平成15年度環境保全経費の見積りの
方針の調整の基本方針

平成14年8月
環境省総合環境政策局


 今日の環境の状況をみると、地球温暖化をはじめとする地球環境問題、最終処分場のひっ迫や不法投棄の廃棄物問題、有害な化学物質による環境への負荷の問題など、解決が求められている環境問題が多数存在する。
 こうした問題の解決を図るため環境基本法に基づき環境基本計画が策定され、持続可能な社会の構築に向けた施策が総合的かつ計画的に推進されている。現行の第二次環境基本計画は、「理念から実行への展開」と「計画の実効性の確保」という2点に留意して平成12年12月に見直されたものであり、特に重点的に取り組むべき11の分野を戦略的プログラムとして示している。
 中央環境審議会では、平成13年12月から、戦略的プログラムのうちの5分野を中心に、第二次基本計画の進捗状況の点検を行い、その結果については環境大臣から平成14年7月16日に閣議報告されたところである。
 点検結果にもあるように、ここ数年で環境保全に係る各施策の基本的枠組みは整備されつつあるものの、各分野で依然多くの課題を抱えており、基本的な枠組みの下で具体的な各施策の実効性を高める必要がある。特に、地球温暖化対策については、先般、京都議定書の6%削減約束の達成のための国内制度が整ったところであるが、今後、その達成に向けた総合的かつ計画的な取組を強化していく必要がある。
 このような状況を踏まえ、平成15年度の環境保全経費の概算要求に際しては、以下の点に留意して環境保全施策の効果的な展開が図られるよう努めることとする。

I 環境保全施策の推進

 持続可能な社会の構築に向け、第二次環境基本計画の第3部第2章「環境保全施策の体系」に示された各施策の効率的、効果的な推進が図られるよう、関係府省においては、環境保全上の効果及び緊急性を踏まえつつ、必要な予算の確保に努めることとする。

II 「戦略的プログラム」に係る施策

 第二次環境基本計画における各施策の中でも、特に、第3部第1章において「戦略的プログラム」として示された事項に係る施策については、国民のニーズや対応の緊急性、環境政策全般の効果的実施の必要性、統合的アプローチに立脚した環境政策の総合化の必要性などの観点から見て、本計画期間中に優先的に取り組むべき分野であり、重点的な展開が図られるよう努めることとする。
 本年7月には、戦略的プログラムのうち、「地球温暖化対策の推進」、「物質循環の確保と循環型社会の形成に向けた取組」、「化学物質対策の推進」、「生物多様性の保全のための取組」、「環境教育・環境学習」の5分野についての点検結果がとりまとめられたことから、これらの各分野に関しては、今後の課題として指摘のあった以下の事項を踏まえ、取組の強化に努めることとする。
 なお、環境基本計画では、計画に基づく施策の進捗状況の点検を行い、その結果については環境保全経費の見積りの方針の調整に反映することとされている。

