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平成14年6月11日 (平成14年7月17日一部修正) |
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【概 要】 |
経済産業省及び環境省は、平成11年7月に公布された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質排出把握管理促進法)に基づくPRTR制度の円滑な導入に向けて、平成13年度PRTRパイロット事業を実施しました。 PRTRパイロット事業については平成9年度から継続して実施してきたところですが、平成13年度が事業最終年度となり、平成14年4月からは法律に基づくPRTRの届出が始まっているところです。 平成12〜13年度は、[1]法律に基づくPRTR制度にできる限り近い形で行うことにより、届出方法、集計作業、各種支援施策等の課題を明らかにするとともに、[2]事業者等に対するPRTR制度の普及啓発を行うために、全都道府県及び全政令指定都市において実施することとしました。 平成12年度の30都道府県市に引き続き、平成13年度は29府県市の各地域において事業を実施しました。 その主な調査結果は、以下のとおりです。 |
1. | 背景 | ||||||||||||||||||||||
(1) | PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)について | ||||||||||||||||||||||
PRTRは、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、その環境中への排出量及び廃棄物に含まれて事業所の外に移動する量を事業者が自ら把握し、行政庁に報告し、行政庁は事業者からの報告や統計資料等を用いた推計に基づき、排出量・移動量を集計・公表する仕組みです。 PRTRには、以下のような多面的な意義が期待されています。 |
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[1] | 環境保全上の基礎データ | ||||||||||||||||||||||
[2] | 行政による化学物質対策の優先度決定の際の判断材料 | ||||||||||||||||||||||
[3] | 事業者による化学物質の自主的な管理の改善の促進 | ||||||||||||||||||||||
[4] | 国民への情報提供を通じての、化学物質の排出状況・管理状況に係る理解の増進 | ||||||||||||||||||||||
[5] | 化学物質に係る環境保全対策の効果・進捗状況の把握 |
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(2) | 経緯 | ||||||||||||||||||||||
PRTRは、既に、米国、オランダ等の欧米諸国において制度化されており、1996年(平成8年)2月には、OECD(経済協力開発機構)が加盟国に制度化を勧告しました。 この勧告を受け、我が国では平成11年7月「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質排出把握管理促進法)が制定されました。 PRTRが法制度化されたことから、経済産業省及び環境省は、同制度の円滑な施行に向けて、排出量算出のためのマニュアルの整備や各種支援施策等の準備に資するとともにPRTR制度の試行を通じて制度の普及啓発を行うため、平成9年度から毎年実施してきたPRTRパイロット事業を、更に対象地域を拡大し、法に基づくPRTR制度に可能な限り実施内容を合わせ、平成12年度から平成13年度にかけて全都道府県及び政令指定都市におけるPRTRパイロット事業を実施しました。 平成12年度の30都道府県市に引き続き、平成13年度は29府県市の各地域において事業を実施しました。 |
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2. | 平成13年度PRTRパイロット事業の概要 | ||||||||||||||||||||||
平成13年度パイロット事業の概要は以下のとおりです。 |
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パイロット事業では、事業者に排出・移動量の自主的な報告をお願いしたほか、実施の際の問題点などを把握するためのアンケートやヒアリング調査を行いました。また、農薬の散布、自動車のような移動発生源、家庭からの排出などについては、パイロット事業対象地域における「非点源」からの排出量として推計を行いました。 |
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3. | 集計結果の概要 | ||||||||||||||||||||||
(1) | デ−タの報告状況 | ||||||||||||||||||||||
全体で11,602事業所に対して調査票を発送し、4,761事業所(約41%)の事業所から回答が寄せられ、そのうち1,474事業所から排出量・移動量の報告がありました。平成12年度(約46%)とほぼ同様な回答率が得られました。 |
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事業所からの報告状況 |
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(2) | 報告又は推計された化学物質 |
354の対象化学物質のうち、261物質(対象化学物質の約74%)について事業所(点源)から排出量・移動量の報告がありました。その他の発生源(非点源)について推計した化学物質と合わせて316物質(対象化学物質の約89%)について集計を行いました。 |
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(3) | パイロット事業対象地域における排出量上位10物質の排出量とその発生源 |
上位3物質(トルエン、キシレン、ジクロロメタン)については、昨年とほぼ同じ傾向でした。 |
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(4) | 業種別の排出状況 |
対象業種すべて(製造業23業種、非製造業20業種)から排出量・移動量の報告がありました。 業種別にみると、排出量の多いトルエン、キシレンはおおむねどの業種からも排出されていました。点源からの排出量全体の合計で見ると、化学系、金属系及び機械系製造業で全体の7割以上を占めています。 |
