国南アに積極的に協力しつつ、米国を始めとする各国と緊密に協議。特に、京都議定書に関しては、議長からの要請を受け案文を作成、交渉のとりまとめ役を果たした。また、我が国が主張してきたTICAD(アフリカ開発国際会議)や北九州イニシアティブの文言も外交努力の末、文書の中で言及。
 (3)各論:(「実施計画」における注目点)
  (イ)京都議定書:我が国は、京都議定書の早期発効への取組が言及されるべく努め、「京都議定書の発効に向けてそのタイムリーな締結を強く求める」旨の案をまとめた。
  (ロ)資金・貿易:ドーハ閣僚宣言やモンテレイ合意(開発資金国際会議合意)等の既存の合意の実施をむしろ重視すべきとの我が国の立場が反映。
  (ハ)衛生(sanitation):我が国が支持する「改善された衛生へのアクセスできない人の割合を2015年までに半減させる」目標が入った形で合意を達成。
  (ニ)再生可能エネルギー:我が国の主張通り、一律の数値目標を設けるのではなく、各国の実情に応じながら、世界のシェアを十分に増大させることとされた。
  (ホ)なお、バリ準備会合までに我が国が提案した「持続可能な開発のための教育の10年」が合意。
 
3.持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言
 (1)経緯:当初は8月27日に議長案が提示される予定であったが、結局、9月2日朝に配布。閣僚レベルの協議を経て4日の全体会合の閉会を約2時間延長して採択。我が国もサミット終了までにペーパーをまとめ上げるべく関係国とともに南アに積極的に働きかけた。
 (2)内容(骨子別添):各国が直面する環境、貧困等の課題を述べた上で、清浄な水、衛生、エネルギー、食料安全保障等へのアクセス改善、国際的に合意されたレベルのODA達成に向けた努力、ガバナンスの強化などのコミットメントを記述。
 
4.我が国の対応
 (1)「タイプ2」(パートナーシップ)
 持続可能な開発のため各国政府、国際機関とともに行う具体的プロジェクト。我が国はODAも積極的に活用して、水、森林、エネルギー、教育、科学技術、保健、生物多様性等の分野での30のプロジェクトを用意(国連事務局に登録)、サミットの際にも我が国の取組を発表。
 (2)サイドイベント
 政府、国会議員、地方自治体、関係諸団体、NGO等が共同で「日本パビリオン」を設置。展示の他に、我が国の公害克服経験、アフリカ支援(TICAD、ネリカ米)、水、森林問題への取組(東アジア開発イニシアティヴ)等につき連日セミナーを実施。期間中延べ1.5万人の来訪者を記録。
 
5.広報・NGO
 (1)広報:「小泉構想」など我が国の取組を内外プレスに積極的に広報。議員代表団もNGOや各国議員団と積極的に意見交換し、広報に積極的に貢献。「オールジャパン」としての我が国の環境・開発への取組は国際社会に広く示された。
 (2)NGO:日々のNGOとの意見交換のほか、政府顧問団に加わったNGO・地方自治体等とも緊密な意見交換を行い、交渉の状況等を詳細に説明し、NGO側より種々の助言を得た。(了)