別紙1
(和文)
 
 

ヨハネスブルグ・サミットに向けたバンフ閣僚宣言(環境省仮訳)

 
2 0 0 2 年 4 月 15 日
G8環境大臣会合にて採択


 我々、先進主要8ヶ国の環境担当大臣と欧州委員会環境担当委員は、2002年4月12日から14日にかけてカナダのバンフに参集した。その目的は、2002年8月26日から9月4日に南アフリカのヨハネスブルグで開催される持続可能な開発に関する世界首脳会議に向けた準備を進めることであった。「環境と開発」「環境と健康」「環境ガバナンス」について重点的に議論が行われた。
 
 1992年のリオ地球サミット以降、人類の尊厳と幸福を促進するために、持続可能な方法で環境を管理する必要性に対する認識が高まっていることを我々は見てきた。自治体、国、地域、国際レベルにおける、持続可能な方法での環境資源管理の進展や、社会のあらゆるレベル及び国際社会で共有された持続可能な開発へのコミットメントを、我々は賞賛する。しかしながら、更なる行動が必要であることもまた認識している。地球全体の環境状態は悪化し続けている。この環境悪化を改善するためには、より持続可能な消費・生産パターンを達成し、貧困を緩和し、国内及び国際的な制度を更に改善し、紛争を解決し、汚染を削減しなければならない。地球の繁栄、安定、安全を確保するためには、これらの課題に対して、緊急な注意が求められている。
 
 
ヨハネスブルグ・サミットの成功に向けて
 
 ヨハネスブルグ・サミットは、リオ地球サミット以降に生じた新しい課題に効果的に対応し、行動志向の成果に達しなければならない。さらに、アジェンダ21をさらに強化し、ニューヨークでのミレニアムサミット、WTOドーハ閣僚会議、モンテレーにおける開発資金国際会議で達成された建設的な成果の実施を促すべきである。ヨハネスブルグ・サミットの目標もまた、次の世界食糧サミットの成果により促進されるであろう。ヨハネスブルグ・サミットは、実施を伴うものでなければならない。さらに、全ての関係主体の積極的な参加の上に成り立たなければならず、関係主体間の活発で効果的なパートナーシップを築く方法を追求しなければならない。
 
 我々は、アジェンダ21のさらなる実施のために国際社会と協力し、自国内及び地球規模において持続可能な開発を実施するために、リーダーシップを継続して発揮することを約束する。我々は、多国間環境条約や議定書の早期発効及び実施を確保するため、あらゆる努力を行う。
 
 我々は、気候変動という緊急の環境環境問題に地球規模での参加により対処するため、温室効果ガスの排出を削減する必要性を再確認する。我々は、強力に行動を押し進めることによって、国連気候変動枠組条約に基づく約束の履行やその究極の目的の推進において先導的役割を果たすことを決意する。これは、ほとんどの国にとって、ヨハネスブルグ・サミットまでの多くの国の締結による、時宜を得た京都議定書の発効を意味する。それ以外の国にとっては、強力かつ現実的な国内措置をとることを意味している。我々は、特に調査研究及び技術開発の分野をはじめとした情報及び優良事例の交換を強化することに合意する。
 
 ヨハネスブルグ・サミットは、行動計画につながる新たな政治的コミットメントを示さなければならない。さらに、目に見える結果を生みだし、全てのレベルで活動を結集させて、持続可能な開発を達成するためにパートナーシップを構築しなければならない。ヨハネスブルグ・サミットの成功は、可能な限りの高位レベルにおけるリーダーシップと関与によっている。我々は、以下のような鍵となる分野における具体的な提案を作成するため、政府や他のパートナーと協力する。
i) 安全な水や衛生施設へのアクセスを含む、持続可能な水資源管理を促進するための戦略的パートナーシップ
ii) エネルギーへのアクセスのない人数の実質的削減、エネルギー効率の向上、エネルギー資源の保全の改善、新技術の開発及び全ての国における再生可能エネルギーの使用・共有の推進など、G8諸国のこれまでの業績に立脚した、エネルギー分野における活動
その他の項目の中でも、違法伐採や関連する貿易への対処を含む森林保護と持続可能な森林管理の強化の継続に対して注意が向けられるべきである。我々は、生物多様性条約の第6回締約国会議が本分野で建設的な進展を見せることを期待している。
 
