(参考)
 
1.  TBT船底塗料とは
 船舶の船底は平滑でなめらかなほど同じエンジン出力での速力が早くなり、また、燃料の消費率も低くなる。ところが、フジツボ等の海洋生物が船体に付着し、平滑性が失われてしまうと抵抗が増し燃料の消費量が増すだけではなく速力が低下し船舶の運航に支障をきたすようになる。このため、通常、船舶の喫水線以下の船底には海洋生物の付着を防止するための塗料が塗布されている。
 TBTを含有する船舶用防汚塗料は、1970年代から一般的に使用され始め、自己研磨型(海中でごく僅かずつ溶けることにより、常に新しい塗装面が海水と接するという形式の塗料)で殺生物剤としてのTBT(トリブチルスズ)を含有しているので、防汚効果が非常に高い反面、海水中に溶けだしたTBTが海底堆積物や海洋生物の体内に蓄積されること等環境面での影響が懸念されてきたものである。
 
2.  環境庁(当時)が平成2年度から11年度に実施した化学物質環境汚染実態調査によると、トリブチルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、近年では、水質及び生物においては改善、底質においてはおおむね横這いの傾向にある。
 本条約により、これらの汚染状況が更に改善することが期待できる。
 
3.  世界的な動向
 平成8年における全世界の有機スズ化合物の生産量は、約5万トンと推定されており、このうちTBT原体の生産量は、年間数千トンと推定されている。全世界的には、TBT含有塗料の消費量は、ほとんど変わっていない状況にあるといわれている。
 
4.  我が国の国内対応
 我が国国内おけるトリブチルスズ化合物の使用は、昭和62年には養魚網への使用が全国漁業協同組合連合会により自主的に禁止された。TBTを含有する船舶用船底塗料の使用については、平成2年以降、運輸省(当時)の指導や関係業界の自主規制等により我が国国内におけるTBT塗料の使用量削減が開始され、平成9年以降はTBT含有塗料の製造が取りやめられており、既に我が国国内においては、TBTを含有する船底塗料は使用されていないことから、我が国に船籍をおく船舶については、条約が発効しても支障を生ずることはないと考えられる。
 なお、我が国においては、既に国内塗料メーカー各社により代替塗料が開発・実用化されておりTBTを含有する塗料の使用が禁止されても特段の問題はない。