01/10/18 11:26 現在

 
アジア太平洋環境会議(ECO ASIA 2001) 議長サマリー (仮訳)
東京
2001年10月13日・14日

 
 
1. 第10回アジア太平洋環境会議 (ECO ASIA 2001)は、2001年10月13日−14日、東京において環境省の主催により開催された。会議には、アジア太平洋地域を中心とする21ヶ国から13名の閣僚、及び39名の政府関係者、並びに12国際機関からの36名を含む88名が参加した。
 
2. 会議の議長は、日本の川口順子環境大臣が務め、以下の議題を提示した。
(1) アジア太平洋環境開発フォーラムの設置
(2) エコアジア長期展望プロジェクト(第II期)の成果報告
(3) 持続可能な開発に関する世界サミットの準備
(4) 気候変動
(5) エコ・アジアの今後の活動
 
 
アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)の設置
 
3. アジア太平洋環境開発フォーラムの設置に関するセッションは、事務局による昨年のエコ・アジア会議以降のフォーラム準備の経緯に関するプレゼンテーションで開始された。
 
4. APFEDは、非常に幅広い知識と技能と経験を有するメンバー候補者から構成されていることが認識されるとともに、推薦メンバーの高レベルな見識、及びフォーラムの革新的概念に鑑みて、革新的で具体的な提言をフォーラムが行うことに対する高い期待が表明された。また、付託事項案の討議項目のうち特に革新的な資金オプションを検討する必要性に対する全面的な支持が表明された。さらに、フォーラムが高度な透明性を維持する必要性、およびこの地域が直面している非常に多様な経済・社会・環境の現状を十分考慮する必要性が強調された。
 
5. 事務局からメンバー選考過程を明確にする説明を行った後、付託事項案、スケジュール案が検討され、フォーラムの設置は全面的に承認された。さらに付託事項案とフォーラムが討議すべき事項は、地域が追及すべきヴィジョンに沿っているとの言及が多くの大臣によりなされた。
 
 
エコアジア長期展望プロジェクト(LTPP)第II期の成果報告
 
6. (財)地球環境戦略研究機関(IGES)副所長代行の松下和夫氏が、エコアジア長期展望プロジェクト(LTPP)第II期(1998年−2001年)最終報告書案を発表した。本報告書(タイトル:「持続可能なアジア太平洋地域を目指して:エコアジア長期展望プロジェクト第II期報告書」)は包括的な内容であるが、特に4つのキー・コンセプト(エコ・コンシャスネス、エコ・パートナーシップ、エコ・テクノロジー/エコ・インベストメント、およびエコ・ポリシーリンケージ)を、アジア太平洋地域における6つの主要環境課題(気候変動、都市環境、淡水、森林、生物多様性、持続可能性のための教育)に適用したことが強調された。
 
7. 出席者は、報告書の分析と提言を歓迎した。4つのキー・コンセプトと、域内の持続可能な開発に関する多様で重要な課題への適用の重要性を再認識する必要性、及び各参加国の実施能力向上の必要性が指摘された。またLTPPのフォローアップ活動、すなわちアジア太平洋環境イノベーション戦略(APEIS)の活動に対して期待が表明されるとともに、土地劣化、廃棄物管理といったLTPPでは網羅されなかった課題にAPEISが取組むことへの要望が示された。
 
8. 出席者は、LTPP第II期最終報告書案を承認した。議長は、本会議での討議を本報告書案に反映させて、11月のWSSDアジア太平洋地域準備会合に最終報告書を提出するよう事務局に要請した。
 
 
持続可能な開発に関する世界サミットの準備
 
9. 持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)の準備に関する討議は、先ず5名のリードオフスピーチで開始された。最初に、経済社会問題担当国連事務次長 ニティン・デサイ氏が発表を行い、WSSDは実施指向であること、WSSDの成功の為には地域会合が重要な役割を果たすことを出席者に改めて指摘した。また、WSSDは単なる政府間会合ではなく、各国大臣は幅広い様々な主体の関与の為に尽力すべきと要請した。さらに各国大臣に対して、各国首脳や同僚閣僚がWSSDのアジェンダに注目するよう奨励すべきと主張し、WSSDへの強力な政治的支援の早急な確立の必要性に言及した。また、アジアの3つの中心的課題(貧困撲滅・持続可能な消費・生態系の保全)についても言及し、準備過程における政治的意志の重要性、実施へ向けた実質的取組みの必要性、パートナーシップの構築と強化を強調した。
 
10. 国連事務次長兼国連環境計画(UNEP)事務局長 クラウス・テプファー氏は、特に実施促進に関する最適な管理機構に関して実質的な成果を得るために、地域及び世界レベルの準備を強化するよう出席者に要請した。さらに、WSSDは持続可能な開発に関する会議であり環境のみを扱う会議ではないことを指摘し、従って出席者は経済委員会や開発銀行、UNDPやUNEPとも協力する必要があると主張した。
 
11. 国連事務次長兼アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)事務局長 キム・ハクス氏は、準地域・地域レベルの準備会合の運営においてESCAPが果たす指導的役割を説明し、その中で、非常に自由な議論が行われ、具体的な行動が重要視されるという点で、こうした会合はアジア太平洋地域特有のものであると述べた。さらに、地域準備プロセスの目標は前進指向の地域プラットフォームの作成と採択であること、及びそのプラットフォームには優先分野におけるアクションが含まれることを強調した。
 
