国民・事業者団体・地方公共団体の環境保全への
取組に関するアンケート調査結果について
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  1. 環境にやさしいライフスタイル実態調査(国民アンケート)
     
     環境問題に対する意識や自覚の高まりが見られるものの、それが必ずしも具体的な行動につながっていない場合が見られる。
     
    (1) 実施状況
     全国20歳以上の男女3,000人を無作為抽出し、郵送によりアンケート調査を実施した。回答者は1,248人、回収率は41.6%であった。
    (2) 調査結果
    環境の状況について、地域レベルで悪くなったと実感する人は34.8%にとどまるが、国レベル、地球レベルで悪化を実感する人はそれぞれ52.6%、70.8%と多い。
    「自分の日常生活も環境が悪化している原因の一つである」とする人は、町村の72.4%に対し政令指定都市では64.5%と少ない。一方、「個人の行動がどの程度環境保全に役立つのかわからない」とする人は、町村の52.2%に対し政令指定都市では62.9%と多いなど、居住地による意識の違いが見られる。
    環境保全に重要な役割を担うものとしては、「国民」と回答する比率が44.8%で最も多く、次いで「国」の26.5%、「事業者」の16.2%、「地方公共団体」の4.2%、「民間団体」の3.4%となっている。「国民」とする比率は、平成9年度の31.1%から13.7ポイント増加し、国民の環境問題に関する意識の高まりが見られる。また、都市規模別に見ると、政令指定都市では「事業者」とする比率が平均より高く19.3%であり、町村では「国民」とする比率が平均より高く47.8%である。
    環境問題への取組では、『個人』で対応できる取組は進んでいるが、美化活動への参加(22.3%)など『地域・集団』での行動が必要な取組は進んでいない。『個人』で対応できる取組の中でも、「ごみの分別」(91.1%)や「節電・節水」(それぞれ66.2%、62.0%)などは特に浸透しているが、「使い捨て商品の不購入」(37.4%)や「過剰包装の抑制」(30.1%)については相対的に浸透していない。
    性別に見ると、女性の環境問題への関心は男性に比べて「ダイオキシン」で14.1ポイント、「身近な自然の減少」で12.3ポイント上回るなど高く、実際に取組をしている人も男性に比べて「ごみの減量化」で7.7ポイント、「節電」で5.9ポイント上回るなど多い。年齢別に見ると、20代では、環境問題への関心は他の世代に比べて高いものの、実際に取組をしている人は「自然とのふれあい」で22.5ポイント、「地域の美化活動」で17.8ポイント全体平均を下回るなど顕著に少ない。
    環境保全活動を行う団体活動にこれまで参加したことがある人は19.8%に過ぎない。年齢別に見ると、60代では24.5%の人が参加しているのに対し、20代では8.2%の参加にとどまる。
      
     
  2. 環境基本計画で期待される事業者の取組についての事業者団体アンケート
     
     環境保全に向けた取組は業界ごとにばらつきが見られ、取組が進んでいる業界ほど環境保全の取組を進める上で、事業者の自主的な取組手法が有効と考える傾向が見られる。
     
    (1) 実施状況
     10業種120の事業者団体を対象に、郵送によりアンケート調査を実施した。回答団体は85団体、回収率は70.8%であった。
    (2) 調査結果
    環境問題の業界への影響については、事業活動の制約条件となるが将来的には取り組まざるを得ないとの考えが75.3%で大勢を占めている。
    環境保全の取組に対する認識では、法規制内での環境配慮に努めるとの認識が63.5%で最も多い。
    対外的な情報提供について、積極的な回答が平成9年度の75.0%から90.6%に増加しており、環境情報に対する意識が高まっている。
    業界の事業活動に伴う環境負荷を減らすための手段としては、「自主行動計画等の自主的取組手法」を挙げる団体が69.4%で最も多く、続いて「税・助成制度等の経済的手法」が48.2%、「環境マネジメントシステムの導入等の手続的手法」が44.7%となっている。
    環境基本計画への業界ごとの具体的数値目標の導入については、肯定的な回答と否定的な回答が34.1%ずつで同数であった。また、数値目標導入への意見と環境保全への取組の相関関係を見ると、目標導入に反対している業種では環境保全の取組が比較的進んでいるという関係が見られる。例えば、エネルギー供給業ではすべての団体が数値目標導入に否定的だが、取組実施率は74.0%と非常に高い。
    会員事業者に対する取組では、平成9年度に比べて「ISO14001の認証取得」が21.7%から48.2%に、「環境報告書の公表・作成」が16.7%から28.2%に増加するなど、環境マネジメントシステムの構築促進などの取組が進んでいる。
    各事業者が、物の消費者として実施する環境保全のための取組に比べて、エネルギー消費者及び荷主等としての立場での取組が進んでいない。
     
