(参考)

新・生物多様性国家戦略(中間とりまとめ案)の概要

I.新・生物多様性国家戦略の構成
 
 新・生物多様性国家戦略は次の5部から構成されています。

第1部 生物多様性の現状と課題
 
 世界の中の日本の生物多様性や社会経済状況などの現状について、幅広く分析するとともに、生物多様性に関する問題点を「3つの危機」として整理しました。

第2部 生物多様性の保全及び持続可能な利用の理念と目標
 
 施策を推進するための「理念と目標」として、[1]人間生存の基盤、[2]世代を越えた安全性・効率性の基礎、[3]有用性の源泉、[4]豊かな文化の根源、[5]予防的順応的態度の「5つの理念」と、[1]種や生態系の保全、[2]絶滅の防止と回復、[3]持続可能な利用の「3つの目標」を掲げ、そして生物多様性が保全された結果、現れる国土の将来像のイメージとして「グランドデザイン」を提示しました。

第3部 生物多様性の保全及び持続可能な利用の基本方針
 
 「理念と目標」を具体化するための施策の基本的方向として、
[1]種の絶滅、湿地の減少、移入種問題等への対応としての「保全の強化」
[2]保全に加えて失われた自然をより積極的に再生、修復する「自然再生」
[3]里地里山など多義的な空間における保全に配慮した「持続可能な利用」
の「3つの方向」を掲げ、これらの基本的方向を支える共通の要件、基本的視点として、[1]科学的認識、[2]統合的アプローチ、[3]知識の共有・参加、[4]連携・共同、[5]国際的認識の「5つの視点」をあげました。また、生物多様性からみた国土空間の解釈、分析の見方であると同時に、国土全体の生物多様性の改善・向上に向けてのポテンシャルを考えるための見方として、[1]国土の構造的把握と[2]植生自然度別配慮事項の「2つの捉え方」を示しました。
 さらに、重要地域、生態的ネットワーク、里地里山、湿地、自然再生、絶滅回避、移入種問題、自然環境データ、国際的取組など、戦略の基本方針として、その対象及び内容を特記すべき事項について「主要テーマ別取扱方針」として掲げ、具体事例も交えて詳述しました。

第4部 具体的施策の展開
 
 こうした基本方針を受けた具体的施策の展開について、[1]国土の空間特性・土地利用に応じた関連省庁の施策、[2]野生生物の保護管理等の横断的施策、[3]調査研究、人材育成等の基盤的施策を記述しました。

第5部 戦略の効果的実施
 
 全体を振り返って概括的なまとめを行うとともに、戦略の効果的実施を確保するために必要な「実行体制と各主体の連携」、「各種計画との連携」、「戦略実施状況の点検と戦略の見直し」について述べています。
 

II.新・生物多様性国家戦略作成のポイント
 
 これらの戦略の内容については、特に次の点を重視して作成しました。

[1] トータルプラン
  「自然と共生する社会」を実現するための政府全体の中長期的なトータルプランとしての役割を担うこと
 
[2] 理念の拡大
  社会全体とのかかわりにおいて施策を展開すべきとの考えから、従来の「有用性」を中心とした意味づけに加えて、「安全性・効率性」や「地域文化」と生物多様性が密接不可分であることを明記するなど、理念を拡大し、整理すること
[3] 対象の拡大
  山奥の原生自然や貴重種といった絶対的価値の高い特定の地域や生物に限らずに、里地里山など中間的、相対的な価値を持ち人の生活・生産活動とのかかわりの中で保全していくべきものにも積極的に光をあて、施策の対象を国土全体に拡大すること
  その中で、湿原、水辺地や浅海域の干潟、藻場など、減少・劣化の著しい湿地の重要性について特記すること
[4] 自然再生
  残された自然の保全に加えて、国土の空間特性に応じた自然環境基盤のポテンシャルを顕在化させ、国土全体の生物多様性の質を改善・向上させていく方向に転じること、その端緒として自然再生事業を提案すること
[5] 連携・共同
  各省連携、共同体制の強化について、自然再生事業、里地里山の保全・利用、生態的ネットワーク形成等における連携や、自然環境データベースの共有化・統合の提案など、具体的に強調して述べること
[6] 提案の具体性
  法律改正や戦略的・モデル的事業の提案など、戦略策定を受けて新たに着手する具体的施策・事業を出来るだけ盛り込み、実践的な行動計画としての役割を持たせること
[7] 多様な主体の参加
  今回の策定作業は、インターネットの活用などにより、徹底した情報公開のもとで進めるとともに、パブリックコメント募集のほかにも、NGO、学会、地方公共団体はじめ様々な団体からの広範なヒアリングを実施するなど、開かれたプロセスの中で進めること
  自然再生や里地里山保全などの具体的、実践的な取組の中で、国だけでなく、地方公共団体、専門家、住民,NGO、ボランティア等多様な主体の参加・連携を呼びかけること