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(5) | 非点源からの推計 | ||
農薬散布、自動車などの移動発生源からの排出ガス、パイロット事業の対象外の業種からの排出、家庭・オフィスからの塗料、接着剤、防虫剤などの排出について、可能な範囲で推計を行いました。結果、トルエン、キシレンが上位を占めていました。 |
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(6) | 地域別の排出状況 | ||
地域別の集計を見ると、点源からの報告物質数や排出量の多い物質については、地域により異なった傾向が見受けられました。しかし、トルエン、キシレン、p-ジクロロベンゼンについてはほとんどの地域で排出量が多いという結果が得られました。 |
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4. | 事業者アンケート・ヒアリング結果の概要 | ||
(1) | 実施方法 | ||
PRTRの実施に当たっての課題を整理するため、パイロット調査対象事業所に対し事業所報告の調査票等を送付する際に併せてアンケート用紙を送付し、排出量・移動量の報告と同時に回収する形でアンケート調査を実施しました。また、並行して調査実施自治体環境部局による事業者ヒアリングも行なわれました。 |
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(2) | 調査結果 | ||
1) | アンケート調査 | ||
アンケート調査は、パイロット事業調査対象事業所のうち、3,817事業所から以下のような回答が寄せられました。アンケートのみに回答した事業所もあったため、パイロット事業の調査票の報告があった4,761事業所のうち、約79%の事業所がアンケートにも回答したことになります。 |
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○ | 対象事業所に該当するかどうかの判定 | ||
業種、常用雇用者数、取扱量等の要件のうち、「対象化学物質の取扱量」が該当するかどうかの判断が、一番難しかったと回答した事業所は、本設問に回答した事業所の約70%であり、また、取扱量の判断の際には特に「対象化学物質の含有率の確認」が困難であったとする回答が多くあるなど、平成12年度と同様の傾向でした。 |
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○ | 排出量等の算出作業 | ||
算出マニュアルについては、業界団体のマニュアルを使用した事業所も見られたが、多くの事業所が国で作成した「PRTR排出量等算出マニュアル」を使用していると回答がありました。その一方で、その内容において昨年度同様「分かりにくい」、「分からない」といった指摘を受けた部分がありました。 |
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○ | 支援方策 | ||
支援方策としては、昨年同様「算出マニュアルの充実」「化学物質管理マニュアルの整備」「化学物質の有害性等のデータベースの整備」等に対する支援を求める回答が多くありました。 |
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○ | 化学物質排出把握管理促進法の理解状況 | ||
何らかの形で、化学物質排出把握管理促進法又はPRTR制度の義務化について聞いたことがあるとする事業所は7割近くありました。化学物質排出把握管理促進法の認知度は、「良く理解している」と回答がなされたのが約27%で、昨年度より認知度が大幅に増加しました。一方で、化学物質排出把握管理促進法が施行されているにもかかわらず「何も知らなかった」と回答がなされたのが約16%でした。 |
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2) | ヒアリング調査 | |
ヒアリング調査は、報告がなされた事業所、報告がなされなかった事業所を含めて調査対象となった事業所から適宜抽出(570事業所)して調査実施自治体環境部局により実施しました。この調査でもアンケート調査同様に「算出マニュアルの充実」「MSDS制度の遵守」等の積極的な要望が多く寄せられる一方で、事業所あるいは事業者、更には業界団体によって化学物質排出把握管理促進法への対応にかなり温度差があることが明らかになりました。 また、ISO14001等の取組みの一環として、化学物質管理指針に基づく化学物質管理を行っているところもありました。 |
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5. | PRTR実施に当たっての課題 | |
これまでのパイロット事業の実施を通じいくつかの課題が明らかになりました。事業者向けの「PRTR届出書記入要領」や、「届出書/ファイル作成支援プログラム」及び「PRTR排出量等算出プログラム」の作成・配布など改善された点もありますが、引き続き、以下の点について改善を図っていく必要があります。 | ||
○ | 事業者に対する周知率は年々向上してきていますが、国においては、化学物質排出把握管理促進法に基づく届出が円滑に実施されるよう、より一層の化学物質排出把握管理促進法の周知、特に小規模事業者への周知が必要です。また、事業者の実際の算定作業に資する支援が必要であり、今後とも引き続きより分かりやすい算出マニュアルへの改訂や、業界団体と協力しての業種別マニュアルの整備が望まれています。 | |
○ | 各自治体においては、平成14年度以降も引き続き、化学物質排出把握管理促進法による届出が漏れなくなされるよう対象事業者の把握に努めるとともに、事業者に対する支援措置として説明会の開催や技術的な相談窓口の設置が望まれます。 | |
○ | 事業者においては、引き続き化学物質排出把握管理促進法の目的や意義を十分理解し、排出量・移動量の把握のための体制整備を進めた上で届出を行う必要があります。 |
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6. | 今後の予定 | |
平成13年4月から平成14年3月までの排出量について、化学物質排出把握管理促進法に基づく事業者による初めての届出が平成14年4月から6月までの間に実施されています。 届出事項の集計結果については、今年末を目途に公表する予定です。 |