 
環境と開発
 
 経済的、社会的な開発政策に環境の側面をより良く統合させることは、依然として課題であり、アジェンダ21の達成や、ミレニアム宣言等に含まれている国際的に合意された開発目標とターゲットに対してきわめて重要である。我々は、全ての人々の利益のためにグローバリゼーションが持続可能な開発を促進することを確実にするために、それぞれの国内及び国際的パートナーと協力することをコミットする。我々は、地球の持続可能な開発を進展するために、多国間環境協定の重要な貢献を認識する。これらの協定は、国内の持続可能な開発政策や計画を形成し、全てのレベルにおける具体的な活動を構成する上で有用なツールであることが明らかになっている。我々は、こうした協定の実効性を高めるために、全てのレベルにおいてパートナーと協力することを決意する。これに関して、我々は、地球環境ファシリティー(GEF)のマンデートを拡大することを考慮し、第3次増資のために十分な資金が必要であることを強調する。地域社会ベースの生物多様性の保存及び持続可能な利用を通じて達成される貧困削減への貢献を、我々は強調する。
 我々は、国際的な開発、社会、貿易、資金(輸出信用を含む)、投資、二国間・多国間環境協力といった異なる政策間の一貫性、及び開発目的を支援するメカニズムやツールを、継続して改善する緊急の必要性を認識している。さらに、我々のアフリカのパートナーによる「アフリカ開発のための新パートナーシップ」において推進される、持続可能な開発への革新的な取組を歓迎するとともに、その目標を達成するために彼らとともに協力するつもりである。
 
 
環境と健康
 
 健康と我々の環境との関係は、先進国・開発途上国双方において、環境保護の主要な推進力となってきた。我々は、持続可能な開発に向けた努力を強化するため、保健行政を担当している同僚とパートナーシップを組んで取り組む重要性を強調する。環境、健康及び貧困の間の関連に関する認識はますます高くなっている。我々は、自国内及び世界において、大気、水及び土壌の汚染、気候変動の影響、交通量の増大、化学物質の利用及び都市開発による環境への負荷の増大に直面している子供達や他の脆弱な人々に特に関心を有している。我々の政策は、リオ宣言の第15原則に規定されている予防的方策に基づいて続けられるべきである。汚染された水や不適切な衛生が、開発途上の世界において不健康や疾病の多くを引き起こし、毎年何百万人の人々、とりわけ子供達の死亡につながっている。
 
 1997年の「子供の環境保健に関するG8マイアミ宣言」、欧州環境保健委員会によって開発されたプログラム、アメリカ諸国の保健及び環境大臣の最近の会合のようなイニシアティブを通じて進捗がなされている。我々は、アフリカ諸国の保健及び環境大臣の会合を歓迎し、世界の他の地域がこの方向に続くよう強く促す。化学物質の適正な管理のための最も重要な手法の中には、「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約」及び「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」があり、我々はこれらの早期の発効と加盟国による実施を支持する。我々は、また、北方の人々に対する健康と環境の問題に対処する上で、北極圏協議会等の組織によって行われている効果的な取組にも注目している。我々は、安全な飲料水及び衛生の提供、先進的技術や低公害燃料による都市域の大気質の改善のレビュー及びこれらに向けた行動の分野での協力を更に検討する。
 
 子供の環境保健は、G8の環境大臣にとって特に関心の高い問題である。2002年に我々は、1997年の子供の環境保健に関するマイアミ宣言を実施するための共同の及び個別の行動を検討したが、同宣言を実施するとのコミットメントを再確認する。我々は、環境上の脅威から子供の健康を守る任務が続いていることを認識し、関連多国間機関と協議しつつ、モニタリングの手法として、子供の環境保健の指標の開発に係る作業を共に進めることに合意する。
 
 我々は、ヨハネスブルグ・サミットは、人間の健康を脅かす環境問題に対処するための具体的な行動を引き起こすための重要な機会であると考える。我々は、環境及び健康の問題に対する行動を支えるための科学的基盤のさらなる整備、及びあらゆるレベルにおいて統合された方法でこれらの問題に対処するための対処能力の向上が明らかに必要であると考える。我々は、環境、健康及び貧困の問題に取り組むための建設的な方策を開発、実施していくため、国際社会におけるパートナー、及び主要な国際機関、特に国連環境計画及び世界保健機構との協働を決意する。我々は、持続可能な開発の文脈において、人の健康と環境に関連するヨハネスブルグ・サミットのイニシアティブに係るG8の考え方をどのようにすれば更に進展させられるかを決めるため、専門家による検討を早期に行うことに合意する。この点に関し、政策対応を強化するための優良事例の評価、行動の障害及び中心となる行動の明確化並びに優先順位が高いと認められたものへの資金提供を含め、環境と人の健康の関連についての既存の情報の統合及び交換を進めるための国際的なイニシアティブをヨハネスブルグ・サミットで立ち上げるよう求める。
 
