[環境大臣意見]


 本評価書では、「本事業の実施が、環境に及ぼす影響を予測評価した結果、環境保全措置の実施によって、環境影響の低減がなされると考えられる。よって、全体としては、事業実施区域周囲の環境に及ぼす影響は少ないと判断される」との総合評価になっている。
 しかしながら、今回、意見照会のあった評価書を見る限りにおいて、環境省としては、事業者において、沖縄県知事の意見を踏まえ、更なる検討が必要であると考える。
 事業者は、可能な限り環境への負荷を低減し、周辺地域の生活環境及び自然環境の保全に万全の対策を講じる必要があることから、以下の意見を踏まえた検討を行い、評価書の修正を行うとともに万全な環境保全対策を講じる必要があると考える。
 なお、補正後の評価書は、できるだけわかりやすいものとなるよう検討されたい。

I 環境の自然的構成要素の良好な状態の保持
 1 大気環境
 (1)  建設作業騒音の評価において、本評価書では自動車騒音の要請限度と比較評価しているが、この要請限度には、建設機械の作業音は含まれないことから、騒音規制法第15条第1項の環境大臣が定める基準と比較評価するように見直すこと。また、評価にあたっては、「環境への負荷を可能な限り低減する」との環境影響評価の趣旨を踏まえ、現状の騒音レベルとの比較を併せて行うとともに、必要に応じ騒音の軽減に資する建設機械の稼働方法を採用するなどの環境保全措置を検討すること。
 なお、建設作業振動についても、同様の観点から評価を見直すこと。
 
(2)  道路交通騒音の評価において、本評価書では、環境基準を上回るが要請限度以下であるので影響は少ないと評価している。しかし、要請限度(騒音規制法第17条第1項の環境省令で定める限度)とは、市町村長が、都道府県公安委員会に対し、道路交通法の規定による措置を執るべきことを要請する際の限度値であり、本評価書のように、予測値が要請限度以下であることをもって環境への影響が少ないとの評価は適切でない。よって、環境基準との比較評価に見直すとともに、工事用車両の運行の分散化などの環境保全措置を検討すること。
 
(3)  航空機騒音の評価において、「供用後は、騒音値の低い機材への変更により騒音が現状より小さくなる。」としている。しかし、与那国空港では、本年2月から騒音値の低い機材が導入されており、騒音の影響が現状より小さくなるという評価は適切ではない。よって、現況騒音の影響について騒音値の低い機材によるものに修正するとともに、それを踏まえた評価に見直すこと。
 さらに、航空機騒音現況コンター図の現況再現性について、1地点のみの現況騒音による検証は妥当でないと思料されることから、空港の西側、中央などの他の地点における現況騒音との検証を行うとともに、現況騒音値を記載すること。
 
 2 水 環 境
(1)  供用後の水の汚れの評価において、滑走路の延長により乗客が増加した場合にも合併浄化槽の効果が期待できるので、処理水のBOD値は調査時の0.5mg/lと同様な値をとると予測されているが、合併浄化槽の稼働状況を把握せずに調査したため、予測結果が不確実なものとなっていることから、再調査を実施した上で、予測・評価を見直すこと。
 また、地下水調査についても、当該地域の地下水の通常の状況を把握していないことから、再調査を行うこと。
 
(2)  降雨時における海域への土砂の濁りに係る予測評価については、
[1]  河川の切回し、供用後の河川の付け替え(暗渠化、樋門の設置)による周辺海域の水質への影響は少ないとしているが、工事中の河川切り回しや飛行場の存在による河川の付け替え(樋門)によって、河川水の流出位置が変更され河口の幅が狭まることや降雨時の河川水の流出速度が変化することが考慮されていないこと、また、海域での濁水の動態は、長期にわたる多項目同時観測なしにはモデル化は難しく、当該河川が通常枯れ川の状態で情報の蓄積が行われていないことから、予測の不確実性は高いこと、
[2]  赤土の濁り(SS)の海域での沈降速度については、既存文献の実験値を採用しているが、土質、地域、深度等により沈降速度は異なることから、予測の不確実性は排除し得ないこと、
[3]  沖縄の赤土問題は、赤土が流出することにより、それがサンゴ礁やリーフ内に堆積すること等が問題とされていること、
 から、数値計算に基づく予測結果の不確実性が高いことを踏まえた評価に見直すとともに、赤土の拡散濃度だけではなく海域への排出量の点も踏まえて影響評価を行い、必要に応じ、桃田原川流域からの赤土の流出防止対策について、関係機関との連携により検討を行うこと。
 
(3)  切土・盛土工事における降雨時の濁水の影響について、ろ過・沈殿池の設置による水質保全対策により、浸透池に流入するSS濃度を県条例の基準値である200mg/l以下とするよう計画しているが、さらに環境への負荷の回避・低減を図る観点から、適切な維持管理の実施、環境保全上支障が生じない範囲におけるろ過・沈殿池の機能の強化等により、さらにSS濃度を低減させる措置を講ずるとともに、濁水に対する影響についての的確なモニタリング調査の実施などの措置を講じること。
 
(4)  水質に係る事後調査における工事中の調査時期として、年1回のみを選定しているが、当該地域においては1年を通して 降雨が多い地域であることから、雨の多い時期を選び複数回の調査を行うこと。
 
 
II 生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全
(1)  オカヤドカリ類については、移動経路及び産卵場所についての追加調査を実施した上で、予測・評価を見直すとともに、その結果に基づき、環境保全措置及び事後調査について見直すこと。また、事業実施に伴い、オカヤドカリ類の産卵場所として重要なトゥグル浜が消失すること、河川の付け替えである暗渠を移動経路として期待していることから、県環境部局等の関係機関と十分な調整を図りつつ、専門家の意見を踏まえた上で、供用後においても、オカヤドカリ類の産卵場所及び移動経路が確保できるよう万全な対策を講じること。
 
(2)  サンゴ類については、現地調査後の平成13年に周辺海域において、白化現象が発生したことから、当該海域におけるサンゴ類の現況調査を追加実施した上で、それを踏まえた予測・評価に見直し、事業実施に伴うサンゴ類への影響が最小限となるよう、県環境部局等の関係機関と十分な調整を図りつつ、専門家の意見を踏まえた上で、適切な環境保全措置及び事後調査について見直すこと。
 
(3)  貴重な植物については、土地の改変等に伴う生育地の消失等による影響を最小限に留めるよう検討するとともに、環境保全措置として行う貴重な植物の移植・播種については、専門家の意見を聴取し、最適な移植・播種方法、移植・播種に適した場所及びモニタリング方法を検討し、県環境部局等の関係機関と協議の上、適切に実施すること。
 
(4) 工事中において、新たに貴重な野生動植物種が確認された場合は、専門家の意見を聴取し、現地調査を実施した上で、これらの種の生息・生育環境に対する影響が最小限となるよう、適切な環境保全措置を講じること。