  1. 地球温暖化対策の推進
    京都議定書の6%削減約束の達成に向けて、本年3月に決定された「地球温暖化対策推進大綱」に基づき、総合的かつ計画的な取組を推進することが必要である。
    温室効果ガスの吸収源対策として、森林・林業基本計画に示された目標達成に必要な森林整備、木材供給、木材の有効利用等を着実かつ総合的に実施することが不可欠である。この際、森林が持つ生物多様性の保全や水源のかん養などの多面的な機能にも留意し、国民の参加を得つつ、森林を活用しながら保全し、子孫に受け継いでいくことが重要である。
    京都議定書の約束を費用効果的に達成するため、京都メカニズムについて、具体的な措置等の実施及び検討を進めることが必要である。
    税、課徴金等の経済的手法については、他の手法との比較を行いながら、環境保全上の効果、国民経済に与える影響、諸外国における取組の現状等の論点について、地球環境保全上の効果が適切に確保されるよう国際的な連携に配慮しつつ、様々な場で引き続き総合的に検討することが必要である。
  2. 物質循環の確保と循環型社会の形成に向けた取組
    循環型社会の形成に際しては、グローバルな視点や地域の視点などを踏まえ、すべての主体の積極的な参加と適切な役割分担の下で、適正かつ公平な費用負担により、循環型社会を形成する基盤となる条件の整備、発生抑制・循環的な利用の推進、適正な処理の確保等の施策を着実に講じていくことが必要である。 
    再生品については、各主体による積極的な利用により、その市場の育成を推進することが必要である。また、市場メカニズムの中で環境保全に資する製品やサービスの提供を進展させる環境ビジネスの普及促進や事業者の行動への環境配慮の織り込みを促進するための施策を展開することが必要である。
  3. 化学物質対策の推進
    化学物質の環境リスクについて、リスクコミュニケーションを促進しつつ、評価と管理を一層推進していくことが必要である。
    化学物質による生態系に対する影響の適切な評価と管理について更に検討を進めることが必要である。
    人の健康や生態系に対する影響などの有害性に関するデータや暴露に関するデータの収集・整備を引き続き進めることが必要である。
    PRTR制度により得られる排出量などのデータを適切に活用していく上で、国及び地方公共団体並びに事業者自身の役割は大変重要である。国は、都道府県の体制整備について適切な支援を行うとともに、関係省庁間の連携を図りながら、事業者による的確な届出を促し、得られたデータを活用していくことが必要である。
    環境リスクコミュニケーションの推進に当たっては、様々な場面においてそれぞれの状況に適したリスクコミュニケーションが実施されるよう、地域の範囲、化学物質の種類及び影響の種類などに応じ多様な手法を活用することが必要である。
    PCB対策に関しては、PCB処理関連2法の枠組みに基づき、平成28年までにPCB廃棄物を全て処理するため、全国的な処理体制の構築のための拠点的処理施設について、概ね5年程度を目標に整備を進め、その後概ね10年で処理を終えることが必要である。
    化学物質問題への対応は、単に日本国内のみの問題あるいは環境問題のみで済まされるものではないことから 、国際的な協力や健康・安全に関わる行政との連携を一層進めることが必要である。
  4. 生物多様性の保全のための取組
    新・生物多様性国家戦略が十分に機能し、生物多様性の保全のための具体的施策が効果的に推進されることが必要である。特にその実効性を高めるため、森林・林業基本計画等の国の各種計画との連携が図られるとともに、生物多様性の保全と持続可能な利用に影響を及ぼすおそれのある国の計画・施策については、新・国家戦略の基本的な方向に沿ったものとなるよう、十分な配慮が盛り込まれることが必要である。
    新・国家戦略に掲げられた、自然的、社会的条件を踏まえた生態系管理のための手法の検討(エコシステムアプローチの原則の具体化)、里地里山の中間地域において、地域の生物多様性保全を進めるための助成や税制措置等の経済的な奨励措置、自然再生に係る多様な主体が参画する仕組みづくりを推進することが必要である。
    生物多様性の保全、地球温暖化の防止など、森林の有する多面的機能を高度に発揮させていくためには、森林の適切な保全・整備を進めていくことが必要である。
    移入種(外来種)対策については、実効ある制度の構築に向け法制化も視野に入れ、その在り方について、関係府省が連携して検討し、具体的な取組を進めることが必要である。
    生物多様性に関する情報整備については、今後、全国1,000ヶ所程度のモニタリングサイトの設置や浅海域の調査の推進を図っていくことが重要である。また、各分野の専門家とのネットワークの構築・強化、情報収集の効率化や各省間の連携、情報の共有化に努めるとともに、情報へのアクセスを容易にすることが必要である。さらに、国内外の情報交換を活発化させる仕組みの構築が急務である。
    野生動植物の種の保存については、絶滅のおそれのある種の飼育栽培下での保存、増殖、野生復帰への取組に加え、絶滅のおそれを未然に回避する予防的措置を進めるとともに、各府省などの研究機関における遺伝資源の収集・保存事業について、より連携を深め取組を強化することが必要である。
    施策推進の基盤整備として、分類学や生態学の分野の研究は重要であり、それらの専門家について、人材養成が不可欠である。
  5. 環境教育・環境学習
    環境教育・環境学習の推進に当たっては、環境基本計画に盛り込まれた施策の基本的方向に沿って体系的に取り組むことが必要である。
    地球温暖化対策、廃棄物・リサイクル対策、生物多様性の保全をはじめとするすべての個別政策分野において、幅広く環境教育・環境学習を有効に位置付け活用することが必要である。
    人材の育成に当たっては、環境教育の専門家、学校教育における教員、環境カウンセラーをはじめ地域における環境保全活動の実践リーダなどの幅広い人材を対象とするとともに、その質的向上を図ることが必要である。
    総合的な環境情報・環境教育データベースの構築など環境情報基盤整備を一層推進するとともに、情報の積極的開示に努めることが必要である。
    次世代を担う若年層の環境教育については、学校教育のみに依存することなく、家庭における環境教育の重要性を認識した取組が重要である。また、実社会で重要な役割を担っている層の環境意識を高める施策の充実を図ることが必要である。
    各主体の連携については、環境教育のモデル事業などを通して、各主体間のパートナーシップを強化していくとともに、これらの取組を支援するため関係府省間の協力・連携を一層推進していくことが必要である。
    環境教育を受けた子ども・青少年達が社会に出た際に、引き続き環境に関する取組に参画できるよう、各教育機関との連携の下、継続性を考えていくことが必要である。
    環境教育・環境学習の取組の結果、子どもなどその対象者の意識や行動形態がどう変化したか、それが環境保全にどのような効果をもたらしたか把握に努めることが必要である。

III その他の環境保全に対する考え方

 上記の他、政府において環境保全に係る考え方や施策が示されており、関係府省においては、これらを踏まえつつ、必要な予算の確保に努めることとする。

「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)において、「環境産業の活性化」が経済活性化戦略におけるアクションプログラムの一つとされた。また、「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」が平成15年度予算で重点的に推進すべき新重点4分野のうちの一つとされ、その中の「重点化・効率化の考え方」において「廃棄物処理、リサイクル等いわゆる3Rの着実な実施、バイオマスの利活用」、「地球温暖化についての研究開発、我が国の温室効果ガスの削減・吸収、多様で健全な森林の育成など自然生態系の保全・再生に直接つながる事業」が掲げられた。
「規制改革推進3か年計画(改定)」(平成14年3月29日閣議決定)において、「持続的な発展を可能とするための環境負荷の少ない循環型社会の形成推進」が規制改革の推進に当たっての重点事項とされるとともに、「地球温暖化問題への対応」、「循環型社会形成推進のための諸制度の改善」等環境分野が横断的措置事項の一つと明示された。
「平成15年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」(平成14年6月19日総合科学技術会議決定)において、環境分野は、特に重点を置き、優先的に研究開発資源を配分する4分野のうちの一つとされた。
「都市再生基本方針(案)」(平成14年7月2日都市再生本部決定)において、「持続発展可能な社会の構築」が都市再生の施策を進めるにあたっての5つの重点分野の一つとされた。