 
国内及び国際環境ガバナンス
 
 持続可能性を強化し、環境パフォーマンスを改善するためには、確固とした政策的、法的、規制的手法及び自主的取組を促進する手法が必要である。参加国のそれぞれは、このような方向で重要な手段を講じている。すなわち、制度の整備、資源の効率性、市民の参加、自治体及び民間セクターを含む関係団体との協力の面で成果を上げている。我々は、これらの持続可能な開発にコミットする民間企業が、投資、技術及び企業の社会的責任を通じて果たしている重要な役割に特に言及する。 我々は、これらの先進的な企業のために機会を創出するとともに、持続可能な開発の原則を支持する多くの民間団体を招集するにあたって積極的な役割を果たせるよう彼らの能力を支援する。OECDの多国籍企業のガイドライン、グローバルコンパクト、環境報告書の国際イニシアティブ(GRI)、提案されているロンドン原則等の自主的活動の行動規範は、持続可能な企業活動の推進にあたって重要な役割を果たしている。2002年3月に開催された、企業の持続可能な取組を促すための政府の役割に関するG8環境未来フォーラムは、G8各国による調整努力に向けて大きな前進であった。我々は、環境保護と持続可能な開発に大きく貢献する外資を奨励する提案やアイデアを促進する。
 我々は、各々の国内環境ガバナンスの改善の継続と持続可能な開発の実態によって市民社会を更に関与させることを約束する。我々は、例えば、国の持続可能な開発戦略の策定と実施を通じて、環境、経済及び社会政策策定を統合する必要性を強調する。我々は、環境ガバナンスに係る成功と教訓を国際社会と共有しつづける。我々は、全ての国において持続可能な開発を達成するために効果的な国内ガバナンスの重要性を強調する。
 
 持続可能な開発のガバナンスにかかる全体議論に沿って、我々は国連環境計画(UNEP)のリーダーシップによりまとめられた、国際環境ガバナンスの政府間グループによる勧告を歓迎する。これらの勧告は、国際的な環境の体制を強化するために、またヨハネスブルグ・サミットへの重要な貢献として本質的である。
 我々は、ヨハネスブルグ・サミットにおいて勧告の完全な実施を確保するために具体的な措置を講じること、国際環境ガバナンスの強化と持続可能な開発ガバナンスのその他の項目間でつながりを強化することを約束する。不十分で予測ができないUNEPの財政状況を、予見可能な資金、広範な拠出、効率的で効果的な資金の利用、民間企業及びその他の主要なグループからの多大な資金的貢献を内容とした改善を至急行う必要性を強調する。我々は、調整の役割を含むUNEPの強化に言及し、重要で複雑なグローバル閣僚級環境フォーラムのユニバーサル・メンバーシップをヨハネスブルグ・サミットの準備の観点から検討する。我々は、各々の環境、経済、社会の目的を調整・強化するために、持続可能な開発に資する多国間環境ガバナンスや地域・準地域レベルのガバナンス(例:国連地域委員会)を含んで国際ガバナンスの効率性を高めるために、国際社会と国連機関との協働を強化する。
 
 
結 論
 
 我々の持続可能な開発に向けたコミットメントは強固であり続ける。そして我々はさらなる行動を通して、このコミットメントを追求する。地方、国、地域及び地球的な環境問題への挑戦は深刻さ、複雑さを増しており、これらの解決には、リーダーシップ、革新及び投資が必要である。我々は、ヨハネスブルグ・サミットを、国際社会に刺激を与え、持続可能な開発に向けた一層の進歩を促すよい機会として期待している。それは環境資源の枯渇及び悪化という現在の傾向を反転させ、貧困の軽減に貢献し、公正さを促進し、グローバリゼーションを持続可能な開発に資するものとするためのまたとない機会である。我々は、自らの役割を果たすとともに、将来の世代のために、繁栄し、安全で持続可能な未来を形成するため、地球規模のコミュニティとともに協働して取り組む機会を歓迎する。
 


1  生物多様性条約の第6回締約国会議に関して、ドイツ及びフランスはこれらの問題を取り扱うための生物多様性条約アドホック・ワーキンググループの設置を勧告した。