12. 国連大学高等研究所(UNU/IAS)所長 A.H.ザクリ氏は、最初にインターリンケージを取り上げ、次により良いアセスメント技術の優先分野と、環境悪化が貧困層に及ぼす影響に焦点を当てる必要性を指摘した。さらに、現実的なアジェンダの早期合意の必要性、及び対話の機会、特に非公式な意見交換の会合を増やす必要性を強調した。
 
13. 国連開発計画(UNDP)総裁補兼開発政策局長 渡邊英美氏は、総合的な動員と取組みの手段として国家的な取組みとフォローアップの重要性を強調し、地域の成功例や取組みを浮き彫りにする手段としてUNDPの国別アセスメントを紹介した。実施を強調する際は、成功例は重要な役割を果たすこととなる。
 
14. 以上の討議により、国・準地域・地域レベルでのWSSD準備プロセスの重要性が再確認された。サミットの成功には環境大臣のみならず幅広い分野の大臣の関与が必要であり、その準備において首脳や開発大臣、その他の大臣を関与させる必要があると強調された。同時に、中央政府及び他の関係主体(NGO、企業、地方政府を含む)との協力の重要性も表明された。さらに、持続可能な開発目標を達成するにあたってはサミットにおいて実施面が強調されなくてはならない、との指摘もなされた。
 
15. また、準地域会合を含むWSSD準備プロセスにおいて取り扱われるべき優先分野として、貧困関連、資金、技術開発と技術移転、インターリンケージを含むガバナンス、消費パターン、健康、海洋、淡水、山岳生態系、土地劣化、砂漠化が示された。
 
 
気候変動
 
16. 気候変動に関する審議は、環境省の浜中裕徳地球環境審議官のリードオフ・スピーチで開始された。浜中審議官は、第7回国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締約国会議(COP7)に関する見解を表明した。COP6再開会合での合意は京都議定書の2002年発効に向けて極めて重要なステップであったこと、及び日本政府は京都議定書の最終合意達成に向けて最善を尽くすことを説明した。また、途上国の気候変動対策支援への約束を強調した。最後に、京都議定書の効果的な実施、及び第1約束期間後の取組みの立案という2つの課題を発表した。
 
17. 気候変動とCOP7に関して自由討論が行われた。気候変動は、各国の協力が必要となる現実的かつ緊急な課題であることが表明された。また、UNFCCCと京都議定書に規定された原則のもと、あらゆる国々が関与する世界的規模の制度の重要性が強調された。
 
18. 各国の代表は、近年導入された政策や法規、及びUNFCCCの国別報告等の取組みを紹介した。また、出席者は、GEF、UNEP、UNDP、ADB、JICAや他国政府等との協力を通じて実施されたこれらの取組みやその他の戦略、プロジェクトを謝意をもって発表した。さらに、研究、技術移転、対処能力向上等、緊急を要する援助につき言及された。
 
19. 出席者は、COP7における強力な政治意志の必要性に言及した。また、京都議定書実施の細則や手続きに関する法的文書の合意と議定書の早期発効の重要性が強調された。
 
 
エコ・アジアの将来の活動
 
20. 事務局は、過去10年の経験を基にエコ・アジアの更なる発展を目指した新たな活動と機構、すなわちアジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)の立ち上げとエコ・アジア・パネルの設置を提案した。APEISプロジェクトは、アジア太平洋地域における持続可能な開発に関するLTPPプロジェクトの成果を継承して提案された。その主目的は、(1)政策決定者に対する科学インフラの整備、(2)環境協力と対処能力向上の促進、(3)地域イニシアティブモデルの提案、である。APEISはミレニアム・エコシステム・アセスメント、アジア太平洋地球変動研究ネットワークセンター及びその他関連プロジェクト・機関との緊密な連携のもと実施される。
 
21. 出席者は、この新たなイニシアティブに対して高い期待を表明すると共に、より良い実施のために重要な提言(行動指向の研究の必要性、情報の透明性の必要性、対処能力向上、特にアジェンダ21実施に際して域内各国の参加を最大限に増やす重要性)を行った。イニシアティブの目標、ロジスティックの検討及び資金メカニズムに関する包括的な討議の後、APEISの立ち上げとエコ・アジア・パネルの設置が承認された。会議を代表して議長は、エコ・アジア・パネル事務局に対し、パネル・メンバーの選定にあたっては参加国・機関と緊密に協議し、今回の会議で表明された提言や見解を十分考慮に入れてAPEISプロジェクト活動の検討と調整にあたるよう要請した。
 
22. オーストラリアの代表は会議に対し、オーストラリア暫定政府の運営に留意するよう呼びかけた。
 
23. 国連経済社会局(UNDESA)との協力の下、エコ・アジアと並行して地球環境行動会議(GEA)が開催した地球環境警鐘会議の成果が、エミル・サリム議長より報告された。続いてIGES森嶋理事長より、10月14日のAPFED組織会合に関する報告があった。会議は両者の報告に対し感謝した。
 
24. 出席者は、環境省と会議関係者に謝意を表明した。