1 背 景
 
 我が国では、従来から、環境基本計画、中央環境審議会等において、水生生物保全の観点からの水質目標の必要性が指摘されてきたものの、これまで人の健康の保護や有機汚濁及び栄養塩類による富栄養化防止の観点からの環境基準設定に施策の重点が置かれてきたために、水生生物保全の観点を中心に据えた化学物質汚染に係る水質目標は設定されていない。他方、欧米諸国においては、既に1970年代から水生生物保全の観点からの環境基準等の水質目標が設定されてきている。
 環境庁(当時)においては、平成12年12月に、水生生物の保全に係る水質目標について行った予備的検討の結果を「水生生物保全に係る水質目標について」(以下「中間報告」という。)として公表した。中間報告においては、既存情報の整理を行い、基本的な考え方をとりまとめるとともに、優先的に検討すべき物質として81物質が提示された。
 こうした検討を受け、平成13年5月、環境省環境管理局水環境部に「水生生物保全水質検討会」(座長:須藤隆一東北工業大学教授)を設置し、また、技術的調査事業として「毒性評価分科会」(座長:若林明子淑徳大学教授)を設置し、水生生物の保全に係る水質目標の考え方を整理するとともに、環境中濃度が高く、かつ、水生生物に影響を及ぼすレベルについて十分な知見が得られた9物質を対象として、水質目標値の検討・導出を行った。
 なお、平成14年1月には、OECD(経済協力開発機構)による日本の環境保全成果レビューにおいて、水環境行政について、水生生物の保全に係る水質目標の導入が勧告されている。 


水生生物保全水質検討会委員名簿
(座長)
 須藤 隆一 東北工業大学教授
(委員)
 五十嵐 貢一 (社)日本化学工業協会化学物質総合安全管理センター部長
 岩熊 敏夫 北海道大学大学院地球環境科学研究科教授
 大島 輝夫 化学品安全管理研究所所長
 大塚 直 早稲田大学法学部教授
 岡田 光正 広島大学大学院工学研究科物質化学システム専攻教授
 小倉 紀雄 東京農工大学大学院農学研究科教授
 中館 正弘 (財)化学物質評価研究機構参与
 畠山 成久 前(独)国立環境研究所生物圏環境研究領域副領域長
 増島 博 東京農業大学客員教授
 松尾 友矩 東洋大学国際地域学部教授
 森田 昌敏 (独)国立環境研究所統括研究官
 山田 久 (独)水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所企画連絡室長
 若林 明子 淑徳大学教授(毒性評価分科会座長)