      
  3. 環境基本計画で期待される地方公共団体の取組についてのアンケート
     
     総じて、都道府県・政令指定都市の取組状況に比べて、人口規模の小さな市町村での取組が進んでいない。
     
    (1) 実施状況
     全3,293の地方公共団体を対象に、郵送によりアンケート調査を実施した。回答団体は1,997団体、回収率は60.6%であった。
    (2) 調査結果
    『環境影響評価に関する条例』『環境に関する総合的な計画』は、都道府県・政令指定都市ではすべての団体で策定されているが、その他の市区町村ではそれぞれ1.9%、17.0%が策定しているに過ぎない。
    周辺地方公共団体との連携・協力については、都道府県・政令指定都市では「流域を考慮した水環境保全」で最も多くそれぞれ76.6%、75.0%が実施しており、その他の市区町村では「廃棄物処理の検討」で最も多く58.6%が実施している。
    住民・事業者・民間団体との連携・協働については、都道府県ではそれぞれ89.4%、97.9%、91.5%、政令指定都市ではそれぞれ100%、91.6%、100%とほぼ全団体で取り組んでいる。一方、市区町村では住民との連携・協働は68.6%が実施しているが、事業者とでは28.9%、民間団体とでは32.8%と連携が遅れている。
    住民・事業者への促進策の手法別では、廃棄物対策を中心にパンフレット配布などの「普及・啓発」(対住民・対事業者の平均実施率はそれぞれ43.6%、32.3%)が広く行われているが、補助金などの「支援・誘導」(同12.3%、4.5%)や条例・規則などの「規制的手法」(同4.0%、3.1%)は少ない。
    住民からの意見聴取については、都道府県や政令指定都市では「パブリック・コメント」がそれぞれ80.9%、83.3%で最も多く「自治会・町内会」がそれぞれ17.0%、41.7%で最も少ないが、逆に市区町村では「自治会・町内会」が41.2%で最も多く「パブリック・コメント」が8.1%で最も少ない。
    率先実行では、「昼休みの消灯」が86.8%で実施されているなど職員レベルの取組可能な内容が多く、組織として体制やシステム整備が必要な取組は遅れている。もっとも、低公害車導入を現在検討中の団体が34.7%と多いなど、今後の取組が期待される。
     
      
  4. 3つの主体に対する調査から
     
     情報を発信する地方公共団体、事業者団体と情報を受け取る国民との間に情報の内容や提供方法に関する違いが見られる。
     
    (1) 国民の意識と地方公共団体の意識について
    国民の環境問題への関心は、「地球温暖化」(76.2%)、「オゾン層の破壊」(60.4%)といった地球規模での環境問題や「不法投棄」(54.0%)などの廃棄物問題について高い。一方、地方公共団体が問題意識を持っている環境問題も、「不法投棄」や「地球温暖化」で高くなっており、総じて、国民の関心と地方公共団体の認識は一致している。
    (2) 事業者団体・地方公共団体から国民への情報提供について
    国民の環境情報に関する関心は、「環境問題が生活に及ぼす影響」(82.5%)、「地域環境の情報」(77.6%)などで高いが、これらの情報を提供している地方公共団体はそれぞれ27.0%、32.3%に過ぎない。
    政令指定都市では、「環境問題に対する政策」「環境問題の相談窓口」「環境保護団体の情報」についてそれぞれ91.7%、83.3%、58.3%が情報提供を実施中であるが、政令指定都市の住民でそれぞれの情報について満足している人は12.0%、10.4%、6.6%に過ぎない。
    対外的な環境情報の提供については、90.6%の事業者団体が積極的な姿勢を示しているが、企業の取組に関する情報提供に満足している国民は10%程度に過ぎない。
    環境情報提供の媒体として、事業者団体では「パンフレット」(75.3%)、「ホームページ」(70.1%)が中心であり、地方公共団体でも「パンフレット」が66.5%で最も多い。地方公共団体の「ホームページ」の利用は現時点では22.0%にとどまるが、検討中の団体が29.2%ある。一方、国民の側では、「テレビ・ラジオ」(83.7%)や「新聞・雑誌」(82.8%)の利用が中心であり、「地方公共団体のパンフレット」は50.3%、「事業者のパンフレット」は37.5%、「ホームページ」は11.1%にとどまるなど、情報の送り手と受け手の間にミスマッチが見られる。