資料 3
アジアの地方自治体の持続可能な開発に向けた神奈川宣言(仮訳)
前文
我々、2002年4月27-28日に神奈川県横浜市で開催された「アジアの地方自治体による国際環境シンポジウム」に参加したアジア地域の、1知事及び1市長を含む、52の地方自治体、1ヶ国の政府機関、3の国際機関、並びに24のNGOの代表等からなる会議参加者は;
2002年1月16-17日に神奈川県葉山町で開催された、日本の地方自治体の専門家の参加による「アジアの地方自治体による国際環境シンポジウムの準備会合」の結果を想起し、
1992年にリオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCEDまたは「地球サミット」)のアジェンダ21の第28章において、環境と持続可能な開発のためのローカル・イニシアティブの重要性が明記され、地方自治体による、市民、NGO及び民間企業と対話を進め必要な行動を起こすこと及び、持続可能な開発を促進するための教育、啓発、一般市民の要望への対応に係る地方自治体の役割が期待されていることを想起し、
1995年11月2-4日には、神奈川県横浜市で「環境にやさしいまち・くらし世界会議」が開催され、地方自治体レベルの政策及び組織の強化のための持続可能な都市のためのローカル・イニシアティブに係る「環境にやさしいまち・くらし神奈川宣言」が採択されたことを想起し;
2000年8月31日から9月5日に北九州市で開催された国際連合アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)環境・開発大臣会合において、特に都市における環境と人間の健康を改善するためのローカル・イニシアティブを推進する「クリーンな環境のための北九州イニシアティブ」が承認されたことを歓迎し、
アジア地域においても数多くの地方自治体が、地域の活動主体とともに、ローカル・アジェンダ21の策定と、その実践を含むさまざまな努力に乗り出していることを歓迎し;
地球サミット後の10年間で、アジア諸国の地方自治体によるローカル・イニシアティブの面では顕著な努力がされてきたにもかかわらず、持続可能な開発の状況が十分に改善されておらず、多くの面で悪化しているという遺憾な状況であることと銘記し;
2002年8月から9月にかけて、南アフリカのヨハネスブルグで持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)が開催され、UNCEDの合意に関する10年目の点検が行われること、会議の成果としてパートナーシップ/イニシアティブに関する約束を記述した文書を作成することとなっているなど、行動志向の成果が期待されていることを認識し、
以下のとおり、ここに宣言する。
地方自治体の基本的な役割
規制及びコミュニティへのサービス提供の主体として
地方自治体は、各区域内において環境に悪影響を与える活動を規制する役割を有する。また、地方自治体は地方の多様な行動主体と協調しながら持続可能な開発に必要な活動を起こす役割を担う。
事業・消費の主体として
地方自治体は、財やサービスの相当規模の消費者、利用者であり、そして環境の汚染者ともなりうる。したがって、地方自治体は自らの活動による悪影響を削減させるだけでなく、住民に対して模範を示す役割を担う。
国際協力の主体として
市民に最も直結し、その環境問題を十分に理解し、環境管理に関する能力を有している地方自治体は、環境と持続可能な開発のために、それぞれローカル・イニシアティブにおける交流、そして国やその他の国際協力のプログラムへの貢献を通して、国際協力の推進する役割を担う。
共通認識
ローカル・アジェンダ21と持続可能な開発戦略
1992年の地球サミットで提案されたローカル・アジェンダ21の取組に着手し、さらに取組を推進していくことを呼びかけていく。また、地方自治体は、これらを適切に実施していかなければならない。これには、国によるさらなる支援も必要である。
パートナーシップの促進と参加型対話
ローカル・イニシアティブの決定及び実施には、国の活動と協調した活動とともに、市民、コミュニティに基盤をもった組織、そして民間企業及びメディアの参加が不可欠である。参加型対話の機会を増やし、パートナーシップを促進するための仕組みを構築しなければならない。
意識向上/持続可能性に関する教育/能力開発
意識向上と持続可能性に関する教育及び能力開発は、市民の積極的参加を進めるための基礎となるものであり、政策の実施を成功させるために必須な要素である。そして、環境教育を学校での実践的な活動を通じて推進することが、特に効果的である。何故なら、生徒や若者が、将来のリーダーとして成長していくだけでなく、これらの実践を親たちに伝えることを通して、より広範囲のコミュニティに影響を及ぼしうるからである。
環境と開発に係る意思決定の統合
