平成14年6月
環 境 省
厚生労働省
外 務 省
防衛施設庁
Aブロック | 22サンプル | 鉛含有量:0.24〜0.12ppm | 平均0.15ppm |
Bブロック | 10サンプル | 鉛含有量:0.17〜0.06ppm | 平均0.12ppm |
Cブロック | 5サンプル | 鉛含有量:検出されず | |
Dブロック | 5サンプル | 鉛含有量:検出されず |
a | 食品としての安全性 |
93年FAO/WHO合同食品規格委員会が示した暫定耐容週間摂取量25μg/体重kg/週に基づき食品としての安全性につき検討を加える。 日本人一人当たりの海藻摂取量は、食生活によって幅があるものの、平成12年度国民栄養調査では全国平均で一日当たり5.5gであった。今回ヒジキから検出された鉛は最大で0.24ppmであったので、食される海藻が全てヒジキと仮定すると、このヒジキからの鉛の摂取量は一日当たり1.32μgとなる。さらに厚生労働省の推定により他の食品からの過去10年間の平均鉛摂取量(36.5μg/人/日:豊田ら、1990〜1999年)及び水道水からの鉛摂取量(5μg/人/日)を勘案すると、全食品からの国民一人当たりの鉛の摂取量は42.82μg/人/日と推計される。これを週間当たり及び体重当たりに換算すると、鉛の摂取量は全体6.0μg/体重kg/週となる。この推計値は暫定耐容週間摂取量と比べ下回っている。 調査では、提供水域中のA及びBブロックから採取されたヒジキにのみ鉛が検出され、その濃度は0.24〜0.06ppmであった。全国的にヒジキの鉛含有量を調査したものはないものの、公表されている以下のような文献に示されたヒジキの鉛含有量に係る調査結果と比較することは意義がある。 |
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『食品微量元素マニュアル1985』 | |
ヒジキ:0.26、1.21、1.75ppm(三重) ヒジキ:0.88ppm(大分) ヒジキ:0.68ppm(岡山市販) |
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『日本土壌の有害金属汚染2001』には海藻類全体の算術平均値が記載。 | |
海藻類:0.383ppm(サンプル数173) | |
これらの文献からすれば、今回検出されたヒジキ濃度は日本人が通常食しているヒジキや海藻類の鉛濃度の範囲内もしくはそれよりも小さいと評価でき、これを長期的に食した場合にも鉛の摂取によって人の健康に影響が生ずるとは考えられないレベルにある。 |
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b | A,Bブロックのヒジキから鉛が検出されたメカニズム |
一般に水中に生息する生物については、当該生物体内の物質濃度は生息する環境水中のそれよりも高く、両者の比を「濃縮係数(BCF:Biological Concentration Factor)」と称する。濃縮係数は物質毎また生物の種類毎に異なるものである。ヒジキについての鉛の濃縮係数に係る報告はないが、海藻については一般的には1×103 (乾燥状態)という値が国際的に広く使用されている。今回の調査では海水調査は行われなかったが、昨年7月までの米側調査で行った海水調査(1サンプル)では不検出であった。濃縮係数が1×103 (乾燥状態)とすれば、今回の鉛含有量(0.24〜0.06ppm:湿潤状態)から推定される海水中の鉛濃度は0.0024〜0.0006ppm(湿潤状態と乾燥状態の比10)となり、日本の環境基準(0.01ppm)を下回り検出されない可能性が高い。 ヒジキに限らず海藻への物質濃縮メカニズムについては不明な点が多いが、根から吸収される可能性は少なく、むしろ海水中の極微量の鉛がイオン状になって葉体内に浸透するか、葉体表面に分泌されている粘性物質(ムコ多糖類等)にキレート作用等によって吸着される可能性もある。後者の場合には、ヒジキが通常煮沸・乾燥という加工工程を経て出荷されることから、市場に流通するヒジキの鉛量はより低減されている可能性がある。 我が国の主要な湾域の底質について、海上保安庁等により鉛などの有害な物質について毎年度定期的な観測が行われている。それによれば湾域の底質中の鉛濃度は12〜78μg/g(乾燥重量比)であるが、昨年7月までの米側調査結果は40〜79μg/g(乾燥重量比)であった。 従って、今回の調査で検出されたA,Bブロックのヒジキ中の鉛は同水域内の底質中の鉛が海水中に極微量イオン状に溶出し、ヒジキの葉体内に浸透又はキレート作用によって表面の粘性物質に吸着し、濃縮されたものと推定される。 |
※ | 暫定耐容週間摂取量:認められるような健康上のリスクを伴わずに、人が生涯にわたり週に摂取することができる体重1kg当たりの量(暫定として設定) |
以 上