環境、社会そして経済は相互に関連しており、地方自治体は、首長のリーダーシップのもとで、開発部局と環境部局による内部調整機能を強化し、さらに意思決定の統合のための組織改革も必要に応じて行なわなければならない。国と地方自治体のそれぞれにおけるその組織の間での、また、国及び地方自治体の機関の間での、意思決定の水平的統合が必要である。地方自治体の政策は、環境保全の観点から点検され、見直される必要がある。
環境政策と対策の最適化
地方自治体は、環境保全効果を最大限にするための政策と具体的対策を樹立することが求められている。地域の状況は多様であり、地方公共団体は、研究者、学識経験者、地域コミュニティの住民等地域の事情に最も精通している者とアクセスする必要がある。
環境管理システム
地方自治体は、自らのすべての活動に対し、ISO14001認証等の国際的に認知された環境管理システムを導入するよう努める。
地方分権
世界的に地方分権が加速化的に進められている現在、環境と持続可能な開発の分野におけるより一層の地方分権を推進する必要がある。これによって、環境保全の基盤及び戦略作りは、地方自治体によってさらに進められうる。
経験の共有
人材交流及び専門家派遣による地方自治体間の経験交流は、それぞれのローカル・イニシアティブの実効性を高めることに寄与する。これには、地球環境戦略研究機関(IGES)、国際環境自治体協議会(ICLEI)、国連環境計画国際環境技術センター(UNEP-IETC)、国連大学高等研究所(UNU/IAS)、国際連合アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、アジア開発銀行(ADB)、人間居住管理のためのアジア太平洋都市間協力ネットワーク(CITYNET)によって実施されているプログラム及びプロジェクトを最大限に活用すべきである。
各論
参加者は、国際連携を含むローカル・イニシアティブについての発表を通じ、以下の課題に係る情報や経験の意見交換を行った。これらの情報、意見交換は、それぞれの取り組みをさらに進展させるために有益かつ適切なものであった。
ローカル・イニシアティブの実践(本シンポジウムにおける約束)
ローカル・イニシアティブの実施
我々は、別紙に記載された環境と持続可能な開発に関するローカル・イニシアティブの実施をそれぞれ推進し、予定された期限までに各ローカル・イニシアティブを遂行するよう努める。これを達成するためには、明確な目標の設定、能力開発の実施、意識の高揚及びモニタリングの実施が重要である。また、類似のローカル・イニシアティブを推進していく。
ローカル・イニシアティブ間の交流及び相互協力
我々は、このシンポジウムで構築されたネットワークを通じて、革新的な政策の優れた実践などの情報と経験の交流を引き続き行う。また、ネットワークをさらに拡大し、関連するイニシアティブと連携する。
ODAとの相乗効果
我々は、ローカル・イニシアティブによる国際協力活動と国レベルのODAの枠組みにおける活動との相乗効果を高めることを確保するための努力を行う。
進捗状況の点検
我々は、おおむね5年以内に、別紙に記載されたローカル・イニシアティブの進捗状況を点検する。
別紙: ローカルイニチアティブ一覧
カンボジア プノンペン市
「プノンペンの持続可能な開発」
中国 遼寧省
「環境保全システムの確立」
中国 瀋陽市
「瀋陽市環境保護・整備行動3ヵ年計画」
インドネシア 2010西ジャワ州自然保全地域参加型対話委員会
「自然保全地域に関する西ジャワ州地域規制計画作成 (PERDA Kawasan Lindung)」
インドネシア 西ジャワ州
「持続可能な開発に向けた環境保全の基盤作りとしての地域文化遺産」
インドネシア 西ジャワ州
「西ジャワ州の保護地域における参加型対話プロセス」
韓国 京畿道
「グリーン京畿21」
韓国 韓国ローカル・アジェンダ21協議会 (KCLA21)
「韓国におけるローカル・アジェンダ21実施の加速のための地方公共団体間の情報共有と協力」
韓国 楊平郡
「環境に配慮した農業政策」
マレーシア ペナン州
「マレーシア・ペナン州ペナン川水質浄化・処理事業」
モンゴル ウランバートル市
「ウランバートル市の都市計画と持続可能な開発」
ネパール ポカラ市
「我々の責任: ポカラをより清浄に美しく」
フィリピン マリキナ市
「最少の資金での環境管理: マリキナの経験をもとに」
スリランカ ラタナプラ市
「環境汚染を最小化するための廃棄物管理」
タイ バンコク市
「都市環境計画・管理」
タイ ランパン市
「市内の学校における廃棄物リサイクルと教育」
タイ ノンタブリ市
「ノンタブリ市廃棄物最小化」
北海道
「北極圏フォーラム:環境教育プロジェクト」
神奈川県
「水源の森林づくり」
神奈川県
「環境協力のための地方からのイニシアティブ」
川崎市
「ごみ焼却施設におけるISO14001認証取得と拡大に向けて」
北九州市
「国際環境協力:経験の共有」
京都府
「地球温暖化対策の推進」
仙台市
「仙台市のための環境管理システムの確立」
横須賀市
「環境行動自治体をめざして:循環型社会実現への努力」